システムのリプレースが進まない原因と対策|AI時代の判断軸

システムのリプレースが進まない原因と対策|AI時代の判断軸

「動いているのだから、まだ替えなくていいと言われる」「見積りは取ったが、経営会議に上げる説明が作れない」。——情報システムの部門から相談を受けると、この2つはほとんど一緒に出てきます。日本情報システム・ユーザー協会の企業IT動向調査2025では、老朽化したシステムの作り替えについて「具体的な取組の予定はない」と答えた企業が20.3%で、前年度調査の16.2%から増えています。取り組む側ではなく、取り組まない側が増えた。リプレースが止まるのは、費用が高いからでも技術が難しいからでもありません。本当は、いつ替えると決めるのかという条件を、誰も先に書いていないからです。この記事では、替わらない構造をほどいたうえで、引き金になる条件、AIを載せられるかという新しい判断軸、替えない選択との比べ方、費用の分け方までを、公的な調査と報道発表を原典で確かめながら整理します。


カメ先生カメ先生

リプレースが進まないのは費用の問題だと思われがちなんだ。でも実際に止まっている案件を見ると、費用の前で止まっているものは案外少なくてね。多くは、いつ替えるのかという条件がどこにも書かれていない。だから毎年、来年でいいという同じ結論に戻ってしまうんだよ。


カメ子カメ子

判断する材料がない、ということではなくて、判断する条件が決まっていない、ということですか。


カメ先生カメ先生

そう。材料のほうは毎年そろっているんだ。保守が切れる日も、障害の件数も、単独で直せる人の人数も。ただ、それが「いくつになったら替える」という線につながっていない。線がなければ、材料はただの報告で終わってしまう。


カメ子カメ子

見積りを取ることと、条件を先に書くことは、順番が逆だと動かないのですね。順番の話だとは思っていませんでした。


この記事のポイント
  • 替わらないのは費用が高いからではなく、いつ替えるという条件が書かれていないから
  • 引き金は5つ。そのうち外から来る期限は日付が公表されているので、先に一覧に載せる
  • AIを載せられるかは、つなぎ口・データの取り出し・権限の分け方の3点で判断する

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目次

「壊れていないから替えない」は判断ではない

稼働しているシステムを前にして、替えない理由を並べるのは簡単です。動いている、現場が慣れている、費用が読めない。どれも事実で、どれも反論しにくい。ただ、これらは判断ではありません。判断とは、どういう状態になったら替えるのかを先に書いておくことです。書いてあれば、毎年その条件に当てはまるかを見るだけで済みます。書いていなければ、毎年ゼロから同じ議論が始まり、同じ結論に落ちます。

誤解の中心にあるのは、替えるかどうかを「今の不便さ」で決めようとしていることです。今の不便さは、時間が経つほど小さく感じられます。回避策が積み上がり、担当者が手順を覚え、例外処理が運用でならされていくからです。不便さを基準にすると、時間が経つほど替えない方向に傾くという向きの力がはたらきます。10年使ったシステムほど「困っていない」と報告されるのは、そのためです。

見るべきは今の使い心地ではなく、このまま続けたときに何が起きるかです。保守が受けられなくなる日、単独で直せる人が抜ける時期、取引先の仕様変更でつなげなくなる日。これらは今日の使い心地とは無関係に、日付として近づいてきます。判断とは、この日付を並べて、どこまで近づいたら動くのかを決める作業のことです。ここを決めないまま見積りだけを取っても、比べる基準がないので稟議は通りません。

動いているものが替わらない4つの構造

先送りが起きる場所は、だいたい4つに分かれます。第一に、誰も困っていないこと。第二に、止めた人の責任になること。第三に、費用の説明ができないこと。第四に、触れる人がいないことです。この4つは別々の問題で、対策も別々です。ひとまとめに「社内の理解が足りない」と片づけると、どれも解けません。

いちばん強く効いているのは2番目です。動いているものを止める判断には、失敗したときの責任が付いてきます。切り替えの当日に業務が止まれば、決めた人の名前が残る。一方で、替えないことによって将来かかる余分な費用は、誰の責任にもなりません。この非対称があるかぎり、合理的に考えるほど「今年は見送る」が正解になります。対策は単純で、替えないという判断にも、決めた人の名前と、次に見直す日付を残すことです。両方に名前が付いて初めて、条件が同じ土俵に乗ります。

4番目の「触れる人がいない」は、対策を打つ順番を変えます。詳しい人が社内に1人だけ、あるいは外部の1社だけという状態では、現状を棚卸しすること自体が有償の作業になります。この場合、最初にやるのはリプレースの検討ではなく、いま動いている処理の一覧と、外部とつないでいる先の一覧を、文書として手元に持つことです。この2つがないと、どの選択肢も見積れません。

数字で見ると、取り組む予定がない側が増えている

先送りは感覚の話ではなく、調査にも表れています。日本情報システム・ユーザー協会の企業IT動向調査2025(2025年4月10日公表、2024年度調査)は、老朽化したシステムの作り替えについて4段階で聞いています。24年度(n=975)の内訳は、成果が出ている15.5%、取り組んでいるが成果はこれから30.8%、取組を検討している33.4%、そして具体的な取組の予定はない20.3%でした。前年度(n=918)の同じ設問では、それぞれ16.7%、37.4%、29.7%、16.2%です。

見るべきは変化の向きです。「取り組んでいるが成果はこれから」が37.4%から30.8%に減り、「予定はない」が16.2%から20.3%に増えています。動き出していた層が減り、動かないと決めた層が増えたという形です。同じ調査では、デジタル変革を進めるうえでの課題として「レガシーシステムの存在」を挙げた企業が27.9%あり、報告書本文も「いまだ3割近くある」と書いています。課題としては認識されているのに、取組は増えていません。

この課題感は会社の規模によってはっきり分かれます。売上高別に見ると、「レガシーシステムの存在」を挙げた割合は、100億円未満で23.5%(n=243)、100億円から1000億円未満で27.8%(n=454)、1000億円から1兆円未満で32.1%(n=187)、1兆円以上で38.5%(n=39)でした。規模が大きいほど、古い仕組みが足かせとして意識されています。ただし1兆円以上の区分は回答が39社と少ないため、傾向として読み、割合そのものを目標値のように扱わないほうが安全です。

国際比較でも似た絵が出ています。独立行政法人情報処理推進機構が2025年6月26日に公表した調査(2025年2月10日から3月28日に実施、回収数は日本1,535社、米国509社、ドイツ537社)は、レガシーシステムの状況について「『レガシーシステムはない』の回答割合は日本が一番高いが、『ほとんどがレガシーシステムである』『わからない』の回答割合も日本は一番高い」と書いています。済んでいる会社と、手つかずの会社と、把握できていない会社に、きれいに分かれているということです。

会計は5年、実務は15年。費用の説明ができなくなる仕組み

費用の説明が作れない理由には、会計上のからくりがあります。自社で使うソフトウエアの法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第三と別表第六で定められており、国税庁の案内では、複写して販売するための原本または研究開発用のものが3年、それ以外のものが5年とされています。つまり、構築にかかった費用は5年で費用として配り終わります。

問題は、5年で配り終えた後です。6年目以降、そのシステムは帳簿の上では負担がほとんど残らない状態になります。実際に出ていくのは運用と保守の費用だけなので、いま動いているものは、数字の上では安く回っているように見えます。ここに、新しく作り替える案の見積りを並べると、初年度から大きな金額が立ち上がります。単年度で比べるかぎり、替えない案が必ず勝ちます。

比べ方を変えるしかありません。見るのは単年度ではなく、これから5年で出ていく金額の合計です。替えない案には、運用保守費、追加の改修費、回避策の人件費、期限が来たときに急いで動く費用が入ります。替える案には、構築費、移行費、教育費、二重に走らせる期間の費用が入ります。同じ5年の窓で、同じ費目の分け方で並べたときに初めて、判断できる表になります。この表を作らずに稟議を書くから、毎回「今年でなくてもよい」と返されます。

維持に76.2、新しいことに23.8。この比率が動かない理由

先送りが積み上がると、予算の形に出ます。先ほどと同じ企業IT動向調査2025は、情報システムの予算を、現行の維持と運営に充てる分と、新しい施策の展開に充てる分に分けて聞いています。24年度(n=941)の配分は76.2対23.8でした。新しい施策に充てる比率は、前年度の24.5%から0.7ポイント下がっています。

注目したいのは、この比率がほとんど動いていないことです。報告書は「18年度から23%前後で推移しており、あまり変動はみられない」と書いています。一方で3年後の目標は、24年度調査で31.8%(現在値から8.0ポイント上)、21年度調査でも34.4%(当時の現在値から10.8ポイント上)と、どちらの調査でも現在値より高く答えられています。目標は毎回立つのに、現在値のほうは6年動いていない。これが、替えない判断を積み重ねた結果の姿です。

予算そのものは増えています。同じ調査で情報システム予算の増加理由を聞いた結果では、25年度予測において「業務のデジタル化対応」が45.5%で1位、「基幹システムの刷新」が44.5%で2位、「円安・人件費高騰・ベンダー提供価格の値上げなどによる影響」が41.8%で3位でした。増えた予算の少なからぬ部分が、値上げの吸収に消えているということでもあります。替えないと決めた瞬間に、その分の維持費は固定費として翌年以降に乗り続けます。

引き金になる条件を5つに分ける

では、何が起きたら替えるのか。実務で使える引き金は5つに整理できます。第一に保守の終了、第二に費用の逆転、第三につなげなくなること、第四に人が抜けること、第五に法令や仕様の変更です。大事なのは、5つそれぞれに「いくつになったら」の数字を1つずつ決めておくことで、条件を並べただけでは去年と同じ議論に戻ります。

数字の決め方には型があります。保守の終了は日付そのものなので、終了日から逆算して何か月前に着手するかを決めます。費用の逆転は、年間の運用保守費が新しく作る場合の初期費用の何分の1に達したかで見ます。つなげなくなることは、外部との接続に追加開発が必要になった回数で数えます。人が抜けることは、単独で改修できる人が何人いるかを数え、2人を下回ったら動く、といった形にします。法令や仕様の変更は、施行日か適用開始日です。

5つのうち、社内で観測できるのは2番目と4番目だけです。1番目、3番目、5番目は外から来ます。だから引き金の一覧は、社内の指標だけでなく、外から来る日付を先に並べたうえで、社内の指標をその横に置く形にします。順番を逆にすると、社内の数字が悪化してから外の期限に気づくことになり、選べる手が減ります。

外から来る期限には、はっきりした日付がある

外から来る期限は、思っているよりずっと早く公表されます。東日本電信電話株式会社と西日本電信電話株式会社は、2024年3月7日の報道発表で、企業間のデータ交換にも長く使われてきたディジタル通信の回線サービスについて、2028年12月31日をもってサービス提供を終了すると告知しました。あわせて、2024年8月31日で新規の申込受付を終えています。

終了の理由の書き方が、この事例のいちばん重要な部分です。発表の原文は「利用者が年々減少しており、2029年以降サービス提供に必要な設備部材が枯渇する見込みであることから」としています。壊れたからでも、性能が足りなくなったからでもありません。供給する側の都合で、使い続けたい側の事情とは無関係に日付が決まる。これが、外から来る期限の性質です。そして告知から終了まで、4年9か月あります。

この時間の使い方で差が付きます。告知の時点で引き金の一覧に載せた会社は、他の更改とまとめて計画でき、業者の手も確保できます。終了の年になってから動く会社は、同じ期限を抱えた同業他社と同じ時期に発注することになり、単価も納期も悪くなります。外から来る期限は、探しに行かないと届きません。誰が、どこを、どの頻度で見るかを決めておく必要があります。

  • 保守契約書に書かれた保守期限と、延長の可否および延長時の料率
  • 利用しているサービスの提供終了・仕様変更の告知(提供元の報道発表のページ)
  • 取引先から通知される連携方式の変更や、様式の改定の予定
  • 法令の施行日と経過措置の終了日。猶予の終わりは日付で決まっている
  • 自社が使っている基盤の版ごとのサポート期限。版が上がると期限も変わる

壊れてから替えると、何が余分にかかるか

「壊れてから替えればよい」という考え方が高くつくのは、修理費のせいではありません。選ぶ自由がなくなるからです。余分にかかるものは4つに分けられます。並行して走らせる相手がいないこと、候補を比べる時間がないこと、人を確保できないこと、そしてデータを取り出せない場合があることです。

止まってから動くと、旧いほうを動かしたまま新しいほうを試すことができません。並行稼働ができないということは、新しい仕組みが正しく動くかを、本番の業務で確かめることになります。また、候補を比べる時間がないので、いま提案を持ってきた相手に決めることになります。急いで決めた相手とは、その後10年付き合うことになります。人の確保も同じで、外から来る期限に間に合わなかった場合は、同じ期限を抱えた会社が一斉に動いています。

4つ目のデータの取り出しが、いちばん深刻です。提供が終わったサービスや、保守が切れた仕組みからは、データを標準的な形で出せないことがあります。画面から1件ずつ写す作業に落ちると、移行の費用が桁で変わります。先ほどの情報処理推進機構の調査は、レガシーシステムについて「『DX推進に対する大きな足かせとなっている』は各国とも2割以下にとどまっている」とも書いています。足かせだと感じるほど困っていないうちに動けるかどうかが、費用の分かれ目です

AIを載せられるかを、判断軸に入れる

ここからが、従来のリプレース判断との違いです。これまでの判断軸は「いまの業務が回るか」「止まらないか」「費用が見合うか」の3つでした。生成AIやAIエージェントを業務に組み込む前提で見ると、これに載せられるかどうかという軸が加わります。見るのは3点です。つなぎ口があるか、データが取り出せるか、権限を分けられるか。

つなぎ口があるかは、外部の仕組みから読み書きができるかという話です。画面を自動操作する方法でしか触れない場合、画面が変わるたびに壊れます。データが取り出せるかは、項目名と意味が分かる形で、まとめて出せるかどうかです。項目名が連番だったり、意味が担当者の頭の中にしかなかったりすると、AIに読ませても意味のある答えが返りません。この2点は、載せる前に必ず1回試してみるべきです。試さずに仕様書だけで判断すると、後で必ず食い違います。

見落とされやすいのが3点目の権限です。誰がどこまで見えるかを、システムの側で分けられないと、AIに読ませる範囲を絞れません。すると選択肢は二択に潰れます。すべてを読ませるか、何も読ませないか。前者は事故が起きるまでの時間を縮めるだけで、後者は導入そのものが止まります。実際には、その二つの間に線を引ける場所がいくつもあり、その線を引けるかどうかは、いまの仕組みの権限設計で決まります。だから権限の分割は、載せる話ではなく、替えるかどうかの話です。

載せられない設計は、8つの確認で見分けられる

3点の判断軸を、実際に確かめられる形に落とします。下の一覧は、現行のシステムを持っている部署か、保守を任せている会社に投げる質問です。返ってくるまでにかかった日数も記録します。答えが返るまでに2週間かかる仕組みは、その事実自体が判断材料になります。

  • 現行のデータを、項目名の一覧を添えてまとめて出せますか。誰が、何日でできますか
  • 外部の仕組みから更新の操作ができますか。画面を自動で操作する以外の方法がありますか
  • 利用者の権限を、部署や案件の単位で分けられますか。分けた範囲を外部に伝えられますか
  • 誰が、いつ、何を変えたかの記録が残りますか。その記録を後から取り出せますか
  • 文字の種類と日付の書き方は統一されていますか。半角と全角が混ざっていませんか
  • 添付された書類と本体のデータを、対応づけたまま出せますか
  • 停止してよい時間帯と、そのときの連絡先が決まっていますか
  • いま使っている版と、その版の保守が受けられる期限を、文書で確認できますか

この8つは、リプレースを決めるためだけの質問ではありません。替えないと決めた場合にも、AIを部分的に載せるための出発点になります。1つ目と3つ目に答えられない仕組みは、替えない選択をしても、その後5年間はAIの活用範囲が広がりません。逆に、この2つに答えられるなら、全面的に替えなくても打てる手があります。

替えない選択も、同じ土俵に並べる

判断を求められている選択肢は、替えるか替えないかの二択ではありません。少なくとも4つあります。そのまま延命する、一部だけを載せ替える、新旧を並行して走らせながら段階的に移す、全面的に作り替える。4つを同じ表に並べないから、比べたつもりで比べていない状態になります。下の表は、その並べ方の型です。

選択肢向いている状況5年で出ていく費用の見え方主な弱点AIを載せられるか
そのまま延命する外から来る期限が5年より先にある。触れる人が2人以上いる毎年ほぼ一定。ただし保守料の値上げが乗る期限が近づくと選択肢が急に減るつなぎ口があれば部分的に可能
一部だけ載せ替える困っている業務が特定の1領域に寄っている初年度に小さな山、その後は現状に近い旧いほうとの二重管理が残る載せ替えた領域だけ可能
並行して段階的に移す止められない業務があり、戻せる状態を保ちたい並行期間だけ費用が二重になる並行期間が延びると費用が固定化する移した順に広げられる
全面的に作り替える外から来る期限が近い。つなぎ口もデータの取り出しもできない初年度に大きな山、以降は下がる切り替えの当日に業務が止まる恐れがある設計に織り込めば最初から可能

表を作るときの注意が1つあります。「そのまま延命する」の行を空欄にしないことです。延命にも費用はかかり、リスクもあります。ここを空欄にすると、比べているようで、替える案だけに費用とリスクが計上された表になります。何もしないという選択肢にも、金額と弱点を書き込む。それだけで、会議の議論の質が変わります。

費用は4つに分けて出す

見積りが説明に耐えないのは、金額の大小ではなく、分け方が粗いからです。費用は最低4つに分けます。初期の費用、移行の費用、教育の費用、そして二重に走らせる期間の費用です。4つ目が抜けている見積りは、ほぼ確実に足りません。並行稼働の間は、両方の運用費がかかるうえに、両方に入力する手間が現場にかかります。

移行の費用は、データの汚れ具合で決まります。項目の対応づけそのものは短時間で終わりますが、同じ意味の値が複数の書き方で入っている状態の整理に時間がかかります。会社名の表記ゆれ、廃止された区分の残り、必須のはずの欄が空になっている行。移行費用の見積りが外れる原因は、量ではなく揺れの数です。着手前に、主要な項目について値の種類を数えておくと、見積りの精度が上がります。

教育の費用も過小に見積もられがちです。研修の実施費だけでなく、慣れるまでの期間に落ちる生産性を数字に入れます。1人あたり月に何時間、何か月分と置いて、人数を掛ければ概算は出ます。ここを入れておくと、切り替え直後の混乱が想定内として扱われ、現場からの反発が事故の報告ではなく計画の一部になります

判断の順番を決める

材料がそろったら、決める順番を固定します。順番を固定する理由は、途中で「やはり費用が」という話に戻らないようにするためです。費用は3番目以降にしか出てきません。先に費用を見ると、どの選択肢も高く見えます。

STEP1
外から来る日付を並べる

保守の終了、提供の終了、法令の施行日、取引先の仕様変更。日付が判明しているものだけを先に書き出します。

STEP2
社内の指標に線を引く

単独で改修できる人の人数、年間の追加改修の回数、運用保守費の推移。それぞれ、いくつになったら動くかを決めます。

STEP3
載せられるかの8項目を確かめる

現行の持ち主か保守の委託先に質問を投げ、返ってくるまでの日数も記録します。答えが返らない項目は、答えられないという結果として扱います。

STEP4
4つの選択肢を同じ表に並べる

延命・部分的な載せ替え・段階移行・全面刷新。5年で出ていく費用と弱点を、どの行も空欄にせず書きます。

STEP5
結論と次の見直し日を残す

替えないと決めた場合も、決めた人の名前と、次に見直す日付を書いて残します。ここまでで1周です。

この5つを1周させるのに、実際には2か月から3か月かかります。長いように見えますが、毎年ゼロから議論して結論が出ないまま3年過ぎるより短い。1周させた記録が残っていれば、2年目以降は3番目の確認をやり直すだけで済みます

移行の進め方は、要点を3つだけ押さえる

替えると決まった後の手順は、この記事の範囲ではありません。ただ、判断の段階で確かめておかないと後戻りできない点が3つあります。データを持ち出せる形で出せること、並行稼働の終わる日を先に決めること、戻せる状態を確保することです。

1つ目は、契約前に1回試します。「出せます」という回答ではなく、実際に出してもらった一部のデータを見ます。項目名が付いているか、日付の形式が統一されているか、添付された書類と本体が対応づいているか。試し出しを断られる場合は、その事実を判断材料に入れます。2つ目は、並行稼働の開始日ではなく終了日を先に決めることです。終了日を決めずに始めると、両方を動かす状態が固定化し、費用が二重のまま何年も続きます。

3つ目の「戻せる状態」は、切り替え前の環境をいつまで残すかという話です。残す期間と、戻すときの手順と、戻す判断を誰がするかを、切り替え前に文書にします。戻せることが決まっていると、切り替えの決断そのものが早くなります。戻せないまま踏み切る計画は、直前になって延期されるのが常です。

AIに任せてよい移行作業と、任せてはいけないところ

移行の作業には、生成AIが確実に効く部分があります。旧いほうの項目と新しいほうの項目の対応づけの下書き、2つの仕様書の差分の洗い出し、古い設計書からの要点の抜き出し、テストで確かめるべき観点の列挙。いずれも、案を出させて人が確かめるという形が成り立つ作業です。ここで手数を減らせるのは事実です。

ただし、任せてはいけない判断がはっきりあります。移すか捨てるかの判断、権限の設計、例外データの扱いの決定、そして切り替えてよいかどうかの可否判断です。この4つに共通するのは、間違えたときに外に影響が出て、責任の所在が要ることです。もう1つ、実務で効く決めごとがあります。対応づけの下書きを作らせるときは、なぜその項目に対応させたのかという理由を1行ずつ書かせること。理由が書けなかった行は、人が必ず見ます。

  • 旧いほうの仕様が分からないまま、AIの出した対応づけをそのまま流し込む
  • 移すか捨てるかの判断をAIに任せ、捨てた理由が後から説明できなくなる
  • 権限の設計を移行の最後に回し、切り替え後に全員が全部見える状態で走らせる
  • 並行稼働の終了日を決めずに始め、両方を動かす状態が固定費になる
  • 替えないと決めた記録を残さず、翌年また同じ資料を作り直す
  • 単年度の費用だけを並べて比べ、延命の行を空欄のまま会議に出す

まとめ

リプレースが進まないのは、費用が高いからでも技術が難しいからでもありません。いつ替えるのかという条件が、どこにも書かれていないからです。企業IT動向調査2025では、老朽化したシステムの作り替えについて「具体的な取組の予定はない」が20.3%と、前年度の16.2%から増えていました。維持と新しい施策の予算配分も76.2対23.8で、この比率は18年度からほとんど動いていません。先送りは、意思決定の欠落ではなく、費用の見え方が生み出す構造です。

対策は、引き金を5つに分けて数字を1つずつ決め、外から来る日付を先に並べることです。回線サービスの終了が4年9か月前に、しかも「設備部材が枯渇する見込み」という供給側の理由で告知されたように、外の期限は使う側の事情と無関係に決まります。そして今回からは、AIを載せられるかどうか——つなぎ口、データの取り出し、権限の分割——が判断軸に加わります。とくに権限を分けられない仕組みは、替えない選択をした後の5年間、活用の範囲が広がりません。

最後に、替えないという結論も立派な判断です。ただしそれは、金額と弱点を書き込んだ表の上で選ばれたときだけです。何もしない選択肢の行を空欄にしたまま比べた会議は、比べていません。決めた人の名前と、次に見直す日付を残す。この2つを書くところから始めれば、来年の議論はゼロからではなくなります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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