ノーコードでマーケ業務をAIに任せる方法|手を動かさず回す

「毎週やっている作業なのに、いつまで経っても自分の手が空かない」「道具はひととおり入れたのに、結局は転記と貼り付けが残っている」。マーケの現場で聞く声のうち、この2つはとくに数が多いものです。どちらも、道具が足りないことから来ているのではありません。入っている道具どうしがつながっておらず、間を人が手で埋めているから起きています。そしてつながらない理由は、プログラムを書けないことではありません。本当は、どの順番でつなぐかと、失敗したときにどこへ戻すかを決めていないから動かないのです。この記事では、コードを書かずに道具どうしをつなぎ、マーケ業務の一部をAIに回す進め方を、組み立ての手順と壊れ方への備えの両面から整理します。
カメ先生プログラムを書かない自動化は、どの道具を選ぶかで決まると思われがちだけど、本当は、どこで人に戻すかを決めるところで決まるんだ。
カメ子つなぐための道具は、どれを選んでも同じということでしょうか。
カメ先生同じではないよ。ただ、道具選びで失敗する人より、失敗したときの戻り先を決めないまま動かして事故を起こす人のほうがずっと多い。夜中に同じメールが200通出ていて、朝になって気づく、というのがいちばん多い形だね。
カメ子動かし方を決める前に、止め方を決めておく必要があるということですね。
- 向くのは、頻度が高く判断が少ない業務。例外が多く判断が要る業務は、つなぐ前に人が決める形へ直す
- つなぐ前に決めるのは3つ。何をきっかけに動くか、何を受け渡すか、失敗したらどこへ戻すか
- 壊れ方は4つに決まっている。仕様の変更、件数の急増、二重実行、終わらない繰り返し。備えを1つずつ対で置く
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向く業務と向かない業務は、先に分けられる
最初にやるのは道具選びではなく、任せる業務の選別です。ここを飛ばすと、いちばん面倒な業務から手を付けてしまい、組み上がる前に力尽きます。選別の基準は2つだけです。どれくらいの頻度で発生するかと、1件あたりにどれだけ判断が要るかです。
頻度が高いほど、組む手間を回収できます。判断が少ないほど、条件で書き切れます。逆に、月に1回しか発生せず、毎回どう処理するか迷うような業務は、組む価値も組める見込みもありません。この2つの軸で並べると、社内の業務は自然に順番が付きます。
| 業務の性質 | 具体例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 頻度が高く、判断が少ない | 問い合わせの振り分け、名刺情報の整形、申込者への案内送信 | 最初に組む。効果がすぐ出る |
| 頻度が高く、判断が多い | 商談の優先度付け、記事のテーマ選定 | 判断の手前まで自動化し、判断は人に残す |
| 頻度が低く、判断が少ない | 年1回の名簿更新、展示会後の一括整理 | 手でやる。組む手間が回収できない |
| 頻度が低く、判断が多い | 予算配分の見直し、方針の転換 | 自動化しない。判断の材料を集める部分だけ手伝わせる |
表の3行目と4行目を切り捨てられるかどうかが分かれ目です。自動化できるかどうかではなく、回収できるかどうかで選びます。年に1回しか動かない処理を丁寧に組んでも、翌年にはつないだ先の仕様が変わっていて、結局は組み直しになります。
もう1つ、選別のときに見落とされやすい観点があります。その業務が、いまのやり方のままで正しいかです。手順が整理されていない業務をそのままつなぐと、間違った処理が高速で大量に流れるだけになります。人がやっていて迷う箇所は、つなぐ前に決めごとを書き出します。
頻度と判断の量で、4つの升目に置いてみる
前の節の表を、実際の業務名で埋めてみます。所要は30分ほどです。紙を4つに区切り、直近3か月に自分がやった作業を思いつくまま書き出して、升目に置いていきます。これだけで、最初に組むべき1本が決まります。
書き出すときのこつは、作業の名前ではなく手の動きで書くことです。「問い合わせ対応」ではなく「受信箱を開いて、内容を読んで、担当者に転送して、一覧に1行足す」と書く。手の動きで書くと、どこが判断でどこが単純作業かが分かれます。1つの作業の中に、両方が混ざっていることがほとんどです。
混ざっている場合は、作業ごと右上の升目に置くのではなく、動きの単位で分けます。読んで判断する部分は人、転送と1行足す部分は自動。業務まるごとを任せようとすると、どの業務も判断が多い側に見えてしまいます。手の動きまで割ると、任せられる部分が必ず見つかります。
並べ終えたら、左上の升目にあるものを所要時間の長い順に並べ、上から1つ選びます。選ぶのは1つだけです。2つ同時に始めると、どちらも中途半端なまま止まります。1本目を動かし切って初めて、2本目に必要な備えが分かります。
つなぐ前に決める3つのこと
組み始める前に、紙の上で決めることが3つあります。この3つを決めずに画面上でつなぎ始めると、途中で必ず手が止まります。
1つ目は、何をきっかけに動くかです。決まった時刻に動くのか、何かを受け取ったときに動くのか、一覧に行が追加されたときに動くのか、人が押したときだけ動くのか。最初の1本は、人が押したときだけ動く形にしておくと安全です。勝手に動かないので、間違っていても被害が出ません。
2つ目は、工程の間で何を受け渡すかです。項目の名前、その項目が数字なのか文章なのか日付なのか、空でも進んでよいのか。ここを決めずにつなぐと、空欄が来たときの動きが決まらず、静かにおかしな結果が出ます。空欄が来たら止まるのか、決めた既定値で進むのかを、項目ごとに書いておきます。
3つ目が、失敗したときの戻り先です。誰に、どの形で、何を添えて知らせるか。ここが最も抜けやすく、最も高くつきます。失敗の通知だけが飛んできても、何件目のどの処理が失敗したのか分からなければ、結局は最初からやり直すことになります。知らせるときは、処理した件の識別番号と、どの工程で止まったかを必ず添えます。
- きっかけは1本につき1つに絞る。複数のきっかけを1本に束ねると二重実行の原因になる
- 受け渡す項目は、必要なものだけにする。全部渡すと費用も情報漏れの範囲も増える
- 戻り先は、個人宛てではなく共有の場所にする。担当が休むと止まる
- 失敗の通知には、やり直すのに必要な情報だけを入れる。全文を貼らない
- 3つを決めた紙は、そのまま後の説明書になる。捨てずに残す
最初に組むと効きやすい5つの工程
1本目に何を選ぶか迷う場合のために、法人のマーケ業務で効きやすい工程を5つ挙げます。いずれも頻度が高く判断が少ない側にあり、失敗しても被害が小さいものです。
1つ目は、問い合わせフォームの受信から担当への振り分けまで。受け取った内容を読み分けて種別を付け、担当者に渡し、一覧に1行足す。読み分けの部分だけAIに任せ、振り分けと記録は条件で書きます。2つ目は、展示会や資料請求で集めた名刺情報の整形です。法人格の表記ゆれ、部署名の書き方、役職の表記。人がやると1件30秒かかる作業が、まとめて数分で終わります。
3つ目は、ウェビナー申込者への案内と、前日と当日のリマインド送信。時刻がきっかけになるので条件が単純です。4つ目は、週次のレポート集計。複数の場所にある数字を1枚にまとめ、前週との差が大きい項目に印を付けるところまでを自動にし、原因の考察は人が書きます。5つ目は、記事や投稿の下書きを決めた型で作らせ、人の確認待ちの状態に置くこと。5つとも、最後に人が見る関門を残したまま組める工程です。
この5つの共通点は、失敗しても社外に何も出ないことです。3つ目のリマインド送信だけは社外に出ますが、宛先が申込者に限られ、内容も定型なので被害が小さい。1本目は必ずこの性質のものを選びます。社外への送信を含む処理を1本目にすると、慎重になりすぎて完成しません。
逆に1本目に選んではいけないものも挙げておきます。見込み客への一斉配信、価格や在庫を含む案内、契約に関わる書類の作成。間違いが金額や信用に直結する処理は、備えの作り方を覚えてからにします。
1本目を組み立てる手順
決めごとがそろったら、実際に組みます。次の6工程で進めると、手戻りがほとんど出ません。1本目は半日から2日で動く形になります。ただし、後述する備えを入れると、その倍は見ておきます。
つなぐ前に、自分の手で1件を通してやります。何を開き、何を写し、何で判断したかをそのまま書き留める。この記録が、そのまま設計図になります。手でやらずに組み始めると、自分でも分かっていない判断が必ず紛れ込みます。
書き留めた記録を工程に割ります。5工程から8工程が目安です。そのうち、条件で書き切れない箇所に印を付けます。印が付いた箇所だけがAIに任せる候補で、それ以外は条件で書きます。
道具は、社内にエンジニアがいるか、データを社外に出せるか、いま使っている業務の仕組みに合わせられるかの3点で候補を2つに絞り、無料の枠で1本試作します。最初から契約しません。
空欄の項目、想定より長い文章、対象外の種別、同じ内容を2回。動く確認より、壊れる確認のほうが大事です。ここで見つかった壊れ方が、そのまま次の工程で入れる備えになります。
やり直しの回数と間隔、1回に処理する件数の上限、連続して失敗したときに止める条件、処理済みの目印。次の節で挙げる4つの壊れ方に、1つずつ対応させます。
いきなり全件に広げません。10件流して結果を全部見る。100件流して抜き取りで見る。件数を上げるたびに、上限に当たらないか、費用がどう伸びるかを確かめます。
6工程のうち、飛ばされやすいのは4番目です。動いた時点で完成したと感じてしまうためです。動く確認は10分で終わりますが、壊れる確認には2時間かかります。そしてこの2時間を惜しむと、後で夜中に起きることになります。
AIに任せる範囲と、道具に任せる範囲を分ける
つなぐ仕組みの中で、どこをAIにやらせるかは慎重に決めます。何でもAIに投げると、費用が跳ね上がり、しかも毎回結果が揺れます。切り分けの基準は単純で、条件で書けることは条件で書くです。
条件で書けるのは、日付の比較、数値の大小、決まった語が含まれるか、空欄かどうか、一覧に同じ行があるか。これらをAIに判定させると、費用がかかるうえに、たまに違う答えが返ってきます。同じ入力に同じ答えを返してほしい処理は、AIに任せてはいけません。
AIに向くのは、書き方が定まらない文章を読んで意味を取る処理です。問い合わせの本文から用件の種別を読み取る、名刺の肩書きから決裁に関わる立場かを推し量る、長い議事録から要点を抜く。いずれも、間違っても人が後から直せる範囲に限ります。
そのうえで、AIに任せる箇所には3つの制約を必ず付けます。選ばせる答えを一覧から選ぶ形に限定する、判断の根拠になった箇所を一緒に書かせる、どれにも当てはまらない場合は「その他」を選ばせて人に回す。自由に書かせるのではなく、決まった選択肢から選ばせるだけで、揺れは大きく減ります。
送信するか否か、公開するか否か、金額を確定するか否か。この種の後戻りできない判断は、どれだけ精度が上がってもAIに任せません。任せてよいのは、人が判断するための材料を整えるところまでです。
動き始めてから壊れる:仕様の変更と件数の急増
組んだ直後は問題なく動きます。壊れるのは、動き始めて数週間から数か月が経ってからです。原因は4つに絞れます。この節で前半の2つ、次の節で後半の2つを扱います。
1つ目は、つないだ先の仕様が変わることです。応答に含まれる項目の名前が変わる、新しい上限が設けられる、認証のやり方が更新される、提供そのものが終わる。厄介なのは、これらの多くが派手に落ちるのではなく、静かに間違った結果を返すようになる点です。項目名が変わっただけなら、空欄のまま処理が進み、空の案内メールが送られます。
備えは3つです。受け取った内容に必須の項目がそろっているかを、処理の入口で必ず確かめる。そろっていなければ止めて知らせる。そして、つないだ先からの変更のお知らせを受け取る窓口を、個人ではなく共有の場所にしておく。担当者の個人のメールに変更の通知が届く形だと、その人が異動した時点で誰も気づかなくなります。
2つ目は、件数が急に増えることです。展示会の直後、大型の資料公開の翌日、広告を出した週。普段は日に20件の処理が、ある日だけ800件になります。すると呼び出しの上限に当たり、途中の工程で失敗します。問題は止まることではなく、途中まで書き込まれた中途半端な記録が残ることです。一覧には行が足されているのに、案内は送られていない。
備えは、1回に処理する件数に上限を置くことです。1回50件までとし、残りは次の回に回す。あわせて、上限に当たったときに一定の間隔を空けてやり直す設定を入れます。やり直しは3回まで、間隔は回ごとに倍にするのが実務的な既定値です。それでも駄目な件は別の一覧に落とし、翌営業日に人が見ます。
動き始めてから壊れる:二重実行と、終わらない繰り返し
3つ目の原因は、同じ処理が二重に走ることです。原因は主に2つあります。1つは、きっかけが重なること。受信の通知が2回届く、同じ行の更新が2回検知される。もう1つは、定期実行が前の実行の終了前に始まることです。1回の処理に7分かかるのに、5分ごとに動く設定になっていると、必ず重なります。
被害は分かりやすい形で出ます。同じ相手に同じ案内が2通届く、一覧に同じ行が2つできる、費用が2倍かかる。社外に出る処理でこれが起きると、謝罪の連絡が必要になります。実務上、最も謝ることになるのがこの型です。
備えは2つを組み合わせます。1つは、処理済みの目印を残すこと。件ごとに一意の番号を決め、処理に成功したらその番号を控える表に書き、処理の入口で「その番号がすでにあるか」を確かめる。控えは24時間から72時間ほど残せば足ります。目印の番号は、受信の時刻ではなく、件そのものを特定できる値にします。もう1つは、定期実行の間隔を、1回の実行にかかる時間より長く取ることです。
4つ目は、終わらずに回り続けることです。ある一覧の行を更新すると、その更新が新しいきっかけになり、また同じ処理が動く。この輪ができると、費用が青天井に増えます。気づくのは、たいてい請求の通知か、上限に当たって全体が止まったときです。
備えは3つです。処理が自分の書き込みで再び動かないよう、きっかけの条件に「自動で書いた行は除く」を入れる。繰り返しの工程には必ず終了の条件と回数の上限を書く。そして、1日あたりの実行回数に上限を設け、超えたら自動で止める。上限を置かない自動化は、いつか必ず費用の事故を起こします。
止める仕組みを、動かす前に入れる
備えの話を、止める側からもう一度まとめます。自動化で最も危険なのは、間違った処理が止まらずに大量に流れることです。だから、動かす仕組みより先に止める仕組みを入れます。
止める仕組みは4段構えにします。第1段は件数の上限で、1回あたりと1日あたりの両方に置きます。第2段は連続失敗での停止で、続けて3回失敗したら全体を止めて知らせる。第3段は金額の上限で、決めた額を超えたら止める。第4段は人が押せる停止で、誰でも押せる場所に、押し方を書いた紙を貼っておきます。
見落とされやすいのが、何も起きていないことを見張る仕組みです。失敗の通知は届くのに、処理そのものが動かなくなった場合は何も届きません。沈黙も失敗の合図です。毎日20件前後を処理しているはずの仕組みが3件しか処理していない日は、失敗していなくても異常です。日次の件数を1行だけ記録し、想定を大きく下回ったら知らせる仕組みを入れます。
停止した後の手順も、紙に書いておきます。止めた人、止めた時刻、止めた理由、途中まで処理された件の範囲、手で処理し直す担当。この5項目を埋める用紙を1枚用意しておくだけで、復旧の速さがまったく変わります。
人が確認する関門は、3か所だけに置く
人の確認をどこに置くかは、自動化の成否を分けます。全件を人が見ると決めた自動化は、手でやるのと変わりません。逆に確認をまったく置かないと、間違いが社外に出ます。置く場所は3か所に絞ります。
1か所目は、社外に出る直前です。送信、公開、外部への提出。ここだけは、件数が増えても抜き取りではなく条件付きの全件確認にします。ただし確認する項目は絞ります。会社名と人名、金額と数量、日付。この3種類だけを元の資料と照らし、それ以外は照らさないと決めておくと、作った本人でなくても確認できます。
2か所目は、AIが迷った件です。用意した選択肢のどれにも当てはまらず「その他」を選んだ件、根拠として書いた箇所が短すぎる件。迷った件だけを人に回す形にすると、確認の件数は全体の1割前後に収まります。全件を見るのではなく、迷った件だけを見る。これが確認を続けられる形です。
3か所目は、決めた数値を超えた件です。金額が一定額を超える、送信先が一定件数を超える、通常と異なる時間帯に動いた。数字で機械的に切れる条件なので、判断の余地がなく、担当が代わっても運用が変わりません。
この3か所以外に確認を置きたくなったら、確認を増やすのではなく、その工程を自動化から外すことを検討します。確認が4か所5か所と増えた自動化は、遠からず使われなくなります。
費用はどこで膨らむか
費用が想定を超える理由は、たいてい数え方の単位を確かめていないことにあります。つなぐための道具は、課金の数え方が製品ごとに違います。1工程の実行ごとに数えるもの、1本の実行ごとに数えるもの、持ち点を消費する形のもの、やり取りの回数で数えるもの。
差は具体的な数字で出ます。10工程からなる自動化を月に1,000回動かす場合、1工程ごとに数える契約では1万回分を消費し、1本の実行ごとに数える契約では1,000回分で済みます。同じ処理でも、数え方の違いだけで10倍の差が付きます。チーム利用の月額は、2026年時点で公表されているもので1か月あたり35ドルから200ドル程度が目安ですが、この数え方の差のほうが総額に効きます。
| 費用が膨らむ場所 | 膨らむ理由 | 抑え方 |
|---|---|---|
| 数え方の単位 | 1工程ごとに数える契約で、工程数の多い自動化を量産する | 実際の工程数と月間の回数を掛けて、契約ごとに試算する |
| AIに渡す情報の量 | 毎回すべての資料を丸ごと渡している | 判定に使う項目だけを渡す。使わない列は外す |
| やり直しの回数 | 失敗のたびに最初の工程から流し直す作り | 失敗した工程から再開できるよう、区切りを入れる |
| 二重に走った分 | 同じきっかけで2回動き、費用も2倍になる | 処理済みの目印を残し、同じ目印の件は無視する |
| 自前で持つ場合の裏側 | ソフトが無料でも、サーバー代とAIの利用料と直す手間は残る | 3つを足した月額で、契約する場合と比べる |
最後の行は特に誤解が多い箇所です。自前で動かせば無料、という話をよく聞きますが、無料なのはソフトそのものだけです。動かす場所の費用、AIに払う利用料、そして止まったときに直す人の時間は、どの形でも必ずかかります。社内に直せる人がいない場合、この3つ目が最も高くつきます。
試算のこつは、1件あたりの費用を出しておくことです。月額ではなく1件あたりで見ると、件数が10倍になったときの姿が分かります。1件あたりの費用が、その作業を人がやったときの人件費を超えていないかを必ず確かめます。超えているなら、自動化する理由は速さだけになります。
作った人しか直せなくなる問題への備え
いちばん多い終わり方は、壊れることではなく、作った人がいなくなることです。ある調査会社の2026年の集計では、従業員の41%が正式な情報システム部門の管理の外でアプリや自動化を作っていると分類されています。作った本人以外は、中身も存在も知りません。
備えの中心は、1本につき1枚の説明書です。凝った資料は要りません。次の項目が埋まっていれば十分で、埋めるのに15分もかかりません。
- 何をきっかけに動くか、何時に動くか
- どの道具とどの道具をつないでいるか。順番はどうなっているか
- つなぐのに使っている認証は誰の名前で取ったものか、いつ切れるか
- 失敗したときに誰に知らせが行くか。その人が休んだときは誰か
- 止め方はどこを押すか。止めた後に手で処理する手順はどこにあるか
- 1か月あたりの実行回数と費用の目安
- この自動化の所有者は誰か。所有者が異動するときの引き継ぎ先は誰か
3番目の項目は特に重要です。認証を個人の名前で取っていると、その人が退職した瞬間に全部止まります。認証は必ず、部署や役割の単位で取り直します。これは動き始めてからでは直しにくいので、組む段階で情報システムの担当に相談しておきます。
あわせて、3か月ごとの棚卸しを決めておきます。動いている自動化の一覧を出し、それぞれ「まだ必要か」「先月ちゃんと動いたか」「所有者は在籍しているか」の3つを確かめる。不要になったものは、止めるのではなく消します。止めただけのものは、誰かが再開させて事故になります。
統制と権限は、前提として先に短く決める
組み立ての話に集中する前に、前提として決めておくべきことが2つあります。どちらも長い議論は要りませんが、抜けると後から全部やり直しになります。
1つ目は、どのデータを社外のAIに渡してよいかです。検証の段階で「とりあえず動かそう」と個人情報をそのまま外部のAIに送り、本番でもその設定のまま運用してしまう事故が報告されています。渡してよい項目の一覧を、組む前に1枚作ります。顧客名と連絡先は渡さない、社名と業種は渡してよい、といった粒度で十分です。
2つ目は、その自動化がどこまでの操作をできるかです。読むだけなのか、書き込むのか、送信するのか、消せるのか。必要な操作だけを許し、消す操作は最初から与えないのが基本です。認証の設定でここを絞っておけば、間違って組んでも消えることはありません。
この2つを決めたら、作った自動化を社内の台帳に載せます。載せる項目は、名前、所有者、扱うデータの種類、つないでいる先、動き始めた日。台帳に載っていない自動化は、情報システム部門から見れば存在しないもので、事故が起きたときに真っ先に問題になります。権限の設計そのものは別に詰める話ですが、この2つと台帳だけは先に済ませます。
うまくいかない自動化に共通する形
止まってしまう自動化には、共通した形があります。実際によく見かけるものを並べます。1つでも当てはまるなら、次の1本を組む前にそこを直したほうが早いです。
- 整理されていない業務を、そのままつなぐ:間違った処理が高速で大量に流れるだけになる
- いきなり全件に広げる:10件で見つかるはずの壊れ方を、800件流してから知ることになる
- 条件で書けることをAIに判定させる:費用がかかるうえ、同じ入力でたまに違う答えが返る
- 失敗したときの戻り先を決めていない:通知だけが飛び、何件目のどこで止まったか分からない
- 1日あたりの上限を置かない:繰り返しの輪ができたとき、請求で初めて気づく
- 全件を人が確認すると決める:手でやるのと変わらず、やがて誰も確認しなくなる
- 作った人の個人名で認証を取る:その人が異動した日に全部止まる
- 説明書を残さない:直せる人がいなくなり、動いているのに誰も触れない仕組みが残る
最後の2つは、動き始めて半年から1年で効いてきます。組んだ直後は本人が全部覚えているので、必要性を感じません。説明書を書く時間は、1本あたり15分です。書かなかった場合の作り直しは、1本あたり数日かかります。
よくある質問
プログラムをまったく書けなくても組めますか
最初の1本は書けなくても組めます。つなぐための道具は、画面上で工程を並べて条件を書く形になっているためです。ただし、工程が10を超えたあたりから、条件の書き方が実質的にプログラムに近づきます。7工程を超えたら、1本を2本に分けることを考えます。分けたほうが、直すときも費用の把握も楽になります。
無料の枠だけで運用を続けられますか
試作までは可能です。継続は難しいと考えてください。無料の枠は月あたりの実行回数が限られており、業務で使う頻度だとすぐ超えます。また、自前で動かす形にした場合も、動かす場所の費用とAIの利用料は別にかかります。無料なのはソフトの部分だけという前提で試算します。
情報システム部門には、いつ相談すればよいですか
組み始める前です。持っていくのは3点だけで足ります。どのデータをどこへ渡すか、どの操作を許す認証を使うか、止め方は誰が押せるか。動かしてから相談すると、止めて作り直しになります。この3点を先に合意しておけば、後の議論はほとんど起きません。
AIには、どこまで判断させてよいですか
書き方が定まらない文章を読んで意味を取るところまでです。送信するかどうか、公開するかどうか、金額を確定するかどうかは任せません。後戻りできない操作は、精度が何割になっても人が決めます。任せる場合も、選択肢を一覧で与え、根拠を書かせ、当てはまらない場合は人に回す形にします。
作った担当が異動することになりました。何を残せばよいですか
1本につき1枚の説明書と、認証の付け替えです。説明書には、きっかけ、つないだ先、認証の持ち主、失敗時の知らせ先、止め方、月あたりの費用を書きます。認証が個人名で取られている場合は、異動の前に必ず部署の単位で取り直します。ここを残さないと、動いているのに誰も触れない仕組みになります。
まとめ
プログラムを書かずにマーケ業務を自動化するとき、成否を分けるのは道具選びではありません。最初にやるのは業務の選別で、頻度が高く判断が少ないものだけを対象にします。次に、紙の上で3つを決めます。何をきっかけに動くか、工程の間で何を受け渡すか、失敗したらどこへ戻すか。組む手順は、手で1件やってみる、工程に割って判断の箇所に印を付ける、道具を選んで1件流す、わざと壊してみる、備えを入れる、件数を段階的に上げる、の6つです。動く確認は10分で終わりますが、壊れる確認には2時間かかります。この2時間を惜しむと後で夜中に起きることになります。壊れ方は4つに決まっています。つないだ先の仕様変更、件数の急増、二重実行、終わらない繰り返し。それぞれに、入口での項目確認、1回あたりの件数上限、処理済みの目印、実行回数の上限を対で置きます。AIに任せるのは書き方が定まらない文章を読む部分までで、送信や公開のように後戻りできない操作は人が決めます。人が確認する関門は、社外に出る直前、AIが迷った件、決めた数値を超えた件の3か所だけに絞ります。費用は、課金の数え方の違いだけで10倍変わるので、1件あたりの費用を出して人件費と比べます。そして最後に、1本につき1枚の説明書と、部署の単位で取り直した認証を残します。まずは直近3か月にやった作業を紙に書き出し、頻度と判断の量で4つの升目に置いてみてください。左上に落ちた作業のうち、いちばん時間を食っているものが1本目です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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