エレベーターピッチを30秒で作る5工程|伝わる型をAIで磨く

エレベーターピッチを30秒で作る5工程|伝わる型をAIで磨く

「短くまとめようとすると、結局なにをしている会社か分からなくなるんです」「展示会のたびに違う説明をしてしまって、あとで名刺を見ても思い出してもらえません」——短い自己紹介を作ろうとした人が、途中で口にする2点です。ここでよくある誤解は、短くすることを長い説明から言葉を削る作業だと考えることです。削る作業ではありません。本当は、何を残すかを先に決めて、残したものだけで組み直す作業です。この記事では、残す要素の決め方から、30秒版と15秒版と7秒版の作り分け、生成AIをどこまで使ってよいかまでを、5つの工程に分けて整理します。


カメ先生カメ先生

「30秒で説明してください」と言われて詰まる人は多いけれど、詰まる原因は話す技術ではないことがほとんどなんだ。手元にある長い説明を、その場で縮めようとしているから詰まる。


カメ子カメ子

縮める作業を、話しながらやっているということですか。


カメ先生カメ先生

そういうこと。あらかじめ短い版を作っておけば、その場でやるのは選ぶことだけになる。作る作業と話す作業を、同じ時間に押し込まないほうがいい。


カメ子カメ子

30秒の説明は、その場で作るものではなく、先に作っておくものなのですね。


この記事のポイント
  • 短くすることは削ることではない。残す要素を先に4つ決めて、その4つだけで組み直す
  • 30秒版だけを作らない。15秒版と7秒版まで作り、場面で使い分ける。核は3つとも同じにする
  • 言い換えを数多く出させるのはAIに任せてよい。どれが通じるかの判定は、実際に人に聞いて決める

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目次

「短くする」は、長い説明から言葉を削る作業ではない

会社説明を30秒にと言われたとき、多くの人はすでに手元にある資料の説明文を縮めにかかります。3分の説明から接続詞を削り、修飾を落とし、事例を1つに減らす。ところが、こうして削っていくと最後に残るのは「企業の課題解決を支援しています」のような、どの会社に当てはめても成り立つ一文になります。削る作業は、大事なものを残すのではなく、共通項だけを残すからです。削れば削るほど、他社との違いが先に消えていきます。

発想を逆にします。長い説明を縮めるのではなく、先に残す要素を4つ決めて、その4つだけで新しく組み直す。削る作業では「どれも大事で削れない」と言って手が止まりますが、残す作業なら、判断の対象がこの相手にとって要るのはどれかに変わるので決められます。同じ30秒でも、削って作った30秒と、組み直した30秒では、聞いた相手の手元に残るものが変わります。

見分け方は簡単で、できあがった説明から自社名を外して読んでみることです。外しても意味が通ってしまうなら、それは削って作った説明です。自社名を外すと意味が通らなくなるところまで具体を入れて、はじめて相手が判断できる材料になります。ここでいう判断とは、話を続けるか、今日は名刺交換だけにするかを、相手がその場で決められるという意味です。決められる材料を渡すことが、30秒の役割です。

この言葉が生まれた経緯が、30秒という長さの意味を教えている

語源としてよく紹介されるのは、1990年代の話です。ある雑誌の編集者が、いつも動き回っている編集長をつかまえられず、移動中のエレベーターに同乗して企画を持ちかけていた。その様子を身近にいた記者がエレベーターピッチと呼んだ、という逸話です。さらにさかのぼると、1972年に出た経営の書籍に、経営層と偶然出会ったときに備えて短い説明を用意しておくという趣旨の助言があったとも言われます。どちらの話にも共通しているのは、長さを決めたのが話し手ではないという点です。

30秒という長さは、話し手がこれくらいで話したいと決めた長さではありません。相手の移動が終わるまで、という相手側の都合で決まった長さです。ここが分かると、目的の置き方が変わります。30秒で契約を取るのは無理ですし、そもそも狙っていません。狙うのは、続きを聞きたいと相手に思わせること、それだけです。海外の解説でも、目的は売ることではなく会話の続きを得ることだ、という整理がされています。

目的を続きを作ることに置くと、入れる情報の基準が自動的に決まります。相手が続きを聞くかどうかを判断するために要る情報だけを入れ、それ以外は入れない。実績の一覧も、創業からの歩みも、機能の網羅も、続きの場で話せばよいものです。30秒の中で完結させようとするほど、続きが起きなくなるという逆転が起きます。全部を入れた説明は、聞き終えた相手に質問が残らないからです。

30秒は日本語で何字か。目安の幅と、目安の使い方

目安として、話す速さを1分あたり300字とすると、30秒は150字前後になります。別の解説では、30秒で話せるのは200字から250字程度という数字が示されています。倍近い開きがあるように見えますが、これは前提にしている速さが違うだけで、どちらかが誤りというわけではありません。間を取るか取らないか、専門的な語に短い言い換えを添えるかどうかで、同じ秒数に入る字数はこれくらい動きます。字数の目安は幅で持っておくのが実務的です。

実務では、字数を先に決めないほうがうまくいきます。先に内容を4要素で組み、できた原稿を声に出して時計で測る。長ければ削るのではなく、要素を1つ落とす。削るのは語ではなく要素です。語を削ると意味が薄まって全体がぼやけますが、要素を1つ落とすと、残った要素の輪郭がむしろはっきりします。落とした要素は捨てるのではなく、続きの場で話す材料として別に置いておきます。

  • 字数から作らない。4つの要素で組んでから、声に出して測る
  • 長かったときは語を削らず、要素を1つ落とす
  • 測るのは座って黙読ではなく、立って、本番と同じ速さで
  • 原稿が暗記できない分量なら、それは本番で使えない分量

目安を持っておく価値は、じつは別のところにあります。150字なら、原稿は5行ほどです。5行なら暗記できます。覚えられない長さの原稿は、本番では使われないので、字数の目安は、良し悪しを測るためではなく、暗記できる分量に収まっているかを確かめるために使います。紙を見ながらでないと言えない説明は、展示会でも商談の冒頭でも出番がありません。

残す4要素と、その並べ方

残す要素は4つです。誰の、どんな困りごとを、どうやって、なぜうちが。この4つが入っていれば、聞いた相手は続きを聞くかどうかを判断できます。逆に、この4つのどれかが欠けると、判断できないまま話が終わります。よくあるのは、どうやってと、なぜうちがの2つだけで組まれた説明です。手段と自慢はあるのに、誰のどんな困りごとに効くのかが無いので、相手は自分に関係がある話かどうかを最後まで決められません。

  • 誰の:業種と規模と部署まで書く。「企業の」ではなく「従業員300人以上の製造業で、営業と広報を兼ねている部署の」
  • どんな困りごとを:相手が実際に口にする言い方で書く。「情報発信の課題」ではなく「毎月の展示会のあとに、名刺が誰のものか分からなくなる」
  • どうやって:手段を1つに絞る。2つ並べると、相手はどちらが主なのか分からなくなる
  • なぜうちが:他社が言いにくいことを書く。件数、期間、対応できる範囲の狭さでもよい

並べ方は、困りごとから始めます。誰のという情報は、困りごとの前に短く添えるだけで足ります。自社が何者かから始めると、相手は自分に関係のある話かどうかを判断する材料を持たないまま、社名と事業名を聞くことになります。困りごとから始めると、相手は最初の1文で自分の話かどうかを決められる。関係があると判断した相手だけが、その後の手段の説明を自分ごととして聞きます。

4つ目のなぜうちがは、最後に置きます。ここを前に持ってくると、聞き手が困りごとを自分のものだと認める前に自慢が始まる形になり、身構えられます。なお、なぜうちがに書く内容は、強さである必要はありません。対応できる範囲が狭いことも、選ばれる理由になります。この業種のこの部署にだけ絞っている、という言い方は、当てはまる相手には強く効きます。

5つの工程を通しで見る

ここから、実際に作る手順を5つの工程に分けます。全体で2時間ほど、うち机に向かうのは1時間くらいの作業です。一度作れば、次からは相手の入れ替えだけで済みます。工程の順番は入れ替えないでください。特に、書き出す前に短くしようとすると、材料が足りないまま形だけが整い、どこかで見た表現の寄せ集めになります。

STEP1
長い説明を、一度全部書き出す

時間を気にせず、自社が誰に何をしているかを書き出します。5分で、原稿用紙2枚ぶんが目安。短くするのは次の工程です。

STEP2
相手ごとに、要る要素を選ぶ

誰に向けた30秒かを1つ決めます。決める人か、使う人か、止める人か、買う立場ではない相手か。決めずに作ると誰にも当たりません。

STEP3
30秒版と15秒版と7秒版の3段に削る

7秒版から積み上げます。7秒版に手段を足すと15秒版、そこに理由と次の一歩を足すと30秒版になります。

STEP4
声に出して、詰まる箇所を直す

立って、本番と同じ速さで読み上げます。詰まる箇所は、修飾が長い、社内語が入っている、根拠のない断定がある、のどれかです。

STEP5
場面ごとに使い分け、書く場面にも同じ核を通す

話す場面だけでなく、資料の表紙、サイトの冒頭、署名、ブースの一言にも同じ核を通します。置き場所は1か所に決めます。

この5工程のうち、生成AIが手伝えるのは工程1の一部と工程3、そして工程4の直しの候補出しです。工程2の相手を決める判断と、最終的にどれを使うかの判定は人がやる、という線を先に引いておくと、後の作業が迷いません。線を引かずに始めると、出てきた案の中から選ぶ基準まで曖昧になります。

工程1:長い説明を、一度全部書き出す

最初にやるのは、短くすることではなく長くすることです。自社が何をしていて、誰に、どう役立っているのかを、時間を気にせず書き出します。目安は5分、量は原稿用紙2枚ぶんくらい。ここで手が止まる場合、短くできない原因は編集の技術ではなく、材料が足りていないことにあります。材料が足りない状態でいきなり30秒版を作ると、どの会社でも言えることの寄せ集めになります。

書き出す材料は、頭の中から探さず、記録から拾います。直近で受注できた3件について、相手が最後にそれならと言った理由。断られた3件について、相手が挙げた理由。この6件を並べるだけで、自社が実際に選ばれている理由と、選ばれていない理由が言葉として出てきます。会社案内の文言からではなく、商談の記録から書き出すのが要点です。会社案内から拾うと、すでに一般化された言葉しか手に入りません。

書き出したものは、あとで捨てません。この長い版は、相手ごとに要素を選び直すときの元になりますし、30秒版に入らなかった要素は、そのまま続きの場で話す材料になります。長い版を残しておくと、30秒版で何を落としたかまで残るので、次に見直すときに一から書き直さずに済みます。半年後の見直しにかかる時間が、体感で半分以下になります。

工程2:相手ごとに、要る要素を選ぶ

次に、誰に向けた30秒かを1つ決めます。決めずに作ると、誰にでも当たる説明、つまり誰にも刺さらない説明になります。法人向けの場面なら、相手は大きく4種類に分かれます。決める人、使う人、止める人、そして採用の候補者や取引先のような、買う立場ではない相手です。この4つは、聞きたいことがそれぞれ違うので、同じ4要素でも厚くする場所が変わります。

決める人は、投資の判断材料を聞きたい。使う人は、自分の手元の作業がどう変わるかを聞きたい。止める人は、危ない点がどう処理されているかを聞きたい。買う立場ではない相手は、この会社が何をしている会社かという輪郭を知りたい。4要素の並びは変えず、どこを厚くするかだけを変えるのが、作り分けの原則です。並びまで変えると、同じ会社の説明として認識されなくなります。

実務では、全部を一度に作ろうとせず、いちばん多く会う相手の1つから作ります。展示会が主戦場なら、名刺交換の直後に立っている相手。商談の冒頭が主戦場なら、その場に必ずいる役職。1つ作ると、2つ目からは要素の入れ替えだけで済むので、作る時間は目に見えて短くなります。最初の1本は時間をかけ、2本目からは30分で作るという配分にすると、途中で止まりません。

工程3:30秒版と15秒版と7秒版の3段に削る

30秒版だけを作っても、実際の場面ではほとんど使えません。展示会の通路で立ち止まった相手に30秒は長すぎますし、名刺交換の直後に確保できるのは7秒ほどです。逆に、商談の冒頭で自己紹介を求められたときに7秒で終えると、相手は次に何を聞けばよいか分からなくなります。要るのは1本の完成版ではなく、3段の使い分けです。

長さの目安残す要素使う場面
7秒版日本語で30字ほど誰の、どんな困りごと名刺交換の直後、立ち話の入口
15秒版日本語で70字ほど誰の、どんな困りごと、どうやって展示会の通路、社内での紹介
30秒版日本語で150字ほど4要素すべてと、次の一歩の提案商談の冒頭、面談での自己紹介

作る順番は、30秒版から削るのではなく、7秒版から積み上げるほうが速いです。7秒版は、誰のどんな困りごとだけ。ここにどうやってを足すと15秒版になり、なぜうちがと次の一歩を足すと30秒版になります。積み上げで作ると、3つの版の核が自動的に同じになるので、場面をまたいでも言っていることがぶれません。削って作ると、削り方が場面ごとに違ってしまい、3本が別の説明になります。

3段を作ったら、それぞれ別々に覚えます。30秒版を途中で止めたものが15秒版、ではありません。途中で止めると必ず言い切らない形で終わり、相手には言いよどんだように聞こえます。短い版ほど、言い切って終われる形にしておく。7秒版は、最後の助詞まで決めておいて構いません。決めておくと、緊張する場面でも出てきます。

工程4:声に出して、詰まる箇所を直す

原稿ができたら、必ず立って声に出します。座って黙読していると、書き言葉のままの文が通ってしまいます。声に出すと、詰まる箇所がはっきり出ます。詰まるのはたいてい3か所で、修飾が長くて主語と述語が離れている箇所、社内でしか使わない言葉、そして自分でも根拠を説明できない断定です。この3つは、聞き手の側でも同じ位置で引っかかっています。

直し方はそれぞれ違います。修飾が長い箇所は、文を2つに割ります。社内語は、社外の人が使う言い方に置き換えます。根拠を説明できない断定は、削るか、範囲を狭める。たとえば多くの企業で成果が出ていますという言い方は、聞き返されたときに答えられません。直近1年で支援した中では、のように範囲を付けると、言い切れる形になります。範囲を付けた言い方のほうが、聞き手には誠実に響きます。

練習の回数は、多ければよいわけではありません。同じ原稿を何十回も読むと、読み上げは滑らかになりますが、相手の反応を見なくなります。目安として、詰まらずに言えるようになったらそこで止め、あとは実際の場面で試します。練習で仕上げるのではなく、実際の場面で直すほうが、直りが速い。相手が首をかしげた箇所は、その日のうちにメモしておきます。

生成AIの使いどころは、言い換えを数で出させるところ

ここまでの工程で、生成AIが効くのは限られた場所です。効くのは、同じ内容を別の言い方に変える作業です。人が言い換えを考えると、3つか4つで頭打ちになり、しかもどれも似た構文になります。同じ内容を20通りの言い方で出させると、自分では選ばないはずの語順や動詞の選び方が混ざってきます。その中から選ぶのであれば、判断の材料が増えます。広げる側だけを預ける、という使い方です。

具体的な頼み方は3つあります。1つ目は、原稿を渡して、意味を変えずに20通りの言い換えを出させること。2つ目は、原稿の中の専門的な語を、その業界の外の人が日常で使う言葉に置き換えさせること。3つ目は、相手の職種を指定して、その職種の関心に寄せて言い直させること。どれも材料を増やす頼み方であって、正解を決めさせる頼み方ではありません。

頼むときに一緒に渡すものがあります。工程1で書き出した長い版です。長い版を渡さずに社名と業種だけを渡すと、返ってくるのは業界の一般論になります。自社の記録を渡した分だけ、返ってくる言い換えが具体になるという関係があるので、渡す材料をけちらないほうが結果がよくなります。受注理由と失注理由の6件を貼り付けるだけでも、返ってくる文の具体性が変わります。

どれが通じるかの判定は、AIにさせない

20通り出てきたあと、どれがよいかをそのまま選ばせたくなります。ここは我慢したほうがよい場所です。AIが選ぶのは、文章として整っているもの、一般的に評価されやすい構文のものです。実際に通じるかどうかは、その言葉を聞く相手が誰かによって変わるので、文面の整い方とは別の話になります。整っていることと、通じることは別だと考えてください。

判定は人に聞いて決めます。手順は単純で、候補を3つに絞り、社内の別部署の人と、できれば社外の知人に順番に読み上げます。聞くのは感想ではありません。いま聞いた話で、この会社は誰の何を助ける会社だと思ったかという1問だけです。感想を聞くと、良かったですという返事しか返ってこないので、判定の材料になりません。

5人に聞けば、たいてい傾向が見えます。5人のうち3人が同じ答え方をしたら、その版は使えます。答えがばらけたときは、原因はたいてい、どうやっての部分が抽象的なことにあります。通じたかどうかは、言い換えの巧拙ではなく、相手が言い直せるかで判る。相手が自分の言葉で言い直せた説明は、その場にいない人にも伝わっていきます。伝わっていく説明が、結果として覚えられる説明です。

相手で変えるところと、絶対に変えないところ

相手に合わせて変えるのは、4要素のうち、どんな困りごとをと、どうやっての粒度です。決める人には、困りごとを事業の言葉で言います。使う人には、同じ困りごとを手元の作業の言葉で言います。同じ事象を指していても、相手が自分の問題として受け取れる語が違うからです。粒度を変えるだけなので、原稿を作り直す必要はありません。

相手厚くする要素薄くしてよい要素避ける言い方
決める人どんな困りごと(事業の言葉で)手順の細かさ機能名の列挙
使う人どうやって(手元の作業の言葉で)投資の判断材料経営課題の抽象論
止める人なぜうちが(実績と体制)将来の構想何でもできますという断定
買う立場ではない相手誰の(会社の輪郭)価格と契約の話社内でしか通じない略語

変えないのは、誰のと、なぜうちがの2つです。ここを相手ごとに変えると、社内で説明が食い違います。展示会では中堅企業向けと言い、商談では大企業向けと言っていると、両方を聞いた相手は判断できなくなります。核が同じであることは、覚えてもらうための条件です。人が誰かに紹介するとき、覚えているのは核の部分だけだからです。

変えてよいところと変えないところを紙に書いて分けておくと、作り直すたびに核がずれることを防げます。作り直しは半年に1回で十分です。そのときも、誰のを書き換えるかどうかは、事業の対象そのものを変えるかどうかの判断になります。言い回しの更新と、対象の変更を、同じ作業にしない。前者は担当者の判断で、後者は事業の判断です。

数字を入れるときに、いちばん危ないこと

30秒の説明に数字を入れると、聞き手の受け取りは確かに変わります。ただ、危ないのは数字そのものではなく、比較の対象を言わずに数字だけを置くことです。作業時間が4割減りましたという一文は、何と比べて4割なのか、何社での話なのか、どの作業のことなのかが抜けていると、聞いた相手は確かめようがありません。確かめようのない数字は、その場では効いても、次の場で崩れます

参考になるのが、よく引かれる、人の集中力は8秒しかないという数字です。この数字は、出どころをたどっても査読された研究には行き着かず、ある統計まとめサイトの数値が引用元として使われていたことが指摘されています。広く知られている数字ほど、出どころが確かめられていないことがあるという例です。自社の説明に他人の数字を借りるときは、この危うさをそのまま引き受けることになります。

実務での線引きは3つです。自社で数えた数字だけを使う。数えた範囲を必ず添える。相手が同じ数え方をしていない可能性を、聞かれたら説明できるようにしておく。数字は、聞かれたときに数え方を説明できる範囲でだけ使う。説明できない数字は、入れないほうが強い説明になります。数字を外した代わりに、具体的な場面を1つ足すほうが、相手の記憶には残ります。

工程5:場面ごとに使い分け、書く場面にも同じ核を通す

3段の版ができたら、置き場所を決めます。7秒版は名刺交換の直後と展示会の通路。15秒版は社内での紹介と電話の冒頭。30秒版は商談の冒頭と面談での自己紹介。ここまでは話す場面ですが、同じ核は書く場面にも通します。話す場面だけで運用していると、書かれたものとの間に食い違いが生まれます。

通す先は主に4つあります。提案資料の表紙の下に置く1行、サイトの冒頭に置く1文、メールの署名の下の1行、展示会のブースに立てる短い言葉。この4つが別々に作られていると、同じ会社の説明として認識されません。作る人が違うことが原因なので、核となる7秒版を1つ決めて、そこから派生させる形にします。派生のときに変えてよいのは語尾と長さだけです。

運用としては、7秒版を社内の誰でも見られる場所に1行だけ置き、更新したら日付を添えます。核を置く場所は1か所に決めて、そこだけを更新する。複数の場所に写しがあると、更新が行き渡らず、古い言い方が資料の中に残り続けます。半年後に資料を作り直すとき、どれが最新かを探す時間がなくなるだけでも効果があります。

やりがちな失敗と、その直し方

短い説明で崩れる型は、だいたい決まっています。並べると4つで、どれも直し方があります。自分の原稿がどれに当たるかは、声に出して読んで、聞いてくれた人に最初の1文で何の話だと思ったかを聞けば分かります。

  • 自社の歴史から話す:創業年や沿革は、相手が続きを聞くと決めたあとの材料。冒頭に置くと、相手は自分に関係のある話かどうかを判断できないまま聞き続けることになる
  • 業界用語で埋める:社内で通じる略語や造語は、相手には意味の分からない音として流れる。1つ入るごとに、相手は前の文の理解を止めて考えることになる
  • 全部盛りにして長くなる:要素を落とせないのは、相手を決めていないから。相手を1つに決めれば、落とす要素は自動的に決まる
  • 覚えられない原稿を作る:紙を見ながらでないと言えない説明は、実際の場面では使われない。暗記できる分量まで要素を減らす

4つのうち、いちばん多いのは1つ目です。自社の歴史から話すのは、話し手にとっていちばん間違いのない順番だからです。年号と事業名は事実なので、言い間違えません。ところが聞き手の側では、最初の10秒で自分に関係があるかどうかを判断しているので、そこに関係の手がかりがないと、以降の情報が頭に入らなくなります。直し方は単純で、1文目を困りごとに差し替えるだけです。

4つ目の、覚えられないという失敗は、本人が気づきにくいのが厄介です。机の上では言えるのに、立って歩きながらだと出てこない。展示会の通路や、廊下ですれ違ったときは、まさにその状態です。判定は簡単で、原稿を見ずに、歩きながら3回続けて言えるかどうか。言えなければ、要素を1つ落とします。落としても核が残っていれば、説明としては成立します。

よくある質問

30秒版は、業種や職種ごとに何本作ればよいですか

最初は1本で構いません。いちばん多く会う相手を1つ決めて、その相手向けに作ります。2本目以降は、要素の粒度を変えるだけなので短時間で作れます。目安として、日常的に会う相手が3種類を超えるなら3本まで。それ以上に増やすと、どれを使うかを本番で迷うことになり、結局どれも出てこなくなります。増やすより、核を1つに保つほうが効果があります。

生成AIに作らせた原稿を、そのまま使ってはいけませんか

そのまま使うことは避けたほうがよいと考えています。理由は品質ではなく、根拠の所在です。返ってきた文には、自社の記録から出ていない表現が混ざることがあり、聞き返されたときに答えられません。使うのであれば、1文ずつ、その根拠が自社の記録のどこにあるかを確かめてください。確かめられない文は、その場で外します。この確認は、20通りのうち3通りに絞ったあとにやれば5分で終わります。

実績や導入企業の名前は、30秒の中に入れるべきですか

入れてよいかどうかは、公表の許可を得ているかで決まります。許可があるなら、1社だけ挙げるのが有効です。複数並べると、聞き手はどれが自分に近い事例かを判断できません。許可がない場合は、業種と規模で言い換えます。誰でも知っている社名を1つ挙げるより、相手と同じ業種の同じ規模の会社を挙げるほうが、続きが起きやすいという実感があります。

作った説明は、どのくらいの頻度で見直せばよいですか

半年に1回で十分です。それより短い間隔で作り直すと、言い回しだけが変わって核がずれていきます。ただし、事業の対象を変えたとき、主力の提供内容を変えたとき、そして相手から同じ聞き返しを3回受けたときは、時期にかかわらず見直します。3回目の聞き返しは、その箇所が通じていないという明確な合図なので、待たずに直してください。

まとめ

エレベーターピッチが毎回違ってしまうのは、話す技術の問題ではなく、短い版をその場で作っているからです。長い説明を削るのをやめ、誰の、どんな困りごとを、どうやって、なぜうちがの4要素だけで組み直す。7秒版から積み上げて3段を作り、立って声に出して詰まる箇所を直す。生成AIには言い換えを数多く出させ、どれが通じるかは人に聞いて決める。核を1か所に置き、資料の表紙にもサイトの冒頭にも同じ核を通す。この5工程を一度通せば、次からは相手の入れ替えだけで済みます。作ることより、同じ核を使い続けることのほうが、結果に効いてきます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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