Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 作業手順書を用語集付きで多言語に翻訳する

作業手順書を用語集付きで多言語に翻訳する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

日本語の作業手順書を入力に、社内で決めた対訳用語集を適用して、ベトナム語・インドネシア語・英語の版を作る構成です。設備名、工程名、治具の呼び方といった社内用語が、毎回同じ訳語になります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Make/Power Automate
対象業界
宿泊/建設/製造/飲食
対象部門
品質管理/生産
対象業務
台帳・マスタ管理/書類作成
主な課題
引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
翻訳
主な効果
品質標準化/工数削減/教育コスト削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
最小構成
費用感
既存ツールのみ(小)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
75%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 生産技術が日本語の手順書を新規作成、または改訂する
  2. 品質管理が内容を承認する
  3. 翻訳会社に見積を依頼し、発注する(社内で訳す場合は、日本語が分かるスタッフに頼む)
  4. 訳文が届く
  5. 設備名や工程名の訳語が過去の版と合っているかを確認する
  6. 合っていない箇所を指摘し、修正を依頼する
  7. 訳文を Word のレイアウトに流し込み、写真と図の位置を直す
  8. PDFにして現場に掲示し、共有フォルダに保存する
導入後(After)
  1. 生産技術が日本語の手順書を作成、または改訂する
  2. 品質管理が日本語版を承認する
  3. 自動手順書の本文を、見出し・手順・注意書きの単位に分けて取り出す
  4. 自動対訳用語集と「訳さない語のリスト」を添えて、3言語分の訳文を作る
  5. 自動数値・型番・単位・安全表示が原文と一致しているかを機械的に照合する
  6. 自動用語集にない社内用語が本文に出てきた場合、一覧にして報告する
  7. 各言語のリーダーが訳文を確認し、必要なら直す
  8. 直した訳語を用語集に登録する
  9. 自動訳文を原本のレイアウトに流し込み、対応する原文の版を台帳に記録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 生産技術が日本語の手順書を新規作成、または改訂する
  2. 品質管理が内容を承認する
  3. 翻訳会社に見積を依頼し、発注する(社内で訳す場合は、日本語が分かるスタッフに頼む)
  4. 訳文が届く
  5. 設備名や工程名の訳語が過去の版と合っているかを確認する
  6. 合っていない箇所を指摘し、修正を依頼する
  7. 訳文を Word のレイアウトに流し込み、写真と図の位置を直す
  8. PDFにして現場に掲示し、共有フォルダに保存する

問題は4つあります。

(a)訳語がばらつく。 同じ設備が「攪拌機」「ミキサー」「Máy trộn」「Mixer」と、版や依頼先ごとに違う言葉で書かれます。現場では別の機械だと思われます。

(b)改訂に訳文が追いつかない。 日本語版だけ改訂され、多言語版が古いまま掲示されていることがあります。どの訳文がどの版に対応しているかを管理していないためです。

(c)レイアウトの作り直しに時間がかかる。 ベトナム語とインドネシア語は日本語より文字数が増えるため、枠から溢れます。写真の位置も動きます。

(d)数値や型番が書き換わることがある。 翻訳の過程で全角と半角が変わる、桁が落ちる、単位が変換されるといった事故が起きます。手順書では致命的です。

  1. 生産技術が日本語の手順書を作成、または改訂する
  2. 品質管理が日本語版を承認する
  3. 【自動】 手順書の本文を、見出し・手順・注意書きの単位に分けて取り出す
  4. 【自動】 対訳用語集と「訳さない語のリスト」を添えて、3言語分の訳文を作る
  5. 【自動】 数値・型番・単位・安全表示が原文と一致しているかを機械的に照合する
  6. 【自動】 用語集にない社内用語が本文に出てきた場合、一覧にして報告する
  7. 【人】 各言語のリーダーが訳文を確認し、必要なら直す
  8. 【人】 直した訳語を用語集に登録する
  9. 【自動】 訳文を原本のレイアウトに流し込み、対応する原文の版を台帳に記録する

自動化されるのは「訳す」「照合する」「流し込む」「記録する」の4つです。現場のリーダーによる確認は残します。

02今回想定するシステム構成

構成図
日本語の手順書(Word)
   │
   ▼【人】品質管理が日本語版を承認
   │
   ▼
本文の切り出し(見出し/手順/注意書きの単位)
   │
   ├──◀── 対訳用語集(スプレッドシート)
   │        社内用語 × 3言語 + 訳さない語のリスト
   │
   ▼
生成AI ── 用語集を適用して3言語に翻訳
   │
   ▼
機械照合 ── 数値・型番・単位・安全表示が原文と一致するか
   │
   ▼【人】各言語のリーダーが確認・修正 → 用語集へ登録
   │
   ▼
Word のレイアウトへ流し込み → PDF → 現場掲示
   │
   ▼
版管理台帳(原文の版と訳文の版を対応づける)
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
ワークフローGoogle Apps Script(半自動化する場合)Power Automate、Make
用語集の置き場所Google スプレッドシートExcel、SharePoint リスト
翻訳専用サービス(代替)DeepL API の多言語用語集Google Cloud Translation Advanced の用語集
文書の保管共有フォルダSharePoint、Box

用語集の機能は、翻訳専用サービス側にもあります。 DeepL API の v3 用語集エンドポイントは編集可能で多言語に対応しており、Cloud Translation Advanced には「同義語セット」という多言語を1行で持つ形式があります。生成AIを使う理由は、用語集の適用に加えて「訳さない語を残す」「文体を統一する」「用語集にない語を報告させる」といった指示を同時に出せる点です。単純に訳文の質だけを比べるなら、翻訳専用サービスのほうが速く安い場合があります。両方を同じ手順書で試してから決めてください。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

日本語版が承認されたことが起点です。作成した時点ではなく、承認された時点にします。承認前の原稿を訳すと、訳文の作り直しが発生します。

最小構成では、承認後に担当者が手作業で処理を始めます。半自動化する場合は、承認済みフォルダにファイルが置かれたことをきっかけにします。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
日本語の手順書見出し、手順の番号付き文、注意書き、図の説明共有フォルダの Word ファイル
対訳用語集社内用語と3言語の訳語、品詞、使ってはいけない訳語スプレッドシート
訳さない語のリスト型番、装置の銘板表記、法定表示、ピクトグラムの説明スプレッドシート
文体ルール命令形で書く、1文を短く、敬語を使わない等スプレッドシート
過去の訳文同じ手順書の前の版共有フォルダ
Step3

データの取得方法を決める

手順書: Word の本文を段落単位で取り出します。表や図の中の文字は取り出しにくいため、最初の構成では図中の文字を対象外にし、図は原文のまま使う割り切りをおすすめします。

用語集: スプレッドシートの1行を「日本語/ベトナム語/インドネシア語/英語/品詞/備考」とします。翻訳専用サービスを使う場合は、それぞれの仕様に合わせて書き出します。

サービス形式と制限
DeepL APITSV(既定)またはCSV。1つの用語集は最大10 MiB、1件の原語・訳語はそれぞれ1,024 UTF-8バイトまで。1アカウントあたり用語集1,000件まで。タイ語を除く対応言語で作成可能
Cloud Translation Advanced同義語セットはCSVのみ。原語列と訳語列を含む2列以上(説明列と品詞列を追加可能)。用語の合計は10,485,760 UTF-8バイトまで、1語は1,024 UTF-8バイト未満

社内用語の初期登録: 既存の手順書420本から、頻出する名詞を機械的に抜き出し、上位200語を先に登録します。全部揃えてから始める必要はありません。 運用しながら、報告された未登録語を足していきます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 単位と数値の書式を揃える … 全角の数字を半角に、単位の表記を統一します。ここが揺れていると、後段の照合が誤検知だらけになります
  2. 訳さない語をマークする … 型番、装置の銘板表記、法定表示を本文中で特定し、置換用の記号([[KEEP:SUS304]] のような形)に置き換えます。訳文を受け取ったあとに元へ戻します
  3. 長い手順書を分割する … 1回のリクエストで扱う量を、章単位に区切ります
  4. 1文が長すぎる箇所を直す … 日本語で60文字を超える手順は、訳すと読みにくくなります。原文を直すほうが早いです。 これは翻訳の準備ではなく、手順書の品質改善そのものです
Step5

AIに処理させる

処理内容
用語集の適用社内用語を、指定した訳語に固定して訳す
訳さない語の保持マークした箇所を、記号のまま出力させる
文体の統一命令形、短文、専門用語を避ける、といった規則に従わせる
未登録語の報告用語集にない社内用語らしき語を一覧で返させる
曖昧な原文の指摘主語が省かれていて訳が定まらない箇所を報告させる

最後の2つが、この構成で見落とされやすい部分です。訳文だけを受け取る構成にすると、用語集がいつまでも育ちません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは製造現場の作業手順書を翻訳する担当者です。
日本語の作業手順書を、指定された言語に翻訳してください。

【厳守事項】
- 用語集にある語は、必ず用語集の訳語を使ってください。
  同義語や、より自然な言い換えに置き換えないでください。
- [[KEEP:...]] で囲まれた部分は、翻訳せずそのまま出力してください。
  型番、寸法、温度、時間、法定表示が含まれます。
- 数値と単位を変換しないでください。
  「80度」を華氏に直す、「3mm」を別の単位にする、といった処理は禁止です。
- 原文にない手順を足さないでください。補足説明も加えないでください。
- 文体は命令形にし、1文を短くしてください。敬語は使わないでください。
- 用語集にない社内用語らしき語(設備名、工程名、治具名)が出てきた場合は、
  unknown_terms に列挙してください。訳語は仮のものでよいので付けてください。
- 主語や対象物が省略されていて訳が定まらない箇所は、
  ambiguous に原文のまま列挙してください。推測で補わないでください。

【用語集】
{glossary}

【訳さない語のリスト】
{keep_list}

【文体ルール】
{style_rules}

【翻訳する本文】
{source_text}

「数値と単位を変換しないでください」の1行は必須です。 温度や寸法を親切に換算されると、現場では事故になります。

用語集と文体ルールは毎回同じ内容になります。プロンプトの前半に固定して置き、プロンプトキャッシュを使うと費用が下がります。 Claude API のプロンプトキャッシュは cache_controlephemeral を指定する方式で、toolssystemmessages の順に、指定したブロックまでの前半部分がまとめて対象になります。既定の保持時間は5分、ttl1h を指定すると1時間です。キャッシュから読み出したトークンは、通常の入力単価の0.1倍で課金されます(書き込み時は5分キャッシュで1.25倍)。用語集を前に、訳す本文を後ろに置いてください。順番を逆にすると効きません。

Step7

出力形式を固定する

{
  "target_language": "vi | id | en",
  "segments": [
    {
      "segment_id": "",
      "source": "",
      "translation": "",
      "type": "heading | step | caution | figure_caption"
    }
  ],
  "unknown_terms": [
    { "source_term": "", "provisional_translation": "", "context": "" }
  ],
  "ambiguous": [],
  "kept_tokens": []
}

段落を segment_id で管理する理由は2つあります。改訂時に、変わった段落だけを訳し直せること。 そして、レイアウトへの流し込みを機械的に行えることです。訳文を1本のテキストで受け取ると、どちらもできません。

kept_tokens には、[[KEEP:...]] として保持した語を返させます。原文のマーク数と一致しなければ、その時点で処理を止めます。

Step8

システムへ連携する

最小構成では、訳文を担当者が Word に貼り付けます。半自動化する場合は Google Apps Script でつなぎます。

項目制限
外部API呼び出し(UrlFetch)1日あたり20,000回(一般アカウント)/100,000回(Google Workspace)
1回の応答サイズ50 MB
1回の実行時間6分
トリガーの合計実行時間1日90分(一般アカウント)/6時間(Google Workspace)

効いてくるのは6分の実行時間制限です。 手順書20本を3言語ぶんまとめて処理すると60回のリクエストになり、1回20秒でも制限を超えます。手順書1本を1回の実行とし、処理待ちの一覧を作って順に流す形にしてください。 これらの制限は変更されることがあるため、公式の一覧で確認してください。

Word への流し込みは、原本をテンプレート化し、segment_id に対応するブックマークへ差し込む方式が確実です。ここは利用環境に応じた個別実装が必要です。

Step9

人が確認する

全件、各言語のリーダーが確認します。省略しません。

理由は、誤訳が作業ミスと労働災害につながるためです。特に注意書きと安全に関する手順は、意味が反転しても文としては自然に読めてしまいます。

確認を速くするための設計が重要です。

  • 原文と訳文を段落単位で左右に並べる
  • 機械照合で不一致が出た段落を色分けする
  • 前の版から変わっていない段落は「確認済み」として畳む
  • ambiguous に入った段落を先頭に集める

改訂時は、変わった段落だけを確認対象にします。 420本すべてを毎回読み直す運用では続きません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
用語集にない社内用語が出てきたunknown_terms に入れて人へ回す。仮の訳語で確定させない
原文の主語が省略されていて訳が定まらないambiguous に入れる。原文を直してから訳し直す
数値や型番が原文と一致しないkept_tokens の数が合わなければ処理を止める。訳文を採用しない
訳文が枠に収まらない文字数が増える言語では起きる。原文の1文を短くする。訳文を縮めさせない
図の中の文字が訳されていない最初の構成では対象外。図は原文のまま使い、必要なら別紙で対訳を添える
手書きの追記がある手順書対象外とし、まず日本語版を正式な文書に直す
法令で翻訳の要件が定められた文書対象から外す。安全データシート等は所管の要件を確認する
日本語版だけ改訂された版管理台帳で不一致を検出し、掲示物に「訳文は旧版」と明示する
同じ語に複数の訳語が登録された用語集の重複を検出して止める。どちらを使うかを決めてから進める
Step11

記録を残す

  • 日本語版の原本と版番号
  • 各言語の訳文と、対応する日本語版の版番号
  • 用語集の変更履歴(誰がいつどの訳語を変えたか)
  • unknown_termsambiguous の記録
  • 人が修正した箇所と、修正前後の訳文

用語集の変更履歴と、人が修正した箇所の記録が、この構成の資産です。 「どの語が毎回直されているか」が分かれば、用語集に足すべき語が決まります。訳文だけを保存する運用では、同じ修正を毎回することになります。

版管理台帳には、日本語版の版番号と訳文の版番号を並べて持ちます。日本語版が改訂されたのに訳文が古いまま、という状態を機械的に検出できるようにしてください。 現場に古い手順が掲示されているほうが、訳が多少ぎこちないことよりも危険です。

04実装レベルの3段階

最小構成:用語集をスプレッドシートで持ち、生成AIの画面に本文を貼って訳す / 翻訳のみ
半自動化:Google Apps Script でフォルダを監視し、訳文と未登録語の一覧をスプレッドシートに出す / 翻訳と照合、報告
本格構成:上記に加えて Word テンプレートへの流し込み、版管理台帳の自動更新、掲示物の差し替え通知 / 確認以外のほぼすべて

月20本までなら最小構成で足ります。 貼り付けと受け取りの手間は1本あたり5分程度で、それ以外の削減効果はすでに出ているためです。半自動化に進む価値が出るのは、月40本を超えるか、対象言語が5言語以上になったときです。 本格構成で得られる最大の価値は、翻訳の自動化ではなく版管理です。 日本語版と訳文の対応が機械的に管理されると、「古い手順書が現場に貼られたまま」という状態がなくなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
20 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  20件 × 120分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 20件 × 30分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
75%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価3,000円)
108万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 現場に外国人スタッフがおり、作業手順書を2言語以上に訳している組織。手順書の新規作成と改訂が月10本以上ある場合。社内用語や設備名の訳がばらついている場合。
向いていない
  1. 手順書の改訂が年数本の組織。手順書が写真と口頭指導だけで文章化されていない場合(まず日本語の手順書を作るのが先)。法令で翻訳者の資格や認証が求められる文書(安全データシート等)。

07最小構成で試す方法

  1. 既存の手順書から5本を選ぶ(設備名や工程名が多く出てくるものを選ぶ)
  2. その5本に出てくる社内用語を書き出し、3言語の訳語を現場のリーダーに決めてもらう(30〜50語で足りる)
  3. 用語集と訳さない語のリストを、生成AIのプロジェクト機能などに置く
  4. 手順書の本文を貼り付けて訳文を受け取る
  5. 各言語のリーダーに、そのまま現場で使えるかを判定してもらう

この検証だけは必ずやってください。 判断するのは日本語側の担当者ではなく、その言語を読む現場のスタッフです。「訳としては正しいが、現場では通じない」ことがあります。

5本中の判定判断
4本以上がそのまま使える進めてよい
2〜3本用語集の語数が足りていない。使えなかった手順書の語を追加して再測定する
1本以下原文の手順書が曖昧である可能性が高い。日本語版の書き直しが先

用語集を渡さずに訳した場合との比較も、同時にやっておくと判断しやすくなります。差が出なければ、用語集の作り込みに時間をかける必要はありません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
訳語が版ごとに変わる用語集を単一の正本にする。訳文の中で言い換えさせない指示を入れる
数値や単位が変換された[[KEEP:...]] で保持し、出力後にマーク数を照合する。不一致なら採用しない
用語集が育たない未登録語を必ず報告させ、確認時に登録する運用を決める。報告させない構成にしない
用語集が大きくなり費用が増えたプロンプトキャッシュを使う。用語集を本文より前に置く(逆だと効かない)
訳文が枠に収まらない原文の1文を短くする。訳文を縮めさせると意味が落ちる
図の中の文字が訳されない最初は対象外にする。重要な図は別紙の対訳表で補う
改訂したのに訳文が古いまま版管理台帳で原文の版と訳文の版を対応づけ、不一致を検出する
段落の対応が取れずレイアウトが崩れるsegment_id を付けて段落単位で受け取る。1本のテキストで受け取らない
Apps Script が途中で止まる1回の実行が6分まで。手順書1本を1回の実行にし、待ち行列で順に流す
用語集の同じ語に複数の訳語が入った登録時に重複を検出して止める。現場のリーダーが決めるまで進めない
現場で「訳は合っているが通じない」と言われた判定は必ずその言語を読むスタッフに任せる。日本語側で完結させない
安全データシート等を対象に入れてしまった法令で要件のある文書は対象から外す。所管の要件を確認する

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 作業手順書の本文、設備名、工程の順序と条件。製造条件や配合が書かれた手順書は、自社の技術ノウハウそのものです。

  1. 外部AIへ入れる文書を選ぶ … 工程条件、配合比、独自の治具の構造が書かれた手順書は、外部サービスへ送る前に判断が必要です。清掃、点検、梱包、入退室、着替えといった汎用の手順から始めてください。 効果を確認したうえで、機密性の高い文書をどう扱うかを別に決めます
  2. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。用語集そのものが社内用語の一覧であり、それ自体が情報です
  3. 用語集の管理者を決める … 訳語を変えられる人を限定します。誰でも書き換えられる状態では、手順書の正確さが担保できません
  4. 訳文を確認せずに掲示しない … 誤訳が作業ミスと労働災害につながります。確認を省略する運用は、運用が安定しても認めないでください
  5. 法令で要件のある文書を混ぜない … 安全データシートのように、表示内容や作成者の要件が定められた文書があります。所管の要件を確認し、対象範囲を文書で決めてください
  6. 古い訳文の掲示を防ぐ … 版管理の不備は、誤訳よりも起きやすく、影響が大きい事故です。原文と訳文の版の対応を機械的に管理してください

誤りが起きた場合のリスクは、作業ミス、製品の品質不良、労働災害です。いずれも訳文の確認と版管理で防ぐ設計にしてください。

10まず何から始めるか

1週目:用語集の種を作る

既存の手順書から頻出する名詞を抜き出し、上位50語について3言語の訳語を現場のリーダーに決めてもらいます。この作業に現場を巻き込めるかどうかが、成否を分けます。 巻き込めない場合は、この構成は動きません。

2週目:5本で試して現場に判定させる

手順書5本を訳し、各言語のリーダーに「そのまま使えるか」を判定させます。4本以上使えるなら進めます。

3〜4週目:訳さない語の仕組みを作る

型番、寸法、温度、法定表示を [[KEEP:...]] に置き換え、出力後に数を照合する処理を作ります。ここは自動化する価値が最も高い部分です。 人が目で数えるものではありません。

2か月目:月20本を最小構成で回す

貼り付けと受け取りは手作業のままで、1か月運用します。1本あたりの実際の時間を測ります。Apps Script での自動化は、この実測が終わってから検討してください。

3か月目以降: 版管理台帳を作り、日本語版と訳文の対応を管理します。手順書420本の棚卸しを兼ねることになるため、時間を確保してから着手してください。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-09/最終更新:2026-09-09
確認した内容情報源確認日
DeepL API の用語集仕様。v3 のエンドポイントは編集可能かつ多言語対応であること。タイ語を除く対応言語で作成できること。1つの用語集は最大10 MiB、1件の原語・訳語はそれぞれ1,024 UTF-8バイトまで、1アカウントあたり用語集1,000件まで。形式はTSV(既定)とCSVDeepL API Documentation: Glossaries2026-09-09
Cloud Translation Advanced の用語集仕様。単方向の用語集と、複数言語を1行で持つ同義語セットがあること。同義語セットはCSVのみ対応で、原語列と訳語列を含む2列以上(説明列と品詞列を追加可能)。用語の合計は10,485,760 UTF-8バイトまで、1語は1,024 UTF-8バイト未満Google Cloud: Creating and using glossaries (Advanced)2026-09-09
Google Apps Script の割り当て。外部API呼び出しは1日20,000回(一般アカウント)/100,000回(Google Workspace)、応答は1回50 MB、1回の実行時間は6分、トリガーの合計実行時間は1日90分(一般)/6時間(Workspace)Google Apps Script: Quotas for Google Services2026-09-09
Claude API のプロンプトキャッシュ。cache_controlephemeral を指定し、toolssystemmessages の順で指定ブロックまでの前半部分が対象になること(前半が変わると無効になること)。既定の保持時間は5分、ttl1h を指定して1時間。キャッシュ読み出しは通常の入力単価の0.1倍、5分キャッシュの書き込みは1.25倍Claude Docs: Prompt caching2026-09-09

各サービスの料金、対応言語、割り当ては変更されることがあります。Word テンプレートへの流し込みと文書管理システムとの連携は、利用環境に応じた個別実装が必要です。 安全データシートのように法令で作成要件が定められた文書については、所管の要件を確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0022)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次