物流センターの事務担当から出る「この荷主の保管料・荷役料はどう計算するか」の質問に、荷主ごとの寄託契約・料金表・覚書を根拠にチャットで答える
請求の事務担当が「この荷主の保管料・荷役料はどう数えるか」をチャットに入れると、その荷主の寄託契約・料金表・覚書だけを探し、計算の規則と単価の根拠を適用日付きで返します。契約の綴りをたどる時間が減ります。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- EC/小売/物流/製造
- 対象部門
- 経理
- 対象業務
- 内容確認・チェック/情報検索
- 主な課題
- 属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 入力漏れ削減/属人化解消/検索時間短縮
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 現場の主任や営業の担当者から、作業の料金や計算の仕方の問い合わせを受ける
- 荷主の共有フォルダを開き、寄託契約書(または物流業務委託契約書)と別表の料金表を探す
- 覚書が何通もある荷主は、日付の新しい順に開いて、料金の改定や作業の追加を探す
- その荷主にどの約款が効いているか(旧の約款のままか、新しい約款に同意を得たか)を契約の記録で確かめる
- 見つからなければ、営業の担当者に聞く
- 計算の規則を確かめたら、倉庫管理の仕組みの請求の設定と見比べる
- 回答を現場の主任に返し、必要なら請求の設定を直す
- 人事務担当が問い合わせを受ける
- 人社内のチャット画面で荷主を選び、作業の内容と対象の期間を入れて質問する
- 自動中継プログラムが、荷主のコードと対象の期間で絞り込みの式を作る
- 自動Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その荷主の契約・料金表・覚書・約款だけを探して答えを作る
- 自動中継プログラムが、根拠の文書の適用期間と根拠のスコアを確かめる
- 自動計算の規則(単位、期、単価、含む作業・含まない作業)を根拠付きで画面に返す
- 人事務担当が根拠の条項と別表を開いて確かめ、請求の設定と見比べる
- 人取り決めが見つからない作業や、文書どうしが食い違うものは、営業の担当者へ回す
- 自動質問・答え・根拠・事務担当の評価を記録に残す
各工程の詳しい説明を読む
- 現場の主任や営業の担当者から、作業の料金や計算の仕方の問い合わせを受ける
- 荷主の共有フォルダを開き、寄託契約書(または物流業務委託契約書)と別表の料金表を探す
- 覚書が何通もある荷主は、日付の新しい順に開いて、料金の改定や作業の追加を探す
- その荷主にどの約款が効いているか(旧の約款のままか、新しい約款に同意を得たか)を契約の記録で確かめる
- 見つからなければ、営業の担当者に聞く
- 計算の規則を確かめたら、倉庫管理の仕組みの請求の設定と見比べる
- 回答を現場の主任に返し、必要なら請求の設定を直す
(a)取り決めが文書に分かれている。 契約書の本文、別表の料金表、その後の覚書、見積書のやり取り。「入庫料に検品を含む」と書いたのは料金表の注記で、「全数検品は別料金」と書き直したのは2年後の覚書、という具合です。どれか1通を見落とすと答えが変わります。
(b)改定の適用日を取り違える。 覚書の締結日と適用日が違うことはよくあります。締結日から新しい単価で請求してしまい、荷主から指摘を受けるのが、いちばん多い失敗です。
(c)知っている人が限られる。 長く担当している事務担当と、荷主の営業の担当者だけが、取り決めの経緯を知っています。5番の「営業に聞く」は、営業が外出していると1日止まります。
(d)請求の設定と取り決めがずれていても気づかない。 請求の機能の設定は、契約の開始時に入れたまま、覚書の改定が反映されていないことがあります。 毎月の請求は設定どおりに出るので、誰も見直しません。
- 【人】 事務担当が問い合わせを受ける
- 【人】 社内のチャット画面で荷主を選び、作業の内容と対象の期間を入れて質問する
- 【自動】 中継プログラムが、荷主のコードと対象の期間で絞り込みの式を作る
- 【自動】 Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドが、その荷主の契約・料金表・覚書・約款だけを探して答えを作る
- 【自動】 中継プログラムが、根拠の文書の適用期間と根拠のスコアを確かめる
- 【自動】 計算の規則(単位、期、単価、含む作業・含まない作業)を根拠付きで画面に返す
- 【人】 事務担当が根拠の条項と別表を開いて確かめ、請求の設定と見比べる
- 【人】 取り決めが見つからない作業や、文書どうしが食い違うものは、営業の担当者へ回す
- 【自動】 質問・答え・根拠・事務担当の評価を記録に残す
7番目が、この設計の条件です。 画面に出るのは規則の候補で、請求の設定を直すかどうかを決めるのは事務担当です。 根拠の別表の行が答えの横に並ぶので、開いて確かめるのは数分で済みます。
2番目で「対象の期間」を入れさせるのは、改定の前と後を混ぜないためです。 「先月分の請求」なら先月の日付で、その時点で効いていた料金表と覚書だけを引きます。
02今回想定するシステム構成
事務担当(社内のチャット画面。荷主と対象の期間を選んで質問) │ ▼【トリガー】質問の送信 中継プログラム(Python/Cloud Run) ├──▶ 荷主のコードと対象の期間から絞り込みの式を作る ▼ Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッド │ その荷主の 寄託契約/料金表/覚書/適用する約款 だけを探す │ 答えと出典、文ごとの根拠のスコアを返す ▼ 中継プログラム ── 適用期間とスコアの検査 ▼ 計算の規則(単位/期/単価/含む作業/別料金の作業) ├──▶ 画面へ(根拠の条項と別表の行を並べる) └──▶ 営業への確認の待ち行列へ(取り決めが無い・食い違い)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ─ |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、画面・検索・記録をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(契約書・料金表・覚書の原本とメタデータ) | ─ |
倉庫管理の仕組みと契約の共有フォルダは、新しく足すものではありません。 中継プログラムは文書を読むだけで、請求の機能の設定には書き込みません。 設定を直すのは、これまでどおり事務担当です。最初の準備は、荷主ごとに契約の文書を集め、文書の種類と適用期間のメタデータを付けることです。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 検索の結果から回答を作って出典を付け、前のセッションの ID を渡すとやり取りを続けられます。 回答の文ごとに 0〜1 の根拠のスコアを返す設定と、根拠の弱い回答を落とす設定があります。
料金の取り決めの土台は、倉庫業法と寄託約款です。 倉庫業法第8条は、倉庫業者が倉庫寄託約款を定めて実施前に国土交通大臣に届け出ることを求め、標準倉庫寄託約款と同じ約款を定めたときは届け出たものとみなすとしています。新しい標準倉庫寄託約款(甲)の第53条は、寄託者が国土交通大臣に届け出た倉庫保管料・倉庫荷役料その他の営業に関する料金を、倉庫業者の定めた日などまでに支払うとしています。荷主ごとの料金表と覚書は、この上に乗っています。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は、事務担当が社内のチャット画面で荷主を選び、質問を送ったことです。 画面は社内の ID でログインした業務管理課と物流センターの主任だけが使い、荷主は使いません。 荷主と対象の期間を選ばないと送信できない作りにします。
荷主は、取引中の荷主の一覧から選ばせます。 質問の文に荷主の名前を書かせて推定させると、グループ会社どうしの似た名前の荷主を取り違える余地が残ります。荷主のコードを画面の側で確定させます。
対象の期間は、既定を「今日」にし、請求の締めのときは月を選べるようにします。 1件の質問は1つのセッションで続け、「その作業はパレット単位か」と聞き足すと同じセッションで絞り直します。別の荷主の質問は、新しいセッションで始めます。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 質問 | 作業や料金の内容、対象の期間 | 画面 |
| 荷主のコード | 取引中の荷主の一覧から選んだもの | 画面 |
| 寄託契約書・物流業務委託契約書 | 契約の本文(料金の支払い、附帯業務、期の定め) | 荷主の共有フォルダ |
| 料金表 | 別表。保管料・荷役料・附帯作業の料金の単価と単位、注記 | 荷主の共有フォルダ |
| 覚書 | 料金の改定、作業の追加、最低料金、割増しの取り決め | 荷主の共有フォルダ |
| 適用する約款 | 自社の倉庫寄託約款の旧の版と新しい版 | 業務管理課 |
| 約款の同意の記録 | 新しい約款の適用に同意を得た荷主と日付 | 営業の案件の記録 |
質を決めるのは、文書ごとのメタデータです。 文書ごとに、荷主のコード、文書の種類(契約/料金表/覚書/約款)、適用開始日、適用終了日、締結日を付けます。締結日と適用開始日は別の項目にします。 第3章の(b)は、この2つを1つの日付で持っていることから起きます。
約款は、荷主ごとの文書として扱います。 自社の約款の旧の版と新しい版を、同意を得た日を境に、その荷主のコードを付けて取り込みます。同意を得ていない荷主には旧の版だけが付きます。
データの取得方法を決める
文書は Cloud Storage に置き、メタデータ付きでデータストアへ取り込みます。 料金表は Excel で持っていることが多いので、表のまま取り込める形式で入れます。 レイアウトの解析は PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM の配置を検出し、表と見出しを見分けます。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 荷主のコード | メタデータ shipper_id | その荷主の文書だけに絞る |
| 文書の種類 | メタデータ doc_type | 契約・料金表・覚書・約款を分けて根拠に示す |
| 適用開始日・終了日 | メタデータ valid_from・valid_to | 対象の期間に効いている版だけに絞る |
| 締結日 | メタデータ signed_on | 覚書の新しさを比べる。適用日とは使い分ける |
絞り込みの式は、荷主と対象の期間で書きます。 項目を索引可能にしておけば、shipper_id: ANY("S0217") AND valid_from <= "2026-09-30" AND valid_to >= "2026-09-01" のように、その荷主の、対象の月に一日でも効いていた版を引けます。月の途中で改定があった月は、改定の前と後の両方が引かれ、答えに両方の規則が日付付きで並びます。
荷主のコードと期間は、画面で選んだ値を中継プログラムが式に入れます。 モデルにも事務担当にも書かせません。
AIへ渡す前に整形する
- 荷主ごとに文書を集める … 契約書、別表の料金表、覚書、見積書のうち合意したものを、荷主のコードの付いた場所に置きます
- 料金表の版を分ける … 改定のたびに上書きされた料金表は、版ごとに別のファイルにして期間を付けます
- 覚書の適用日を書き出す … 本文の「○年○月○日出庫分から」「○月の期から」を読み、
valid_fromに入れます - 料金表の注記を表から切り離さない … 「※検品は入庫料に含む」の注記は、表の同じ文書に残します
- 約款を荷主に付ける … 同意の記録を見て、旧の版か新しい版かをその荷主のコードで取り込みます
- 見出しを断片に含める … データストアの作成時に分割を有効にし、
includeAncestorHeadingsを有効にします - 単価以外の取引条件を消さない … 最低料金、端数の扱い、割増しの条件は料金表の一部として残します
3番目は、営業の担当者に確かめながら入れます。 覚書の適用日は、本文の書き方が荷主ごとにばらばらで、「次回の期から」としか書かれていないこともあります。 読み取れないものは空にせず、営業に聞いて埋めます。
6番目は、データストアを作る前に決めます。 分割はデータストアの作成後に有効にも無効にもできず、見出しを含める設定は既定では無効です。 「1パレット当たり」の断片は、見出しが無いと保管料の行か荷役料の行か分かりません。 分割の大きさは100〜500トークンで、既定は500です。
AIに処理させる
させるのは、その荷主の文書から質問に当たる取り決めを見つけ、計算の規則を決まった項目に分けて、根拠と適用日付きで並べることです。 金額の計算と、請求するかどうかの判断はさせません。
| 項目 | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 料金の種類 | 保管料、入庫・出庫の荷役料、附帯作業の料金、割増し | 料金表・覚書 |
| 単位 | 個数、重量、容積、パレット、面積 | 料金表 |
| 期の数え方 | 期の区切り、期の途中の入庫・出庫の扱い | 契約・料金表 |
| 単価 | 料金表・覚書に書かれた数字のまま | 料金表・覚書 |
| 含む作業・別料金の作業 | 荷役料に含む作業と、別に請求する作業 | 料金表の注記・覚書・約款 |
| 適用期間 | その規則が効いている期間 | メタデータ |
新しい約款の第4条は、この最後の区分に関わります。 搬出入車両内での手荷役、仕分、全数検品・開梱検品、ラベル貼りその他の通常の倉庫業務(保管、庫入庫出)に附帯する業務を委託されたときは、倉庫業者が別途定める料金又は実際に要した費用を請求できるとし、十分な時間的余裕のない入出庫の指図や指図の取消しには別途費用を請求できるとしています。旧の約款のままの荷主では、この条を根拠にできません。
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
session | 質問ごとのセッション | 聞き足した条件で絞り直す |
includeCitations | 有効 | 料金表の行と覚書の条を付ける |
ignoreLowRelevantContent | 有効 | その荷主の文書に無い料金を答えない |
groundingSpec の filteringLevel | FILTERING_LEVEL_HIGH | 根拠の弱い答えを出さない |
filter | 荷主のコード、対象の期間 | 他の荷主と期間外の版を混ぜない |
preamble | 下の指示 | 答え方の規則を与える |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 請求金額を計算する | 金額は請求の機能で出す。端数と最低料金の扱いを二重にしない |
| 「請求できます」と言う | 取り決めが無い作業を請求するかは営業と荷主が決める |
| 他の荷主の料金表や相場で補う | その荷主の取り決めだけが効く |
| 単価を推定する | 料金表・覚書の数字だけを写す |
| 旧の約款の荷主に新しい約款の条を当てる | 同意の記録が無ければ新しい約款は効いていない |
2行目がいちばん起きやすい失敗です。 全数検品の料金が料金表に無いと、モデルは新しい約款の第4条を引いて「別途請求できます」と書きます。約款が請求できるとしていても、いくらで請求するかは決まっていません。 標準約款の改正の資料は、附帯業務の料金を定めたときは定めた日から30日以内に料金の設定を届け出る必要があるとしています。取り決めが見つからない作業は「取り決めが見つからない」で止め、営業へ回します。
指示内容を固定する
answer メソッドの preamble に、次の指示を入れます。
あなたは倉庫会社の業務管理課で、荷主への請求を担当する事務職員を手伝う立場です。
選ばれた1社の荷主の寄託契約、料金表、覚書、適用する約款から、
質問された作業や料金の計算の規則を探します。読むのは社内の事務担当です。
【答え方】
1. 料金の種類ごとに、次の項目を分けて書いてください。
単位/期の数え方/単価/含む作業/別料金の作業/適用期間
2. 単価と数字は、料金表と覚書の文のまま写してください。
3. 根拠にした文書の種類(契約/料金表/覚書/約款)、条または表の行、
覚書の締結日と適用開始日を書いてください。
4. 対象の期間の途中で改定がある場合は、改定の前と後を分けて並べてください。
【厳守事項】
- 検索結果の文書に書かれていることだけで答えてください。
他の荷主の料金や、一般的な倉庫料金の相場で補わないでください。
- 金額の計算をしないでください。件数や期の数を掛けた結果を書かないでください。
- 「請求できます」「請求して問題ありません」と書かないでください。
- 料金表と覚書に当たる取り決めが無い作業は「取り決めが見つからない」とし、
約款の条だけを根拠に料金があるように書かないでください。
- 文書どうしで食い違うときは、どれが優先するかを決めず、
食い違う箇所を並べて「営業の確認が要る」と書いてください。
- 覚書の締結日を、適用開始日として扱わないでください。
「金額を計算しない」を書くのは、計算が正しくても困るからです。 請求の機能は最低料金と端数の扱いを持っています。画面にもう1つの金額が出ると、どちらが正しいかを毎回確かめる作業が増えます。 規則までで止め、金額は1か所で出します。
「締結日を適用開始日として扱わない」も、明記しないと崩れます。 覚書の冒頭には締結日が大きく書かれ、適用日は本文の途中にあります。何も言わなければ、目立つほうの日付を使います。
出力形式を固定する
answer メソッドの応答を、中継プログラムが次の形に整えて、画面と記録に渡します。
{
"query_id": "",
"session_id": "",
"staff_id": "",
"shipper_id": "S0217",
"period": { "from": "2026-09-01", "to": "2026-09-30" },
"question": "",
"rules": [
{ "fee_type": "storage | handling_in | handling_out | ancillary | surcharge",
"unit": "", "period_rule": "", "unit_price_text": "",
"included": [""], "separately_charged": [""],
"valid_from": "", "valid_to": "",
"refs": [ { "doc_type": "contract | rate_table | memorandum | terms",
"location": "", "signed_on": "", "uri": "", "grounding_score": 0 } ] }
],
"terms_version": "old | new",
"not_found": [""],
"conflicts": [ { "summary": "", "refs": [""] } ],
"status": "answered | routed | skipped",
"staff_feedback": { "setting_changed": false, "corrected": "", "note": "" }
}
1つ目の理由は、rules を料金の種類ごとに持てることです。 事務担当は、画面の規則と請求の機能の設定を同じ項目の並びで見比べられます。 単位が違う、含む作業が違う、が行ごとに分かります。
2つ目は、unit_price_text を文字列で持つことです。 単価を数値の項目にすると、「1パレット1期当たり」「最低1,000円」のような条件が落ちます。料金表の文のまま持たせ、数値にするのは請求の機能の側です。
3つ目は、terms_version と not_found で回し先を機械的に決められることです。 not_found に作業が1つでも入れば、画面は営業への確認のボタンだけを出します。 terms_version が old の荷主で新しい約款の条が根拠に出ていれば、その答えを止めます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 社内のチャット画面 | 社内向けの画面 | 荷主・期間の選択、質問、規則と根拠の表示 |
| 社内の ID 基盤 | ログイン | 事務担当と主任を見分ける |
| Agent Search | answer メソッドの呼び出し | 荷主と期間で絞って答えを返す |
| 約款の同意の記録 | 読み取り | 荷主ごとの約款の版を確かめる |
| 営業への確認の待ち行列 | 書き込み | 取り決めが無い・食い違う質問を荷主の営業担当に載せる |
| 質問の記録 | 書き込み | 質問・答え・根拠・評価を残す |
倉庫管理の仕組みの請求の機能には、つなぎません。 設定を直すのは事務担当で、画面の答えから設定が書き換わる経路を作りません。 誤った答えが、そのまま45社の請求に流れるのを防ぎます。
営業への確認の待ち行列には、荷主の営業担当を宛先にして載せます。 回答が来たら、営業が覚書を作るか、料金表の注記を足し、その文書を取り込むところまでを1件の完了とします。
人が確認する
事務担当は、毎回、根拠の料金表の行と覚書の条を開いて確かめます。 画面の答えだけで請求の設定を直さない運用にします。
- 荷主と期間を確かめる … 画面の上に出る荷主のコードと期間が、問い合わせと合っているかを見ます
- 根拠の版を見る … 覚書が根拠に出ていれば、適用開始日が対象の期間に入っているかを読みます
- 単価を写す … 請求の設定に入れる単価は、画面の文ではなく根拠の料金表から写します
not_foundとconflictsは営業へ回す … 事務担当の判断で料金を決めません
4番目を、事務担当の判断で済ませないでください。 取り決めの無い作業は、荷主と料金を決めるきっかけです。営業が荷主と話し、覚書か料金表に書いたところで請求できるようになります。
目標は、180件をならして1件8分です。 根拠を確かめて回答し、必要なら請求の設定と見比べるまでで、営業へ回るものは1割強という想定です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 料金表にも覚書にも取り決めが無い | not_found。営業への確認の待ち行列へ |
| 根拠のスコアが低く答えが落ちた | LOW_GROUNDED_CONTENT。文書の取り込み漏れを疑い、業務管理課で確かめる |
| 料金表と覚書が食い違う | conflicts に並べて営業へ。どれが優先かは決めない |
| 覚書の適用日が空 | 答えを出さず、営業に適用日を確かめてメタデータを埋める |
| 旧の約款の荷主で新しい約款の条が根拠に出た | 答えを止め、約款の取り込みの付け方を直す |
| 月の途中で改定がある | 改定の前と後を並べる。どちらで請求するかの日割りは請求の機能の設定に従う |
| 質問が料金でない(入荷の予定、在庫の数) | skipped。この画面の対象外と返す |
| 荷主の文書が取り込まれていない | 答えを出さず、取り込みの依頼を業務管理課へ |
| 検索が応答しない | 画面に「後で再送」を出し、質問の文は消さずに残す |
2行目と4行目は、運用の最初の数か月に集中します。 文書のそろえ方の穴が、そのまま答えの穴として出てきます。落ちた答えを数えると、どの荷主の文書から直すべきかが分かります。
記録を残す
- 質問の文、荷主のコード、対象の期間、担当者、日時、セッションの ID
- 絞り込みの式と、answer メソッドの応答の全文(出典と根拠のスコアを含む)
- 整えた答え(
rules、terms_version、not_found、conflicts) - そのとき参照した文書の版(文書の ID と
valid_from・valid_to) - 事務担当の評価と、請求の設定を直したかどうか
- 営業へ回した質問と、営業の回答、作った覚書
4つ目で「そのときの版」を残すのは、請求の後で荷主から問い合わせが来るためです。 「この月の検品料はどの取り決めで請求したのか」と聞かれたとき、当時効いていた料金表と覚書を、検索の記録から示せます。
5つ目の「設定を直したかどうか」は、請求の機能の設定のずれを見つける材料になります。 同じ荷主で何度も設定を直しているなら、契約の開始時の入れ方に問題があります。
04実装レベルの3段階
最小構成では荷主が増やせません。 文書を毎回読み込ませるので、45社には使えません。確かめるための段階です。 半自動化で、1件30分が15分程度になります。 探す時間は減りますが、覚書の適用日を自分で読み、約款の版を同意の記録で確かめる作業が残ります。本格構成で8分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、適用日と約款の版を、人が読むかメタデータで絞るかの違いです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1か月使うと、適用日が空の覚書と、料金表の版が分かれていない荷主が先に分かります。
05工数削減シミュレーション
導入後 180件 × 8分 ÷ 60 = 24 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 1つの物流センターで数十社の荷主の貨物を預かり、荷主ごとに保管料の単位(個数・重量・パレット・面積)や期の数え方、荷役料に含む作業の範囲が違う倉庫会社。料金表と覚書が契約ごとに積み重なり、請求の締めのたびに事務担当が契約書の綴りを開いて確かめている場合。料金の取り決めを知っているのが営業の担当者と長く勤める事務担当だけになっている場合。
- 荷主が数社で、全社に同じ料金表を使っている場合。寄託契約・料金表・覚書が紙の綴りだけで、改定の履歴を文書としてそろえられない場合(先に荷主ごとの文書をそろえるのが先です)。請求金額の計算や、荷主への請求の確定までAIに任せたい場合(この構成は計算の規則と根拠を示すだけで、金額は倉庫管理の仕組みの請求の機能で計算し、確定は請求の担当者が行います)。
07最小構成で試す方法
- 料金の取り決めが複雑な荷主を3社選び、契約書・料金表・覚書をすべて集める(覚書が3通以上ある荷主を1社入れる)
- 過去3か月の問い合わせから、その3社の質問を30件選び、当時の回答を書き出す
- 3社の文書を、荷主ごとに分けて手元のAIサービスに読み込ませる(荷主をまたいで1つにまとめない)
- 「この荷主の文書だけを根拠に、この作業の料金の単位・期の数え方・単価・含む作業を、根拠の条と覚書の適用日付きで答えてください。金額は計算しないでください。取り決めが無ければ無いと書いてください」と指示する
- 出てきた答えを、当時の回答と突き合わせる
30件は必ずやってください。 データストアを組む前に、「この荷主の文書だけで規則が決まるのか」を確かめます。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の回答と同じ規則と根拠が出た | データストアと絞り込みの構築に進む |
| 金額を計算した、約款から料金があると書いた | 指示の書き方で直る。構成は有効 |
| 改定前の単価や締結日で答えた | 文書のそろえ方が先。 料金表の版と適用日を作る |
3行目が出ることは珍しくありません。 失敗ではなく、覚書をたどるのに時間がかかっていた理由が1つ分かったということです。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 隣の荷主の料金表で答える | 荷主のコードを画面で確定させ、絞り込みの式に必ず入れる |
| 改定前の単価で答える | 料金表を版ごとに分け、対象の期間で絞り、根拠の期間を中継プログラムで検査する |
| 覚書の締結日から新単価にする | 締結日と適用開始日を別のメタデータにし、指示でも区別させる |
| 約款の条だけで料金があると書く | not_found で止め、料金を決めるのは営業と荷主にする |
| 旧の約款の荷主に新しい約款を当てる | 同意の記録を見て、約款を荷主のコードで取り込む |
| 料金表の注記が引かれない | 注記を表と同じ文書に残し、includeAncestorHeadings を有効にする |
| 「1パレット当たり」の条件が落ちる | 単価を文字列で持ち、数値にするのは請求の機能の側にする |
| 画面の金額と請求の金額が並ぶ | 金額を計算させない。金額は1か所で出す |
| 料金表と覚書が食い違う | どちらが優先かを決めさせず、並べて営業へ回す |
| 覚書の取り込みが漏れる | 覚書の締結を、営業から業務管理課への連絡の手順に入れる |
| 答えから設定を直接書き換えたくなる | 請求の機能にはつながない。直すのは事務担当 |
上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「その荷主の、その時点の取り決め」を外す失敗で、答えの文は正しく見えます。 荷主と時点を、文の読み方ではなくメタデータと検査で守っているかで、運用に乗るかが決まります。
4行目と5行目は、新しい約款の施行から間もない今だから起きます。 約款が変わったことは知られていても、どの荷主に効いているかは契約ごとに違います。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 荷主ごとの寄託契約、料金表、覚書、そして荷主ごとに違う単価と取引条件です。
- 荷主の単価を他の荷主の答えに出さない … 単価は荷主ごとの取引の秘密です。荷主のコードの絞り込みを必ずかけ、絞り込みの無い検索を中継プログラムから送れない作りにします
- 荷主に画面を使わせない … この画面は社内の事務担当と主任のためのものです。荷主への回答は、営業と事務担当が文書を確かめてから行います
- この構成は料金を決めません … 取り決めの無い作業をいくらで請求するか、約款の第4条を根拠に請求するかは、営業と荷主が話して覚書に書くことです
- 約款の届出と掲示の手続きは別に行う … 倉庫業法第9条は、消費者から受け取る料金や倉庫寄託約款などを事業所に掲示し、インターネットで閲覧できるようにすることを求めています。附帯業務の料金を定めたときの届出も含め、この構成は手続きの代わりになりません
- 閲覧の範囲を職務で分ける … 営業の担当外の荷主の文書を見せたくない会社では、荷主の担当で画面の荷主の一覧を絞ります
- 取引が終わった荷主の文書を外す … 契約が終わった荷主の文書は、保存の期間の扱いに従い、データストアからは外します
誤りが起きた場合のリスクは、他の荷主の単価で請求することと、改定前の単価で請求し続けることの2つです。 前者は荷主の信頼を、後者は売上を失います。どちらも、荷主と時点の絞り込みという設計の側で止めます。
10まず何から始めるか
1週目:3社の文書をそろえる
取り決めの複雑な荷主を3社選び、契約書・料金表・覚書をすべて集めます。料金表を版ごとに分け、覚書の締結日と適用開始日を書き出します。 この作業で、たどるのにどれだけ時間がかかっていたかが見えます。
2週目:30件で試す
その3社の過去の質問30件を、手元のAIサービスで試します。改定前の単価や締結日で答えていないか、金額を計算していないかを最優先で見ます。
3週目:メタデータと約款の付け方を決める
荷主のコード、文書の種類、適用開始日・終了日、締結日の付け方を、業務管理課の手順として文書にします。 約款の同意の記録を営業と突き合わせ、荷主ごとに旧と新を決めます。
4週目:データストアと絞り込みをつなぐ
分割と見出しの設定を決めてデータストアを作り、3社の文書を取り込みます。中継プログラムで荷主と期間の絞り込みを入れ、規則と根拠を画面に出すところまで作ります。
2か月目: 事務担当2名で使い、not_found と staff_feedback を毎週数えます。3か月目以降: 荷主を問い合わせの多い順に足し、1件30分が何分になったかを実測します。営業が覚書を結んだら適用日付きで取り込む手順が定着し、請求の締めで営業に聞きに行く回数が目に見えて減った時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドが検索結果から回答を作ること。前のセッションの ID でやり取りを続けられること。includeCitations(既定は無効)、ignoreLowRelevantContent、preamble、searchSpec の filter。groundingSpec の filteringLevel、文ごとの 0〜1 の根拠のスコア、answerSkippedReasons の LOW_GROUNDED_CONTENT | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-08 |
絞り込みの ANY()、比較の演算子、AND/OR、日付を ISO 8601 の文字列で比べられること、項目を索引可能にする必要があること | Google Cloud: Filter search for structured or unstructured data | 2026-10-08 |
レイアウトの解析が PDF・HTML・DOCX・PPTX・XLSX・XLSM の配置を検出し表と見出しを見分けること。分割の大きさが100〜500トークン(既定500)、includeAncestorHeadings が既定で無効、分割はデータストアの作成後に切り替えられないこと | Google Cloud: Parse and chunk documents | 2026-10-08 |
| 標準倉庫寄託約款(甲)・(乙)、標準冷蔵倉庫寄託約款、改正の概要資料の掲載 | 国土交通省: 倉庫業の登録・各種手続き等 | 2026-10-08 |
| 標準倉庫寄託約款(甲)(令和八年国土交通省告示第二百三十七号)の第4条(附帯業務等の別途料金・実費、緊急の入出庫指図の別途費用)、第21条(面積建保管)、第53条(届け出た保管料・荷役料等の支払い)、第55条(料金の変更は変更された日の属する期から) | 国土交通省: 標準倉庫寄託約款(甲)(PDF) | 2026-10-08 |
| 標準約款が令和8年4月1日施行で、昭和34年12月の制定以降大規模な改正が無かったこと。新約款は約款変更後に締結される寄託契約から適用され、既存の契約への適用には寄託者の同意が要ること。附帯業務等料金を定めたときは定めた日から30日以内に料金設定届出書を出すこと | 国土交通省: 標準倉庫寄託約款の改正内容と倉庫業者における手続きについて(PDF) | 2026-10-08 |
| 倉庫業法第8条(倉庫寄託約款の届出、標準約款と同一なら届出とみなすこと)、第9条(料金・約款等の掲示とインターネットでの閲覧) | e-Gov 法令検索 法令API: 倉庫業法 | 2026-10-08 |
料金の取り決めと請求の可否は、各社の倉庫寄託約款と荷主との契約・覚書に従ってください。 本記事は Google Cloud、国土交通省、e-Gov 法令検索で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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