広告会社の考査担当が、新聞・ラジオ・交通広告の媒体社ごとの広告掲載基準を引き、出稿前の原稿の表現が基準に触れないかを根拠つきで確かめる
新聞・ラジオ・交通広告に出す原稿を表現ごとに分け、出稿先の媒体社それぞれの広告掲載基準から、触れるおそれのある条文を引用して並べます。考査担当は一覧を読み、修正の相談を制作と営業に返します。掲載の可否は媒体社の考査が決めます。
- 生成AI
- Gemini
- AIサービス
- Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
- 連携・自動化
- Python
- 対象業界
- EC/医療/小売/広告/金融
- 対象部門
- マーケティング
- 対象業務
- 内容確認・チェック/情報検索
- 主な課題
- 属人化している/情報が見つからない/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 検索(RAG)
- 主な効果
- 品質標準化/検索時間短縮/機会損失防止
- 導入難易度
- ★★★☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- RAG・個別開発(大)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 考査担当が案件管理システムで原稿を開き、広告主・商材の区分・出稿先の媒体と掲載日を読む
- 出稿先の媒体社ごとに、共有フォルダから掲載基準を開き、商材の区分に当たる章と、表現に関する章を探す
- 原稿の表現を1つずつ読み、最大級の表現、効能の表現、比較、体験談、価格の表示などを、媒体社ごとの条文に当てる
- 媒体社からの通知に、その業種や表現の扱いの変更が出ていないかを確かめる
- 触れるおそれのある表現を表計算に書き出し、媒体社ごとに条文の番号をメモする
- 制作と営業に、修正の相談を書いて返す
- 人制作が案件管理システムに原稿を登録し、出稿先の媒体と掲載日を入れる
- 自動登録をきっかけに、中継プログラムが原稿と出稿先を読み、原稿を表現の単位に分ける
- 自動中継プログラムが、表現ごとに注意語の辞書を当て、確かめる観点(最大級、効能、比較、体験談、価格、無料など)を付ける
- 自動出稿先の媒体社ごとに、媒体社の識別子と掲載日と商材の区分で絞って、Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
- 自動中継プログラムが、返った引用を表現と媒体社の組み合わせの表にまとめ、引用が基準の本文にそのままあるかを確かめる
- 人考査担当が表を読み、条文を開いて確かめ、修正の相談を書いて制作と営業に返す
- 人判断に迷うものは、媒体社の考査の窓口に事前に相談する
各工程の詳しい説明を読む
- 考査担当が案件管理システムで原稿を開き、広告主・商材の区分・出稿先の媒体と掲載日を読む
- 出稿先の媒体社ごとに、共有フォルダから掲載基準を開き、商材の区分に当たる章と、表現に関する章を探す
- 原稿の表現を1つずつ読み、最大級の表現、効能の表現、比較、体験談、価格の表示などを、媒体社ごとの条文に当てる
- 媒体社からの通知に、その業種や表現の扱いの変更が出ていないかを確かめる
- 触れるおそれのある表現を表計算に書き出し、媒体社ごとに条文の番号をメモする
- 制作と営業に、修正の相談を書いて返す
(a)媒体社の数だけ同じ作業をくり返す。 3社に出す原稿なら、掲載基準を3つ開き、同じ表現を3回当てます。1社だけ見て「たぶんほかも同じ」と省くと、厳しい1社で差し戻されます。
(b)基準の書き方が媒体社ごとに違い、探す場所が決まらない。 業種別の章で定める社、表現の章にまとめる社、別紙の取扱い細則にする社があります。「健康食品」の扱いが、ある社では業種の章に、別の社では表現の章の注にある、ということが起きます。
(c)通知が基準の本文に反映されていない。 媒体社からの通知は基準の改定より先に届くことが多く、共有フォルダの基準だけを見ていると、通知で変わった扱いを見落とします。
(d)見る場所が担当者の経験で決まる。 慣れた担当は「この媒体はこの業種に厳しい」と知っていますが、新しい担当は差し戻されて初めて気づき、締切の直前に作り直すことになります。
- 【人】 制作が案件管理システムに原稿を登録し、出稿先の媒体と掲載日を入れる
- 【自動】 登録をきっかけに、中継プログラムが原稿と出稿先を読み、原稿を表現の単位に分ける
- 【自動】 中継プログラムが、表現ごとに注意語の辞書を当て、確かめる観点(最大級、効能、比較、体験談、価格、無料など)を付ける
- 【自動】 出稿先の媒体社ごとに、媒体社の識別子と掲載日と商材の区分で絞って、Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
- 【自動】 中継プログラムが、返った引用を表現と媒体社の組み合わせの表にまとめ、引用が基準の本文にそのままあるかを確かめる
- 【人】 考査担当が表を読み、条文を開いて確かめ、修正の相談を書いて制作と営業に返す
- 【人】 判断に迷うものは、媒体社の考査の窓口に事前に相談する
4番目が、この設計の分かれ目です。 検索は媒体社ごとに分け、ほかの媒体社の基準が答えの根拠に入る余地をなくします。 媒体社が3社なら3回、5社なら5回呼びます。
3番目の注意語の辞書は、検索の取りこぼしを減らすためのものです。 辞書に当たらない表現も、商材の区分の章は必ず検索します。辞書は「見る観点を増やす」ために使い、辞書に当たらなかったことを「問題なし」の根拠にしません。
02今回想定するシステム構成
媒体社ごとの掲載基準(新聞・ラジオ・交通広告) 媒体社からの通知 │ 媒体社の識別子・文書の種類・効力の期間・章の区分を付ける ▼ Cloud Storage ── メタデータ(JSON Lines) ▼ Agent Search(Vertex AI Search)── データストア(レイアウト パーサー、見出しの付与) │ media_id/media_type/doc_kind/category/effective_from/effective_to ▼ 案件管理システム ──【トリガー】原稿の登録・更新 ▼ 中継プログラム(Python、Cloud Run) ├──▶ 原稿を表現の単位に分け、注意語の辞書で観点を付ける ├──▶ 媒体社ごとに answer メソッド(媒体社・掲載日・商材の区分で絞る) └──▶ 引用の照合、結論の語の除去、表現×媒体社の表 ▼ 考査担当の確認の画面 ──▶ 制作・営業への修正の相談
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 検索基盤 | Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッド | Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service |
| 生成AI | Gemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル) | ─ |
| 連携 | 中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、案件管理システム・検索・確認の画面をつなぐ) | Node.js で同じものを書く |
| 保管 | Cloud Storage(掲載基準と通知の写し、メタデータ、原稿と確認結果の記録) | ─ |
案件管理システムからは原稿を読むだけで、書き込みません。 確認の結果は別の画面に出し、修正の相談は考査担当が書いて返します。媒体社への入稿もこの構成からは行いません。
検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 公式のドキュメントでは、検索の指定(searchSpec.searchParams)に絞り込みの filter を書け、一度に引く結果は既定で10件、最大で25件です。回答の生成の指定には、引用を付ける includeCitations(既定は無効)、関係の薄い内容で答えない ignoreLowRelevantContent、答え方を指示する promptSpec.preamble があり、根拠の弱い回答を出さない groundingSpec の filteringLevel もあります。
掲載基準の取り込みには、レイアウト パーサーを使います。 公式では、PDF・HTML・DOCX などから段落・表・見出しを検出し、チャンクに上位の見出しを付ける設定(includeAncestorHeadings、既定は無効)があり、チャンクの大きさは100〜500トークンです。「(124) 原則として、最大級またはこれに類する表現をしてはならない」という1行が単独で引かれても、どの媒体社のどの章の条文かが分かるように見出しを付けます。 文書のチャンクの設定はデータストアを作った後に変えられないので、最初に決めます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
起点は、案件管理システムに原稿が登録された、または原稿が更新されたことです。 知らせ方(更新の通知、または数分おきの一覧の読み出し)はシステムに合わせて選び、中継プログラムは原稿の番号を受け取って中身を読み直します。
| 案件管理システムの項目 | 書き方 | 使い道 |
|---|---|---|
| 原稿の本文 | キャッチ、ボディ、注釈を分けた文字 | 表現の単位に分ける |
| 広告主名・商材の区分 | 社内の区分(健康食品、化粧品、医療、金融、不動産など) | 業種の章を引く絞り込み |
| 出稿先の媒体 | 媒体社の識別子の一覧 | 媒体社ごとの検索 |
| 掲載日・放送日 | 日付(必須) | 基準の版を選ぶ |
| 原稿の版 | 制作が直した回数 | 更新のたびに確かめ直す |
掲載日の欄が空の原稿は検索せず、制作に戻します。 原稿が更新されたら、前の確認結果は残したまま新しい版で確かめ直します。
もう一つのトリガーは、掲載基準の改定と媒体社からの通知です。 考査担当が新しい写しを置き、メタデータに効力の期間を書きます。前の版は消さず、終わりの日を書いて残します。 取り込みは毎晩まとめて行います。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 原稿 | キャッチ、ボディ、注釈、広告主名、商材の区分、出稿先、掲載日 | 案件管理システム |
| 掲載基準 | 媒体社ごとの広告掲載基準・考査の基準・取扱いの細則。版ごと | 媒体社から受け取った写し(PDF・Word) |
| 業界の基準 | 日本民間放送連盟の放送基準など、媒体社が従うとしている業界の基準 | 業界団体の公開のページ |
| 媒体社の通知 | 業種や表現の扱いの変更、事前相談を求める業種、効力の始まる日 | 媒体社からのメール・PDF |
| 注意語の辞書 | 「No.1」「最高」「日本初」「治る」「やせる」「元本保証」「無料」などと、その観点 | 考査担当が作る |
質を決めるのは、掲載基準を章ごとに分けて区分を付けることです。 掲載基準は「掲載しないもの」「表現の基準」「業種ごとの基準」に分かれていることが多く、章に category(業種)と section_kind(表現・業種・責任の所在など)を付けます。 商材の区分で業種の章だけを確実に引けるようにするためです。
業界の基準は、媒体社の基準の代わりにはしません。 たとえば民放連の放送基準は、「(124) 原則として、最大級またはこれに類する表現をしてはならない」「(127) 統計・学術用語・文献などを引用して、実際以上に科学的と思わせるおそれのある表現をしてはならない」のように表現の基準を定め、第16章で医療・医薬品・化粧品・健康食品などの広告を扱っています。ラジオ局が自局の基準でこれをどう運用しているかは局ごとに違うので、業界の基準は doc_kind を分け、局の基準と並べて見せます。
データの取得方法を決める
掲載基準は媒体社ごと・版ごとに章で分け、通知は1件ずつファイルにして Cloud Storage に置きます。メタデータは JSON Lines で、1行ごとに id、structData、content(mimeType と uri)を書きます。
{"id":"np-a-std-2026-ch5","structData":{"media_id":"np_a",
"media_type":"newspaper","doc_kind":"media_standard",
"category":["health_food","cosmetics"],"section_kind":"industry",
"effective_from":"2026-04-01T00:00:00Z",
"effective_to":"2099-12-31T23:59:59Z"},
"content":{"mimeType":"application/pdf","uri":"gs://ad-std/np-a-std-2026-ch5.pdf"}}
doc_kind は媒体社の基準(media_standard)、媒体社の通知(media_notice)、業界の基準(industry_code)の3つです。業界の基準は media_id に業界団体の識別子(jba など)を入れ、どの媒体社がその業界の基準に従うかは、中継プログラムが持つ媒体社の一覧から決めます。
検索のたびに、中継プログラムが絞り込みの条件を作ります。 公式の構文では、文字の項目は ANY() に並べた値のどれかと完全に一致するかを見られ、日時の項目は ISO 8601 の文字列と比べられ、AND・OR・NOT と括弧で組み合わせられます。項目はスキーマで索引可能にしておかないと絞り込みに使えません。
media_id: ANY("np_a")
AND effective_from <= "2026-11-20T00:00:00Z"
AND effective_to >= "2026-11-20T00:00:00Z"
AND (category: ANY("health_food") OR section_kind: ANY("expression","responsibility"))
媒体社の識別子は、1回の検索に1つだけ入れます。 ANY("np_a","np_b") と並べると、2社の条文が混ざって答えの根拠になります。日付は掲載日です。 確認する日ではなく、その原稿が紙面に載る日・放送される日に効く版を引きます。
AIへ渡す前に整形する
- 原稿を表現の単位に分ける … キャッチ、ボディの1文ずつ、注釈の1行ずつに分け、番号を振ります。注釈は本文の表現とひも付けます(「※当社調べ」がどの「No.1」の注釈かを残す)
- 注意語の辞書を当てる … 表現ごとに当たった語と観点を付けます。数字(%、倍、円、年)を含む表現には「数値の根拠」の観点を付けます
- 検索の文を作る … 媒体社ごとに、観点の付いた表現を1つずつ「この表現について、掲載基準の該当する条文」の形にし、加えて商材の区分の章を引く文を1つ作ります
- 広告主の未発表の情報を外す … 発売前の商品名や価格は、検索の文では「新商品」「価格」に置き換えます
1番目で注釈をひも付けるのは、注釈が本文の表現の条件になっているからです。 「No.1」は、調査の主体と時期の注釈があるかで扱いが変わる媒体社があります。注釈を切り離して検索すると、条件を満たしているのに触れるおそれがあると出ます。
3番目で表現ごとに分けるのは、原稿全体を1つの文にすると目立つ表現の条文だけが引かれるからです。 媒体社3社・表現6つなら、商材の区分の分とあわせて21回です。
AIに処理させる
させるのは、1つの媒体社の掲載基準と通知の中から、渡された表現に関わる条文を探し、条文を本文のまま引用して、表現のどの語がその条文に関わるかを書くことです。
| させること | 中身 |
|---|---|
| 関わる条文を示す | 媒体社名、文書の名前、版、章と条文の番号 |
| 条文を引用する | 条文の本文を、言い換えずにそのまま |
| 関わる語を示す | 表現の中で、その条文に関わる語(「No.1」「治る」「元本」など) |
| 求められている条件を示す | 条文が求める表示や根拠(出典・調査の時期・注意書きなど)がある場合はそれを |
| 通知を示す | 業種や表現の扱いを変えた通知があれば、通知の日付と本文を |
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 掲載できるか・できないかの結論 | 決めるのは媒体社の考査 |
| 言い換えの案を作る | 表現を作るのは制作。考査担当が相談の中で示す |
| 法令の当てはめ | 法令に触れるかは、広告主と専門家が判断する |
| ほかの媒体社の条文を持ち出す | 媒体社ごとに基準が違う |
| 条文に無い一般論で補う | 根拠の無い指摘になる |
3行目は、掲載基準の「関係法令に違反するものは掲載しない」という条文から、AIが法令を推測で持ち出すのを止めるためです。
answer メソッドの設定は次のようにします。
| 設定 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
filter | 媒体社1社、掲載日に効く版、商材の区分または表現の章 | ほかの媒体社と別の版を引かない |
maxReturnResults | 10(既定) | 1社の1つの表現には十分 |
includeCitations | 有効 | 条文に出典を付ける(既定は無効) |
ignoreLowRelevantContent | 有効 | 関係の薄い条文で答えない |
groundingSpec.filteringLevel | FILTERING_LEVEL_HIGH | 根拠の弱い答えを出さない |
promptSpec.preamble | 下の指示 | 答え方の規則を与える |
filteringLevel を高くすると、根拠の弱い回答は生成されず、answerSkippedReasons に LOW_GROUNDED_CONTENT が返ります(関係の薄い内容で止まったときは NO_RELEVANT_CONTENT)。どちらも「触れるおそれなし」とは扱わず、 表の該当の欄に「条文を特定できず」と出して考査担当が基準を開きます。
指示内容を固定する
answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。中継プログラムは、媒体社名、媒体の種類、商材の区分、掲載日、表現の番号、表現の本文、ひも付いた注釈、観点を検索の文の先頭に付けます。
あなたは広告会社の考査担当として、入稿前の原稿の表現が、
1つの媒体社の広告掲載基準のどの条文に関わるかを調べる立場です。
読むのは考査担当で、媒体社に入稿する前に必ず確かめます。
【前提】
検索の対象は、この媒体社の掲載基準・通知と、この媒体社が従う
業界の基準のうち、掲載日に効く版だけです。
検索の文の最初に、媒体社名、媒体の種類、商材の区分、掲載日、
表現の番号、表現の本文、ひも付いた注釈、観点が並んでいます。
【答え方】
1. 表現に関わる条文を、文書の名前・版・章と条文の番号を付けて示す
2. 条文の本文を、言い換えずにそのまま引用する
3. 表現の中で、その条文に関わる語を「」で示す
4. 条文が求める表示や根拠があれば、それを書く
5. 業種や表現の扱いを変えた通知があれば、日付と本文を引用する
6. 媒体社の基準と業界の基準の両方に当たる場合は、分けて書く
【厳守事項】
- 「掲載できます」「掲載できません」「問題ありません」
「通ります」「NGです」と書かないでください。
- 言い換えの案や修正後の表現を書かないでください。
- 法律の名前や条文を、検索結果に無いのに書かないでください。
- 検索結果に無い条文、ほかの媒体社の基準で答えないでください。
- 一般的な広告の考え方で補わないでください。
- 注釈が付いている場合は、注釈が条文の求める表示に当たるかを
判断せず、「注釈あり:」として注釈の本文を並べてください。
- 関わる条文が見つからないときは、
「この媒体社の基準で該当する条文を確認できませんでした」
とだけ書いてください。
「注釈が当たるかを判断しない」を明記しないと、AIは注釈を読んで「出典の表示があるため基準を満たしています」と書きます。 その一文は、そのまま「この表現は大丈夫」と読まれます。注釈が足りているかは媒体社の運用で決まるので、条文と注釈を並べて見せるところで止めます。
言い換えの案を禁じるのは、制作と広告主の合意のない原稿が回りはじめるからです。
出力形式を固定する
answer メソッドの返り値と原稿の項目を、中継プログラムが次の形にまとめます。
{
"manuscript_id": "",
"manuscript_version": 0,
"insertion_date": "",
"product_category": "",
"expressions": [ { "no": "", "text": "", "notes": [], "viewpoints": [] } ],
"findings": [
{ "expression_no": "", "media_id": "", "status": "cited | not_found | skipped",
"citations": [ { "doc_kind": "media_standard | media_notice | industry_code",
"title": "", "version": "", "article": "",
"quote": "", "quote_verified": true, "uri": "" } ],
"related_words": [], "required_display": "" }
],
"flags": []
}
引用は references から取ります。quote_verified は、引用の文字列がチャンクの本文にそのまま含まれるかを中継プログラムが照合した結果です。 含まれなければ false にし、考査担当が原文を開きます。引用の位置(startIndex/endIndex)は UTF-8 のバイト数なので、日本語の文を文字数で切るとずれます。
確認の画面では、行に表現、列に媒体社を並べた表にします。 欄には条文の番号と短い引用、not_found なら「条文を特定できず」を出します。
flags | 立てる条件 |
|---|---|
conclusion_words | 答えに「掲載できます」「問題ありません」などの語がある(語を消して担当者へ) |
quote_mismatch | quote_verified が false の引用がある |
notice_present | 媒体社の通知が引かれた |
prior_consultation | 引かれた条文や通知が、事前の相談を求めている |
media_split | 同じ表現について、媒体社ごとに条文の有無が分かれた |
no_version | 掲載日に効く版の基準が登録されていない媒体社がある |
media_split は、厳しい1社に合わせて全社分を直すか、その1社だけ別の原稿にするかを、営業と広告主が決めるための印です。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 案件管理システム | 原稿の番号で読み出し | 原稿、商材の区分、出稿先、掲載日を読む。書き込まない |
| Agent Search | answer メソッド | 媒体社ごとの条文の引用 |
| 考査担当の確認の画面 | 中継プログラムが表を作る | 表現×媒体社の表、flags、原文へのリンク |
| 制作・営業 | 考査担当が書いた相談をメールで送る | 修正の相談 |
| 媒体社の考査の窓口 | 考査担当が連絡する | prior_consultation の事前相談 |
修正の相談は考査担当が書きます。 表をそのまま送ると、引用が「指示」として読まれ、意図しない直し方が起きます。
人が確認する
掲載基準に触れるかを判断するのはいつも考査担当で、掲載するかを決めるのはいつも媒体社です。
- 版を確かめる … 表の上に出る媒体社ごとの版が、掲載日に効くものかを見ます
no_versionとquote_mismatchを先に片づける … どちらも、表の中身を信じてよいかの前提です- 条文を読む … 引かれた条文が、表現のどの語に関わっているかを原文で確かめます。
not_foundの欄も、商材の区分の章は自分で開きます - 媒体社ごとの違いを整理する …
media_splitの表現は、営業と相談の進め方を決めます - 事前相談に回す …
prior_consultationのものは、媒体社の考査の窓口に原稿を見せて相談します
3番目の not_found を省かないでください。 検索の取りこぼしと本当に条文が無いことは、表の上では同じ見た目です。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 掲載日が空 | 検索せず、制作に掲載日を入れてもらう |
| 掲載日に効く版の基準が無い媒体社がある | no_version。その媒体社の欄は空にし、写しの取り寄せを考査担当に知らせる |
| 出稿先に、基準を登録していない媒体社がある | その媒体社は従来どおり担当者が見る。表に「未登録」と出す |
| 原稿が画像だけ(文字の入っていない版下) | 文字を起こしてから登録してもらう。画像の中の文字を推測で読まない |
| 答えに結論の語が出た | 語を消し、conclusion_words で担当者へ |
| 引用が原文に無い | quote_mismatch。その引用を表から外し、担当者が原文を開く |
| 検索の呼び出しが失敗した | 失敗した媒体社の欄を空にして画面に載せ、担当者が従来どおり見る |
| 掲載日の後に基準が改定される予定がある | 掲載日に効く版で見る。改定後の版が登録済みなら、参考として並べる |
3行目は、新しい媒体社に初めて出すときに必ず起きます。 「未登録」と出せば、「問題なし」と読む事故を防げます。
記録を残す
- 原稿の版、出稿先、掲載日、表現の分け方と付けた観点
- 媒体社ごとの絞り込みの条件と、そのとき効いていた基準の版
- answer メソッドの返り値の全文(
answerText、citations、references、answerSkippedReasons) - 表現×媒体社の表と
flags、考査担当が書いた修正の相談の全文 - 媒体社の考査の結果(差し戻しの有無と理由)を、後から考査担当が記録したもの
最後の行は、検索の取りこぼしを見つけるための記録です。 表で not_found だったのに媒体社から差し戻された表現があれば、その条文の章の分け方か、注意語の辞書が足りていません。 月に一度、差し戻しの記録と表を突き合わせ、辞書と章の区分を直します。
04実装レベルの3段階
最小構成は確かめるための段階で、本数はさばけません。 半自動化で、20分が12分程度になります。 探す時間は減りますが、表現を分けて媒体社ごとに入れ直す手間と、結果を表にまとめる手間が残ります。本格構成で7分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、出稿先が3社なら3回、5社なら5回くり返していた作業が、1回の登録で済むことです。
05工数削減シミュレーション
導入後 360件 × 7分 ÷ 60 = 42 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 新聞・ラジオ・交通広告・雑誌など、媒体社の考査を通して掲載する広告を月に数百本扱う広告会社。1本の原稿を複数の媒体社に出すことが多く、媒体社ごとに掲載基準の書き方と厳しさが違う場合。健康食品・化粧品・医療・金融・不動産など、基準に業種ごとの定めがある広告主を多く持つ場合。社内の事前考査が担当者の経験に頼っていて、媒体社から差し戻されて初めて基準に気づくことがある場合。
- 扱う媒体が1〜2社に限られ、担当者が基準を覚えていられる場合。ネット広告の配信面の審査ポリシーが中心の場合(媒体社の考査ではなく配信事業者の審査の話になります)。原稿が掲載できるかどうかの結論をAIに出させたい場合(この構成は触れるおそれのある条文を並べるだけで、掲載の可否は媒体社の考査が決めます)。媒体社から受け取った掲載基準を社外のクラウドに置くことが、媒体社との取り決めで認められていない場合。
07最小構成で試す方法
- 出稿の多い媒体社を2社(新聞1紙とラジオ1局など)選び、それぞれの掲載基準のうち、表現の章と、健康食品・化粧品など多い業種の章を用意する
- 過去3か月の原稿から20本を選ぶ(媒体社から差し戻されたもの、2社で扱いが分かれたものを数本入れる)
- 手元のAIサービスに1社分の章を貼り、第7章の指示と原稿の表現を1つずつ入れる。もう1社は別の会話で同じことをする
- 出てきた条文を、当時の考査担当の確認と媒体社の考査の結果と突き合わせる
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 当時の差し戻しと同じ条文を引いた | 検索基盤への取り込みに進む |
| 「掲載できます」「問題ありません」と書いた | 指示で直るか試す。直らなければ結論の語の照合を最初から作る |
| 1社目の会話でもう1社の基準を持ち出した | 貼った章が混ざっている。媒体社ごとに分ける設計の理由がここにある |
| 注釈を読んで「満たしている」と書いた | 注釈を並べるだけにする指示を足す |
最小構成でも、複数の媒体社を1つの会話に貼らないでください。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| ほかの媒体社の条文が答えに混ざる | 1回の検索に媒体社の識別子を1つだけ入れる |
| 「問題ありません」と書かれる | 結論の語を禁じ、出たら照合で消して担当者へ |
| 注釈を読んで「基準を満たす」と判断する | 注釈は並べるだけにし、判断させない |
| 条文が見つからない欄が「問題なし」と読まれる | not_found を表に明示し、業種の章は担当者が自分で開く |
| 古い版の基準が引かれる | 掲載日で版を絞る。前の版は終わりの日を書いて残す |
| 媒体社の通知を見落とす | 通知を media_notice として同じデータストアに入れ、引かれたら印を付ける |
| 業界の基準を媒体社の基準と取り違える | doc_kind を分け、表で並べて見せる |
| 引用が原文に無い | 引用の文字列をチャンクの本文と照合し、無ければ外す |
| 新しい媒体社が「未登録」のまま流れる | 表に「未登録」と出し、写しの取り寄せを知らせる |
上の4行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも事前考査の結果が「通ります」と読まれる方向の失敗で、AIの外の規則で守ります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 媒体社から受け取った掲載基準と通知、入稿前の原稿(未発表の商品名・価格・キャンペーンを含む)、広告主名です。個人の情報は原則として扱いません。
- 掲載基準を社外に出さない … 媒体社の掲載基準や考査の基準には、媒体社が広告会社にだけ渡している文書があります。写しをクラウドに置いてよいかを、媒体社との取り決めで先に確かめてください。 検索の画面は考査担当だけが使い、制作・営業・広告主には条文の番号と必要な部分だけを伝えます
- 未発表の情報を検索の文に入れない … 発売前の商品名や価格は、前処理で置き換えます。原稿の全文は記録に残しますが、検索の文には要るところだけを入れます
- 掲載の可否を決めない … この構成が出すのは、触れるおそれのある条文までです。事前考査の結果を広告主に「掲載できる」と伝えるのは、媒体社の考査を経てからにしてください
- 法令の当てはめをしない … 景品表示法や医薬品等の法令に触れるかは、広告主と専門家の判断です。媒体社の基準の「関係法令に違反するもの」という条文が引かれたら、法令の確認を広告主に求めるところまでにします
- データの置き場所を確かめる … 公式では、データストアの場所は
global・us・euで、日本のリージョンはありません。媒体社から受け取った文書と原稿をどこに置くかを、社内の規程と媒体社との取り決めに合わせて決めてください
誤りが起きた場合のリスクは、触れるおそれのある表現を見落として入稿し、媒体社から差し戻されることと、事前考査の結果が「掲載できる」と誤って広告主に伝わることです。 前者は検索の取りこぼしから、後者はAIの言い回しから起きます。媒体社ごとの絞り込み、not_found の明示、結論の語の照合で、どちらも設計の側で防ぎます。
10まず何から始めるか
1週目:媒体社の基準の写しをそろえる
出稿の多い上位5社の掲載基準・考査の基準・取扱いの細則を、最新の版で集めます。クラウドに置いてよいかを媒体社に確かめるのも、この週に行います。 あわせて、過去1年の媒体社からの通知を集めます。
2週目:20本で試す
媒体社ごとに会話を分け、過去の原稿20本の表現を入れます。ほかの媒体社の条文を持ち出していないか、結論の語を書いていないか、注釈を判断していないかを最優先で見ます。
3週目:章を分けて区分を付ける
5社の基準を章に分け、category と section_kind、版の期間を付けます。業種の章と表現の章の区別に迷うものは、両方の区分を付けます。 注意語の辞書の最初の版も作ります。
4週目:データストアを作り、考査担当が検索の画面で使う
基準と通知を取り込み、考査担当が媒体社を選んで表現を入れる運用を始めます。媒体社から差し戻された表現が、検索で引けるかを毎日見ます。
2か月目: 原稿の登録を起点にした表現の分割、媒体社ごとの呼び出し、引用の照合、表現×媒体社の表を作り、新聞から始めます。3か月目以降: ラジオと交通広告に広げます。媒体社から改定の写しが届くたびに版の期間が更新され、差し戻しの記録と表の not_found を毎月突き合わせて辞書と章の区分が直されている状態になった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの searchSpec.searchParams に filter を書けること、maxReturnResults が既定10・最大25であること。includeCitations(既定は false)、ignoreLowRelevantContent、promptSpec.preamble。groundingSpec の filteringLevel(FILTERING_LEVEL_LOW/FILTERING_LEVEL_HIGH)、根拠の弱い回答で LOW_GROUNDED_CONTENT、関係の薄い内容で NO_RELEVANT_CONTENT が返ること。引用の startIndex/endIndex が UTF-8 のバイト単位であること | Google Cloud: Get answers and follow-ups | 2026-10-15 |
絞り込みの ANY() が列挙した値との完全一致を見ること、AND/OR/NOT と括弧での組み合わせ、日時の項目を ISO 8601 の文字列と比べられること、項目を索引可能にする必要があること | Google Cloud: Filter custom search for structured or unstructured data | 2026-10-15 |
レイアウト パーサーが PDF・HTML・DOCX などの段落・表・見出しを検出すること。チャンクの大きさが100〜500トークンで、includeAncestorHeadings(既定は false)で見出しを付けられること。文書のチャンクの設定がデータストアの作成後に変えられないこと | Google Cloud: Parse and chunk documents | 2026-10-15 |
データストアの場所が global・us・eu で、日本のリージョンが無いこと | Google Cloud: Locations | 2026-10-15 |
| 日本民間放送連盟 放送基準が2023年5月24日改正・2024年4月1日施行であること。第15章の「(124) 原則として、最大級またはこれに類する表現をしてはならない」「(127) 統計・学術用語・文献などを引用して、実際以上に科学的と思わせるおそれのある表現をしてはならない」、第16章が医療・医薬品・化粧品などの広告を扱い、(128) で健康食品などの広告で関係法令などに触れるおそれのあるものを取り扱わないとしていること | 日本民間放送連盟: 放送基準 | 2026-10-15 |
| 日本新聞協会が1958年に「新聞広告倫理綱領」を、1976年に綱領の趣旨に基づく「新聞広告掲載基準(モデル)」を制定し、加盟する新聞各社が各社個別の広告倫理綱領や広告審査基準に基づいて審査していること | 日本新聞協会: 「ステルスマーケティングに関する検討会報告書(案)」に対する意見(2022年12月14日) | 2026-10-15 |
掲載の可否は、各媒体社の考査と掲載基準に従ってください。 本記事は Google Cloud の公式ドキュメントと、業界団体の公開資料で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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