Media > AI活用ユースケース > 品質管理 > 自動車ディーラーの整備士が、入庫した車の症状と故障コードから、メーカーの技術情報とサービスキャンペーンの資料を引き、当てはまる対策と手順を探す

自動車ディーラーの整備士が、入庫した車の症状と故障コードから、メーカーの技術情報とサービスキャンペーンの資料を引き、当てはまる対策と手順を探す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

整備士が入庫した車の症状と故障コードを入れると、その車の型式と車台番号の範囲に当たるメーカーの技術情報・サービスキャンペーン・店舗の過去の修理記録から、当てはまりうる対策と手順の節を引用して並べます。リコール等の対象かはメーカーの照会で確かめます。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
連携・自動化
Python
対象業界
その他/小売
対象部門
品質管理
対象業務
情報検索
主な課題
人手が足りない/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
120h/月
AI導入後
48h/月
想定削減
60%
年間削減
864h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 整備士が整備の管理システムで問診の内容と車台番号・型式・走行距離を読み、スキャンツールで故障コードを読む
  2. メーカーのポータルで、車名と症状の言葉や故障コードで技術情報を検索する
  3. 出てきた文書を1つずつ開き、適用の型式と車台番号の範囲に入庫した車が入るかを確かめる
  4. メーカーの車台番号の照会で、リコール・改善対策・サービスキャンペーンの対象と実施の状況を確かめる
  5. 当てはまる文書が見つからなければ、ベテランの整備士や技術担当に聞く
  6. 修理書の作業の手順を開き、作業に入る
導入後(After)
  1. 人受付担当が問診の内容を整備の管理システムに入れ、整備士が故障コードを入れる
  2. 自動中継プログラムが、入庫の番号から型式・車台番号・走行距離・初度登録を読み、車台番号を型式の部分と連番に分ける
  3. 自動型式と連番で絞って、Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
  4. 自動返った引用を、技術情報・サービスキャンペーン等・過去の修理記録に分けて並べ、部品番号と数値が原文にあるかを確かめる
  5. 人整備士がサービスキャンペーン等の候補について、メーカーの車台番号の照会で対象と実施の状況を確かめる
  6. 人整備士が候補の技術情報を原文で読み、修理書の手順で作業する
  7. 人候補に当てはまるものが無ければ、技術担当に相談する。作業の結果は整備の管理システムに記録する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 整備士が整備の管理システムで問診の内容と車台番号・型式・走行距離を読み、スキャンツールで故障コードを読む
  2. メーカーのポータルで、車名と症状の言葉や故障コードで技術情報を検索する
  3. 出てきた文書を1つずつ開き、適用の型式と車台番号の範囲に入庫した車が入るかを確かめる
  4. メーカーの車台番号の照会で、リコール・改善対策・サービスキャンペーンの対象と実施の状況を確かめる
  5. 当てはまる文書が見つからなければ、ベテランの整備士や技術担当に聞く
  6. 修理書の作業の手順を開き、作業に入る

(a)検索の言葉が合わない。 問診の「コトコト音」が、技術情報では「異音(打音)」と書かれています。言葉を変えて何度も検索し、出てきた何十件から範囲に入るものを1つずつ確かめます。

(b)適用の範囲を確かめるのに時間がかかる。 文書の冒頭か末尾の表に型式と車台番号の範囲があり、開くまで当たるかどうかが分かりません。 範囲の外の文書を読み進めてしまうこともあります。

(c)当たりの付け方がベテランに偏る。 「この型式のこの音なら、あの対策」と知っているのはベテランで、若い整備士は聞くまで分かりません。 ベテランは自分の作業の手を止めて答えることになります。

(d)探す時間が作業の時間を削る。 整備士の人数は足りず、1台に15分の調べものが入ると、その日に預かれる台数が減ります。

  1. 【人】 受付担当が問診の内容を整備の管理システムに入れ、整備士が故障コードを入れる
  2. 【自動】 中継プログラムが、入庫の番号から型式・車台番号・走行距離・初度登録を読み、車台番号を型式の部分と連番に分ける
  3. 【自動】 型式と連番で絞って、Agent Search(Vertex AI Search)の answer メソッドを呼ぶ
  4. 【自動】 返った引用を、技術情報・サービスキャンペーン等・過去の修理記録に分けて並べ、部品番号と数値が原文にあるかを確かめる
  5. 【人】 整備士がサービスキャンペーン等の候補について、メーカーの車台番号の照会で対象と実施の状況を確かめる
  6. 【人】 整備士が候補の技術情報を原文で読み、修理書の手順で作業する
  7. 【人】 候補に当てはまるものが無ければ、技術担当に相談する。作業の結果は整備の管理システムに記録する

3番目で、車台番号の範囲の外の文書は検索の対象にもなりません。 答えの根拠に、別の年式の対策が入る余地をなくします。

5番目を人の作業に残すのは、対象かどうかの確定は仕様の違いまで見るメーカーの照会でしか決まらないからです。 実施済みかどうかも、メーカーの照会で確かめます。

02今回想定するシステム構成

構成図
メーカーの技術情報  サービスキャンペーン等の資料  店舗の過去の修理記録
   │  型式・車台番号の範囲・系統・故障コード・文書の種類を付ける
   ▼
Cloud Storage ── メタデータ(JSON Lines)
   ▼
Agent Search(Vertex AI Search)── データストア(レイアウト パーサー、図表の説明)
   │   model_code/serial_from/serial_to/system/dtc/doc_kind
   ▼
整備の管理システム ──【トリガー】整備士が故障コードを入れて検索を押す
   ▼
中継プログラム(Python、Cloud Run)
   ├──▶ 車台番号を型式と連番に分ける
   ├──▶ answer メソッド(型式と連番の範囲で絞る)
   └──▶ 種類ごとに並べ、部品番号と数値を原文と照合
   ▼
整備士の画面(候補と原文へのリンク)
   ▼【人】メーカーの車台番号の照会で、対象と実施の状況を確かめる
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドAzure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Python。Cloud Run で動かし、整備の管理システム・検索・整備士の画面をつなぐ)Node.js で同じものを書く
保管Cloud Storage(技術情報・資料・修理記録の写しとメタデータ、検索の記録)─

整備の管理システムからは入庫の項目を読むだけで、作業の記録には書き込みません。 記録するのは整備士です。メーカーのポータルの車台番号の照会も、この構成からは呼びません。 照会の仕組みはメーカーごとに違い、販売会社の担当者が画面で行う前提にします。

検索の土台は、Agent Search(Vertex AI Search から改称中)の answer メソッドです。 公式のドキュメントでは、検索の指定に絞り込みの filter を書け、回答の生成の指定には引用を付ける includeCitations(既定は無効)、関係の薄い内容で答えない ignoreLowRelevantContent、答え方を指示する promptSpec.preamble があります。絞り込みの構文は、数の項目を <= や >= で数と比べられ、IN() で範囲も指定できます。 この構成は、ここを車台番号の連番の範囲に使います。

技術情報の取り込みには、レイアウト パーサーを使います。 公式では、段落・表・見出しのほか、図(画像)の説明を作ってチャンクに付ける設定(Image annotation)と、表の説明を付ける設定(Table annotation)があり、データストアを作るときに選びます。技術情報の部品の位置の図や、適用範囲の表が、検索に引かれやすくなります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は、整備士が整備の管理システムで故障コードを入れて検索のボタンを押したことです。 受付の時点では故障コードがまだ無いので、問診だけで先に動かすことはしません。 故障コードが出ない症状(音、におい、振動)は、故障コードの欄を「なし」にして押します。

整備の管理システムの項目使い道
車台番号型式の部分と連番に分け、範囲の絞り込みに使う
型式絞り込み
初度登録・走行距離検索の文に付ける(走行距離の条件がある技術情報のため)
問診の内容検索の質問文
故障コード絞り込みと検索の文
整備士が見た様子検索の文に足す(任意)

もう一つのトリガーは、メーカーのポータルに新しい技術情報や資料が出たことです。 サービスの技術担当が毎日ポータルを見て、新しい文書をダウンロードし、メタデータを書いて置きます。取り消しや差し替えの通知が出た文書は、消さずに status を superseded にします。 取り込みは毎晩です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
入庫の項目上の表の項目(お客様の名前・住所・電話は渡さない)整備の管理システム
技術情報症状、原因、対策の部品と部品番号、作業の手順、適用の型式と車台番号の範囲メーカーのポータル(PDF)
サービスキャンペーン等の資料リコール・改善対策・サービスキャンペーンの内容、対象の範囲、作業の要領メーカーのポータル(PDF)
過去の修理記録型式、車台番号、走行距離、症状、故障コード、原因、交換した部品、作業の結果整備の管理システムから1件ずつ作る
症状の言い換えの一覧問診の言葉と技術情報の言葉の対応(「コトコト音」と「打音」など)技術担当が作る

質を決めるのは、技術情報の適用の範囲をメタデータに正しく写すことです。 技術情報の適用範囲は、型式ごとに車台番号の始まりと終わりで書かれていることが多く、1つの文書に型式が3つあれば、範囲も3つあります。 そこで、技術情報を「型式と範囲の組」ごとに1行のメタデータにし、同じ文書を複数の行から指します。

過去の修理記録は、技術情報より下に置きます。 記録は「この店で、この車で、こうしたら直った」という1件の事実で、原因の切り分けの参考にはなりますが、対策の根拠にはなりません。

Step3

データの取得方法を決める

技術情報と資料は1件ずつPDFで Cloud Storage に置き、メタデータは JSON Lines で、1行ごとに id、structData、content(mimeType と uri)を書きます。車台番号の範囲は数の項目にします。

{"id":"tsb-2025-0318-a","structData":{"doc_kind":"tech_bulletin",
 "model_code":"ABC1","serial_from":100001,"serial_to":158400,
 "system":["steering","suspension"],"dtc":[],"status":"active",
 "issued_date":"2025-11-20T00:00:00Z"},
 "content":{"mimeType":"application/pdf","uri":"gs://svc-docs/tsb-2025-0318.pdf"}}

入庫のたびに、中継プログラムが絞り込みの条件を作ります。 公式の構文では、文字の項目は ANY() で列挙した値との完全一致、数の項目は <=・>= などで数との比較、IN() で範囲の指定ができ、AND・OR・NOT と括弧で組み合わせられます。項目は索引可能にしておく必要があります。

model_code: ANY("ABC1")
AND serial_from <= 123456 AND serial_to >= 123456
AND NOT status: ANY("superseded")

故障コードがある場合は、絞り込みではなく検索の文に入れます。 技術情報には故障コードを書いていないものもあり、故障コードで絞ると、コードの書かれていない対策が落ちます。 故障コードの一致は、並べるときに中継プログラムが印を付けるだけにします。

過去の修理記録は、型式で絞り、連番の範囲は見ません。 同じ型式の近い連番の記録も、切り分けの参考になるからです。記録は別の呼び出しにし、技術情報と混ぜません。

データストアは、技術情報・資料用と過去の修理記録用で分けます。 修理記録は毎晩増え、技術情報より件数が多くなります。同じデータストアに入れると、件数の多い記録が検索の上位を占め、技術情報が押し出されます。

技術情報の図には、レイアウト パーサーの Image annotation を使います。 部品の位置の図や配線の図に説明が付き、「助手席側の足元のコネクタ」のような問診の言葉からも図の載った節が引かれやすくなります。図の説明はメーカーの原文ではなくパーサーが付けた文なので、根拠として写すのは図そのものと本文の節の番号にします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 車台番号を分ける … 車検証の車台番号を、型式の部分と連番に分けます。輸入車でシリアル番号の書式が違う車は、連番に分けられないので範囲の絞り込みを外し、型式だけで絞ります
  2. 問診の言葉を言い換える … 症状の言い換えの一覧を当て、問診の言葉に技術情報の言葉を添えます。もとの言葉は消しません
  3. 検索の文を作る … 系統(エンジン、変速機、ステアリング、空調、電装など)、症状、故障コード、走行距離を1つの文にします
  4. 技術情報の適用範囲を写す … 新しい技術情報を置くとき、技術担当が範囲の表から型式と始まりと終わりの連番を書きます。写し間違いを防ぐため、2人で読み合わせます
  5. 過去の修理記録を整える … お客様の名前・住所・電話・ナンバーを外し、型式・連番・症状・原因・部品・結果だけの文書にします

4番目の読み合わせを省かないでください。 範囲の連番を1桁写し間違えると、当たるはずの車に技術情報が出ず、当たらない車に出ます。 検索の精度より、この写しの正しさが効きます。

2番目の言い換えの一覧は、技術担当が月に一度、候補が出なかった問診の言葉を集めて足します。 「キュルキュル」「ガタガタ」のような音の言葉は受付担当ごとに書き方が違い、最初の版では足りません。

Step5

AIに処理させる

させるのは、絞り込まれた技術情報・資料の中から、症状と故障コードに当てはまりうる文書を探し、症状・原因・対策・手順の節を本文のまま引用して並べることです。

させること中身
当てはまりうる技術情報を示す文書の番号、題名、発行日、適用の型式と範囲
症状と原因を引用する文書に書かれた症状と原因を、言い換えずに
対策と手順の節を示す対策の部品と部品番号、作業の手順の節の番号
確かめる事実を挙げる文書の症状と見比べるために確かめること(発生の条件、走行距離、音の出る場所など)
サービスキャンペーン等を並べる系統と範囲が重なる資料を、「メーカーの照会で確認」の印付きで
させないこと理由
原因の断定整備士の点検と診断で決める
リコール等の対象・実施済みの判断メーカーの車台番号の照会で決まる
部品番号・締め付けの値・規定の値を書き換える1文字の違いで別の部品・別の値になる
範囲の外の文書や取り消された文書を使う当てはまらない対策になる
修理書に無い作業の手順を作る安全に関わる

3つ目は、引用の照合で守ります。 中継プログラムが答えの中の部品番号と数値(N·m、mm、V などの付いた数)を拾い、引用したチャンクの本文にそのまま含まれるかを確かめます。 含まれなければ、その数を伏せて原文を開くよう表示します。

answer メソッドの設定は次のようにします。

設定値理由
filter型式、連番の範囲、取り消しの除外範囲に入る文書だけを引く
maxReturnResults10(既定)1台の症状には十分。最大は25
includeCitations有効文書と節に出典を付ける(既定は無効)
ignoreLowRelevantContent有効関係の薄い文書で答えない
groundingSpec.filteringLevelFILTERING_LEVEL_HIGH根拠の弱い答えを出さない
promptSpec.preamble下の指示答え方の規則を与える

根拠の弱い答えは生成されず、answerSkippedReasons に LOW_GROUNDED_CONTENT が返ります。 そのときは「範囲に入る技術情報で当てはまるものを確認できませんでした」と出し、過去の修理記録だけを並べて技術担当への相談を勧めます。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドの promptSpec.preamble に、次の指示を入れます。中継プログラムは、型式、走行距離、系統、故障コード、問診の言葉と言い換えを検索の文の先頭に付けます。

あなたは自動車ディーラーのサービス工場で、整備士の調べものを
手伝う立場です。読むのは整備士で、作業の前に必ず原文と
修理書を確かめます。

【前提】
検索の対象は、この車の型式と車台番号の範囲に当たる、メーカーの
技術情報とサービスキャンペーン等の資料だけです。

【答え方】
1. 症状と故障コードに当てはまりうる技術情報を、文書の番号・題名・
   発行日を付けて、当てはまりそうな順に3件まで示す
2. 各文書の症状と原因を、本文のまま引用する
3. 対策の部品と部品番号、作業の手順の節の番号を、本文のまま書く
4. 文書の症状と見比べるために整備士が確かめることを、3つまで挙げる
5. 系統が重なるリコール・改善対策・サービスキャンペーンの資料が
   あれば、届出番号や資料の番号を書き、「メーカーの照会で確認」と
   書き添える

【厳守事項】
- 「原因は〜です」と断定しないでください。
  「この文書の症状と一致する可能性があります」と書いてください。
- 部品番号、締め付けトルク、規定の値は、本文の文字のまま書き、
  丸めたり単位を換えたりしないでください。
- リコール等の対象である、実施済みである、とは書かないでください。
- 検索結果に無い作業の手順や、一般的な整備の知識で補わないでください。
- お客様の名前や車の登録番号を書かないでください。
- 当てはまるものが無いときは、
  「範囲に入る技術情報で当てはまるものを確認できませんでした」
  とだけ書いてください。

「当てはまりそうな順に3件まで」と数を決めるのは、候補を10件並べると整備士が全部を読まなくなるからです。 4件目以降は、画面で開けば見られるようにします。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの返り値と入庫の項目を、中継プログラムが次の形にまとめます。

{
  "work_order_id": "",
  "model_code": "",
  "serial_no": 0,
  "serial_filter_applied": true,
  "dtc": [],
  "bulletins": [
    { "doc_id": "", "title": "", "issued_date": "", "dtc_match": false,
      "symptom_quote": "", "cause_quote": "", "parts": [],
      "procedure_section": "", "numbers_verified": true, "uri": "" }
  ],
  "campaign_candidates": [ { "doc_id": "", "kind": "recall | improvement | service_campaign",
                             "title": "", "maker_check": "required" } ],
  "past_repairs": [ { "record_id": "", "symptom": "", "cause": "", "parts": [] } ],
  "facts_to_check": [],
  "flags": []
}

campaign_candidates の maker_check は、いつも required です。 画面では、この欄だけ色を変え、「メーカーの照会で対象と実施の状況を確かめてください」と出します。国土交通省のリコール制度のページによれば、リコール・改善対策の実施済みの識別は、令和8年4月1日以降、各メーカーのホームページの車台番号による検索で確かめられるようになり、届出時の識別の方法と違う場合があります。車体のペイントの印で実施済みと見なさないよう、画面にも書いておきます。

flags立てる条件
no_serial_filter車台番号を連番に分けられず、範囲の絞り込みを外した
numbers_unverified部品番号や数値が引用の本文に見つからない
assertive_words答えに「原因は〜です」「対象です」「実施済み」などの語がある
skippedanswerSkippedReasons が返った
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
整備の管理システム入庫の番号で読み出し型式、車台番号、走行距離、問診、故障コード。書き込まない
Agent Searchanswer メソッド(技術情報・資料と、過去の修理記録の2回)候補の引用
整備士の画面中継プログラムが表示候補、原文へのリンク、flags
メーカーのポータル整備士が画面で照会リコール等の対象と実施の状況、修理書
技術担当画面から相談のボタンskipped や候補の無いものを、入庫の項目と検索の結果を付けて送る

作業の結果は、整備士が整備の管理システムに記録し、翌晩に過去の修理記録として取り込みます。 「技術情報のとおりの対策で直った」「直らず別の原因だった」が残り、次の検索の材料になります。

Step9

人が確認する

原因を決めるのはいつも整備士の点検と診断で、作業の手順はいつも修理書に従います。

  1. 車が範囲に入っているかを確かめる … no_serial_filter が立っていたら、候補の文書の適用範囲を原文で読みます
  2. 候補を原文で読む … 引用の前後の、発生の条件と適用の除外を確かめます
  3. キャンペーン等はメーカーで照会する … 対象と実施の状況を、車台番号で照会します
  4. 修理書で作業する … 締め付けの値や規定の値は、修理書の値で作業します

2番目の「適用の除外」を読み落とさないでください。 技術情報には、範囲に入っていても「寒冷地仕様を除く」のような但し書きがあります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
車台番号を連番に分けられない(輸入車のシリアル番号など)型式だけで絞り、no_serial_filter で範囲を原文で確かめるよう出す
型式に当たる技術情報が1件も無い過去の修理記録だけを並べ、技術担当への相談を勧める
故障コードが複数あるコードごとの系統に分けて検索し、候補を系統ごとに並べる
部品番号や数値が引用に無いnumbers_unverified。その数を伏せて原文を開くよう出す
答えに断定の語が出た語を消し、assertive_words で整備士へ
取り消された技術情報しか当たらない出さずに、差し替えの文書が登録されているかを技術担当に確かめる
検索の呼び出しが失敗した整備士が従来どおりポータルで検索する
Step11

記録を残す

  • 入庫の番号、型式、連番、走行距離、問診の言葉と言い換え、故障コード
  • 絞り込みの条件と、そのとき登録されていた技術情報の件数
  • answer メソッドの返り値の全文(answerText、citations、references、answerSkippedReasons)
  • 画面に出した候補と flags、整備士が開いた文書
  • 作業の結果(候補の対策で直ったか)

最後の行が、この構成を育てる記録です。 候補の1件目で直った割合を月ごとに見ます。下がってきたら、適用範囲の写しの誤りか、言い換えの一覧の不足を疑います。

04実装レベルの3段階

最小構成:型式ごとの技術情報を手元のAIサービスに貼り、1台ずつ入れる / 症状から候補を探して引用する
半自動化:上記+技術情報と資料をデータストアに取り込み、整備士が検索の画面で型式と連番を入れて使う / 範囲で絞った検索と引用
本格構成:上記+整備の管理システムから呼び、車台番号の分割、言い換え、技術情報と過去の修理記録の検索、数値の照合まで自動で行う / 入庫の項目から候補の一覧まで

最小構成は確かめるための段階で、台数はさばけません。 半自動化で、15分が9分程度になります。 範囲の確かめは減りますが、型式と連番を打ち込む手間と、過去の修理記録を別に探す手間が残ります。本格構成で6分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、車台番号を打ち込まずに済み、部品番号の照合と過去の修理記録の検索が同時に終わることです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の期間に、候補が出なかった問診の言葉と、範囲の写しの誤りが集まります。それを直してから本格構成に進むほうが、整備士の信頼を早く得られます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
15 名
月間件数
480 件
1件あたり現在時間
15 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  480件 × 15分 ÷ 60 = 120 時間/月
導入後 480件 × 6分 ÷ 60 = 48 時間/月
月間削減時間
72h
削減率
60%
年間削減時間
864h
年間金額換算(時間単価3,200円)
276万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 1つのメーカーの新車を販売し、サービス工場を複数の店舗に持つ自動車ディーラー。不具合の症状で入庫する車が月に数百台あり、メーカーの技術情報やサービスキャンペーンの資料が多くて探すのに時間がかかる場合。若い整備士が増え、症状から当たりを付けるのがベテランの経験に頼っている場合。メーカーから受け取った技術情報を社内の検索に置くことが、メーカーとの契約で認められている場合。
向いていない
  1. 多くのメーカーの車を扱う整備工場で、メーカーの技術情報をまとめて受け取る契約が無い場合。車検や定期点検など、症状の無い入庫が中心の場合。リコールやサービスキャンペーンの対象かどうかをAIの検索で確定させたい場合(対象かどうかはメーカーの車台番号による照会で確かめる前提です)。整備の作業の可否や手順をAIの答えだけで決めたい場合。

07最小構成で試す方法

  1. 入庫の多い型式を2つ選び、その型式の技術情報のうち、過去1年に使ったものを20件集める
  2. 過去3か月の入庫から、技術情報の対策で直った20台と、別の原因だった10台を拾う
  3. 手元のAIサービスに技術情報を貼り、第7章の指示を貼って、型式・車台番号・問診・故障コードを1台ずつ入れる
  4. 出てきた候補を、実際に直した対策と突き合わせる
出てきた内容判断
実際に直した対策の文書が3件以内に出た検索基盤への取り込みに進む
範囲の外の車に技術情報を当てた車台番号の範囲の絞り込みが要ると分かる。 本番では検索の前に外す
部品番号を書き換えた、締め付けの値を丸めた照合を最初から作る
「原因は〜です」と断定した指示で直るか試す

2行目は、最小構成ではほぼ必ず起きます。 貼った文書の範囲の表をAIが読み落とすためで、範囲の判定をAIに任せない設計の理由がここで分かります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
範囲の外の車に技術情報が出る連番を数の項目にし、検索の前に範囲で絞る
範囲の写し間違いで当たるはずの文書が出ない新しい文書は2人で読み合わせる
故障コードで絞ってコードの無い対策が落ちる故障コードは絞り込みに使わず、検索の文と印だけに使う
部品番号や締め付けの値が書き換わる引用の本文と照合し、無ければ伏せる
キャンペーン等の対象と読まれるmaker_check を必須にし、メーカーの照会で確かめる
ペイントの印で実施済みと見なす実施の状況はメーカーの車台番号の検索で確かめる
問診の言葉で検索が当たらない言い換えの一覧を当て、もとの言葉と並べる
輸入車で連番に分けられない型式だけで絞り、範囲を原文で確かめる印を出す

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも車台番号の範囲に関わる失敗で、範囲の判定をAIの外の数の比較で行うことで防ぎます。

5行目と6行目は、お客様への説明に直接ひびきます。 「この車はキャンペーンの対象です」「実施済みです」と受付担当が伝えた後で違っていたと分かると、もう一度入庫していただくことになります。画面の候補を見た段階では、お客様に何も伝えない運用を、受付担当にも徹底します。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: メーカーから受け取った技術情報と資料(販売会社向けの文書)、入庫の項目(型式、車台番号、走行距離、症状)、過去の修理記録です。お客様の名前・住所・電話・登録番号は検索に渡しません。

  1. メーカーとの契約を先に確かめる … 販売会社向けのポータルの文書を、社外のクラウドの検索に置いてよいか、メーカーとの契約や利用の規定で確かめてください。 認められない場合は、この構成を使わず、ポータルの検索の使い方を整える方向にします
  2. リコール等の判断を代わらない … 国土交通省のリコール情報の検索のページは、車台番号が範囲に入っていても仕様の違いで対象外の場合があるとして、メーカーか販売会社への確認を求めています。対象と実施の状況は、メーカーの照会でしか確定させません
  3. 作業の手順をAIに作らせない … 制動や操舵に関わる作業の手順を、一般的な知識で補った答えで行うと事故につながります。手順は修理書の節で確かめます
  4. 車台番号を記録の外に出さない … 車台番号は、お客様の車を特定できる番号です。検索の記録は社内の保管先に置き、利用者を整備の部門に限ります
  5. データの置き場所を確かめる … 公式では、データストアの場所は global・us・eu で、日本のリージョンはありません

誤りが起きた場合のリスクは、当てはまらない対策で部品を替えて直らないことと、リコール等の未実施の車を実施済みとしてお客様に返すことです。 前者は範囲の判定から、後者は実施の状況の確かめ方から起きます。範囲は数の比較で、対象と実施の状況はメーカーの照会で決める設計にします。

10まず何から始めるか

1週目:メーカーとの契約を確かめ、型式を2つ選ぶ

技術情報を社内の検索に置いてよいかをメーカーに確かめます。入庫の多い型式を2つ選び、過去3年の技術情報の一覧を作ります。

2週目:30台で試す

手元のAIサービスに型式ごとの技術情報を貼り、過去の入庫30台を入れます。範囲の外の車に当てていないか、部品番号を書き換えていないかを最優先で見ます。

3週目:適用範囲を写す

2つの型式の技術情報の適用範囲を、型式と連番の始まりと終わりで写し、2人で読み合わせます。症状の言い換えの一覧の最初の版も作ります。

4週目:データストアを作り、1店舗で使う

技術情報と資料を取り込み、整備士が検索の画面で型式と連番を入れて使う運用を始めます。候補の1件目で直った割合を毎日記録します。

2か月目: 整備の管理システムからの呼び出し、車台番号の分割、過去の修理記録の検索、数値の照合を作ります。3か月目以降: ほかの店舗と型式に広げます。新しい技術情報が出るたびに範囲が写されて読み合わせが済み、候補の1件目で直った割合が毎月見られている状態になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの searchSpec.searchParams に filter を書けること、maxReturnResults が既定10・最大25であること。includeCitations(既定は false)、ignoreLowRelevantContent、promptSpec.preamble。groundingSpec の filteringLevel、根拠の弱い回答で LOW_GROUNDED_CONTENT が返ること。引用の startIndex/endIndex が UTF-8 のバイト単位であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-15
絞り込みの構文で、文字の項目の ANY()、数の項目の比較(<=・>= など)と IN() による範囲、AND/OR/NOT と括弧での組み合わせが使えること、項目を索引可能にする必要があることGoogle Cloud: Filter custom search for structured or unstructured data2026-10-15
レイアウト パーサーが段落・表・見出しを検出し、データストアの作成時に Image annotation(図の説明をチャンクに付ける)と Table annotation(表の説明を付ける)を選べること、図の形式が BMP・GIF・JPEG・PNG・TIFF であることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-15
データストアの場所が global・us・eu で、日本のリージョンが無いことGoogle Cloud: Locations2026-10-15
リコール・改善対策・サービスキャンペーンの定義。リコール・改善対策の実施済みの識別が、令和8年4月1日以降は各メーカーのホームページのリコール等対象検索で車台番号を入れて確かめられるようになり、届出時の識別の方法と異なる場合があること国土交通省: 自動車のリコール制度について2026-10-15
車台番号が範囲に入っていても、変速機の違いやターボの有無などの仕様により対象外の場合があるので、メーカーか販売会社に確認するよう求めていること。輸入車は車台番号ではなくシリアル番号で届け出がされている場合があること国土交通省: リコール情報検索2026-10-15

整備の作業は、メーカーの修理書と技術情報の原文に従ってください。 本記事は Google Cloud の公式ドキュメントと国土交通省の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1712)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次