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研究倫理審査の申請書を、倫理指針と学内規程の項目に照らして点検し、同意の取り方・個人情報の扱い・利益相反の不足を申請者へ返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

研究倫理審査の申請書類を、倫理指針の記載事項・説明事項と学内規程の項目に照らして点検します。同意の取り方・個人情報の扱い・利益相反の記載の不足と、研究計画書と説明文書の食い違いを、根拠の箇所付きで事務局に返します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/ChatGPT/Claude
連携・自動化
Python
対象業界
医療/教育/製造
対象部門
研究開発
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
人手が足りない/判断に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
40h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
63%
年間削減
300h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 申請者が書類一式(申請書、研究計画書、説明文書・同意書、利益相反の申告)を提出する
  2. 事務局の担当者が、申請書の研究の種類(侵襲・介入の有無、試料の有無、対象者に未成年者がいるか)を確かめる
  3. チェックリストを開き、研究の種類に当てはまる項目を選ぶ
  4. 研究計画書を読み、項目ごとに記載があるかを確かめる
  5. 説明文書を読み、計画書の内容と食い違いが無いかを確かめる
  6. 不足と食い違いを書き出し、申請者への差し戻しのメールを書く
  7. 直った書類が戻ったら、指摘したところだけを読み直す
導入後(After)
  1. 人申請者が書類一式を提出し、事務局の共有フォルダに保存される
  2. 人事務局の担当者が、申請の受付の画面で点検に使う指針の版と、申請書の研究の種類を確かめて受け付ける
  3. 自動受付の記録をきっかけに、Python のスクリプトが書類一式を取り、Word の書類をPDFに変換する
  4. 自動研究の種類と指針の版から、点検の項目の一覧を選ぶ
  5. 自動Claude API が、項目ごとに計画書と説明文書の記載を判定し、根拠の箇所を写す
  6. 自動Claude API が、方法の記載から研究の種類の申告と合わない点を拾う
  7. 自動スクリプトが、写された根拠が書類の中にあるかを照らし、点検の一覧と差し戻しの文の下書きを作る
  8. 人事務局の担当者が、`missing` と `inconsistent` の項目を書類で確かめ、差し戻しの文を直して申請者へ送る
各工程の詳しい説明を読む
  1. 申請者が書類一式(申請書、研究計画書、説明文書・同意書、利益相反の申告)を提出する
  2. 事務局の担当者が、申請書の研究の種類(侵襲・介入の有無、試料の有無、対象者に未成年者がいるか)を確かめる
  3. チェックリストを開き、研究の種類に当てはまる項目を選ぶ
  4. 研究計画書を読み、項目ごとに記載があるかを確かめる
  5. 説明文書を読み、計画書の内容と食い違いが無いかを確かめる
  6. 不足と食い違いを書き出し、申請者への差し戻しのメールを書く
  7. 直った書類が戻ったら、指摘したところだけを読み直す

(a)計画書と説明文書の食い違いを見落とす。 計画書は研究者向け、説明文書は研究対象者向けに書かれ、同じことが別の言葉で書かれています。 「データは仮名加工して共同研究機関に提供する」と「個人の情報が外に出ることはありません」が同じ研究の書類に並んでいても、片方ずつ読むと気づきません。

(b)研究の種類の申告が中身と合わない。 申請書で「侵襲なし」に印が付いているのに、計画書の方法に採血が書かれていることがあります。種類の申告を前提にチェックリストを選ぶので、申告が誤っていると点検の項目ごと抜けます。

(c)指摘の書き方が担当で違う。 詳しい担当は指針のどの項目に当たるかを添えて指摘し、他の担当は「説明が不足しています」とだけ書きます。申請者は何を直せばよいか分からず、往復が増えます。

(d)締切の前に読み切れない。 60件の書類は、計画書だけで1件10〜30ページあります。締切の直前の数日に集中するため、後から届いた申請ほど読みが浅くなります。

  1. 【人】 申請者が書類一式を提出し、事務局の共有フォルダに保存される
  2. 【人】 事務局の担当者が、申請の受付の画面で点検に使う指針の版と、申請書の研究の種類を確かめて受け付ける
  3. 【自動】 受付の記録をきっかけに、Python のスクリプトが書類一式を取り、Word の書類をPDFに変換する
  4. 【自動】 研究の種類と指針の版から、点検の項目の一覧を選ぶ
  5. 【自動】 Claude API が、項目ごとに計画書と説明文書の記載を判定し、根拠の箇所を写す
  6. 【自動】 Claude API が、方法の記載から研究の種類の申告と合わない点を拾う
  7. 【自動】 スクリプトが、写された根拠が書類の中にあるかを照らし、点検の一覧と差し戻しの文の下書きを作る
  8. 【人】 事務局の担当者が、missing と inconsistent の項目を書類で確かめ、差し戻しの文を直して申請者へ送る

2番目を人に残しているのが、この設計の分かれ目です。 指針の版は、研究がいつ始まり、いつ審査されるかで変わり、経過措置の扱いも含めて事務局と委員会が決めることです。 AIに版を選ばせません。

6番目を5番目と分けているのも、意図してのことです。 研究の種類の申告が誤っていると、4番目で選んだ項目の一覧そのものが足りません。申告と方法の記載の食い違いは、項目の点検とは別に拾い、項目の選び直しを人に促します。

02今回想定するシステム構成

構成図
申請者(書類一式)
   ▼ 事務局の共有フォルダ
   ▼【トリガー】事務局が受付の記録に版と研究の種類を書いた時点
Python
   ├── Word の書類をPDFに変換
   ├── 指針の版と研究の種類から点検の項目の一覧を選ぶ
   ▼
Claude API ── 項目ごとの判定(記載あり/不足/食い違い/対象外/判断できない)
   │           研究の種類の申告と方法の記載の食い違い(構造化出力)
   ▼
Python ── 根拠の文の照合、点検の一覧と差し戻しの文の下書き
   ▼
【人】事務局が確かめて申請者へ差し戻す → 直った書類を委員会へ付議
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(点検の項目ごとの判定と、根拠の箇所の書き出し)OpenAI API、Azure OpenAI(Microsoft Foundry)
集計Python(PDFへの変換、項目の一覧の選択、根拠の照合、点検の一覧の作成)Node.js のスクリプト
保管事務局の共有フォルダ(点検の一覧と入出力のJSON)学内の文書管理

申請の受付も学内の規程も、新しく足すものではありません。 足すのは、指針の記載事項と説明事項、学内規程の項目を、研究の種類ごとに番号付きで並べた点検の項目の一覧と、受付の記録をきっかけに動くスクリプトです。

点検の項目の土台は、指針の第7(研究計画書の記載事項)と第8の6(説明事項)です。 改正後の指針では、研究計画書に記載すべき事項として、研究の名称、実施体制、目的及び意義、方法及び期間、研究対象者の選定方針、インフォームド・コンセントを受ける手続等、個人情報等の取扱い、負担・リスク・利益とその総合的評価、資料の保管及び廃棄の方法、研究の資金源その他の利益相反に関する状況など、原則として25の事項が挙げられています。説明事項には、同意を撤回できる旨、個人情報等の取扱い、利益相反に関する状況、将来の研究のために用いられる可能性がある場合のその旨と想定される内容など、22の事項が挙げられています。

利益相反は、計画書と説明文書の両方に要ります。 指針の第12では、商業活動に関連し得る研究について利益相反の状況を研究計画書に記載し、その状況をインフォームド・コンセントの手続で研究対象者等に説明しなければならないとされています。片方にだけ書かれている申請が、第3章の(a)の典型です。

申請書類は、PDFにしてから Claude API に渡します。 Claude API の PDF の入力では、各ページが画像とテキストの両方として扱われ、1回のリクエストは32MBまでです。.docx のようなバイナリ形式は文書のブロックで扱えず、テキストかPDFに変換する必要があります。 パスワード付きのPDFは扱えません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

事務局の担当者が、受付の記録に「指針の版」と「研究の種類」を書いた時点を起点にします。 申請者が書類を出した時点では動かしません。版と研究の種類が決まらないと、点検の項目が決まらないからです。

受付の記録は、事務局が使っている申請の一覧(表計算)の1行です。スクリプトを15分ごとに動かし、「点検待ち」の状態で、版と研究の種類が埋まっている行を拾います。点検が終わったら状態を「点検済み」に変えます。変えるのは点検の一覧ができたときだけで、「点検待ち」の数が、そのまま処理されていない数になります。

変更の申請は、変更の内容を書いた書類と、変更後の計画書・説明文書を対象にします。変更前の書類との差分も渡し、変更した箇所に関係する項目だけを点検します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
研究計画書申請者が書いた計画書(PDFに変換)事務局の共有フォルダ
説明文書・同意書研究対象者に渡す説明文書と同意書、代諾者向け・アセント用があればそれも同じ
申請書と利益相反の申告研究の種類の申告、共同研究機関、資金源、利益相反の申告書同じ
受付の記録指針の版、研究の種類(侵襲・介入の有無、試料の有無、未成年者・同意の能力を欠く者を含むか)、新規か変更か事務局の申請の一覧
点検の項目の一覧版と研究の種類ごとに、項目の番号、指針の該当箇所、計画書で見るか説明文書で見るか、学内規程の追加の項目事務局が作る

質を決めるのは、いちばん下の点検の項目の一覧です。 指針の記載事項には「侵襲を伴う研究の場合には」「代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合には」のように、研究の種類によって要否が変わるものが多く含まれます。 一覧の側で、研究の種類ごとに要る項目と要らない項目を決めておきます。AIに「この研究ではこの項目が要るか」を判断させません。

未成年者を対象にする研究は、一覧の分かれ目がさらに細かくなります。 指針の第9では、未成年者は原則として代諾者からインフォームド・コンセントを受けますが、中学校等の課程を修了しているか16歳以上で、十分な判断能力があり、侵襲を伴わない研究であることなどが研究計画書に書かれ、委員会の意見を聴いて機関の長の許可を受けたときは、本人から受けるとされています。どちらの手続で申請しているかを受付の記録に持たせ、一覧の側で見る書類(代諾者向けの説明文書か、本人向けの説明文書と親権者への通知か)を切り替えます。

利益相反の申告書を入れるのは、3つの書類の突き合わせのためです。 申告書に企業からの資金があるのに、計画書の利益相反の欄が「なし」なら、それ自体が指摘になります。

Step3

データの取得方法を決める

取るもの方法注意
書類一式共有フォルダの申請番号のフォルダからファイルを取るファイル名の付け方を様式で決めておく
Word の書類LibreOffice のヘッドレスの変換でPDFにする変換後のページ数を記録し、元と比べる
受付の記録申請の一覧の該当の行を読む版と研究の種類が空なら点検しない
点検の項目の一覧版と研究の種類の組み合わせで、一覧から項目を引く一覧の版も記録する

書類は、計画書と説明文書を同じリクエストに入れます。 別々に判定させると、食い違いを見つけられません。合計のページ数が多い申請は、計画書の章ごとに分け、説明文書は毎回すべて入れます。 1回のリクエストの上限(32MB、ページ数の上限)に収まるかを、送る前に確かめます。

根拠の照合に使うページごとのテキストは、変換したPDFから Python で取ります。照合は次のような単純なものです。

def verify(evidence, pages):
    # pages: {("計画書", 12): "ページのテキスト", ...}
    text = pages.get((evidence["doc"], evidence["page"]), "")
    norm = lambda s: "".join(s.split())  # 改行と空白の違いを吸収する
    return norm(evidence["quote"]) in norm(text)

空白と改行だけをならし、それ以外の違いは許しません。 表の中の文はPDFからの取り出しで順序が崩れることがあるため、照合に失敗した根拠は、判定を捨てずに unclear に落として人に見せます。

ファイル名から書類の種類を決めます。 「計画書」「説明文書」「同意書」「代諾」「アセント」「COI」をファイル名に含める決まりにし、決まりに合わないファイルは点検せずに事務局に知らせます。 書類の種類を取り違えると、計画書に書くべき項目を説明文書で探すことになります。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 書類のそろいの確認 … 研究の種類に応じて要る書類(代諾者向けの説明文書、アセント文書など)がそろっているかを、ファイル名で確かめます
  2. PDFへの変換 … Word の書類をPDFにし、ページ番号を付けます
  3. パスワードの確認 … パスワード付きのPDFは扱えないため、申請者に解除して出し直してもらいます
  4. 様式の欄の取り出し … 学内の様式の見出し(「研究の目的及び意義」など)でページの位置を拾い、項目と欄の対応表を作ります
  5. 変更の申請の差分 … 変更前と変更後の計画書・説明文書の文字の差分を作ります
  6. 個人の情報の確認 … 書類に研究対象者の実名や診療の記録が誤って添付されていないかを、ファイル名と先頭のページで確かめます

1番目をAIに任せずにプログラムで行うのが要点です。 未成年者を対象にする研究で代諾者向けの説明文書が無ければ、それだけで差し戻しの理由になります。書類が無いことを、中身の点検から見つけさせる必要はありません。

6番目は、まれですが起きます。 説明文書の見本のつもりで、記入済みの同意書が添付されることがあります。見つかったものは外部に送らず、事務局が申請者に連絡します。

Step5

AIに処理させる

させるのは、点検の項目1つずつについて、計画書と説明文書の記載を判定し、根拠の箇所を写すことです。

判定意味根拠に付けるもの
present項目の記載がある書類の名前、ページ、文の写し
missing項目の記載が無い。見出しだけがあって中身が空の場合も含む探した書類と、見出しのページ
inconsistent計画書と説明文書(または申告書)で内容が食い違う両方の文の写し
unclear記載はあるが、項目を満たしているかを書類から決められない文の写しと、決められない理由

これに加えて、研究の種類の申告と方法の記載が合わない点を拾わせます。 申告が「侵襲なし」なのに方法に採血・投薬・放射線の照射がある、申告が「試料なし」なのに検体の保存が書かれている、対象者の年齢の範囲に未成年者が含まれるのに申告に印が無い、といったものです。

させないこと理由
研究の可否や倫理的妥当性の判断委員会が審査する
審査の区分(通常審査か迅速審査か)の決定委員会が決める
指針の版の選択研究の開始時期と経過措置で変わる。事務局が決める
項目の要否の判断研究の種類ごとの一覧で決めておく
不足を補う文の作成研究の内容は研究者が書く。直し方の方向だけを返す

5行目がいちばん起きやすい失敗です。 不足を見つけると、AIは説明文書に足す文を書こうとします。事務局が研究者に代わって研究の内容を書くことになり、その文が研究の実際と合っているかを誰も確かめていません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは大学の研究倫理審査委員会の事務局で、申請書類を委員会に付議する
前に、記載の不足を点検する担当者を手伝う立場です。
研究の可否や倫理的な妥当性は判断しないでください。

【点検の仕方】
- 渡された「点検の項目の一覧」の項目1つずつについて、研究計画書と
  説明文書の記載を判定してください。一覧に無い項目を足さないでください。
- 判定は present、missing、inconsistent、unclear のどれかにしてください。
  迷ったときは unclear にしてください。
- 見出しがあって中身が「該当なし」「なし」とだけ書かれているときは、
  項目の一覧で「該当なしの記載で可」とされている場合だけ present にし、
  それ以外は unclear にしてください。
- 計画書と説明文書の両方で見る項目は、両方の記載を写し、内容が
  食い違えば inconsistent にしてください。言い方が違うだけで
  内容が同じなら present です。
- 利益相反の状況は、計画書、説明文書、利益相反の申告書の3つを
  突き合わせてください。

【研究の種類の確認】
- 受付の記録の研究の種類と、計画書の方法・対象者の記載を比べ、
  合わない点があれば type_mismatches に書いてください。

【厳守事項】
- quote には、書類の文を一字一句そのまま写してください。要約しないでください。
- page には、その文があるページの番号を書いてください。
- 不足を補う文を書かないでください。hint には、何について書く必要が
  あるかを1文で書いてください。
- 通常審査か迅速審査かについて書かないでください。

【指針の版】{guideline_version}
【受付の記録(研究の種類、新規か変更か)】{intake}
【点検の項目の一覧】{checklist}

「言い方が違うだけで内容が同じなら present」を明記しないと、inconsistent が増えすぎます。 計画書の「仮名加工した上で解析する」と説明文書の「お名前を記号に置き換えて解析します」は、同じ内容です。食い違いとして返すべきなのは、内容が違うものだけです。

「該当なし」の扱いを分けているのは、空欄の言い換えになりやすいためです。 侵襲の無い研究の「健康被害の補償」に「該当なし」は正しい記載ですが、将来の研究への利用を書く欄に「該当なし」とあり、方法の欄に検体の保存が書かれていれば、それは不足です。

Step7

出力形式を固定する

Claude API の構造化出力で、次の形のJSONを受け取ります。

{
  "application_id": "",
  "guideline_version": "",
  "checks": [
    {
      "item_id": "P-12",
      "target": "plan | consent_doc | both | coi_form",
      "status": "present | missing | inconsistent | unclear",
      "evidence": [ { "doc": "", "page": 0, "quote": "" } ],
      "hint": ""
    }
  ],
  "type_mismatches": [
    { "declared": "", "found": "", "doc": "", "page": 0, "quote": "" }
  ]
}

1つ目の理由は、quote と page をプログラムで照らせることです。 PDFから取ったテキストの該当ページに quote の文字列があるかを確かめ、見つからない根拠の判定は unclear に落とします。 書類に無い文を根拠にした指摘は、申請者に返しません。

2つ目は、item_id で指摘を指針の該当箇所に結び付けられることです。 点検の項目の一覧には、項目ごとに指針の該当箇所(例:第7⑫、第8の6⑬、第12⑶)を持たせてあり、差し戻しの文に「指針のどの項目に当たるか」を機械的に添えられます。 第3章の(c)の書き方のばらつきが、ここで無くなります。

3つ目は、type_mismatches を項目の判定と分けられることです。 研究の種類の食い違いがあれば、点検の一覧の先頭に置き、項目の一覧を選び直すかを事務局が先に決めます。

差し戻しの文の下書きは、スクリプトが missing と inconsistent の項目から次の形で組み立てます。

【差し戻しの事項】
1. 説明文書に、研究の資金源と利益相反の状況の記載がありません。
   研究計画書(12ページ)には記載があります。(指針 第8の6⑬、第12⑶)
2. 研究計画書では「仮名加工した情報を共同研究機関へ提供する」とあり、
   説明文書(3ページ)では「個人の情報が外に出ることはありません」とあります。
   提供の有無と方法をそろえてください。(指針 第7⑧、第8の6⑪)
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
申請の一覧表計算の読み書き版と研究の種類の取得、状態の更新
事務局の共有フォルダファイルの読み取りと書き込み書類一式の取得、点検の一覧の保存
LibreOfficeヘッドレスの変換Word の書類をPDFに
Claude APIMessages API の構造化出力(PDFを文書のブロックで渡す)項目ごとの判定
事務局の担当者メール点検が終わったことの通知

申請者への差し戻しは、事務局の担当者が送ります。 スクリプトが作るのは下書きまでです。差し戻しの文には、AIが判定したことを書きません。 申請者にとっては事務局からの指摘であり、事務局が確かめたうえで送るものだからです。

Step9

人が確認する

  1. type_mismatches を先に見る … 研究の種類の申告が誤っていれば、受付の記録を直して点検をやり直します
  2. missing と inconsistent を書類で確かめる … 根拠のページを開き、本当に無いか、本当に食い違っているかを見ます
  3. unclear を読む … 多くは「該当なし」の扱いか、学内の様式の欄の使い方の問題です
  4. 差し戻しの文を直して送る … 指摘の数が多い申請は、申請者に電話で補うことも考えます
  5. 判定を覆したら記録する … 点検の項目の一覧の書き方を直す材料にします

2番目を省かないでください。 missing は、様式の別の欄に書かれていて見つからなかっただけのこともあります。事務局が確かめずに差し戻すと、申請者は「書いてある」と返し、往復が1回増えます。

目標は、60件をならして1件15分です。 確認の順は、種類の食い違い、不足、食い違い、決められないの順に固定します。 不足の少ない申請は点検の一覧を流し見て付議に回し、食い違いの多い申請に時間を使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
版か研究の種類が受付の記録に無い点検しない。事務局に知らせる
要る書類がそろっていない中身の点検をせず、不足の書類を差し戻しの下書きにする
パスワード付きのPDF申請者に解除して出し直してもらう
ファイル名が決まりに合わない書類の種類が決められないので、事務局に知らせる
ページ数が多くリクエストに収まらない計画書を章ごとに分け、説明文書は毎回入れる
quote が書類に見つからないその判定を unclear に落とし、ログに残す
記入済みの同意書や実名が含まれる外部に送らず、事務局が申請者に連絡する
構造化出力が refusal や max_tokens で終わる受け付けず、分けて再実行。続けば人へ

上から2行目までが大半を占めます。 どちらもAIの問題ではなく、受付の段の決まりの問題です。 版と研究の種類を受付で必ず埋める、書類のファイル名の付け方を様式の案内に書く、の2つを先に整えると、点検が止まる件数が大きく減ります。

Step11

記録を残す

  • 申請番号、受け付けた日時、指針の版、研究の種類、新規か変更か
  • 点検に使った項目の一覧の版
  • 送った書類のファイル名とページ数、PDFへの変換の記録
  • Claude API の出力の全文と、照合で unclear に落とした判定
  • 事務局の担当者の確認の結果、覆した判定、送った差し戻しの文
  • 差し戻しの往復の回数と、付議した日

項目の一覧の版を残すのは、指針の改正をまたぐためです。 2026年12月1日の前と後で点検の項目が変わり、どちらの版で点検したかが残っていないと、委員会で問われたときに答えられません。

04実装レベルの3段階

最小構成:書類と項目の一覧を手で手元のAIに渡し、項目ごとに判定させる / 1件ごとの点検
半自動化:上記+事務局がスクリプトを手で動かし、PDFへの変換・項目の選択・判定・根拠の照合を行う / 点検の一覧の作成
本格構成:上記+受付の記録をきっかけに自動で動き、差し戻しの文の下書きまで作る / 点検から下書きまで

半自動化で、1件40分が25分程度になります。 書類を選んでスクリプトを動かす作業と、差し戻しの文を点検の一覧から書く作業が残ります。本格構成で15分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、学内の様式の欄と項目の対応のずれと、unclear が出やすい項目が分かります。指針の改正の前後で、新しい版の項目の一覧を半自動化の段階で試しておくと、12月の切り替えで慌てずに済みます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
40 分
1件あたり導入後時間
15 分
現在  60件 × 40分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 60件 × 15分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
25h
削減率
63%
年間削減時間
300h
年間金額換算(時間単価4,000円)
120万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 人を対象とする研究の倫理審査委員会を毎月開いている大学・研究機関で、事務局が申請書類を委員会に付議する前に記載の不足を点検している場合。新規と変更を合わせて月に数十件の申請があり、研究計画書と説明文書の食い違いや利益相反の書き漏れを事務局が目で探している場合。2026年12月の指針の改正に合わせて点検の項目を作り直す必要がある場合。
向いていない
  1. 申請が月に数件で、事務局が全文を読んでも負担にならない場合。治験など、別の法令と様式で審査する申請(本記事は人を対象とする生命科学・医学系研究の倫理指針の対象に絞っています)。申請書類を外部の生成AIのAPIに送ることが学内の規程で認められていない場合。なお、研究の倫理的妥当性・科学的合理性の判断と、審査の区分(通常審査か迅速審査か)の決定は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去の申請から10件を選ぶ(計画書と説明文書が食い違っていて差し戻した例と、研究の種類の申告が誤っていた例を含める)
  2. 指針の第7と第8の6、学内の規程から、研究の種類ごとの点検の項目の一覧を作る
  3. 1件ずつ、計画書と説明文書のPDFと項目の一覧を手元のAIサービスに渡し、「項目ごとに、記載がある・無い・食い違う・決められないを判定し、根拠の文をそのまま写してください。不足を補う文は書かないでください」と指示する
  4. 出てきた判定を、当時の事務局の差し戻しと比べる
出てきた内容判断
当時の差し戻しと同じ不足と食い違いが出たスクリプトでつなぐ
言い方の違いを食い違いとして返す指示の書き方で直る。構成は有効
研究の種類によって要らない項目を不足として返す項目の一覧の作り方を先に直す

3行目が出たときは、AIより先に項目の一覧を見直します。 第7章で項目の要否を一覧で決めているのは、ここを確かめながら直せるようにするためです。

10件の中には、研究の種類の違うものを混ぜてください。 診療情報だけを使う研究、アンケートの研究、採血を伴う介入の研究、未成年者を対象にする研究を少なくとも1件ずつ入れます。項目の一覧が研究の種類ごとに正しく切り替わるかは、種類がそろっていると確かめられません。 試す前に、当時の差し戻しの文を事務局の詳しい担当が読み直し、「本来ならこれも指摘すべきだった」ものを足しておくと、比べる相手の質が上がります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
言い方の違いを食い違いとして返す指示で「内容が同じなら present」と明記する
要らない項目を不足として返す項目の要否を研究の種類ごとの一覧で決める
書類に無い文を根拠にするquote をページのテキストと照らし、無ければ unclear
研究の種類の申告の誤りで項目が抜ける申告と方法の記載の食い違いを別に拾う
指針の版を取り違える版は事務局が受付で決める。AIに選ばせない
不足を補う文を書く指示で禁じ、hint を1文に限る
Word の書類をそのまま渡せないPDFに変換してから渡す
記入済みの同意書が混ざる前処理で確かめ、外部に送らない

上の2行が、運用に乗るかを決めます。 inconsistent と missing が多すぎると、事務局は点検の一覧を読まなくなります。

指針の改正の直後は、項目の一覧そのものが揺れます。 改正後のガイダンスが掲載されると、項目の読み方が変わることがあります。一覧に版を付け、ガイダンスの掲載を見て一覧を直したら、その日以降の点検は新しい版で行うと決めておきます。直す前の点検の結果は、古い版の一覧の番号のまま残します。

変更の申請も油断できません。 共同研究機関を足す変更は、計画書の実施体制だけでなく、説明文書の提供先の記載と、利益相反の申告にも波及します。差分に関係する項目を選ぶときは、変更された欄から波及する項目を一覧の側で結び付けておきます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 研究計画書、説明文書・同意書の様式、利益相反の申告書です。研究対象者の個人の情報は、本来含まれません。 ただし、未公表の研究の計画と、研究者の資金源や企業との関係が含まれます。

  1. 外部に送ってよい書類かを学内で決める … 未公表の研究計画と利益相反の申告を外部の API に送ることを、学内の規程と照らして先に決めます
  2. 研究対象者の情報が混ざっていないかを確かめる … 記入済みの同意書や症例の記録は送りません
  3. 判断を委員会に残す … この構成が出すのは書類の不足と食い違いまでで、研究の可否や審査の区分には触れません
  4. 指針の版を記録する … どの版の項目で点検したかを申請ごとに残します
  5. 差し戻しは事務局が送る … 自動で申請者に送りません
  6. 点検の結果を委員会の審査の材料にしない … 点検の一覧は事務局が書類を整えるための道具で、委員に「AIの点検で問題なし」として渡しません。 委員が書類そのものを読む前提を崩さないようにします

誤りが起きた場合のリスクは、不足を見落として委員会に付議することと、不足でないものを差し戻して研究の開始を遅らせることの2つです。 前者は研究の種類の食い違いの確認と人の確認で、後者は根拠の照合と unclear の扱いで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:点検の項目の一覧を作る

指針の第7と第8の6、第12、学内の規程から、研究の種類ごとに要る項目を番号付きで並べます。 改正後の版と改正前の版の2つを作ります。

2週目:10件で試す

過去の申請から10件を選び、手元のAIで点検させます。計画書と説明文書の食い違いが、当時の差し戻しと同じように出るかを最優先で見ます。

3週目:スクリプトを作る

PDFへの変換、項目の一覧の選択、Claude API の呼び出し、根拠の照合までを作ります。この時点では差し戻しの文を作らず、点検の一覧だけを見ます。

4週目:受付の記録とつなぐ

受付の記録の版と研究の種類をきっかけに動かし、差し戻しの文の下書きを足します。

2か月目: 12月1日の適用に合わせて、改正後の版の項目の一覧に切り替えます。覆した判定を毎週数えます。3か月目以降: 差し戻しの往復の回数と、1件40分が何分になったかを実測します。委員会の場で書類の食い違いが指摘されなくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
指針の一部改正が2026年8月27日付の官報で告示され、同年12月1日から施行されること。研究を「侵襲を伴う研究又は介入を行う研究」「試料を用いる研究」「試料を用いない研究」の3つに分け、リスクに応じた同意の手続を定めたこと。実施中の研究の経過措置文部科学省: 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の一部改正について2026-10-14
指針本文(令和8年8月27日 一部改正)が令和8年12月1日施行として掲載されていること、改正後のガイダンスが後日掲載とされていること文部科学省: 人を対象とする生命科学・医学系研究2026-10-14
第7の研究計画書の記載事項(原則25の事項。利益相反の状況、個人情報等の取扱い、将来の研究への利用の可能性を含む)、第8の6の説明事項(22の事項)、第12の利益相反の計画書への記載と研究対象者等への説明文部科学省: 指針本文(令和8年8月27日 一部改正)2026-10-14
PDFの各ページが画像とテキストの両方として扱われること、1回のリクエストが32MBまでであること、パスワード付きのPDFは扱えないこと、.docx は文書のブロックで扱えずテキストかPDFに変換する必要があることClaude: PDF support2026-10-14
構造化出力を output_config.format で指定すること、refusal・max_tokens で終わるとスキーマに合わないことがあることClaude: Structured outputs2026-10-14

どの版の指針で審査するか、研究の可否と審査の区分は、倫理審査委員会と事務局で決めてください。 改正後の指針のガイダンスは確認日の時点で未掲載です。本記事は上の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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