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購買部が金型を伴う部品の相見積を Power Automate で依頼番号ごとに集め、依頼書の条件と型代の扱いをそろえた比較表にする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

量産部品の相見積で仕入先から届く見積書を依頼番号ごとに集め、数量の段階ごとの単価・型代・運賃・支払条件を読み取ります。見積依頼書の条件との食い違いを拾い、型代を含めた総額にそろえた比較表を作ります。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
商社/建設/製造
対象部門
購買
対象業務
データ入力・転記/比較検討
主な課題
入力作業が多い/判断に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/判断支援/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
15h/月
想定削減
75%
年間削減
540h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 共有のメールボックスで、件名や本文から依頼番号を探し、見積書を依頼ごとのフォルダに保存する
  2. 回答の期限が来たら、依頼ごとに見積書を開き、項目を比較表に打ち込む
  3. 図面の版、数量の段階、運賃の扱い、有効期限が依頼と合っているかを見る
  4. 型代の扱いを見て、一括・単価に上乗せ・別途のどれかを確かめ、年間数量と期間で総額に直す
  5. 比較表を設計と生産管理の担当に回し、仕入先を決める
導入後(After)
  1. 人購買の担当が見積依頼の台帳に依頼を登録し、依頼番号を件名に入れて見積依頼書を送る(これまでどおり)
  2. 自動共有のメールボックスに件名に依頼番号を含む返事が届くと、添付の見積書を依頼ごとのフォルダに保存する
  3. 自動AI Builder のプロンプトが見積書から項目を読み取り、見積の明細のリストに書く
  4. 自動フローが依頼の台帳と比べ、図面の版・数量の段階・納入場所・運賃の扱い・有効期限の食い違いに印を付ける
  5. 自動フローが型代の扱いごとに、依頼した年間数量と期間で総額を計算する
  6. 自動回答の期限の朝に、依頼ごとの比較表と、食い違いのある見積・届いていない仕入先の一覧を担当者にメールで送る
  7. 人担当者が食い違いのある見積を見て、仕入先に出し直しを頼むか、そのまま比べるかを決める
  8. 人比較表を設計と生産管理の担当に回し、仕入先を決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. 共有のメールボックスで、件名や本文から依頼番号を探し、見積書を依頼ごとのフォルダに保存する
  2. 回答の期限が来たら、依頼ごとに見積書を開き、項目を比較表に打ち込む
  3. 図面の版、数量の段階、運賃の扱い、有効期限が依頼と合っているかを見る
  4. 型代の扱いを見て、一括・単価に上乗せ・別途のどれかを確かめ、年間数量と期間で総額に直す
  5. 比較表を設計と生産管理の担当に回し、仕入先を決める

(a)見積書を探して保存するだけで時間がかかる。 1件の依頼に5社の返事が別々の日に届き、件名に依頼番号が無い返事もあります。回答の期限の日に「まだ届いていない」と思っていた見積が、別の担当者の受信箱で見つかることがあります。

(b)依頼と違う条件の見積を見落とす。 図面の版が1つ前のままの見積、10,000個の段階が抜けた見積、運賃が別の見積が混ざります。比較表に並べてから気づくと、出し直しを頼む時間が残っていません。

(c)型代の扱いがそろっていない。 型代を一括で書いた見積と単価に上乗せした見積を、担当者がその場で電卓で総額に直しています。 直し方が担当者で違い、同じ見積でも比較表の数字が変わります。

(d)前提条件の注記を読み飛ばす。 「材料の価格は見積時点のもの」「最小発注数量 3,000個」といった注記は見積書の欄外にあり、比較表に写されないまま発注先が決まります。

  1. 【人】 購買の担当が見積依頼の台帳に依頼を登録し、依頼番号を件名に入れて見積依頼書を送る(これまでどおり)
  2. 【自動】 共有のメールボックスに件名に依頼番号を含む返事が届くと、添付の見積書を依頼ごとのフォルダに保存する
  3. 【自動】 AI Builder のプロンプトが見積書から項目を読み取り、見積の明細のリストに書く
  4. 【自動】 フローが依頼の台帳と比べ、図面の版・数量の段階・納入場所・運賃の扱い・有効期限の食い違いに印を付ける
  5. 【自動】 フローが型代の扱いごとに、依頼した年間数量と期間で総額を計算する
  6. 【自動】 回答の期限の朝に、依頼ごとの比較表と、食い違いのある見積・届いていない仕入先の一覧を担当者にメールで送る
  7. 【人】 担当者が食い違いのある見積を見て、仕入先に出し直しを頼むか、そのまま比べるかを決める
  8. 【人】 比較表を設計と生産管理の担当に回し、仕入先を決める

4番目と5番目をフローで行うのが、この設計の分かれ目です。 AIは見積書に書かれた値を写すだけで、比べる基準と総額の計算式は、依頼の台帳とフローの式に置きます。 計算式を変えたいときは、フローの式を直します。

7番目を残すのは、出し直しを頼むかが取引の判断だからです。 図面の版が違っても、変更が見積に関わらない箇所なら、そのまま比べてよいことがあります。それを決められるのは、図面の変更の中身を知っている担当者です。

02今回想定するシステム構成

構成図
【人】見積依頼の台帳に登録 → 依頼番号を件名に入れて送付
        ⋮
共有のメールボックス ── 件名に依頼番号を含む返事
   ▼ When a new email arrives in a shared mailbox (V2)
Power Automate
   ├──▶ Get Attachment (V2) で添付を取り、依頼ごとのフォルダに保存
   ▼
AI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力)
   │  図面の版・材質・数量の段階ごとの単価・型代と治具費・運賃・支払条件・有効期限・注記
   ▼
Power Automate ── 依頼の台帳と比べ、食い違いに印を付ける
   │              型代の扱いごとに総額を計算する
   ▼
見積の明細のリスト(SharePoint)
   ▼【回答の期限の朝】Recurrence
Power Automate ── Filter array と Create HTML table で依頼ごとの比較表
   ▼
担当者へメール(比較表、食い違い、未着の仕入先)
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウドフロー)Make、n8n、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude
連携SharePoint(見積依頼の台帳・見積の明細のリスト、見積書のライブラリ)Microsoft Lists
メールOffice 365 Outlook(共有のメールボックスの受信、比較表の送付)Microsoft Teams

購買のシステムには書き込みません。 発注の登録は、仕入先を決めたあとに担当者がこれまでどおり行います。この構成が作るのは、比べるための表と食い違いの一覧までです。

見積依頼の台帳が、この構成の基準になります。 依頼番号ごとに、図面の番号と版、数量の段階、年間の予定数量、型を使う期間(年)、納入場所、支払条件、回答の期限、送った仕入先を持たせます。いまの台帳に無い列は、最初に足します。

読み取りは AI Builder のプロンプトで行います。 文書の入力に PDF と画像を渡せ、出力を JSON にするとフローの後段で項目ごとに使えます。表計算の見積は、プロンプトの設定でコードインタープリターを有効にすると文書の入力として扱えます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

フローは2本です。見積書が届いたときの読み取りと、回答の期限の朝の比較表づくりです。

読み取りは、Office 365 Outlook の「When a new email arrives in a shared mailbox (V2)」で、見積を受ける共有のメールボックスを見張ります。件名の絞り込みに依頼番号の頭の文字(例:「RFQ-」)を入れ、添付のあるものだけを取ります。

添付の中身はトリガーで取らず、Get Attachment (V2) で取ります。 新着メールのトリガーで添付を含める設定にすると、添付の多いメールが同時に届いたときに待ちきれずに止まることが案内されています。見積の締切の前日は、まさに添付付きのメールが集中する日です。

比較表づくりは、Recurrence で毎朝動かし、見積依頼の台帳から回答の期限が今日のものを Get items で拾います。期限の朝に送るのは、期限の当日に届いた見積を比較表に入れるために、担当者がもう一度動かせるようにするためです。 担当者が手で動かせるフローも別に用意します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
見積書仕入先の見積書の PDF・画像、表計算共有のメールボックスの添付
見積依頼の台帳依頼番号、品番、図面の番号と版、材質、表面処理、数量の段階、年間の予定数量、型を使う期間、納入場所、支払条件、回答の期限、送った仕入先SharePoint のリスト
仕入先の一覧仕入先コード、名称、メールのドメインSharePoint のリスト
メールの情報差出人、件名、受信日時、本文トリガー

質を決めるのは、見積依頼の台帳です。 依頼したときの数量の段階と型を使う期間が台帳に無ければ、見積が依頼と合っているかも、総額も出せません。 依頼書を出すときに台帳に入れる運用を先に決めます。

仕入先は、件名ではなく差出人のメールのドメインで決めます。 件名に仕入先名を書かない会社が多く、本文の署名から読ませると、転送されたメールで取り違えます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどの操作で
見積のメール共有のメールボックスWhen a new email arrives in a shared mailbox (V2)
添付の中身見積のメールGet Attachment (V2)(メールの番号と添付の番号)
見積書の保存依頼ごとのフォルダSharePoint の Create file
依頼の条件見積依頼の台帳Get items の Filter Query(依頼番号が一致)
回答の期限が今日の依頼見積依頼の台帳Get items の Filter Query(回答の期限が今日)
依頼ごとの見積の明細見積の明細のリストGet items の Filter Query(依頼番号が一致)

依頼番号は、件名から式で切り出します。 「RFQ-」の位置を indexOf で探し、決まった桁数を substring で取ります。件名に依頼番号の無い返事は、トリガーの絞り込みで落ちるので、見積依頼書に「返信の件名を変えないでください」と書いておきます。

共有のメールボックスのトリガーは、ユーザーどうしで共有した受信箱では、片方がもう片方に対してフルアクセスを持っていないと動かないとされています。 部署の共有のメールボックスを使い、フローを作る人にフルアクセスを付けます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 添付の形式を確かめる … PDF・PNG・JPG・JPEG はそのまま、表計算はコードインタープリターを有効にしたプロンプトに回します。それ以外(圧縮ファイルなど)は担当者に知らせます
  2. 大きさとページ数を確かめる … 渡すファイルは合わせて25MB未満、文書は50ページ未満です。図面を添付して返してくる仕入先があるので、見積書だけを取り出します
  3. 見積書以外の添付を外す … 署名の画像、会社案内、図面の写しはプロンプトに渡しません。ファイル名と大きさで分け、迷うものは渡したうえで document_type で落とします
  4. 本文に金額が書かれた返事 … 添付が無く本文に金額があるものは、本文をテキストの入力として渡します
  5. 同じ仕入先の再提出を見分ける … 同じ依頼番号・同じ仕入先の見積が2通目なら、版を上げて保存し、前の見積の明細に「差し替え済み」の印を付けます

5番目を忘れると、出し直しを頼んだ見積と元の見積が両方とも比較表に並びます。 安いほうが古い条件の見積だった、ということが起きます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、見積書から決まった項目を写すことだけです。

写すもの中身書かれていないときの扱い
見積の番号・日付・有効期限見積書の番号、発行日、有効期限空にする
図面の番号と版見積の対象として書かれた図面の番号と版空にする
材質・表面処理書かれた材質と表面処理空にする
数量の段階ごとの単価数量と単価の組書かれた段階だけを写す
型代・治具費金額と、その書き方(一括/単価に上乗せ/別途/無償)書かれていなければ not_stated
型の所有型の所有がどちらかの記載not_stated
運賃込み/別/書かれていないnot_stated
支払条件・納期書かれた支払条件、初回と量産の納期空にする
前提条件・除外事項欄外の注記を原文のまま空の配列
させないこと理由
総額の計算・型代の割り戻し計算式は自社の決まり。フローの式で行う
書かれていない数量の段階の単価の推定抜けていることを拾いたい
「別途」の型代の金額の推定金額が無いことが比較の論点になる
図面の版が依頼と同じかの判断依頼の台帳と比べるのはフロー
どの仕入先がよいかの意見選ぶのは担当者

2行目と3行目がいちばん起きやすい失敗です。 10,000個の段階が無い見積を渡すと、5,000個の単価から「量産効果」を見込んで埋めることがあります。埋めた値がもっともらしいほど、抜けていることに気づけなくなります。

Step6

指示内容を固定する

あなたは購買部で、仕入先から届いた見積書から決まった項目を写す担当です。
見積書に書かれていることだけを写してください。推測で埋めないでください。

【写す項目】
- document_type:quotation(見積書)/drawing(図面)/other
- quote_no、issue_date、valid_until:見積の番号、発行日、有効期限
- drawing_no、drawing_rev:見積の対象の図面の番号と版
- material、surface_treatment:材質、表面処理
- price_breaks:数量の段階ごとに { quantity, unit_price } を写す
- tooling:型代・金型費・イニシャル費用・型償却などの記載
  - amount:金額。書かれていなければ空
  - method:lump_sum(一括)/included_in_unit_price(単価に上乗せ)/
    separate(別途)/free(無償)/not_stated
  - included_quantity:単価に上乗せの場合、何個で償却するかの記載
- jig_fee:治具費の金額と method(型代と同じ区分)
- tooling_ownership:型の所有の記載。無ければ not_stated
- freight:included(込み)/excluded(別)/not_stated
- payment_terms、lead_time_first、lead_time_mass:支払条件、初回と量産の納期
- notes:前提条件・除外事項・注記を、原文のまま1つずつ

【厳守事項】
- 書かれていない数量の段階の単価を推測しないでください。
  書かれた段階だけを price_breaks に入れてください。
- 型代が「別途」「別途御見積」と書かれていれば、method を separate にし、
  amount は空にしてください。金額を推測しないでください。
- 総額や1個あたりの型代を計算しないでください。
- 金額は見積書の表記のまま写してください。税込・税抜の記載があれば
  notes に原文を入れてください。
- 図面の版が何であるべきかを判断しないでください。書かれた版を写すだけです。
- 仕入先の良し悪しや、どれを選ぶべきかを書かないでください。
- JSON の前後に説明やマークダウンを付けないでください。

【見積書】{quotation}
【メールの本文(添付が無い場合のみ)】{mail_body}

型代の書き方を5つの区分から選ばせるのが要です。 「型償却 10,000個」のような書き方は、単価に上乗せの意味です。区分を決めておけば、フローが区分ごとに総額の式を分けられます。 区分に迷う書き方は not_stated にさせ、担当者が見ます。

注記を原文のまま写させるのは、第3章の(d)への答えです。 要約させると「材料の価格は見積時点」が抜けます。原文のまま比較表の下に並べます。

Step7

出力形式を固定する

プロンプトの出力を JSON にし、次の形を例として「Custom」で保存します。

{
  "document_type": "quotation",
  "quote_no": "", "issue_date": "", "valid_until": "",
  "drawing_no": "", "drawing_rev": "",
  "material": "", "surface_treatment": "",
  "price_breaks": [ { "quantity": "1000", "unit_price": "182.5" } ],
  "tooling": { "amount": "", "method": "lump_sum", "included_quantity": "" },
  "jig_fee": { "amount": "", "method": "not_stated" },
  "tooling_ownership": "not_stated",
  "freight": "included | excluded | not_stated",
  "payment_terms": "", "lead_time_first": "", "lead_time_mass": "",
  "notes": [ { "text": "" } ]
}

保存したときの形が実行のときに使われるので、形を固定します。 既定の「Auto detected」のまま試すと、見積書によって形が変わります。キーの無い配列は定義できないので、注記も { "text": "" } の物の配列にしています。

数量と金額を文字列で受けるのは、表記を守るためです。 「182.50」の末尾の0や桁区切りを残し、計算するときにフローの float の式で数値に変えます。

フローは、読み取った値と依頼の台帳を次のように比べます。

比べるもの食い違いの印
図面の版依頼の版と違えば rev_mismatch
数量の段階依頼した段階のうち見積に無いものがあれば missing_break
運賃依頼が「込み」で見積が excluded か not_stated なら freight_unclear
有効期限回答の期限から3か月未満なら short_validity
型代separate か not_stated なら tooling_unclear

総額は、依頼の台帳の年間の予定数量と型を使う期間から、型代の区分ごとに式で出します。

型代の区分総額の式
lump_sum年間数量の段階の単価 × 年間数量 × 期間 + 型代 + 治具費
included_in_unit_price年間数量の段階の単価 × 年間数量 × 期間(型代は単価に含まれる)
separate・not_stated総額を出さず「型代未確定」と表示する

式は add・mul・float で書けます。 年間数量にちょうど当たる段階が無いときは、年間数量以下でいちばん近い段階の単価を使い、どの段階を使ったかを比較表に出します。 この選び方は社内の決まりとして、購買部で決めておきます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
共有のメールボックスOffice 365 Outlook のトリガーと Get Attachment (V2)見積のメールと添付の取得
見積書のライブラリSharePoint の Create file依頼ごとのフォルダへの保存
見積依頼の台帳SharePoint の Get items依頼の条件、回答の期限
見積の明細のリストSharePoint の Create item・Update item読み取った値、食い違いの印、総額
AI Builder のプロンプトRun a prompt見積書からの項目の読み取り
担当者Office 365 Outlook の Send an email (V2)比較表と食い違い・未着の一覧

比較表は、Filter array で依頼番号の行を取り出し、Select で列をそろえ、Create HTML table で表にしてメールの本文に入れます。 本文は HTML として送る設定にします。同じ表を Create CSV table で作り、依頼ごとのフォルダに保存しておくと、設計と生産管理の担当に回すときにそのまま使えます。

仕入先へのメールは自動で送りません。 出し直しの依頼の文面はフローが下書きの材料として比較表のメールに添えますが、送るのは担当者です。

Step9

人が確認する

担当者は比較表のメールを開き、次の順で確かめます。

  1. 未着の仕入先を見る … 送った仕入先のうち、見積が届いていないところ。期限の延長か、辞退かを確かめます
  2. 食い違いの印を見る … rev_mismatch・missing_break・tooling_unclear の見積を開き、出し直しを頼むか、そのまま比べるかを決めます
  3. 総額の行を見る … どの段階の単価で計算したか、型代の区分が見積書と合っているかを確かめます
  4. 注記を読む … 前提条件と除外事項を、比較表の下でまとめて読みます

2番目で tooling_unclear を残したまま比べないでください。 型代が「別途」の見積は、総額がいちばん安く見えます。型代の金額をもらってから比べます。

目標は、300通をならして1通3分です。 食い違いの無い見積は比較表で数十秒、食い違いのある見積は見積書を開いて数分という想定です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
件名に依頼番号が無い返事トリガーの絞り込みで落ちる。未着の一覧に出るので、担当者が受信箱を探して手で保存する
差出人のドメインが仕入先の一覧に無い仕入先を決めずに保存し、担当者に知らせる
添付が25MB以上、50ページ以上文書の入力に渡せない。見積書のページだけを担当者が取り出す
添付が見積書でない(図面・会社案内)document_type が quotation でなければ明細に書かない
同じ仕入先から2通目前の明細に「差し替え済み」の印を付け、新しい明細を作る
表計算の見積が読めないコードインタープリターを有効にしたプロンプトに回す。読めなければ PDF での再送を頼む
プロンプトが JSON を返さない見積書をフォルダに残し、明細に「読み取り失敗」の印を付けて担当者に知らせる
回答の期限を過ぎて届いた見積読み取りはするが、比較表のメールに「期限後」の印を付ける
依頼番号が台帳に無い比べずに保存し、担当者に知らせる

1行目がいちばん多い例外です。 仕入先が新しいメールを作って返事をすると、件名から依頼番号が消えます。未着の一覧を回答の期限の朝に出すのは、このためです。

Step11

記録を残す

  • 受信したメールの差出人・件名・受信日時と、保存した見積書のファイル
  • プロンプトが返した JSON の全文
  • 食い違いの印と、そのとき比べた依頼の台帳の値
  • 総額の計算に使った段階・年間数量・期間・型代の区分
  • 比較表のメールを送った日時と、担当者が出し直しを頼んだ記録
  • 差し替えられた見積と、差し替えた見積の対応

4つ目を残すのは、総額の計算式が後から問われるためです。 発注のあとに「なぜこの仕入先が安かったのか」を聞かれたときに、どの段階の単価で、型代をどう扱って比べたかを示せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:見積書を生成AIの画面に貼って項目を写させ、表計算で比べる / 見積書からの項目の読み取り
半自動化:上記+共有のメールボックスから見積書を自動で保存し、読み取って明細のリストに書く / 回収と読み取り
本格構成:上記+依頼の台帳との食い違いの印、型代の区分ごとの総額、期限の朝の比較表と未着の一覧 / 回収から比較表まで

最小構成では件数がさばけません。 1通ずつ貼るので、確かめるための段階です。 半自動化で、①と②がほぼ無くなります。 探して保存する作業と、比較表への打ち込みがフローに移るからです。本格構成で③④が減り、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、件名に依頼番号の無い返事の多い仕入先と、型代の書き方の癖がそろいます。仕入先に返信の書き方を頼んでから本格構成に進むほうが、未着の一覧が短くなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
5 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  300件 × 12分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 300件 × 3分 ÷ 60 = 15 時間/月
月間削減時間
45h
削減率
75%
年間削減時間
540h
年間金額換算(時間単価3,500円)
189万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 樹脂成形品・プレス品・ダイカスト品・切削品などの量産部品を、金型や治具の費用を含めて複数の仕入先に相見積で依頼し、月に数十件の見積依頼と数百通の見積書を扱っている製造業・商社。見積書の書式が仕入先ごとに違い、数量の段階や型代の扱いが依頼と違う見積が混ざって比較に時間がかかっている場合。見積依頼を共有のメールボックスで受けており、Microsoft 365 と Power Automate、AI Builder のプロンプトを使える場合。
向いていない
  1. 見積の相手が1〜2社に決まっていて、相見積をほとんど取らない場合。購買のシステムに見積の回答の画面があり、仕入先が決まった項目で入力している場合。見積が月に数十通の規模。なお、どの仕入先に発注するか、価格の交渉をどう進めるか、下請取引に関わる法令上の扱いをどうするかの判断は、この構成では代替できません。見積書に書かれた内容を読み取ってそろえるまでです。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の見積依頼から5件を選び、届いた見積書をすべて集める(うち1件は、型代の書き方が仕入先ごとに違ったものを入れる)
  2. 手元の生成AIの画面に見積書を1通ずつ貼り、第7章の項目を写させる。「書かれていない数量の段階を推測しないでください。型代が別途なら金額を空にしてください」と指示する
  3. 写した値を表計算に並べ、依頼書の条件と見比べ、型代の区分ごとに総額を計算する
  4. 当時の担当者が作った比較表と突き合わせる

5件は必ずやってください。 フローを組む前に、「書式の違う見積書から、型代の書き方を区分に分けて写せるか」を確かめます。

出てきた内容判断
型代の区分と数量の段階を正しく写せたフローの構築に進む
抜けた段階の単価を推測して埋めた指示の書き方で直る。構成は有効
当時の比較表と総額が合わない計算式が担当者ごとに違っていた。 社内の決まりを先に作る

3行目が出たら、それがこの構成で直したかったことです。 総額の出し方を購買部で1つに決め、フローの式に書きます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
抜けた数量の段階の単価を推測する指示で禁じ、書かれた段階だけを写させる
型代が別途の見積がいちばん安く見えるseparate は総額を出さず「型代未確定」と表示する
添付付きのメールが集中してトリガーが止まる添付はトリガーで取らず Get Attachment (V2) で取る
件名に依頼番号の無い返事が落ちる未着の一覧を期限の朝に出す。依頼書に返信の件名を変えないよう書く
共有のメールボックスのトリガーが動かない部署の共有のメールボックスにし、作る人にフルアクセスを付ける
図面の添付まで読んで回数が増えるファイル名と大きさで分け、document_type で落とす
JSON の形が試すたびに変わる「Custom」で形を保存する
再提出の見積と元の見積が両方並ぶ同じ依頼・同じ仕入先の2通目で前の明細に印を付ける
注記が比較表に出ない原文のまま写させ、比較表の下に並べる
総額の数字が担当者の比較表と合わない段階の選び方と型の使用期間を社内の決まりにする

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも安く見える見積を作ってしまう誤りで、AIに計算させず、書かれていないことをそのまま残すことで防ぎます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 仕入先の見積書(単価・型代・支払条件)、見積依頼の図面の番号と版、そして見積書に添付されうる図面そのものです。

  1. データの処理地域を確かめる … AI Builder のプロンプトのモデルは、日本では地域をまたいで処理されうる(cross-geo)区分のものがあります。仕入先の見積の価格と自社の図面の情報を渡してよいかを、社内の取り決めに照らしてから始めます
  2. 図面を渡さない … 仕入先が図面を添付して返してくることがあります。見積書だけを渡し、図面はプロンプトに回しません
  3. 見積の価格を他の仕入先に漏らさない … 比較表は購買部と関係する部署だけに回し、出し直しの依頼の文面に他社の価格を入れません
  4. 発注先を決めさせない … 比較表は判断の材料です。どこに発注するか、価格をどう交渉するかは担当者と上長が決めます
  5. 取引上の法令の扱いを判断させない … 型の保管や代金の決め方には、下請取引に関わる法令上の扱いが関わる場合があります。この構成はその判断をせず、社内の規程と担当の部署の確認に従います

誤りが起きた場合のリスクは、条件の違う見積を同じ土俵で比べて発注先を誤ることと、見積の価格が社外や他の仕入先に漏れることの2つです。 前者は食い違いの印と型代の区分で、後者は渡す範囲と回す先を絞ることで守ります。

10まず何から始めるか

1週目:見積依頼の台帳に列を足す

数量の段階、年間の予定数量、型を使う期間、送った仕入先、回答の期限の列を足し、これから出す見積依頼から入れ始めます。 依頼書に「返信の件名を変えないでください」の一文を足します。

2週目:5件で試す

先月の見積依頼から5件を選び、生成AIの画面で項目を写させます。抜けた段階の単価や別途の型代を推測で埋めていないかを最優先で見ます。

3週目:総額の決まりを作る

年間数量に当たる段階が無いときの単価の選び方と、型代の区分ごとの総額の式を、購買部と設計で決めます。

4週目:回収と読み取りをつなぐ

共有のメールボックスのトリガーから保存と読み取りまでを作り、明細のリストに書くところまで動かします。この時点では比較表を送りません。

2か月目: 食い違いの印と総額の計算、期限の朝の比較表と未着の一覧を足します。3か月目以降: 1通12分が何分になったかを実測し、件名に依頼番号の無い返事の多い仕入先に返信の書き方を頼みます。未着の一覧に手で探す見積がほとんど出なくなった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
When a new email arrives in a shared mailbox (V2) があり、ユーザーどうしで共有した受信箱では片方がフルアクセスを持たないと動かないこと。新着メールのトリガーで添付を含めると集中時に止まりうるため、含めずに Get Attachment (V2) で取るよう案内されていること。Get Attachment (V2)、Send an email (V2) があることMicrosoft Learn: Office 365 Outlook connector2026-10-15
Get items に Filter Query(OData の条件)があること。Create item、Update item、Create file があること。リストのフローが汎用のリストとライブラリでのみ使えることMicrosoft Learn: SharePoint connector2026-10-15
2025年5月から Create text with GPT using a prompt の名前が Run a prompt になったこと。プロンプトの入力に前の手順の内容を入れられることMicrosoft Learn: Use your prompt in Power Automate2026-10-15
文書の入力に PNG・JPG・JPEG・PDF を渡せ、合わせて25MB未満、50ページ未満であること。コードインタープリターを有効にすると Word・Excel・PowerPoint を文書の入力として扱えること。テキストと文書の入力を1つのプロンプトで併用できることMicrosoft Learn: Add inputs to your prompt2026-10-15
出力に JSON を選べ、形が Auto detected か Custom で決まり、保存時の形が実行時に使われること。キーの無い配列を定義できないこと。JSON が作れないときに「Don't include JSON markdown in your answer」を足すよう案内されていることMicrosoft Learn: JSON output2026-10-15
日本で GPT-4.1 mini などが GA (cross-geo) であり、cross-geo のモデルは地域外でデータを処理する場合があることMicrosoft Learn: Prompt model availability by region2026-10-15
Filter array、Select、Create CSV table、Create HTML table の各操作があり、HTML の表をメールで送るときは HTML として送る設定にすることMicrosoft Learn: Use data operations in Power Automate2026-10-15
式の関数 add・mul・float・indexOf・substring があり、Power Automate でも使えることMicrosoft Learn: Reference guide to workflow expression functions2026-10-15

どの仕入先に発注するか、価格の交渉をどう進めるか、下請取引に関わる法令上の扱いをどうするかは、購買部の責任者と担当の部署が決めてください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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