AIが使われないのは研修不足ではない|配った後に効く一手

AIが使われないのは研修不足ではない|配った後に効く一手

「全社に配ったのに、ほとんど誰も開いていない」「研修はやりました。それでも使われないんです」。生成AIの導入から半年ほど経った会社で、決まって出てくる2つの言葉です。そして次の一手として、たいてい追加の研修が計画されます。ところが調査を見る限り、研修の量と利用の広がりは、素直には結びついていません。使われない理由は、教える回数が足りないからではありません。使う場面と、使ってよい範囲が、業務の中で決まっていないからです。この記事では、使われない原因を4つに分けたうえで、定着を作る仕組みを整理します。


カメ先生カメ先生

AIが使われないのは、やる気や研修の量の問題だと思われがちなんだけど、本当は『いつ使うか』が仕事の順番の中に無いからなんだ。


カメ子カメ子

使い方を教われば、自然と使うようになるのではないんですか。


カメ先生カメ先生

教わった直後に使う場面がないと、忘れてしまうんだよ。手順書に『ここで使う』と書いてあるかどうかで、差がはっきり出る。


カメ子カメ子

覚えているかどうかより、仕事の流れに入っているかどうかなんですね。


この記事のポイント
  • 方針を掲げた企業は増えたが、日常的に使う人は1割前後という調査がある
  • 使われない原因は、場面・範囲・見え方・手順書の4つに分けて診断できる
  • 研修は無駄ではない。直後に使う場面が用意されているときにだけ効く

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目次

配った企業は増え、使う人は増えていない

まず数字を見ます。2026年版の情報通信白書を紹介する記事によれば、生成AIを積極的に活用する、あるいは領域を限定して活用すると方針を掲げた日本の企業は68.9%で、前年の49.7%から大きく増えました。導入するかどうかの議論は、すでに決着しつつあります。同じ記事では、組織としての取り組みがなく個人の判断での利用にとどまる企業が約27%とされています。

一方、使う側の数字は伸びていません。パーソル総合研究所の実態調査では、就業者全体で業務に生成AIを使っている人は32.4%、正規雇用の人でも41.9%です。そのうえで、週に4日以上使う日常的な利用者は、どちらの区分でも1割強にとどまると報告されています。つまり、たまに触る人はいても、仕事の一部になっている人はまだ少数です。

配った数と使われた量の差は、意欲の差ではありません。同じ調査は、利用を妨げている理由を「自分の業務に必要性を感じない」「使い方が分からない」「どの業務で使えるかイメージできない」の3つに集約しています。3つのうち2つは、教え方ではなく、業務との結びつきの問題です。なお、調査によって対象も時期も違うため、割合は目安として読んでください。

推移を見ると、この2年で変わったものと変わらなかったものがはっきりします。令和7年版の情報通信白書では、2024年度の調査で活用の方針を掲げた企業が49.7%、その前年が42.7%とされていました。方針だけは2年で大きく伸びています。一方、同じ白書で最も多く挙がった課題は「実用的な利用方法が分からない」でした。方針は増えたのに、課題の中身は入れ替わっていません

この差は、決めることと使えるようにすることが別の作業だからです。方針は会議で決まりますが、使う場面は業務の現場でしか決められません。同じ白書の紹介記事によれば、業務の見直しやAIの活用に必要な技能を学べる環境がある日本の企業は39.9%で、米国の62.7%、中国の71.7%と開きがあるとされています。配ることと、使えるようにする支度は、別の投資です

研修不足と診断すると、何が起きるか

使われない現象に対して、最も出やすい処方が研修の追加です。受講率は上がり、報告できる数字も作れます。しかし利用の量は変わらないことが多い。理由は単純で、研修は使い方を教えますが、使う場面までは作らないからです。教わった翌日の仕事の中に、使う工程が無ければ、覚えた手順は数週間で薄れます。

この取り違えは、症状と原因を混同したときに起きます。「使われていない」は症状であって、原因ではありません。原因を確かめずに研修を足すのは、熱が下がらない理由を調べずに解熱剤を追加するのに近い。同じ処方を繰り返すほど、次の打ち手が見つけにくくなります

では原因はどこにあるのか。現場の声と調査結果を並べると、大きく4つに分けられます。使う場面が決まっていない、使ってよい範囲が曖昧、成果の見え方が個人に閉じている、手順書が更新されていない。この4つは、それぞれ打ち手が違います。だから、まずどれに当たるのかを見分けることから始めます。

研修が選ばれやすいのには、もう一つ理由があります。受講率は測りやすく、実施した証拠が残るからです。使う場面を工程表に書き込む作業は、地味なうえに数字になりません。測りやすい施策が選ばれ、効く施策が後回しになる。定着が進まない会社の多くは、担当者が怠けているのではなく、報告しやすい打ち手を選ばされています。

原因1:使う場面が業務の中で決まっていない

最も多いのがこれです。道具は配られ、使い方も教わった。しかし、日々の仕事のどの工程で使うのかが決まっていない。その結果、忙しい日ほど、慣れたやり方に戻ります。新しい道具は、思い出す手間がある間は必ず後回しにされます

ここでいう場面とは、意気込みではなく工程のことです。たとえば、提案資料を作る工程なら「構成案の下書きを作る」「想定される反論を洗い出す」。問い合わせ対応なら「過去の回答例から候補を並べる」。いつ、どの作業で、何をさせるかを、工程の名前で書けるかどうかが分かれ目です。

場面が決まらない理由の一つに、業務そのものが言語化されていない事情があります。手順が人によって違う仕事に、新しい工程だけを足すことはできません。その場合は、AIの話を一度脇に置いて、まず標準的な進め方を1つ書き出すほうが近道です

場面が決まっていないと、質のばらつきも生まれます。同じ資料作りでも、渡す材料が人によって違えば、返ってくるものの水準も揃いません。その結果、「あの人がやるとうまくいくが、自分がやると使えない」という感想だけが残ります。工程として決めておけば、渡す材料と受け取る形が共通になり、うまくいかなかったときに、やり方のどこを直せばよいかを比べられるようになります。

原因2:使ってよい範囲が曖昧で、怖くて使えない

2つ目は、範囲の曖昧さです。顧客名を入れてよいのか、契約書の文面を貼ってよいのか、出てきた文章をそのまま社外に出してよいのか。判断の基準が示されていないとき、担当者にとっていちばん安全な選択は「使わない」になります。禁止されていないことと、使ってよいと分かっていることは、別です

この状態は、通達で禁止事項だけを並べたときに強まります。してはいけないことのみが示され、してよいことが書かれていないと、読んだ人は、全部を避けるという運用に落ち着きます。現場から見れば合理的な判断であり、注意不足ではありません。

拠りどころとしては、総務省と経済産業省が公表しているAI事業者ガイドラインがあります。2024年4月に第1.0版が示され、2026年3月31日に第1.2版が公表されました。自社の決まりを作るときの土台に使えます。ただし版が更新され続けている文書なので、引用する前に最新の版を公式の案内で確かめてください

範囲が決まらない背景には、決める権限の所在が曖昧という事情もあります。ある調査では、定着しない要因の上位に、安全面への懸念や具体的な活用の案が出ないことと並んで、情報システムの部門の理解や協力が得られないことが挙がっていました。これは現場の意欲の問題ではなく、判断が宙に浮いている状態を表しています。調査ごとに対象が違うため割合はそのまま鵜呑みにできませんが、傾向としては現場の実感と合います。

原因3:成果の見え方が個人に閉じている

3つ目は、成果が見えないことです。先ほどの実態調査では、生成AIの利用で作業時間そのものは削減されているにもかかわらず、総労働時間は減っていないという結果が示されています。浮いた時間の多くが、別のルーチンの仕事に吸収されてしまうためです。早く終わらせた人ほど、次の仕事が積まれるという構図です

この構図が続くと、使う動機が痩せていきます。工夫して30分縮めても、評価にも会議の議題にも上がらず、静かに別の作業が入る。見えない改善は、続ける理由が個人の善意しか残りません。同じ調査は、普及の労力が有志の個人に集中している点も指摘しています。

打ち手は、成果を個人の外に出すことです。工程ごとの所要時間を、導入の前後で1回だけでも測る。浮いた時間を何に充てたのかを、チームの単位で言葉にする。測る対象は、使った回数ではなく、業務にかかった時間です

同じ調査は、作業時間の削減そのものは確認されている点も報告しています。週あたりで1割台の削減が測られる一方、総労働時間は減っていない。つまり効果が出ていないのではなく、効果の行き先が設計されていないのです。浮いた時間を何に充てるのかを決めるのは、使う本人ではなく、業務を配る側の仕事です。ここを空欄にしたまま導入すると、成果は個人の残業時間の中に消えていきます。

原因4:手順書と型が更新されていない

4つ目は見落とされがちです。業務の手順書、チェックリスト、引き継ぎ資料、新人向けの説明資料。これらに生成AIを使う工程が書かれていなければ、会社の正式な手順としては「使わない」が正解のまま残ります。熱心な人が個人的に使っているだけ、という状態が固定されます。

この問題は、担当が変わるときに表面化します。引き継ぎは手順書に沿って行われるので、書かれていない使い方は引き継がれません。道具の知識は個人につき、手順書は古いまま残ります。半年後には、部署ごと元のやり方に戻っていることさえあります。

更新は、大がかりな改訂でなくて構いません。既存の手順書に1行足すところから始められます。「この工程では、まず下書きを作らせてから人が直す」と書き、あわせて、その工程で人が必ず確認する項目を書き添えます。手順書に載って初めて、使い方は個人から組織のものになります。

手順書の更新は、あとで説明を求められたときにも効きます。顧客や監査の場面で「この資料はどう作ったのか」と問われたとき、手順書に工程と確認の項目が書かれていれば、そのまま説明になります。書かれていなければ、担当者の記憶に頼るしかありません。定着の話に見えて、これは説明できる状態を保てるかどうかの話でもあります。

4つの原因を、聞こえてくる声から切り分ける

原因が違えば打ち手も違います。現場から聞こえる言葉には、原因の手がかりが含まれています。次の表を目安に、自社がどれに当たるかを見分けてください。複数に当てはまる場合は、上の行から順に手を付けます。

現場で聞こえる声本当の原因最初の一手
何に使えばいいのか分からない使う場面が決まっていない業務を1つ選び、工程表に使う場面を書き込む
情報を入れていいのか判断できない使ってよい範囲が曖昧入れてよい情報と、確認が要る情報を分けて明示する
やっても誰にも見えない成果の見え方が個人に閉じている工程の所要時間を導入の前後で測って共有する
手順書に書いていないので使わない手順書が更新されていない既存の手順書に工程を1行足し、確認項目を添える
前に使ったが期待外れだった場面と道具の相性が悪い任せる工程を、下書きと洗い出しに限定して試し直す

5行目は補足です。一度期待外れだった経験は、後の利用を強く抑えます。最初に任せる工程を選び損ねると、道具そのものの評価が下がります。正解のある計算や判断ではなく、下書きと洗い出しから試すのが無難です。

切り分けの方法は、全社アンケートより聞き取りが向いています。1つの業務を選び、その担当者4人か5人に、直近の1週間で使った場面と、使わなかった場面を聞く。使わなかった理由が「思い出さなかった」なら場面の問題、「入れてよいか分からなかった」なら範囲の問題です。選択肢を並べた設問では、答えやすい理由に票が寄り、原因が見えにくくなります。

対策1:業務の型に1行入れる

定着の起点は、工程表への書き込みです。業務の型、つまり手順書やチェックリストの中に、使う工程を1行として入れる。これだけで、使うかどうかが個人の判断から外れます。意欲に頼らない仕組みとは、要するに手順に書いてあるということです

書き方には粒度があります。「業務でAIを活用する」では何も決まっていません。書くべきは作業の名前と、渡すものと、受け取るものです。たとえば「議事録の要約:録音の書き起こしを渡し、決定事項と宿題の一覧を受け取る」まで書けば、翌日から実行できます。

あわせて、その工程で人が必ず見る項目も書きます。要約なら、決定事項の抜けと、日付や金額の取り違え。確認の担当と観点を書いておかないと、確認そのものが省かれます。任せる範囲と確かめる範囲を、同じ1行の中で決めておくのがこつです。

あわせて、使わない工程も書いておきます。すべての作業に取り入れようとすると、向かない工程で失敗し、その印象が全体に広がります。顧客との個別のやり取りや、最終的な数字の確定など、人が担うと決めた工程を明記しておけば、迷いも、無理な適用も減ります。使う場面と使わない場面が両方書かれている手順書は、現場から見て安心できるものになります。

対策2:使ってよい範囲を、してよいことの側から書く

範囲の決め方は、禁止事項の列挙ではなく、3つの区分で書くと機能します。そのまま入れてよい情報、上長の確認が要る情報、入れない情報。してよいことが書かれていない決まりは、使わない口実として働きます。境界の例を2つ3つ添えておくと、迷いが大きく減ります。

出力の扱いも同じように決めます。そのまま社外に出してよいもの、社内で確認してから出すもの、必ず一次資料に当たるもの。事実関係と数字は、出典に当たってから使うと決めておくだけでも、事故の多くは防げます。文章の下書きと、事実の調査を、同じ扱いにしないことが大切です。

そして、判断を任せないことを明記します。採否、金額の決定、人の評価に関わる判断は、道具の側に置かない。AIに書かせるのは案と根拠であって、結論ではありません。迷ったときに聞ける相手を1人決めておくと、範囲の判断はさらに速くなります。

範囲の決め方は、道具の進み方に合わせて見直す必要があります。2026年3月に公表された第1.2版では、複数の作業を続けて実行する形のAIについての定義が加えられました。処理が連なるほど、人が確認する地点は意識して置かないと消えていきます。範囲を決めるときは、入れてよい情報の話だけでなく、どの工程で人が必ず一度止めるのかまで書いておくと、後から効いてきます。

対策3:良い使い方が流れる場を作る

使い方は、資料よりも人づてに広がります。ただし雑談まかせでは広がりません。共有の型を決めると、一気に流れやすくなります。業務名、渡したもの、かかった時間の前と後、うまくいかなかった点の4つで十分です。

特に4つ目が要ります。成功例だけを並べると、聞いた側は自分の仕事に置き換えられません。うまくいかなかった点まで共有されて、初めて真似ができます。月に一度の大きな発表会より、週に一度10分の持ち回りのほうが続きます。

場に持ち込む題材は、派手さより身近さで選びます。全社に効く華やかな事例より、隣の席の人が昨日やった手直しのほうが、参加者には効きます。共有の目的は称賛ではなく、複製できる形にすることです。記録は短く残し、後から検索できる場所に置きます。

話す人が偏らない工夫も要ります。詳しい人ばかりが発表すると、聞く側は自分との差を感じて足が遠のきます。持ち回りにして、うまくいかなかった話も同じ重みで扱う。その場で出た困りごとは、推進役が引き取って範囲や手順書の見直しにつなげます。共有の場が、決まりを直すための入り口として機能し始めると、定着は目に見えて速くなります。

対策4:推進役を置き、時間と権限を渡す

定着には、進める人が要ります。専任である必要はなく、兼任で構いません。ただし、役割を任命するだけで、時間と権限を渡さないと機能しません。先ほどの調査でも、普及の労力が有志の個人に集中している点が課題として挙げられています。

推進役の仕事は3つに絞れます。使う場面を業務ごとに決めること、範囲の相談を受けて判断すること、共有の場を回すこと。道具に詳しい人より、業務の流れを知っている人が向きます。設定や技術の質問は、詳しい人に個別に振れば足ります。

渡すべき権限も具体的です。手順書に工程を書き足してよい権限、範囲の判断を暫定で決めてよい権限、そして週に数時間をこの仕事に充ててよいという合意。この3つが無い推進役は、頼まれごとの窓口で終わります

評価の扱いも先に決めます。推進の仕事は本業の成果に直接は表れないため、何をもって成果とみなすかを、任命の時点で上長と合意しておく必要があります。決めた工程が何本増えたか、手順書を何件更新したか、共有の場が何回開かれたか。数えられる形にしておけば、半年後に打ち切られる事態を避けられます。

利用状況は、使った回数だけを見ない

定着の度合いを測るとき、最初に出てくるのが利用率です。見やすい数字ですが、これだけを追うと目的がずれます。目標が「使うこと」になると、使うための仕事が生まれます。測るべきは、対象の業務がどう変わったかです。

  • 決めた工程で、実際に使われた割合(全社の利用率ではなく、工程ごとに見る)
  • その工程にかかる時間が、導入の前後でどう変わったか
  • 出てきたものを人が直した量(直しが多い工程は、任せ方が合っていない)
  • 範囲の相談が、月に何件来ているか(ゼロは安心ではなく、使われていない兆候)
  • 共有の場に出た事例のうち、他の人が真似した数

4つ目は特に見落とされます。相談が来ないのは、決まりが浸透した証拠とは限りません。使われていないだけの可能性があるため、利用の数字とあわせて読みます。数字は診断のためのものであって、達成目標ではありません

読み取る間隔にも注意が要ります。配った直後は物珍しさで数字が伸び、1か月ほどで落ち着きます。その落ち込みを見て失敗と判断するのは早すぎます。四半期の単位で、決めた工程での利用と、所要時間の変化を並べて見る。工程を決める前と後で比べれば、施策の効果と、単なる新しさへの反応を切り分けられます。

測る担当も決めておきます。誰も測らなければ、振り返りは印象の言い合いになります。工程にかかる時間は、その業務の担当が週に一度、1行書き留めるだけで足ります。そして、数字を集める人と、続けるかどうかを判断する人は分けておく。推進役が自分の成果を自分で採点する形にすると、都合の悪い数字が出にくくなります。

導入から定着までの進め方

全社に一斉に配る前でも後でも、進め方は同じです。対象を絞り、工程に書き、短い期間で試し、測ってから広げる。この順番を飛ばすと、規模が大きいほど戻すのが難しくなります。

STEP1
業務を1つ選ぶ

頻度が高く、手順が決まっていて、間違えても取り返しがつく業務を選びます。要約や下書きが向きます。

STEP2
工程表に使う場面を書く

作業の名前、渡すもの、受け取るもの、人が確認する項目を1行で書き足します。

STEP3
使ってよい範囲を決める

入れてよい情報、確認が要る情報、入れない情報の3区分と、相談先を明示します。

STEP4
担当者だけで2週間試す

全社に広げる前に、その業務の担当だけで回します。困りごとを毎日1行で記録します。

STEP5
前後の時間と手直しの量を測る

工程の所要時間と、出力を直した量を比べます。時間が減っていなければ、任せ方を変えます。

STEP6
型にして横に広げる

うまくいった1行を手順書に正式に載せ、同じ形で次の業務へ展開します。

5つ目で結果が出なかった場合、無理に広げないことが大切です。合わない工程を全社に広げると、道具そのものへの不信が残ります。選び直して試すほうが、結果的に速く進みます。

この6工程は、全社に配る前でも、配った後からでも始められます。すでに配ってしまい、使われていない状態にある会社のほうが多いはずです。その場合は、回収したり配布を止めたりする必要はありません。1つの業務を選び、その工程表に1行を書き足すところから、同じ順番でやり直せます。全社での号令をかけ直すより、1つの業務で前後の時間が変わった事実を作るほうが、次の話が通ります。

試す期間は、長すぎないほうがうまくいきます。2週間なら、担当者は最後まで記録を続けられます。3か月にすると、途中で記録が途切れ、結局は印象で語ることになります。短い期間で区切り、続けるか、任せ方を変えるか、選び直すかを決める。この判断の回数が、定着の速さをそのまま決めます。

研修が効くのは、条件がそろったとき

ここまで研修の限界を書いてきましたが、研修そのものは有効です。効かないのは、条件が整っていないときに単独で行われる場合です。実態調査でも、妨げの一つは「使い方が分からない」ことでした。教える必要は確かにあります。順番の問題です

研修が効く条件は、次の4つです。これらがそろっていれば、同じ内容でも定着の度合いは変わります。

  • 自分の担当業務の題材を使う(一般的な例題では、翌日に再現できない)
  • 研修の直後に使う工程が、すでに手順書に書かれている
  • 使ってよい範囲が事前に決まっていて、迷ったときの相談先がある
  • 上長も同じ内容を受けている(管理職の習熟の遅れは、複数の調査で指摘されている)

4つ目は特に効きます。決裁する側が使い方を知らないと、現場が工夫しても差し戻しが起きます。管理職が使い方を知らない限り、現場の工夫は評価されません。研修を計画するなら、対象の順番を現場からではなく、決める人から始める手もあります。

学べる場を用意することは、依然として大きな課題です。先に触れたとおり、必要な技能を学べる環境がある日本の企業は39.9%にとどまるとされています。この数字が示しているのは、研修が過剰だということではなく、業務に結びついた学びの機会がまだ足りないということです。研修を減らすのではなく、業務の題材と使う場面をひもづけて設計し直すのが、実務的な結論になります。

定着の打ち手でよくある失敗

最後に、定着を狙った施策でつまずきやすい点をまとめます。いずれも善意で行われ、しかも短期的には数字が出るものばかりです。

  • 全社に一斉配布して様子を見る:使う場面が無いまま配られ、最初の1か月で開かれなくなる
  • 利用率だけを目標にする:使うための仕事が生まれ、業務は変わらないまま数字だけ上がる
  • 禁止事項だけの通達を出す:してよいことが分からず、全部を避ける運用に落ち着く
  • 推進役を任命だけして時間を渡さない:本業の合間の頼まれごとになり、半年で止まる
  • 成功事例を上層部だけで共有する:現場に複製できる形で降りてこない
  • 使われないと分かるたびに研修を追加する:原因が別にあるため、受講率だけが上がる

6つのうち、判断を誤りやすいのは2つ目です。利用率は上げようと思えば上げられる数字なので、成果として報告できてしまう分だけ、原因の発見を遅らせます

裏を返せば、避け方も共通しています。施策を決める前に、いま起きているのは4つの原因のどれなのかを言葉にすること。そして、その施策が効いたかどうかを、業務の側の数字で確かめると先に決めておくこと。この2つを踏むだけで、打ち手の選び方は変わります。配る、教える、しばる。この3つ以外の選択肢が見えてくるのは、原因を言葉にした後です。

まとめ

生成AIが使われない原因は、研修の量ではなく、使う場面・使ってよい範囲・成果の見え方・手順書の4つにあります。業務の型に1行を書き足し、してよいことの側から範囲を示し、うまくいかなかった点まで共有できる場を作り、推進役に時間と権限を渡す。測るのは全社の利用率ではなく、決めた工程の所要時間と手直しの量です。そして、判断は人が持ち、AIには案と根拠を書かせる。まずは業務を1つ選び、その手順書に1行を書き足すところから始めてみてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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