AIの決まりは新しい規程にしなくてよい|3階層のどこに置くか

総務省が2026年7月に更新した令和8年版の情報通信白書で、生成AIの活用方針を企業に尋ねた結果が出ています。日本で「積極的に活用する方針である」が30.1%、「活用する領域を限定して利用する方針である」が38.8%。白書はこの2つの合計を68.9%とし、前年度調査の49.7%から大きく上がったと書いています。一方、同じ調査でリスク対策の取組を尋ねた設問では、「全社的な指針やガイドラインを整備している」が41.1%でした。「AIの規程を1本作ることになったのですが、既存の情報セキュリティ規程と何をどう分けるのか決まりません」「配った利用ルールが社内のどの規程の下にあるのか、聞かれても答えられない状態です」——法務と情報システムが同席した席で、決まって足が止まるのがここです。詰まっているのは中身ではなく置き場所です。情報セキュリティの決まりはもともと3階層でできていて、AIの決まりはその3層のどこかに割り付けられる。新しい階層が要るわけではありません。この記事では、公表資料が定義している3階層の性質を原文で確かめ、別に1本立てたときと既存の階層に足したときで何が変わるかを、割り付けの作業として整理します。
カメ先生AIの決まりは新しい文書を1本起こすものだと思われがちですが、決まりの中身をよく見ると、ほとんどが既にある規程のどれかの条と同じ場所を指しています。
カメ子既存の規程と同じことを書いてしまっている、ということですか。
カメ先生書き写しているというより、居場所が重なっているのです。入力してよい情報の話は情報資産の区分の条、使ってよい道具の話は外部サービスの条。別の文書に移すと、同じ話が2か所で管理されます。
カメ子ではAIのために書き足す必要が本当にあるのは、どのくらいの分量なのでしょうか。
- 情報セキュリティの決まりは基本方針・対策基準・実施手順の3階層。公表資料は上の2つを合わせて「ポリシー」と呼び、実施手順はその外に置いている。階層ごとに公開の扱いも逆になる
- AIの決まりの項目を対策基準の章立てに割り付けると、既存の条の射程に入るものが大半で、新しく書き起こす必要があるのは残った数項目だけになる
- 重複の洗い出しと用語のそろえは機械の仕事にできる。ただし、どの階層に置くかと、例外を認めるかどうかの決めは、改定を決裁する人の手元に残る
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方針は決まったのに、その決まりが文書のどこにも無い
白書の数字をもう少し分解します。日本の回答は、積極的に活用する方針30.1%、領域を限定して利用する方針38.8%、利用を禁止している3.5%、方針を明確に定めていない20.2%、わからない7.4%。企業規模別では、上位2つの合計が大企業で74.0%、中小企業で58.1%と白書は書いています。禁止という決断をした会社はごく少数で、多数派は「限定して使う」に落ち着いた、という分布です。
問題は、この「限定して使う」がどこに書かれているかです。限定とは、使ってよい範囲と使ってはいけない範囲の境目を引くこと。境目を引いたなら、それは判断の基準ですから、文書に残らないと引き継げません。ところが方針を決める作業は経営会議の1コマで終わるのに対し、文書にする作業には置き場所を決める工程が挟まります。ここで止まると、決めた内容は通達、社内お知らせ、部門の手引き、チャットの固定メッセージに散ります。
散った状態の実害は、外から聞かれたときに出てきます。取引先の確認票に「生成AIの利用に関する社内規程の名称と制定日を記入してください」という欄があり、監査で「どの文書の何条ですか」と聞かれる。そのときにお知らせの本文をそのまま貼るしかない状態だと、決めていないのと同じに見えます。置き場所を決めるのは形式の話に見えて、実は説明できるかどうかの話です。
情報セキュリティの決まりは、もともと3階層でできている
置き場所を考えるときの土台になるのが、総務省の「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」です。平成13年3月30日に策定され、2026年9月時点で確認できる最新版は令和7年3月28日改定の令和7年3月版です。別紙2の本体だけで413ページあります。自治体向けの文書ですが、民間企業の情報セキュリティ規程も同じ構造で作られているため、階層の定義を確かめる材料として使えます。
原文の定義はこうです。「各地方公共団体の情報セキュリティ対策における基本的な考え方を定めるものが、『基本方針』である。この基本方針に基づき、全ての情報システムに共通の情報セキュリティ対策の基準を定めるのが『対策基準』である。この『基本方針』と『対策基準』を総称して『情報セキュリティポリシー』という。この『対策基準』を、具体的なシステムや手順、手続に展開して個別の実施事項を定めるものが『実施手順』である」。つまりポリシーという語は上の2層だけを指していて、実施手順はその外側にあります。同じガイドラインは「本ガイドラインの対象とする範囲は『情報セキュリティポリシー』を構成する『基本方針』及び『対策基準』であり、『実施手順』は含まれない」とも書いています。
社内で言葉がすれ違う原因の多くはここにあります。「ポリシーに書いてある」と言う人が対策基準を指し、聞いた人が基本方針を見に行って見つからない。自社の呼び名が方針・規程・手順書であっても、3階層のどれに当たるかを最初に確認しておくと、以降の議論が短くなります。AIの決まりを作る話も、まずどの層の話をしているのかから始めれば、新規程を1本起こすかどうかは自動的に決まる部分が多くあります。
階層ごとに、公開の扱いが逆になる
3階層は上下関係だけでなく、外に出せるかどうかが層ごとに違います。同じガイドラインの解説編は、基本方針について「必要に応じて住民や外部機関に対して公開することが望ましい」と書き、宣言書の形式にしてもよいと述べています。対策基準については「公にすると、サイバー攻撃を受けるリスクがあるため、必要に応じて非公開にすることも考えられる」。実施手順の例文はもっと踏み込んでいて、「公にすることにより本市の行政運営に重大な支障を及ぼすおそれがあることから非公開とする」と定めています。
この性質を知らずにAIの決まりを1本の文書にまとめると、扱いに困る束ができます。外に見せたい宣言と、外に見せられない判断基準と、絶対に外に出せない設定の手引きが、同じ表紙の下に並ぶからです。結果として起きるのは2つ。全体を非公開にして、取引先に見せられなくなるか、公開できる粒度まで薄めて、現場が使えない文書になるかです。どちらも、階層を分けていれば起きません。
外部にAIの使い方を示すべきかどうか、載せる項目をどう選ぶかは、それ自体で別の論点になります。ここでは、公開の可否は文書ごとではなく階層ごとに決まっているという一点だけ押さえておけば足ります。1本にまとめたい誘惑が来たときに、この性質を思い出せば手が止まります。
原典を数えると、3階層の教科書に生成AIは一度も出てこない
念のため確かめておくべきことがあります。令和7年3月版の別紙2、413ページを全文で取り出して数えると、「生成AI」も「人工知能」も「機械学習」も0件でした。一つ前の令和6年10月2日改定版(403ページ)も、「生成AI」と「人工知能」は同じく0件です。3階層を定義しているこの文書は、AIについて一言も書いていません。
この事実の読み方を、両側とも外さないようにします。「この文書にAIの決まりの書き方が載っている」と言えば外れます。載っていません。反対に「載っていないから当てはまらない」と言っても外れます。対策基準には外部サービスの利用に関する章があり、そこは提供者の選定基準、利用申請の許可権限者、利用状況の管理までを定めているからです。自社の規程が同じ構造なら、外部のAIサービスは、名指しされていなくても外部サービスの条の射程に入っている可能性が高い。まずそこを読んでから、足りない分を数えるほうが早く終わります。
なお、この記事はAIの決まりの項目そのものを設計する記事ではありません。入力してよい情報の線引きや出力の確認の作り方には別の論点があり、そちらでは既に整理されています。ここで扱うのは、決まった項目をどの文書のどこに置くかだけです。
- 本記事は2026年9月時点で公表されている資料に基づいています。改定があれば条や節の番号は変わります
- 引用したガイドラインは原文で英字4文字の略語を使っている箇所がありますが、本記事では「最高情報セキュリティ責任者」のように日本語表記に置き換えています
- 白書の数値は設問ごとに回答対象者が異なる場合があります(活用方針の設問で「利用を禁止している」と答えた企業を除いて尋ねている設問があると本文に明記されています)。割合どうしを引き算しないでください
別に1本立てると、何が変わるか
独立したAI利用規程を作る型から見ます。得られるものは3つ。早く出せること、読み手が探しやすいこと、そして改定が軽いことです。既存規程の改定は法務と各部門の合議が要りますが、新規の1本なら所管部署の起案で通せる会社が多い。動きの速い領域で、この差は小さくありません。
失うものは、上位の文書とのつながりです。基本方針を1行も直さずに別立ての文書を作ると、上から降りてきたときにAIの決まりへの入口がありません。さらに、優先関係を書いていないと、既存規程と食い違ったときにどちらが勝つか決まらない。監査や自己点検の対象範囲が「情報セキュリティポリシー及び関係規程等」と書かれている会社では、新しい文書がその「等」に入るのかどうかが、誰にも分からない状態になります。
もう1つ見落とされるのが、例外と違反の経路です。既存の規程には、例外を申請して許可を得る条と、違反したときの扱いを書いた条があります。別立ての文書にはたいてい、そこが書かれていません。書かないまま運用すると、AIについてだけ例外の申請先が無い状態になり、現場は申請せずに使うか、使うのをやめるかの二択になります。
既にある階層に足すと、何が変わるか
反対に、既存の対策基準に節を足す型を見ます。得られるものは、既にある仕組みをそのまま使えることです。遵守義務の条がそのまま及び、例外措置の申請経路が使え、違反時の扱いも書かれている。監査と自己点検の対象にも自動的に入ります。優先関係を新しく書く必要もありません。接ぎ木のほうが、根を張るのが速いという言い方が近い。
失うものは速さです。対策基準の改定は、多くの会社で情報セキュリティ委員会に相当する会議体の議決が要ります。四半期に一度しか開かれない会議体なら、決まってから施行まで3か月かかることもある。また、節を挿入すると条番号がずれ、他の文書からの参照や、取引先に提出済みの確認票の記載と食い違います。
この速さの問題は、階層をもう一段使えば回避できます。判断の基準は対策基準に置き、変わりやすいものは実施手順の側に別紙として置いて、参照だけを張る。使ってよい道具の一覧が典型です。一覧を対策基準の本文に書き込むと、道具が1つ増えるたびに規程改定になります。参照にしておけば、別紙の差し替えで済みます。
分かれ目は、改定の速さと決裁の重さ
2つの型を、実務で効いてくる観点で並べます。どちらが正しいという話ではなく、自社がどちらの痛みに耐えられるかを選ぶ表として読んでください。なお、公表資料は見直しについて、監査と自己点検の結果や状況の変化を踏まえ「毎年度及び重大な変化が発生した場合に」リスク評価を行うと定めています。この周期に間に合うかどうかが、選択の実質的な物差しになります。
| 観点 | 別に1本立てる | 既存の階層に足す |
|---|---|---|
| 遵守義務の及び方 | 新しい文書に遵守義務の条を書かないと及ばない | 既存の遵守義務の条がそのまま及ぶ |
| 改定の決裁 | 所管部署の起案で通せることが多い | 規程の改定を決める会議体の議決が要る |
| 改定にかかる時間 | 数週間。動きの速い領域に追随しやすい | 会議体の開催周期に縛られる |
| 外に示すとき | 公開と非公開が同じ表紙の下に混ざりやすい | 階層ごとに公開の扱いが決まっている |
| 監査・点検の対象 | 対象範囲の記載次第で入るか分からない | 既存の対象範囲にそのまま入る |
| 例外を認める経路 | 申請先と記録の様式を新しく作ることになる | 既存の例外措置の条をそのまま使える |
| 古くなったとき | 廃止すればよい。切り離しやすい | 節を削る改定が要る。手間はかかる |
表を眺めると、別立ての利点は速さに集中し、既存に足す利点は仕組みの再利用に集中していることが分かります。そこで多くの会社が落ち着くのが折衷です。判断の基準は対策基準の節として足し、変わりやすい一覧と手引きは実施手順の別紙に置き、基本方針には適用範囲の1行だけを加える。この形なら、速さと仕組みの両方を手放さずに済みます。
AIの決まりの中身を、対策基準のどの章に割り付けるか
ここからが実際の作業です。公表資料の対策基準は9章で構成されています。組織体制、情報資産の分類と管理、情報システム全体の強靭性の向上、物理的セキュリティ、人的セキュリティ、技術的セキュリティ、運用、業務委託と外部サービス(クラウドサービス)の利用、評価・見直し。自社の規程の章立てもおおむねこれに近いはずです。AIの決まりとして書き出した項目を、この章に機械的に割り付けてみます。
| 対策基準の章(原文の章名) | AIの決まりのうち、この章に入るもの |
|---|---|
| 組織体制 | 誰が利用を許可するか。許可の権限を誰まで下ろすか |
| 情報資産の分類と管理 | 入力してよい情報の区分。対話の履歴と生成物をどう扱うか |
| 人的セキュリティ | 研修の対象と頻度。遵守事項。誤った出力に気づいたときの報告 |
| 技術的セキュリティ(アクセス制御) | 参照させる範囲。元の文書の閲覧権限との整合 |
| 技術的セキュリティ(システム開発、導入、保守等) | 社内に組み込むときの確認。試した記録の残し方 |
| 運用(遵守状況の確認) | 許可していない利用を把握する方法と、点検の周期 |
| 運用(例外措置) | 認めるときの申請と許可。期限と代替措置 |
| 運用(侵害時の対応等) | 誤った出力が外に出たときの連絡経路 |
| 業務委託と外部サービスの利用 | 事業者の選定基準。再委託。準拠法。利用を終えるときの扱い |
| 評価・見直し | 見直しの周期。使ってよい道具の一覧をどの周期で回すか |
割り付けてみると、多くの会社で気づくことがあります。右側の項目のうち、既存の条が既に射程に収めているものが大半だという点です。入力してよい情報の区分は情報資産の分類の条があり、許可の権限は組織体制の条があり、事業者の選定は外部サービスの条がある。新しく書き起こす必要があるのは、AI特有の言葉で読み替えないと現場が判断できない数項目だけです。
外部サービスの条は、すでにここまで書いてある
いちばん重なりが大きいのが外部サービスの章です。公表資料の例文は、まず整備すべき規定として4つを挙げています。利用可能な業務および情報システムの範囲と、情報の取扱いを許可する場所を判断する基準。提供者の選定基準。利用申請の許可権限者と利用手続。そして管理者の指名と利用状況の管理です。AIの利用ルールに書こうとしていた項目の多くが、この4つの中に既に居場所を持っています。
選定条件はさらに細かく、7項目が列挙されています。取り扱う情報の目的外利用の禁止。提供者における対策の実施内容と管理体制。意図しない変更が加えられないための管理体制。資本関係や役員等の情報、従事する者の所属・専門性・実績および国籍に関する情報提供と、施設の場所の指定。事故への対処方法。契約の履行状況の確認方法。履行が不十分な場合の対処方法。加えて、国内法以外の法令や規制が適用されるリスクを評価して準拠法と裁判管轄を選定条件に含めること、再委託先の扱いを担保させることも書かれています。
終わり方についても定めがあります。利用を終了する際の運用規程には、終了時の対策、取り扱った情報の廃棄、利用のために作成したアカウントの廃棄を全て含めること。AIサービスをやめるときに何が残るかという論点は、既存の条が先に用意しているわけです。個々の事業者に何を確認するかという契約側の話は、また別の整理になります。ここで確認したいのは、新しい規程で書き直そうとしていたものが、実は既存の条の言い換えだったという事実のほうです。
基本方針に足すのは、1行か2行でよい
上の層に目を移します。公表資料の基本方針は10項目で構成されています。目的、定義、対象とする脅威、適用範囲、職員等の遵守義務、情報セキュリティ対策、監査および自己点検の実施、見直し、対策基準の策定、実施手順の策定。解説編ではこれに宣言書の形式が加わります。この構成を見ると、AIの決まりの中身を書く欄はどこにも無いことが分かります。
足すべきは2か所だけです。1つは適用範囲。自社が利用する外部のAIサービスと、そこで扱う情報が適用範囲に含まれることを明示します。もう1つは対象とする脅威。攻撃だけでなく、誤った出力が業務判断に混ざることも脅威として書けるかどうかで、リスク評価の一覧にAIの誤りを載せる根拠ができます。
逆に、基本方針に詳細を書くのは避けたほうが無難です。この層は外に出す層なので、書けば書くほど改定のたびに外向けの文書を直すことになります。使ってよい道具の名前、入力してはいけない情報の細目、確認の担当。どれも下の層の仕事です。基本方針には対象に含むという宣言と、詳細の参照先の2点を置けば、上位の文書としての役目は果たします。
実施手順に落とすのは、変わりやすいものだけ
いちばん下の層は、公表資料が非公開を前提としている層です。ここに置くのは、変わりやすく、かつ判断を伴わないものに限ります。具体的には、使ってよい道具の一覧、申請画面の入力手順、設定の手引き、権限を付与するときの操作の順番。四半期ごとに差し替えても誰も困らないものが目安です。
反対に、ここに落としてはいけないものがあります。判断の基準です。入力してよい情報の区分、例外を認める条件、確認せずに出してよい範囲。これらを手順書に書いてしまうと、非公開の文書の中に判断が沈みます。沈むと何が起きるか。取引先や監査から「その判断は誰がいつ決めたのですか」と聞かれたときに、非公開の手順書を根拠として示すことになり、説明が通りません。
見分け方は単純です。文が「〜する」で終わるなら手順、「〜してよい」「〜してはならない」で終わるなら基準。書きながら文末を見るだけで、その1行がどの階層の住人かはおおむね判別できます。迷ったら上の層に置くほうが安全です。下の層に置いた基準は、誰の目にも触れずに古くなります。
例外を認める経路を、新しく作らない
運用の章にある例外措置の条は、AIの決まりを置くときにいちばん再利用の効く場所です。公表資料の例文は、遵守が困難な状況で、遵守事項と異なる方法を採るか実施しないことに合理的な理由がある場合、最高情報セキュリティ責任者の許可を得て例外措置を講じることができる、としています。緊急を要するときは事後速やかに報告する。そして申請書と審査結果を適正に保管し、定期的に申請状況を確認することまで書かれています。
解説はさらに踏み込んでいて、例外は単に適用を排除するだけでなく、リスクに応じて代替措置を定め、期限を設けて認めることが望ましいとしています。そのうえで、手続を定めて明示することによって「ローカルルールの氾濫や、対策の未実施を防止することができる」と書いています。注記には、例外の内容から判断してポリシーの遵守自体に無理があると考えられる場合には、そのポリシーの見直しを検討する必要があるとも添えられています。
AIの決まりを別立てにすると、この経路も別立てになりがちです。そうなると、例外の申請が2か所に分かれ、どちらの窓口も件数を数えていない状態が生まれます。例外の件数は、規程が現場に合っているかを測る数少ない指標です。同じ条から3か月で7件の例外申請が上がってきたなら、それは現場の違反ではなく条文の問題だと分かる。この情報を捨てないためにも、経路は1本に寄せておく価値があります。
AIに任せてよい工程と、人が決める工程
この割り付け作業は、突き合わせの手数が多い割に判断は少ない部分と、手数は少ないが判断が重い部分にはっきり分かれます。前者は機械に寄せられます。任せてよいのは4つ。既存規程との重複の洗い出し、改定が要る条の抽出、用語のそろえ、周知文の下書きです。たとえば自社の対策基準の全文とAIの決まりの項目一覧を渡し、各項目がどの章のどの条に当たるかの対応表を作らせる、といった使い方になります。
ただし、条件を先に付けます。出力には必ず条番号と該当文言を併記させること。そして根拠が空欄の行は、本当に対応する条が無いのか、探せなかっただけなのかを人が切り分けること。規程の文はどれも似た言い回しなので、機械は「似ている」と「同じことを言っている」をよく取り違えます。たとえば外部委託の条と外部サービスの条は文の骨格がほとんど同じですが、前者は自社が仕事を出す話、後者は他社の仕組みを借りる話で、責任の分かれ目が違います。この違いは条文の字面からは読めません。
人が決めるのは3つです。どの階層に置くか。改定の決裁を通すかどうか。例外を認めるかどうか。どれも後で説明を求められる決めで、説明を求められる決めを機械の出力のままにすると、誰の判断でもなくなります。順番も大事で、確認する範囲を先に決めてから走らせます。先に走らせて出てきた量を見てから確認方法を考えると、量に負けて確認が形だけになります。
- AIに作らせるのは対応表と差分と言い換えまで。どの階層に置くかは判断させない
- 出力には条番号と該当文言を必ず併記させる。要約だけの行は採用しない
- 根拠が空欄の行は、条が無いのか探せなかったのかを人が切り分ける
- 外部委託の条と外部サービスの条を混同していないか、目視で1件ずつ確かめる
- 確認する範囲と担当を、走らせる前に決めておく
置き場所を決める前に、手元にそろえる文書
作業に入る前に集めるものを一覧にします。ここがそろっていないまま議論を始めると、「たぶん書いてあったと思います」の応酬になって半日が消えます。逆にそろっていれば、割り付け自体は1日で終わる会社が多い。
- 基本方針の現物(最終改定日つき)
- 対策基準の目次と全文。章と節の番号が分かる形
- 実施手順の一覧と、それぞれの最終改定日
- 規程の改定を決める会議体の名前と、開催の周期
- 例外措置の申請書の様式と、直近1年の申請件数
- 監査と自己点検の直近の報告書
- 取引先から届いた確認票のうち、直近でAIに触れているもの
- 既に配ってあるAIの利用ルール・お知らせ・部門の手引きの全部
そろったら、次の5工程で進めます。重いのは工程2と工程4だけで、残りは事務です。
自社の呼び名が3階層のどれに当たるかを確定させる。呼び名が2階層しかない会社もあるので、その場合は手順書の位置づけを先に決める。
文末が「〜してよい」「〜してはならない」なら基準、「〜する」なら手順。この段階で、既に配ってあるお知らせの文も同じ基準で仕分ける。
章と節の番号まで指定して割り付ける。対応する条がある項目は、書き足すのではなく読み替えの注記で足りることが多い。
割り付け先が無かった項目だけを集める。ここで残る数が、そのまま改定の重さになる。数項目なら節を1つ足すだけで済む。
会議体の次回開催日から逆算して起案の期限を置く。同時に、使ってよい道具の一覧を回す周期も決めて別紙に切り出す。
半年後にこうなる、という失敗の型
別立てで作った会社が半年後に持ち込む相談には、型があります。どれも文書の中身の問題ではなく、置き場所の問題として起きています。先に知っておけば、起草の段階で避けられるものばかりです。
- 別立ての利用ルールを配ったが、基本方針を1行も直していない。上から辿るとAIの決まりに入口が無い
- 既存の対策基準を改定したのに、別立ての文書側を直し忘れ、2つの文書で違うことを言っている
- 例外の申請先が2か所に分かれ、どちらの窓口も件数を数えていない
- 判断の基準を実施手順に書いてしまい、非公開の文書の中に判断が沈んだ
- 使ってよい道具の一覧を規程本体に書き込んだので、道具が1つ増えるたびに規程改定になる
- 監査の対象範囲の記載が「情報セキュリティポリシー及び関係規程等」のままで、別立ての文書が対象なのかどうかを誰も判定できない
この6つのうち5つは、別立て自体ではなく、別立てにしたあと上位と下位に手を入れなかったことから起きています。別に1本立てる選択が悪いのではありません。立てたなら、基本方針に1行、監査の対象範囲に1行、例外措置の条に1行。この3行を同時に入れておけば、上の6つのうち5つは消えます。
まとめ
情報セキュリティの決まりは、基本方針・対策基準・実施手順の3階層でできています。総務省のガイドラインは上の2つを合わせて「ポリシー」と呼び、実施手順はその外に置いています。そして階層ごとに公開の扱いが違い、基本方針は必要に応じて公開することが望ましい、対策基準は必要に応じて非公開にすることも考えられる、実施手順は非公開とする、と原文に書かれています。AIの決まりを1本の文書にまとめようとすると、この3種類の性質が同じ表紙の下に混ざります。
同じガイドラインの本体413ページに、生成AIも人工知能も機械学習も一度も出てきません。それでも使えるのは、外部サービスの章が既に、利用できる業務の範囲、提供者の選定基準、許可権限者と利用手続、利用状況の管理、そして利用を終えるときの情報とアカウントの廃棄までを定めているからです。AIの決まりとして書き出した項目を対策基準の9章に割り付けると、新しく書き起こす必要があるのは、割り付け先が無かった数項目だけになります。
作業の分担ははっきりしています。対応表の下書きと重複の洗い出しは機械に任せてよく、そのときは条番号と該当文言を必ず併記させ、根拠が空欄の行は人が切り分ける。どの階層に置くか、改定の決裁を通すか、例外を認めるかは、説明を求められる側が決める。手元の基本方針と対策基準の目次を並べ、配ってあるAIの決まりの各行が「〜してよい」で終わるか「〜する」で終わるかを分けてみてください。その仕分けが終わった時点で、新しい規程が要るかどうかの答えは出ています。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
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