社内報は作っても読まれない|届く企画と続く運用

「読まれないのは、中身が古いからだと思う」「デザインを新しくしたのに、開かれる数は変わらなかった」——社内報を担当している人の口から、こうした見立てが出ます。けれども公開されている調査を並べると、読む側が挙げる理由の順番は少し違っています。社内報が開かれないのは、記事の出来の問題ではありません。本当は、受け手を分けずに、全員へ同じ号を配っていることの結果です。この記事では、開かれなくなる構造の分け方から、企画の立て方、配る手段と出す時間の決め方、続く運用の作り方、そして生成AIを当ててよい範囲までを順に整理します。
カメ先生社内報が読まれないのは記事がつまらないからだと思われがちだけれど、実際に効いているのは、読む時間があるかと、自分に関係する話が入っているかの2つなんだ。
カメ子時間と関係、ですか。中身の良さは効かないということでしょうか。
カメ先生効くよ。ただ順番がある。関係があると思われた号にだけ、人は時間を割いてくれる。だから中身を練るより先に、誰に宛てた号かを決めるほうが早いんだ。
カメ子全員に同じ号を配ることが、かえって誰にも宛てられていない号を作ってしまうということですね。
- 開かれる割合は会社の規模で折れる。全社平均の閲覧率を追う前に、受け手を役割で分けて分母を切り直す
- 開かない理由は「読む時間がない」と「自分に関係する話がない」に分かれ、それぞれ別の打ち手を要求する
- 生成AIは企画の広げ方と原稿の下ごしらえまで。人事や処遇の断定、取材相手の発言の補完は人が持つ
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「中身が古いから読まれない」という見立てを、先に外す
社内報が開かれないとき、最初に疑われるのは中身です。企画が古い、写真が硬い、文章が長い。担当者の手元にある改善案も、たいていはこの3つのどこかに寄っています。ところが読む側に理由を聞いた調査を見ると、順番が違います。音声配信のプラットフォームを運営するボイシーが2023年9月20日から22日にかけて自社のリスナー1,987名へ行った調査では、社内報を「あまり開いていない」「全く開いていない」と答えた人が3割以上おり、その理由の上位に「社内報を開く時間がないから」が4割以上で並びました。
中身の改善が無駄という話ではありません。同じ調査では、社内報に求める改善点の1位が「業務連絡だけではない、親しみやすい内容になること」で、読んでいない人が開くきっかけの1位も同じ項目でした。つまり時間の問題と、内容の問題が同時に出ている。ここを一つの課題として扱うと、対策はどうしても見た目の刷新に寄ります。紙面を変えても、読む時間が業務のどこにも空いていなければ、開かれる数は動きません。
だから着手の順番はこうなります。まず開かない理由を「時間」と「関係のなさ」に分けて数える。そのうえで、時間の側は配る手段と出す時刻で、関係のなさの側は企画の宛先で解く。この2つを別の打ち手として持てるかどうかが、作り直しの成否を分けます。本記事はこの順で進めます。
開かれる割合は、会社の規模で折れている
開封の割合には、企画の巧拙より先に効く条件があります。会社の規模です。社内報の配信と分析を手がけるアウリーが、自社の保有データを一部サンプリングして公開している集計では、記事の閲覧率は従業員100人までの企業で約50パーセント、101人から300人の企業でも約50パーセント、301人以上になると約25パーセントでした。300人あたりを境に、読む人の割合がおよそ半分に落ちています。
同社はこの落ち込みを、組織が縦割りになって「自分1人の仕事の範囲が決まりがち」になること、そして「会社の活動を自分ごと化できなくなってくる」ことで説明しています。規模が大きくなるほど、全社に向けた一つの号が、誰の担当業務にも重ならなくなる。読まれない理由が、企画の外側にあるわけです。同じ号を配り続けている限り、規模が増えるほど閲覧率は下がる方向にしか動きません。
出す側の実感とも符合します。産業編集センターが2022年11月から2023年1月にかけて155社へ行った調査では、画面で読む社内報の閲覧率のボリュームゾーンは4割で、5割以上と答えた企業は約3分の1にとどまりました。同社はこれを「4割の壁」と呼んでいます。全社平均は、工夫を重ねても4割前後で頭を打つ数字だと見ておくほうが実務に合います。追うべきは全社平均ではなく、役割ごとに切り直した分母です。
開かない理由は「時間」と「関係のなさ」に分かれる
「読む時間がない」は、届き方と時刻の問題です。就業時間中に読んでよいと明示されていない。業務で使う画面から3回以上たどらないと本文に着かない。通知が会議の直前に鳴る。どれも中身とは無関係に開封を潰します。産業編集センターが閲覧環境として挙げているのも、個人端末を持っているか、業務でスマートフォンを使うかという条件でした。読む余地があるかどうかは、企画の前に決まっているのです。
「自分に関係する話がない」は、企画の宛先の問題です。全社向けに書かれた号は、読み手から見ると誰にも宛てられていない号になります。ボイシーの調査で改善点の1位が「業務連絡だけではない、親しみやすい内容になること」だったのは、業務連絡が不要という意味ではありません。業務連絡しか載っていないと、自分の仕事には効かないという読み方が自然です。連絡を減らすのではなく、連絡の周りに読み手が使える情報を足す、という方向になります。
この2つを混ぜたまま編集会議にかけると、議題は「もっと面白くしよう」に収束します。面白さは測れないので、次号も同じ議論が繰り返されます。時間の側は運用で、関係の側は企画で解く。切り分けを言葉にしておくだけで、会議で決まることが「配信時刻を朝に変える」「次号の宛先を製造の現場に絞る」といった具体に変わります。
出てくる人が毎回同じになるのは、取材の頼み方の結果
直近1年の号を並べると、登場する人が重なっていることに気づきます。役員、営業の成績上位者、広報に近い部署。これは人選の趣味ではなく、取材の頼み方の帰結です。締切が近く、断られない相手から埋めるしかない。すると取材の依頼が通りやすい人ほど、繰り返し登場する。経団連事業サービスの社内広報センターが「社内報なんでも相談室」で受ける相談の項目に「情報収集の方法」が並んでいるのは、この負荷が実務の中心にあることの裏返しでしょう。
読む側から見ると、この偏りは「自分の部署は出てこない媒体」という学習になります。一度そう見なされた媒体は、企画を差し替えても開かれ方がすぐには戻りません。登場の偏りは、企画の質ではなく媒体の性格として記憶されるためです。だから直す順番は、企画の中身より先に、誰が出るかの配り方になります。
実務としては、次号の企画を決める会議に過去12号の登場部署の一覧を持ち込みます。3回以上出ている部署は次号の候補から外す。年間の号数のうち何本を現場の持ち込みに割り当てるかを先に決めておく。取材の枠を、依頼のしやすさではなく登場の履歴で配るという運用に変えると、同じ締切のなかでも顔ぶれが動きます。
- 過去12号の登場部署・登場者の役職・話題の種類を一覧にしておく(次号の会議で毎回見る)
- 3回以上登場した部署は次号の候補から外す(外した理由も一覧に残す)
- 年間の号数のうち、現場からの持ち込みに割り当てる本数を先に決める
出す側の目的が「周知」で止まっている
発行の目的欄に「経営方針の周知」と書かれている社内報は少なくありません。けれども周知は出す側の到達目標で、読む側が得るものではありません。目的が周知のままだと、企画は「伝えるべきこと」の順に並び、読み終えた人の手元には何も残りません。目的の書き方が、企画の並び方を決めているのです。
書き換え方は一つあります。目的を読んだ人が翌週の仕事で何を1つ変えられるかに置く。他部署への依頼先が分かる、制度が変わった背景を自分の言葉で説明できる、隣の工程が今どこで詰まっているかを知っている。いずれも読後に判定できる形です。判定できる目的にすると、企画会議で「この号は誰の何を変えるのか」という問いが立ちます。
媒体としての位置づけも変わります。ソフィアが自社調査をもとに公開している記事では、現場が情報共有に抱く不満が「情報がそもそも共有されない」「情報共有のタイミングが遅い」「情報が見つからない」の3つに集まると整理されています。同記事はビジネスチャットの導入率を76パーセントとしており、速さと共有そのものはチャットでかなり埋まる領域です。そこで社内報は3つ目の「見つからない」を引き受ける媒体だと決めると、役割がはっきりします。周知の再送ではなく、探しても出てこない背景と経緯を残す場にするということです。
配る手段が「見に行く形」のままになっている
イントラネットに掲載して「更新しました」と一斉に知らせる形は、読者から見ると見に行く形です。業務の合間に、別のタブを開いて、一覧から目的の記事を探す。この動作が挟まるだけで、開封は目に見えて落ちます。産業編集センターが閲覧率に影響する条件として個人端末の保有と業務でのスマートフォン使用を挙げているのは、読者が本文に到達できる経路の数がそのまま閲覧率になるという話でもあります。
端末事情は会社ごとに違います。現場に共有の端末しかない、私物の端末に業務用のアプリを入れない方針、拠点によってネットワークの制限が異なる。こうした条件のもとでは、画面の社内報が構造的に届かない層が残ります。ボイシーの調査で社内報の形式を尋ねた結果は、インターネット上の社内サイトが65.7パーセント、紙が53.5パーセントでした。合計が100を超えるのは、多くの会社が併用していることを示しています。
したがって手段の議論は、紙か電子かではなく、届く形をいくつ用意できるかに置き換わります。本文をチャットに直接投稿する、要旨をメールの本文に載せる、端末を持たない現場には紙を配る。同じ号を3つの形で流すだけで、到達できる人の範囲は変わります。手段を1つに統一すること自体が目的になっていないかを、一度確かめる価値があります。
企画は、受け手を役割で分けて今週知りたいことから逆算する
ここからが対策の中心です。企画を立てるとき、受け手を「全社員」ではなく役割で分けます。営業、製造や物流の現場、間接部門、拠点の管理者、入って半年以内の人。この5つ程度に分けたうえで、それぞれが今週知りたいことを書き出す。知りたいことは、担当業務の隣で詰まっている場所に集まります。
書き出すと、役割ごとにかなり違うことが分かります。営業なら、他部署が今どんな案件を抱えているか、断られた理由がどこに共有されているか。製造の現場なら、仕様が変わった背景と、変更で落ちた選択肢。拠点の管理者なら、本社で決まったことがいつ自分の拠点に降りてくるか。入って半年以内の人なら、誰に何を聞いてよいか。同じ号でこれら全部を満たそうとすると、どれも浅くなります。
だから逆算はこうします。号ごとに主たる宛先を1つに決める。そのうえで、その役割が知りたいことを5つ書き出し、取材が間に合う3つに絞る。残りの役割には別の号で回します。年に12号あれば、5つの役割に2回ずつ以上は回せます。全社平均の閲覧率は上がらないかもしれませんが、宛先にした役割の中での閲覧率は追える数字になります。
載せるものの型を、5つ持っておく
宛先を決めても、載せるものの型がなければ毎号の企画は白紙からになります。型を先に5つ持っておくと、企画会議は「今回はどの型を何本入れるか」の相談になります。型ごとに取材の重さが違うので、重い型と軽い型を混ぜるのが実務の要点です。
| 型 | 載せる中身 | 主な宛先 | 取材の重さ |
|---|---|---|---|
| 他部署の仕事の中身 | 隣の部署が今どんな案件や工程を抱えているか | 営業・間接部門 | 中(担当者1人に30分) |
| 決まったことの背景 | 方針や制度が変わった理由と、検討で落ちた選択肢 | 全役割 | 重(決裁した側への確認が必要) |
| 新しく入った人 | 配属先と担当、何を聞いてよいか | 受け入れ側の現場 | 軽(本人に5問) |
| 数字の共有 | 受注や生産の数字と、それが動いた理由の説明 | 拠点の管理者 | 中(集計元との突き合わせ) |
| 現場からの持ち込み | 改善や工夫の記録、うまくいかなかったことの共有 | 同じ工程の担当者 | 軽(原稿は持ち込み側が書く) |
この表の使い方は2つあります。1つは年間の予定を組むとき。重い型は年に3本までと決めておけば、取材が破綻しません。取材の重さが違う型を混ぜて年間の予定を組むことで、担当者が1人でも回る形になります。もう1つは締切が迫ったとき。軽い型に差し替える判断が、休刊よりも先に取れる選択肢として残ります。
創業者の言葉と表彰だけで埋めると、翌月に何も残らない
埋めやすい企画は2つあります。トップからのメッセージと、表彰の報告です。どちらも取材の依頼が通りやすく、写真も揃い、締切に間に合います。だから毎号入ります。問題は、読み手が翌週の仕事に使える情報がそこにほとんど無いことです。読後に何も変えられない記事は、次号の開封率を下げる方向に働きます。
経団連事業サービスの社内広報センターは、1962年の発足以来、紙の雑誌・新聞の形、画面の形、映像の形という3つの部門に分けて社内報を審査し、会員向けの情報誌では社内報の講評や担当者への取材を毎月載せています。企画やレイアウト、文章の書き方、校正や校閲の勘所まで扱う体制が続いているのは、社内報が講評に耐える編集物として見られていることの表れでもあります。トップの言葉と表彰だけで埋まった号は、その水準に届きません。
埋めやすい企画から順に埋めると、読み手が使える話が最後まで入らない。これが起きる仕組みは単純で、締切が近い順に決まっていくからです。対策は、重い型を先に確定させ、軽い型で残りを埋める順番に変えることです。次に挙げるような組み方になっていたら、順番が逆になっている合図です。
- 毎号の1ページ目をトップのメッセージで固定し、残りを空いた企画で埋める
- 表彰の写真と受賞者名の一覧で2ページを使い、何をした取り組みかは書かない
- 周年の特集を1年前から仕込み、その間の号を告知だけで回す
- 社外向けの資料や広告の原稿をそのまま転載する
- 取材が取れなかった月に、過去の号の再掲だけで1号を組む
配る手段と、出す時間の決め方
手段は、届き方で並べると判断しやすくなります。届く形か、見に行く形か。そして、その形が誰に向くか。落ちやすいところはどこか。この3つを一覧にしておけば、拠点や職種が増えたときにも同じ基準で足せます。
| 配る手段 | 届き方 | 向く相手 | 落ちやすいところ |
|---|---|---|---|
| 紙の配布 | 手元に届く | 共有の端末しかない現場・家族にも見せたい層 | 刷り直しが効かない・過去分を探せない |
| 社内サイトへの掲載 | 見に行く形 | 自分の端末で業務をしている人 | 掲載しただけでは開かれない |
| チャットへの本文投稿 | 届く形 | 日々の連絡をチャットで受けている人 | 流れて消える・投稿の時刻に左右される |
| メールでの本文送付 | 届く形 | チャットを使わない部署・社外の拠点 | 件名で開封が決まる・長い本文は読まれない |
| 決まった場所への掲示 | 通りがかりに目に入る | 始業前に同じ場所へ集まる現場 | 更新が止まると誰も気づかない |
出す時間も決めておきます。読む余地が生まれるのは、業務の切れ目です。朝の始業直後は、その日の段取りに使われるので本文を読む時間にはなりにくい。始業から1時間ほど過ぎたころと、夕方の区切りが現実的な候補になります。定例会議の直前は避けるのが要点で、通知が鳴っても開かれず、そのまま流れて消えます。
時刻を決めたら、号ごとに変えないことも大事です。毎号ばらばらの時刻に届く媒体は、読む習慣になりません。同じ曜日、同じ時刻に届く形にしておくと、読み手の側に読む枠ができます。配信の時刻と曜日は、企画と同じくらい運用の設計項目だと考えておくとよいでしょう。
生成AIを当ててよいのは、企画の広げ方と原稿の下ごしらえ
社内報の実務で時間を食うのは、企画の発想と、取材した後の原稿の整えです。経団連事業サービスの社内広報センターが会員向けに開くセミナーの題目が「文章のつくり方」「校正・校閲」「リライト」「取材・インタビュー」「デザインのルール」であることは、負荷がどこに集まっているかをよく表しています。生成AIを当てるのは、まさにこの取材前と取材後の作業です。
具体的には4つです。1つ目は企画の広げ方。役割と時期を伝えて、その役割が知りたいであろうことの候補を20個出させ、人が5個に絞る。2つ目は取材メモから原稿の下書き。録音の文字起こしを渡し、質問と答えの対応を崩さないまま構成案を作らせる。3つ目は長い原稿の要約。見出しと3行の要旨を作らせ、チャットに投稿する短い版として使う。4つ目は拠点向けの言い換え。専門用語の言い換え候補と、敬体の統一を任せる。
いずれも共通しているのは、成果物が人の手で必ず直される前提に立っていることです。AIには判断を渡さず、下ごしらえだけを渡す。AIが出した企画案の採否は編集の担当者が決め、AIが作った要旨は取材相手に見せて確認を取る。社内広報センターが講評や相談を相談員という人に担わせているのと同じ構図で、評価と決定は人の側に残すのが安全な線です。
AIに渡してはいけない3つの領域
使いどころと同じだけ、渡してはいけない領域を先に決めておく必要があります。1つ目は、人事や処遇に関わる話を断定させることです。異動や評価、賃金の制度は、社内報の記述が説明の根拠として読まれます。AIが自然な日本語で埋めた一文が、実際の制度と1語違うだけで問い合わせが並びます。制度の記述は所管部署の原文をそのまま引くのが原則です。
2つ目は、取材相手の発言をAIに補わせることです。録音が途切れていた部分、言い切っていなかった部分を、文脈から自然な形に埋める処理は簡単にできてしまいます。しかしそれは相手が言っていないことを、相手の名前で載せる行為です。3つ目は、社外に出せない情報を外部の道具に貼ることです。未公表の数字、取引先の名前、個人が特定できる内容。社内報の原稿はこの3つを含みやすく、貼り付けの一手で持ち出しになります。
防ぎ方は運用側で決められます。AIに渡してよい情報の範囲を文章で決めておく。出力には必ず根拠となった発言や資料の箇所を書かせる。そして人が確認する範囲を、原稿を書く前に決めておく。確認の範囲を後から決めると、締切に押されて省かれます。次の3点を運用の条件にしておくと安全です。
- 人事・処遇・制度の記述は、所管部署の原文を引く(AIの言い換えを載せない)
- 取材相手の発言は、録音に無い語を足さない。要約は本人の確認を取ってから載せる
- 未公表の数字・取引先名・個人が特定できる内容は、外部の道具に貼らない
読まれているかは、開いた数だけでは測れない
測り方を開いた数だけに置くと、運用は見出しの工夫に寄ります。開封は増えても、読み終わった人が増えているとは限りません。アウリーが取得している指標が閲覧率だけでなく、「閲覧した従業員の中で、どのくらいの人が最後まで読んだか」を見る読了率と、リアクションの割合の3本立てになっているのは、開いた数と読まれた数は別の指標だという前提に立っているからです。
そのうえで、社内報という媒体に固有の指標を2つ足すことをおすすめします。1つは持ち込みの件数です。現場から「これを載せてほしい」と来る件数が、月あたり何件で、どの部署から来ているか。もう1つは次の号への反応です。取材の依頼を受けてもらえる割合、掲載後に担当者へ届く返信の数。持ち込みの件数と、次の号への反応で測ると、媒体が社内で機能しているかが見えます。
数字の見方にも注意が要ります。全社平均の閲覧率は、産業編集センターの調査が示すように4割前後で頭を打ちます。だから前号との差を追うより、宛先にした役割の中での閲覧率を見るほうが動きます。アウリーの集計が301人以上で約25パーセントに落ちることを踏まえれば、規模が大きい会社ほど、分母を切らずに平均を追うのは合わないと言えます。
続く運用は、担い手を人名で決めることから始まる
社内報が止まるときの理由は、たいてい企画ではなく担い手です。「広報部で担当」と部署名で決めた運用は、異動が1回起きると空きます。担い手は部署名ではなく人名で決める。編集の責任者、取材の窓口、公開の作業、過去分の整理。この4つを誰が持つかを名前で書き、引き継ぐときは名前を書き換える形にしておきます。
取材の負担も設計項目です。質問を5問に固定し、時間を30分に区切る。録音の文字起こしはAIに任せ、担当者は確認だけを行う。この形にしておくと、依頼を受ける側の心理的な壁が下がり、「30分なら」と受けてもらえる確率が上がります。取材の重さは、企画の幅をそのまま決めます。
そして出せない月の扱いを先に決めます。年に12号を義務にすると、取材が取れない月に再掲や告知だけの号が生まれ、開封率を落とします。隔月や季刊に落とす、あるいは休刊の月を年間の予定に組み込む。過去分の置き場も決めておきます。号数ではなく話題で引ける形にしておくと、新しく入った人が過去の経緯をたどれる資料になります。ソフィアが挙げる不満の3つ目、「情報が見つからない」を埋めるのはこの置き場です。
作り直す順番。全面刷新ではなく1号ぶんから
刷新の計画を立てると、企画も手段も測り方も同時に変えることになり、結果として何も変わらないまま次の期に持ち越されます。変えるのは1号ぶんです。宛先を1つに絞り、届く形を1つ足し、その号だけで結果を見る。次の6つの手順で回せます。
誰が出て、何を載せたかを一覧にします。3回以上出ている部署と、1度も出ていない部署がここで見えます。
営業、製造の現場、間接部門、拠点の管理者、入って半年以内の人。1度も宛先になっていない役割から選ぶと差が出やすくなります。
書き出しの候補を広げるところまではAIに任せてよく、絞る判断は編集の担当者が持ちます。
重い型を1本、軽い型を2本。全面刷新はしません。誌面の体裁や連載は、この段階では触らないほうが結果が読めます。
本文をチャットに直接投稿する、要旨をメールの本文に載せる、端末を持たない現場に紙を配る。既存の手段は残したまま足します。
宛先にした役割の中での閲覧率、持ち込みの件数、取材の受諾率。3つを並べて、次の号の宛先と型を決めます。
この回し方の利点は、失敗しても1号ぶんで済むことです。全面刷新は、うまくいかなかったときにどの変更が原因かを切り分けられません。1号ごとに変える箇所を1つか2つに限ると、何が効いたかが記録として残ります。半年で6号回せば、自社の読者に効く型が手元に溜まります。
実務仕様:社内報を作り直すときに決めておく項目
最後に、作り直しの前に文章で決めておく項目をまとめます。ここが曖昧なまま企画会議に入ると、議論は毎回「面白いかどうか」に戻ります。担い手が変わっても運用が残るように、次の項目は文書にして置き場を決めておきます。
- 受け手:役割で分けた宛先の一覧と、号ごとに主たる宛先を1つ選ぶという決め方
- 目的:読んだ人が翌週の仕事で何を1つ変えられるか(周知と書かない)
- 担い手:編集の責任者・取材の窓口・公開の作業・過去分の整理を人名で
- 頻度:年間の号数と、休刊にする月をあらかじめ組み込むか
- 配る手段:届く形と見に行く形をそれぞれ何で用意するか(端末事情の確認を含む)
- 出す時刻:曜日と時刻を固定する。定例会議の直前を避ける
- 取材の段取り:質問の数、所要時間、文字起こしの担い手、確認の取り方
- 持ち込みの窓口:宛先を1つに統一し、返答の期限を決める
- 過去分の置き場:号数ではなく話題で引ける形にする
- AIに渡す範囲と、人が確認する範囲(原稿を書く前に決める)
- 測る指標:宛先の役割の中での閲覧率・持ち込みの件数・次の号への反応
この一覧は、担当者が交代するときの引き継ぎ書としてもそのまま使えます。決まっていない項目が3つ以上あるなら、企画の議論より先にそこを埋めるほうが早いです。特に担い手と持ち込みの窓口は、空いているだけで運用が止まります。
ミニ用語解説
社内報の運用でよく出てくる言葉を、実務での意味に寄せて短く整理します。社内で会話するときに、指しているものがずれやすい言葉ばかりです。
- 閲覧率:従業員のうち、その記事を開いた人の割合。全社平均は4割前後で頭を打ちやすい
- 読了率:開いた人のうち、最後まで読んだ人の割合。閲覧率とは別の数字として見る
- リアクション率:開いた人のうち、反応(いいねやコメント)を返した人の割合
- 届く形と見に行く形:本文が手元に届く配り方と、読者が探しに行く配り方の区別
- インナーコミュニケーション:社内に向けた情報のやりとり全体。社内報はその一手段
- 休刊:号を出さない月をあらかじめ決めておくこと。再掲だけの号を作らないための逃げ道
まとめ
社内報が読まれないのは、記事の出来の問題ではありません。読む時間が業務のどこにも空いていないか、載っている話が自分の役割に重なっていないか、そのどちらかです。ボイシーの調査では「開く時間がない」が理由の上位に4割以上で並び、一方で求める改善点の1位は「業務連絡だけではない、親しみやすい内容になること」でした。この2つは別の打ち手を要求します。時間の側は配る手段と出す時刻で、関係のなさの側は企画の宛先で解く。混ぜたまま議論すると、対策は見た目の刷新に寄ります。
そして全社平均の閲覧率を目標にしないことです。アウリーの集計では301人以上の企業で約25パーセント、産業編集センターの調査では4割が壁と呼ばれる水準でした。全員に届く号を作るのではなく、号ごとに宛先を1つに絞り、その役割の中での閲覧率と、現場からの持ち込みの件数で測る。生成AIは企画案の広げ方、取材メモからの下書き、要約、拠点向けの言い換えまでを担い、人事や処遇の断定と、取材相手の発言の補完は人が持つ。始め方は全面刷新ではありません。宛先を1つに絞った号を、届く形で1回出す。その1号ぶんの結果を並べてから、次の号を決めれば十分です。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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