新規事業のフレームワークを使う順番|埋める前に決めること

「課題起点の9マスも、選ばれる理由の枠も、一通り埋めました。それで、次は何をすればいいのでしょうか」「枠を変えるたびに、前の枠に書いたことを別の言い方で書き写している気がします」——新規事業の担当になって半年ほどの方から、この2つはほぼ同じ時期に出てきます。埋めた枚数は増えているのに、決まったことは増えていない。枠が埋まらないのは、書き方が下手だからではありません。どの枠が、どの問いを受け持っているのかが決まっていないからです。この記事では、新規事業のフレームワークについて、埋める前に決めることと、使う順番を整理します。個々の枠の埋め方には踏み込みません。
カメ先生新規事業のフレームワークって、考えを整理するための道具だと思われがちなんだ。でも本当は、決まったことを固定して残しておく用紙のほうに近いんだよ。
カメ子整理をしてくれる道具ではないのですか。
カメ先生整理は人がやることなんだ。枠はその結果を置く場所でね。だから、まだ決まっていないことを枠に書き込むと、決まったことのように見えてしまう。ここが一番こわいところだね。
カメ子空いている枠と、埋めたけれど確かめていない枠は、意味が違うということですね。
- フレームワークは考える道具ではなく、決まったことを固定する用紙。枠の並びではなく、答える問いの並びで順番を決める
- 埋まらない枠は力不足の印ではなく「まだ確かめていない」という事実の表示。確かめた・推測した・未着手の3つを列として持つ
- AIに任せるのは候補出し・枠どうしの食い違いの指摘・抜けている前提の洗い出しまで。どれを進めるかの採否は人が決める
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枠は埋まったのに、事業が進まない
新規事業の相談でよく持ち込まれるのは、9つの枠がすべて埋まった1枚の資料です。空欄はありません。それなのに、次に何を確かめるのかが書かれていない。読み進めても、どこまでが確かめた事実で、どこからが担当者の見立てなのかが判別できません。埋まった資料は決まったことの記録に見えますが、実際には今わかっている範囲での推測が、事実と同じ書体で並んでいる状態です。
数字の上でも、企画の段階だけを磨いても届かないことが示されています。大手コンサルティング会社が2025年に売上高10億円から1兆円以上の企業およそ1,000社を対象に行った調査では、投資回収の段階まで到達した案件を1件でも持つ企業は約21パーセントにとどまり、主力事業と呼べる規模まで至った企業は10パーセント未満でした。別の大手コンサルティング会社が2018年に年商200億円以上の大企業780社を対象に行った調査では、事業の立ち上げに至る確率が45パーセント、単年黒字化が17パーセント、累積損失の解消が7パーセントと段階ごとに落ちています。
落ちている場所は、企画書を書く前ではありません。立ち上げた後です。それでも社内の関門では資料の完成度が見られるため、空欄は減点として扱われます。すると担当者は、確かめていないことも埋めるようになります。空欄を無くす力が働くほど、確かめていない前提が資料の中に隠れていきます。枠の使い方の問題ではなく、枠に何を書いてよいかの取り決めが無いことの問題です。
フレームワークは考える道具ではなく、決めたことを固定する用紙
枠は問いの一覧です。誰に、どんな価値を、どうやって届け、どこから収入を得るのか。この問いを漏らさず並べてくれるところまでが枠の仕事で、答えを作る機能はありません。答えは、公開情報を読む、実際に会って聞く、試しに売ってみる、という枠の外の作業からしか出てきません。ここを取り違えると、机の上で枠を眺める時間が検討そのものだと思えてきます。
では枠に何の価値があるのかというと、複数の案を同じ形式で並べられることです。案ごとに書き方が違うと、良し悪しの比較が「誰が熱心に説明したか」で決まってしまいます。同じ枠に入れて初めて、案どうしを同じ物差しで比べられます。枠の本当の効き目は、1案を深く掘ることではなく、複数案を横に並べられることのほうにあります。
この点は先ほどの2025年の調査とも重なります。成功していると分類された企業は、4件以上の案件に並行して投資している傾向があると報告されています。1案だけを磨き続ける進め方は、枠の利点をほとんど使えていないうえに、比べる相手が無いため撤退の判断も出せません。案の数を増やすことと、枠を統一することは、実務では同じ話です。
埋める前に決める3つのこと
枠に入る前に決めておく項目が3つあります。1つ目は、この検討で新規と呼ぶ範囲です。既存の顧客に新しい商品を出すのか、既存の商品を新しい顧客層に持っていくのか、どちらも新しいのか。会議の中で、ある人は商品の新しさを、別の人は顧客の新しさを新規と呼んでいることが実際によくあります。言葉が揃っていない状態で枠を配ると、埋まった枠を読んでも議論が噛み合いません。
2つ目は、進めるかやめるかを言える人を決めることです。これが決まっていないと、枠は説明用の資料に変わります。説明用の資料は、空欄が消える方向にしか動きません。相手を説得する目的で書かれた枠は、確かめた事実と見立ての境目が意図的にぼかされていきます。3つ目は、次の関門の日付です。日付が無い検討は、埋める作業がいつまでも終わりません。
日付を先に置くと、埋められない枠の扱いが変わります。空欄のままにしておく代わりに、その日までに誰が何を確かめるか、という宿題の形で枠に書けるようになるからです。この3つは枠の外側の取り決めですが、ここを飛ばして枠から始めた検討は、ほぼ確実に途中で説得の作業に変質します。
順番は枠ではなく、答える問いで決まる
順番を枠の名前で考えると、いま社内で流行っている枠から手を付けることになります。そうではなく、答えるべき問いの側から並べます。問いは大きく4つです。どこで戦うか。その市場に儲けの構造があるか。誰のどの困りごとか。選ばれる理由と稼ぎ方は何か。この順に並べると、前の問いに答えが出ていないと次に進めない依存関係が見えてきます。
| 答える問い | 受け持つ枠の例 | 次に進んでよい条件 | 飛ばすと何が起きるか |
|---|---|---|---|
| どこで戦うか | 成長の方向を4つに分ける行列、自社の資源が強みとして続くかを見る枠 | 検討する領域が1つか2つに絞れている | 候補が20件のまま議論が続き、比べる基準が会議のたびに変わる |
| その市場に儲けの構造があるか | 業界の5つの力で構造を見る枠、複数の前提を並べて持つ枠 | 誰のところに利益が残る構造なのかを1行で言える | 参入した後に、値段が下がり続ける市場だったと分かる |
| 誰のどの困りごとか | 課題から書き始める9マスの枠、選ばれる理由を言語化する枠 | 実在する人に会って、困りごとの言葉が取れている | 以降の枠がすべて作り直しになる |
| 選ばれる理由と稼ぎ方 | 事業の全体像を9ブロックで置く枠、収入と費用の見立て | 誰から、いくら、どの頻度で入るのかが書ける | 数字が先に決まり、それに合う顧客を後から探すことになる |
表のいちばん右の列が、実務では最も役に立ちます。飛ばした先に何が起きるかを先に読んでおくと、順番を守る理由が納得できるからです。とくに3番目を飛ばす失敗が多く、しかもこれが最も高くつきます。困りごとの言葉が取れていないまま先に進むと、後ろの3つの枠に書いたことがすべて前提から崩れます。
順番は上から下への一方通行ではありません。3番目で取れた言葉が、1番目の領域選びを変えることは普通に起きます。ただし戻るときには、どの問いまで戻ったのかを口に出して記録します。どの問いに戻ったかを書かずに戻ると、同じ議論を3か月後にもう一度やることになります。戻ること自体は失敗ではなく、戻った記録が無いことが失敗です。
使う順番の6工程。枠に入るのは3工程目から
新規と呼ぶ範囲、進めるかやめるかを言える人、次の関門の日付。この3つを枠に入る前に固める。ここを飛ばすと以降の作業がすべて説得に変わる
成長の方向と、自社が持っている資源の両側から見て、検討する領域を1つか2つに絞る。この時点では細かい商品像は要らない
その領域で誰のところに利益が残っているかを1行で書く。同時に、規制・原価・技術について良い側と悪い側の2本の前提を持つ
実在する人に会って言葉を取る。6工程で唯一、机の上で終えられない工程。ここだけは日程が相手の都合で決まる
事業の全体像の枠に移し、誰から、いくら、どの頻度で収入が入るかを書く。数字を置くのはここが最初
残っている推測を、確かめる順に並べる。あわせて、どうなったらやめるのかを文章で書き、決める人の名前を添える
段取りの要点は、工程4だけ時間の性質が違うことです。他の工程は数日で回せますが、会う約束は相手の都合で決まります。だから工程4の日程を先に押さえ、返事を待つ間に工程2と3を回すのが実務では速く終わります。順番どおりに1つずつ終わらせようとすると、会う約束の待ち時間だけで1か月が消えます。
工程6を最後に置くのは、やめる条件がその前の5工程の内容に依存するからです。まだ何を確かめるかも決まっていない段階で一律の金額基準を置くと、条件そのものが形だけのものになります。やめる条件は、確かめる項目が並んだ後でしか具体的に書けません。順番を守る理由が、最後の工程にも効いてきます。
問い1:どこで戦うか。資源から入るか、市場から入るか
領域の絞り込みには2つの入り方があります。すでに持っている資源から入る方法と、市場の変化から入る方法です。顧客名簿、販路、製造の設備、蓄積してきたデータ。大きな会社では前者のほうが現実的です。理由は単純で、資源を使わない案は社内の関門を通りにくいからです。失敗の原因を整理した調査でも、他社のやり方を無批判に持ち込み、自社の資源を使わない案になってしまう型が挙げられています。
成長の方向を4つに分ける行列を、この段階で使う目的は分類そのものではありません。会議の参加者の間で、新規という言葉の指す先を揃えるために使います。既存の市場に既存の商品、既存の市場に新しい商品、新しい市場に既存の商品、新しい市場に新しい商品。どの升目の話をしているかが揃っていないと、案の良し悪しを議論しても結論が出ません。
自社の資源が強みとして続くかを見る枠は、ここで「真似されるまでにどれだけ時間が稼げるか」を見るために使います。埋め方の詳細はこの記事では扱いません。この工程の出口は、検討する領域が1つか2つに絞れていることです。3つ以上残っているなら、まだ絞り込みが終わっていません。候補を残したまま次に進むと、以降の工程が候補の数だけ膨らみます。
問い2:その市場に儲けの構造があるか
市場が大きいことと、その市場で儲かることは別の話です。業界の5つの力で構造を見る枠が答えるのは、需要の大きさではなく、利益が最終的に誰のところに残るのかという問いです。買い手が集中している、供給する側が限られている、代替する手段が簡単に見つかる。こうした条件が揃っている市場では、需要が伸びていても値段が下がり続けます。
この段階でもう1つ同時に持っておくのが、前提の幅です。1本の予測に賭けないために、規制、原価、技術の3つについて、良い側と悪い側の2本を書きます。2本の差が事業の成否を分けるほど大きいなら、その前提こそが最初に確かめるべき項目です。前提の幅を持たずに1本の数字で進めると、外れたときに何が原因だったのかを後から特定できません。
この工程でよく詰まるのは、構造の分析が業界レポートの要約になってしまう形です。要約は市場の説明であって、自社が利益を取れるかどうかの答えではありません。判定は簡単で、この市場では、どこが利益を取っているのかを1行で言えるかどうかを見ます。言えないなら、まだ読んだ情報を並べただけの状態です。次の工程に進む条件を満たしていません。
問い3:誰のどの困りごとか。飛ばした代償が最も大きい工程
4つの問いのうち、最も飛ばされやすく、飛ばした代償が最も大きいのがここです。失敗の原因を整理した調査でも、顧客が不在のまま事業構想が組み立てられること、そして課題の解像度が低くセグメントの設定が広すぎることが、主要な型として挙げられています。枠には「中小企業の生産性向上」と書けてしまいます。書けてしまうことが問題で、そこには誰のどの場面かが入っていません。
課題から書き始める9マスの枠が、事業の全体像を置く枠と決定的に違うのは、ブロックの数ではなく書き出す順番です。前者は課題から、後者は顧客から書き始める設計になっています。同じ内容を書き写しているように見えても、書き始める場所が違うだけで出てくる答えが変わります。枠を乗り換えるときに最も効くのは、ブロックの数ではなく記入の起点です。
この工程の出口は、実在する人の言葉が引用できることです。社内の想像で書いた困りごとと、実際に聞き取った言葉は、読めば区別がつきます。前者は整った言い回しになり、後者は言い淀みや条件が混ざります。数字ではなく、言葉が取れているかで先に進むかどうかを決めます。取れていないなら、枠を磨く時間を会う約束の調整に振り替えます。
問い4:選ばれる理由と稼ぎ方。数字を置くのはここが最初
ここで初めて、事業の全体像を9ブロックで置く枠に移ります。課題から書き始める枠と共通しているのは5つです。価値の提案、顧客の区分、届け方、収入の流れ、費用の構造。全体像の枠だけにあるのは、組む相手、主要な活動、主要な資源、顧客との関係の4つ。逆に課題起点の枠だけにあるのは、課題、解決策、見る指標、圧倒的な優位性の4つです。
この差が、使い分けの根拠そのものになっています。課題起点の枠は確かめるための枠で、全体像の枠は回すための枠です。だから、社内の関門に出す資料は全体像の枠、チームの議論は課題起点の枠、という使い分けが成り立ちます。2枚を同時に完成させようとすると、どちらも中途半端なまま残ります。目的が違う用紙だからです。
数字を最後に置く理由も、ここで説明がつきます。先に売上目標が置かれると、その数字に届く顧客数を逆算する作業が始まります。逆算そのものは悪くありませんが、確かめていない前提が数式の途中に紛れ込みます。単価、継続する率、月あたりの件数。どれも確かめていない段階では推測です。推測どうしを掛け合わせた数字は、精密に見えるほど根拠が薄くなります。
埋まらない枠が示す意味。空欄は3種類ある
空欄には3つの種類があります。1つ目は、まだ確かめていないもの。2つ目は、確かめに行ったが答えが出なかったもの。3つ目は、その事業には要らない項目です。3つは意味がまったく違うのに、資料の上ではどれも同じ白い空白として並びます。読む側は区別できないので、結局すべてを「担当者の詰めが甘い」と読みます。
だから空欄は埋めるのではなく、印を付けます。確かめた欄には、誰にいつ聞いたか、どの公開情報で確認したかを添えます。推測した欄には、根拠と、外れたときの影響の大きさを添えます。未着手の欄には、いつまでに誰が確かめるかを添えます。印は資料の色ではなく、表の列として持ちます。色は印刷や転記の途中で消えるからです。
- 確かめたと書いてよい条件を先に決める。社内の誰かが言っていた、は推測の側に入れる
- 推測の欄には、外れたときに事業そのものが成り立たなくなるかどうかを必ず記す
- 未着手の欄には期限と担当を入れる。どちらも入らない項目は、いまの段階では要らない項目
- 3つの印は表の列として持つ。資料の色分けで持つと、転記した瞬間に情報が消える
- 関門に出すときは、印を付けたまま出す。消して出すと次の関門で同じ議論が起きる
印を付けたまま出すことには、審査する側の時間の使い方を変える効果があります。どこが弱いかを探す作業から解放され、その推測を確かめる価値があるかどうかの議論に移れるからです。関門の時間が、粗探しから資源配分の判断に変わります。空欄を消して出す習慣は、結果として関門を1回増やしています。
途中で枠を乗り換える判断。3つの合図
いま使っている枠から次の枠へ移る合図が3つあります。1つ目は、同じ枠を2回埋めても中身が変わらないこと。2つ目は、議論が枠の外の話に流れ続けること。誰が担当するのか、いつ発表するのか、といった話です。3つ目は、空欄が数字側の欄に集中していることです。
1つ目の意味は明快です。その枠が受け持つ問いには、もう答えが出ています。これは次の問いに進む合図であって、書き直す合図ではありません。同じ枠を磨き続けると、表現の精度は上がりますが、確かめていない前提はそのまま残ります。手応えがあるので、この状態は数か月続くことがあります。埋め直した回数を記録しておくと気づきやすくなります。
3つ目は逆向きの合図です。数字側の欄が埋まらないのは、数字を考える力が足りないからではなく、1つ前の問いの答えが足りていない印です。誰のどの困りごとかが定まっていないと、単価も頻度も置けません。数字の空欄は、埋めに行くのではなく1つ前の問いに戻る合図として読みます。ここで無理に数字を置くと、後戻りできない前提が資料に固定されます。
順番の終点は事業計画ではなく、やめる条件
枠を使う順番の終点は、立派な事業計画ではありません。どうなったらやめるのかという条件です。先ほどの2018年の調査では、大企業が取り組んだ新規事業のうち累積損失の解消に至ったのは7パーセントでした。別の解説記事では、調査元を明示しない数字として、撤退の基準があると回答した企業が14.6パーセント、設けていない企業が63パーセントと紹介され、基準が無い企業の51パーセントが、基準が無くて困った場面を経験したとされています。
比率そのものより、7パーセントという結果と、基準を持つ企業が2割に満たないという事実が同じ調査の中に並んでいることが重要です。やめる条件が無いと、判断は先送りされ、投じた費用が増えるほどやめにくくなります。撤退の議論が出るころには、その事業は担当者の職務経歴そのものになっていて、やめる提案が人格の否定として受け取られます。
これを避ける実務の型が、判断を4択で持つことです。進める、やめる、いったん止めて待つ、作り直して再判断する。2択にすると中間の選択肢が消え、結果として誰も口を開かなくなります。加えて、条件は段階ごとに変えます。立ち上げる前は確かめる項目が終わったかどうか、立ち上げた後は使い続けられているかどうか、その先で初めて金額です。最初から金額を条件に置くと、確かめる作業が金額づくりの作業に変わります。
AIの使いどころ。候補出し、食い違いの指摘、抜けている前提
生成AIをこの流れのどこで使うかは、3つに限定するのが現実的です。大量に出すことと、書かれたものどうしを突き合わせることが得意で、確かめることが不得意だからです。新規事業の支援を行う会社の解説でも、現時点の生成AIは仮説検証があまり得意ではなく、参考程度にとどめるのが無難だと述べられています。得意と不得意の線を、使う前に引いておきます。
- 候補を数多く出す:良い案に届くには最低100件ほどの案を出す必要がある、という目安が支援の現場では語られます。100件を人だけで出すと、質が上がる前に疲労が来ます。AIには条件を固定して出させます。たとえば、同じ資源を使いながら届ける相手だけを変えた案を30件、という形です。条件を固定しないと、似た案が言い換えで並ぶだけになります
- 枠どうしの食い違いを指摘させる:2枚の枠を渡し、片方でしか成り立たない記述を挙げさせます。自分が書いた文の矛盾は、人には読み飛ばせてしまいます。ここはAIのほうが確実に速く、しかも指摘の根拠が両方の枠の中にあるため、確かめ直すのも簡単です
- 抜けている前提を挙げさせる:似た事業の公開情報を渡し、自社の枠に書かれていない前提を列挙させます。許認可、初期の在庫、決済の手段、返品の扱い。出てきたものは採用の可否を判断せず、そのまま未着手の欄に入れます
3つに共通する使い方の条件が1つあります。出力をそのまま確かめた欄に貼らないことです。候補も、指摘も、抜けの一覧も、すべて確かめる候補の一覧であって、確かめた結果ではありません。運用としては単純で、AIの出力は必ず未着手か推測のどちらかの欄に入る、と決めておきます。この一行の取り決めがあるだけで、資料の信頼度が保てます。
100件という目安も、条件によって変わる数字なので自社の基準にはしません。むしろ実務で効くのは、出す前に落とす条件を書いておくことです。自社の資源をまったく使わない案は落とす、既存事業と客先が競合する案は落とす、といった条件です。落とす条件を先に書かないと、案の数を増やした分だけ選ぶ作業が重くなります。
AIに渡してはいけない判断と、社内で決めておく線引き
渡してはいけないのは、どの案を進めるかという採否の判断です。理由は2つあります。1つは、AIが社内の資源と制約を知らないこと。誰が動けるのか、どの取引先に配慮が要るのか、どの設備に空きがあるのか。これらは公開情報に出ていません。もう1つは、出力の根拠が事後に再現できないことです。決裁の記録として残せない判断は、後から説明を求められたときに答えられません。
線引きは3つの面で決めておきます。入力してよい情報の範囲、出力を貼ってよい欄、人が必ず読む範囲です。未公表の原価、取引先の名前、人事に関する情報は入力しない。出力は未着手か推測の欄にだけ貼る。顧客の言葉として引用する部分は、全文を人が読む。この3つを先に決めておかないと、決裁の直前になって使ってよかったのかという議論が始まり、そこで日程が止まります。
あわせて、根拠を書かせる運用を入れます。案の横に、どの公開情報から考えたのかを1行で書かせ、たどれないものは推測として扱います。根拠がたどれない出力は、内容が正しそうに見えても推測の欄から動かしません。人が確認する範囲を先に決めておくと、確認しきれない量が出てきたときにも、どこまで見たのかを説明できます。
実務仕様と、よくある失敗の型
埋めた枠をどう回し続けるかと、途中で崩れる型を並べます。フレームワークは書き上げた時点が頂点になりやすく、そこで止まるのは見直す時期を決めていないからです。
- 枠は1つの事業につき2枚まで。確かめるための枠と、回すための枠の2枚。3枚目からは転記の作業になる
- 関門の日付を先にこよみに入れる。日付が無い検討は、埋める作業がいつまでも終わらない
- 確かめた・推測した・未着手の印は表の列で持つ。資料の色分けで持つと転記で消える
- 案は3件以上を同じ形式で並べる。1件だけだと比べる相手が無く、良し悪しが説明の熱量で決まる
- 会いに行く相手の名前を、枠を作る前に3人書く。書けないなら領域の絞り込みに戻る
- 戻ったときは、どの問いまで戻ったのかを1行で残す。残さないと同じ議論を数か月後にやり直す
- 空欄を無くしてから関門に出す——推測が確かめた事実として通り、次の関門で戻される
- 流行の枠から埋め始める——答えるべき問いが決まっていないため、埋めるほど論点がずれる
- 1つの案だけを深く磨く——比べる相手が無いため、良し悪しが担当者の熱意で決まってしまう
- 売上目標を先に置く——目標に届く顧客数を逆算する過程で、確かめていない前提が数式に隠れる
- 顧客の困りごとを社内の想像で埋める——以降の枠がすべて作り直しになり、日程が3か月単位で遅れる
- やめる条件を立ち上げた後に決める——決める人がすでに当事者になっており、やめる判断が出ない
6つを並べると共通点が見えます。どれも、資料の見栄えが良くなる方向に力が働いた結果として起きています。空欄が減る、案が磨かれる、数字が揃う。どれも関門では歓迎されますが、確かめた量とは連動していません。印を付けたまま出す運用は、この連動していない2つを、資料の上で分けて見せるための仕組みです。
よくある質問
フレームワークは何枚くらい使えばよいですか
1つの事業につき2枚に絞るのが現実的です。4つの問いに答える過程では4種類前後の枠に触れますが、最後まで持ち歩くのは、確かめるための枠と、回すための枠の2枚だけで足ります。枚数を増やすと、内容を考える時間より、枠から枠へ書き写す時間のほうが長くなります。書き写しは進んでいる感覚が強いので、増えていることに気づきにくい作業です。
枠を全部埋められないまま関門に出してよいですか
出してよい、というより出すべきです。ただし、確かめた・推測した・未着手の印を付けたまま出します。空欄と推測を消して出すと、判断する側は完成した計画として読み、根拠を聞かれた時点で議論が止まります。関門で見てほしいのは資料の完成度ではなく、次に何を、いくらかけて、いつまでに確かめるのかという中身です。
既存事業と兼務で進める場合、順番は変わりますか
順番は変わりません。変わるのは工程4に割ける時間です。会いに行く工程だけは相手の都合で日程が決まるため、兼務ではここが真っ先に削られます。ところが、ここを削ると後ろの枠がすべて作り直しになるので、最も高くつく削り方になります。削るなら工程2の候補の数を減らします。領域を1つに絞れば、会う相手の探索範囲も狭くなります。
AIに枠を丸ごと埋めさせてもよいですか
下書きとしては構いません。ただし、出来上がった記述はすべて推測の欄に入ります。確かめた欄に移すには、人が公開情報で裏を取るか、実際に聞き取るかのどちらかが要ります。丸ごと埋めた枠をそのまま関門に出すと、1つ根拠を聞かれた時点で全体の信頼が落ちます。埋まっているのに答えられない状態は、空欄が残っている状態より不利に働きます。
まとめ
新規事業のフレームワークは、考えを整理してくれる道具ではなく、決まったことを固定して残す用紙です。だから順番も、枠の名前ではなく、答えるべき問いの側で決まります。どこで戦うか、その市場に儲けの構造があるか、誰のどの困りごとか、選ばれる理由と稼ぎ方は何か。この4つの順に並べると、前の問いに答えが出ていないと次に進めない依存関係が見えてきます。枠に入るのは、範囲と決める人と日付を決めた後、3工程目からで足ります。
埋まらない枠は、書き手の力不足の印ではありません。まだ確かめていない、という事実の表示です。確かめた、推測した、未着手の3つを表の列として持ち、印を付けたまま関門に出します。空欄を消してから出す習慣は、推測を事実に見せかけ、結局は関門を1回増やします。そして順番の終点は事業計画ではなく、やめる条件です。累積損失の解消に至るのが7パーセント、撤退の基準を持つ企業が14.6パーセント。出どころの異なる二つの数字ですが、並べて見ると示唆は一つです。
AIには、候補を数多く出すこと、枠どうしの食い違いを指摘させること、似た事業の公開情報から抜けている前提を挙げさせることまでを任せます。この3つの出力は、確かめる候補の一覧であって確かめた結果ではないので、必ず未着手か推測の欄に入ります。どの案を進めるかという採否の判断と、なぜその順番にしたのかを1行で残す仕事は、人が持ち続けます。判断の記録が残らないやり方は、うまくいった理由も、やめるべき理由も説明できなくなるからです。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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