ABC分析で重点を決める4工程|上位2割に力を寄せる

「重点商材に力を寄せろと言われたのですが、どこで線を引けばいいのか決められません」「ABC分析はやりました。表までは出来たのですが、そこから何をするかで止まっています」——重点を決めるという話になると、この2つはほとんど同時に届きます。2つ目の声のほうが、この手法の性格をよく表しています。ABC分析は、売上の大きい順に並べて色を塗る作業ではありません。本当は、限られた人手と予算をどこに寄せるかを、数字の並びから決めるための手順です。この記事では、4つの工程で区分を作る進め方と、切る位置の決め方、商品以外に当てられる対象、そして上位に寄せてはいけない場面までを整理します。
カメ先生上位2割に力を寄せろ、という言い方はよく聞くよね。あれは結論ではなく、確かめるための出発点なんだ。並べてみたら2割ではなく4割だった、という結果のほうが実は珍しくない。
カメ子8割と2割という数字は、目安でしかないということですか。
カメ先生目安として置いておく程度でいい。数字そのものより、大きい順に並べて累計を追うという手続きのほうが本体だね。並べた結果どうなるかは、扱う商材によって変わる。
カメ子並べてから初めて、どこで切るかを考える順番なのですね。
- 大きい順に並べて累計の割合を追う手続きが本体。8割と2割という比率は結果であって前提ではない
- 切る位置に唯一の正解はない。70と90はよく使われる目安にすぎず、決めるのは人
- 商品以外にも当てられる。流入経路、検索語、顧客、問い合わせの種別。当てる対象を変えると打ち手が変わる
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「重点を決めろ」で止まるのは、決め方の順番が無いから
重点を決める作業が止まるとき、多くの人は情報が足りないせいだと考えます。もっと細かい数字があれば線が引ける、来期の見通しが出れば判断できる。ところが実際に数字を増やしても、線が引ける日はやってきません。止まっている理由は情報量ではなく、何を測り、どこで区切り、区切った後に何を変えるのかという順番が決まっていないことにあります。順番が無いまま数字を眺めても、どの数字を見た瞬間に決断すべきかが分からないからです。
この状態で起きがちなのが、会議のたびに違う切り口の資料が出てくる現象です。前回は売上の大きい順、今回は利益率の高い順、次は伸び率の高い順。どれも間違ってはいませんが、切り口が毎回変わると、前回の判断との比較ができません。比較できないので決着がつかず、また別の切り口が用意されます。切り口を固定することは、分析の精度を上げるためではなく、判断を前に進めるために必要です。
ABC分析の価値は、その順番を4つの工程に固定してくれるところにあります。指標と期間を決める、大きい順に並べて累計を出す、切る位置を決める、区分ごとに手を変える。この4つを一度通せば、次からは同じ形で更新するだけで済みます。重点を決める作業を、毎回ゼロから議論する仕事から、更新する仕事へ変える。これが手法を使う本当の理由です。
ABC分析とは、大きい順に並べて累計の割合で3つに切る方法
ABC分析は、売上高やコストや在庫といった指標を大きい順に並べ替え、上から順に足し上げた累計の割合を見て、3つの区分に切り分ける方法です。別名を重点分析といい、名前のとおり、限られた資源を重点的に配る先を決めるために使われます。区分は上からA、B、Cと呼ばれ、Aが最も重い扱いを受ける区分になります。
計算そのものは単純です。まず対象ごとの数値を出し、次に全体に占める構成比を出し、それを大きい順に上から足し上げて累計構成比を作ります。累計構成比は、一般的な解説では累積額を総額で割って100を掛ける形で計算すると説明されています。あとは、この累計がどこまで来たところで区切るかを決めるだけです。難しいのは計算ではなく、区切る位置と、区切った後の扱いを変える部分にあります。
結果を図にするときは、大きい順に並べた棒グラフの上に、累計構成比の折れ線を重ねた図を使います。この図では、折れ線の立ち上がりが急なら少数に偏っている、なだらかなら広く分散していることが一目で分かります。偏っているかどうか自体が、この手法から得られる最初の情報です。偏っていない商材に無理やり重点を作ろうとしても、うまくいきません。
下敷きにあるパレートの法則は、法則というより経験則
ABC分析の背景にあるのがパレートの法則です。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが所得の統計を分析し、所得の分布が安定していて時代によって変化しないという結論を出したことに由来します。ここから、少数の要因によって全体の大勢が左右されるという見方が広まり、売上の8割は2割の商品が生む、といった形で語られるようになりました。80対20の法則、ばらつきの法則といった別の呼び方もあります。
ただし、ここを法則として受け取ると使い方を誤ります。百科事典の記述でも、こうした事例の多くは法則と言うよりも経験則の類であると明記されています。つまり、8割と2割という比率はどの商材にも当てはまる定数ではありません。並べてみたら上位3割で8割に届くこともあれば、上位1割で9割を占めることもある。比率は調べた結果として出てくるものであって、調べる前の前提にはできません。
もう1つ知っておくとよいのが、上位を取り除いても同じ形が現れるという性質です。上位2割を別扱いにすると、残った8割の中の2割がまた大きな部分を占めるようになります。これは、A区分の中をさらに切って上位だけを特別扱いする運用に根拠を与えます。逆に、この性質があるということは、C区分の中にも相対的な上位が存在するということでもあります。C区分を一律に扱うのが乱暴だという話は、後の節で詳しく扱います。
作業は4工程。順番を入れ替えると結論が変わる
実務で回すなら、次の4工程に落とすのが扱いやすい形です。解説によっては5段階や7段階に分けているものもありますが、判断が発生する場所は4か所しかありません。数える工程、並べる工程、切る工程、扱いを変える工程です。工程の数を増やすより、それぞれの工程で誰が何を決めるのかを決めておくほうが、運用は続きます。
売上か、粗利か、件数か。期間は直近12か月か、四半期か。ここを決めないまま並べると、後から指標を変えたくなって作業がやり直しになる
対象ごとの構成比を出し、上から順に足し上げる。ここは機械的な作業なので表計算に任せてよい。並べ替えの基準は工程1で決めた指標に固定する
累計がどこまで来たところでAとBを分け、BとCを分けるかを決める。数値の目安はあるが正解はない。決めた理由を1行残す
区分を作っただけでは何も変わらない。人が個別に見る区分、まとめて見る区分、仕組みに任せる区分と、扱いを実際に変えて初めて分析が仕事になる
この順番は入れ替えられません。並べてから指標を選び直すと、都合のよい順位になる指標を後から選ぶことになります。切る位置を先に決めてから並べると、その位置に収まるように対象の粒度をいじりたくなります。特に飛ばされやすいのが工程4で、ここを飛ばした分析は、表が残るだけで運用に何の変化も起こしません。
工程1:何を、どの期間で測るかを先に決める
最初に決めるのは指標です。一般的な解説では、売上高、販売個数、売上利益が例として挙げられています。どれを選ぶかで結果は大きく変わります。売上で並べると単価の高い商材が上に来ますが、粗利で並べると原価の重い商材が沈み、順位が入れ替わります。件数で並べると、単価は低いが数が出る商材が上がってきます。指標の選択は、この分析で何を守りたいのかの表明です。
BtoBの商材では、売上ではなく粗利で並べるほうが判断に噛むことが多くなります。導入支援や個別対応の工数が商材ごとに大きく違うため、売上が大きくても手元に残る額は小さい、という逆転が起きるからです。工数を含めた粗利で並べ直すと、A区分の顔ぶれが半分入れ替わることがあります。この入れ替わり自体が、社内で共有すべき情報になります。
期間の決め方も結果を左右します。期間を限定しないと、数年前の大口取引がそのまま上位に残り、すでに離れてしまった相手を重点扱いし続けることになります。逆に期間を短く取りすぎると、季節性のある商材が実力以上に上下します。実務では直近12か月を基本にして、季節性が強い場合は前年の同じ期間と並べて見るのが無難です。期間を変えると順位が変わる商材は、区分そのものが不安定だと分かります。
工程2:大きい順に並べ、累計の割合を出す
並べ替えと累計の計算は、判断の入らない機械的な作業です。対象ごとの数値を全体で割って構成比を出し、大きい順に上から足し上げていく。最後の対象まで足すと100に届きます。ここで作った累計構成比の列が、次の工程で切る位置を決めるときの唯一の材料になります。表計算でも分析ツールでも構いません。手作業の再計算をなくすことだけ意識します。
この工程で確認しておきたいのが、対象の粒度です。商品を型番ごとに並べるのか、シリーズごとにまとめるのか。まとめ方を変えると偏り方が変わります。細かく割るほど上位への集中は弱まり、まとめるほど強まります。粒度をいじると比率は動かせてしまうので、粒度は打ち手の単位に合わせて決めるのが原則です。個別に手を打てない単位まで細かく割っても、区分は使えません。
並べ終えたら、折れ線の立ち上がり方を見ます。上位の数件で急に立ち上がるなら、少数への依存が強い状態です。これは重点を寄せやすい反面、その数件が落ちたときの打撃も大きいことを意味します。なだらかに伸びるなら、どこで切っても大差がないので、区分を作る意味が薄い可能性があります。形を見た時点で、この分析を続ける価値があるかどうかがある程度分かります。
工程3:切る位置を決める。70と90は目安であって正解ではない
切る位置には、よく使われる目安があります。ある解説では、累計が70までをA、71から90までをB、91から100までをCとする例が示されています。別の解説では、70から80までをA、80から90までをB、90から100までをCとしています。資料によって数値が揺れているという事実そのものが、正解の数値が存在しないことの証拠です。目安は出発点にはなりますが、そのまま採用する理由にはなりません。
実務では、数値から入るのではなく、手当てできる数から逆算するほうが決まります。個別に担当を付けて見られるのが月に15件までなら、A区分は15件に収まる位置で切る。まとめて見る運用が50件まで回るなら、Bはそこまで。区分は分析上の分類ではなく、運用の器の大きさだと捉えると、切る位置の議論が具体的になります。器に入らない区分を作っても、扱いは変わりません。
もう1つ、切る位置の近くにいる対象の扱いを決めておきます。累計が72で切ったとき、71と73にいる対象は実質的に同じです。にもかかわらず、片方は個別対応、片方は仕組み任せになります。この段差を放置すると現場が納得しません。境目の前後にいる対象を「保留」として別に並べ、四半期ごとに見直す運用にしておくと、段差の不合理が小さくなります。
工程4:区分ごとに手の掛け方を変える
区分を作ってもそこで止まる分析が多いのは、区分ごとに何を変えるかを先に決めていないからです。決めるのは3つ。誰が見るか、どのくらいの頻度で見るか、何を止めてよいか。A区分は担当が個別に見て月次で確認する、B区分はまとめて四半期に見る、C区分は仕組みに任せて数字が動いたときだけ見る、という具合に、手の掛け方の差を先に文章にしておくと、区分が実務の言葉になります。
扱いを変える対象は、人手の配分だけではありません。在庫の持ち方、広告の予算配分、問い合わせへの応答速度、資料の作り込みの深さ。どれも区分に応じて変えられます。ここで注意したいのは、C区分の扱いを「何もしない」にしないことです。何もしないと決めた瞬間に、C区分の数字は下がり続け、翌年の分析でも当然のようにCに居続けます。下げ止まりを作らない扱いは、区分を固定する自己成就の仕掛けになります。
代わりに、C区分には「仕組みだけで回す」という扱いを与えます。案内文や資料は用意しておく、問い合わせが来たら決まった手順で返す、けれども個別の作り込みはしない。こうしておけば、C区分の中から伸びるものが出てきたときに、それを検知できます。扱いを変えるとは、放置することではなく、掛ける手を仕組みに置き換えることです。
マーケで当てる対象は商品だけではない
ABC分析は在庫管理や商品管理の文脈で説明されることが多いのですが、扱う数字が「大きい順に並べられて、合計に意味がある」ものであれば、対象は何でも構いません。マーケティングの現場では、商品よりもむしろ次のような対象に当てたほうが、打ち手に直結します。当てる対象を変えるだけで、同じ手法から違う結論が出てきます。
| 当てる対象 | 並べる指標の例 | 区分を作ると変わること |
|---|---|---|
| 商品・サービス | 粗利、受注件数 | 在庫の持ち方、提案資料の作り込みの深さ、廃止の判断 |
| 流入経路 | 問い合わせ数、商談化数 | 予算の配分先、経路ごとの計測の細かさ |
| 検索語 | 表示回数、流入数、商談化数 | 記事を足す順番、既存記事の手入れの順番 |
| 顧客・取引先 | 年間の粗利、継続年数 | 担当の付け方、訪問の頻度、支援の手厚さ |
| 問い合わせの種別 | 月あたりの件数、対応時間 | 手順書を作る順番、自動応答に載せる範囲 |
| 資料・コンテンツ | ダウンロード数、商談化数 | 更新する順番、作り直すか統合するかの判断 |
この表で一番効きやすいのは、下の2つです。問い合わせの種別に当てると、対応時間の合計が大きい種別が浮かび上がります。件数が多い種別と、1件あたりの時間が長い種別は一致しないことが多く、合計時間で並べて初めて、手順書を作るべき対象が見えます。資料に当てる場合も同じで、作った本数を減らす判断が、感覚ではなく数字で下せるようになります。
流入経路・検索語・問い合わせ種別に当てると、寄せ先が変わる
流入経路に当てるときは、指標を訪問数ではなく商談化数に置くのがこつです。訪問数で並べると、数は多いが商談にならない経路が上位に来ます。商談化数で並べ直すと、訪問数では下位だった経路が上がってくることがあり、そこが予算の寄せ先になります。並べる指標を1つ後ろの段階に置き換えるだけで、順位はしばしば逆転します。
検索語に当てる場合は、表示回数で並べた表と、流入数で並べた表の両方を作り、区分が違う語を抜き出します。表示は多いのに流入が少ない語は、見出しか説明文に問題がある可能性が高く、新しく記事を作るより既存の記事を手直しするほうが早い。逆に、表示が少ないのに流入が多い語は、順位を上げれば伸びしろがある語です。2つの表の区分がずれた場所に、手を入れるべき対象が集まります。
問い合わせの種別に当てるときは、件数ではなく合計対応時間で並べます。月に3件しか来ないが1件あたり2時間かかる種別は、月に30件来るが5分で終わる種別より重い負担になっています。時間で並べると、この重さが順位に反映されます。A区分に入った種別から順に手順書を作り、C区分に入った種別は無理に自動化しない。件数の少ない例外に仕組みを合わせると、仕組みのほうが複雑になって壊れます。
上位2割に寄せるのが常に正しいわけではない
この手法の最大の落とし穴は、区分を作った次の瞬間に「C区分は切る」という結論へ飛んでしまうことです。数字の上ではC区分の貢献は小さく、切っても合計はほとんど減らないように見えます。しかし、その計算は今期の数字だけを見た計算です。伸びかけている対象は、必ず最初はC区分にいます。今のC区分をまとめて切ることは、来年のA候補を選別せずに捨てることと同じです。
実際、ある解説でも、注意点として複数の場面が挙げられています。通信販売ではC区分の商品にも一定の需要があること、一過性の話題で短期間に大きく売れる商品があること、季節商品は期間の取り方で構成比が大きく変わること、そして新商品はこれから売れる期待値を含めて重く見るべきこと。いずれも、過去の数字だけで並べたときに実力を過小に見積もってしまう対象です。
だから、切る前に例外の扱いを決めておきます。発売から一定期間を過ぎていない対象は分析から外す、季節性の強い対象は前年の同じ期間と比べる、伸び率が一定を超えた対象はC区分でも別枠にする。この3つを入れておくだけで、翌年の芽を切り落とす事故はかなり防げます。上位に寄せるという判断は、下位を捨てるという判断とは別物です。
見るのは静止した区分ではなく、区分をまたいだ動き
1枚の表は、ある時点の静止画にすぎません。実務で価値が出るのは、同じ切り方で作った2期分を並べ、区分が入れ替わった対象を抜き出したときです。CからBへ上がった対象、AからBへ落ちた対象。この差分こそが、次に手を打つべき場所を教えてくれます。静止画を眺めていても、上位が上位であるという既に知っている事実しか出てきません。
動きを見る運用にするには、条件が1つあります。切る位置を期をまたいで固定することです。今期は72で切り、来期は68で切ると、区分の入れ替わりが実際の変化なのか切り方の変化なのか分からなくなります。切る位置を変えたくなったら、変えた回の表と変える前の表を両方残し、どちらの切り方でも入れ替わった対象だけを見ます。
差分を見るときのもう1つの注意は、落ちた対象を追う優先度です。上がった対象は嬉しい報告なので自然に共有されますが、落ちた対象は理由が説明しづらいため報告が遅れます。実際には、AからBへ落ちた対象のほうが、金額の動きは大きいことがほとんどです。落ちた対象を先に確認する順番を決めておくと、この偏りを打ち消せます。
BtoBの法人商材で使うときに、教科書と変わるところ
解説の多くは、小売や通信販売のように対象の件数が多い前提で書かれています。法人向けの商材では前提が変わるため、そのまま持ち込むと噛み合いません。1つ目の違いは件数です。取引先が数十社しかない場合、1社の増減で区分の顔ぶれが変わります。上位5社で8割を占めるのは珍しくなく、その状態で作った区分は、翌期には別の絵になっています。
2つ目は、検討期間の長さです。法人向けでは商談から受注まで半年から1年かかることがあり、今期の売上の順位は1年前の活動の結果を映しています。今期の順位を見て今期の人手を配ると、すでに終わった山に人を送ることになります。売上の順位と、商談の動きの順位を別々に並べ、両方が上位にある対象を本当のA区分とするのが実務的な回避策です。
3つ目は、購買に関わる人数です。法人の取引では、決めるのが1人ではありません。同じ取引先でも、部署が違えば別の判断が動いています。取引先の単位で並べると、この内訳が消えます。件数が確保できるなら、取引先ではなく部署や案件の単位で並べたほうが、手の打ちどころが見えます。単位を1段細かくすると、件数の少なさという弱点をいくらか埋められます。
AIに任せてよい工程と、人が決める工程
この手法は計算が単純なので、AIに任せる余地は少なく見えます。実際に効くのは計算の代行ではなく、判断の材料を増やす部分です。任せてよいのは主に3つ。区分の境目をどこに置くかの候補出し、区分をまたいだ動きの検出、そして並べる指標を変えたときに順位がどう変わるかの整理です。
- 切る位置の候補を出させる:累計構成比の並びを渡し、順位の差が大きく開いている場所を複数挙げさせる。人が気づきにくい段差が見つかることがある。ただし出てきた候補はあくまで候補で、採用の判断は運用の器の大きさで人が決める
- 区分をまたいだ動きを拾わせる:2期分の表を渡し、区分が変わった対象と、変わっていないが順位が大きく動いた対象を一覧にさせる。件数が多いほど、この作業の手間は減る
- 順位の入れ替わりを整理させる:売上で並べた表と粗利で並べた表を渡し、順位差の大きい対象を抜き出させる。どちらの指標で見るべきかの議論の材料になる
2つ目には続きがあります。動きが検出できたら、その理由の候補まで書かせないことです。理由の推測はもっともらしい文章として返ってきますが、社内の事情や個別の商談の経緯を機械は知りません。検出は機械、理由の確認は人という線を引く。理由まで任せると、確かめられない説明が資料に載り、次の判断がその説明を前提に進んでしまいます。
AIに決めさせてはいけないのは、切る位置と、切った後の扱い
渡してはいけないのは、切る位置を決める判断そのものです。理由は精度の問題ではありません。切る位置は、社内で何件まで手を掛けられるかという体制の話であり、外から見える数字だけでは決まらないからです。体制を知らないまま出された境目は、必ず運用できない数の区分を作ります。動かせる人手を知っているのは社内の人だけです。
切った後の扱いも同じです。C区分に入った対象をどう扱うかは、事業としてその領域を続けるかどうかの判断を含みます。数字の上では切るのが合理的に見える対象が、将来の主力の入口だったり、既存顧客との関係を保つために必要だったりします。この重みづけは数字の外にあるので、機械が持っている情報からは出てきません。
線の引き方はこうです。並べる、検出する、候補を出すところまでは機械。切る位置を決める、扱いを決める、例外を認めるところは人。そして決めた理由を1行残す。理由が残っていないと、次の期に区分を見直すときに、また同じ議論を最初からやり直すことになります。残す一行は「月に見られるのが15件だからここで切った」程度で十分です。
やりがちな失敗と、使うのをやめる条件
最後に、実際に起きる失敗と、この手法を持ち出さないほうがよい場面をまとめます。ABC分析は手軽なので、向いていない場面にも使われがちです。向いていない場面で使うと、区分は作れるのに何も変わらないという結果になり、次から誰も表を見なくなります。
- 区分を作って終わりにする。扱いを変えていないので、翌期も同じ順位の表が出来上がるだけになる
- C区分をまとめて切る。伸びかけの対象は必ず最初はCにいるので、翌年のA候補を選別せずに捨てることになる
- 切る位置を毎回変える。期をまたいだ比較ができなくなり、区分の入れ替わりが変化なのか切り方なのか分からなくなる
- 指標を後から選び直す。並べてから指標を変えると、望む順位が出る指標を選ぶ作業になってしまう
- 対象の粒度を打ち手の単位とずらす。個別に手を打てない細かさまで割っても、区分は運用に使えない
- 8割と2割という比率を前提として資料に書く。比率は調べた結果であって、調べる前の前提にはならない
- 新しく出したばかりの商材や、始めたばかりの施策は、分析の対象から一定期間外す
- 季節性が強い対象は、直近の期間だけでなく前年の同じ期間と並べて判断する
- 取引先の数が数十社しかない場合は、区分ではなく個別の一覧で扱うほうが早い
| 使うのをやめるべき状態 | その状態で起きていること | 代わりに先にやること |
|---|---|---|
| 折れ線がほぼ直線になる | 上位への集中がなく、どこで切っても差が出ない | 対象の粒度をまとめ直すか、別の指標で並べ直す |
| 対象が20件に満たない | 1件の増減で順位が入れ替わり、区分が安定しない | 区分を作らず、全件を個別に扱う一覧で管理する |
| 扱いを変える権限が手元にない | 区分は作れるが、人手も予算も動かせない | 先に、何を動かせるのかを確認する。動かせるものが無いなら分析は保留する |
| 指標が決まっていない | 会議のたびに切り口が変わり、前回と比較できない | 守りたいものを1つ決め、それに対応する指標を1つ選ぶ |
| 前年との比較データが無い | 静止画しか作れず、区分をまたいだ動きが見えない | まず今期分を作って基準にし、次の期から差分を見る運用にする |
表の3つ目は、意外とよく起きます。分析の依頼は来るのに、区分に応じて人手や予算を動かす権限が誰にも無い状態です。この場合、区分を作っても実務は何も変わりません。分析を始める前に、区分ができたら何を動かせるのかを1つ確認しておく。動かせるものが1つも挙がらないなら、その分析は今やるべき作業ではありません。
よくある質問
区分は3つでなければいけませんか
3つである必然性はありません。手の掛け方を3段階に分けられないなら、2つで構いません。逆に、A区分の中がさらに大きく偏っているなら、A区分だけを2つに割ることもあります。区分の数は、実際に用意できる扱いの種類と一致させるのが原則です。扱いが2種類しかないのに区分を4つ作ると、下の3つが同じ扱いになり、分けた意味が消えます。
売上と粗利、どちらで並べるべきですか
この分析で何を守りたいかによります。売上規模を守りたいなら売上、手元に残る額を守りたいなら粗利です。BtoBの商材では、対応にかかる工数の差が大きいため、粗利で並べるほうが判断に噛むことが多くなります。両方作って順位差の大きい対象を抜き出すと、それ自体が議論の材料になります。
どのくらいの頻度で作り直せばいいですか
四半期に一度が扱いやすい頻度です。毎月作ると、日々の変動が区分の入れ替わりに見えてしまい、判断が落ち着きません。年に一度だと、区分をまたいだ動きに気づくのが遅れます。ただし、対象が数十件しかない場合は、変動が大きいので四半期でも早すぎることがあります。その場合は半期に一度で十分です。
上位に集中していない結果が出たら失敗ですか
失敗ではなく、それも1つの結果です。集中していないと分かれば、重点を作る方向ではなく、全体の効率を上げる方向に切り替える判断ができます。偏っていないという発見に、意思決定を変える力があります。無理に区分を作って重点らしきものをでっち上げるほうが、よほど危険です。
まとめ
ABC分析は、売上の大きい順に色を塗る作業ではなく、限られた人手と予算をどこに寄せるかを決めるための4工程でした。何をどの期間で測るかを決め、大きい順に並べて累計を出し、切る位置を決め、区分ごとに手の掛け方を変える。4つ目まで通して初めて、表が実務の変化になります。表を作って終わっている場合、止まっているのは工程4です。
切る位置に正解はありません。よく使われる目安はありますが、資料によって数値が揺れている時点で、それは目安以上のものではないと分かります。実務では、数値からではなく、個別に手を掛けられる件数から逆算して切ります。区分とは分析上の分類ではなく、運用の器の大きさです。器に入らない区分を作っても、扱いは変わりません。
そして、上位に寄せる判断と、下位を捨てる判断は別物です。伸びかけている対象は必ず最初は下位にいるため、下位をまとめて切ると翌年の芽を失います。新しい対象は一定期間外す、季節性のあるものは前年と比べる、伸び率の高いものは別枠にする。この3つを先に決めておきます。AIには境目の候補出しと区分をまたいだ動きの検出を任せ、切る位置と扱いを決める仕事、そして決めた理由を1行残す仕事は人が持ちます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
