ROASは何倍あれば合格か?|粗利で引き直す損益分岐

「うちの広告は3倍出ているから合格、という言い方を社内でしている」「業界の目安が5倍と書いてあったので、そこを目標に置いた」——広告の数字を毎月報告している担当者から、よく出てくる話です。広告費に対して売上が何倍あれば続けてよいのか、という問いに業種で決まる正解はありません。合格ラインを決めているのは、扱っている商品の粗利率だけだからです。粗利率が20パーセントの商材は5倍でようやく収支が合い、40パーセントの商材は2.5倍で合います。同じ3倍という数字が、片方では赤字、もう片方では黒字になる。この記事では、売上高ではなく粗利で合格ラインを引き直す手順と、そこから外れた媒体の扱い方を順に見ていきます。
カメ先生広告の倍率って、何倍あれば合格という共通の水準があると思われがちなんだけど、本当は会社ごとに違う数字なんだ。決めているのは業種じゃなくて、その商品の粗利率だよ。
カメ子同じ3倍でも、会社によって合格だったり赤字だったりするということですか。
カメ先生そう。粗利率が半分の商材なら2倍で収支が合うけど、粗利率が2割しかなければ5倍ないと足りない。目安の数字をそのまま持ってくると、ここがずれる。
カメ子自社の合格ラインは、どうやって出せばいいのでしょうか。
- 合格ラインを決めるのは業種の目安ではなく自社の粗利率。1を粗利率で割った値が収支の分かれ目になる
- 媒体の管理画面が返す倍率は、分子に載っているものも計測の期間も媒体ごとに違う。そのまま並べて比べない
- 突き合わせと引き直しの計算はAIに寄せてよいが、合格ラインの決定と止める判断は人が行う
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同じ倍率でも、続けてよい会社と赤字の会社がある
広告の報告でいちばん多く使われている数字が、広告費に対して売上が何倍返ってきたかという倍率です。ROASという名前で管理画面にも並んでいます。ところがこの数字は、それだけでは合格も不合格も判定できません。同じ3倍でも、続けたほうがよい会社と、続けるほど損が積み上がる会社が同時に存在します。
理由は単純で、広告費を回収する原資になるのは売上そのものではなく、売上から原価を引いた粗利だからです。粗利率が40パーセントの商材なら、100万円の売上のうち原資は40万円です。広告費が40万円ならちょうど収支が合い、倍率で言えば2.5倍になります。粗利率が20パーセントなら原資は20万円しかないので、同じ100万円の売上に対して出せる広告費は20万円まで。必要な倍率は5倍です。粗利率が半分になると、必要な倍率は倍になるという関係が、この数字の裏側にあります。
検索して出てくる「目安は何倍」という数字は、この粗利率の違いを吸収していません。同じ業界に分類されていても、自社製造なのか仕入れ販売なのか、送料を自社が負担しているのか、値引きをどれだけ使っているのかで粗利率は大きく変わります。業界平均として示される倍率は、その業界に多い原価構造をなんとなく前提にしているだけで、自社の帳簿とは結び付いていません。目安は仮置きには使えますが、続ける・止めるの判断材料にはなりません。
まず定義をそろえる。分子と分母に何が載っているか
倍率の話が社内でかみ合わない原因の多くは、計算の中身がそろっていないことです。媒体の公式資料は、この指標を「広告に投じた費用で獲得したいと考えるコンバージョンの価値、たとえば収益額の平均」と定義しています。例として示されているのも、売上を広告費用で割って100を掛ける形です。つまり分子は媒体に渡している成果の値であって、粗利ではありません。
分子に何を渡すかは、こちら側の設定で決まります。物販であれば購入金額を渡すのが一般的で、その場合の分子は売上です。同じ公式資料には、販売収益や利益率といった値を成果の価値として最大化できるとも書かれており、取引ごとに違う値を渡すこともできます。逆に、全部の成果に同じ値を入れる簡易な設定もできますが、その方法は正確性が落ちる可能性があると明記されています。
分母のほうは「広告費用」です。媒体に払った金額であって、制作費も運用手数料も人件費も入っていません。ここに何を足すかは会社の判断ですが、足す・足さないを決めないまま報告を回すと、同じ月の数字が資料によって違うという事態が起きます。粗利で引き直す作業は、この分子と分母の中身を先に固定するところから始まります。
法人向けの商材では、分子の置き方がもう一段ややこしくなります。広告で発生するのは問い合わせや資料請求であって、売上が立つのは数か月先だからです。そのため分子には、実際の売上ではなく、問い合わせ1件あたりの見込みの金額を割り当てているケースが多くなります。この割り当てた金額が売上のつもりなのか粗利のつもりなのかを、決めた本人以外は知らないことがよくあります。引き直しに入る前に、その金額が何を表しているのかを確認してください。過去の受注率と平均受注額から出しているなら売上、そこに原価率まで掛けているなら粗利です。前者のまま粗利の合格ラインと突き合わせると、二重に見積もりを誤ります。
原因の一つめ。計測の期間まで含めて媒体ごとに定義が違う
同じ「倍率」という名前でも、媒体が返す数字は同じ物差しで測られていません。まず効いてくるのが計測の期間です。ある大手媒体の公式資料は、この期間を「広告の操作が発生した後、購入などの成果が記録される期間」と定義したうえで、既定値を操作の種類ごとに分けています。クリックの後は30日間、動画の視聴を伴う操作は3日間、表示されただけの場合は1日間です。
この期間は1日から90日の間で自由に設定できます。ここで重要なのが、期間を変えても過去のデータには遡って適用されないという仕様です。同じ資料は、変更前の操作は変更前の期間の扱いのままだと明記しています。つまり、期間を延ばした月とその前の月では、施策が同じでも倍率が変わります。設定を触った日を記録に残していないと、後から見て「この月から改善した」と読み違えます。
さらに、この期間は測り方だけの話ではありません。同じ資料には、自動入札は選択した計測期間の成果を測定して最適化すると書かれています。期間を短くすれば、遅れて発生する成果は最適化の材料から外れます。媒体ごとに既定値も選べる幅も違うので、2つの媒体の倍率を並べて優劣を語るのは、目盛りの違う定規を並べるのと同じことになります。媒体をまたいだ合計の倍率を出したいなら、自社側で期間と定義をそろえた集計を別に作るしかありません。
原因の二つめ。分子の売上から、まだ何も引かれていない
媒体に渡している購入金額は、多くの場合そのままの売上です。値引きやクーポンの分、返品やキャンセルの分、送料、決済手数料、同梱物の原価。これらは分子から引かれていません。返品率が高い商材では、この差だけで倍率の見え方が一段変わります。
見落としやすいのが税と送料の扱いです。渡している金額が税込か税抜きか、送料込みか別かは、計測を実装した人しか知らないことがあります。実装のときに決めた仕様が、報告の物差しをそのまま決めている状態です。粗利で引き直す前に、まず分子に何が含まれていて何が含まれていないかを、計測の実装を開いて確かめる必要があります。
引くべきものを並べると、たいてい次の順で効きます。返品とキャンセル、値引きとクーポン、送料、決済手数料。この4つを当月の実績で戻すだけで、分子は数パーセントから十数パーセント動きます。倍率の議論を始める前に、分子から引き忘れているものを一覧にする。ここを飛ばすと、後の計算がどれだけ精密でも土台がずれたままになります。
- 媒体の管理画面が返す倍率を、そのまま社内報告の合格判定に使っている
- 返品率の高い商材なのに、返品を分子から戻す仕組みを入れていない
- 計測期間を変えた月と変える前の月を、同じグラフに並べて改善したと報告している
- 税込と税抜きが媒体ごとに混ざったまま、合計の倍率を出している
損益分岐の倍率は、粗利率の逆数から出る
ここからが引き直しです。広告費が粗利でちょうど回収できる点、つまり収支が合う倍率は、1を粗利率で割った値になります。粗利率が40パーセントなら1を0.4で割って2.5倍、20パーセントなら5倍。難しい計算は要りません。粗利率さえ出れば、その場で出せます。
| 粗利率 | 損益分岐の倍率 | この水準で起きること |
|---|---|---|
| 10パーセント | 10倍 | 10倍出ていてようやく収支が合う。広告だけで伸ばすのは難しい |
| 20パーセント | 5倍 | 5倍を割ると赤字。目安として出回る数字の多くはここを下回る |
| 25パーセント | 4倍 | 分子から返品と送料を引くと、実質はもう少し高い水準が要る |
| 30パーセント | およそ3.3倍 | 3倍を合格としている会社は、ここでわずかに赤字になっている |
| 40パーセント | 2.5倍 | 2倍台前半で回している媒体は、この線を割っている |
| 50パーセント | 2倍 | 2倍を割った時点で赤字。利益を残すならさらに上が要る |
| 60パーセント | およそ1.7倍 | 倍率の絶対値は小さくても、原資が厚いので黒字になる |
表を縦に見ると、粗利率が下がるほど必要な倍率が急に跳ね上がることが分かります。40パーセントから20パーセントへ、粗利率が半分になるだけで必要倍率は2.5倍から5倍へ倍になります。粗利率の低い商材で「あと少しで目標」と言っているときの「あと少し」は、粗利率の高い商材の「あと少し」とは重みがまったく違います。
粗利率を、広告に載せる粒度で出し直す
全社平均の粗利率で引くと、粗利の厚い商品が売れている媒体と、薄い商品が売れている媒体を同じ物差しで測ることになります。実務でいちばん効くのは、この粒度を下げる作業です。商品を3つか4つの群に束ね、群ごとの粗利率を出す。それだけで、どの媒体が何を売っているのかが見えてきます。
商品ごとの原価を持つ仕組みは、媒体の側にも用意されています。商品情報を登録する管理画面には売上原価という項目があり、公式資料は「総利益は収益と売上原価の差」と定義したうえで、推定した総利益の計算や、利益に基づく入札に使えると説明しています。自動での値引きや動的な販促を使う場合には必須の項目とされています。
この資料でありがたいのは、精度についての記述です。指定するのは実際の売上原価の概算でよく、正確である必要はないと明記されています。商品ごとに原価が違う場合は平均値を使うことが勧められてもいます。つまり、経理の確定値を待つ必要はありません。概算の粗利率で引き直すだけで、合格ラインの議論は今日から始められるということです。
法人向けの商材では、束ね方の軸が商品とは限りません。初期の導入費用と月々の利用料で粗利率がまったく違う、同じ製品でも直販と代理店経由で手取りが違う、案件の規模によって値引きの幅が違う。この場合は、商品ではなく粗利率が近いもの同士で束ねるのが正解です。たとえば「導入費が主の案件」「継続課金が主の案件」「代理店経由の案件」の3つに分ければ、それぞれの粗利率は十分に違い、束の中ではおおむね揃います。束ね方を決めた根拠を1行書き添えておくと、翌期に見直すときの手がかりになります。
返品とキャンセル、値引きとクーポン、送料、決済手数料。当月の実績で戻す。税込と税抜きのどちらで揃えるかもここで決める。
全社平均で始めない。3つか4つの群に束ね、群ごとの原価率を概算で当てる。経理の確定値を待たない。
媒体費だけか、運用手数料と制作費まで含めるか。決めたら報告の全期間で変えない。
損益分岐の倍率を群ごとに出す。ここではじめて、媒体の実績と突き合わせられる状態になる。
分母をどこまで広げるかで、合格ラインは動く
分母の定義は、媒体費だけを入れる形と、運用の手数料や制作費、計測ツールの費用まで含める形の二つに大きく分かれます。後者にすると分母が大きくなるので、同じ実績でも倍率は下がります。合格ラインを変えていないのに、定義を変えただけで不合格に見える、ということが起こります。
どちらが正しいという答えはありません。媒体費だけで見るなら媒体の運用そのものの良し悪しが見えますし、周辺費用まで入れるなら広告という活動全体の採算が見えます。大事なのは社内で一つに決めて、報告の全期間で変えないことです。決算や予算の議論に載せるなら、周辺費用まで入れた定義のほうが噛み合います。
途中で定義を変える必要が出たときは、過去の月も同じ定義で引き直してから並べます。定義を変えた月だけ数字が跳ねると、施策の効果と読み違えます。引き直しが重いと感じるかもしれませんが、後で述べるように、この種の再計算はAIに寄せられる工程です。
- 分子の定義:何を成果の値として媒体に渡しているか(購入金額か、粗利か、固定値か)
- 分子から引くもの:返品・値引き・送料・決済手数料をどこまで戻すか
- 分母の定義:媒体費だけか、手数料と制作費まで入れるか
- 計測の期間:媒体ごとの設定値と、それを変更した日付
- この4つを1枚に書いて、報告資料の末尾に毎回付ける
目標倍率は、損益分岐に残したい利益を足して決める
損益分岐はあくまで収支が合う点であって、そこを目標に置くと利益はゼロです。目標として使う倍率は、残したい利益の分だけ上に置きます。計算は、粗利率から目標にする利益率を引いた値で1を割る形になります。粗利率が35パーセントで、売上に対して10パーセントの利益を残したいなら、35から10を引いた25パーセントで1を割って4倍です。
この一手を入れると、社内の会話が変わります。「目標は4倍」ではなく「粗利率35パーセントの商材で、売上の10パーセントを利益として残す前提だから4倍」と説明できるようになるからです。目標の数字ではなく、目標を作っている前提のほうを共有する。前提が動いたときに目標を動かせるのは、この形にしておいた場合だけです。
ただし、目標を上げれば上げるほど良いわけではありません。媒体の公式資料には、目標値を高く設定しすぎると配信量が制限される可能性があると書かれています。獲得数を取るか単価の良さを取るかという判断が、ここで必ず発生します。目標倍率は採算の線であって、配信の量とは引き換えの関係にあることを、目標を決める会議で先に共有しておくと後の揉め事が減ります。
継続課金や定期購入は、初回の倍率だけでは決まらない
定期購入や継続課金の商材では、初回の粗利だけで引くとほぼ確実に損益分岐を割ります。初回を割安にして継続で回収する設計になっているからです。ここで倍率だけを見て止めると、伸びる媒体を落とすことになります。
媒体の数字がここを助けてくれないのには、仕様上の理由があります。前に触れたとおり、成果が記録される期間は最長でも90日です。2回目以降の購入は、媒体が返す値には基本的に載りません。つまり媒体の管理画面に出ている倍率は、構造として初回だけの倍率です。この性質を知らないまま「媒体の数字が悪い」と判断すると、媒体の仕様を商材の採算と取り違えることになります。
対処は、分子に何を置くかを先に宣言することです。初回の粗利だけで見るのか、一定回数までの見込みの粗利で見るのか。見込みを分子に入れるなら、その見込みが過去の実績で裏付けられているかを別に確認します。継続率が想定より下がれば、合格していたはずの媒体が後から不合格に変わります。なお、1顧客あたりの採算をどこまで許容するかは別の物差しの話なので、ここでは倍率の分子に何を置くかに絞って考えます。
媒体に目標値として倍率を渡すと、何が起きるか
いまの運用では、倍率を目標値として媒体に渡し、あとは自動で調整させる形が主流です。この仕組みには公式に条件が書かれています。検索とショッピングでは過去30日間に15件以上の成果、ディスプレイでは値の付いた成果が過去30日間に15件以上(新規のディスプレイでは件数の実績を求めない扱いに変わりました)、アプリでは毎日10件または30日間で300件以上、ホテルではキャンペーン単位で週50件以上とされています。
新しく始める場合には、4週間または成果が発生するまでの周期3回分のデータを貯めることが推奨されています。また、リアルタイムの情報に基づいて自動で調整されるため、手動で設定していた入札単価の調整は使われないとも書かれています。目標値を渡した時点で、細かい調整の主導権は媒体側に移ります。
ここで、この記事の主題と直結する落とし穴があります。入力欄に渡す目標は、あくまで媒体が知っている成果の値に対する倍率です。粗利で引き直した合格ラインをそのまま入力欄に入れても、媒体の側は売上を分子にして計算し続けます。粗利で運用したいなら、目標値のほうではなく、渡している成果の値そのものを粗利に置き換えるのが筋です。公式資料には販売収益や利益率といった値を扱えると書かれているので、実装の余地はあります。ただし全件同じ値を入れる簡易な方法では正確性が落ちる旨も書かれているため、取引ごとに値を渡す実装が要ります。
形式の違う媒体実績を突き合わせ、粗利率を当てて引き直す
ここからがAIの出番です。引き直しの作業でいちばん時間を食うのは、計算そのものではなく、媒体ごとに形式の違う実績を同じ表に並べる工程です。列の名前が違う、日付の粒度が違う、商品コードの表記が揺れている、通貨や税の扱いが違う。この整形と突き合わせは、AIに寄せてよい仕事です。
頼み方には型があります。計算式を先に文章で固定して渡すこと。「粗利率は商品群の対応表から引く」「返品は当月の実績で差し引く」「分母には運用手数料を含める」と書いてから、データを渡します。式を渡さずに「粗利で計算して」とだけ頼むと、AIはもっともらしい粗利率を自分で仮定します。返ってきた表は整っているので、仮定が入っていることに気づけません。
もう一つ、出力の形も指定します。倍率だけを返させず、途中の数字も一緒に出させる。売上、引いた額、粗利、広告費、損益分岐の倍率、実績の倍率。この6列があれば、人が電卓で1行だけ検算できます。検算できない形で出させない。これは精度の問題ではなく、後で「その数字はどこから来たのか」と聞かれたときに答えられるようにしておくための備えです。
異常値と計測の抜けを、AIに拾わせる
倍率が急に跳ねた月は、成果ではなく計測の事故であることが多いものです。この検出は、目視より機械のほうが得意です。ただし「おかしいところを探して」と頼むと、当たり障りのない指摘が並んで終わります。探す対象を先に固定するのがコツです。
具体的には、次のような型で頼みます。値がゼロで連続している期間をすべて挙げる。金額の桁が他の行と1桁以上違う行を挙げる。費用は発生しているのに成果の値が入っていない媒体と日付を挙げる。設定を変更した日をまたいで水準が変わっている系列を挙げる。型で頼むと、返ってくるのは意見ではなく行の一覧になります。行の一覧なら、人が管理画面を開いて突き合わせられます。
拾ったものの扱いにも線が要ります。AIが挙げた行は候補であって、事故と決まったわけではありません。実際に売れた大口の注文かもしれないし、計測の抜けかもしれない。候補の一覧までがAIの仕事で、事故かどうかの判定は計測の設定を開いた人が行う。この線を引かずに一覧をそのまま除外すると、都合の悪い実績だけが消えた表ができあがります。
合格ラインの決定と、止める判断はAIにさせない
引き直しの計算をAIに寄せるほど、そのまま判断まで任せたくなります。ここが分かれ目です。AIに渡してよいのは計算までで、合格ラインをどこに置くかは、その会社が広告に何を期待しているかで変わります。新規顧客を取りにいく時期なら、損益分岐を割ることを承知で出す判断もありえます。
止める・続けるの判断も同じです。数字だけを見れば止める媒体でも、他の媒体の獲得を支えている場合があります。逆に、合格している媒体が、たまたま在庫処分の値引き商品を売っていただけということもあります。倍率は判断の材料であって、判断そのものではありません。
運用の線引きは具体的に決めておきます。AIには根拠の数字を出させ、判断の文言は書かせない。「この媒体は停止すべきです」という出力をそのまま議事録に貼らない。決裁の記録には、誰がどの数字を見て、いつ決めたかを残す。この形にしておくと、後から結果が悪かったときに、判断の誤りなのか前提の誤りなのかを切り分けられます。
- AIに任せてよい:形式の違うデータの突き合わせ、粗利率の当てはめ、再計算、異常値の候補出し
- 人が決める:合格ラインの水準、分母と分子の定義、止める・続けるの判断
- 出力に必ず添えさせる:計算に使った粗利率と、その出どころ
- AIの出力は資料であって決裁ではない。決裁の記録は人の名前で残す
損益分岐を割った媒体を、すぐ止めてよいか
引き直した結果、損益分岐を割っている媒体が出てきます。ここでいきなり停止すると、たいてい後悔します。割っている理由は三つに分かれ、そのうち二つは媒体の問題ではないからです。
一つめは、分子が実態より小さい場合。計測が抜けている、期間が短くて遅れて発生する成果を拾えていない、電話や来店の成果が入っていない。二つめは、粗利率の当て方が粗い場合。全社平均で引いていて、その媒体が粗利の厚い商品を売っていることに気づいていない。この二つを潰してからでないと、三つめの「本当に採算が合っていない」にはたどり着けません。
本当に割っている場合でも、次の一手は停止ではなく切り分けです。商品群、地域、時間帯、検索の語、端末。どの単位で見ると割っている部分が集まるかを探します。全体で2倍でも、内訳を開けば5倍の部分と0.5倍の部分が混ざっている、ということがよくあります。止めるのは媒体ではなく、割っている部分。この順番を守るだけで、止めすぎによる獲得数の落ち込みはかなり防げます。
法人向けの商材では、これに時間差の問題が重なります。問い合わせから受注までが3か月かかるなら、直近3か月の広告費に対応する売上は、まだ立っていません。期間を切って倍率を出すと、費用だけが先に計上され、成果は次の期間に回るという構造的なずれが起きます。対処は、費用の側を成果の発生時期に合わせて並べ直すことです。今月の売上に対応する広告費は、3か月前に使った分。この並べ替えを1回やっておくと、「先月から急に悪化した」という誤読が減ります。並べ直しの計算そのものは単純なので、先に述べた突き合わせと同じくAIに寄せられる工程です。
よくある質問
業界平均の倍率は、まったく使えないのですか
自社の粗利率を出すまでの仮置きとしては使えます。ただし、判断には使えません。同じ業界でも原価構造が違えば合格ラインは倍近く変わるからです。仮置きで運用を始めてよいので、最初の1か月のうちに自社の粗利率で引き直してください。
粗利率が商品ごとにばらばらで、出せません
概算で構いません。媒体の公式資料自体が、売上原価は実際の値の概算でよく、正確である必要はないと書いています。商品ごとに違う場合は平均値の使用が勧められてもいます。3つか4つの群に束ねて、群ごとの概算値を当てるところから始めてください。
媒体をまたいだ合計の倍率を出してもよいですか
媒体の管理画面の数字をそのまま足し合わせるのは避けてください。計測の期間も分子の中身も違うためです。合計を出したいなら、自社側で期間と定義をそろえた集計を別に作ります。その集計の作り方を1枚に書いて、報告資料に添えておくと質問が減ります。
目標倍率は月ごとに変えてよいですか
粗利率や送料の条件が変われば、目標も変わります。変えること自体は問題ありません。ただし、報告の途中で定義や目標を変えるなら、過去の月も同じ条件で引き直して並べてください。変えた月だけ数字が跳ねると、施策の効果と読み違えます。
合格ラインの計算をAIに任せてはいけないのですか
計算は任せて構いません。任せてはいけないのは、合格ラインをどこに置くかという決定と、止める・続けるの判断です。AIには根拠の数字と、その根拠に使った粗利率の出どころを出させる。決めるのは人、という線を先に文書にしておいてください。
まとめ
広告の倍率に、業種で決まる合格ラインはありません。決めているのは自社の粗利率で、1を粗利率で割った値が収支の分かれ目になります。まず分子から返品と値引きと送料と手数料を引き、分母に何を入れるかを一つに決め、商品群ごとの概算の粗利率で引き直す。ここまで来てはじめて、媒体の実績を判断に使える状態になります。媒体が返す倍率は、計測の期間も分子の中身も媒体ごとに違うため、そのまま並べて比べることはできません。突き合わせと再計算はAIに寄せてよい工程ですが、合格ラインの水準と止める判断は人が持ちます。まずは自社の粗利率を概算で出して、1を割ってみるところから始めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
広告運用にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
