社内の問い合わせをAIで受ける5工程|情シスの負担を減らす

「同じ質問が毎週のように来ます」「パスワードの再設定を代わりにやるだけで午前が終わりました」——情報システム部門や総務の担当者から、判で押したように届く声です。件数が増えたから重いのだと受け止められがちですが、実際に効いているのはそこではありません。社内の問い合わせが人を消耗させるのは、同じ答えを、人が何度も口頭で配り直しているからです。文書には書いてあるのに、探すより聞くほうが速いので聞かれる。この記事では、社員からの問い合わせをAIに一次受けさせるための5つの工程と、受け付ける範囲・答えさせない範囲の決め方、そして入れた後に使われ続けるための運用を整理します。
カメ先生社内の問い合わせをAIに任せるって、賢い受け答えの仕組みを置くことだと思われがちなんだけど、本当は「どの質問までを受け付けるか決めること」なんだ。
カメ子道具の性能より、線引きが先ということですか。
カメ先生そう。答えの元になる文書が無い質問は、どんな仕組みでも答えられない。逆に、文書が揃っている質問は驚くほど単純な形で片づく。
カメ子受け付ける範囲を決めてから道具を選ぶ、という順番なんですね。
- 社内の問い合わせが重いのは件数ではなく、答えが1つに決まる質問が繰り返されているから
- 決めるのは5つ。受け付ける範囲/根拠になる文書と持ち主/答えさせない範囲/人に回す線/測り方
- 入れた後に使われなくなる原因は精度ではなく置き場所。既にある業務の流れの中に差し込む
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社内の問い合わせが重いのは、件数ではなく同じ質問の割合
手を付ける前に、重さの正体を見ておきます。社内の問い合わせを扱う事業者の解説では、発生頻度の高い定型的な質問が問い合わせ全体の約30%から40%を占めることが多いと整理されています。これは特定企業の実測ではなく一般的な傾向としての記載ですが、実務の感触とは合うはずです。この帯は、答えが1つに決まり、しかもどこかの文書に書いてある質問です。つまり重さのかなりの部分は、難易度ではなく反復から来ています。
公開されている事例を1つ挙げます。鉄道事業を展開する会社の情報システム部では、ヘルプデスク業務にチャット形式の一次受けを入れたところ、導入から3か月でヘルプデスク業務が約30%効率化したと報告されています。同じ資料には、システムのメンテナンス作業が従来の8時間から約1時間に短縮された例も併記されています。前者は問い合わせの反復、後者は手順の反復で、性質は同じです。
これは情報システム部門だけの話ではありません。熱源や空調の製品を製造販売する会社では、総務・人事・経理といったスタッフ部門宛ての問い合わせのうち、月に200件から300件を自動で処理する形にしたと公開されています。受ける側の部署が変わっても、繰り返されている質問があるという構造は変わりません。
もう1件。従業員約4,600名の会社で、少人数の担当が全社からの問い合わせを受けていた例では、社内向けの探して答える仕組みを整えたことで1か月で問い合わせ率が約25%下がったと公開されています。数字の出方は前提しだいですが、3つの事例に共通するのは、減っているのが難しい質問ではないという点です。
一次受けとは、全部答えることではなく仕分けること
言葉の定義を先に置きます。ここでの一次受けは、社員からの問い合わせを最初に受け止め、答えられるものはその場で答え、答えられないものは整理して人に渡すところまでを指します。全部答えさせることではありません。この定義を外すと、以降の設計がすべて「どこまで賢くできるか」の話になり、決めるべきことが決まらなくなります。
仕分けを重く見る理由は、社内の問い合わせには入口が複数あるからです。電話、メール、チャットの個別の呼びかけ、そして席まで来ての立ち話。入口が分かれていると、同じ質問が別々の担当に届いていることに誰も気づけません。一次受けを1本にすると、はじめて「同じ質問が月にいくつ来ているか」が数えられるようになります。数えられる状態を作ることが、最初の成果物だと考えてください。
仕分けだけでも負担は下がります。人に回すときに、質問の原文、提示した答え、参照した文書、社員がそれで解決しなかった理由の4点が揃っていれば、受け取った担当は聞き直しから始めずに済みます。答えた件数より、聞き直しの往復が何回減ったかを先に見るほうが、実務の手応えとは合います。
逆に、最初につまずくのはたいてい次の3つです。設計に入る前に、自分たちが同じ形になっていないか確かめてください。
- すべての問い合わせに答えさせようとして、答えの元になる文書が無い質問まで受け付けてしまう
- 答えられなかったものを、記録を残さないまま人へ転送してしまう
- 電話と立ち話の入口を残したまま、新しい窓口だけを1つ増やしてしまう
工程1:受け付ける質問の範囲を、記録から決める
1つ目の工程は範囲決めです。直近3か月の問い合わせ記録を集め、質問を文面のまま並べます。整形はしません。そのうえで件数の多い順に上位50件を取り出し、まずこの50件だけを受け付ける範囲にします。最初から全部を受けようとすると、答えの元になる文書を揃える作業が終わらず、公開の日が来ません。
50件を2つの軸で仕分けます。1つは「答えが1つに決まるか」、もう1つは「その答えが文書に書いてあるか」。両方はいのものだけを受け付けます。答えは決まるのに文書が無いものは、受け付ける前に文書を書く対象です。答えが1つに決まらないものは、次の工程で扱う「答えさせない範囲」に回します。
範囲を決めたら、範囲外であることを社員に見える形で書きます。たとえば「この窓口では、申請の手順、貸出の可否、規程の置き場所をお答えします。例外を認めてよいかの判断や、個人の事情に関わるご相談は担当者が直接お受けします」。受け付けない範囲を書かないと、答えられなかったこと自体が使われない理由になります。書いてあれば、答えないことは失望ではなく仕様になります。
記録がそもそも残っていない組織もあります。電話と立ち話しか経路が無い場合は、完璧な集計を目指さず、2週間だけ手元の紙に正の字を付けてください。上位に来る質問は、担当者の実感とほぼ一致します。ここで時間をかけすぎるより、粗い上位50件で走り出したほうが、後の工程で修正が効きます。
工程2:答えの元になる文書を選び、持ち主を人名で決める
2つ目は文書です。上位50件の質問に対して、答えの根拠になる文書を1件ずつ紐づけていきます。この作業をすると、多くの組織で同じものが見つかります。同じ内容の文書が複数の場所に別々の版で置かれているという状態です。共有フォルダ、社内ポータル、部署のチャットに固定された投稿、担当者の手元。どれが正なのかを誰も宣言していません。
版の混在は、人が答えているうちは事故になりにくい問題です。人は「あれ、去年変わったはず」と引っかかるからです。仕組みは引っかかりません。旧規程を参照した答えは、自信のある文体で、間違ったまま返ってきます。だから道具を選ぶより前に、文書の側で片を付ける必要があります。
具体的には、文書ごとに更新の責任者を人名で決め、次の見直し日を書きます。部署名ではなく人名です。持ち主が決まっていない文書は、参照させる対象から外すのが安全です。参照先を減らすと答えられる範囲は狭くなりますが、狭くて正しいほうが、広くて古いより信用されます。
改定の周期が読める文書には有効期限を付け、期限を過ぎたら参照の対象から自動で外します。手間はかかりますが、この作業には副産物があります。文書を整理して置き場所を1つにするだけで、仕組みを入れる前に問い合わせが目に見えて減る現場が少なくありません。工程2は、投資の前に効果が出る唯一の工程です。
工程3:AIに答えさせない範囲を、先に決めて書き出す
3つ目が、この記事でいちばん強調したい工程です。受け付ける範囲を決めると同時に、答えさせない範囲を決めます。話題の一覧で切るのではなく、人の判断が要るかどうかで切るのが要点です。話題で切ると「経費のことは全部だめ」のような粗い線になり、答えられるはずの質問まで落ちます。
判断が要るものとして、少なくとも次は外します。例外を認めてよいかの可否、個人の処遇や評価に関わること、金額や納期の確約、情報の持ち出しやセキュリティの事故が疑われる場面の初動、法令や契約の解釈。これらは答えが1つに決まらないか、決まっても責任の所在が人の側にあるものです。決まらない問いに答えさせると、それらしい一般論が返り、社員はそれを社内の公式見解だと受け取ります。
範囲外の質問が来たときの動きも決めます。黙って一般論を返すのではなく、範囲外であることを伝えて担当につなぐ。分かりませんと答えられる仕組みは、何でも答える仕組みより信頼されます。使う側は数回で見抜きます。答えられないことを隠す設計は、最初の1か月で信用を失います。
加えて、答えてよい範囲の中にも、人が確認してから出す帯を作ります。たとえば改定から30日以内の規程に関わる回答、退職や休職の手続きに関わる回答は、いったん担当者に通知して確認を挟む。全件を人が見る運用は続きませんが、変化の直後だけ見る運用は続きます。人が確認する範囲を先に決めておくと、後から全部止めるという極端な判断をせずに済みます。
- 答えさせない範囲は、公開前に一覧にして紙1枚に収める。増えたら書き足し、消すときは責任者の合意を取る
- 「答えない」と返したやり取りも件数を数える。数が多い項目は、範囲を広げる候補か、文書を書く候補になる
- セキュリティの事故が疑われる場面は、答えを返す前に担当へ通知する経路を必ず別に用意する
工程4:人に回す線と、回した後の戻し方を決める
4つ目は引き渡しです。線は2種類置きます。1つはやり取りの回数で、2往復して解決しなければ人に回します。もう1つは言葉の内容で、「至急」「止まっている」「動かない」など業務が停止していることを示す語が入った場合は、回数を待たずに人へ回します。回数だけで切ると、止まっている人が3回待たされます。
引き継ぐときの持ち物を決めます。質問の原文、提示した答え、参照した文書名と該当箇所、解決しなかった理由の4点です。ここが抜けると、社員は同じ説明をもう一度することになり、一次受けを挟んだせいで遅くなったという印象だけが残ります。導入直後にこの印象がつくと、以後は誰も窓口を使いません。
見落とされやすいのが戻し方です。人が答えた内容を、答えの元になる文書に戻す作業を誰がやるかを決めます。決めないと、人が書いた良い回答は個人のチャット履歴の中で消えます。週に1回、人が答えた分から3件だけ選んで文書に反映する。この程度の量が続きます。10件にすると2週で止まります。
通知の経路も決めます。人に回ったことが担当者に届く形を、既存の受付の仕組みへの起票にすると対応の抜けが減ります。新しい通知先を作ると、そこだけ誰も見ません。工程4は「新しい経路を作らない」が原則です。
工程5:測るのは正答率ではなく、空振りと再質問
5つ目は測り方です。正答率を測ろうとすると答え合わせの手間が大きくなり、3か月で止まります。代わりに見るのは3つ。一次受けだけで終わった割合、人に回した後に同じ人から同じ質問が再び来た割合、そして答えの元になる文書が無くて答えられなかった質問の一覧です。
3つ目が最も価値があります。聞かれたのに答えられなかった質問は、次に書くべき文書そのものだからです。空振りの一覧を週に1回読むだけで、文書の整備が推測ではなく実需の順番で進みます。整備の優先順位を会議で議論する必要がなくなります。
数字だけを見ないことも大事です。週に20件、やり取りの中身を人が読みます。数字だけ追うと、答えが的外れなのに社員が諦めて画面を閉じた場合を「解決」と数えてしまいます。読むのは20件で十分で、傾向は数件で見えます。
効果が見え始めるまでの期間は、公開されている事例では3か月前後が目立ちます。ただしこれは参照する文書が既に揃っていた場合の数字です。文書から作る場合は、工程2にかかる時間がそのまま上乗せされます。期間の見積もりは、道具の導入期間ではなく文書の整備期間で立てるのが実際に合います。
5つの工程と、飛ばしたときに起きること
ここまでの5工程を並べます。表の右端を先に読んでください。飛ばした工程は、後から必ず別の形で請求されます。決裁の場で「なぜこの順番なのか」を説明するときは、この列がそのまま材料になります。
| 工程 | 決めること | 決める人 | 飛ばすと起きること |
|---|---|---|---|
| 1 範囲 | 受け付ける質問の上位50件 | 問い合わせを受けている担当 | 答えの元が無い質問まで受け、それらしい一般論が返る |
| 2 文書 | 根拠になる文書と持ち主・見直し日 | 文書を所管する部署 | 旧版で答え、差し戻しと訂正の連絡が増える |
| 3 除外 | 答えさせない範囲と、人が確認する帯 | 部門長と担当 | 個人の事情や例外の可否に踏み込み、公式見解と誤解される |
| 4 引き渡し | 人に回す線と持ち物、戻し方 | 受け付ける部署 | 社員が同じ説明を繰り返し、窓口が敬遠される |
| 5 測定 | 一次受けで終わった割合・再質問・空振り | 運用の責任者 | 使われているかが分からず、改善の順番を勘で決める |
この5つのうち、外部の道具を選ぶ話が出てくるのは工程2の後半だけです。製品比較から始めると、工程1と工程3が抜けたまま公開日を迎えます。順番を守るだけで、導入の失敗要因の多くは消えます。
自己解決率という数字は、定義しだいで大きく変わる
検討の場では自己解決率という言葉が必ず出ます。ここで押さえたいのは、この数字は測り方を書かないと比較できないということです。同じ仕組み、同じ運用でも、定義を変えるだけで数字は倍近く動きます。
事業者向けにベンチマークを集計した資料(2026年4月時点)では、厳しい定義で測った場合の帯が示されています。厳しい定義とは、人の介入なしで完全に解決し、かつ72時間以内に同じ人から再び問い合わせが起きないことです。この定義での業界平均は20%から30%、成熟した組織で40%から60%と整理されています。同じ資料では、運用を18か月から24か月続けた段階で55%から65%に届くとされています。
一方で、「窓口が何かを返した」を解決と数えると、同じ仕組みでも数字は大きく跳ね上がります。集計元の一次調査ではなく事業者側の整理なので、数字そのものを目標に据えるのは危険ですが、論点は明快です。社内で約束する数字は、測り方を1行で書いてから出す。「再質問が起きなかったものだけを解決と数える」と先に宣言すれば、半年後の報告で言葉の意味が動きません。
期待値の置き方としては、初年度で全体の2割から3割が一次受けだけで終われば、担当者の工数としては十分に見合います。半分を超えるのは、文書が整い、受け付ける範囲を何度か広げた後の話です。初年度に半分を目標に置くと、範囲を広げすぎて工程3が崩れます。
使われなくなる原因は、精度ではなく置き場所
導入後に最も多い失敗は、精度が低いことではなく、そもそも使われないことです。ここについては、公開されている社内事例が1つの明確な答えを出しています。
2025年3月に公開された記事で、サイボウズが自社の社内AI活用を振り返っています。社内向けの探して答える仕組みは、公開初週に1週間あたり約500回使われ、その後も安定して使われ続けました。一方、同じ社内で用意したチャット形式の仕組みは、その5分の1程度にとどまり、普及の活路が見いだせなかったと述べられています。同じ会社、同じ社員、同じ時期での比較です。
担当者はこの差の理由を、業務の流れに合わせたかどうかだと説明しています。探して答える仕組みは既にある業務の延長線上に置かれ、チャットの仕組みは今までに無かった流れを新しく作ろうとした。記事では成功に必要な要素として「AIは万能ではない」「既存の業務の流れに合わせる」「現場のメンバーを巻き込む」の3点が挙げられています。道具を置く場所は、社員が既に開いている画面の中です。
実装の形に落とすと、選択肢は3つあります。社員が普段使っているチャットの中に窓口を作る、既存の依頼フォームの送信ボタンの手前に「先に聞く」を置く、社内ポータルの検索窓と同じ場所に並べる。いずれも新しい入口を増やすのではなく、既存の入口の手前に差し込む形です。周知の回数を増やすより、置き場所を1つ変えるほうが効きます。
情報システム・総務・人事で、任せ方が変わる
一次受けの設計は部門で変わります。同じ設計をそのまま3部門に横展開して、人事だけが事故になるのはよくある形です。共通で使えるのは工程の順番までで、範囲と除外は部門ごとに引き直します。
情報システム部門は最も向いています。再設定の手順、接続の方法、貸出の可否、申請の場所など、答えが手順で決まる質問が多いからです。ただし障害の初動は範囲から外します。「つながらない」という文面が、個人の設定の問題なのか全社の障害なのかは、質問の外形からは区別できません。ここを受けさせると、全社障害の最中に個人向けの手順が配られます。
総務は、規程や様式の置き場所を答える用途に向きます。ここは版の管理が効き目を決めます。備品、出張、経費の扱いは改定が多く、古い版で答えると申請の差し戻しが増え、かえって問い合わせが増えます。工程2を最も丁寧にやるべき部門です。
人事は線が細くなります。制度の一般的な説明までは受けられますが、個人の事情に踏み込む質問は受け付けません。育児休業の期間の一般的な定めを答えるのは可、その社員が取得できるかを答えるのは不可、という線です。同じ質問文でも、一般論を聞いているのか個別の判断を求めているのかで扱いが変わります。判別が難しい場合は、人事だけ「必ず担当につなぐ」を既定にするのが安全です。
根拠を書かせる。出典が出せないときは答えさせない
品質を保つ仕掛けは、実は1つに絞れます。答えに、参照した文書名と該当箇所を必ず添えさせることです。文体を整える設定より、この1点の効き目のほうがはるかに大きくなります。
出典が添えられていると、社員の側が答えを検算できます。文書名を見て「それは去年の規程だ」と気づけるからです。逆に、出典の無い答えは、内容が正しくても確かめようがありません。確かめられない答えは、正しくても組織の中では使えません。
そのうえで、参照できる文書が見つからないときに一般的な知識で埋めさせない設定にします。ここを緩めると、社内の窓口が世間一般の説明を返すようになり、自社の規程と食い違う答えが、最も信用されやすい場所から出ます。外部の一般論なら社員は疑いますが、社内の窓口から出た一般論は疑われません。
運用の中では、出典なしで返した件数を毎週数えます。0件が正常です。1件でも出たら設定を見直します。この数字は精度を測る指標ではなく、設計が守られているかを測る指標なので、担当者の力量の評価には使いません。
大きな改定と障害のときは、窓口を止める
運用が続くかどうかを分けるのは、平常時ではなく異常時の設計です。止める条件を先に決めておくと、慌てて全部を停止する判断をせずに済みます。止める場面は2つあります。参照している規程の大きな改定と、全社に及ぶ障害です。
規程の大改定では、旧版と新版が数日から数週間のあいだ同時に存在します。この期間に一次受けを動かし続けると、改定前の手順が案内され、申請の差し戻しが増えます。改定の公示日から新版の反映が終わるまでは、その分野の質問だけを人へ回す設定にします。全体を止める必要はありません。止める単位は窓口ではなく話題です。
全社障害の場面は逆で、窓口そのものを一時的に止めます。障害の最中は「つながらない」「開かない」という質問が集中しますが、個人の設定の問題として手順を案内すると、社員は不要な操作を試して状況を悪化させます。障害の告知を出したら、一次受けはその告知だけを返す状態に切り替えるのが安全です。
止める判断を誰が下すかも決めます。運用の責任者が不在のときに止まらない設計は、休日の障害で必ず問題になります。代理を含めて2名以上を指名し、止め方の手順を1枚にしておきます。止められる仕組みは、止まらない仕組みより信頼されます。
最初の90日でやること
最後に、着手から90日の進め方を並べます。順番は工程1から5に対応していますが、実務では文書の整備と試験運用が重なります。重ねてよい部分と、重ねてはいけない部分を分けて書きます。
直近3か月の問い合わせを文面のまま集め、件数順に上位50件を出します。記録が無い場合は2週間の手集計で代替します。ここで範囲を50件に絞り切ることが、後の工程の速度を決めます。
50件それぞれに根拠となる文書を紐づけ、重複する版を1つに寄せ、更新の責任者を人名で決めます。持ち主が決まらない文書は参照対象から外します。棚卸しと並行して進めて構いません。
判断が要るかどうかで除外の線を引き、紙1枚にまとめて部門長の合意を取ります。ここは文書整備と重ねません。合意の前に公開すると、後から範囲を狭める作業が発生します。
受け付ける範囲を絞ったまま、1部門だけに公開します。既存のチャットや依頼フォームの手前に置き、新しい入口は作りません。この期間は空振りの一覧を週1回読むことに集中します。
一次受けだけで終わった割合、再質問の割合、空振りの一覧を見て、範囲を広げるか文書の整備を続けるかを決めます。数字が伸びない原因が置き場所にある場合は、範囲を広げても改善しません。
90日を過ぎたら、月に1回の見直しに切り替えます。見直しで扱うのは、空振りの上位10件と、答えさせない範囲に増減があるかの2点だけです。議題を2つに固定すると、運用の会議が続きます。
よくある質問
社内の文書が整っていなくても始められますか
始められますが、範囲を極端に狭めてください。整っている文書が3本しか無いなら、その3本で答えられる質問だけを受け付けます。文書が無いまま範囲を広げると、答えの根拠が外部の一般論になり、自社の規程と食い違う回答が出ます。狭く始めて空振りの一覧から広げるのが、結果的に最短です。
情報システム部門の人員は減らせますか
短期では減らせないと考えたほうが安全です。公開されている事例で示されているのは、問い合わせ対応の工数が3割前後下がるという水準で、人員の削減ではありません。空いた時間を何に使うかを先に決めておかないと、別の割り込みで埋まって効果が見えなくなります。
答えが間違っていたときの責任はどう扱いますか
答えに参照元の文書名を必ず添える設計にしたうえで、最終的な判断は文書と担当者にあると窓口に明記します。そのうえで、判断が要る質問は工程3で除外しておきます。除外の線を引かずに免責の文言だけ置く運用は、社員から見ると責任の押し付けに見えるため、信用を落とします。
全社に一度に公開したほうが早いのではないですか
1部門から始めるほうが結果的に早くなります。全社公開では、答えられない質問が最初の週に大量に集まり、その処理で担当が埋まります。1部門なら空振りの一覧を読み切れるので、文書の整備が実需の順番で進みます。範囲を広げる判断も、数字を見てから下せます。
どのくらいの費用感を見ておけばよいですか
金額は契約の形で大きく変わるため断定を避けますが、見積もりの立て方は共通です。道具の費用より、工程2の文書整備にかかる人の時間のほうが大きくなります。上位50件に紐づく文書の本数を数え、1本あたりの整理時間を掛けて見積もると、実際の負担に近い数字が出ます。
まとめ
社内の問い合わせをAIに一次受けさせる取り組みは、賢い受け答えを作る仕事ではなく、受ける範囲と受けない範囲を決める仕事です。上位50件で範囲を切り、根拠になる文書に持ち主を付け、判断が要るものを外し、人に回す線と戻し方を決め、空振りと再質問で測る。この5つを順番に置けば、公開後に迷う場面はほとんど残りません。そして最後に効くのは置き場所です。社員が既に開いている画面の手前に差し込めているかを、公開前にもう一度確かめてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
