NIST AI RMFとは?|枠組みを実務に当てる

米国の標準化機関が公表したAIのリスク管理の枠組みは、4つのはたらきの下に19の区分と72の細目が並ぶ文書です。2023年1月26日に公表され、任意で使うものとされています。「読み通しました。ただ、自社の何に当てるのかが分かりません」「認証を取る規格とどう違うのかを社内に説明できません」——枠組みを調べ始めた部署から出てくる声です。項目の多さが原因ではありません。本当は、この文書が答えではなく、決めるべきことの並べ方を渡すものだからです。この記事では、4つのはたらきが何を指すのか、どこから着手するのか、生成AI向けの補足文書や国際規格、国内の指針とどう併せるのかを整理します。
カメ先生リスク管理の枠組みって、守るべき項目の一覧だと思われがちなんだけど、本当は「何を決めていないかを見つけるための並べ方」なんだ。
カメ子上から順に埋めていく使い方ではないんですね。
カメ先生埋めようとすると、まず統治のところで止まる。誰が決めるのかが決まっていないと、その先は書けないからね。
カメ子止まった場所が、そのまま次にやることになるということですか。
- 4つのはたらきは統治・特定・測定・管理。統治は他の3つを貫くもので、順番に並ぶ工程ではない
- 認証の制度がないので、当てはめても第三者が保証してくれるものはない。担保が要るなら別の規格を併せる
- 実務では72の細目を全部追わず、自社の用途に絞って書き直す。それが正しい使い方として想定されている
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数で見る:4つのはたらき、19の区分、72の細目
最初に構造を数で押さえます。統治が6区分21細目、特定が5区分16細目、測定が4区分24細目、管理が4区分11細目。合わせて19区分72細目です。この偏りが読み方を教えてくれます。細目が最も多いのは測定の24で、最も少ないのは管理の11です。つまりこの文書がいちばん字数を割いているのは、手を打つ部分ではなく、測って見えるようにする部分です。
管理の細目が少ない理由も推測がつきます。何をどう直すかは事業と用途に依存するため、共通の文書には書けません。逆に、測る対象と測り方は共通化できます。だから実務でこの枠組みを使うと、先に「見えていない」ことが分かり、次に「決めていない」ことが分かるという順で効きます。対策の具体を期待して読むと物足りなく感じますが、それは文書の役割ではありません。
併せて公開されているものも押さえます。細目ごとの実施のヒントを集めた手引き、今後の課題を示した道筋の文書、そして他の規格や指針との対応づけの表です。実務でいちばん使うのは手引きです。細目の文だけを読んでも何をすればよいか分からない場面が多く、手引きに例が並んでいます。本体だけを読んで難しいと判断する前に、手引きと対応づけの表を開くのが早道です。
- 本体:4つのはたらきと19区分72細目。決めるべきことだけが書かれ、やり方は書かれていない
- 手引き:細目ごとに推奨される行動を並べた文書。1つの細目に複数の行動が示される
- 対応づけの表:他の規格や指針との対応関係を示す文書。認証を目指す場合の下敷きになる
- 道筋の文書:今後の課題を示したもの。実務では優先度が低い
手引きの使い方には順番があります。細目の文を読んで自社で何をすべきか分からなかったものだけを、手引きで引きます。手引きを最初から通読すると、推奨される行動の数が多すぎて着手できません。細目を目次として使い、詰まったところだけ手引きを開く。この順で読むと、1つの用途あたり半日から1日で当たりが付きます。
この枠組みは何を求めているのか。認証ではないということ
位置づけを正確に押さえます。公表元の説明では、この枠組みは任意で使うものであり、AIの製品・サービス・システムの設計、開発、利用、評価に、信頼できるかどうかの考慮を組み込む能力を高めるためのものとされています。合意にもとづく、開かれた、透明で協働的な過程で作られたとも書かれています。
ここから2つの帰結が出ます。1つは、当てはめても第三者が保証してくれるものは何もないということ。認証の制度も、罰則もありません。取引先から求められる証明の代わりにはなりません。もう1つは、どうやるかが書かれていないということです。何を決めるべきかだけが並んでいます。だから読んだあとに残る作業は、自社の言葉で決めて書くことです。
この性質は弱点ではなく、使い道を規定しています。社内の規程を作るときの目次として使う、抜けを点検する物差しとして使う、部門間で用語を揃える辞書として使う。いずれも「自社の文書を作るための材料」です。この枠組みを導入するという言い方自体が、実務では成り立ちません。導入するものは自社の規程であり、枠組みはその材料です。
はたらき1:統治。他の3つを貫くもの
統治は、AIを設計・開発・導入・評価・調達する組織の中に、リスク管理の文化を育てて実行することと説明されています。もう1つ重要な記述があります。統治は横断的なはたらきであり、リスク管理の全体に行き渡り、他のはたらきを可能にするものだとされています。つまり4つは順番に並ぶ工程ではありません。統治は残りの3つの下敷きです。
実務で最初に止まるのはここです。用途を書き出す前に、誰が決めるのかが決まっていません。判断が必要になったとき、情報システム部門に回すのか、法務に回すのか、事業部門が決めるのか。決まっていないと、特定のはたらきで作った台帳が誰の管理下にも入りません。統治で止まったことは失敗ではなく、最初の成果です。止まった場所が、次に決めることを教えています。
置くものは大がかりでなくて構いません。決める人を役職名ではなく名前で1人、判断を持ち込む先を1つ、判断の記録を残す場所を1つ。兼務でよいので、誰の名前で決まっているかを空欄にしないことが条件です。あわせて、外部から声が届いたときの受け方を決めます。窓口の挙動について社外から報告が来る経路がないと、統治の記録に外の情報が入りません。
はたらき2:特定。どこで何に使っているかを書き出す
特定は、AIの意図した目的、能力、リスク、影響を、多様な立場から文脈として押さえるはたらきです。区分5つ、細目16。実務での中身は台帳づくりです。どの部門が、どの業務で、何を入れて、何を出させているか。ここが埋まっていないと、測ることも管理することもできません。
落とし穴は決まっています。台帳が導入した道具の一覧になることです。道具の名前を並べても、リスクの所在は見えません。同じ道具が、社内向けの下書きと社外向けの回答の両方に使われていれば、危うさは別物です。だから数える単位は用途にします。マーケ部門なら、記事の下書き、広告文の案出し、名簿の整理、問い合わせの一次対応、商談の記録の要約。用途ごとに1行です。
もう1つの落とし穴は、把握していない利用が抜けることです。部門が個別に契約した道具、個人の判断で使っている無料の道具。ここを責める形で調べると隠れます。申告した利用は正規の扱いにすると先に決めてから調べると、台帳の網羅性が上がります。特定のはたらきは、正確さより網羅性を先に取るほうが実務に合います。
はたらき3:測定。信頼できるを7つに割る
測定は、量的・質的・その両方の道具や手法を使って、AIのリスクとその影響を分析し、評価し、比較し、監視するはたらきです。区分4つ、細目24。細目がいちばん多いはたらきです。ここで使う物差しとして、枠組みは信頼できるAIの特性を7つ挙げています。
7つは、妥当で信頼できること、安全であること、安全性が保たれ回復できること、説明責任があり透明であること、説明可能で解釈できること、プライバシーが強化されていること、公平で有害な偏りが管理されていることです。この7つは同時に最大化できません。枠組み自身がそう書いています。両立しない場合の扱いは判断の文脈を踏まえる必要があり、関係する文脈での価値観に依存し、透明で正当化できる形で解決されるべきだとされています。
実務に落とすと、優先順位を文書に残すという作業になります。社外向けの窓口なら、説明可能であることより先に安全であることを取る。社内の分析なら、プライバシーの扱いを先に取る。用途ごとに順位が変わります。測れないものは測れないと書いて残すこと自体が、この枠組みの求めているやり方です。空欄のまま進めるのと、測れないと書いて理由を添えるのは、後から見て別物です。
責任の所在についての記述も押さえておきます。枠組みは、そのAIがある文脈や目的にふさわしい道具なのか、必要な道具なのか、どう責任を持って使うのかを決めるのは、関わるすべての当事者の共同の責任だと書いています。使うかどうかを決めることも、測定の一部です。使わない判断を記録に残せる形にしておかないと、導入の是非が検討されなかったように見えます。
はたらき4:管理。優先順位をつけて手を打つ
管理は、特定されたリスクに対して資源を割り当て、対応の計画と復旧の手立てを用意し、動かしたあとも継続して監視するはたらきです。区分4つ、細目11。細目が最も少ないのは、やり方が事業ごとに違うためです。共通の文書に書けるのは、決める枠だけです。
実務で置くものは3つに集約できます。止める判断を誰がどの基準で下すか。止めたあとに業務を回す代替の手順。そして、社内と社外への連絡の順番です。止める判断の基準が数字で書かれていない計画は、実際には止まりません。誤りが何件出たら止めるのか、どの種類の誤りは1件でも止めるのか。ここを数と種類で書きます。
継続の監視は、測定で決めた物差しを日常の運用に置く作業です。ここで多いのは、測る仕組みを作ったのに見る人がいない状態です。見る人を決め、見る頻度を決め、閾値を超えたときに誰に上げるかを決める。管理のはたらきは、新しい作業を増やすのではなく、既存の会議に議題を1つ足す形で始めると定着します。
生成AI向けの補足文書:2024年7月に足された12の危うさ
生成AIについては、別の文書が出ています。2024年7月26日に公表された補足文書で、大統領令に応じて作られました。位置づけは用途別の当てはめ例です。本体を置き換えるものではなく、4つのはたらきに対して、生成AIに特有の危うさを掛け合わせて、推奨される行動を並べた文書です。
挙げられている危うさは12あります。危険物に関する情報、もっともらしい誤りを作ること、データのプライバシー、データの出どころ、有害な偏りと表現の均質化、人とAIの組み合わせ方、情報の信頼性、情報セキュリティ、知的財産、わいせつまたは虐待的な内容、透明性と文書化、取引網と部品の組み合わせです。
マーケ部門の実務で先に効くのは、この12のうち5つです。もっともらしい誤り、データの出どころ、知的財産、情報の信頼性、取引網。記事や広告文を作らせる用途では、この5つがそのまま点検項目になります。出典のない数字、権利の確認が取れていない素材、外部の委託先が使っているAIの扱い。12を全部追う必要はありません。用途から見て関係する区分だけを取り出すのが、補足文書の想定された使い方です。
実務に当てる5工程
ここまでを着手の順番にします。72の細目を上から追うのではなく、統治から入って用途で絞る形にします。1周目は2週間から1か月で回し、抜けを埋めるのは2周目以降に回します。
部門ごとに、道具ではなく用途で1行ずつ書き出します。入れているもの、出させているもの、出力を誰が使うかを添えます。網羅性を先に取り、正確さは後で直します。
統治のはたらきから入ります。判断を持ち込む先を1つ、決める人を名前で1人、記録を残す場所を1つ。兼務で構いませんが空欄にしません。
すべての用途に7つを当てません。社外に出るか、個人の情報を扱うか、判断に使うか。この3つで用途を並べ、上位のものから7つの特性のうち2つか3つを選びます。
選んだ特性について、何を測るか、どこに記録を残すか、誰がいつ見るかを決めます。測れないものは測れないと書き、理由を添えて残します。
細目の文をそのまま貼らず、自社の部門名と業務名で書き直します。これが2周目以降の点検の物差しになります。
この5工程で意図的に外しているのは、全体像を先に完成させることです。用途の台帳が完璧になるのを待つと、着手が半年遅れます。1周目は網羅性が7割でも回します。理由は、回してみると台帳の抜けが自然に出てくるためです。工程3で用途を並べた時点で、抜けている用途は「並べようとして無いことに気づく」形で見つかります。
国際規格と国内の指針と、この枠組みの役割の違い
併用の形を1枚にします。この枠組みだけでは足りない場面があり、足りない部分を埋めるのが他の文書です。見るべきは第三者の証明が出るかどうかと、法令とのつながりです。
| 文書 | 何をするもの | 出したところと時期 | 第三者の証明 | 実務での使いどころ |
|---|---|---|---|---|
| AIのリスク管理の枠組み | 決めるべきことを並べる。やり方は書かない | 米国の標準化機関、2023年1月26日 | 出ない。任意で使うもの | 自社の規程の目次と、抜けの点検 |
| AIの管理の仕組みを定めた国際規格 | 管理の仕組みの要求事項を定める | 国際標準化の機関、2023年12月 | 認証が取れる | 取引先や入札で証明を求められる場面 |
| 国内の指針 | 望ましい行動の考え方を主体別に整理する | 総務省と経済産業省、第1.2版は2026年3月31日 | 出ない。法的拘束力もない | 国内での説明責任と、社内の規程の下敷き |
| 国内の法律と関連する指針 | 推進の枠組みと適正性の考え方を定める | 法律は2025年6月公布、2025年9月全面施行 | 証明ではないが遵守の対象 | 自社の対応が制度の求めに沿っているかの確認 |
表の読み方は1つです。証明が要るなら国際規格、説明が要るなら国内の指針、社内で決めるべきことを洗い出すならこの枠組み。目的が違う3つを、どれか1つで済ませようとすると空回りします。実務では、国内の指針を軸に置き、細かい決め事の内訳としてこの枠組みの細目を使い、証明が必要になった段階で国際規格の認証を検討する順になります。
併用の手間を減らす仕掛けも用意されています。枠組みを出した機関は、他の規格や指針との対応づけの文書を公開しており、細目と規格の条項を突き合わせられる形になっています。先に枠組みで洗い出しておくと、認証に進むときの二重作業が減ります。逆の順番、つまり認証の準備から入って後で枠組みを当てると、要求事項に無い決め事が抜け落ちます。認証の要求は仕組みの側に寄っているため、用途ごとの判断は枠組みの側からしか出てきません。
国内の制度の現在地:日付で押さえる
国内の状況は日付で押さえるのが確実です。総務省と経済産業省が出している指針は、初版が2024年4月、第1.1版が2025年3月28日、第1.2版が2026年3月31日に公表されています。1年ごとに改定されているので、社内文書に版数と日付を書いておかないと、どの版に対応したのか分からなくなります。
指針の構造も押さえます。共通の指針は、人間中心を先頭に10項目が並びます。安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ、教育とリテラシー、公正競争確保、イノベーションです。対象は開発者・提供者・利用者の3主体に分かれており、第1.2版では同一の事業者が複数の主体を兼ねる場合が明示されました。あわせて、AIエージェントとフィジカルAIの定義が本編に追加されています。
法律の側も動いています。AIの研究開発と活用の推進に関する法律は2025年6月に公布され、2025年9月に全面施行されました。罰則を置かない推進型の法律です。この法律の第13条にもとづく適正性の確保についての指針は、2025年12月19日に政府の本部で決定されています。指針は法的拘束力を持たないが、争いになったときの参照の基準として働くという理解が実務では要点です。
この適正性の指針の構造も押さえておくと、社内の説明が楽になります。基本的な考え方、研究開発を行う機関と活用する事業者が特に取り組むべき事項、国と地方公共団体が特に取り組むべき事項、国民が特に取り組むべき事項という並びです。企業が読むべきは2番目で、取り組むべき事項が5項目に整理されています。注目したいのは、その5項目が国際的な規範や、AIの管理の仕組みを定めた国際規格を活用しつつ取り組むものとして書かれている点です。国内の制度が海外の枠組みを前提に組まれているため、国内向けと海外向けで別の文書を作る必要はありません。
セキュリティの側は別の文書として進んでいます。この枠組みを出したのと同じ機関が、2025年8月14日に、AIを守るための管理策の重ね合わせについての構想文書を公表しました。生成AI、予測を行うAI、単体および複数のエージェント、開発者向けの5つの用途について作る計画で、最初の議論用の草案は2026年1月8日に出ています。リスク管理の枠組みとセキュリティの管理策は別の文書として進んでいるので、片方だけを読んで揃ったと考えないでください。
自社向けに書き直すという使い方
この枠組みには、用途や部門に絞って当てはめた版を作るという使い方が想定されています。生成AI向けの補足文書がまさにその形で、本体の4つのはたらきに対して生成AI特有の12区分を掛け合わせた文書になっています。同じことを自社の用途で行うのが、実務での本筋の使い方です。
作り方は3手です。第1に、自社の用途を3つから5つの区分にまとめます。社外に出る文章、社内向けの下書き、名簿と個人の情報を扱うもの、判断の材料にするもの。第2に、区分ごとに4つのはたらきの細目から、自社で決めることがある細目だけを抜きます。第3に、抜いた細目に対して決めた内容を書き込みます。項目の数は用途あたり15から25で足ります。72を全部書き写す必要はありません。
この形にすると、更新が回るようになります。細目を全部並べた文書は、1年後に誰も開きません。用途ごとに20項目なら、担当者が読み返せます。維持できる分量に落とすことが、枠組みを使い続けられるかどうかを決めます。分量を削る判断も、統治のはたらきの一部です。
よく取り違えられる4つの言葉
社内の議論が空回りするのは、言葉が揃っていない場面が多いためです。この枠組みを読む前に、4組を分けておきます。分ける基準は、第三者が関与するかどうかと、対象が仕組みか結果かです。
枠組みと規格
枠組みは決めるべきことの並べ方で、やり方は書かれていません。認証も出ません。規格は要求事項が書かれ、満たしているかを第三者が確認して認証を出します。社内の議論で「認証を取りたい」という要望が出た場合、必要なのは規格の側です。枠組みを当てはめる作業は、その準備として役に立ちますが、代わりにはなりません。
リスク管理と品質管理
品質管理は、出したものが決めた水準に達しているかを見ます。リスク管理は、水準に達しないことが起きたときの影響と可能性を見ます。生成AIでは出力が毎回変わるため、品質管理だけでは足りません。誤りが出る前提で、誤りが出たときに何が起きるかを分けるのがリスク管理です。
影響評価とリスク評価
影響評価は、その利用が人や社会に何をもたらすかを見ます。リスク評価は、自社にとっての損害の大きさと起きやすさを見ます。前者は外を向き、後者は内を向きます。両方が必要で、片方だけだと判断が偏ります。この枠組みは特定のはたらきで前者を、測定のはたらきで後者に近い作業を扱っています。
統治と体制
体制は誰がどの役割を持つかという配置です。統治は、決め方と記録の残し方を含む仕組み全体です。組織図を書いた時点で統治ができたと考えると、判断の記録が残りません。統治の実体は、判断が記録に残っているかどうかで測れます。
当てはめが空回りする4つの型
最後に、実務で見られる失敗の型を挙げます。どれも枠組みの読み方の問題ではなく、使い方の設計の問題です。着手前にこの4つを避ける前提を置くだけで、1周目が終わる確率が上がります。
- 72の細目を上から埋めようとして、統治の最初の数項目で止まる。用途を絞ってから細目を選ぶ
- 台帳を導入した道具の数で作る。用途で数えないとリスクの所在が見えない
- 測れる指標だけを追い、測れない項目を空欄のまま残す。測れないと書いて理由を添える
- 文書を作って完了とする。見る人と頻度を決めていないと、翌年には開かれない
- 枠組みを当てはめたことを取引先への証明として説明する。証明は出ないので別の手段が要る
この5つのうち、最も費用が大きいのは3つ目です。測れる指標だけを追うと、測りやすい項目に努力が集まり、肝心の危うさが手つかずで残ります。誤りの件数は測れますが、その誤りが読者に与える影響は測りにくい。測りにくい側を空欄にしないために、理由つきで残す欄を最初から設けておきます。
認証ではないので担保されないこと
担保されないことを具体で挙げます。第1に、取引先から届く確認票には答えられません。認証番号を書く欄が空欄になります。第2に、監査で示す証拠にはなりません。当てはめた文書は自社が作ったものなので、記録と突き合わせられる形にしておく必要があります。第3に、事故が起きたときの免責にはなりません。
では何が得られるのかというと、3つです。決めるべきことの抜けが分かること、部門間で用語が揃うこと、そして説明の順番が作れることです。3つ目は決裁の場で効きます。何を測っていて、何を測れていないかを順番に説明できると、判断が早くなります。逆に言えば、この3つ以上を期待すると失望します。
併用の判断はこうなります。取引先や入札で証明を求められるなら、認証の取れる国際規格に進みます。国内での説明責任を整えるなら、国内の指針を軸にします。この枠組みは、その両方の下敷きとして自社の決め事を洗い出す道具として使います。枠組みは目的ではなく、規程を書くための材料です。
着手前のチェックリスト
1周目に入る前の確認事項です。ここが埋まっていないと、途中で止まります。埋まっていない項目があれば、それを先に決めるのが着手の中身になります。
- この枠組みに認証がないことを、決裁者と共有してある
- 証明が必要になる場面があるかを確認し、必要なら別の規格の検討を並行させている
- 用途の台帳を、道具ではなく用途の単位で作る方針にしてある
- 判断を持ち込む先と、決める人の名前が決まっている
- 決めた判断を記録する場所が1つに決まっている
- 7つの特性のうち、用途ごとに何を先に取るかの順位を書く欄がある
- 測れない項目を、理由つきで残す欄を用意してある
- 生成AIを使う用途については、補足文書の12区分から関係するものを選んである
- 国内の指針の版数と公表日を、自社文書に書いてある
- 作った文書を見る人と頻度が決まっている
- 1周目の期間を決めてあり、網羅性が足りないまま回す前提を共有している
この一覧で抜けやすいのは、最後の項目です。完成してから回す前提で始めた取り組みは、たいてい1周目が終わりません。網羅性が7割でも回すと決めておくと、抜けが実務の中で見つかります。回してから直すという順番を、着手の時点で合意しておいてください。
まとめ
米国の標準化機関が2023年1月26日に公表したAIのリスク管理の枠組みは、統治・特定・測定・管理の4つのはたらきに19の区分と72の細目が並ぶ文書です。統治は他の3つを貫くもので、実務では最初にここで止まります。止まった場所が次に決めることです。認証の制度はないので、証明が必要なら認証の取れる国際規格を、国内での説明責任には総務省と経済産業省の指針を併せます。着手は用途の書き出しから始め、7つの特性を全部当てるのではなく用途ごとに2つか3つに絞り、測れないものは理由つきで残します。72の細目を全部書き写すのではなく、用途あたり15から25項目に落として自社の言葉で書き直す。維持できる分量にすることが、使い続けられるかどうかを決めます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
