Media > AI活用ユースケース > 法務 > 損害保険会社のコンプライアンス部門で、金融庁と業界団体の公表資料をエージェントが毎週見回り、自社の業務に関わるものを要約して担当部署へ回す

損害保険会社のコンプライアンス部門で、金融庁と業界団体の公表資料をエージェントが毎週見回り、自社の業務に関わるものを要約して担当部署へ回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

金融庁の新着情報と日本損害保険協会のニュースリリースを毎日集めておき、週に1回エージェントに読ませます。自社の業務に関わるものを見分け、要約と関わる部署の案を付けて、確認のうえ担当部署へ回します。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
保険/金融
対象部門
法務
対象業務
情報検索/要約
主な課題
人手が足りない/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
エージェント
主な効果
対応スピード向上/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
12h/月
AI導入後
4h/月
想定削減
67%
年間削減
96h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が、毎日を目安に金融庁の新着情報と協会のニュースリリースの一覧を開き、前回見たものの後に載ったものを探す
  2. 新しいものを開き、本文と別紙を読む
  3. 自社のどの業務に関わるかを見分ける
  4. 関わるものについて、要点・施行日や意見募集の締切・確かめてほしいことをメモにまとめる
  5. 関係する部署の担当者に、メモと原文のリンクをメールで送る
  6. 部署から返事が無いものは、しばらくして問い合わせる
導入後(After)
  1. 自動毎日8時に n8n の Schedule Trigger が動き、金融庁の新着情報の RSS と協会のニュースリリースの一覧を取得する
  2. 自動台帳に無い URL だけを、新しい公表資料として「未判定」で書き込む
  3. 自動毎週月曜の8時30分に、未判定の公表資料をまとめてエージェントに渡す
  4. 自動エージェントが1件ごとに、題名で見分けられるかを判断し、要るものは本文のページと別紙を取りに行く
  5. 自動エージェントが、部署と所管業務の一覧に照らして、関わりの有無・要約・関わる部署・期日の記載を返す
  6. 人コンプライアンス統括部の担当者が、判定と要約を一覧で確かめ、直してから回付を承認する
  7. 自動関わる部署の担当者に要約と原文のリンクをメールで送り、「確認した」「当部署には関係なし」の返事を待つ
  8. 自動返事の無いものを、翌週の一覧の先頭で担当者に知らせる
  9. 人担当者が、返事の無い部署に声をかける
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が、毎日を目安に金融庁の新着情報と協会のニュースリリースの一覧を開き、前回見たものの後に載ったものを探す
  2. 新しいものを開き、本文と別紙を読む
  3. 自社のどの業務に関わるかを見分ける
  4. 関わるものについて、要点・施行日や意見募集の締切・確かめてほしいことをメモにまとめる
  5. 関係する部署の担当者に、メモと原文のリンクをメールで送る
  6. 部署から返事が無いものは、しばらくして問い合わせる

(a)新着が多い週に確認が後回しになる。 担当者は社内の研修や規程の改定も持っています。月末と四半期末は一覧を開く時間が取れず、数日分をまとめて見ることになります。

(b)関わるかどうかの見分けに時間がかかる。 「〜の一部改正(案)の公表について」としか書かれていないものは、別紙を開くまでどの業態に関わるかが分かりません。

(c)他社への行政処分の扱いが人によって違う。 処分の理由は、自社の募集や管理の体制に当てはまらないかを確かめる材料になります。 回すか、どこに回すかが担当者によって違います。

(d)回した後が追えない。 メールを送ったところで仕事が終わり、部署が読んだかどうかは、意見募集の締切が過ぎてから分かることがあります。

  1. 【自動】 毎日8時に n8n の Schedule Trigger が動き、金融庁の新着情報の RSS と協会のニュースリリースの一覧を取得する
  2. 【自動】 台帳に無い URL だけを、新しい公表資料として「未判定」で書き込む
  3. 【自動】 毎週月曜の8時30分に、未判定の公表資料をまとめてエージェントに渡す
  4. 【自動】 エージェントが1件ごとに、題名で見分けられるかを判断し、要るものは本文のページと別紙を取りに行く
  5. 【自動】 エージェントが、部署と所管業務の一覧に照らして、関わりの有無・要約・関わる部署・期日の記載を返す
  6. 【人】 コンプライアンス統括部の担当者が、判定と要約を一覧で確かめ、直してから回付を承認する
  7. 【自動】 関わる部署の担当者に要約と原文のリンクをメールで送り、「確認した」「当部署には関係なし」の返事を待つ
  8. 【自動】 返事の無いものを、翌週の一覧の先頭で担当者に知らせる
  9. 【人】 担当者が、返事の無い部署に声をかける

6番目が、この設計の分かれ目です。 エージェントの判定をそのまま部署に流すと、「関わらない」と誤って判定された資料は、誰の目にも触れずに消えます。 担当者は、関わると判定されたものだけでなく、関わらないと判定されたものの題名も一覧で流し見ます。

7番目で「当部署には関係なし」の返事を用意しているのは、外れた回付を黙って読み流させず、担当者が回し先を直せるようにするためです。

02今回想定するシステム構成

構成図
【トリガー①】毎日 8:00(Schedule Trigger)
   ▼
n8n
   ├─ RSS Read ── 金融庁 新着情報RSS
   ├─ HTTP Request + HTML ── 日本損害保険協会 協会ニュースリリースの一覧
   ├─ Data Table ── URL で台帳と照らし、新しいものを「未判定」で追加

【トリガー②】毎週月曜 8:30(Schedule Trigger)
   ▼
AI Agent(Tools Agent)+ Anthropic Chat Model
   │   ツール:本文の取得(サブワークフロー:HTTP Request + HTML)
   │           別紙の取得(サブワークフロー:HTTP Request + Extract From File)
   │   入力:部署と所管業務の一覧
   │   出力:Structured Output Parser で決めた形
   ▼
Data Table(公表資料×部署の台帳)
   ▼
【コンプライアンス統括部が確かめて承認】
   ▼
Microsoft Outlook(Send and Wait for Response)── 部署へ要約と原文のリンク
   ▼
返事の記録 → 翌週の一覧で未返信を担当者へ
役割想定する製品代替候補
ワークフローn8nMake、Power Automate
生成AIClaude(n8n の Anthropic Chat Model ノード)OpenAI API
保管n8n の Data Table(公表資料の台帳、公表資料×部署の台帳)スプレッドシート
メールMicrosoft Outlook(n8n の Microsoft Outlook ノード)Gmail

新しく足すのは n8n と、2つの台帳です。 部署と所管業務の一覧と Outlook は今あるものを使います。

監視の対象は2つです。 1つは金融庁の新着情報RSS(Ver.2.0)です。金融庁のRSSのページでは、新着情報と調達情報の2つの RSS を提供しているとされています。もう1つは、日本損害保険協会の協会ニュースリリースの一覧ページで、日付と題名が新しい順に並んでいます。協会のページに RSS は見当たらないため、一覧のページを取りに行きます。

金融庁の RSS は、題名とリンクと日付だけです。 確認した時点の RSS では、各項目の説明(description)が空でした。題名は「〜について公表しました。」の形で、中身はリンク先を開かないと分かりません。 リンクの URL には /news/r8/hoken/ のように分野を表す部分があり、エージェントへの手がかりとして渡します。

金融庁のコンテンツは、公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した条件で利用できます。 金融庁のウェブサイト利用ルールでは、利用するときは出典を記載すること、編集・加工したときはそのことを記載し、国が作成したかのような態様で公表・利用しないことが求められています。部署への要約は加工にあたるため、回付のメールに出典と「コンプライアンス統括部が要約したもの」である旨を入れます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

トリガーは2つに分けます。 収集は Schedule Trigger で毎日8時、エージェントの判定は 毎週月曜の8時30分です。公式ページでは、Schedule Trigger は秒・分・時間・日・週・月の間隔か cron の式で動く時刻を決められ、ワークフローを保存して公開しないと動かないとされています。

収集を毎日にするのは、RSS が短いからです。 確認した時点の金融庁の新着情報RSSは15件で、最も古いものと新しいものの間は5日ほどでした。週に1回だけ取りに行くと、新着の多い週は古いものが RSS から外れた後になります。 毎日取りに行って台帳に積んでおけば、取りこぼしません。

判定を週に1回にするのは、人の確認をまとめるためです。 毎日エージェントを動かすと、担当者の確認も毎日発生します。意見募集の締切は公表から数週間先に置かれることが多く、週1回の回付で間に合います。 ただし、題名に「意見募集」「行政処分」を含むものは、収集の段で担当者に即日の通知を出します。

タイムゾーンは、自分でサーバーに置く場合の既定が America/New York とされています。ワークフローの設定で Asia/Tokyo を選びます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
新着情報RSS題名、リンク、公表の日時金融庁
協会ニュースリリースの一覧日付、題名、リンク(PDFのことが多い)日本損害保険協会
本文のページ公表資料の本文と、別紙へのリンク各リンク先
別紙新旧対照表、意見募集の要領、資料のPDF本文のページのリンク先
部署と所管業務の一覧部署、所管する業務(商品・募集・代理店管理・保険金の支払い・顧客情報・苦情など)、扱う保険種目、回付先のメールアドレス社内の一覧(Data Table に写す)
公表資料の台帳URL、題名、取得日、出どころ、状態(未判定・判定済み・回付済み)Data Table

質を決めるのは、部署と所管業務の一覧です。 「代理店の業務品質の評価」についての資料は、代理店を管理する営業推進部と、評価の仕組みを持つ部署に関わります。部署の名前だけを渡すと、エージェントは名前の字面で回し先を選びます。所管する業務を具体的に書いておくほど、回し先が当たります。

他社への行政処分は、「処分の理由」を読むものとして扱います。 一覧の所管業務に「募集管理」「営業職員の管理」のような項目があれば、エージェントは処分の理由に書かれた問題と照らせます。

Step3

データの取得方法を決める

金融庁の新着情報は RSS Read ノードで取ります。 公式ページでは、RSS Read ノードはインターネットに公開された RSS フィードを読むノードで、URL を指定します。取得した項目のリンクを、台帳のキーにします。

協会のニュースリリースは、HTTP Request ノードで一覧のページを取り、HTML ノードの「Extract HTML Content」で取り出します。 公式ページでは、HTML ノードは CSS セレクターで要素を探し、属性・HTML・文字・値のいずれかを返し、複数の値を配列で返す設定があるとされています。

取るもの返す値何に使うか
日付一覧の各行の日付の文字台帳への記録と並べ替え
題名リンク要素の文字エージェントの最初の手がかり
リンク同じ要素の href 属性台帳のキーと本文の取得

新しいものの判定は、台帳に無い URL かどうかで行います。 Data Table の「If Row Does Not Exist」で、台帳に無いものだけを残します。

本文と別紙は、エージェントのツールとして用意したサブワークフローで取ります。 本文は HTTP Request でページを取り、HTML ノードで本文の領域の文字と別紙へのリンクを取り出します。別紙は HTTP Request でPDFを取り、Extract From File ノードの「Extract From PDF」で文字にします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. URL を正規化する … 末尾の # 以降を外し、http と https をそろえてから台帳と照らします
  2. 出どころと分野の手がかりを付ける … 金融庁か協会か、金融庁なら URL の分野の部分(hoken、sonota など)を項目として持たせます
  3. 即日の通知を出す … 題名に「意見募集」「行政処分」を含むものは、収集の段で担当者に知らせます
  4. 本文の長さを確かめる … 別紙が数十ページに及ぶものは、目次・冒頭・新旧対照表の該当部分に絞って渡します
  5. 文字が取れないPDFを見分ける … 取り出した文字がほとんど無いものは、画像のPDFとして人に回します
  6. 部署の一覧を短くする … 部署と所管業務・保険種目だけを渡し、メールアドレスはエージェントに渡しません

2番目が、エージェントの読む量を減らします。 URL が国際関係の資料のものなら、題名と合わせて見るだけで、本文を開かずに見分けられることが多くなります。ただし手がかりとして渡すだけで、URL で機械的に外すことはしません。 分野の外に置かれた資料が保険会社に関わることもあるからです。

Step5

AIに処理させる

n8n の AI Agent ノード(Tools Agent)に、公表資料ごとの見分けを任せます。 公式ページでは、Tools Agent はツールの使い方を理解して、どのツールを使うかを課題に応じて決めるとされ、出力の形を決める Output Parser を、書式のためのツールとしてモデルに渡すとされています。対応するチャットモデルに Anthropic Chat Model が含まれ、使えるツールに Call n8n Workflow と HTTP Request が含まれます。

エージェントが決めること中身
どこまで読むか題名で見分けられれば読まない。分からなければ本文、さらに要れば別紙
資料の種類法令・告示の改正、監督指針・ガイドラインの改正、意見募集、行政処分、要請・注意喚起、統計・その他
関わり自社の業務に関わる/関わらない/決められない
関わる部署部署と所管業務の一覧に照らした部署
期日の記載施行日・適用日・意見募集の締切が書かれていれば、その記載と場所
させないこと理由
法令・監督指針の解釈と、自社が満たしているかの判断部署とコンプライアンス統括部、顧問弁護士が決める
期日の計算本文に書かれた日付を写すだけ。書かれていなければ空
部署への直接の送信コンプライアンス統括部の承認を経てから
公表資料以外の情報での補足出典の分からない情報を混ぜない

Max Iterations を小さくします。 公式ページでは、Tools Agent がモデルを動かす回数の上限は既定で10とされています。1件で本文と別紙を読みに行くのは多くても2〜3回なので、上限を小さくして、ツールを呼び続ける暴走を止めます。 Return Intermediate Steps を有効にし、どのツールを何回呼んだかを台帳に残します。

Step6

指示内容を固定する

AI Agent の System Message に、次のように書きます。

あなたは損害保険会社のコンプライアンス統括部の担当として、金融庁と
日本損害保険協会の公表資料を読み、自社のどの部署に関わるかを見分けます。

【入力】
- 公表資料の題名、URL、出どころ(金融庁/協会)、URL の分野の手がかり、公表日
- 部署と所管業務の一覧(部署ID、所管する業務、扱う保険種目)

【進め方】
1. まず題名と URL の手がかりだけで、関わるかどうかを判断できるか考えてください。
2. 判断できない場合だけ、fetch_page ツールで本文のページを読んでください。
3. 本文に別紙があり、別紙を読まないと判断できない場合だけ、fetch_pdf ツールで
   読んでください。1件について、ツールの呼び出しは合わせて3回までです。
4. 関わる場合は、関わる業務を書き出し、部署と所管業務の一覧と照らしてください。
5. 要約は、部署の担当者が読んで「自分の部署で何を確かめるか」が分かる
   300字以内の文にしてください。

【厳守事項】
- 法令や監督指針の解釈、自社が満たしているかの判断は書かないでください。
  「〇〇を確かめてください」の形にしてください。
- 施行日・適用日・意見募集の締切は、本文に書かれた記載だけを写し、
  どこに書かれていたか(本文/別紙の名前とページ)を添えてください。
  書かれていなければ空にしてください。日付を計算しないでください。
- 読んでも関わるかどうか決められないときは、relevance を "unsure" にし、
  理由を書いてください。"none" にしないでください。
- 他社に対する行政処分は、処分の理由に書かれた問題を要約し、
  自社の所管業務のどれと照らすべきかを書いてください。
  他社の名前を要約に書かず、「保険会社に対する行政処分」と書いてください。
- 公表資料と本文・別紙以外の知識で補わないでください。
- 根拠にした本文の一文を evidence にそのまま写してください。

「決められないときは unsure にし、none にしない」が最も大事な一文です。 書いておかないと、エージェントは決めかねた資料を「関わらない」に寄せます。「関わらない」は人の目に最も触れにくい判定なので、迷ったものは人に回る側へ倒します。

「日付を計算しない」も同じ理由です。 「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」と書かれていれば、エージェントは日付を推し量って書きます。推し量った日付は、原文の書き方と並べないと正しいか確かめられません。 原文の記載をそのまま写させます。

他社の名前を書かせないのは、部署に回るのが「自社に当てはまらないかを確かめる材料」だからです。名前は原文のリンクで分かります。

Step7

出力形式を固定する

Structured Output Parser で、次の形に決めます。 公式ページでは、JSON の例から生成するか、JSON Schema で定義するかを選べ、例から生成するとすべての項目が必須として扱われ、JSON Schema の $ref には対応しないとされています。

{
  "url": "",
  "source": "fsa | sonpo",
  "doc_type": "law | guideline | public_comment | enforcement | request | other",
  "relevance": "relevant | none | unsure",
  "business": ["代理店管理"],
  "departments": ["D03"],
  "summary": "",
  "actions": ["〇〇を確かめてください"],
  "date_text": "",
  "date_location": "",
  "evidence": "",
  "read_level": "title | page | attachment",
  "reason": ""
}

1つ目の理由は、relevance で人の確認の順番を決められることです。 unsure、relevant の順に見て、none は題名だけを流します。2つ目は、departments をワークフローが送り先に変えることです。 メールアドレスはワークフローが一覧から引き、エージェントに送り先を決めさせません。 3つ目は、read_level で「どこまで読んで判断したか」が分かることです。

台帳(Data Table)には、公表資料×部署の1行で書き込みます。

列中身
URL・題名・公表日・出どころ収集の段から
部署IDdepartments から1行ずつ
要約・確かめること・期日の記載エージェントの出力(担当者が直した後)
状態未承認 → 回付済み → 確認した / 当部署には関係なし
返事の日時部署の担当者がボタンを押した日時

回付のメールには、要約の末尾に「出典:金融庁ウェブサイト(原文のURL)をもとに、コンプライアンス統括部が要約したものです」と入れます。協会のものは「日本損害保険協会(原文のURL)」とします。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
金融庁の新着情報RSSRSS Read題名・リンク・公表日の取得
協会ニュースリリースの一覧HTTP Request + HTML日付・題名・リンクの取得
本文のページと別紙HTTP Request + HTML / Extract From File本文と別紙の文字の取得(ツールとして)
Anthropic のモデルAnthropic Chat Model ノードエージェントの判断
Data TableData Table ノード公表資料の台帳と、公表資料×部署の台帳
部署の担当者Microsoft Outlook の Send and Wait for Response要約の回付と返事

台帳には n8n の Data Table を使います。 公式ページでは、Data Table は n8n の中に構造化されたデータを持ち、ワークフローをまたいで使えるとされ、行の追加・更新・取得・Upsert のほか、「行が存在するか」「存在しないか」で入力を振り分ける操作があります。収集のワークフローと判定のワークフローで同じ台帳を使います。

部署への回付は、Microsoft Outlook ノードの Send and Wait for Response で送ります。 公式ページでは、この操作はメッセージを送って相手が応じるまで実行を止めるもので、応答の種類に承認・自由記述・独自のフォームがあり、承認では承認だけか承認と不承認の2つのボタンかを選べ、ボタンの文字を変えられるとされています。ボタンを「確認した」「当部署には関係なし」に変えます。 待つ時間の上限(Limit Wait Time)も設定でき、上限を過ぎたら「未返信」として台帳に戻す作りにします。

Step9

人が確認する

コンプライアンス統括部の担当者が、毎週月曜にエージェントの判定の一覧を確かめてから回付します。

  1. unsure を先に見る … 本文と別紙を開き、関わるかどうかを決めます
  2. relevant の要約と部署を確かめる … 関わる部署に漏れや余計なものが無いか、要約が原文と食い違っていないかを見ます
  3. date_text を原文で確かめる … 期日の記載箇所を開きます。意見募集の締切は、部署が意見をまとめる時間を逆算して回付の文に書き足します
  4. none の題名を流し見る … 題名だけで違和感があるものは本文を開きます
  5. 直して承認する … 承認したものだけが部署へ送られます

4番目を省かないでください。 none の誤りは、それ以外の判定の誤りと違い、後から誰も気づく機会がありません。 月80件のうち多くは none ですが、題名を流すだけなら数分で済みます。

翌週の月曜には、返事の無い回付が一覧の先頭に出ます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
RSS や一覧のページから1件も取れない取れた件数が0なら異常として担当者に知らせる。 「新着なし」と区別する
リンク先のページが削除・移動されている台帳に「取得できず」と記録し、題名だけで unsure として人へ
別紙のPDFの文字が取れない(画像のPDF)エージェントに渡さず unsure として人へ
別紙が長く、渡しきれない目次・冒頭・該当部分に絞り、reason に絞ったことを書かせる
エージェントが上限の回数までツールを呼んだ打ち切り、unsure として人へ
出力が決めた形に合わない1回だけやり直し、だめなら unsure
同じ資料が金融庁と協会の両方に載る別の URL として判定し、一覧で隣に並べる
部署が「当部署には関係なし」と返す担当者が回し先を直し、一覧の所管業務の書き方を見直す
収集のワークフローが数日止まっていたRSS から外れた分を取りこぼした可能性がある。金融庁の報道発表資料の一覧で、止まっていた日の分を人が確かめる

最後の行が、この構成に固有の弱点です。 金融庁の RSS は短いので、収集が数日止まると、その間の新着が RSS から外れることがあります。収集のワークフローが毎日動いたかを台帳の取得日で確かめ、抜けた日があれば一覧のページで補います。 また、RSS のページには配信後にページが削除されたり URL が変わったりする場合があると書かれているため、収集した日のうちに本文を取っておきます。

Step11

記録を残す

  • 毎日取得した RSS と一覧の件数、新しく台帳に入れた URL
  • 公表資料ごとのエージェントの出力と、どこまで読んだか(read_level)、ツールを呼んだ回数
  • 担当者が直した箇所(判定・部署・要約・期日)
  • 回付した日時、部署、メールの本文
  • 部署の返事と日時、返事の無かった週と担当者の対応
  • 金融庁の資料は、取得した本文の文字(出典の URL と取得日を付けて)

3つ目を残すのは、エージェントの癖を知るためです。 同じ種類の資料で毎回 none から relevant に直しているなら、部署と所管業務の一覧の書き方か、プロンプトが足りていません。

5つ目は、社内の監査への説明に効きます。

04実装レベルの3段階

最小構成:題名と本文を手で生成AIの画面に貼り、関わるかを聞く / 1件ごとの見分け
半自動化:上記+n8n で新着を毎日集め、週1回エージェントに判定させて一覧にする / 新着の拾い出しと見分け
本格構成:上記+部署への回付、返事のボタン、未返信の追跡 / 拾い出しから受け取りの確認まで

最小構成では、新着を探す手間が残ります。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件9分が5分程度になります。 探す①と見分ける②の大半は無くなりますが、部署へのメールと返事の追いかけ(③)が残ります。本格構成で3分になり、この段階が本記事の想定です。 差が出るのは、返事の追いかけが、ボタンと台帳の状態に置き換わるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1〜2か月回すと、部署の一覧に足りない所管業務が見えてきます。直してから回付を足すほうが、回し漏れが減ります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
80 件
1件あたり現在時間
9 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  80件 × 9分 ÷ 60 = 12 時間/月
導入後 80件 × 3分 ÷ 60 = 4 時間/月
月間削減時間
8h
削減率
67%
年間削減時間
96h
年間金額換算(時間単価4,000円)
38万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 損害保険会社・少額短期保険業者・保険会社のグループ会社のコンプライアンス部門で、金融庁の公表資料と業界団体の発表を担当者が見に行き、どの部署に関わるかを見分けて伝えている場合。新着の量が多い週に確認が後回しになり、意見募集の締切や施行日の連絡が遅れたことがある場合。公表資料を受け取った部署が読んだかどうかを確かめる仕組みが無い場合。
向いていない
  1. 監督当局からの個別の連絡(ヒアリング・報告の求め)の管理。これは公表資料ではなく、別の経路で扱います。公表資料の量が少なく、担当者が毎日目を通せている場合。法令や監督指針の解釈そのもの、自社の対応方針の決定(この構成は、関わりそうな資料を拾って届け、受け取りを追うまで)。なお、解釈に迷うものは顧問弁護士や当局への確認が要り、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 直近2か月の金融庁の新着と協会のニュースリリースを一覧にする(150件前後)
  2. そのうち、当時部署に回したもの、回さなかったものに印を付ける
  3. 手元の生成AIの画面に、部署と所管業務の一覧を貼り、題名を1件ずつ貼って「関わるか、関わらないか、決められないか」を聞く
  4. 決められないと返ってきたものだけ、本文を貼って聞き直す
  5. 当時の判断と突き合わせる

150件は必ずやってください。 ワークフローを組む前に、「題名と本文でどこまで見分けられるか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時の判断と合い、決められないものが1割前後n8n で組む段に進む
当時回さなかった資料に「関わる」と出る当時の見落としの可能性。本文で確かめる
回し先の部署が当時と食い違う一覧の所管業務の書き方を直す。構成は有効

2行目は失敗ではなく、これまでの確認で抜けていた資料が見つかったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
週1回の取得で新着を取りこぼす金融庁の RSS は直近の十数件だけ。収集は毎日、判定は週1回に分ける
決めかねた資料が「関わらない」に寄るunsure を用意し、none に寄せないことを明記する
RSS の題名だけでは中身が分からないdescription が空。本文のページを取るツールを持たせる
一覧の作りが変わり、黙って0件になる取れた件数を記録し、0件なら異常として知らせる
公表後にページが消える・URL が変わる収集した日のうちに本文を取っておく
期日が計算されて書かれる原文の記載と場所だけを写させる
解釈や自社の適否まで書かれる判断を禁じ、「確かめてください」の形にする
回し先の部署が外れる部署の一覧に所管業務を具体的に書く。「当部署には関係なし」の返事で直す
要約が当局の文書のように見える出典と「コンプライアンス統括部が要約した」旨を必ず入れる
収集のワークフローが止まっていたことに気づかない台帳の取得日を毎週確かめ、抜けた日は一覧のページで補う

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「拾ったはずの資料が人の目に触れない」形で起き、誰も気づかないまま終わります。

下から2行目も、早いうちに決めておいてください。 金融庁のウェブサイト利用ルールでは、加工した情報を国が作成したかのように公表・利用しないことが求められています。要約だけが社内で転送され続けると、いつの間にか「金融庁の文書」として扱われます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公開されている当局と業界団体の公表資料、部署と所管業務の一覧、部署の担当者のメールアドレスです。契約者の個人情報は扱いません。

  1. エージェントに個人の情報を渡さない … 渡すのは部署IDと所管業務・保険種目だけです。メールアドレスはワークフローが台帳から引きます
  2. 出典と加工の旨を必ず書く … 金融庁のコンテンツは公共データ利用規約に準拠した条件で利用でき、出典の記載と、編集・加工した旨の記載が求められています
  3. 協会の資料は社内の回付にとどめる … 日本損害保険協会のページには、掲載内容の利用条件についての特段の記載が見当たりません。社外への配布物に転用しません
  4. この構成は解釈と適否の判断をしない … エージェントが出すのは「関わりそうか」と「確かめること」までです。解釈に迷うものは、顧問弁護士や当局に確かめます
  5. 自動で部署に送らない … コンプライアンス統括部の承認を経たものだけを回付します。誤った要約が部署に届くと、部署はそれに沿って動きます

誤りが起きた場合のリスクは、関わる資料を「関わらない」と判定して届けないことと、要約の誤りがそのまま部署の対応になることの2つです。 前者は unsure と題名の流し見で、後者は担当者の承認と原文のリンクで防ぎます。どちらも、最後に人が原文を見る経路を残しておくことで守ります。

10まず何から始めるか

1週目:部署と所管業務の一覧を整える

回付先の部署ごとに、所管する業務と扱う保険種目を「代理店の委託と業務品質の管理」のような粒度で書き出します。

2週目:150件で試す

直近2か月の新着の題名と本文を、手元の生成AIの画面で見分けさせ、当時の判断と突き合わせます。「関わらない」に寄せすぎていないかを最優先で見ます。

3週目:毎日の収集と台帳をつなぐ

n8n で金融庁の RSS と協会の一覧を毎日取得し、URL で Data Table と照らすところまで作ります。タイムゾーンを Asia/Tokyo にし、取れた件数の記録と、「意見募集」「行政処分」の即日の通知も入れます。

4週目:エージェントを足して一覧にする

AI Agent に本文と別紙の取得のツールと Structured Output Parser をつなぎ、未判定の資料の判定と要約を担当者への一覧メールにします。この時点では部署へは回付しません。

2か月目: 判定を直した箇所を記録します。3か月目以降: 部署への回付と返事のボタン、未返信の追跡を足し、1件9分が何分になったかを実測します。担当者の直しが減り、意見募集の締切が部署に確実に届く流れができた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
金融庁が新着情報RSS(Ver.2.0)と調達情報RSS(Ver.2.0)を提供していること。RSS の配信後に掲載期間の終了などでページが削除されたり URL が変わったりする場合があること金融庁: RSS配信について2026-10-14
新着情報RSSの項目が題名・リンク・公表日時で、説明が空であること。確認時点で15件・約5日分であったこと。リンクの URL に分野を表す部分(/news/r8/hoken/ など)があること(原文の XML を取得して確認)金融庁: 新着情報RSS2026-10-14
コンテンツが公共データ利用規約(第1.0版)に準拠した条件で利用でき、出典の記載、編集・加工したときはその旨の記載が求められ、国が作成したかのような態様で公表・利用してはならないこと金融庁: 金融庁ウェブサイト利用ルール2026-10-14
協会ニュースリリースの一覧に日付と題名が新しい順に並び、年度で切り替えられること日本損害保険協会: 協会ニュースリリース2026-10-14
掲載内容の注意事項とリンクの扱いが書かれ、掲載内容の利用条件についての特段の記載が見当たらないこと日本損害保険協会: 著作権・リンク等について2026-10-14
Schedule Trigger の間隔と cron。ワークフローを保存して公開する必要があること。タイムゾーンの既定(自分で置く場合は America/New York)n8n Docs: Schedule Trigger2026-10-14
RSS Read ノードが URL を指定して公開された RSS フィードを読むことn8n Docs: RSS Read2026-10-14
HTML ノードの Extract HTML Content が CSS セレクターで要素を探し、属性・HTML・文字・値を返し、配列で返す設定があることn8n Docs: HTML2026-10-14
Extract From File が PDF などのバイナリのファイルから中身を取り出して JSON にすることn8n Docs: Extract From File2026-10-14
Data Table が n8n の中に構造化データを持ちワークフローをまたいで使えること。行の追加・更新・取得・Upsert と、「行が存在するか」「存在しないか」の操作n8n Docs: Data Table2026-10-14
Tools Agent がツールの使い方を理解して使うツールを決め、Output Parser を書式のツールとして渡すこと。Anthropic Chat Model に対応し、Call n8n Workflow と HTTP Request をツールにできること。Max Iterations の既定が10で、Return Intermediate Steps があることn8n Docs: Tools Agent2026-10-14
JSON の例から生成するとすべての項目が必須になること。JSON Schema の $ref に対応しないことn8n Docs: Structured Output Parser2026-10-14
Microsoft Outlook ノードの Send and Wait for Response が、承認・自由記述・独自のフォームの応答を選べ、承認のボタンの数と文字を変えられ、待つ時間の上限を設定できることn8n Docs: Microsoft Outlook2026-10-14

法令・監督指針の解釈と自社の対応方針は、コンプライアンス統括部と関係部署で決め、迷うものは顧問弁護士や当局に確かめてください。 本記事は金融庁・日本損害保険協会・n8n の公開ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-1471)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次