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社員から出る借上げ社宅の入居申請を、社宅規程の要件(距離・家賃の上限・家族構成)と物件の資料に照らして判定し、承認者向けの所見を付けて回す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社員から出る借上げ社宅の入居申請と物件の募集図面を読み、社宅規程の要件を1つずつ照らして、満たすかどうかを根拠付きで判定します。結果を承認者向けの所見の下書きにし、人事の担当者が確かめてから承認に回します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate/Zapier
対象業界
小売/建設/物流/製造
対象部門
人事/総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
条件付き
現在工数
20h/月
AI導入後
6h/月
想定削減
70%
年間削減
168h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 社員が SharePoint の申請フォームに入力し、物件の募集図面と勤務先までの経路検索の結果を添付する
  2. 担当者が申請を開き、入居の事由が規程の対象に当たるかを確かめる
  3. 募集図面を開き、家賃・共益費・駐車場代・間取り・面積・所在地を、申請の記入と見比べる
  4. 人事のシステムで扶養家族を確かめ、同居する家族が規程の範囲か、世帯区分はどれかを決める
  5. 規程の家賃の上限の表を開き、世帯区分と地域で上限を引いて比べる
  6. 経路検索の結果を見て、勤務先までの距離が規程の範囲かを確かめる
  7. 承認者(労務グループの課長)向けに、判定と気になる点を書いて回す
導入後(After)
  1. 人社員が SharePoint の申請フォームに入力し、募集図面と経路検索の結果を添付する
  2. 自動リストの項目の作成をきっかけに Power Automate のフローが動き、添付の中身を取り出す
  3. 自動人事のシステムから書き出した社員の情報(職位・勤務先・扶養家族の続柄と人数)を引く
  4. 自動社宅規程の要件の表(SharePoint リスト)から、該当する世帯区分・地域の上限と条文を引く
  5. 自動AI Builder のプロンプトが、申請と添付を読んで要件ごとに判定し、根拠と所見の下書きを JSON で返す
  6. 自動フローの式で、家賃の合計と上限、距離と範囲をもう一度比べ、AIの判定と突き合わせる
  7. 自動担当者に、Approvals の Start and wait for an approval of text で所見の下書きを出す
  8. 人担当者が判定と根拠を確かめ、所見を直して承認する
  9. 自動課長に、Approvals の Start and wait for an approval で承認を依頼する
  10. 自動結果を申請の項目に書き戻し、申請者に Teams で知らせる
各工程の詳しい説明を読む
  1. 社員が SharePoint の申請フォームに入力し、物件の募集図面と勤務先までの経路検索の結果を添付する
  2. 担当者が申請を開き、入居の事由が規程の対象に当たるかを確かめる
  3. 募集図面を開き、家賃・共益費・駐車場代・間取り・面積・所在地を、申請の記入と見比べる
  4. 人事のシステムで扶養家族を確かめ、同居する家族が規程の範囲か、世帯区分はどれかを決める
  5. 規程の家賃の上限の表を開き、世帯区分と地域で上限を引いて比べる
  6. 経路検索の結果を見て、勤務先までの距離が規程の範囲かを確かめる
  7. 承認者(労務グループの課長)向けに、判定と気になる点を書いて回す

(a)申請と募集図面の食い違いを見落とす。 申請の家賃の欄に共益費を含めずに書く社員が多く、募集図面を見ると上限を超えていることがあります。3番目を急ぐと、申請の欄の値だけで判断してしまいます。

(b)判断が担当者ごとにぶれる。 共益費の扱い、扶養していない親の同居、勤務先が2つの工場にまたがる社員の距離の測り方。規程に書かれていない細部の判断が、担当者ごとに違います。 同じ条件の申請が、ある月は通り、別の月は差し戻されます。

(c)家族の情報を何度も見に行く。 4番目で扶養家族の登録と見比べますが、結婚や出産の直後は登録が追いついていません。

(d)所見を書くのに時間がかかる。 承認者は申請を全部は読まないので、担当者が要点を書きます。どの要件を満たし、どこが気になるかを毎回文章にするのに、1件5分かかります。

  1. 【人】 社員が SharePoint の申請フォームに入力し、募集図面と経路検索の結果を添付する
  2. 【自動】 リストの項目の作成をきっかけに Power Automate のフローが動き、添付の中身を取り出す
  3. 【自動】 人事のシステムから書き出した社員の情報(職位・勤務先・扶養家族の続柄と人数)を引く
  4. 【自動】 社宅規程の要件の表(SharePoint リスト)から、該当する世帯区分・地域の上限と条文を引く
  5. 【自動】 AI Builder のプロンプトが、申請と添付を読んで要件ごとに判定し、根拠と所見の下書きを JSON で返す
  6. 【自動】 フローの式で、家賃の合計と上限、距離と範囲をもう一度比べ、AIの判定と突き合わせる
  7. 【自動】 担当者に、Approvals の Start and wait for an approval of text で所見の下書きを出す
  8. 【人】 担当者が判定と根拠を確かめ、所見を直して承認する
  9. 【自動】 課長に、Approvals の Start and wait for an approval で承認を依頼する
  10. 【自動】 結果を申請の項目に書き戻し、申請者に Teams で知らせる

6番目が、この設計の分かれ目です。 AIが「満たす」と言っても、フローの式の計算と合わなければ「確認が要る」に落とします。 数字の比べ合いは、AIより式のほうが確実です。AIの役は、読み取った値と、式では扱えない文の要件の判定です。

8番目を外さないのも、意図してのことです。 規程に書かれていない事情を認めるかどうかは、担当者と課長が決めます。

02今回想定するシステム構成

構成図
社員(SharePoint の申請フォームに入力、募集図面・経路検索の結果を添付)
   │
   ▼【トリガー】When an item is created
Power Automate(クラウドフロー)
   ├──▶ Get attachments / Get attachment content:添付の中身を取り出す
   ├──▶ Get items:社員の情報(人事のシステムの書き出し)、規程の要件の表
   ▼
AI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力)
   │   物件の値の読み取り/要件ごとの判定と根拠/所見の下書き
   ▼
Power Automate ── 家賃の合計と上限、距離と範囲を式で比べ、AIの判定と突き合わせ
   ▼
Approvals ── Start and wait for an approval of text(担当者が確かめて所見を直す)
   ▼
Approvals ── Start and wait for an approval(課長の承認)
   ▼
申請の項目に Update item ──▶ Microsoft Teams で申請者へ結果を知らせる
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウドフロー)Make、n8n、Zapier
生成AIAI Builder のプロンプト(Run a prompt、文書の入力、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude
連携SharePoint リスト(申請、規程の要件の表、社員の情報の書き出し)Microsoft Lists
承認Approvals(Start and wait for an approval of text/Start and wait for an approval)Teams のアダプティブカード
通知Microsoft Teams(申請者とのチャット)Outlook のメール

入口は、SharePoint の When an item is created です。 申請のリストに項目が作られたときに動きます。添付は Get attachments で一覧を取り、Get attachment content で中身を取り出します。 募集図面と経路検索の結果は、PDFか画像で添付してもらいます。

AIには、AI Builder のプロンプトの文書の入力で添付を渡します。 公式の説明では、文書の入力に使えるのは PNG、JPG、JPEG、PDF で、文書は50ページ未満、ファイルの合計は25MB未満、処理は最大100秒とされています。大きな文書の表の行は抜き出しが不正確・不完全になりうるとも書かれているので、読み取った値は式の比べ合いと担当者の確認で受け止めます。

承認は、Approvals の2つのアクションで2段にします。 担当者には Start and wait for an approval of text を使い、所見の文章をその場で直してから承認できるようにします。 課長には Start and wait for an approval で承認か却下かを求めます。Approvals の詳細の欄はマークダウンが使えるので、要件ごとの判定を表にして出せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

申請のリストに項目が作られたことを起点にします。 申請が出たその日に担当者の手元に下書きが届くので、異動の時期でも、申請から判定までの日数が延びません。 週に1回まとめて審査する形にはしません。物件は押さえておける期間が短く、待たせると申込が他の人に取られます。

添付が無い申請は、フローの最初で止めます。 募集図面が無いと、家賃と間取りを確かめる先がありません。申請者に Teams で「募集図面を添付してください」と返し、項目を「差戻し(添付不足)」にします。 添付が足されたら、担当者が手でフローを動かし直します。

住み替えの申請は、いまの社宅の契約とあわせて見ます。 申請の区分が「住み替え」なら、借上げの契約の台帳からいまの社宅の家賃と入居日を引き、住み替えの理由(家族の増加など)が規程の対象に当たるかを判定の対象に足します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請社員番号、申請区分(入居・住み替え)、入居の事由、異動の発令日、勤務先、物件の所在地、家賃・共益費・駐車場代(記入)、間取り・面積、勤務先までの距離(記入)、同居予定の家族(続柄と人数)、入居希望日申請のリスト
募集図面家賃、共益費・管理費、駐車場代、間取り、専有面積、所在地、契約の条件申請の添付(PDF・画像)
経路検索の結果物件から勤務先までの距離と経路申請の添付(会社が指定した経路検索の画面)
社員の情報職位、勤務先、扶養家族の続柄と人数、いまの社宅の有無人事のシステムの書き出し(SharePoint リスト)
規程の要件の表入居の事由の一覧、距離の範囲、世帯区分×地域の家賃の上限、同居できる家族の範囲、間取りの目安、各要件の条文番号SharePoint リスト

質を決めるのは、規程の要件の表です。 Word の社宅規程をそのままAIに渡すと、附則や過去の改正の経過措置まで読んで、いまの上限と違う数字で判定することがあります。 規程を「要件・条件・上限・条文番号」の行に書き出し、いま有効な行だけを渡します。共益費を家賃に含めるか、駐車場代はどうかも、この表に1行ずつ書きます。 第3章の(b)の細部は、ここで決めます。

社員の情報は、続柄と人数だけを渡します。 扶養家族の氏名や生年月日は、判定に要りません。世帯区分を決めるのは、同居する家族の続柄と人数です。 子の年齢で間取りの目安が変わる規程なら、「未就学・小学生以上」のような区分だけを書き出します。

経路検索は、会社が指定した1つの方法にそろえてもらいます。 申請者ごとに違う地図のサービスや経路の条件で測ると、同じ物件でも距離が変わります。 指定の方法と条件(徒歩・公共交通・車)を申請の手引きに書き、その画面を添付してもらいます。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
申請の項目When an item is created判定の対象
添付の一覧と中身Get attachments、Get attachment content文書の入力
社員の情報Get items(Filter Query で社員番号)世帯区分と勤務先
規程の要件Get items(Filter Query で地域と「有効」)上限・範囲・条文
いまの社宅借上げの契約の台帳を Get items住み替えの判定

規程の要件の表は、地域で絞ってから渡します。 工場3か所と本社の4地域分を全部渡すと、別の地域の上限で判定することがあります。 Get items の Filter Query で、勤務先の地域と「有効」の行だけを取ります。

人事のシステムの情報は、毎晩の書き出しを SharePoint リストに置いておきます。 人事のシステムを直接つなぐ経路は作りません。判定に要る列だけを書き出すことで、AIに渡る範囲を最初から絞ります。 結婚・出産の直後で登録が追いついていない場合は、第7章の例外処理で扱います。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 添付の確認 … 添付が1つ以上あるか、PDFか画像か、50ページ未満・合計25MB未満かを確かめます
  2. 添付の種類の見分け … ファイル名ではなく、申請フォームの添付の欄(募集図面・経路検索)で区別します
  3. 申請の数字の整え … 家賃・共益費・駐車場代・距離の欄の全角数字やカンマ、「万」「km」を、式で比べられる数値に直します
  4. 世帯区分の仮決め … 同居予定の家族の人数から、単身・2人・3人以上の区分を式で決めます
  5. 上限と範囲の取り出し … 世帯区分と地域で、規程の要件の表から上限と範囲の行を取ります
  6. 重複の確認 … 同じ社員の申請が「審査中」で残っていないかを確かめます

3番目と4番目は AI に任せません。 申請の欄の数字はフローの式で数値に直し、世帯区分も人数から式で決めます。AIが読むのは添付の資料と文の要件で、申請の欄の数字はAIを通さずに比べます。 後で AIの読み取りと突き合わせるための、もう1本の筋です。

2番目でファイル名を使わないのは、申請者がファイル名を自由に付けるからです。

Step5

AIに処理させる

させるのは、添付の資料から物件の値を読み取り、規程の要件を1つずつ判定して、根拠を書くことです。 承認するかどうかの判断と、規程に無い事情の扱いはさせません。

要件(例)判定の仕方判断できないときの扱い
入居の事由申請の事由が、規程の事由の一覧に当たるか一覧に無い事由なら not_in_rules
勤務先までの距離経路検索の結果の距離を読み、範囲と比べる画面から距離が読めなければ needs_info
家賃の上限募集図面の家賃・共益費・駐車場代を読み、表の扱いに沿って合計し、上限と比べる図面に金額が無ければ needs_info
同居できる家族申請の続柄が、規程の範囲に当たるか範囲に無い続柄なら not_in_rules
間取りの目安募集図面の間取りが、世帯区分の目安に収まるか図面に間取りが無ければ needs_info
申請と図面の一致家賃・間取り・所在地が申請と図面で同じか食い違いがあれば mismatch を立てる

右端の列の区別が、この構成でいちばん大事です。 not_met は規程の要件を満たしていないこと、needs_info は資料が足りず判定できないこと、not_in_rules は規程に書かれていない事情であることです。前者は差し戻すもの、中は資料を求めるもの、後者は担当者と課長が判断するものです。 混ぜると、介護のための親の同居のような事情を、機械的に「満たさない」として差し戻すことになります。

させないこと理由
承認するかどうかの結論承認は課長が行う
規程に無い事情の可否特例を認めるかは人が決める
申請の値で図面の値を上書きすること食い違いが消える
給与課税の扱いの判断賃貸料相当額の計算は給与の担当が行う
家族の事情の推し量り申請に書かれた続柄だけで判定する

3行目がいちばん起きやすい失敗です。 申請に8万円、図面に8万8千円とあると、AIは申請者の記入を正として8万円で判定しがちです。判定には必ず図面の値を使い、申請との食い違いは mismatch として残させます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは人事部で、借上げ社宅の入居申請を社宅規程に照らして確かめる担当です。
申請の内容、添付の資料(募集図面・経路検索の結果)、規程の要件の表だけを根拠に、
要件ごとに判定してください。推測で埋めないでください。

【判定する要件】規程の要件の表の行ごと({rules})

【status の選び方】
- met ........... 資料の値が要件を満たしている
- not_met ....... 資料の値が要件を満たしていない
- needs_info .... 資料に値が無い、または読み取れず判定できない
- not_in_rules .. 申請の事情が、規程の要件の表に書かれていない
迷ったときに met を選ばないでください。

【厳守事項】
- 家賃・共益費・駐車場代・間取り・面積・所在地は、募集図面から読み取った値で
  判定してください。申請の記入の値で判定しないでください。
- 申請の記入と図面の値が違うときは、両方を書き、mismatch を true にしてください。
- 家賃の合計は、規程の要件の表に書かれた扱い(共益費・駐車場代を含めるか)に
  従ってください。表に扱いが無い費目は合計に入れず、notes に書いてください。
- 距離は経路検索の結果の画面に書かれた値を写してください。地図から推し量らないでください。
- 規程の表に無い事由・続柄は not_in_rules にしてください。
  認めるべきかどうかを書かないでください。
- evidence には、根拠にした資料の文字列と、規程の条文番号を書いてください。
- 承認すべきかどうか、給与課税の扱いを書かないでください。
- 家族の健康や事情について、申請に書かれていないことを書かないでください。
- JSON のマークダウンを答えに含めないでください。

【申請】{application}
【世帯区分(フローで決めたもの)】{household_type}
【勤務先の地域】{region}
【添付】募集図面、経路検索の結果(文書の入力)

「迷ったときに met を選ばない」を明記しないと、資料が足りない要件が「満たす」になります。 図面に駐車場代の記載が無いとき、AIは「駐車場代は無い」と読んで合計を出しがちです。記載が無いことと、ゼロであることは違います。

「申請の記入で判定しない」を独立した行にしているのも同じ理由です。 申請と図面が違うとき、どちらを使うかを決めておかないと、AIは都合のよいほうを選び、食い違いが記録に残りません。 最後の一文は、JSON が作れないときの対処として公式の説明が挙げている一文です。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 プロンプトの JSON の形式を Custom にして保存し、毎回この形で返るようにします。

{
  "application_id": "",
  "property": {
    "rent": 0, "common_fee": 0, "parking_fee": null,
    "layout": "", "area_m2": 0, "address": "",
    "distance_km": null
  },
  "mismatch": { "flag": false, "items": [ { "item": "", "application": "", "document": "" } ] },
  "checks": [
    { "rule_id": "", "status": "met | not_met | needs_info | not_in_rules",
      "value": "", "limit": "", "evidence": "" }
  ],
  "notes": "",
  "memo_draft": ""
}

1つ目の理由は、AIの値を式でもう一度比べられることです。 property の家賃・共益費・距離を、フローの式で規程の上限・範囲と比べ、checks の判定と食い違えば、その要件を needs_info に落として担当者に出します。 AIの判定と式の計算が両方「満たす」のときだけ、met として扱います。

AIの判定式の計算担当者に出す扱い
met満たすmet
met満たさないneeds_info(突き合わせ不一致)
not_met満たさないnot_met
not_met満たすneeds_info(突き合わせ不一致)
needs_info / not_in_rules-そのまま

2つ目は、null と 0 を分けられることです。 駐車場代が図面に書かれていなければ null、駐車場代なしと書かれていれば 0 です。null が残る要件は、担当者が申請者に確かめます。

3つ目は、所見を要件の表から組み立てられることです。 Approvals の詳細の欄に、checks をマークダウンの表にして出し、memo_draft を承認の文章の下書きにします。課長は表の色分けで、どの要件に人の判断が入ったかを読めます。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
申請のリストWhen an item is created、Get attachments、Get attachment content、Update item申請の受け取り、添付の取り出し、結果の書き戻し
社員の情報の書き出しSharePoint の Get items職位・勤務先・扶養家族の続柄と人数
規程の要件の表SharePoint の Get items上限・範囲・条文
AI Builder のプロンプトRun a prompt(文書の入力と文字の入力)物件の値の読み取りと要件の判定
ApprovalsStart and wait for an approval of text、Start and wait for an approval担当者の確認、課長の承認
Microsoft TeamsPost message in a chat or channel申請者への結果と差し戻しの連絡

借上げの契約の台帳には書き込みません。 承認された申請をもとに、担当者が貸主との契約を進めてから台帳に載せます。 承認から契約までのあいだに物件が埋まることもあるので、承認と契約は別の工程にしておきます。

人事のシステムにも書き込みません。 社宅の入居が給与の控除に関わる場合も、給与の担当が別の手順で登録します。 この構成が出すのは、判定と所見までです。

Step9

人が確認する

人が見るのは、すべての申請です。 担当者が判定と所見の下書きを確かめ、課長が承認します。

  1. 突き合わせ不一致と mismatch を先に見る … AIの判定と式の計算が合わない要件、申請と図面が食い違う項目を、図面で確かめます
  2. needs_info を申請者に確かめる … 図面に駐車場代が無い、経路検索の画面から距離が読めない、などを申請者に聞きます
  3. not_in_rules を判断する … 規程に無い事由・続柄を認めるかを、担当者が課長と相談します。認めた理由を所見に書きます
  4. met の要件を図面で流し見る … 家賃と間取りの値が図面どおりかを確かめます
  5. 所見を直して承認する … Approvals の画面で文章を直し、承認して課長に回します

3番目は、AIが関わらない判断です。 介護のための親の同居、障害のある家族のための広い間取り。規程に書かれていない事情を認めるかは、会社の方針で決めることです。 所見に理由を書いて残せば、次に同じ事情の申請が来たときの判断の材料になります。

目標は、60件をならして1件6分です。 すべての要件が met で食い違いの無い申請は数分で確かめられ、not_in_rules を含む申請は相談の時間がかかります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
添付が無いフローを止め、申請者に添付を求める
募集図面が読み取れない(画質・手書き)物件の値を空にして needs_info。申請者に別の資料を求める
経路検索の画面が会社指定の方法と違うneeds_info。指定の方法で測り直してもらう
扶養家族の登録と同居予定の家族が違うmismatch として出す。結婚・出産の直後なら、担当者が届出の状況を確かめる
地域が規程の表に無い勤務先判定せず担当者へ。表の追加を検討する
申請者が貸主と直接契約している物件not_in_rules として出し、借上げ社宅の対象外である可能性を所見に書く
AI Builder のプロンプトが応答しない、100秒を超える下書き無しで担当者に回し、手で審査する
同じ社員の申請が審査中で残っている新しい申請に印を付け、どちらを審査するかを担当者が決める
課長の承認が5営業日返らない担当者と課長に再通知する

6行目は、給与課税の扱いに関わります。 国税庁のタックスアンサーでは、入居者が直接契約している場合の家賃負担は社宅の貸与とは認められず、給与として課税されるとされています。借上げ社宅として扱えるかどうかは、承認の前に担当者が確かめます。

Step11

記録を残す

  • 申請の項目と添付(募集図面、経路検索の結果)
  • AIが返した JSON と、そのときのプロンプトの版
  • 判定に使った規程の要件の表の版(上限と範囲の値)
  • 式の計算の結果と、AIの判定との突き合わせの結果
  • 担当者が直した所見の最終版と、not_in_rules を認めた・認めなかった理由
  • 課長の承認・却下と、その日時・コメント

3つ目で規程の表の版を残すのは、上限が改定されるからです。 家賃の上限は地域の相場に合わせて見直されます。改定前に承認した社宅が、改定後の上限を超えていても、当時の表が残っていれば問題がないと示せます。

5つ目の「認めた理由」は、規程の改定の材料にもなります。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請と図面を手でAIの画面に貼り、規程の表と照らして判定させる / 要件ごとの判定
半自動化:上記+申請の作成を起点にフローが判定し、式で突き合わせ、Approvals で担当者と課長に回す / 判定・突き合わせ・所見・承認の回付
本格構成:上記+承認後の契約の手配の依頼、入居期間の満了の通知、規程の改定の反映の管理 / 入居から退去までの管理

最小構成は、確かめるための段階です。 貼り付けと書き写しが残るので、件数はさばけません。 半自動化で、1件20分が6分になり、この段階が本記事の想定です。 申請・図面・規程・家族の情報を行き来する作業が、下書きの確認に変わります。本格構成で足すのは審査の後の工程です。 入居期間の満了や家族の変化による住み替えを、台帳から拾って知らせます。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で not_in_rules の事情と不一致の多い費目を洗い出し、規程の表を直してから後の工程を足します。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
20 分
1件あたり導入後時間
6 分
現在  60件 × 20分 ÷ 60 = 20 時間/月
導入後 60件 × 6分 ÷ 60 = 6 時間/月
月間削減時間
14h
削減率
70%
年間削減時間
168h
年間金額換算(時間単価3,500円)
59万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 工場や事業所が複数あり、転勤者・遠方からの新卒・単身赴任者に借上げ社宅を用意している従業員1,000名以上の会社。入居・住み替えの申請が毎月数十件あり、人事の担当者が社宅規程を開いて距離・家賃の上限・家族の範囲を1件ずつ確かめている場合。社宅規程の要件が、区分と金額の表として書き出せる場合。Microsoft 365 を使っている場合。
向いていない
  1. 社宅が自社の持ち物の寮だけで、入居の要件が部屋の空きだけで決まる会社。申請が月に数件で、担当者が規程を覚えている場合。住宅の補助を現金の住宅手当だけで行っている場合。なお、規程に書かれていない事情(介護・病気などの特例)を認めるかどうかの判断と、給与課税の扱いの最終的な判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月の申請から15件を選ぶ(差し戻した申請と、特例を認めた申請を必ず入れる)
  2. 担当者に、それぞれの申請でどこを確かめ、どこで迷ったかを聞き取る
  3. 社宅規程の要件を、表(要件・条件・上限・条文番号)に書き出す
  4. 申請の内容と募集図面(氏名は伏せる)を、手元のAIサービスの画面に貼り付け、表とあわせて「要件ごとに、満たす・満たさない・資料が足りない・規程に無い、のどれかで判定し、根拠の文字列と条文番号を書いてください。家賃は図面の値で判定してください」と指示する
  5. 出てきた判定を、当時の担当者の判定と突き合わせる

15件は必ずやってください。 フローを組む前に、「規程の表と図面から判定できるのか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時の判定と同じ結果が出たフローの作成に進む
申請の記入の値で判定した指示の書き方で直る。構成は有効
規程の表に書けない要件が多い規程の書き出しが先。 担当者の判断の細部を表にする

3行目が出ることは珍しくありません。 担当者の頭の中にしか無い決まりを表に書くことが、この構成の半分です。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
申請の記入の値で判定する図面の値で判定すると指示に明記し、食い違いは mismatch で残す
家賃の桁や単位を読み違えて「満たす」になる式でもう一度比べ、AIと合わなければ人に回す
書かれていない駐車場代を0円とするnull と 0 を分け、迷ったら met にしないと書く
規程に無い事情を「満たさない」にするnot_in_rules を分け、判断は人に残す
Word の規程の古い上限で判定する要件の表に書き出し、有効な行だけを渡す
別の地域の上限で判定する表を地域で絞ってから渡す
距離の測り方がばらつく会社指定の経路検索の方法と条件にそろえる
扶養家族の登録が追いついていないmismatch として出し、届出の状況を担当者が確かめる
直接契約の物件が混ざる借上げ社宅の対象か、給与課税の扱いを承認の前に確かめる
添付のファイル名で種類を決める申請フォームの添付の欄で区別する
承認が滞る5営業日で再通知する
規程の改定が表に反映されない改定の日に表の行を「有効」に切り替える担当を決める

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「数字が合っているように見える」形で起きます。図面の値、式の突き合わせ、null の扱いの3つを入れてあるかで、判定を承認の材料にしてよいかが決まります。

最後の行は、改定の手順に表の更新を組み込んで防ぎます。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社員の氏名・社員番号・職位・勤務先、同居予定の家族の続柄と人数、物件の所在地(これから住む住所)と家賃です。家族と住所を含む個人情報です。

  1. AIに渡す範囲を判定に要る項目に限る … 家族は続柄と人数だけを渡し、氏名・生年月日は渡しません。社員の情報は判定に要る列だけを書き出して置き、人事のシステムを直接つなぎません
  2. 処理される場所を確かめる … 公式の説明では、日本でホストされる Power Platform の環境では生成AIの機能を支える Azure OpenAI Service が米国でホストされ、地域をまたぐデータの移動を許可すると入力と出力が地域の外に移ることがあるとされています。管理者がこの設定を確かめたうえで使ってください
  3. 申請の理由欄の機微な情報を所見に写さない … 住み替えの理由に家族の病気や介護が書かれることがあります。所見には「家族の事情(申請書に記載)」とだけ書き、詳細は申請の項目を見てもらいます
  4. 給与課税の扱いを担当者と給与の担当で確かめる … 国税庁のタックスアンサーでは、社宅を貸す場合に、賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を使用人から受け取っていれば給与として課税されないとされ、他から借りて貸す借上げ社宅でも、固定資産税の課税標準額から賃貸料相当額を計算するとされています。この計算は AI にさせず、給与の担当が貸主から確かめた値で行います
  5. 申請と判定の閲覧の範囲を決める … 申請のリストは、申請者本人と人事の担当者・課長だけが見られるように権限を分けます。住所と家族の情報が並ぶ一覧です
  6. 保存の期間を決める … 退去して契約が終わった社宅の申請と判定は、決めた期間を過ぎたら消します

誤りが起きた場合のリスクは、要件を満たさない物件を承認することと、認めるべき事情を機械的に差し戻すことの2つです。 前者は数字の読み違いから、後者は規程に無い事情を「満たさない」とすることから起きます。式の突き合わせと not_in_rules の区別で、両方を設計で守ります。

10まず何から始めるか

1週目:社宅規程を要件の表に書き出す

社宅規程を、要件・条件・上限・条文番号の行に書き出します。共益費・駐車場代の扱い、距離の測り方、同居できる家族の範囲を、規程を一番よく知る担当者から聞き出して1行ずつ書きます。

2週目:15件で試す

過去3か月の申請から15件を選び、手元のAIサービスに申請と図面と規程の表を貼り付けて判定させます。当時の判定と突き合わせ、申請の記入の値で判定していないかを最優先で見ます。

3週目:申請のフォームと経路検索の方法を決める

申請のリストの項目を見直し、添付の欄を「募集図面」「経路検索の結果」に分けます。経路検索の方法と条件を決め、申請の手引きに書きます。 人事のシステムから、判定に要る列だけを毎晩書き出す仕組みを作ります。

4週目:申請から担当者の確認までをつなぐ

Power Automate で、申請の作成を起点に添付を取り出し、AI Builder のプロンプトで判定し、式で突き合わせ、Approvals で担当者に出すところまで作ります。この時点では課長への回付をせず、担当者が自分の審査と見比べます。

2か月目: 課長への承認の回付と、申請者への通知を足します。突き合わせ不一致と not_in_rules の件数を毎週数えます。3か月目以降: 認めた特例と直された所見の傾向から規程の表を直し、1件20分が何分になったかを実測します。担当者が替わっても同じ判定が出ることを確かめた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-14/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
使用人に社宅や寮を貸す場合、1か月あたり賃貸料相当額の50パーセント以上の家賃を受け取っていれば給与として課税されないこと。賃貸料相当額が建物・敷地の固定資産税の課税標準額と総床面積から計算され、他から借りて貸す場合も同じ計算で、貸主等から課税標準額を確認する必要があること。入居者が直接契約している場合の家賃負担は社宅の貸与と認められず給与として課税されること(令和8年4月1日現在法令等)国税庁: No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき2026-10-14
プロンプトの文書の入力に PNG、JPG、JPEG、PDF を使えること。ファイルの合計が25MB未満、文書が50ページ未満、処理が最大100秒であること。大きな文書の表の行の抜き出しが不正確・不完全になりうること。利用の上限や容量による制限を受けることがあることMicrosoft Learn: Add inputs to your prompt2026-10-14
プロンプトの出力に JSON を選べ、形式が Custom なら保存したときの形式が実行時に使われること。JSON が作れないときに「Don't include JSON markdown in your answer」を指示に足すことMicrosoft Learn: JSON output2026-10-14
SharePoint の When an item is created、Get attachments、Get attachment content、Get items(Filter Query)、Update itemMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-14
Approvals の Start and wait for an approval と Start and wait for an approval of text があり、後者で提案された文章を承認者が直せること。詳細の欄でマークダウンが使えることMicrosoft Learn: Standard approvals コネクタ2026-10-14
日本でホストされる環境では Azure OpenAI Service が米国でホストされ、地域をまたぐデータの移動を許可すると入力と出力が地域の外に移ることがあることMicrosoft Learn: Move data across regions for Copilots and generative AI features2026-10-14

社宅規程の要件(事由・距離・上限・家族の範囲)は本記事での例です。 自社の規程と、給与課税の扱いは、人事部・給与の担当と顧問税理士で確かめてください。本記事は上記の公式情報で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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