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専門学校の教職員から出る学則・規程・教務会議の決定に関する質問に、いま有効な文書を根拠に答えて該当箇所を示す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

教職員から「学則・規程ではどうなっているか」「教務会議で何と決めたか」と聞かれたとき、いま有効な文書から該当箇所を探して答えます。条項と決定の番号を添え、学生ごとの判断が要る質問は教務主任へ回します。

サマリー
生成AI
Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
教育
対象部門
総務
対象業務
問い合わせ対応/情報検索
主な課題
問い合わせが多い/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
対応スピード向上/属人化解消/検索時間短縮
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 教職員がメールか学内チャットで事務局に質問する
  2. 事務局の担当が、質問がどの規程の話かを考える
  3. 共有ドライブで該当しそうな規程のPDFを開き、条項を探す
  4. 規程に答えが無ければ、過去の教務会議の議事録を思い当たる年度から探す
  5. 決定が見つかったら、その後に変わっていないかを、後の議事録で確かめる
  6. 条項と決定を引用して回答を書き、教職員に返す
  7. 判断の要る質問は、教務主任に相談してから返す
導入後(After)
  1. 人事務局が、教務会議のたびに決定事項を1件ずつ台帳に書き出し、有効・上書きの状態を付ける
  2. 自動台帳の行と規程のPDFが、メタデータ付きで検索の対象に取り込まれる
  3. 人教職員が、学内の問い合わせ画面で質問を書く
  4. 自動中継プログラムが、質問から学生の氏名や学籍番号らしい文字列を除き、学科を付ける
  5. 自動Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドが、有効な文書だけを対象に検索し、引用付きの回答を作る
  6. 自動中継プログラムが、引用が規程の条項か会議の決定かを見分け、番号と原文の位置を付けて表示する
  7. 自動回答が作られなかった質問、学生ごとの判断を求める質問は、事務局の「確認待ち」に入る
  8. 人事務局が確認待ちの質問に答え、必要なら教務主任に相談する
  9. 人事務局が週に1回、回答の一部を抜き出して読み、誤りがあれば台帳か規程の取り込みを直す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 教職員がメールか学内チャットで事務局に質問する
  2. 事務局の担当が、質問がどの規程の話かを考える
  3. 共有ドライブで該当しそうな規程のPDFを開き、条項を探す
  4. 規程に答えが無ければ、過去の教務会議の議事録を思い当たる年度から探す
  5. 決定が見つかったら、その後に変わっていないかを、後の議事録で確かめる
  6. 条項と決定を引用して回答を書き、教職員に返す
  7. 判断の要る質問は、教務主任に相談してから返す

(a)同じ質問が何度も届く。 学期の初めと試験の前、実習の始まる月に、同じ論点の質問が学科を変えて届きます。答えは前と同じなのに、毎回探し直しています。

(b)会議の決定が議事録に埋もれる。 議事録は会議ごとのファイルで、決定事項が報告や議論の記録に混ざっています。 どの会議で決めたかを覚えていなければ、ファイルを順に開くしかありません。

(c)決定がいまも有効かが分からない。 数年前の決定が、その後の会議で改められていることがあります。5番目の確認を省くと、古い扱いで答えることになります。 ここで時間がかかります。

(d)古くからいる職員しか答えられない。 「それは3年前の会議で決めた」と覚えている職員に質問が集まり、その職員が休むと回答が止まります。

  1. 【人】 事務局が、教務会議のたびに決定事項を1件ずつ台帳に書き出し、有効・上書きの状態を付ける
  2. 【自動】 台帳の行と規程のPDFが、メタデータ付きで検索の対象に取り込まれる
  3. 【人】 教職員が、学内の問い合わせ画面で質問を書く
  4. 【自動】 中継プログラムが、質問から学生の氏名や学籍番号らしい文字列を除き、学科を付ける
  5. 【自動】 Vertex AI Search(Agent Search)の answer メソッドが、有効な文書だけを対象に検索し、引用付きの回答を作る
  6. 【自動】 中継プログラムが、引用が規程の条項か会議の決定かを見分け、番号と原文の位置を付けて表示する
  7. 【自動】 回答が作られなかった質問、学生ごとの判断を求める質問は、事務局の「確認待ち」に入る
  8. 【人】 事務局が確認待ちの質問に答え、必要なら教務主任に相談する
  9. 【人】 事務局が週に1回、回答の一部を抜き出して読み、誤りがあれば台帳か規程の取り込みを直す

1番目が、この設計の土台です。 議事録をそのまま検索させると、報告や議論の発言まで「決定」として引かれます。 決定だけを1件ずつ書き出して状態を付けるのは人の仕事で、AIで省いてはいけない手間です。

7番目で、答えない質問を決めているのも意図してのことです。 「この学生を進級させてよいか」は規程の質問に見えますが、決めるのは教務会議と校長です。 回答を返さず、事務局に回します。

02今回想定するシステム構成

構成図
規程のPDF(学則・細則・規程)   教務会議の決定事項の台帳
   │  版と施行日のメタデータ        │  1決定=1文書、状態のメタデータ
   ▼                                ▼
Cloud Storage + メタデータの JSONL
   ▼  取り込み(レイアウトパーサーで分割)
Vertex AI Search(Agent Search)のデータストア
   ▲
   │【トリガー】教職員が問い合わせ画面で質問
中継プログラム ── 個人情報らしい文字列の除去、学科と状態の絞り込み
   ▼
answer メソッド(Gemini で回答を生成、引用付き)
   ▼
中継プログラム ── 引用の種類の判定、位置の変換、回答しない質問の振り分け
   ├──▶ 教職員へ回答(条項・決定の番号と原文)
   └──▶ 事務局の「確認待ち」
役割想定する製品代替候補
検索基盤Vertex AI Search(Agent Search。answer メソッドとメタデータの絞り込み)Azure AI Search、Amazon OpenSearch Service
生成AIGemini(answer メソッドの回答の生成に使うモデル)─
連携中継プログラム(Cloud Run 上で動かす。絞り込み、引用の整形、振り分け)Cloud Functions
保管Cloud Storage(規程と決定事項の原本、メタデータ)─
台帳教務会議の決定事項の台帳(スプレッドシート)学内の文書管理

新しく足すのは、決定事項の台帳と、問い合わせ画面と中継プログラムです。 規程のPDFと議事録は今あるものを使います。

土台は Vertex AI Search の answer メソッドです。 公式ページでは Vertex AI Search は Agent Search へ改称中とされています。answer メソッドは検索結果から生成した回答を返すもので、文ごとに出典を示す引用、回答の口調や長さを指示するプリアンブル、検索の対象を絞る filter を使えます。検索で回答に使う結果の数は既定10・上限25です。

この題材で効くのは、関連の薄い結果しか無いときに回答を作らせない設定です。 公式ページでは、ignoreLowRelevantContent を有効にすると、十分に関連する結果が無いときに回答を生成せず、answerSkippedReasons に理由が返る例が示されています。規程にも決定にも無い質問に、それらしい答えを返さないために使います。

データソースのアクセス制御は Preview です。 公式ページでは、Cloud Storage・BigQuery・Google ドライブなどで、利用者が元のデータで見られる文書だけを結果に出す機能が、Preview の提供とされています。この構成では使わず、教職員全員に見せてよい文書だけをデータストアに入れます(第13章)。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

処理の起点は2つあります。 教職員が問い合わせ画面で質問を送ったとき(回答の処理)と、事務局が決定事項の台帳か規程を更新したとき(取り込みの処理)です。

回答は質問のたびに動かします。 まとめて処理する理由が無く、待たせないことが目的の1つだからです。取り込みは、台帳の更新を事務局が「確定」したときにだけ動かします。 書きかけの決定が検索に出ると、会議で決まっていない扱いを案内してしまいます。

取り込みの処理では、上書きされた決定の状態も同時に変えます。 新しい決定が古い決定を上書きするなら、古い決定の状態を superseded にする操作と、新しい決定の取り込みを1回の確定で行います。 片方だけが反映された時間に、両方が「有効」として引かれないようにするためです。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
質問教職員が書いた文。所属の学科問い合わせ画面
学則・規程・細則PDF。規程名、版、施行日共有ドライブ → Cloud Storage
決定事項の台帳1決定=1行。決定の番号、会議の日付、決定の本文、対象の学科、状態、上書きした決定の番号、関係する規程の条項事務局が作るスプレッドシート
用語の対応学内の呼び方と規程の用語の対応(「追試」と「追試験」「再試験」など)事務局が作る一覧

質を決めるのは、決定事項の台帳です。 議事録から決定を書き出すとき、1行に1つの決定だけを書き、議論の経過は書きません。 「〜とする」「〜は認めない」の形で書くと、検索で引かれたときにそのまま答えの根拠になります。

学則の記載事項は、法令で決まっています。 学校教育法施行規則第4条第1項は、学則に少なくとも、修業年限・学年・学期・休業日、教育課程と授業日時数、学習の評価と課程修了の認定、入学・退学・転学・休学・卒業、授業料・入学料その他の費用徴収、賞罰などに関する事項を記載するとしています。専修学校の設置の認可の申請には第187条でこの規定が準用され、学則の変更の届出には第189条で第5条の規定が準用されます。 第5条では、届出書に変更の事由と時期を記載した書類を添えるとされています。

この関係が、決定と学則を分けて扱う理由です。 教務会議の決定は、学則と規程の範囲の中での運用や解釈です。学則に書かれた事項を変えるには学則の変更の手続きが要り、会議の決定だけでは変わりません。

Step3

データの取得方法を決める

規程と決定は、Cloud Storage からメタデータ付きで取り込みます。 公式ページでは、メタデータ付きで取り込むときは、JSON Lines か NDJSON のファイルに1行ずつ、文書の id、structData(または jsonData)、content の mimeType と uri を書く形が示されています。

決定事項は、台帳の1行を1つの文書にします。

{"id": "kyomu-2026-07-03", "structData": {"doc_type": "decision", "decision_no": "教務2026-07-03", "meeting_date": "2026-07-15", "status": "effective", "supersedes": "教務2023-04-02", "departments": ["all"], "related_rule": "試験・成績評価規程 第8条"}, "content": {"mimeType": "text/html", "uri": "gs://<bucket>/decisions/kyomu-2026-07-03.html"}}

規程は、規程ごとに1文書にし、doc_type を rule、版と施行日、状態(現行か旧版か)を持たせます。

検索のときの絞り込みは filter で書きます。 公式ページでは、索引可能にした項目について ANY() での一致、数値・日付の比較(<= < >= > =)、AND・OR・NOT の組み合わせが使えるとされています。絞り込みに使う項目は、スキーマで索引可能にしておく必要があります。

status: ANY("effective") AND departments: ANY("all", "看護学科")

分割は、データストアを作る前に決めます。 公式ページでは、レイアウトパーサーが段落・表・見出しなどを検出し、分割の大きさは100〜500トークン(既定500)、各分割に見出しを含める includeAncestorHeadings は既定で無効とされています。そして、分割の設定はデータストアの作成後に変えられません。 規程は「第○条」の見出しの下の項が切り出されるので、見出しを含める設定を有効にし、どの条の項かが分割の中に残るようにします。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 規程のPDFを現行の版にそろえる … 共有ドライブに旧版と現行版が混ざっていれば、旧版は status を superseded にするか、取り込みから外します
  2. 決定事項を書き出す … 議事録から決定だけを1件ずつ台帳に書きます。過去10年分を一度に書き出す必要はなく、まずは現行の運用に効いている直近3年分から始めます
  3. 上書きの関係を付ける … 同じ論点の決定が複数あれば、新しい決定の supersedes に古い決定の番号を書き、古い決定を superseded にします
  4. 学科の対象を付ける … 学科ごとの決定は departments に学科名、全学科なら all を入れます
  5. 質問から個人情報らしい文字列を除く … 学籍番号の形の数字列、「〇〇さん」の形の氏名を中継プログラムで伏せます
  6. 用語を足す … 「追試」のような学内の呼び方に、規程の用語を足して検索します

3番目がいちばん効きます。 上書きの関係が付いていないと、新旧の決定が両方とも effective のまま残り、検索はどちらも引きます。 回答が2つの決定を混ぜて作られると、どちらの扱いとも違う答えになります。

附則の経過措置にも注意します。 規程を改正したとき、附則で「改正前に入学した学生には従前の例による」と定めることがあります。附則は条文の末尾にあり、分割で本則と離れます。 改正の附則を持つ規程は、doc_type とは別に has_transition の印を付け、回答の画面に「附則の経過措置を確かめてください」と添えます。

5番目は、規程の質問に学生の名前は要らないからです。 「Aさんの欠席が多いが受験できるか」は、「欠席が授業時数の一定の割合を超えた学生の受験資格」という質問に置き換えられます。

Step5

AIに処理させる

させるのは、引いた規程と決定から、質問に関係する箇所を示して答えることだけです。

させること中身
該当箇所の特定質問に関係する規程の条項と、有効な決定を引く
回答の作成引いた箇所に書かれていることだけで答える
引用回答の文ごとに、根拠にした文書を示す
種類の明示根拠が学則・規程か、教務会議の決定かを書き分ける
させないこと理由
個々の学生の可否の判断教務会議と校長が決める
規程に無い事案の扱いの提案前例を作ることになる。事務局と教務主任が決める
学則と決定の食い違いの解消どちらかに寄せると、届出の手続きを飛ばした扱いになる
上書きされた決定の引用絞り込みで除く。プロンプトに頼らない

4行目を、プロンプトではなく filter で守っているのが要です。 「古い決定は使わないでください」と指示しても、検索で引かれた文書は回答の材料になります。 引かれないようにするのは、検索の段の仕事です。

Step6

指示内容を固定する

answer メソッドのプリアンブルに、次のように書きます。

あなたは専門学校の教務・総務の事務局の担当として、教職員からの質問に答えます。

【答え方】
- 検索で示された学則・規程・細則と、教務会議の決定事項だけを根拠に答えてください。
- 根拠ごとに、規程なら「規程名 第○条第○項」、決定なら「決定番号と会議の日付」を書いてください。
- 学則・規程に書かれていることと、教務会議の決定で決めた運用を分けて書いてください。
  決定は「教務会議の決定(○年○月○日)による運用」と明記してください。
- 学科ごとの決定であれば、どの学科の決定かを書いてください。

【答えないこと】
- 個々の学生を進級・卒業させてよいか、試験を受けさせてよいか、処分するかなどの
  可否は答えないでください。「教務主任へ確認してください」とだけ書いてください。
- 検索で示された文書に答えが無いときは、推測で補わず、
  「規程・決定に該当する記載が見つかりません」と書いてください。
- 学則・規程の記載と教務会議の決定が食い違って見えるときは、
  どちらが正しいとも書かず、両方の記載を示して「事務局が確認します」と書いてください。
- 一般的な専門学校の慣行や、ほかの学校の例で答えないでください。

「一般的な慣行で答えない」を明記しないと、規程に無い質問にもそれらしい答えが出ます。 生成AIは「多くの学校では」と補って答えを作りがちで、教職員はそれを自校の決まりとして受け取ります。 関連の薄い結果しか無いときに回答を作らせない設定と、二重にふさぎます。

食い違いを「両方示して止める」にしているのは、第7章の入力データで見た届出の手続きのためです。 どちらに寄せても、学校として正式に決めていない扱いを案内することになります。

Step7

出力形式を固定する

answer メソッドの応答から、中継プログラムが次の形に組み直して画面に返します。

{
  "question_id": "",
  "status": "answered | skipped | needs_staff",
  "answer_text": "",
  "basis": [
    {
      "kind": "rule | decision",
      "title": "試験・成績評価規程",
      "ref": "第8条第2項",
      "decision_no": "",
      "meeting_date": "",
      "quote": ""
    }
  ],
  "conflict": false,
  "skipped_reason": "",
  "routed_to": ""
}

1つ目の理由は、kind で根拠の重みを見せられることです。 規程の条項と会議の決定が同じ見た目で並ぶと、教職員は区別せずに受け取ります。画面では rule と decision を色で分けます。

2つ目は、引用の位置の変換をここで行えることです。 公式ページでは、引用の startIndex と endIndex は文字数ではなく UTF-8 のバイト数で返るとされています。日本語は1文字が複数バイトなので、そのまま文字の位置として使うと、ずれた箇所を強調します。 中継プログラムで文字の位置に直してから quote を切り出します。

3つ目は、status で振り分けを機械的に決められることです。

status条件行き先
answered回答が作られ、根拠が1つ以上ある教職員へ返す
skippedanswerSkippedReasons が返った教職員に「事務局が確認します」と返し、確認待ちへ
needs_staff学生ごとの可否を求める質問、または conflict が真確認待ちへ。可否の質問は教務主任へも通知
Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
問い合わせ画面中継プログラムの API質問を受け、回答を返す
Vertex AI Searchanswer メソッド(REST)絞り込み付きの検索と回答の生成
Cloud Storage取り込み規程と決定の原本、メタデータの JSONL
決定事項の台帳スプレッドシートの読み取り確定した行から JSONL を作る
事務局の確認待ち一覧への書き込みと通知skipped と needs_staff の質問
学務の記録つながない学生の成績・出席は扱わない

学務の記録にはつなぎません。 つなげば「この学生は受験できるか」に答えられそうに見えますが、それは規程を引く仕組みではなく、可否を判断する仕組みになります。 範囲を広げないことが、この構成の安全の前提です。

続けて聞かれる質問は、同じ会話として扱います。 公式ページでは、answer メソッドは文脈を保ったまま追加の質問を受ける複数回のやり取りに対応するとされ、前の質問の会話の ID を渡して続けます。「では、実習の場合は?」のような短い追加の質問は、前の質問とつなげないと何の話か分かりません。 会話の ID は中継プログラムが持ち、画面を閉じたら捨てます。

関連する質問の候補は出しません。 公式ページでは、answer メソッドは併せて聞かれそうな質問を返せるとされていますが、事務局が決めていない論点の質問を誘うことになるため、使いません。

Step9

人が確認する

人が見るのは、確認待ちに入った質問と、週1回の抜き取りです。 answered の回答は、教職員に直接返します。

  1. 確認待ちの needs_staff を先に見る … 学生ごとの可否の質問は、教務主任に回します。事務局がその場で答えないことを徹底します
  2. conflict の質問を見る … 規程と決定のどちらが正しいかを、教務主任と確かめます。学則に関わるなら、学則の変更の要否まで話を上げます
  3. skipped の質問に答える … 規程にも決定にも無い質問です。答えた内容が新しい運用になるなら、次の教務会議の議題にします
  4. 週1回、answered から20件を読む … 根拠の条項と決定が質問に合っているか、上書きされた決定が引かれていないかを見ます

3番目が、この構成を育てる工程です。 規程に無い質問に事務局が答えた内容は、会議で決めないかぎり、また同じ質問が届きます。 議題にして決定にすれば、次からは検索で答えられます。

目標は、300件をならして1件4分です。 確認待ちに入るのが2割前後という想定で、それより多い月は、台帳の書き出しが追いついていないか、用語の対応が足りません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
関連する結果が無く回答がスキップされたskipped。教職員に事務局が確認する旨を返す
新旧の決定が両方引かれた台帳の上書きの付け忘れ。取り込みを直し、回答は事務局が出し直す
規程と決定が食い違うconflict。どちらにも寄せず事務局へ
質問に学生の氏名・学籍番号が含まれる中継プログラムで伏せる。伏せきれないものは送らずに確認待ちへ
学科の判別がつかない全学科の決定と規程だけで答え、学科の決定がありうると添える
引用の位置がずれるバイト数から文字数への変換を確かめる
取り込みの途中で止まった状態の変更と新しい決定を、確定の単位でやり直す
answer メソッドが応答しない質問を確認待ちに入れ、事務局が答える

上から2行目が、運用を始めてから最も多く起きます。 原因はいつも台帳の側で、会議の決定を書き出すときに、何を上書きしたかを議事録から読み取れないことが多いからです。会議の議事録の書き方に「〇年〇月の決定を改める」と書く欄を作ると減ります。

Step11

記録を残す

  • 質問の原文(個人情報らしい文字列を伏せた後のもの)と、学科
  • 検索に使った filter と、answer メソッドの応答の全文
  • 返した回答、根拠の一覧、status
  • 回答したときの決定事項の台帳の状態(どの決定が有効だったか)
  • 確認待ちに入った質問への事務局の回答と、教務主任への相談の結果
  • 週1回の抜き取りで見つかった誤りと、直した箇所(台帳・規程・用語)

4つ目を残すのは、後から決定が上書きされるためです。 「先月はこう案内された」と言われたときに、そのときに有効だった決定を示せないと、案内が誤りだったのか、その後に変わったのかを説明できません。

5つ目は、次の教務会議の議題の候補になります。 確認待ちに入った質問のうち、同じ論点のものが続けば、それは決めておくべき運用が決まっていないというしるしです。

04実装レベルの3段階

最小構成:検索アプリの画面に規程と決定を取り込み、事務局が質問を貼って聞く / 規程と決定の検索
半自動化:上記+決定事項の台帳と状態の絞り込み。事務局が回答を確かめてから返す / 有効な決定に絞った回答案の作成
本格構成:上記+教職員が直接聞ける画面、振り分け、確認待ち、抜き取りの記録 / 回答から振り分けまで

最小構成では、事務局が貼り付ける手間が残ります。 確かめるための段階です。 半自動化で、1件12分が7分程度になります。 探す時間はほぼ無くなりますが、全件の回答案を事務局が読んでから返すため、③と確認の時間が残ります。本格構成で4分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、answered の回答を事務局を通さずに返し、人は確認待ちと抜き取りだけを見るからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化で1〜2か月、事務局が全件の回答案を読むと、台帳の上書きの付け忘れと用語の不足が見えてきます。 そこを直してから直接返す形にするほうが、教職員に誤った扱いが伝わりません。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
300 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
4 分
現在  300件 × 12分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 300件 × 4分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価3,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 複数の学科を持ち、教職員が数十名以上いる専門学校で、学則・規程・細則のほかに、教務会議で決めた運用や解釈が議事録に散らばっている学校。教職員からの「これはどう決まっているか」という質問が、教務・総務の事務局の数名に毎月数百件届き、古くからいる職員にしか答えられない質問が多い場合。議事録の決定事項を1件ずつ書き出し、いま有効か、何を上書きしたかを管理できる場合。
向いていない
  1. 教職員が十数名で、規程が1冊にまとまり、会議の決定もほとんど無い場合。教務会議の議事録が紙でしか残っておらず、決定事項を書き出す人手が取れない場合。質問の多くが個々の学生の成績や出席の状況の確認で、規程を引く必要がない場合。なお、個々の学生の進級・卒業・追試験の可否や、規程に無い事案の扱いは教務会議や校長が決めることで、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月に事務局に届いた質問から30件を選ぶ(うち数件は、会議の決定で答えたものを入れる)
  2. 試験・成績評価規程と学則細則のPDF、直近1年の決定事項を10件ほど書き出した文書を用意する
  3. Vertex AI Search の画面で検索アプリを作り、これらを取り込む
  4. 30件の質問を画面で聞き、根拠の条項・決定が当時の回答と合っているかを見る
  5. 規程に答えが無い質問で、回答が作られないかを確かめる

30件は必ずやってください。 仕組みを作り込む前に、「規程と決定から引けば答えられる質問がどれくらいあるか」を確かめます。

出てきた内容判断
根拠の条項・決定が当時の回答と合う台帳の整備と中継プログラムに進む
古い決定や旧版の規程が引かれる状態のメタデータと絞り込みで直る。構成は有効
決定を引けず、議事録の議論が引かれる決定の書き出し方が先。 1行1決定に直す

3行目は、議事録をそのまま取り込んだときに必ず出ます。 失敗ではなく、決定を書き出す工程を省けないことが分かったということです。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
議事録の議論が「決定」として引かれる議事録を取り込まない。 決定だけを1行1件で書き出す
新旧の決定が両方引かれる上書きの関係を付け、古い決定を superseded にして絞り込む
状態の変更と新しい決定の取り込みがずれる1回の確定で両方を反映する
規程に無い質問にそれらしい答えが出る関連の薄い結果では回答を作らせない設定と、プリアンブルの禁止
学生ごとの可否に答えてしまう可否の質問は needs_staff で回答を返さない
規程と決定が食い違うどちらにも寄せず、事務局と教務主任へ
引用の強調がずれる位置は UTF-8 のバイト数。文字の位置に直す
どの条の項かが分割から消える見出しを含める設定を有効にする。作成後は変えられない
絞り込みが効かない項目を索引可能にしておく
学内の呼び方で引けない用語の対応を足す
改正前の入学者の扱いを見落とす附則の経過措置を持つ規程に印を付け、回答に添える
質問に学生の名前が書かれる中継プログラムで伏せ、伏せきれないものは送らない

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「議事録をそのまま検索させれば済む」という見込みから出ています。決定を書き出して状態を付ける手間を、最初から作業として見込んでください。

「学生ごとの可否」の行も早く効いてきます。 教職員が使い慣れるほど、「この学生は」という質問が増えます。答えない範囲を画面にも書いておくと、質問の仕方が変わります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 学則・規程・細則、教務会議の決定、教職員の質問です。学生の成績・出席の記録は扱いません。

  1. 学生の個人情報を検索に渡さない … 質問から氏名・学籍番号らしい文字列を伏せます。規程の質問に学生を特定する情報は要りません
  2. 教職員全員に見せてよい文書だけを入れる … データソースのアクセス制御は Preview の提供です。懲戒の個別の事案、人事の決定、特定の学生に関する決定は、データストアに入れません
  3. この構成は可否を決めない … 進級・卒業・追試験・処分の可否は、教務会議と校長が決めます。回答画面にもそのことを書きます
  4. 学則と決定の重みを混ぜない … 学則の変更は届出を伴う手続きです。会議の決定を学則の変更のように案内しないよう、根拠の種類を分けて示します
  5. 規程に無い質問への回答を前例にしない … 事務局が答えた内容が新しい運用になるなら、会議で決めてから台帳に入れます

誤りが起きた場合のリスクは、古い決定で答えることと、規程に無いことを決まりとして答えることの2つです。 前者は上書きの関係の付け忘れで起き、後者は回答を作らせない設定とプリアンブルが効いていないときに起きます。どちらも、検索の段で止める設計にしておきます。

10まず何から始めるか

1週目:決定事項の台帳の形を決める

決定の番号、会議の日付、本文、対象の学科、状態、上書きした決定、関係する規程の条項の列を持つ台帳を作ります。直近の教務会議の決定から、1行1件で書き出し始めます。

2週目:30件で試す

過去3か月の質問から30件を選び、試験・成績評価規程と学則細則、直近1年の決定を取り込んだ検索アプリで聞きます。古い決定が引かれないか、規程に無い質問に答えを作らないかを最優先で見ます。

3週目:直近3年分の決定を書き出す

いまの運用に効いている決定を書き出し、上書きの関係を付けます。 同じ論点の決定が複数見つかったら、どれが生きているかを教務主任と確かめます。

4週目:データストアの設定を決めて作り直す

分割の大きさと見出しを含める設定、索引可能にする項目を決め、データストアを作り直します。 作成後は分割の設定を変えられないためです。

2か月目: 中継プログラムで絞り込みと引用の整形を足し、半自動化で事務局が全件の回答案を読みます。3か月目以降: 教職員が直接聞ける画面と振り分けを足し、1件12分が何分になったかを実測します。教務会議のたびに決定が台帳に入り、確認待ちの質問が次の会議の議題になる流れができた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-13/最終更新:2026-10-14
確認した内容情報源確認日
学則に少なくとも、修業年限・学年・学期・休業日、教育課程と授業日時数、学習の評価と課程修了の認定、入学・退学・転学・休学・卒業、授業料・入学料その他の費用徴収、賞罰などに関する事項を記載すること(学校教育法施行規則第4条第1項)e-Gov法令API: 学校教育法施行規則 第4条2026-10-13
専修学校の設置の認可の申請に第3条と第4条第1項が準用されること(第187条)e-Gov法令API: 学校教育法施行規則 第187条2026-10-13
専修学校の学則の変更と、その届出に第5条が準用されること(第189条)。届出書に変更の事由と時期を記載した書類を添えること(第5条)e-Gov法令API: 学校教育法施行規則 第189条2026-10-13
Vertex AI Search が Agent Search へ改称中であること。answer メソッドの引用、プリアンブル、filter。検索結果の数が既定10・上限25であること。ignoreLowRelevantContent で関連の薄い結果では回答を作らず answerSkippedReasons が返ること。関連する質問を返せること。引用の startIndex/endIndex が UTF-8 のバイト数であることGoogle Cloud: Get answers and follow-ups2026-10-13
ANY()、数値・日付の比較の演算子、AND/OR/NOT での絞り込み。絞り込む項目を索引可能にする必要があることGoogle Cloud: Filter search by metadata2026-10-13
レイアウトパーサーが段落・表・見出しなどを検出すること。分割が100〜500トークン(既定500)で、includeAncestorHeadings が既定で無効なこと。分割の設定がデータストアの作成後に変えられないこと。レイアウトパーサーに Document AI の機能の料金がかかることGoogle Cloud: Parse and chunk documents2026-10-13
Cloud Storage からメタデータ付きで取り込むとき、JSON Lines か NDJSON に id、structData/jsonData、content の mimeType と uri を書くことGoogle Cloud: Prepare data for ingesting2026-10-13
データソースのアクセス制御が Preview の提供で、Cloud Storage・BigQuery・Google ドライブなどで使えることGoogle Cloud: Set up data source access control2026-10-13

個々の学生の進級・卒業・追試験・処分の可否と、規程に無い事案の扱いは、学校の規程にある手続きで決めてください。 本記事は法令と Google Cloud の公開ドキュメントで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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