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パソコンと周辺機器の購入・移動・廃棄の申請からIT資産台帳の更新案を作り、台帳と申請の食い違いを毎月洗い出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

パソコンや周辺機器の購入・移動・廃棄の申請から、対象の資産と変更の中身を抜き出し、IT資産台帳の更新案を作ります。毎月1回、承認済みの申請と台帳を突き合わせ、反映漏れと申請の無い変更を一覧にします。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude
連携・自動化
Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/人材/医療/教育
対象部門
情報システム/総務
対象業務
内容確認・チェック/台帳・マスタ管理
主な課題
入力作業が多い/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
抽出
主な効果
入力漏れ削減/属人化解消/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
ノーコード連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
70%
年間削減
336h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 申請フォームの回答通知、またはメールを受け取る
  2. 申請の文面を読み、どの資産の話かを台帳で探す(資産番号が無ければ、利用者名・型番・設置場所から絞り込む)
  3. 申請が購入なら、納品を待って台帳に行を足す。移動なら利用者・所属・設置場所を書き換える。廃棄なら状態を「廃棄予定」にする
  4. 台帳の備考欄に申請の受付番号を書く
  5. 廃棄の場合は、データ消去の作業と、消去証明の受け取りを別に管理する
  6. 月末に、その月の申請の一覧と台帳を並べて、反映されているかを目で確かめる
導入後(After)
  1. 自動申請フォームの回答、または申請用メールボックスへの着信をきっかけにフローが動く
  2. 自動申請の文面と添付をAIに渡し、申請の種類・対象の資産・変更の中身を抜き出させる
  3. 自動抜き出した資産番号・シリアル番号・利用者名で台帳を引き、対象の行を候補として取り出す
  4. 自動台帳の現在の値と申請の内容を並べ、「どの行の、どの列を、何から何へ」という更新案を作る
  5. 自動対象の行が1つに決まらないもの、台帳と申請が食い違うものに印を付ける
  6. 人担当者が更新案を開き、承認・修正・差し戻しを選ぶ
  7. 自動承認された更新案だけを台帳に書き込み、申請記録に結果を残す
  8. 自動毎月1日に、前月の申請記録と台帳を突き合わせ、食い違いの一覧を作る
  9. 人担当者が食い違いの一覧を見て、原因を確かめて直す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 申請フォームの回答通知、またはメールを受け取る
  2. 申請の文面を読み、どの資産の話かを台帳で探す(資産番号が無ければ、利用者名・型番・設置場所から絞り込む)
  3. 申請が購入なら、納品を待って台帳に行を足す。移動なら利用者・所属・設置場所を書き換える。廃棄なら状態を「廃棄予定」にする
  4. 台帳の備考欄に申請の受付番号を書く
  5. 廃棄の場合は、データ消去の作業と、消去証明の受け取りを別に管理する
  6. 月末に、その月の申請の一覧と台帳を並べて、反映されているかを目で確かめる

(a)どの資産の話かを探すのに時間がかかる。 申請に資産番号が書かれているのは半分程度です。残りは「田中さんのPC」「会議室Bのモニター」のような書き方で、台帳を利用者名で絞り込み、型番と購入時期で見当をつけて特定します。 同じ人が2台持っていると、ここで止まります。

(b)1つの申請に複数の資産が入っている。 「PCとモニター2台とドックを佐藤さんへ」という申請は、台帳では4行の変更です。1行だけ直して残りを忘れるのが、いちばん多い反映漏れです。

(c)月末の突合が形だけになる。 240件を台帳と並べて目で見るのは、1件ずつの処理より時間がかかります。忙しい月は省かれ、台帳と実態のずれは、次の棚卸しまで誰も気づきません。 そのころには、誰が何を変えたのかを追えなくなっています。

(d)担当者によって書き方が違う。 設置場所を「本社5F」と書く人と「本社/5階/東」と書く人がいて、台帳の列の値がそろいません。 後から絞り込もうとしても引っかからない行が出ます。

  1. 【自動】 申請フォームの回答、または申請用メールボックスへの着信をきっかけにフローが動く
  2. 【自動】 申請の文面と添付をAIに渡し、申請の種類・対象の資産・変更の中身を抜き出させる
  3. 【自動】 抜き出した資産番号・シリアル番号・利用者名で台帳を引き、対象の行を候補として取り出す
  4. 【自動】 台帳の現在の値と申請の内容を並べ、「どの行の、どの列を、何から何へ」という更新案を作る
  5. 【自動】 対象の行が1つに決まらないもの、台帳と申請が食い違うものに印を付ける
  6. 【人】 担当者が更新案を開き、承認・修正・差し戻しを選ぶ
  7. 【自動】 承認された更新案だけを台帳に書き込み、申請記録に結果を残す
  8. 【自動】 毎月1日に、前月の申請記録と台帳を突き合わせ、食い違いの一覧を作る
  9. 【人】 担当者が食い違いの一覧を見て、原因を確かめて直す

6番目が分かれ目です。 更新案は全件を担当者が見ます。ただし見るのは文面ではなく、変更の差分です。「PC-0412:利用者 田中→佐藤、所属 営業2課→営業1課」という形で並ぶので、1件の確認は数十秒で終わります。 時間を使うのは、5番目で印の付いたものだけです。

7番目で書き込みをフローに任せるのは、承認した内容を人が転記すると、そこでまた書き間違いが起きるからです。 第3章の(d)のゆれも、ここで止まります。

02今回想定するシステム構成

構成図
申請フォーム(Microsoft Forms)/申請用メールボックス
   ▼【トリガー】回答の送信/メールの着信
Power Automate(クラウド フロー)
   ├──▶ AI Builder のプロンプト ── 申請の種類・対象資産・変更の中身を抜き出す
   ├──▶ SharePoint リスト(IT資産台帳)── 資産番号・シリアル・利用者で候補を引く
   ├──▶ 更新案を作る(台帳の現在値と申請内容の差分)
   ▼
【人が更新案を承認】(承認アクション)
   ▼
Power Automate ── 承認された差分だけを台帳へ書き込む/申請記録に結果を残す

【毎月1日】Power Automate(繰り返し)
   ├──▶ 前月の申請記録と台帳の突合
   ├──▶(本格構成)Microsoft Graph で Intune の管理対象デバイス一覧と照合
   ▼
食い違いの一覧 ──▶ 担当者
役割想定する製品代替候補
ワークフローPower Automate(クラウド フロー)Make、n8n
生成AIAI Builder のプロンプト(「プロンプトを実行する」アクション、JSON 出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Claude API
保管SharePoint のリスト(IT資産台帳/申請記録/ログ)Dataverse
連携Microsoft Graph(Intune の管理対象デバイス一覧。本格構成で追加)―
申請の受付Microsoft Forms、共有メールボックスTeams のチャネル

台帳は新しく作りません。 いまの SharePoint のリストに「最終更新の申請番号」と「最終更新日」の2列を足し、申請ごとの結果を残す「申請記録」のリストを別に作ります。

生成AIは、Power Automate の中から AI Builder のプロンプトを呼ぶ形にします。 公式ドキュメントでは、フローに「プロンプトを実行する」アクションを足し、作っておいたプロンプトを選ぶと、その入力に前のアクションの内容を渡せるとされています(2025年5月に「プロンプトを使用して GPT でテキストを作成する」から名称が変わっています)。プロンプトは Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があるとされています。使える地域かは最初に確かめてください。

出力は JSON にします。 プロンプトの出力を JSON にすると、応答の複数の要素をフローの中で個別に扱えます。JSON の例を自分で書き換えると形式が「カスタム」になり、プロンプトを調整しても形式が変わりません。 台帳の列に書き込む前提なので、カスタムで固定します。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

申請の経路ごとに、入口のフローを分けます。 Microsoft Forms の申請は「新しい応答が送信されたとき」をトリガーにし、「応答の詳細を取得する」で回答の中身を取ります。メールで届く申請は、申請用の共有メールボックスの「共有メールボックスに新しいメールが届いたとき (V2)」で受けます。どちらの入口も、同じ子フローに申請の本文と添付を渡し、そこから先は区別しません。

チャットで届いた急ぎの申請は、担当者がフォームに転記する運用を残します。 経路を増やすほど、どれか1つだけ処理されない期間ができます。入口は2つに絞ります。

月1回の突合は、別のフローにします。 「繰り返し」トリガーで頻度を月にすると、毎月同じ日に動きます。毎月1日の朝、前月分を対象に動かします。月の途中で動かすと、承認待ちの申請が食い違いとして大量に出ます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請の本文申請の種類(選択式)、自由記述、希望日、申請者Microsoft Forms の回答/メール本文
申請の添付見積書や納品書のPDF、機器の写真フォームの添付/メールの添付
IT資産台帳資産番号、種別、型番、シリアル番号、利用者、所属、設置場所、状態、最終更新の申請番号SharePoint のリスト
社員の一覧氏名、メールアドレス、所属Microsoft 365 の組織情報を書き出したリスト
設置場所の一覧拠点・フロア・区画の正式な表記自社で用意するリスト

質を決めるのは、いちばん下の2つです。 社員の一覧が無ければ、「田中さん」が誰なのかを決められません。設置場所の一覧が無ければ、AIは申請に書かれた「5階の東側」をそのまま更新案に入れ、第3章の(d)の書き方のゆれがそのまま残ります。

添付の写真は、資産番号のシールが写っていれば使います。 プロンプトには画像やドキュメントの入力を足せ、対応する形式は PNG、JPG、JPEG、PDF です。シールの写真が1枚あるだけで、対象の資産を探す手間がほとんど消えます。 申請フォームに「資産番号のシールの写真(任意)」という欄を足すのが効きます。

Step3

データの取得方法を決める

台帳は SharePoint コネクタの「アイテムを取得」で引きます。全件を取らず、フィルター クエリで絞ります。 抜き出した資産番号があれば資産番号で、無ければシリアル番号で、それも無ければ利用者のメールアドレスで絞り込みます。

引く順番絞り込みの条件結果の扱い
1資産番号が一致1行なら確定
2シリアル番号が一致1行なら確定
3利用者が一致し、種別が一致1行なら確定。複数なら候補として並べる
4設置場所が一致し、種別が一致候補として並べるだけで、確定しない

4番目では確定させません。 「会議室Bのモニター」は、会議室Bに2台あれば決められません。候補を並べて担当者に選んでもらいます。

利用者名から社員を引くときは、氏名ではなくメールアドレスに直してから引きます。 同じ姓の社員は必ずいます。AIに抜き出させるのは申請に書かれた氏名までで、社員の一覧と照らしてメールアドレスに直すのはフローの側です。一致が2人以上なら、そこで止めて担当者に回します。

SharePoint コネクタには、接続ごとに60秒あたり600回という呼び出しの調整制限があります。組織変更で数十件の申請がまとめて届いた日は、台帳を1件ずつ何度も引く作りにすると、この制限に近づきます。 申請1件につき台帳を引くのは1〜2回に収めます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 申請の種類の確認 … フォームの選択式の値(購入/移動/廃棄)を読みます。メールの申請には種類が無いので、AIに判定させます
  2. 署名と引用の除去 … メールの署名と、過去のやり取りの引用部分を落とします
  3. 添付の確認 … PNG、JPG、JPEG、PDF 以外は渡しません。合計が25MB未満、ページ数が50ページ未満であることを確かめます
  4. 重複の確認 … 同じ申請者から同じ内容が、フォームとメールの両方で届いていないかを確かめます
  5. 社員の一覧と設置場所の一覧を渡せる形にする … 申請者の所属に関係する範囲だけに絞ります

3番目の制限は、プロンプトに画像やドキュメントを渡すときのものです。 公式ドキュメントでは、ファイルの合計が25MB未満、ドキュメントのページ数が50ページ未満、処理は最大100秒とされ、大きなドキュメントから抽出した情報は、特にテーブルの行で不正確または不完全になる可能性があるとされています。納品書の明細が長いものは、ここに当たります。

5番目で一覧を絞るのは、渡す量を減らすためだけではありません。 800名全員の一覧を渡すと、AIは同じ姓の誰かを選びます。選ばせる範囲を、申請者の部署とその周辺に限ります。

Step5

AIに処理させる

させるのは、申請の文面から「申請の種類」「対象の資産」「変更の中身」を抜き出し、それぞれの根拠にした文字列を書き出すことだけです。

抜き出すもの中身判断できないときの扱い
申請の種類購入/移動/廃棄複数の種類が混ざれば mixed
対象の資産資産番号、シリアル番号、種別、型番、現在の利用者、現在の設置場所書かれていない項目は空欄
変更の中身新しい利用者、新しい所属、新しい設置場所、新しい状態、希望日書かれていない項目は空欄
根拠各項目を抜き出した元の文字列―
確認が要る点読み取れなかった点、矛盾している点―

1つの申請に複数の資産があれば、資産ごとに1行ずつ出させます。 「PCとモニター2台とドック」なら4行です。第3章の(b)の反映漏れは、ここで機械的に防ぎます。

させないこと理由
台帳の行を決めること候補を引くのはフローの規則。AIに選ばせると、もっともらしい行を選ぶ
書かれていない資産番号を補うこと型番や購入時期から推測した番号は、別の機器を指す
社員を1人に決めること同じ姓の社員がいる。メールアドレスへの変換はフローが行う
廃棄してよいかの判断データ消去と会計上の処理が絡む。人が決める
台帳の現在値の書き換え承認された差分だけをフローが書く

2行目がいちばん起きやすい失敗です。 「田中さんの2023年に買ったPC」と書かれていると、AIは台帳の候補を見て資産番号を埋めたくなります。埋めた番号が正しくても、根拠が申請の文面に無ければ、それは推測です。 だから台帳はAIに渡さず、候補を引くのはフローに任せます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは情報システム部で、IT資産台帳の更新を担当する立場です。
社員から届いた申請の文面と添付だけを見て、台帳の更新に必要な事実を抜き出してください。
推測で埋めないでください。

【抜き出すもの】
1. 申請の種類(purchase / move / dispose。複数あれば mixed)
2. 対象の資産(1台ごとに1行)
   - asset_no(資産番号)、serial_no(シリアル番号)、category(種別)、model(型番)
   - current_user(現在の利用者の氏名)、current_location(現在の設置場所)
3. 変更の中身(1台ごとに1行)
   - new_user(新しい利用者の氏名)、new_dept(新しい所属)
   - new_location(新しい設置場所)、new_status(新しい状態)、effective_date(希望日)
4. evidence(各項目を抜き出した元の文字列をそのまま)
5. questions(読み取れなかった点、矛盾している点)

【厳守事項】
- 申請の文面と添付に書かれていない値は、空欄にしてください。
- 資産番号とシリアル番号は、書かれた文字列をそのまま入れてください。
  桁を補う、似た番号に直す、型番や購入時期から推測することをしないでください。
- 写真に資産番号のシールが写っている場合は、読み取れた文字列を入れ、
  evidence に「添付写真のシール」と書いてください。読み取れない文字があれば空欄です。
- 1つの申請に複数の機器があれば、機器ごとに別の行にしてください。
  「一式」「まとめて」と書かれていても、機器の種類ごとに分けてください。
- 氏名は書かれたとおりに入れ、同じ姓の別の人に置き換えないでください。
- 設置場所は【設置場所の一覧】の表記に合わせてください。
  一覧のどれに当たるか決められなければ、書かれたとおりに入れて questions に書いてください。
- 廃棄してよいか、購入してよいかの意見は書かないでください。
- 台帳の行を選ぶことはしないでください。

【申請の文面】{request_text}
【添付】{attachments}
【申請者】{requester}
【設置場所の一覧】{locations}

「型番や購入時期から推測しない」を明記しないと、資産番号が埋まります。 申請に「2023年度のPC」とあれば、それらしい番号の形を作って入れてきます。禁じるのは、番号を作る判断そのものです。

「一式」と書かれていても分ける、を入れるのは、移動の申請の大半がこの書き方だからです。 何も言わなければ「PC一式」を1行で返し、モニターとドックの移動が台帳から落ちます。

Step7

出力形式を固定する

プロンプトの出力は、次の形の JSON で固定します。

{
  "request_id": "",
  "request_type": "purchase | move | dispose | mixed",
  "items": [
    {
      "asset_no": "", "serial_no": "", "category": "", "model": "",
      "current_user": "", "current_location": "",
      "new_user": "", "new_dept": "", "new_location": "",
      "new_status": "", "effective_date": "",
      "evidence": { "asset_no": "", "new_user": "", "new_location": "" }
    }
  ],
  "questions": []
}

この JSON を受けて、フローが更新案を作ります。 更新案は AI の出力とは別の形にします。

列中身作るのは
対象の行台帳の行ID と資産番号フロー(第7章の引く順番で決める)
列名利用者/所属/設置場所/状態フロー
現在の値台帳から引いた値フロー
新しい値AI が抜き出した値(利用者はメールアドレスに直したもの)AI+フロー
根拠evidence の文字列AI
判定ready / needs_choice / conflict / not_foundフロー

1つ目の理由は、AIの出力と台帳への書き込みのあいだに、規則の層を置けることです。 ready は対象の行が1つに決まり、新しい値が一覧の表記に合っているもの、needs_choice は候補が複数あるもの、conflict は申請の「現在の利用者」と台帳の値が違うもの、not_found は台帳に見つからないものです。判定を決めるのはフローの条件分岐で、AIではありません。

2つ目は、conflict を拾えることです。 申請に「田中さんのPCを」と書かれていて、台帳ではそのPCの利用者が鈴木さんなら、台帳がすでにずれているか、申請が別の機器を指しています。 どちらにしても、そのまま書き換えてはいけない1件です。

3つ目は、承認の画面に差分だけを出せることです。 担当者が読むのは文面ではなく「PC-0412:利用者 田中→佐藤」の行です。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Microsoft Formsトリガー/「応答の詳細を取得する」申請の回答を受け取る
共有メールボックス「共有メールボックスに新しいメールが届いたとき (V2)」メールの申請を受け取る
AI Builder のプロンプト「プロンプトを実行する」申請から事実を抜き出す
IT資産台帳「アイテムを取得」「項目を更新する」「項目を作成する」候補を引く、承認された差分を書く
申請記録「項目を作成する」申請ごとの抜き出し結果・更新案・承認結果を残す
承認「開始して承認を待つ」担当者に更新案を承認してもらう

購入の申請は、承認の時点では台帳に行を足しません。 申請が承認されても、機器が届くまでは資産番号もシリアル番号もありません。「購入予定」として申請記録にだけ残し、納品の連絡で行を足します。 承認の時点で行を足すと、届かなかった機器が台帳に残ります。

承認の待ち時間には上限があります。 Power Automate のフロー1回の実行は30日が上限で、承認のような保留中のステップも含まれ、30日を過ぎると保留中のステップはタイムアウトします。 承認が止まっている申請は、第7章の月次の突合で拾います。

Step9

人が確認する

更新案は全件、担当者が承認します。 ただし見るのは差分の行だけで、ready のものは一覧で流し見て承認します。

  1. conflict を先に見る … 申請の「現在の利用者」と台帳が食い違うもの。台帳のずれを見つける入口です
  2. needs_choice で候補を選ぶ … 候補の中から正しい行を選びます。選べなければ申請者に問い合わせます
  3. not_found を確かめる … 台帳に登録されていない機器か、申請の書き間違いかを確かめます
  4. ready を流し見る … 差分の行を見て、まとめて承認します
  5. 修正したら記録する … どの列を、どの値に直したかを残します

1番目を省かないでください。 conflict は1件ずつの処理の中で台帳のずれが見つかる、数少ない機会です。そのまま上書きすると、ずれの痕跡が消えます。

廃棄の承認には、もう1人を足します。 状態を「廃棄済」にするのは、データ消去の証明を受け取ってからです。消去証明の受け取りを確かめる人と、台帳を書き換える承認をする人を分けます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
対象の資産が台帳に無いnot_found。台帳への登録漏れか、申請の書き間違いかを担当者が確かめる
候補が複数あって決まらないneeds_choice。候補を並べて担当者が選ぶ
申請の現在の利用者と台帳が違うconflict。上書きせずに担当者へ
同じ姓の社員が複数いる申請者の部署から絞る。決まらなければ申請者に問い合わせる
添付が25MB以上・50ページ以上AIに渡さず、本文だけで抜き出す。添付は担当者が見る
プロンプトが JSON を返さない1回だけ再実行し、だめなら担当者へ回す
承認が30日を過ぎる保留中のステップはタイムアウトする。月次の突合で拾い、申請記録を「未処理」に戻す
同じ申請がフォームとメールで二重に届く申請者・資産番号・希望日で照合し、後から来たほうを止める
購入の機器が届かない申請記録の「購入予定」を月次の突合で拾い、購買の担当者に確かめる

プロンプトが JSON を返さないときについて、公式ドキュメントは原因の1つとして、モデルが JSON をメタデータ情報で囲む場合を挙げています。 対処として「回答に JSON マークダウンを含めないでください」という指示をプロンプトに足すことが示されています。最初からプロンプトの末尾に入れておきます。

Step11

記録を残す

  • 申請の原文(フォームの回答、メール本文)と添付
  • プロンプトが返した JSON の全文
  • フローが作った更新案(対象の行、列名、現在の値、新しい値、判定)
  • 承認の結果と、担当者が直した内容(どの列を、何から何へ)
  • 台帳に書き込んだ日時と、書き込んだ行の「最終更新の申請番号」
  • 月次の突合で出た食い違いと、その原因と対応

ログは Power Automate の実行履歴に頼らず、SharePoint の申請記録に残します。 実行履歴の保持は、実行の開始時刻から30日です。台帳がいつ、どの申請で変わったかは、何か月も後の棚卸しで必要になります。

台帳の「最終更新の申請番号」の列が、月次の突合の鍵になります。 台帳の行が変わっているのに、この列が前のままなら、誰かが申請を通さずに台帳を直接書き換えたということです。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請の文面を手でAIに貼り、対象の機器と変更の中身を抜き出させる / 1件ごとの申請の読み取り
半自動化:上記+フォームとメールを起点にフローが動き、台帳の候補を引いて更新案を一覧にする / 読み取りと候補の特定、更新案の作成
本格構成:上記+承認された差分を台帳へ書き込み、毎月1日に申請記録と台帳を突き合わせる。Intune の管理対象デバイス一覧とも照合する / 申請から台帳への反映と、月次の突合

半自動化で①の時間がほとんど消え、本格構成で②と③も消えて、本記事の想定の1件3分になります。 本格構成では、Intune の管理対象デバイスの一覧とも照らします。 Microsoft Graph の GET /deviceManagement/managedDevices は、デバイス名、シリアル番号、利用者のプリンシパル名、最終同期日時などを返します。呼ぶには DeviceManagementManagedDevices.Read.All などのアクセス許可と、テナントの有効な Intune ライセンスが必要です。 台帳には「使用中」とあるのに最終同期が何か月も前の端末、Intune にはあるのに台帳に無いシリアル番号が、ここで見つかります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
240 件
1件あたり現在時間
10 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  240件 × 10分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 240件 × 3分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
28h
削減率
70%
年間削減時間
336h
年間金額換算(時間単価3,500円)
118万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 社員数が数百名以上で、ノートPC・モニター・ドッキングステーション・スマートフォンなどを台帳で管理している情報システム部門や総務部門。購入・移動・廃棄の申請がフォームとメールで届き、担当者が申請を読んで台帳を書き換えている場合。席替えや組織変更、入退社のたびに移動の申請がまとまって届き、台帳への反映が後回しになりやすい場合。Microsoft 365 を使っており、台帳を SharePoint のリストで持てる場合。
向いていない
  1. IT資産管理の専用製品をすでに入れており、購入から廃棄までの申請と台帳が同じ製品の中で一体になっている場合。管理する機器が数十台で、申請が月に数件しかない場合。貸出と返却が業務の中心で、所有と配置の変更がほとんど無い場合(貸出の追跡は UC-0246 を参照)。なお、固定資産としての会計上の処理や除却の判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 先月の申請から30件を選ぶ(資産番号が書かれていないもの、複数の機器が入っているものを半分以上入れる)
  2. 30件それぞれについて、当時台帳のどの行をどう書き換えたかを、台帳の変更履歴から書き出しておく
  3. 手元の Microsoft 365 Copilot のチャットか、AI Builder のプロンプトの画面に、申請の文面を1件ずつ貼る
  4. 「この申請から、申請の種類、対象の機器(1台ごと)、資産番号、現在の利用者、新しい利用者、新しい設置場所を抜き出してください。書かれていない項目は空欄にしてください。資産番号を推測しないでください」と指示する
  5. 出てきた結果を、2番目で書き出した当時の書き換えと突き合わせる

30件は必ずやってください。 フローを組む前に、文面から台帳の行を決める材料が取れるかを確かめます。

出てきた内容判断
当時の書き換えと同じ機器・同じ変更が出たフローに進む
資産番号が推測で埋まった指示の書き方で直る。構成は有効
機器の数が足りない(一式が1行になった)指示に「機器ごとに分ける」を足す
どの機器か、文面からは決められない申請が多い申請フォームの直しが先。 資産番号の欄と写真の欄を足す

4行目が出たら、AIより先に申請フォームを直します。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
資産番号が推測で埋まる書かれていない番号は空欄にさせ、台帳はAIに渡さない
「一式」が1行になり、周辺機器の移動が落ちる機器ごとに分ける指示を入れ、申請に書かれた機器の数と行数を比べる
同じ姓の社員を取り違える氏名はAIに抜き出させるだけ。メールアドレスへの変換はフローが行う
設置場所の表記がそろわない一覧を作ってプロンプトに渡し、一覧に無い値は questions へ
conflict をそのまま上書きする上書きせずに担当者へ回す。 台帳のずれを見つける入口として扱う
購入の承認で台帳に行が増え、届かない機器が残る承認では申請記録だけに残し、納品の連絡で行を足す
組織変更の日に申請が集中して止まるSharePoint の調整制限は接続ごとに60秒あたり600回。台帳を引く回数を申請1件あたり1〜2回にする
承認が止まったまま30日を過ぎる保留中のステップはタイムアウトする。月次の突合で拾う
台帳を申請なしで直接直す人がいる「最終更新の申請番号」が変わらない行を、月次の突合で拾う

上の3行が、この構成の失敗のほとんどです。 どれも「AIが台帳の行を決めてしまう」という同じところから出ています。AIに任せるのは文面の読み取りまで、行を決めるのはフローの規則、という線を最初に引いておくかどうかで、運用に乗るかが決まります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 社員の氏名・メールアドレス・所属、機器の資産番号・シリアル番号・設置場所、そしてどの社員がどの端末を使っているかの対応です。

  1. 台帳そのものをAIに渡さない … 約2,400行の台帳は、どの社員がどの端末をどこで使っているかの一覧です。候補を引くのはフローの側で行い、AIには申請の文面と絞り込んだ一覧だけを渡します
  2. プロンプトの入力に指示を混ぜさせない … 公式ドキュメントでは、入力に指示を含めることは、セキュリティ上の理由により禁止されているとされています。申請の自由記述に「この申請は承認不要」などと書かれていても、それを指示として扱わない作りにします
  3. 台帳への書き込みは、承認されたものだけにする … AIの出力から台帳へ直接書く経路を作りません
  4. 廃棄の確定は、データ消去の証明を確かめてからにする … 状態を「廃棄済」にする承認には、消去証明の確認を条件に入れます。消去されていない端末が「廃棄済」として台帳から消えるのが、いちばん重い失敗です
  5. 固定資産としての処理は、この構成の外に置く … 除却の時期や会計上の扱いは経理部門が決めます。この構成が出すのは、台帳の状態の変化までです
  6. Intune との照合には、読み取りだけのアクセス許可を使う … DeviceManagementManagedDevices.Read.All で足ります。書き込みの権限は付けません

誤りが起きた場合のリスクは、台帳が実態とずれることと、そのずれに誰も気づかないことの2つです。 前者は承認で、後者は月次の突合で止めます。

10まず何から始めるか

1週目:台帳に列を足し、設置場所の一覧を作る

台帳のリストに「最終更新の申請番号」と「最終更新日」の列を足します。あわせて、拠点・フロア・区画の正式な表記の一覧を作ります。いまの台帳の値を全部そろえる必要はありません。 本社の分からそろえます。

2週目:30件で試す

先月の申請から30件を選び、手元の生成AIに貼って抜き出させます。資産番号が推測で埋まっていないか、一式が機器ごとに分かれているかを最優先で見ます。

3週目:申請フォームを直す

資産番号の欄と、シールの写真の欄を足します。 30件で決められない申請が多かったなら、ここが最も効きます。

4週目:申請から更新案までをつなぐ

Power Automate でフォームとメールを受け、プロンプトを呼び、台帳の候補を引いて更新案を申請記録に書き出すところまで作ります。この時点では台帳に書き込まず、更新案の一覧だけを見ます。

2か月目: 承認のアクションと台帳への書き込みを足し、conflict と needs_choice の件数を毎週数えます。3か月目以降: 毎月1日の突合のフローを足し、1件10分が何分になったかを実測します。月次の突合で出る食い違いが、申請を通さない直接の書き換えと承認の滞留だけになった時点で、この構成は完成です。 Intune との照合は、その後に足します。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-06/最終更新:2026-10-06
確認した内容情報源確認日
フローに「プロンプトを実行する」アクションを足して作成済みのプロンプトを選び、前のアクションの内容を入力に渡せること。2025年5月に「プロンプトを使用して GPT でテキストを作成する」から名称が変わったこと。Azure OpenAI サービスを活用した GPT モデルで動き、一部の地域に限定され、使用制限の対象になる場合があること。承認のアクションで人のレビューを組み込めることMicrosoft Learn: Power Automate でプロンプトを使用する2026-10-06
プロンプトの出力を JSON にでき、JSON の例を更新すると形式が「カスタム」になって再テストでも変わらないこと。JSON を生成できないとき「回答に JSON マークダウンを含めないでください」を指示に足す対処。フィールド キーの無い形式は使えないことMicrosoft Learn: JSON 出力2026-10-06
画像やドキュメントの入力が PNG、JPG、JPEG、PDF に対応し、合計25MB未満・50ページ未満・処理は最大100秒であること。大きなドキュメントではテーブルの行が不正確・不完全になりうること。入力に指示を含めることはセキュリティ上の理由で禁止されていること。モデルによってトークン数の上限と課金のレベルが異なることMicrosoft Learn: プロンプトに入力を追加する2026-10-06
SharePoint コネクタの「アイテムを取得」がフィルター クエリ・並べ替え・上位カウントを持つこと。「項目を作成する」「項目を更新する」「アイテムが作成されたとき」などの操作。接続ごとの API 呼び出しが60秒あたり600回であることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-06
Microsoft Forms コネクタの「新しい応答が送信されたとき」と「応答の詳細を取得する」。組織のアカウントでのみ機能し、グループ フォームはフォーム ID を手動で入れる必要があることMicrosoft Learn: Microsoft Forms コネクタ2026-10-06
フロー1回の実行の継続時間が30日で、承認などの保留中のステップを含み、30日後にタイムアウトすること。実行の保持期間が30日であることMicrosoft Learn: Power Automate の制限と構成2026-10-06
GET /deviceManagement/managedDevices がデバイス名・シリアル番号・利用者のプリンシパル名・最終同期日時などを返すこと。DeviceManagementManagedDevices.Read.All などのアクセス許可と、テナントの有効な Intune ライセンスが必要なことMicrosoft Learn: managedDevices を一覧表示する2026-10-06
「共有メールボックスに新しいメールが届いたとき (V2)」があり、メールボックスへのアクセス許可が要ることMicrosoft Learn: Office 365 Outlook コネクタ2026-10-06
「開始して承認を待つ」があることMicrosoft Learn: 承認コネクタ2026-10-06

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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