人材ポートフォリオはAI前提で描き直す|減る仕事と増える役割

「中期計画の人材の章を書き直すよう言われたが、AIでどの仕事がどれだけ減るのか、社内の誰も答えられない」「AIに詳しい人を何人育てるかは決めたのに、全社の人の配分は前の計画のままになっている」。中期計画の改定の時期に、経営企画やAI推進の担当者が突き当たる問いです。手がかりになる公的な文書はあります。経済産業省は2022年5月に公表した人材版伊藤レポート2.0で、目指す事業や経営戦略に向けて人材の構成を組み直す「動的な人材ポートフォリオ」を共通の要素に挙げ、2026年3月の就業構造の推計では、AIやロボットの普及で事務の仕事が余り、専門の仕事が足りなくなる見込みを示しました。人材ポートフォリオは、今いる社員の一覧に年次を足した表ではありません。本当は、AIが担う作業を差し引いたうえで、数年後にどの種類の仕事にどれだけの人の時間を置くかを描く計画です。この記事では、今の構成を描く、AIに移る作業を出す、3年後の構成を描く、差の埋め方を決める、年次で見直す、という流れを整理します。
カメ先生人材ポートフォリオは、人事が作る社員の名簿の延長だと思われがちなんだけど、本当は経営の計画なんだ。どんな仕事にどれだけの人を置くかを、事業の計画から逆算して描く。
カメ子AIが仕事の一部を担うようになると、その逆算の前提が変わる、ということですか。
カメ先生そう。減るのは職種まるごとより、職種の中の作業の束であることが多い。その代わり、AIの出力を確かめる役や、業務を組み替える役が増える。だから描き直しが要るんだ。
カメ子どの仕事が縮むかを決めるのは、AIではなく経営の側なんですね。
- 人材ポートフォリオは名簿の延長ではなく、事業の計画から逆算した仕事の種類ごとの構成の計画。AIが入ると、その前提の仕事の割合が変わる
- 今の構成を時間の割合で描き、業務一覧からAIに移る作業を幅で見積もり、増える確かめる仕事まで足して3年後の構成を2本の筋書きで描く
- 差は育成・外部・AIのどれで埋めるかを決め、年に1回描き直す。下書きはAIに任せ、どの仕事が縮むか・誰を育成に回すかは人が決める
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人材ポートフォリオは名簿ではなく、仕事の種類と時期の計画
人材ポートフォリオは、人材を種類ごとに分け、今の量と、目指す時点で要る量を並べた計画です。資産の組み合わせを指す投資の言葉を、人材に当てはめたものです。名簿や組織図と違うのは、横の軸に時間があり、事業の計画から逆算して要る量を置く点です。
よく見かけるのは、今の社員を職種ごとに数えた表に、退職の見込みと採用の予定を足しただけのものです。これは今の構成を先に延ばした見通しで、事業の計画から逆算した構成ではありません。延長の表からは、どの種類の人がいつ足りなくなるかは読めても、そもそもその仕事が数年後に要るのかは読めません。
AIが仕事の一部を担う前提に立つと、この違いが大きくなります。延長の表は、今と同じ仕事の割合が続くと仮定しています。けれど、問い合わせの一次回答や書類の下書きのように、AIに移る作業が増えれば、同じ職種でも要る人の量と求める力が変わります。描き直しとは、この仮定を外して、仕事の側から数え直すことです。
本稿の読み手は、中期計画やAI戦略の人材の章を書く経営企画とAI推進の担当者です。評価や報酬、採用の手続き、人員の削減の計画には入りません。また、AIに詳しい人を何人育てるかではなく、AIで仕事の配分が変わった後の全社の構成を扱います。AI推進の役割表への落とし込みは、別の記事「デジタルスキル標準2.0とは?」で整理しています。
公的な位置づけ:人材版伊藤レポートの「動的な人材ポートフォリオ」
人材ポートフォリオという言葉が国内の経営の文書に広まったきっかけは、経済産業省の報告書、通称「人材版伊藤レポート」です。最初の報告書は2020年9月に、それを深めた「人材版伊藤レポート2.0」は2022年5月に公表されました。2.0は、人的資本経営を実践するための考え方を、3つの視点と5つの共通要素に整理しています。
3つの視点は、経営戦略と人材戦略を連動させること、今の姿と目指す姿の差を数で捉えること、人材戦略を実行する過程で企業の文化として根付かせること、です。5つの共通要素の最初に置かれているのが「動的な人材ポートフォリオ」で、目指す事業や経営戦略の実現に向けて、多様な個人が活躍する人材の構成を組めているかを問う要素です。
ここで押さえたいのは、報告書が求めているのは構成の表そのものより、経営戦略から逆算した差を数で捉えることだという点です。「動的」という言葉は、戦略が変われば構成も組み直す、という意味に読めます。AIの普及は、まさに戦略の前提となる仕事の割合が変わる出来事です。
開示の面でも動きがあります。経済産業省は2026年3月、内閣官房・金融庁と連名で「人的資本可視化指針」の改訂版を公表しました。開示の細目は本稿の範囲外ですが、投資家が経営戦略と人材戦略の連動に関心を寄せていることは、人材ポートフォリオを中期計画に載せる理由の一つになります。
- 出典:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書(人材版伊藤レポート2.0)」2022年5月公表、同「人材版伊藤レポート」2020年9月公表
- 就業構造の推計と可視化指針の改訂の時期は、経済産業省の広報誌の解説記事(2026年8月)によります
AI前提で描き直す理由:2040年の就業構造の推計
経済産業省は2026年3月、「2040年の就業構造推計(改訂版)」を公表しました。経済産業省の広報誌の解説によると、十分な国内投資と産業構造の転換が実現した場合、AIやロボットの導入で効率化が進み、就業者の総数では大きな不足は生じないものの、職種や学歴によっては需要と供給がずれる見込みです。
推計では、事務の職種で437万人が余る一方、専門の職種で181万人、現場の人材で260万人が不足するとされています。専門の職種の中でも、AIやロボットの活用に関わる人材は339万人が不足するという試算です。全体の数は足りても、仕事の種類ごとには大きく偏る、という見立てです。
この推計は、国全体の2040年の姿を一定の前提のもとで描いたもので、個々の会社の3年後をそのまま示すものではありません。自社の計画に「事務は何割減る」と書き写すのは避けます。参考になるのは数字より、減る側と増える側が同じ時期に同時に起きる、という構図のほうです。
同じ記事で、経済産業省の担当課長は、職種や学歴を必ずしも画一的に捉える必要はないとしたうえで、足りない分野を担える素養を持つ人材をどう育て、まかなうかが課題だと述べています。会社の中に置き換えれば、余る側の作業を担っていた人の時間を、足りない側の役割にどう移すか。その計画が、人材ポートフォリオの描き直しです。
描く単位は職種ではなく、仕事の種類で切る
描き直しの最初の判断は、人材を何で分けるかです。営業・経理・人事といった職種だけで分けると、AIの影響が見えません。同じ経理の中に、伝票の照合のようにAIに移りやすい作業と、決算の判断のように人に残る作業が混ざっているからです。そこで、職種の下に仕事の種類の軸を1本足します。
仕事の種類は、多くても6つ程度に絞ります。たとえば、決まった手順で処理する仕事、文書や資料を作る仕事、判断して決める仕事、人と向き合う仕事、AIの出力を確かめる仕事、業務やAIの仕組みを組み替えて運用する仕事、です。最後の2つは、AIが入ることで新しく生まれるか、大きく膨らむ種類です。
種類が多すぎると、部署ごとの見積もりがばらばらになり、全社で足し合わせられません。逆に2つや3つでは、減る仕事と増える仕事が同じ箱に入ってしまいます。最初の年は6つ程度で描き、使ってみて分けにくい種類があれば翌年に見直す、くらいの構えで十分です。
もう一つ決めるのは、数える単位です。人数で数えると、1人が複数の種類の仕事をしている実態が消えます。今の構成は人数ではなく、人が使う時間の割合で描き、最後に人数に換算します。兼務の多い会社でも、現実に近い表になります。AIを1人分の人数に換算する話は、別の記事「AIは1人分として数えられる?」の領分なので、ここでは人の時間だけを数えます。
手順1:今の構成を、時間の割合で描く
今の構成は、部署ごとに「各仕事の種類に、部署の時間の何割を使っているか」を出すところから始めます。厳密な工数の調査は要りません。部署の責任者と、実務の担当者2〜3人に聞き取り、1割刻みで見積もれば足ります。精度より、全部署を同じ物差しで描くことのほうが大切です。
聞き取りの材料には、業務一覧や業務の手順書を使います。手順書の作業を仕事の種類に振り分け、時間の割合を当てていきます。手順書がない部署では、1週間の予定表を3人分ほど集め、予定の名前から種類を当てる方法もあります。この振り分けの下書きは、AIに任せやすい作業です。
部署の割合が出たら、部署の人数をかけて全社で足し合わせます。たとえば「決まった手順で処理する仕事」に、全社で何人分の時間を使っているかが出ます。この数字は人の内訳としてではなく、時間の量として読みます。管理職の時間を入れるか外すかは、会社として1つに決めておきます。
全社の表で、文書や資料を作る仕事と、決まった手順で処理する仕事の合計が大きく出たなら、そこがAIの影響を最も受ける側です。反対に、AIの出力を確かめる仕事はほとんど出てこないはずです。この偏りが、描き直しの出発点になります。最初の表は経営会議で一度見せ、物差しの合意をとっておくと、後の議論が数字の定義の争いになりません。
手順2:業務一覧から、AIに移る作業を幅で出す
次に、業務一覧の作業ごとに、AIに移る度合いを見積もります。分け方は3つで足ります。AIが下書きや処理を担い、人は確かめるだけになる作業。AIが一部を担い、人の作業も残る作業。人に残る作業。「AIが全部やる」という区分は作りません。確かめる人の時間は、どの作業にも残るからです。
見積もりの下書きはAIに任せられます。業務一覧と作業の説明を渡し、3つの区分のどれに当たるかを、その理由と、移すのに要る条件と一緒に書かせます。条件とは、材料が揃っているか、誤りが許される作業か、確かめる人がいるか、といったことです。理由と条件が書かれていない分類は採りません。
見積もりは1つの数字にせず、幅で持ちます。「この作業は時間の3〜6割がAIに移る」といった形です。移る割合は、AIの性能だけでなく、材料の整い方、確かめる手間、使う人の慣れで変わります。AIを入れたことで、かえって確かめる仕事や直す仕事が増える場合もあり、その数え方は別の記事「AIを入れると仕事は減るとは限らない」で整理しています。
最後に、区分ごとの見積もりを仕事の種類ごとに足し上げます。ここで、減る時間と同時に増える時間も書き込みます。AIに移った作業の分だけ確かめる仕事が増え、仕組みの手入れの分だけ組み替えて運用する仕事が増えます。減る側だけを足した表は、必ず実際より楽観的になります。
減る仕事は、職種まるごとではなく作業の束
見積もりを足し上げると、減る仕事の姿が見えてきます。多くの場合、減るのは職種まるごとではなく、職種の中の作業の束です。営業事務なら見積書や議事録の下書き、経理なら照合や仕訳の候補づくり、人事なら問い合わせへの一次回答、といった束です。
この見え方は、計画の書き方を変えます。職種で減ると書けば、その職種の人を他の部署へ移す計画になります。作業の束で減ると書けば、同じ職種のまま、空いた時間を確かめる仕事や顧客と向き合う仕事に振り向ける計画も選べます。どちらを選ぶかは、事業の計画と人の事情を知る経営が決めることで、表から自動的には出てきません。
減る見込みには、時期も添えます。AIに移る作業は、材料が揃い、確かめる手順が決まってから初めて減ります。入れてすぐに時間が浮くとは限らず、慣れるまでの間はむしろ増えることもあります。1年目は減らない、2年目から減り始める、といった時期の見込みを、作業の束ごとに書いておきます。
外部の予測値の扱いにも注意します。「AIで何割の仕事がなくなる」といった数字は、前提と時期と対象の国や職種が自社と違います。引用するなら出典と公表の時期を添え、自社の見積もりの根拠には使いません。計画の数字は、自社の業務一覧から積み上げたものだけにします。
増える役割は3つ:確かめる・組み替える・運用する
AIが仕事の一部を担うと、増える役割があります。1つ目は、AIの出力を確かめる役です。下書きの事実を確かめ、根拠のない主張を外し、外に出してよいかを決めます。2つ目は、業務を組み替える役で、AIを入れる前提で手順を描き直し、消す工程と残す工程を決めます。3つ目は、AIを運用する役で、指示文や材料の手入れ、利用の状況の点検、提供元の変更への対応を担います。
このうち、量が大きくなりやすいのは確かめる役です。AIに移った作業の量に応じて増え、しかも業務の中身を知っている人でないと務まりません。確かめる役は、減る作業を担っていた人の中から生まれやすいのが特徴です。この役を数に入れないと、計画の上では人が余り、現場では人が足りない、という食い違いが起きます。
組み替える役と運用する役は、量は小さくても、社内にいないと困る役です。外部に頼むこともできますが、業務の手順を描き直す判断は社内の業務の知識に依存します。どの役を誰が持つかの定義や兼務の役割表は、別の記事「デジタルスキル標準2.0とは?」の領分なので、本稿では全社の構成にどれだけの時間を置くかまでにとどめます。
3つの役は、必ずしも専任の職種にする必要はありません。各部署の時間の割合として「確かめる仕事に2割」と置く形でも、ポートフォリオとしては十分です。専任の部署を作るか、各部署に分けて置くかは、AI推進の体制の決め方と合わせて判断します。増える役割を時間の量で先に置いておくと、体制の議論が人の取り合いになりにくくなります。
手順3:3年後の構成を、2本の筋書きで描く
今の構成と、AIに移る作業の見積もりがそろったら、目指す時点の構成を描きます。時点は中期計画の終わりに合わせ、多くの会社では3年後になります。順番は、事業の計画から仕事の種類ごとの需要を出し、そこからAIに移る分を差し引き、増える役割の分を足す、です。
描くのは1本ではなく、2本の筋書きにします。AIへの移行が見込みどおり進む筋と、材料の整備や定着が遅れて半分ほどしか進まない筋です。2本の差が大きい仕事の種類ほど、計画の不確かさが大きいことを示します。不確かさの大きい種類では、人の配置を早く動かしすぎない判断が要ります。
3年後の構成も、まず時間の割合で描き、最後に人数に換算します。換算のときに、定年や退職の見込みを重ねると、自然に減る分とAIで浮く分の関係が見えます。自然に減る分の範囲で、AIに移る作業を吸収できるなら、配置の変更は小さく済みます。吸収しきれない種類だけが、手当ての要る差です。
この段階で、事業の計画の側に戻って確かめることもあります。AIで浮いた時間を、どの事業の伸びに充てるのかが事業の計画に書かれていなければ、浮いた時間の行き先がありません。人材ポートフォリオの描き直しは、事業の計画の描き直しと対で行うのが筋です。
職種ごとの構成の差の表
今の構成と3年後の構成を、職種ごとに1枚の表に並べます。行は職種、列は仕事の種類ごとの今と3年後の時間の割合で、最後に差の中身と埋め方の候補を置きます。下の表は、架空の会社での書き方の例です。数字は書き方を示すためのもので、目安ではありません。
| 職種 | 今の時間の割合(例) | 3年後の時間の割合(例) | 差の中身 | 埋め方の候補 |
|---|---|---|---|---|
| 営業 | 資料作り4割、顧客対応4割、手順の処理2割 | 資料作り2割、顧客対応6割、確かめる仕事2割 | 資料作りが減り、顧客と向き合う時間が増える | 育成(確かめる手順) |
| 営業事務 | 手順の処理6割、資料作り3割、問い合わせ1割 | 手順の処理3割、確かめる仕事4割、組み替え1割、問い合わせ2割 | 処理が減り、確かめる役が膨らむ | 育成と配置の見直し |
| 経理 | 照合と仕訳6割、判断3割、問い合わせ1割 | 照合と仕訳3割、確かめる仕事3割、判断4割 | 照合が減り、判断に寄る | 育成 |
| 情シス | 問い合わせ対応5割、保守3割、企画2割 | 問い合わせ対応2割、AIの運用3割、保守3割、企画2割 | 運用する役が新たに要る | 外部と育成の組み合わせ |
| マーケ | 制作5割、企画3割、分析2割 | 制作2割、確かめる仕事2割、企画3割、分析3割 | 制作が減り、確かめる役と分析が増える | 育成 |
表を読むときは、行ごとの合計より、列の動きに注目します。複数の職種で同時に増える種類が、全社として手当てすべき差です。例では確かめる仕事がほぼ全ての職種で増えており、部署ごとの工夫に任せず、全社で確かめる手順と育成の順番を揃える対象になります。
表の下書きは、手順1と手順2の結果を渡してAIに作らせられます。ただし、どの数字を採るかは部署の責任者と確かめてから確定させます。AIが整えた表は数字が揃って見えるぶん、聞き取りの粗さが隠れます。見積もりの幅を別の列で残しておくと、確かさの度合いが読み手に伝わります。
手順4:差を育成・外部・AIのどれで埋めるか
差が出たら、仕事の種類ごとに埋め方を決めます。選び方は大きく3つで、社内の人を育てて移す、外部の人や会社に頼む、AIにさらに任せる、です。採用もありえますが、本稿では採用の手続きには入らず、社外から埋める選び方の一つとして扱います。
判断の物差しは3つ置きます。1つ目は、その仕事に社内の業務の知識が要るか。確かめる役や組み替える役は業務を知らないと務まらないので、育成が向いています。2つ目は、要る時期までの長さ。育成には時間がかかるので、1年以内に要る差は外部で一時的に埋め、並行して育てます。3つ目は、量が続くか。一時的な量なら外部、続くなら社内です。
AIで埋める選び方は、慎重に扱います。AIで埋めると書いた差には、AIが期待どおりに働かなかったときに誰が担うかまで書きます。確かめる人の時間を含めずに「AIで埋める」と書くと、差が消えたように見えて、実際には確かめる仕事が残った部署に積み上がります。
育成で埋める差は、時期と順番で書きます。どの種類の仕事に、何年目までに、どれだけの時間を移すか、です。研修の中身や形式は別に決めるとして、人材の章に書くのは量と順番だけです。誰を育成に回すかの決定は、部署の責任者と人事が、本人の事情を踏まえて行います。
中期計画とAI戦略の人材の章に書くこと
描き直した構成は、中期計画とAI戦略の人材の章に載せます。書く項目は多くありません。仕事の種類の定義、今と3年後の時間の割合の全社の合計、差の大きい種類と埋め方、2本の筋書きの差、見直しの時期、の5つです。部署ごとの細かい表は別紙に回し、本文は1ページに収めます。
書き方で気をつけるのは、人数の増減を前に出さないことです。「事務は何人減る」と書くと、計画が人員削減の計画として受け取られ、聞き取りに協力した現場の信頼を失います。本文は仕事の種類ごとの時間の動きで書き、人数は換算の参考として添える程度にします。
AI戦略の文書を別に持っている会社では、人材の章は人材ポートフォリオの要点を指し示すだけにして、同じ表を2つの文書に載せないようにします。AI戦略の文書に何を書くかは別の記事「AI戦略に書くべき項目一覧」で、中期計画の3年をどう段階に割るかは「中期経営計画にAIをどう織り込む?」で扱っています。
外に開示する場合も、まず社内の計画として筋が通っていることが先です。経営戦略から逆算した差を数で捉えているかどうかが、人材版伊藤レポートの問う中身でした。外向けの表現を先に整えると、社内の議論が開示の文言の調整にすり替わってしまいます。
AIに任せる下書きと、人が決めること
描き直しの作業の多くは、AIに下書きを任せられます。任せやすいのは、次のような作業です。
- 業務一覧の作業を、6つ程度の仕事の種類に振り分けた案
- 作業ごとの、AIに移る度合いの候補と、その理由・移すのに要る条件
- 部署ごとの時間の割合を全社で足し上げた表
- 職種ごとの差の表の下書きと、見積もりの幅の列
- 2本の筋書きの差が大きい仕事の種類の洗い出し
一方で、どの仕事が縮むかの確定、誰を育成に回すか、差をAIで埋めると決めるかは、AIに決めさせません。AIは、業務一覧に書かれていない仕事や、人の事情を知りません。手順書に載っていない調整の仕事や、特定の人にしかできない顧客との関係は、一覧から機械的に振り分けると消えてしまいます。
人が確かめる範囲も、先に決めておきます。AIの振り分けは、部署の責任者が全件を読むのではなく、時間の割合が大きい作業から上位の2割を確かめます。理由と条件が書かれていない振り分けは差し戻します。AIに渡す業務一覧からは、個人の名前や評価にかかわる情報を外しておきます。
手順5:年に1回、描き直す
人材ポートフォリオは、一度描いて終わりの表ではありません。「動的」という言葉どおり、年に1回は描き直します。時期は事業の計画を見直す時期と同じにし、別の周期を作らないのが続けるこつです。描き直しでは、今の構成の割合を聞き取り直し、3年後の構成の前提を確かめます。
年次の見直しに加えて、臨時に描き直す引き金も決めておきます。AIの能力や提供の形が大きく変わったとき、事業の計画が変わったとき、見込んだ移行が遅い方の筋書きよりさらに遅れたとき、の3つです。引き金を決めておかないと、前提の崩れた表が次の年次まで使われ続けます。
見直しで役に立つのは、前年の見込みと実際の差です。AIに移ると見込んだ作業は本当に減ったか、確かめる仕事はどれだけ増えたか。差が大きかった作業の束は、翌年の見積もりの幅を広げます。見込みが外れたこと自体は失敗ではなく、次の見積もりの材料です。
見直しの結果は、人材の章の本文を毎年書き換えるより、差の表の版を重ねる形で残します。前年の版と並べれば、どの種類の仕事が見込みより速く動き、どれが遅かったかが、経営会議で一目で分かります。3年分の版がたまると、自社の見積もりの癖も見えてきます。
描き直しでやりがちな失敗
描き直しが形だけで終わる会社には、共通する進め方があります。次の6つは、中期計画の改定の時期に起きやすいものです。
- 今の社員の名簿に退職と採用の予定を足しただけで、AIで変わる仕事を数えていない
- 減る時間だけを足し上げ、確かめる仕事と運用する仕事の増加を入れていない
- 外部の予測値をそのまま書き写し、自社の業務一覧から積み上げていない
- AIで埋めると書いた差に、うまくいかなかったときの担い手が書かれていない
- 人数の増減を本文の前に出し、人員削減の計画と受け取られて聞き取りが止まる
- 一度描いた表を見直さず、前提の崩れた数字が次の計画まで使われる
中でも多いのは、最初の2つです。名簿の延長は作りやすく、減る時間の足し上げは説明しやすいので、つい計画の形になってしまいます。どちらも、AIが入ることで仕事の配分が変わるという、描き直しの出発点を外しています。
5つ目は、計画の中身より進め方の問題です。聞き取りの段階で目的を説明し、作業の時間の割合を聞くのは全社の計画のためで、個人の評価には使わないと伝えておくと、現場は実態に近い数字を出してくれます。
まとめ
人材ポートフォリオは、今の社員の名簿を先に延ばした表ではなく、事業の計画から逆算して、仕事の種類ごとにどれだけの人の時間を置くかを描く計画です。人材版伊藤レポート2.0が求めるのも、目指す姿との差を数で捉えることでした。AIが仕事の一部を担う前提では、今の構成を時間の割合で描き、業務一覧からAIに移る作業を幅で見積もり、増える確かめる仕事・組み替える仕事・運用する仕事を足して、3年後の構成を2本の筋書きで描きます。差は育成・外部・AIのどれで埋めるかを決め、年に1回描き直します。下書きはAIに任せ、どの仕事が縮むか、誰を育成に回すかは人が決めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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