営業研修はAIで何を変える?|人が教える所を残す

営業研修はAIで何を変える?|人が教える所を残す

「商談の録画は山ほどたまっているのに、新人の研修は相変わらず先輩の話を聞く時間になっている」「AIで研修を作り直せと言われたが、どこまで任せてよいのか線が引けない」。営業企画や営業責任者が研修の中身を決め直すときに、よく出てくる声です。手がかりになる数字はそろってきました。ハブスポット・ジャパンが2026年2月に公表した調査では、営業担当者の生成AIの利用率は1年で28.9%から43.4%に伸びました。一方で買い手の81.2%は、営業担当者だからこそ提供できる価値に期待すると答えています。つまり営業研修の問いは、AIで研修を置き換えるかどうかではありません。本当は、人が教える所と、AIで現場に回す所の線をどこに引くかです。この記事では、教材づくり・練習・受講後の定着の確かめの3つの工程ごとに、人とAIの分担を比べて整理します。


カメ先生カメ先生

営業研修にAIを入れるというと、講師をAIに替えることだと思われがちなんだけど、本当は、研修の中身を工程ごとに分けて、手間のかかる所だけを回すことなんだ。


カメ子カメ子

研修を丸ごとAIに任せる、という話ではないということですか。


カメ先生カメ先生

そう。教材の下書きや、受講後に身についたかを数える作業はAIが速い。でも、何を教えるか、どこまでできたら合格とするかは、売り方を知っている人が決めるんだ。


カメ子カメ子

作業を回すことと、教える中身を決めることは、別の仕事なんですね。


この記事のポイント
  • 営業研修を「教材づくり」「練習」「受講後の定着の確かめ」の3工程に分け、工程ごとに人が教える所とAIで回す所を比べる
  • AIに任せるのは、商談の録画や記録からの教材と想定問答の下書き、受講後の記録から身についたかを数える下書きまで
  • 何を人が教えるか、合格の基準、評価への使い方はAIに決めさせない。録画を教材に使う前に、同意と社外秘の線を決める

リード獲得・育成の打ち手として、ウェビナーの集客と運営でお困りですか?

企画・集客・運営までデボノが伴走支援。外部リスト頼みにしない「自社の集客力」を育てます。

目次

この記事が扱う判断:営業研修の中身を誰が決めるか

「営業の育成」「営業の教育」という言葉は、人事部門の新入社員研修や階層別の研修の話でも使われます。この記事が扱うのは、営業企画や営業責任者が、自部門の研修で何を教え、どこにAIを使うかを決める判断です。インサイドセールスの責任者が、立ち上がったばかりの担当者に何を教えるかを決める場面も含みます。

研修の形式の話には入りません。集合で行うか、短い単元に刻むか、何曜日に何時間行うかといった届け方は、別の記事で扱っています。本稿が見るのは、研修で扱う中身を、人の手で教えるものとAIで回すものに分ける線です。形式が同じでも、この線の引き方で研修の中身は大きく変わります。

向きの違いも先に書いておきます。社内には「AIの使い方を教える研修」の話がたくさんありますが、本稿はその逆で、「AIを使って営業を教える」側の話です。受講者に生成AIの操作を覚えてもらうことが目的ではなく、商談の進め方や製品の説明を身につけてもらう研修で、準備と確認の手間をAIで減らします。

判断の担い手を営業部門に置くのには理由があります。研修の中身のよしあしは、実際の商談でどんな質問が出て、どこで話が止まるかを知っている人にしか見分けられないからです。人事や研修の担当者は日程と記録を整える役に回り、教える中身の線は、売り方を知っている人が引きます。

数字で見る:AIは営業に広がり、買い手は人の価値を求めている

冒頭の調査をもう少し詳しく見ます。ハブスポット・ジャパンの「日本の営業に関する意識・実態調査2026」は、2025年10月末に売り手1,545名と買い手515名に聞いたものです。買い手が営業担当者に期待する価値として挙がったのは、個別の事情を汲んだ提案、潜在的な必要の引き出し、共感と気配りでした。いずれも、資料を読めば身につくものではありません。

同じ調査には、研修の組み方に関わる数字もあります。会社の支援がない場合、生成AIを週に1回以上使う営業担当者は35.6%でした。使ってよいと許可しただけの会社では47.2%、業務の流れに組み込んだ会社では74.8%です。許可するだけでは使われず、仕事の手順に入れたときに使われることが、数字に出ています。

営業企画の側の数字もあります。スピーダが2026年8月に公表した「営業企画白書2026」では、従業員1,000名以上の企業で営業企画・営業推進を担う役職者515名のうち、84.3%が生成AIを使っていました。もっとも大きな課題として挙がったのは、誤った情報が混ざる、正確さを確かめられないという点で、42.6%でした。

この3つを並べると、研修で何をすべきかの輪郭が見えます。買い手は人にしかできない対応を求め、AIは手順に組み込んだときに使われ、AIの出したものには誤りが混ざる。AIで回す所は手順として研修に組み込み、人が教える所は顧客の事情を汲む判断に寄せ、AIの出力を確かめる習慣も教える。これが、以下の工程ごとの比べ方の前提です。

研修の中身を3つの工程に分けて比べる

営業研修の中身は、大きく3つの工程に分けられます。1つ目は教材づくりで、製品の説明、よく出る質問と答え、商談の進め方の型をまとめる作業です。2つ目は練習で、受講者が説明や質問への答えを実際に口に出し、直してもらう場です。3つ目は受講後の定着の確かめで、教えたことが実際の商談でできているかを見る作業です。

3つの工程では、AIが向いている所と人が向いている所が違います。教材づくりと定着の確かめは、たまった商談の記録を読み、整理し、数える作業が多く、AIが速さを発揮します。練習は、相手の言葉に応じて返す場面でAIを相手役に使えますが、何がよくて何がまずかったかを語れるのは人です。

工程AIで回す所人が教える所人が決めること
教材づくり録画・記録からの想定問答と、よく出る質問の下書きその答え方を選ぶ理由、言ってはいけない線どの商談を教材にするか、載せる答えの正しさ
練習相手役、言い回しの指摘の下書き顧客の事情を汲む判断の振り返りどの場面を練習させるか
定着の確かめ受講後の商談記録から、決めた行動の有無を数える数えた結果をもとにした個別の助言何を数えるか、合格の基準、評価に使うか

表の右端の列が、この記事でもっとも大事な所です。どの工程にも、AIに任せてはいけない決定が1つずつあります。教材なら載せる答えの正しさ、練習ならどの場面を選ぶか、定着の確かめなら何を数えて何を合格とするかです。以下では、まず人が教える所を2つ決め、そのあと工程ごとの回し方を見ます。

人が教える所1:顧客の事情を汲む判断と、言ってはいけない線

最初に人が教える所として残すのは、顧客の事情を汲んで提案を変える判断です。同じ質問でも、相手が予算を取る前の段階なのか、すでに他社と比べている段階なのかで、答え方は変わります。買い手が期待する「個別の事情を汲んだ提案」は、この見分けから始まります。見分けの手がかりは、先輩が実際の商談で何を聞いて判断したかの話の中にあります。

もう1つは、言ってはいけない線です。値引きの約束、納期の確約、他社製品についての断定、契約にない対応範囲の約束などがこれに当たります。AIで作った想定問答は、相手の質問に前向きに答えようとして、こうした線を越えた答えを書くことがあります。線そのものは、法務や営業責任者が決めた社内の決まりとして人が教えます。

この2つを人が教える理由は、正解が1つに決まらないからです。顧客の事情の汲み方は、業種、相手の役職、これまでの取引で変わります。言ってはいけない線も、なぜそこに線があるのかを理解していないと、少し形の違う質問が来たときに越えてしまいます。理由まで含めて伝えるには、経験のある人が自分の言葉で話すのがもっとも確かです。

ここで人が教える時間を確保するために、ほかの工程の手間をAIで減らす、という順番で考えます。研修の時間は限られています。製品の機能の説明や資料の読み合わせのように、読めば分かることに人の時間を使わないことが、人が教える所を残すいちばんの方法です。

人が教える所2:なぜその順で聞くのか、という理由

商談の進め方の型、たとえば「課題、影響、決め方、時期の順に聞く」といった型は、教材に書けます。AIに下書きさせることもできます。しかし型だけを覚えた新人は、相手が順番どおりに話してくれないと止まってしまいます。人が教えるべきなのは、型そのものより、なぜその順で聞くのかという理由です。

理由が分かっていれば、相手が先に価格を聞いてきたときに、価格に答えながら課題の話に戻る道筋を自分で作れます。型は教材に任せ、型の理由と崩し方は人が話す、という分担にすると、研修の時間の使い方が変わります。先輩が自分の商談で型を崩した場面を1つ話すだけで、教材には書けない判断が伝わります。

失敗の話も、人が教える所に入ります。商談の記録には、うまくいかなかった商談も残っていますが、記録から分かるのは何が起きたかまでで、そのとき何を考えて判断を誤ったかは書かれていません。失敗した本人や上長が、そのときの判断を振り返って話すことで、記録が教材として生きてきます。

この所をAIに任せると、どうなるでしょうか。AIに商談の進め方の理由を尋ねると、営業の一般論としてはもっともらしい答えが返ってきます。ただしそれは自社の顧客や製品に合わせた理由ではありません。一般論の理由を、自社の売り方の理由として教えないことが、研修の質を保つ線です。

教材づくり:商談の録画と記録から下書きさせる

教材づくりでAIが役に立つのは、たまった商談の録画や記録を読み、新人向けの形に整える作業です。録画を文字に起こしたもの、営業支援の仕組みに残した商談のメモ、問い合わせの履歴などを渡し、よく出る質問と答え、つまずきやすい説明、顧客が使う言葉をまとめさせます。人が何十本もの録画を見直す手間が、大きく減ります。

作らせる教材は、新人が立ち上がるまでに使う物に絞ります。たとえば、製品ごとによく出る質問の上位とその答えの下書き、業種ごとに顧客が使う言葉の言い換え表、初回の商談で聞かれやすい質問の想定問答などです。どの商談を材料にするかは人が選びます。古い価格で話している商談や、例外的な条件で決まった商談が混ざると、教材が誤ります。

隣り合う使い方との違いも書いておきます。受注した商談と失注した商談を比べて勝ち筋を探す使い方は、別の記事「商談解析AIを営業に効かせる5工程」で扱っています。本稿の教材づくりは勝ち負けの比較ではなく、新人が最初の数か月でつまずかないための材料を整える作業で、録画の中から典型的な場面と質問を拾い出すことが中心です。

下書きの段階で、AIには根拠を必ず添えさせます。想定問答の答え1つごとに、どの録画の何分あたり、どの資料の何ページから取ったかを書かせると、人が確かめるときの手間が減ります。根拠のない答えは、AIが一般論から作った可能性が高いので、教材に載せる前に人が書き直すか、削ります。

教材の下書きをAIに頼む手順

教材の下書きは、次の順で頼むと誤りが減ります。ポイントは、材料を選ぶ所と、できた下書きを確かめる所を人が持ち、その間の読み取りと整理をAIに回すことです。1回で完成させようとせず、短い教材を1つ作って確かめる所から始めます。

STEP1
材料の商談を選ぶ
教材にする商談を、営業責任者が10本前後選びます。直近の半年に行われ、今の価格と製品で話している商談に限り、例外的な条件の商談は外します。
STEP2
渡してよい範囲に加工する
顧客の会社名や担当者の名前、社外秘の条件を伏せた文字起こしを用意します。社内で使ってよいと決めたAIの環境だけで作業します。
STEP3
作る教材の形を指示する
よく出る質問の上位10個と答え、つまずきやすい説明の一覧など、作る物の形を決めて指示します。答えには根拠の録画と時刻を添えさせます。
STEP4
人が正しさを確かめる
経験のある担当者が、答えの正しさと、言ってはいけない線を越えていないかを確かめます。根拠のない答えは書き直すか削ります。
STEP5
教材の版と日付を残す
教材に作った日と材料の商談の範囲を書いておきます。価格や製品が変わったら、どの教材を直すかがすぐに分かります。

2つ目の手順は、後で詳しく扱う同意と社外秘の線とつながっています。伏せる作業そのものもAIに下書きさせられますが、伏せ漏れがないかは人が確かめます。会社名は伏せても、業種と所在地と導入の時期がそろうと、どこの会社か分かってしまうことがあるからです。

AIの教材で起きやすい誤り

AIで作った教材は、見た目が整っているぶん、誤りに気づきにくくなります。営業企画の調査で、正確さを確かめられないことが最大の課題に挙がっていたのは、研修の教材でも同じです。新人は教材を正しいものとして覚えるので、誤りはそのまま商談に持ち込まれます。典型的な誤りを知っておきます。

  • 古い商談の録画を材料にして、改定前の価格や提供終了した機能の説明が教材に残っている
  • 相手の質問に前向きに答えようとして、値引きや納期の約束に近い答えを想定問答に書いている
  • 録画に無い答えを、営業の一般論から補って、自社の答えのように書いている
  • 顧客の会社名は伏せたが、業種・地域・導入の時期の組み合わせで相手が分かる
  • 例外的な条件で受注した商談を、ふつうの進め方として教材にしている

このうち、もっとも見落とされやすいのは3つ目です。AIは材料に答えが無いと、もっともらしい一般論で埋めることがあります。防ぎ方は、答えごとに根拠の録画と時刻を添えさせ、根拠が書けない答えは「材料に無し」と書かせることです。空欄が多く出たら、それは人が教える所の候補だと考えます。

古い情報の混入は、教材を作った後に起きることもあります。作った時点では正しくても、価格の改定や製品の変更で古くなります。教材に作った日と材料の範囲を残しておき、改定のたびにAIに古い記述を洗い出させ、人が直す、という手入れの流れを決めておくと、誤りが積み上がりません。

練習:AIは相手役、人は振り返りの問い

練習の工程では、AIを顧客の役にして、受講者が説明や質問への答えを口に出す使い方が広がっています。2026年の春には、新人研修でAIを相手に顧客対応を学ぶ企業の例も報じられました。相手役の設定、採点の観点、続けるための頻度といった練習そのものの組み立ては、別の記事「営業のロープレが続かない原因」で詳しく扱っています。

本稿で決めておきたいのは、練習の中で人が担う所です。AIの相手役は、何度でも同じ場面を繰り返せて、言い回しのくせや説明の抜けを指摘する下書きも出せます。一方で、受講者がなぜその答え方を選んだのか、別の答え方はなかったのかを問い返し、判断の筋を一緒にたどるのは、人の役目です。

具体的には、練習の後に上長や先輩が問いを3つほど投げます。「相手が予算の話を避けたとき、何を考えたか」「その説明で、相手の業種の事情を汲めていたか」「言ってはいけない線に近づいた所はどこか」。AIの指摘は言い回しの直し、人の問いは判断の振り返りと役割を分けると、練習の時間が無駄になりません。

どの場面を練習させるかも、人が決めます。材料は、教材づくりで洗い出した「つまずきやすい場面」です。AIに練習の場面を自由に作らせると、ありがちな場面ばかりになり、自社の商談で本当に詰まる所が抜けます。練習の場面は、自社の商談で実際に詰まった所から人が選ぶと決めておきます。

録画を教材に使う前に決める、同意と社外秘の線

商談の録画を教材に使う前に、2つの線を決めます。1つは個人情報の線です。個人情報保護委員会のQ&Aでは、通話の内容から特定の個人を識別できる場合は個人情報に当たり、事業者は利用目的を通知または公表する義務を負うとされています。録音していることを伝える義務までは負わない、とも書かれています(令和4年4月更新)。

ここから言えるのは、社内の研修に使うことを、利用目的として示しておく必要がある、ということです。商談の録画を取るときに相手に示している利用目的が「議事録の作成」だけなら、研修の教材への転用は、その範囲に入るかを法務と確かめます。録画を取る段階での案内の文面を見直すのが、もっとも手戻りの少ない方法です。

もう1つは社外秘の線です。商談には、顧客の社内の事情、他社との比較の内容、提示した価格や条件が含まれます。秘密を守る取り決めを結んでいる相手なら、その範囲も確かめます。教材にするときは、会社名や価格を伏せ、見られる人を営業部門の受講者と講師に限り、社外の研修会社に渡す場合は別に判断します。

  • 利用目的の通知・公表の義務は、個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A 1-10(令和4年4月更新)に基づきます
  • 個別の契約や業種の決まりで、録画の扱いがさらに制限されている場合があります。教材に使う前に、法務の確認を1回通します
  • 伏せる作業をAIに下書きさせても、伏せ漏れの確認は人が行います

定着の確かめ:受講後の商談記録から、身についたかを数える

3つ目の工程は、教えたことが実際の商談でできているかの確かめです。研修の直後のアンケートや小テストで分かるのは、覚えたかどうかまでです。営業研修で本当に知りたいのは、受講の1か月後、2か月後の商談で、教えた行動が出ているかどうかです。ここでもAIは、たまった記録を読んで数える作業で役に立ちます。

やり方はこうです。まず、研修で教えた行動を、記録から見て分かる形に書き直します。「ヒアリングを丁寧に行う」では数えられないので、「初回の商談で、導入の時期と決める人を聞いている」のように書きます。そのうえで、受講者の受講後の商談の文字起こしやメモをAIに渡し、行動ごとに有無と、その根拠になった発言の箇所を出させます。

数えた結果は、受講者ごと、行動ごとの表にまとめます。たとえば「導入の時期を聞いた」は10件中8件、「言ってはいけない線を越えなかった」は10件中10件、といった形です。数字が低い行動は、研修で教え方を変える候補で、受講者を責める材料ではありません。同じ行動が多くの受講者で低ければ、教材か練習の場面が合っていない可能性が高いからです。

この数え方は、立ち上がりの期間の見方ともつながります。最初の受注までの日数のような結果の数字は、市場や担当する顧客の状況で大きく動き、研修の効果だけを取り出しにくい数字です。行動の有無は、研修で教えたことと直接つながっています。結果の数字と並べて、行動の数字を見ると、研修の手直しの方向が分かります。

数える行動を決めるのは人、数えるのはAI

定着の確かめでもっとも大事なのは、何を数えるかの決定です。数える行動の選び方で、研修の見え方が変わるからです。数えやすい行動ばかりを選ぶと、「資料を画面に出した」「次回の日程を決めた」のような形式的な行動の数字だけが高くなり、顧客の事情を汲めているかは見えません。数える行動は、研修で教えた中身と1対1で対応させます。

  • 研修で教えた中身の1つと、数える行動の1つが対応している
  • 行動が、記録を読めば有るか無いかを判断できる形で書かれている
  • 顧客の事情を汲めたか、のような判断の質に近い行動が1つ以上入っている
  • 言ってはいけない線を越えていないか、を数える行動が入っている
  • 数える商談の範囲(受講後の何か月、何件)が決まっている
  • AIの判定に、根拠の発言の箇所を添えさせる指示が入っている

AIの判定は、そのまま使わずに抜き取りで確かめます。受講者1人につき2件ほど、人が記録を読んでAIの判定と比べます。判定がずれる行動は、書き方があいまいな行動です。たとえば「課題を深掘りした」のような書き方は、AIと人とで判断が分かれやすいので、「課題の影響を金額か時間で聞いた」のように書き直します。

判断の質に近い行動は、AIが数えにくい所でもあります。顧客の事情を汲めたかは、発言の有無だけでは決まりません。こうした行動は、AIには候補の箇所を挙げさせるだけにして、有無の判断は上長が記録を読んで行う、と分けておきます。数えられる所と数えられない所を、表の上で分けて書いておくと誤解が起きません。

合格の基準と評価への使い方は、AIに決めさせない

行動の数字が取れると、それを人事評価に使いたくなります。しかし研修の確かめに使う数字を評価に使うと、受講者は数字を上げるための話し方を覚え、商談が不自然になります。録画を見られることへの抵抗も強くなり、研修の材料となる記録そのものが集まりにくくなります。確かめの数字は研修の手直しに使い、個人の評価には使わないと、始める前に受講者へ伝えておきます。

合格の基準も、人が決めます。「10件中8件で行動が出ていれば立ち上がった」とみなすのか、「言ってはいけない線は1件でも越えたら研修をやり直す」とするのかは、営業責任者が売り方と顧客への影響を考えて決めることです。AIに合格の線を提案させると、数字の上で切りのよい線が出てくるだけです。

AIに判断させないことは、確かめの工程に限りません。教材に載せる答えの正しさ、練習させる場面の選び方、何を人が教えるかの線も、AIに決めさせません。AIに出させるのは、案と、その根拠の箇所までです。人が確認する範囲を先に決め、確認した人と日付を教材や表に残しておくと、後から誰が判断したかが分かります。

この線を引いておくことは、受講者のためでもあります。AIの判定がそのまま評価になると、受講者は判定の誤りに異を唱える場がありません。人が判断し、AIはその材料を出す、という役割を研修の決まりとして書いておけば、受講者は安心して記録を残せます。記録が集まることが、AIで研修を回す前提です。

組み替えは、1つの工程から始める

3つの工程を一度に組み替えると、どこが効いたのか分からなくなります。始めるなら、手間がもっとも大きく、誤りの影響が小さい工程からです。多くの営業部門では、教材づくりの中の「よく出る質問と答え」の下書きが最初の候補になります。録画がすでにたまっていて、作った物を経験のある担当者がすぐに確かめられるからです。

最初の工程で確かめるのは、減った手間と、教材の誤りの数です。録画を見直して教材を作るのに何時間かかっていたか、AIの下書きを確かめて直すのに何時間かかったか、確かめの段階で何か所を直したかを記録します。直した箇所が多いうちは、材料の選び方か指示の書き方に問題があります。そこを直してから、次の工程に進みます。

次に進むのは、定着の確かめです。教材が整うと、教えた行動が決まり、数える行動を書きやすくなります。練習の工程は、相手役の仕組みを用意する手間がかかるため、教材と確かめの流れが回り始めてからでも遅くありません。研修の予算も、この順番で、人が教える時間を確保する方向に組み替えます。

組み替えの判断の材料として、冒頭の調査の数字を思い出してください。業務の流れに組み込んだ会社では、生成AIを週に1回以上使う営業担当者が74.8%でした。研修でAIの出した教材を使い、受講後の確かめにAIを使う流れは、受講者が日々の商談でAIの出力を確かめる習慣にもつながります。研修そのものを、AIの出力を確かめる練習の場にするという見方もできます。

よくある質問

Q. 録画がほとんどたまっていない部門でも始められますか。

始められます。録画の代わりに、営業支援の仕組みに残した商談のメモ、問い合わせの履歴、提案書と見積もりの控えも材料になります。ただし、メモは書いた人の要約なので、顧客が実際に使った言葉は残りにくい点に注意します。録画を取る場合は、研修に使うことを利用目的として示すところから整えます。

Q. 研修の講師を社外に頼んでいる場合は、どう分担しますか。

社外の講師が教える一般的な技法と、自社の顧客や製品に合わせた中身を分けて考えます。自社の録画から作った教材や、言ってはいけない線は、自社の側で用意して確かめます。録画や教材を社外の講師に渡すかどうかは、社外秘の線と契約の範囲を確かめてから決めます。

Q. 経験の長い営業担当者にも同じ研修は要りますか。

教材づくりと練習の中身は、新人向けとは変わります。経験の長い担当者には、新しい製品や価格の改定、言ってはいけない線の変更のように、変わった所だけを教材にします。受講後の確かめは同じ考え方で使えますが、数える行動は、その人が担当する商談の段階に合わせて選び直します。

Q. AIの判定と上長の見立てが食い違ったら、どちらを採りますか。

上長の見立てを採り、食い違った行動の書き方を見直します。食い違いが続く行動は、記録から有無を判断できる形になっていない可能性があります。AIの判定は、上長が見落とした箇所を拾う材料として使い、判定の最終的な決定は人が行う、という分担を崩さないことが大事です。

まとめ

営業研修でAIが変えるのは、研修の形ではなく、人の時間の使い方です。研修の中身を教材づくり・練習・受講後の定着の確かめの3つに分け、録画や記録からの教材と想定問答の下書き、練習の相手役、受講後の記録から決めた行動を数える作業をAIに回します。そのぶん人は、顧客の事情を汲む判断、言ってはいけない線、型の理由と崩し方を自分の言葉で教えます。録画を教材にする前に利用目的と社外秘の線を決め、何を教えるか、合格の基準、評価に使うかどうかはAIに決めさせない。まずは「よく出る質問と答え」の教材1つから始めて、直した箇所の数を見ながら次の工程に進んでください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

リード獲得・育成の打ち手として、ウェビナーの集客と運営でお困りですか?

企画・集客・運営までデボノが伴走支援。外部リスト頼みにしない「自社の集客力」を育てます。

運営会社:株式会社デボノ

目次