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紙の図面を読み取って、図面番号と属性で探せるようにする

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

紙やPDFで届く図面を入力に、表題欄から図面番号・品名・材質・改訂記号を読み取り、探せる形の台帳にします。担当者の作業は、1枚ずつ見て台帳に打ち込むことから、読み取り結果を確かめて登録することに変わります。

サマリー
利用ツール
AWS Textract/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Document AI/Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
商社/建設/製造
対象部門
生産/研究開発
対象業務
台帳・マスタ管理/情報検索
主な課題
人手が足りない/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
読み取り(OCR)
主な効果
属人化解消/工数削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
180h/月
AI導入後
52.5h/月
想定削減
71%
年間削減
1,530h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 顧客または協力会社から図面が届く(郵送、メール添付、持参)
  2. 担当者が図面を開き、表題欄を見る
  3. 図面番号、品名、材質、尺度、改訂記号、発行元を読む
  4. Excelの図面台帳に1行ずつ入力する
  5. ファイル名を社内の規則に付け直す
  6. 案件フォルダと図面フォルダの両方に保存する
  7. 関連する図面(組立図と部品図、旧版と新版)を紐づける
  8. 紙は図番順にキャビネットへファイリングする
  9. 設計・生産技術から問い合わせが来たら、台帳を検索して探す
導入後(After)
  1. 図面が届く(紙はスキャン、PDFはそのまま)
  2. 自動ファイルを1枚ずつに分割する
  3. 自動発行元と図面の様式を判定する
  4. 自動表題欄の位置を特定し、項目を読み取る
  5. 自動手書きかどうかを判定し、確からしさを付ける
  6. 自動図面番号を発行元ごとの採番体系に照らして検証する
  7. 自動同じ図面番号の既存図面を探し、改訂の関係を推定する
  8. 自動ファイル名を社内の規則に付け直す
  9. 担当者が確認画面で、図面の画像と読み取り結果を並べて見て承認する
  10. 自動台帳に登録し、案件フォルダと図面フォルダに保存する
  11. 自動関連図面(組立図と部品図)の候補を示す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 顧客または協力会社から図面が届く(郵送、メール添付、持参)
  2. 担当者が図面を開き、表題欄を見る
  3. 図面番号、品名、材質、尺度、改訂記号、発行元を読む
  4. Excelの図面台帳に1行ずつ入力する
  5. ファイル名を社内の規則に付け直す
  6. 案件フォルダと図面フォルダの両方に保存する
  7. 関連する図面(組立図と部品図、旧版と新版)を紐づける
  8. 紙は図番順にキャビネットへファイリングする
  9. 設計・生産技術から問い合わせが来たら、台帳を検索して探す

問題は5つあります。

(a)表題欄の様式が発行元ごとに違う。 顧客ごとに、図面番号の位置も、項目の並びも違います。右下が標準ですが、左下や上部にある図面もあります。

(b)手書きの図面がある。 20年以上前の自社図面は手書きです。文字がかすれ、青焼きの複写で読みにくいものもあります。

(c)図面番号の採番体系が会社ごとに違う。 顧客Aは「A-12345-01」、顧客Bは「BX1234500」。同じ桁数でも意味が違います。

(d)改訂版が別ファイルとして増える。 「A-12345-01_rev3」のようなファイルが並び、どれが最新かが分からなくなります。

(e)探せない。 48,000枚のうち台帳に載っているのは6割程度です。残りは「この案件のときの図面」という記憶を頼りに探します。

  1. 図面が届く(紙はスキャン、PDFはそのまま)
  2. 【自動】 ファイルを1枚ずつに分割する
  3. 【自動】 発行元と図面の様式を判定する
  4. 【自動】 表題欄の位置を特定し、項目を読み取る
  5. 【自動】 手書きかどうかを判定し、確からしさを付ける
  6. 【自動】 図面番号を発行元ごとの採番体系に照らして検証する
  7. 【自動】 同じ図面番号の既存図面を探し、改訂の関係を推定する
  8. 【自動】 ファイル名を社内の規則に付け直す
  9. 【人】 担当者が確認画面で、図面の画像と読み取り結果を並べて見て承認する
  10. 【自動】 台帳に登録し、案件フォルダと図面フォルダに保存する
  11. 【自動】 関連図面(組立図と部品図)の候補を示す

自動化されるのは「分割する」「読む」「検証する」「探す」「付け直す」の5つです。残るのは「読み取り結果が合っているかを判断する」です。

02今回想定するシステム構成

構成図
図面(紙 → スキャン / PDF)
   │
   ▼ SharePoint の受領フォルダ
   │
   ▼【トリガー】ファイルが作成されたとき
Power Automate
   │
   ├──▶ ファイルの分割(1ファイル1図面)
   │
   ├──▶ Azure AI Document Intelligence
   │       ├─ カスタム分類モデル … 発行元・様式の判定
   │       ├─ カスタム抽出モデル … 表題欄の項目の読み取り
   │       └─ prebuilt-read … 手書きの判定と確からしさ
   │
   ├──▶ 採番体系の検証(発行元ごとの規則。計算で判定)
   │
   ├──▶ LLM API ── 品名の正規化 + 改訂関係の推定 + 関連図面の候補
   │
   ▼
確認画面(図面の画像と読み取り結果を左右に並べる)──【人が承認】
   │
   ▼
図面台帳へ登録 + 案件フォルダ・図面フォルダへ保存
役割想定する製品代替候補
OCRAzure AI Document Intelligence(カスタム分類+カスタム抽出+prebuilt-read)Google Document AI、AWS Textract
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
連携Power AutomateMake、n8n、Python
保管SharePointBox、社内ファイルサーバ
図面管理図面管理システム(PDM)共有フォルダ+Excel台帳

PDM/PLM を導入する選択肢と比べてください。 図面の版管理、部品表との紐づけ、承認フローまで含めて提供されます。自前で組む価値があるのは、顧客から届く図面(自社でCADデータを持たないもの)を扱いたい場合です。 PDMは自社が作る図面の管理には向きますが、客先図の取り込みは手入力が残ることが多くあります。

Azure AI Document Intelligence を選んだのは、様式ごとのカスタムモデルを作れるためです。 表題欄の位置が発行元ごとに違うため、汎用のモデルでは安定しません。同じ様式の図面が5件あれば学習を始められます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

SharePointの受領フォルダにファイルが作成されたことを起点にします。Power Automate の SharePoint コネクタには「ファイルが作成されたとき」トリガーが標準で用意されています。

紙の図面は、複合機または大判スキャナでスキャンしてフォルダに出力します。A1・A0の大判図面は、一般の複合機では扱えないため、大判スキャナが必要です。

過去48,000枚の一括電子化は、別のプロジェクトとして計画してください。 日常の受領と同じ仕組みで処理できますが、スキャンの作業量が桁違いです。 日常の運用が回ってから着手するほうが確実です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
図面ファイル紙のスキャン、PDF、まれにTIFF顧客・協力会社・自社
発行元ごとの表題欄の様式表題欄の位置、項目の並び、項目名の表記図面管理(新しく作る
採番体系の規則発行元ごとの図面番号の桁数・区切り・意味図面管理(新しく作る
既存の図面台帳図面番号、品名、材質、改訂、案件、保管場所Excel
案件情報案件番号、顧客、納期販売管理システム
品名の表記ゆれの辞書「ブラケット」「BRACKET」「ブラケット」の対応図面管理
材質の一覧社内で使う材質記号(SS400、SUS304、A5052 など)設計基準

「発行元ごとの表題欄の様式」と「採番体系の規則」が、この構成の要です。

上位の顧客20社について、次を整理します。

発行元◯◯重工
表題欄の位置右下
図面番号の項目名図番/DRAWING NO.
図面番号の形式英字1桁+ハイフン+数字5桁+ハイフン+数字2桁
改訂の表記図面番号の末尾に「Rev.」+数字
材質の項目名材質/MATERIAL

この表を作る作業に1〜2週間かかります。 ただし、上位20社で受領図面の7割前後を占めるのが一般的です。

Step3

データの取得方法を決める

様式の判定: カスタム分類モデルを使います。分類モデルの学習には、クラスごとに最低5件、クラスは2つ以上が必要です。「◯◯重工様式」「△△工業様式」「自社旧様式(手書き)」「その他」といった分け方をします。

表題欄の読み取り: 発行元ごとにカスタム抽出モデルを作ります。カスタム抽出モデルは、同じ様式の書類が5件あれば学習を始められます。 複数のカスタムモデルは合成モデル(composed model)にまとめられ、1つのモデルIDで呼び出せます。1つの合成モデルには最大200個のカスタムモデルを割り当てられます。

手書きの判定: prebuilt-read を使います。Read モデルは、各テキスト行が手書きかどうかを分類し、確からしさとともに返しますstylesisHandwritten)。手書きと判定された図面は、確認の対象として印を付けます。

入力の要件を確認してください。 抽出する文字の高さは、1024×768の画像で12ピクセル以上が目安とされています(150dpiの8ポイント相当)。大判図面をA4相当に縮小してスキャンすると、表題欄の文字が読めなくなります。 表題欄の部分だけでも十分な解像度を確保してください。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ファイルの分割 … 複数図面が1つのPDFになっていることがあります。図面の枠線を手がかりに分割します
  2. 向きの補正 … 図面は横向きが標準ですが、縦向きでスキャンされることがあります。枠線の縦横比と表題欄の位置で判定します
  3. 表題欄の切り出し … 図面全体ではなく、表題欄の領域だけを切り出してOCRに渡します。 これで精度と費用の両方が改善します
  4. 解像度の判定 … 表題欄の文字高が基準を下回るものを弾き、再スキャンを求めます
  5. 重複の検出 … 同じ図面が2回登録されないよう、「発行元+図面番号+改訂記号」で照合します
  6. 図面以外の除外 … 仕様書、送り状、メモが混ざります。枠線と表題欄の有無で判定します

3番目が効きます。 A1の図面全体をOCRにかけると、寸法線や部品番号の数字が大量に返り、表題欄の項目を探すのが難しくなります。 表題欄だけを切り出せば、扱う情報が1/50になります。

Step5

AIに処理させる

OCRとLLMと計算で役割を分けます。

OCR(Document Intelligence)にさせること: 表題欄の項目の読み取り、手書きの判定、確からしさの算出。

計算でさせること: 図面番号の形式の検証(桁数、区切り、英数の並び)、重複の検出、改訂の新旧の比較。発行元ごとの規則に照らすだけなので、計算で決まります。

LLMにさせること:

処理内容
品名の正規化「ブラケット」「BRACKET」「ブラケット」を社内の表記にそろえる
材質の照合記載された材質を、社内の材質一覧に対応づける
改訂関係の推定同じ図面番号の既存図面と、改訂記号・日付から新旧を判断する材料を示す
関連図面の候補品名と図面番号の体系から、組立図と部品図の関係の候補を示す
読み取りの不整合の指摘「材質欄が空欄」「尺度の記載がない」といった不足を挙げる

図面の内容(寸法、公差、記号)をLLMに読ませないでください。 これはこの構成の最も重要な制約です。

理由は3つあります。

  1. 読み違えが設計・加工の誤りに直結する … 「φ20」と「φ2O」の区別、「H7」と「H1」の区別を機械に委ねる合理性がありません
  2. 図面は図形と文字が一体になっている … 寸法線がどの部位を指しているかは、文字だけでは決まりません
  3. 正しく読めても、それを信じる運用が生まれる … 一度「AIが読んだ寸法」が台帳に載ると、誰かがそれを見て発注します

「表題欄は読む、図面の中身は読まない」を、設計の段階で明文化してください。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、図面の登録を支援する担当者です。
OCRで読み取られた表題欄の内容を、社内の台帳の形に整えてください。

【厳守事項】
- 図面の寸法、公差、加工記号、溶接記号について一切扱わないでください。
  入力に含まれていた場合も、出力に転記しないでください。
- 図面番号を、あなたが補完・修正しないでください。
  OCRの読み取り結果をそのまま引き継いでください。
  読めなかった桁がある場合は、その旨を needs_review に入れてください。
- 材質は、下記の材質一覧に載っているものからのみ対応づけてください。
  一覧にない記載は matched_material を null にし、
  raw_material に記載をそのまま残してください。
  あなたが材質記号を推測しないでください。
- 品名の正規化は、下記の表記ゆれ辞書に基づいて行ってください。
  辞書にない品名は原文のままにし、unmapped_terms に入れてください。
- 改訂の新旧を断定しないでください。
  既存図面の改訂記号と日付を並べ、比較の材料を示すだけにしてください。
  「こちらが最新版です」と書かないでください。
- 関連図面は「候補」として示してください。
  「この部品図は、この組立図に属します」と断定しないでください。
- 表題欄に記載のない項目を補わないでください。
  空欄は空欄のまま、missing_fields に挙げてください。

【発行元ごとの表題欄の様式】
{title_block_format}

【採番体系の規則】
{drawing_number_rules}

【材質の一覧】
{material_list}

【品名の表記ゆれ辞書】
{name_glossary}

【OCRの読み取り結果(表題欄の領域のみ)】
{ocr_result}

【同じ図面番号の既存図面】
{existing_drawings}

「図面の寸法、公差、加工記号について一切扱わないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 表題欄だけを渡す設計にしていても、切り出しの範囲に寸法が混ざることがあります。そこを読んで出力に含めさせないための指示です。

「改訂の新旧を断定しない」も入れてください。 改訂記号の付け方は発行元によって違い、日付が前後することもあります。「最新版」の判定を誤ると、古い図面で加工することになります。

Step7

出力形式を固定する

{
  "file_id": "",
  "issuer": { "value": "", "confidence": 0.0, "matched": "" },
  "drawing_no": { "value": "", "confidence": 0.0, "format_valid": true, "is_handwritten": false },
  "revision": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "drawing_name": { "raw": "", "normalized": "", "confidence": 0.0 },
  "material": { "raw": "", "matched_material": "", "confidence": 0.0 },
  "scale": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "projection": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "issue_date": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "drawn_by": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "approved_by": { "value": "", "confidence": 0.0 },
  "sheet_size": "A0 | A1 | A2 | A3 | A4 | unknown",
  "existing_versions": [
    { "drawing_id": "", "revision": "", "issue_date": "", "registered_at": "" }
  ],
  "related_drawing_candidates": [
    { "drawing_id": "", "relation": "assembly | part | unknown", "basis": "" }
  ],
  "missing_fields": [],
  "low_confidence_fields": [],
  "needs_review": [],
  "image_quality": "ok | low_resolution | skewed | too_dark"
}

すべての項目に confidence を持たせます。 図面番号の確からしさが低ければ、検索で見つからなくなります。確認画面で色分けします。

existing_versions は既存図面の一覧を並べるだけで、「最新版はこれ」とは書きません。 担当者が見て判断します。

related_drawing_candidates も候補です。 組立図と部品図の関係は、図面番号の体系だけでは決まりません。

寸法・公差に関する項目は、このスキーマに存在しません。 意図的です。

Step8

システムへ連携する

承認後、図面台帳に登録します。

つなぐ先内容
SharePoint受領フォルダの監視、図面ファイルの保管
図面台帳(SharePoint リストまたはExcel)属性の登録
販売管理システム(読み取り)案件情報の取得
ファイルサーバ案件フォルダへの配置
図面管理システム(PDM)導入している場合は登録先

ファイル名の付け直しは自動化してよい部分です。 「発行元_図番_改訂_品名.pdf」のような規則で統一します。ただし、元のファイル名も台帳に残してください。 顧客とのやり取りで元のファイル名が使われることがあります。

紙の図面の保管は、従来どおり図番順のファイリングを続けてください。 電子化しても紙を捨てられないことがあります(顧客支給の原図、承認印のある図面)。台帳に保管場所を記録し、紙と電子を紐づけます。

Step9

人が確認する

全件、人が承認します。

確認の重さを分けます。

状態確認画面での扱い
全項目の確からしさが高く、採番体系も正しい一覧で数枚まとめて承認
low_confidence_fields に図面番号が含まれる必ず原図と照合する。 図番の誤りは検索できなくなる
is_handwritten: true手書き部分を原図と照合する
format_valid: false採番体系に合わない。原図を確認するか、新しい体系として登録する
matched_material: null材質一覧にない。設計に確認する
existing_versions がある改訂の新旧を人が判断する
image_quality が ok でない再スキャンを求める

確認を速くするための設計が重要です。

  • 確認画面で、表題欄の画像と読み取り結果を左右に並べて表示する
  • 読み取り箇所を画像上でハイライトする(座標が返るので実装できます)
  • 図面番号の項目に最初にカーソルが当たるようにする
  • 図面全体を開かなくても、表題欄だけで確認できるようにする

最後の項目が効きます。 A1の図面を開くと表示が重く、表題欄まで拡大する操作が必要です。表題欄だけを切り出した画像を並べれば、1枚あたり数秒で確認できます。

Step10

例外に対処する

起きること対応
図面番号が読めない空で返し、needs_review に入れる。推測で補わない
採番体系に合わない図面番号format_valid: false として人へ回す。自動で修正しない
表題欄が見つからない様式の判定に失敗している。人へ回す
手書きの旧図面is_handwritten を立てる。確からしさが低ければ人が読む
青焼き・かすれで読めないimage_quality で弾く。無理に読ませない
大判図面を縮小してスキャンしている文字高の基準で弾き、再スキャンを求める
同じ図面番号で改訂記号が同じ重複として処理を止める
改訂記号の付け方が発行元で違う発行元ごとの規則で判定する。共通のルールを当てはめない
1つのPDFに複数図面枠線で分割する。分割できなければ人へ回す
図面以外の書類が混ざった枠線と表題欄の有無で判定し、別フォルダへ移す
材質欄が空欄missing_fields に入れる。「一般鋼材」などと補わない
寸法がOCR結果に混ざった出力から除く。台帳に寸法の列を作らない

最後の項目について。 台帳のスキーマに寸法の列を作らないことが、いちばん確実な防止策です。列がなければ、入りません。

Step11

記録を残す

  • 図面ファイルの原本(受領日、発行元、元のファイル名つき)
  • OCRの読み取り結果(確からしさと座標を含む)
  • 人が修正した項目と、修正前後の値
  • 承認者、承認日時
  • 紙の保管場所
  • 改訂の判断(どれを最新としたか、誰が決めたか)

「人が修正した項目」の蓄積が、読み取り精度の実測値になります。 「図面番号は98%そのまま通るが、材質欄は25%修正されている」と分かれば、材質欄のカスタムモデルを追加学習すべきだと決まります。

顧客支給図の保管期間と取り扱いは、顧客との契約に従ってください。 契約終了後の返却または廃棄が求められることがあります。

04実装レベルの3段階

最小構成:OCRサービスの画面に表題欄を投入し、結果をコピーして台帳に貼る / 読み取り
半自動化:フォルダ監視 → 様式判定 → 表題欄の読み取り → 採番体系の検証 → スプレッドシートへ出力 / 読み取り・検証
本格構成:上記+品名の正規化+改訂関係の提示+確認画面+台帳登録+ファイル名の付け直し+関連図面の候補 / 承認以外のすべて

半自動化の時点で、12分が6分程度になります。 読み取りと入力の大半が消えるためです。本格構成にすると3.5分程度になりますが、確認画面の作り込みが必要です。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
900 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
3.5 分
現在  900件 × 12分 ÷ 60 = 180 時間/月
導入後 900件 × 3.5分 ÷ 60 = 52.5 時間/月
月間削減時間
127.5h
削減率
71%
年間削減時間
1,530h
年間金額換算(時間単価3,500円)
536万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 紙またはPDFの図面を月300枚以上受け取っている企業。図面に表題欄があり、発行元ごとに様式が固定していること。図面を図番・品名で探す業務が日常的に発生していること。
向いていない
  1. 図面がすべてCADデータで、属性が付いた状態で受け渡しされている場合。PDM/PLMを導入していて、登録と検索が完結している場合。図面の受領が月50枚未満の場合。

07最小構成で試す方法

  1. 図面を30枚用意する(発行元を3〜4社に絞り、手書きの旧図面を5枚混ぜる
  2. 表題欄の部分だけを切り出してスキャンする(300dpi以上)
  3. Document Intelligence Studio に1枚ずつ投入する
  4. 図面番号、品名、材質、改訂記号が正しく取れるかを、項目ごとの確からしさと一緒に確認する
  5. 30枚のうち、図面番号が正しく取れたのが何枚かを数える

この検証だけは必ずやってください。 表題欄の読み取り精度は、様式と原図の状態に強く依存します。

判断の目安は次のとおりです。

図面番号の正解率判断
9割以上自動化する価値がある
7〜9割発行元ごとにカスタム抽出モデルを学習させる(1様式5件から)
7割未満スキャンの解像度を疑う。 表題欄の文字高が基準を満たしているかを確認する

あわせて、現在の検索の実態を測ってください。

  1. 設計・生産技術に「先月、図面を探すのに何分かかったか」を聞く
  2. 台帳に載っていない図面の割合を数える

7の数字が、この構成の本当の対象です。 台帳の網羅率が6割なら、残り4割は検索の仕組みを作っても見つかりません。 過去図面の電子化を別に計画する必要があります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
図面の寸法をOCRで読ませてしまう表題欄だけを切り出す。台帳に寸法の列を作らない。最重要
図面番号の読み違いに気づかない項目ごとの確からしさを受け取り、採番体系で検証する
大判図面を縮小してスキャンし、文字が読めない表題欄の文字高を基準(1024×768で12ピクセル)で確認する
様式ごとのカスタムモデルを作らず精度が出ない上位20社について1様式5件から学習させる
表題欄の位置が右下と決め打ちしている様式ごとに位置を持つ。左下・上部の図面もある
改訂の新旧を自動判定する既存図面を並べるだけにする。発行元ごとに改訂記号の付け方が違う
材質をAIが推測する材質一覧にないものは null にする
同じ図面が二重登録される「発行元+図番+改訂」で重複を検出する
元のファイル名を捨てる台帳に残す。顧客とのやり取りで使われる
紙の保管場所が記録されない台帳に列を作る。電子化しても紙は残る
過去48,000枚を日常運用と同時に進める別プロジェクトにする。スキャンの作業量が桁違い

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧客から支給された図面、自社の設計図面、協力会社の製作図。顧客支給図は顧客の技術情報であり、自社の図面は自社の技術の中核です。

  1. 顧客支給図の取り扱い … 顧客支給図は、秘密保持契約の対象です。外部のOCRサービスに送ることが契約の範囲に収まるかを、必ず確認してください。 これがこの構成でもっとも重要な確認事項です
  2. 表題欄だけを送る設計 … 図面全体ではなく表題欄の領域だけを外部に送る設計にすれば、送信する情報が大幅に減ります。 精度・費用の面だけでなく、機密の面でも有利です。契約上の説明もしやすくなります
  3. 自社の技術情報 … 図面は自社の設計そのものです。学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選んでください。 必須条件です
  4. 外部AIへの入力可否 … 上記を踏まえ、自社の情報管理規程を確認してください。テナント内で処理が完結する構成を選ぶ判断も合理的です
  5. 輸出管理 … 図面の内容によっては、外国為替及び外国貿易法に基づく輸出管理の対象になります。海外リージョンのサービスに送ることの可否を確認してください
  6. アクセス権限 … 図面台帳と図面ファイルの閲覧を、設計・生産技術・調達に限定します。顧客支給図は、その案件の関係者に限ってください
  7. 保管と返却 … 顧客支給図の保管期間と、契約終了後の返却・廃棄の義務を確認してください
  8. 自動実行してよい範囲 … 読み取りと候補の提示までです。台帳への登録、改訂の新旧の判断、関連図面の確定は、必ず人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、図面が見つからないことと、古い改訂版で加工することです。後者は不良品の製造につながります。改訂の判断を自動化しないでください。

10まず何から始めるか

1週目:顧客との契約を確認する

顧客支給図を外部のサービスに送ることが、秘密保持契約の範囲に収まるかを確認します。法務と一緒に行ってください。 表題欄だけを送る設計であれば説明しやすくなりますが、確認は必要です。

この確認が済むまで、先に進まないでください。

2週目:台帳の網羅率を測る

過去1年に受領した図面のうち、台帳に載っているものの割合を数えます。あわせて、設計・生産技術に「図面を探すのに月何分かかっているか」を聞いてください。

3週目:発行元ごとの様式を整理する

上位20社について、表題欄の位置、項目名、採番体系を表にします。この表がないと、カスタムモデルを作れません。

4週目:30枚で読み取りを試す

表題欄を切り出して Document Intelligence Studio に投入し、図面番号の正解率を測ります。手書きの旧図面を必ず含めてください。

2か月目:半自動化を作る

フォルダ監視から表題欄の読み取り、採番体系の検証までを作り、スプレッドシートに出します。12分が何分になるかを実測します。

3か月目以降: 確認画面と台帳登録を実装します。確認画面に最も時間をかけてください。 並行して、修正ログから「よく間違える項目」を洗い出し、カスタムモデルを追加学習します。過去48,000枚の電子化は、日常の運用が回ってから、別の計画として着手してください。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-17/最終更新:2026-09-17
確認した内容情報源確認日
Azure AI Document Intelligence のカスタム抽出モデルが同一様式5件から学習でき、カスタム分類モデルが2クラス以上・1クラス5件以上で学習できること。合成モデルに最大200個のカスタムモデルを割り当てられること。抽出対象の文字高が1024×768の画像で12ピクセル以上(150dpiの8ポイント相当)を目安とすること。PDF・TIFFは最大2,000ページ、S0で500MBまで扱えることMicrosoft Learn: Document processing models2026-09-17
Read モデルが活字と手書きの両方を抽出し、各テキスト行が手書きかどうかを stylesisHandwritten として確からしさとともに返すこと。単語ごとに確からしさと座標が返ることMicrosoft Learn: Read model OCR data extraction2026-09-17
Power Automate の SharePoint コネクタに「ファイルが作成されたとき」トリガーがあることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-09-17

顧客から支給された図面を外部サービスに送ることの可否は、顧客との秘密保持契約によります。この部分は個別の契約の確認が必要です。 図面の内容によっては外国為替及び外国貿易法に基づく輸出管理の対象となる場合があります。大判図面のスキャン機器と解像度の要件は、利用環境によって異なります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。図面の寸法・公差の読み取りは、この構成の対象外です。

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