Media > AI活用ユースケース > 法務 > 取締役会の録音から法定の記載事項を満たす議事録の下書きを作る

取締役会の録音から法定の記載事項を満たす議事録の下書きを作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

取締役会の録音と事前配布の議案書を入力に、議案ごとの議事の経過の要領、述べられた意見の概要、決議事項と報告事項の区分を整理し、所定の様式に沿った議事録の下書きを作ります。決議の結果と賛否は、AIに判断させません。

サマリー
利用ツール
Azure AI/Azure OpenAI Service/Claude/Gemini/Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/不動産/製造/金融
対象部門
法務/総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成/記録・議事録作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
要約
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★☆☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
24h/月
AI導入後
8.8h/月
想定削減
63%
年間削減
182h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 事務局が議案書を取りまとめ、開催の1週間前に取締役・監査役へ配布する
  2. 取締役会を開催する(60分〜90分)。事務局はICレコーダーで録音し、メモを取る
  3. 会議後、録音を最初から聞き直し、議案ごとに発言を書き出す
  4. 議案書と突き合わせ、議案番号・議案名・決議事項か報告事項かを確定する
  5. 「主な意見」として、誰がどのような趣旨を述べたかを要約する
  6. 議長の宣言をもとに、決議の結果(可決・否決)と賛否を書く
  7. 特別の利害関係を有する取締役がいた議案に、その氏名と議決に加わらなかった旨を書く
  8. 所定の様式に清書し、出席した取締役・監査役へ確認を依頼して押印を回付する
導入後(After)
  1. 取締役会を開催し、録音ファイルを所定の場所に保存する
  2. 自動録音を文字起こしする。話者は匿名の話者ラベルに分けられる
  3. 自動議案書のPDFから、議案番号・議案名・決議事項か報告事項かの区分を取得する
  4. 自動議案ごとに、議事の経過の要領と意見の概要を整理し、根拠になった発言を引用として併記する
  5. 自動特別の利害関係への言及があれば、その発言を引用付きで抜き出す
  6. 自動決議の結果・賛否・出席者の氏名の欄は、空欄のまま下書きに残す
  7. 事務局が話者ラベルに氏名を割り当て、意見の要約を引用と照合する
  8. 事務局が自分の記録をもとに、決議の結果・賛否・出席者の欄を埋める
  9. 議長と出席者が内容を確認し、署名または記名押印を行う
各工程の詳しい説明を読む
  1. 事務局が議案書を取りまとめ、開催の1週間前に取締役・監査役へ配布する
  2. 取締役会を開催する(60分〜90分)。事務局はICレコーダーで録音し、メモを取る
  3. 会議後、録音を最初から聞き直し、議案ごとに発言を書き出す
  4. 議案書と突き合わせ、議案番号・議案名・決議事項か報告事項かを確定する
  5. 「主な意見」として、誰がどのような趣旨を述べたかを要約する
  6. 議長の宣言をもとに、決議の結果(可決・否決)と賛否を書く
  7. 特別の利害関係を有する取締役がいた議案に、その氏名と議決に加わらなかった旨を書く
  8. 所定の様式に清書し、出席した取締役・監査役へ確認を依頼して押印を回付する

問題は4つあります。

(a)録音の聞き直しに時間がかかる。 90分の会議を聞き直すと60分前後かかります。月12件では、この工程だけで12時間です。

(b)法定の記載事項の抜けに、後から気づく。 会社法施行規則第101条第3項第1号は、開催の日時・場所に加えて、その場所にいない取締役等が出席した場合の出席の方法も記載事項としています。Web出席が増えると、この記載が漏れやすくなります。

(c)誰の発言かを取り違える。 「主な意見」は発言者で意味が変わります。社外取締役の指摘を別人の発言として書くと、議論の経緯が違って伝わります。

(d)担当2名の書き方が揃わない。 一方は発言を細かく残し、もう一方は要点だけを書きます。子会社ごとに粒度が違います。

  1. 取締役会を開催し、録音ファイルを所定の場所に保存する
  2. 【自動】 録音を文字起こしする。話者は匿名の話者ラベルに分けられる
  3. 【自動】 議案書のPDFから、議案番号・議案名・決議事項か報告事項かの区分を取得する
  4. 【自動】 議案ごとに、議事の経過の要領と意見の概要を整理し、根拠になった発言を引用として併記する
  5. 【自動】 特別の利害関係への言及があれば、その発言を引用付きで抜き出す
  6. 【自動】 決議の結果・賛否・出席者の氏名の欄は、空欄のまま下書きに残す
  7. 【人】 事務局が話者ラベルに氏名を割り当て、意見の要約を引用と照合する
  8. 【人】 事務局が自分の記録をもとに、決議の結果・賛否・出席者の欄を埋める
  9. 【人】 議長と出席者が内容を確認し、署名または記名押印を行う

自動化されるのは「聞き直す」「議案ごとに切り分ける」「意見を要約する」「様式に流し込む」の4つです。6と8を分けていることが、この構成の設計の中心です。 決議の結果と賛否は、AIに推測させません。理由は第7章の「人間の確認」で説明します。

02今回想定するシステム構成

構成図
取締役会(録音)+ 議案書PDF
   │
   ▼ 録音ファイルを所定のコンテナーへ保存
Azure Blob Storage
   │
   ▼【トリガー】ファイルが追加または変更されたとき
Power Automate
   │
   ├──▶ Azure AI Speech(バッチ文字起こし・話者分離)
   │       └─ 話者ラベル付きのテキストをJSONで取得
   ├──▶ 議案書PDFからテキストを取得(議案番号・議案名・区分)
   └──▶ 生成AI ── 議案ごとの経過の要領・意見の概要・引用の抽出
   │
   ▼
議事録の下書き(決議の結果・賛否・氏名は空欄)──【事務局が確認して埋める】
   │
   ▼
様式に整えた議事録 → 議長・出席者の確認と押印 → 本店に備え置く
役割想定する製品代替候補
処理エンジンAzure AI Speech(バッチ文字起こし)Google Cloud Speech-to-Text、Amazon Transcribe
生成AIClaude APIAzure OpenAI Service、Gemini API
ワークフローPower AutomateMake、n8n
音声と議事録の保管Azure Blob Storage、SharePointBox、Google Drive

文字起こしと要約を別の製品に分けています。 生成AIには文字になったものだけを渡します。精度が出ないときに、どちらが原因かを切り分けるためです。

Azure AI Speech のバッチ文字起こしは、ストレージに置いた録音を非同期で処理し、結果をJSONで返します。Power Automate からは、公式ドキュメントに手順のある Foundry Tools for Batch Speech to text コネクタの「Create transcription」アクションで呼び出せます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

録音ファイルがストレージのコンテナーに追加されたことを起点にします。Power Automate の Azure Blob Storage コネクタには「When a blob is added or modified(BLOBが追加または変更されたとき)」トリガーがあります。会議の終了は起点にしません。ICレコーダーからの取り込みには人の操作が入るためです。

会社ごとにフォルダーを分けてください。 12社の録音が混ざると、どの会社の取締役会かをAIに判定させることになります。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
取締役会の録音音声ファイル1件=取締役会1回ICレコーダーまたはWeb会議の録音
議案書議案番号、議案名、決議事項か報告事項かの区分SharePoint(事前配布の原本)
出席予定者の名簿取締役・監査役の氏名、役職、Web出席の予定事務局の名簿
議事録の様式自社のひな形事務局が登録
前回の議事録継続審議の議案の経緯SharePoint

議案名と議案番号は、録音からではなく議案書から取ります。 会議中の呼び方は「例の件」など揺れます。正式な議案名が書かれた事前資料を正本とします。

Step3

データの取得方法を決める

文字起こし: Azure AI Speech のバッチ文字起こしに、ストレージ上の録音ファイルを渡します。話者分離は既定では無効で、リクエストの propertiesdiarizationEnabledtrue にすると有効になります。話者が3人以上いる場合は diarization プロパティで最小・最大の人数を指定し、最大の人数は36未満(つまり35人まで)と公式ドキュメントに記載があります。話者分離を有効にすると、1ファイルの音声の長さは240分を超えられません。 結果には、フレーズごとに speaker のエントリが付きます。

議案書: SharePointのPDFから本文テキストを取得します。画像PDFの場合は読み取りの工程が別に必要で、この部分は利用環境に応じた個別確認が必要です。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 議案ごとの分割 … 全文を一度に渡さず、議案書の議案名をもとに区切ります。入力が短くなり、別の議案の発言が混ざりにくくなります
  2. 話者ラベルの保持Guest1 Guest2 のまま保持します。この段階で氏名に置き換えません
  3. 専門用語の補正 … 製品名、子会社名、役職名の誤変換を辞書で置換します。開会前の雑談も落とします
Step5

AIに処理させる

要約の対象を、議案ごとに限定します。

処理内容
議事の経過の要領その議案でどのような説明があり、どう議論が進んだかを、事実の順に短くまとめる
意見の概要述べられた意見を話者ラベル付きで要約する。原文の引用を必ず併記する
特別の利害関係への言及の抽出「この議案は私が関係するので議決に加わりません」といった趣旨の発言を引用付きで抜き出す
記載事項の不足の指摘日時・場所、Web出席の方法などが録音から確認できない場合に、その旨を列挙する

AIにさせないことを先に決めています。 決議の結果、賛成・反対の数、出席者の氏名、特別の利害関係の有無。この4つは判断させません。

Step6

指示内容を固定する

あなたは取締役会の事務局を支援する担当者です。
文字起こしと議案書から、議事録の下書きの材料を整理してください。

【厳守事項】
- 決議の結果(可決・否決)を書かないでください。
  議長が結果を宣言した発言がある場合のみ、その発言を
  resolution_basis_quote に原文のまま入れ、
  resolution_result は "記録なし" のままにしてください。
- 賛成・反対の数を数えないでください。
  「異議なし」という声の数から人数を推測しないでください。
- 話者ラベル(Guest1 等)を氏名に置き換えないでください。
  speaker_name は必ず空文字にしてください。
- 意見の要約には、根拠になった発言の原文を quote に併記してください。
  quote は文字起こしからそのまま引用し、言い換えないでください。
- 議案名・議案番号は、議案書の表記をそのまま使ってください。
- 特別の利害関係について、あなたが判断しないでください。
  関係を示唆する発言があれば special_interest_basis に引用を入れ、
  special_interest_directors は空のままにしてください。
- 日時・場所・出席の方法が確認できない場合は unclear_points に
  列挙してください。一般的な記載例で補わないでください。

【議案書(議案番号・議案名・区分)】{agenda}
【文字起こし(話者ラベル付き)】{transcript}

「異議なし」の数を数えさせない、という制約が効きます。 議長が「ご異議ございませんか」と問い、声が上がらなければ可決とする進行が広く行われています。録音に残るのは数人の「異議なし」という声だけで、誰が賛成したかは音声からは分かりません。

Step7

出力形式を固定する

{
  "meeting": {
    "company": "", "date": "", "place": "",
    "remote_attendance_method": "", "chair_label": ""
  },
  "agenda_items": [
    {
      "no": "",
      "title": "",
      "type": "決議事項 | 報告事項 | 不明",
      "proceedings_summary": "",
      "opinions": [
        { "speaker_label": "", "speaker_name": "", "summary": "", "quote": "" }
      ],
      "special_interest_directors": [],
      "special_interest_basis": "",
      "resolution_result": "記録なし",
      "resolution_basis_quote": "",
      "votes": { "for": null, "against": null, "recorded": false }
    }
  ],
  "unclear_points": []
}

speaker_namespecial_interest_directors は空で返させ、人が埋めます。空欄を返させることが目的の項目も、スキーマに置いておきます。 項目自体がないと、事務局がどこを埋めるべきか分かりません。なお Claude API には、出力を指定したJSONスキーマに適合させる Structured Outputs の機能があります。項目の型と必須項目が保証されるので、様式への流し込みが安定します。

Step8

システムへ連携する

議事録の様式: 自社のひな形に、上のJSONの項目を差し込みます。決議の結果・賛否・出席者の氏名の欄は、空欄のまま色を変えて出力し、埋まっていない箇所がひと目で分かる状態にします。

保存: 確定した議事録はSharePointへ保存します。会社法第371条第1項は、取締役会設置会社が取締役会の日から十年間、議事録等をその本店に備え置かなければならないと定めています。クラウド上の保管が備置きの要件を満たすかは、顧問弁護士に確認してください。

署名・押印: 会社法第369条第3項は、議事録が書面のときは、出席した取締役および監査役が署名または記名押印しなければならないと定めています。電磁的記録の場合は同条第4項により、法務省令で定める署名等に代わる措置をとることとされています。どの措置をとるかは個別の確認が必要です。

Step9

人が確認する

全件、事務局が確認します。段階的な自動化もしません。 確認の順序を決めておきます。

  1. 話者ラベルに氏名を割り当てる … 公式のTransparency Noteには、話者分離は話者の認識(speaker recognition)を提供するものではなく、個人を特定するために使うことはできないこと、Guest1 などのラベルの割り当ては会議ごとにランダムであることが明記されています。氏名は人が割り当てます
  2. 意見の要約を引用と照合するquote を読み、発言の趣旨とずれていないかを見ます
  3. 決議の結果と賛否を埋める … 事務局の手元の記録から書きます
  4. 特別の利害関係を有する取締役の欄を埋める … 会社法第369条第2項により、特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができません。誰が該当するかは、議案の内容と取締役の立場から人が判断します

3を人が埋める理由は、会社法第369条第5項にあります。 同項は、決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定すると定めています。記載がそのまま賛否の推定につながります。推測で書いてよい欄ではありません。

Step10

例外に対処する

起きること対応
録音が途中で切れている欠落した時間帯を unclear_points に記録し、事務局に通知する。前後から補わせない
議長の宣言が録音にないresolution_result は「記録なし」のまま。空欄で人に回す
議案書にない議題が会議中に出た新しい議案として扱わず unclear_points に入れる。追加は人が判断する
音声が240分を超える話者分離が使えないため、時間で分割して処理する
文字起こしの精度が低い公式ドキュメントは、雑音、発言の重なり、専門用語、マイクとの距離を精度低下の要因としています。マイクの位置を見直し、用語辞書を追加する
Step11

記録を残す

  • 録音ファイル(保存期間を決める)
  • 文字起こしの結果(話者ラベル付き)
  • AIの出力(JSON)
  • 事務局が確定させた議事録
  • AIの出力と確定版の差分

差分が精度の実測値になります。「意見の要約はそのまま通るが、議案の区分は3件に1件直している」と分かれば、次に手を入れる場所が決まります。録音と文字起こしの保存期間は、議事録の備置き期間とは別に決めてください(第13章)。

04実装レベルの3段階

最小構成:録音を手で文字起こしに投入し、結果をチャットAIに貼る / 聞き直しと整理
半自動化:ファイル保存 → 文字起こし → 議案ごとの整理 → 様式に流し込んだ下書き / 下書きの作成まで
本格構成:上記+議案書からの議案名の取得+前回議事録の参照+確認画面 / 確認の効率化まで

このユースケースは、半自動化までで効果の大半が出ます。 減っているのは聞き直しと清書の時間で、そこは半自動化の時点で消えるためです。本格構成で増えるのは確認の速さですが、月12件の規模では確認画面を作り込む費用に見合わないことがあります。件数が増えたときに検討してください。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
12 件
1件あたり現在時間
120 分
1件あたり導入後時間
44 分
現在  12件 × 120分 ÷ 60 = 24 時間/月
導入後 12件 × 44分 ÷ 60 = 8.8 時間/月
月間削減時間
15.2h
削減率
63%
年間削減時間
182h
年間金額換算(時間単価4,000円)
73万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 持株会社と事業子会社を持ち、グループ全体で取締役会の議事録を月10件以上作成している企業。議案書が電子で保管され、取締役会の録音が残っている場合。
向いていない
  1. 取締役会が年に数回しか開かれない企業。録音を残さない運用の場合。議事録の作成を顧問弁護士や司法書士に外注しており、内製に切り替える予定がない場合。

07最小構成で試す方法

  1. 直近の取締役会1件の録音を用意する
  2. 文字起こしのサービスに投入し、話者ラベル付きのテキストを得る
  3. 議案書のテキストと、上のプロンプトを生成AIのチャット画面に貼る
  4. 続けて文字起こしを貼り、議案ごとの整理をさせる
  5. 自分が作った議事録と並べて比べる

比べる観点は4つです。

  • 議案の切り分け … 別の議案の発言が混ざっていないか
  • 意見の要約 … 引用を読み、発言の趣旨とずれていないかを確かめる
  • 決議の結果 … 「可決」と書いていたら制約が効いていない
  • 記載事項の不足の指摘 … Web出席の方法が録音にないことに気づいているか

3件試して、議案の切り分けに誤りがなく、決議の結果を書いていなければ、次に進む目安になります。この検証だけは必ずやってください。 議長が議案名を読み上げる会社もあれば、資料番号だけで進める会社もあります。自社の録音で測らないと、導入後の工数が読めません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
決議の結果をAIが書いてしまう出力スキーマで「記録なし」を初期値にし、議長の宣言は引用としてのみ返させる
「異議なし」の声から賛成人数が推測される賛否の欄を数値で返させない。recorded: false を既定にする
話者ラベルが氏名に置き換わるspeaker_name を空で返す制約を入れる
Web出席の方法の記載が漏れる様式側に必須欄として持たせ、空欄なら確定できないようにする
特別の利害関係の有無をAIが判断する発言の引用だけを返させ、氏名の欄は人が埋める
社内資料に書いた条文番号が古い条文はe-Gov法令検索で都度確認する。様式の適法性は顧問弁護士に確認する

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 取締役会の全発言、取締役・監査役の氏名、議案の内容。未公表の重要な情報が含まれます。 買収や事業譲渡の検討、決算の内容、役員人事などは、公表前に取締役会に上がります。

  1. 外部AIへの入力可否 … 未公表の重要事実を外部のサービスへ送ることになります。取締役会に諮って、対象とする議案の範囲を決めてください。 上場企業の場合は、自社のインサイダー取引管理規程との整合を確認します。M&Aや決算の議案を対象から外す運用も選択肢です
  2. 閲覧できる人の範囲 … 録音、文字起こし、下書きの保管場所を、事務局の2名と限られた管理者だけに限定します。全社の共有フォルダーに置かないでください。 どの地域で処理・保存されるかも確認し、入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
  3. 保存期間と閲覧請求 … 会社法第371条は、議事録等を取締役会の日から十年間、本店に備え置くこと、株主や債権者が一定の要件のもとで閲覧・謄写を請求できることを定めています。一方、録音と文字起こしは議事録そのものではありません。 確定後に削除するのか自動削除にするのかを決め、取締役会で合意しておきます。請求の対象の線引きは顧問弁護士に確認してください
  4. 出席者への説明 … 録音がAIで処理されることを、取締役・監査役に事前に説明してください。説明のないまま全発言が処理される状態は、率直な議論を妨げます
  5. 自動実行してよい範囲 … 下書きの作成までです。確定していない議事録を出席者以外へ配信しないでください。 決議の結果を自動で埋める構成にもしないでください

10まず何から始めるか

1週目:様式と条文を突き合わせる

自社のひな形を、会社法施行規則第101条第3項の各号と突き合わせます。とくに第1号のWeb出席の方法第5号の特別の利害関係を有する取締役の氏名第8号の議長の氏名の欄があるかを見ます。この作業はAIの導入と関係なく価値があります。

2週目:1件で試す

直近の取締役会1件で、最小構成(§8)を試し、自分が作った議事録と比べます。

3週目:対象にする会社と議案を決める

グループ12社のうち、どの会社を対象にするかを決めます。M&Aや決算の議案の扱いは、この段階で個別に判断します。 取締役・監査役への説明文も用意します。

4〜6週目:半自動化を作る

録音の保存から様式への流し込みまでを作り、2社で試します。120分が何分になるかを実測します。

2か月目以降: 結果を見て対象を全社へ広げます。並行して、録音と文字起こしの保存期間を取締役会で決めます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-15/最終更新:2026-09-15
確認した内容情報源確認日
会社法第369条(特別の利害関係を有する取締役は議決に加われないこと、議事録への出席取締役・監査役の署名または記名押印、異議をとどめない者は賛成したものと推定されること)、第371条第1項(十年間の本店での備置き)、第363条第2項(業務執行取締役の3箇月に1回以上の報告)e-Gov法令検索: 会社法2026-09-15
会社法施行規則第101条(書面または電磁的記録で作成すること、第3項各号の記載事項=日時・場所とその場にいない者の出席の方法、議事の経過の要領およびその結果、特別の利害関係を有する取締役の氏名、一定の規定により述べられた意見・発言の概要、出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名、議長の氏名)e-Gov法令検索: 会社法施行規則2026-09-15
diarizationEnabledtrue にすると話者分離が有効になること。話者の最大人数は36未満であること。有効にすると1ファイルの音声は240分を超えられないこと。結果にフレーズごとの speaker エントリが含まれることMicrosoft Learn: Create a batch transcription2026-09-15
Power Automate から Foundry Tools for Batch Speech to text コネクタの「Create transcription」で呼び出せること。Azure Blob Storage コネクタの「When a blob is added or modified」トリガーと組み合わせる手順Microsoft Learn: Power automate batch transcription2026-09-15
話者分離は Guest1 Guest2 などの匿名ラベルに分けるもので、話者認識ではなく個人の特定には使えないこと。ラベルの割り当ては会議ごとにランダムであること。雑音、発言の重なり、専門用語、マイクとの距離が精度を下げることMicrosoft Learn: Transparency note2026-09-15
Claude API の Structured Outputs で、出力を指定したJSONスキーマに適合させられることClaude Docs: Structured outputs2026-09-15

条文の内容は、上記のe-Gov法令検索で確認した範囲のものです。法令の解釈や、自社の様式が要件を満たすかどうかの判断は含みません。 電磁的記録での作成・保存、本店での備置きの方法、署名等に代わる措置は顧問弁護士に確認してください。

実装ステータス:構成例。 公開仕様と公式の条文に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0076)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次