Media > AI活用ユースケース > 法務 > 法改正と通達の更新を毎週巡回して影響のある顧問先と規程を洗い出す

法改正と通達の更新を毎週巡回して影響のある顧問先と規程を洗い出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

あらかじめ決めた官公庁サイトの一覧を対象に、週1回、更新されたページを見つけて内容を読み、「何が、いつから、誰に適用されるのか」を整理したうえで、顧問先台帳や社内規程と突き合わせて影響先の候補を出す構成です。

サマリー
利用ツール
Amazon Kendra/Azure AI/ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Make/n8n/OpenSearch/Power Automate/Python
対象業界
保険/医療/士業/金融
対象部門
法務
対象業務
情報検索/要約
主な課題
属人化している/情報が見つからない/期限・対応漏れが起きる
AIで行う処理
エージェント
主な効果
判断支援/工数削減/検索時間短縮
導入難易度
★★★★★
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
必須
現在工数
40h/月
AI導入後
10h/月
想定削減
75%
年間削減
360h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 担当者が毎週月曜の午前、決まった官公庁サイトを順に開く
  2. 新着一覧を見て、前週から増えたものを目で探す
  3. 題名から関係のありそうなものを選んで開く
  4. 本文または添付のPDFを読み、施行日・対象・適用範囲を把握する
  5. 顧問先台帳を見て、影響しそうな顧問先を考える
  6. 影響がある顧問先へ個別に連絡文を書く
  7. 事務所内の共有メモに記録する
導入後(After)
  1. 自動毎週決まった時刻に巡回が始まる
  2. 自動法令の改正そのものは、法令検索のAPIと官報から機械的に取得する
  3. 自動通達・Q&A・様式・お知らせは、決められたドメインの一覧ページをエージェントが巡回し、前回の記録と照合して更新を特定する
  4. 自動更新の内容を読み、「何が変わったか」「いつから」「誰に適用されるか」を整理する
  5. 自動顧問先台帳・社内規程を検索し、影響する候補を根拠付きで挙げる
  6. 自動影響ありと判定したものについて、顧問先への連絡文の下書きを作る
  7. 有資格者が全件を確認する。「影響なし」と判定されたものも抜き取りで確認する
  8. 連絡文を修正し、送信する
  9. 自動巡回した範囲、判定、根拠を記録に残す
各工程の詳しい説明を読む
  1. 担当者が毎週月曜の午前、決まった官公庁サイトを順に開く
  2. 新着一覧を見て、前週から増えたものを目で探す
  3. 題名から関係のありそうなものを選んで開く
  4. 本文または添付のPDFを読み、施行日・対象・適用範囲を把握する
  5. 顧問先台帳を見て、影響しそうな顧問先を考える
  6. 影響がある顧問先へ個別に連絡文を書く
  7. 事務所内の共有メモに記録する

問題は5つあります。

(a)情報源ごとに新着の出し方が違う。 更新情報の配信があるサイト、一覧ページの日付だけが頼りのサイト、PDFの中身を開かないと変更が分からないサイトが混在しています。同じやり方で回れません。

(b)題名で捨てている。 週50件を全部読む時間はないため、題名を見て開くかどうかを決めています。題名からは影響が読み取れないものが確実に混ざります。

(c)見落としが事故になる。 対応が遅れると、顧問先が是正勧告を受けたり、遡って保険料を求められたりします。この業務の価値は、時間の短縮より見落としの防止にあります。

(d)影響の判断が属人的。 「この改正はA社に関係する」という判断は、その顧問先の実情を知っている担当者にしかできません。担当が休むと止まります。

(e)都道府県ごとの違いを追いきれない。 同じ制度でも、都道府県によって様式や期限が違うことがあります。顧問先が複数の都道府県にまたがると、確認先が増えます。

  1. 【自動】 毎週決まった時刻に巡回が始まる
  2. 【自動】 法令の改正そのものは、法令検索のAPIと官報から機械的に取得する
  3. 【自動】 通達・Q&A・様式・お知らせは、決められたドメインの一覧ページをエージェントが巡回し、前回の記録と照合して更新を特定する
  4. 【自動】 更新の内容を読み、「何が変わったか」「いつから」「誰に適用されるか」を整理する
  5. 【自動】 顧問先台帳・社内規程を検索し、影響する候補を根拠付きで挙げる
  6. 【自動】 影響ありと判定したものについて、顧問先への連絡文の下書きを作る
  7. 【人】 有資格者が全件を確認する。「影響なし」と判定されたものも抜き取りで確認する
  8. 【人】 連絡文を修正し、送信する
  9. 【自動】 巡回した範囲、判定、根拠を記録に残す

自動化されるのは「探す」「読む」「照合する」「下書きを作る」の4つです。残るのは「本当に影響があるかを判断すること」と「顧問先に伝えること」です。

7番目の「影響なしも抜き取りで確認する」を省かないでください。この構成で最も危険なのは、誤って影響ありと判定することではなく、影響ありのものを影響なしとして捨てることです。

02今回想定するシステム構成

構成図
【週次スケジュール】
   │
   ├──▶ 機械的に取れるもの
   │     ├─ e-Gov 法令API ── 指定日に更新された法令の一覧
   │     └─ 官報発行サイト ── 公布された法令・公示
   │
   └──▶ 機械的に取れないもの(通達 / Q&A / 様式 / お知らせ)
         │
         ▼
      Claude API(ウェブ検索ツール + ページ取得)
         │  巡回先ドメインを一次情報に限定
         │  一覧を開く → 前回以降のものを選ぶ → 詳細を開く → PDFを読む
         ▼
      前回の巡回記録との差分照合
         │
         ▼
      内容の整理(何が / いつから / 誰に)
         │
         ▼
   ┌─────┴─────┐
   ▼                 ▼
顧問先台帳の検索    社内規程・ひな形の検索(検索基盤)
   │                 │
   └─────┬─────┘
         ▼
   影響先の候補 + 根拠 + 連絡文の下書き
         │
         ▼【人】有資格者が全件確認(影響なしも抜き取り)
         │
         ▼
   顧問先へ連絡 / 巡回記録として保存
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude API(ウェブ検索ツール)OpenAI API、Gemini API
検索基盤Azure AI SearchAmazon Kendra、OpenSearch
ワークフローn8nMake、Power Automate
実行環境PythonGoogle Apps Script
法令データe-Gov 法令API官報発行サイト、商用の法令データベース
顧問先台帳顧問先管理システムスプレッドシート、基幹システム

「機械的に取れるもの」と「取れないもの」を分けている点が、この構成の設計上いちばん重要です。

法令そのものの改正は、公的なデータとして取得できます。e-Gov の法令APIには、指定した日付に更新された法令の一覧を取得する機能があり、2025年3月19日にバージョン2が公開されています。官報は2025年4月1日から電子化され、官報発行サイトへの掲載をもって発行となりました。毎日午前8時30分に発行され、発行から90日間は全文を無料で閲覧・ダウンロードできます。ここをエージェントに探させる理由はありません。

エージェントが必要なのは、法令の下にある通達、疑義照会への回答、様式の差し替え、リーフレットの改訂です。これらは配信の仕組みが整っておらず、サイトごとに置き場所も更新の見せ方も違います。見落としが起きているのも、ほぼこちら側です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

週1回の定時実行を基本にします。モデルでは毎週月曜の午前6時としました。担当者が出社したときに結果が揃っている状態を作ります。

これに加えて、2つの補助的なきっかけを持ちます。

  • 官報の日次取得 … 官報は毎日午前8時30分に発行されます。公布された法令の一覧だけは日次で取ります
  • 手動実行 … 大きな改正が話題になったときに、担当者がその場で回せるようにします

リアルタイム監視にはしません。 官公庁のページは日中に何度も更新されることがあり、常時監視すると同じ内容を何度も処理します。週次で十分です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
巡回先の一覧サイト名、URL、種別(新着一覧/様式/Q&A)、確認頻度、担当分野自社で作る一覧
前回の巡回記録前回確認したページのURL、更新日、内容の要点、取得日時自社のデータベース
法令の更新一覧指定日に更新された法令の法令ID・名称・公布年月日e-Gov 法令API
官報公布された法令、公示事項官報発行サイト
顧問先台帳業種、従業員規模、所在地(都道府県)、適用している特例、協定の内容、直近の届出状況顧問先管理システム
社内規程・ひな形就業規則のひな形、各種協定書、社内マニュアル共有フォルダ(検索基盤に取り込む)

「巡回先の一覧」を人が作ることが、この構成の出発点です。 AIに「関係のありそうなサイトを探して」と任せてはいけません。追う範囲を人が決め、その範囲を確実に見ることが目的だからです。範囲を決めていないと、「見落としがない」と言えなくなります。

一覧は30〜50件程度になります。この一覧を作る作業自体が、現状の棚卸しになります。

Step3

データの取得方法を決める

法令: e-Gov の法令APIを使います。法令の一覧、法令の本文、条文単位の取得、更新された法令の一覧を取得する機能が提供されています。バージョン2が2025年3月に公開され、バージョン1も引き続き提供されています。どちらを使うかは実装時に確認してください。

官報: 官報発行サイトから、当日発行分の目次を取得します。発行から90日を過ぎると一部の記事が非公開になるため、取得したものは自社側に保存します。

通達・Q&A・様式: ここでエージェントを使います。Claude API のウェブ検索ツールには、検索対象のドメインを限定する設定(allowed_domains)と、1回のリクエストでの検索回数の上限(max_uses)があります。巡回先を go.jp の該当ドメインに限定し、回数の上限を決めます。 上限がないと、関連情報を辿り続けて費用が膨らみます。

検索結果には出典が必ず付き、引用元の情報は入力・出力のトークンとして課金されない旨が公開資料に記載されています。根拠のURLが必ず付くことは、この用途では機能要件です。

顧問先台帳・社内規程: 検索基盤に取り込みます。規程やひな形はPDFやWordで散在しているため、取り込みの前に「どれが現行版か」を整理する必要があります。この整理が実装で最も時間のかかる部分です。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 巡回先一覧の整備 … URLだけでなく、「そのページの何を見るのか」(一覧の日付欄/PDFの版数/ページ末尾の更新日)を書き添えます。これがないとエージェントが毎回違う見方をします
  2. 前回記録との突合キーを決める … URL単位で持つか、記事ID単位で持つかを決めます。官公庁サイトはURLが変わることがあるため、題名と日付も併せて持ちます
  3. PDFの扱いを分ける … 文字が埋め込まれたPDFはそのまま読めます。画像だけのPDFはOCRが必要です。古い通達は画像PDFのことがあります
  4. 現行版の特定 … 社内規程は「2023年版」「最新版」「最新版(修正)」のようなファイルが並びます。取り込む前に現行版を1つに決めます
  5. 顧問先台帳の項目整理 … 影響判定に使う項目(業種、規模、都道府県、適用特例)が空欄だらけだと照合できません。先に台帳を埋める作業が要ります
  6. パブリックコメント段階のものを分ける … 意見募集中の案と、確定した通達を混ぜないようにします。混ざると「まだ決まっていないこと」を顧問先に伝えることになります
Step5

AIに処理させる

3つの段階に分け、それぞれ別の呼び出しにします。1回の呼び出しで全部やらせません。

第1段階:巡回と差分の特定(エージェント)

処理内容
一覧ページを開く巡回先一覧に沿って順に開く
更新の特定前回の巡回記録と照合し、新規・変更されたものを選ぶ
詳細の取得選んだものの本文とPDFを取得する
関連の追跡「〇〇通達の一部改正」とあれば、元の通達も取得する

第2段階:内容の整理(通常の呼び出し)

処理内容
要点の抽出何が変わったか、いつから、誰に適用されるか、経過措置の有無
種別の分類法令改正/通達/Q&A/様式変更/お知らせ/意見募集
確定度の判定施行済み/公布済み施行前/案の段階

第3段階:影響の照合(検索基盤との組み合わせ)

処理内容
顧問先の絞り込み適用対象の条件(業種・規模・所在地・特例)で台帳を検索する
規程の特定社内規程・ひな形のうち、修正が要る箇所を検索して示す
連絡文の下書き影響のある顧問先向けに、変更点と必要な対応を書いた文案を作る

やらせないこと:

  • 法的な結論を出すこと。 「この改正により御社は違法状態です」といった断定はさせません。示すのは「確認が必要な箇所」までです
  • 顧問先への自動送信。 下書きまでです
  • 「影響なし」の確定。 影響なしという判定も出させますが、それを最終結果にしません。 抜き取りで人が確認します
  • 巡回先の自由な拡張。 一覧にないサイトを勝手に見に行かせません。範囲が変わると「見落としがない」と言えなくなります
  • 知識からの回答。 「一般に、労働基準法では…」という説明をさせません。取得したページの記載だけを根拠にさせます
Step6

指示内容を固定する

第3段階(影響の照合)の例を示します。

あなたは社会保険労務士事務所の調査担当を支援する担当者です。
下の【更新情報】について、影響を受ける可能性のある顧問先を
【顧問先台帳】から挙げ、確認すべき点を示してください。

【厳守事項】
- 【更新情報】に書かれていることだけを根拠にしてください。
  あなたの知識で法令の内容を補わないでください。
  記載がない事項は「記載なし」としてください。
- 適法か違法かの結論を出さないでください。
  「確認が必要な点」までにとどめてください。
- 顧問先を挙げるときは、台帳のどの項目が条件に当たるのかを
  matched_condition に必ず書いてください。根拠のない列挙をしないでください。
- 影響がないと判断した場合も、なぜないのかを書いてください。
  「該当なし」だけで終わらせないでください。
- 施行日が未定、または意見募集の段階である場合は、
  status にそのことを明記し、顧問先への連絡文は作らないでください。
- 都道府県によって取扱いが異なる可能性がある場合は、
  needs_local_check に該当する都道府県を挙げてください。

【更新情報】
出典URL: {source_url}
取得日時: {fetched_at}
本文: {content}

【顧問先台帳(業種・規模・所在地・適用特例)】
{client_master}

【関連する社内規程・ひな形の抜粋】
{internal_docs}

「あなたの知識で補わない」の1行が、この用途では最も重要です。 法令の内容は改正で変わります。学習した時点の内容で補われると、古い内容が混ざり、しかもそれが自然な文章で出てきます。根拠を取得したページに限定し、出典URLを必ず付けさせてください。

「影響がない理由も書かせる」も必ず入れます。理由が書かれていれば、人が抜き取りで確認したときに、判断の筋道が正しいかを見られます。「該当なし」だけでは検証できません。

Step7

出力形式を固定する

{
  "source_url": "",
  "fetched_at": "",
  "doc_type": "法令改正 | 通達 | Q&A | 様式変更 | お知らせ | 意見募集",
  "status": "施行済み | 公布済み施行前 | 案の段階 | 施行日未定",
  "effective_date": "",
  "summary": {
    "what_changed": "",
    "who_is_affected": "",
    "transitional_measure": ""
  },
  "impact": "high | medium | low | none",
  "impact_reason": "",
  "affected_clients": [
    {
      "client_id": "",
      "matched_condition": "",
      "action_needed": "",
      "confidence": "high | medium | low"
    }
  ],
  "affected_internal_docs": [
    { "doc_name": "", "section": "", "reason": "" }
  ],
  "needs_local_check": [],
  "draft_notice": "",
  "unresolved": []
}

構造化した形にする理由は、後段の処理が3つあるためです。第一に impact で担当者に見せる順番を決めます。第二に affected_clients を顧問先管理システムへ書き戻します。第三に、impact: none の件を別の一覧にして、抜き取り確認の対象にします。

unresolved は、判断できなかった点を入れる欄です。ここが空で返ってくる場合は、逆に疑ってください。週50件の更新で、判断に迷う点が1件もないということはありません。

Claude API には、返すJSONの形をスキーマで指定して守らせる構造化出力の機能があります。statusimpact に想定外の値が入ると後段が止まるため、ここは形を固定します。

Step8

システムへ連携する

戻し先何を入れるか
担当者の確認画面impact の順に並べた一覧。出典URL、要点、影響先の候補、根拠
顧問先管理システム顧問先ごとに「この改正の確認が必要」というタスクを起票する
巡回記録データベース巡回したURL、取得日時、本文のスナップショット、判定、確認者
週次レポート今週の更新件数、影響ありの件数、未確認の件数

顧問先管理システムへのタスク起票は、人が承認してから行います。 自動で200社にタスクが立つと、確認されないタスクが溜まります。

確認画面の作りが、この構成の使い勝手を決めます。次の3つを必ず入れてください。

  • 出典URLを1クリックで開ける(原文をすぐ見られないと、確認に時間がかかります
  • AIが取得した本文と、現在のページを並べて見られる(ページが後から更新されることがあります)
  • 「影響なし」の一覧を、いつでも開ける
Step9

人が確認する

全件、有資格者が確認します。この工程は運用が安定しても外しません。

理由は、誤りの結果が顧問先に及ぶためです。対応漏れは是正勧告や追徴につながり、誤った案内は責任問題になります。この構成が減らしているのは「探して読んで照合する時間」であって、「判断の責任」ではありません。

確認の手順を3段階に分けます。

段階対象確認の内容
1impact が high・medium の件全件。出典を開いて原文を確認し、影響先の候補を精査する
2impact が low の件要点だけを読み、impact の判定が妥当かを見る
3impact が none の件毎週、無作為に5件を抜き取り、原文まで戻って確認する

3段階目が肝です。ここを省くと、この仕組みは「見落としを防ぐ」目的を果たしません。抜き取りで誤りが見つかった場合、その週の none は全件を見直します。

月に1回、巡回先一覧そのものを見直します。サイトの改編でページが移動していないか、追うべき情報源が増えていないかを確認します。

Step10

例外に対処する

起きること対応
サイトが改編されURLが変わった巡回結果が0件のサイトを検出し、担当者に通知する。「更新なし」と「取得失敗」を区別する
ページは開けたが更新の判定ができない判定不能として人に回す。更新なしと扱わない
画像だけのPDFOCRに回す。OCRでも読めなければ人に回す
意見募集中の案を確定情報として扱うstatus を必ず判定させる。案の段階は連絡文を作らせない
施行日が「別に定める日」effective_date を空にし、unresolved に入れる。推測で日付を入れない
都道府県で取扱いが違うneeds_local_check に挙げ、該当する都道府県の顧問先を持つ場合は人が個別に確認する
エージェントが同じページを繰り返し開く検索回数の上限を設定する。1回の巡回で開くページ数の上限も決める
取得した本文が長すぎて処理できない章単位に分割する。ただし「何が変わったか」の判定は全体で1回行う
顧問先台帳の項目が空欄空欄を「該当しない」と扱わない。「判定できない」として人に回す
巡回が失敗して結果が0件週次の実行結果を必ず通知する。「何も来ない=更新がなかった」と解釈できる状態にしない
同じ通達が複数のサイトに載る出典URLで重複を除く。ただし、省庁版と都道府県版で内容が違うことがあるため、機械的に片方を捨てない
AIが法令の内容を知識で補った出典URLと本文の対応を確認する。本文にない記述が出た件は、その週の設定を見直す

「巡回が失敗して0件」の扱いを最初に決めてください。 通知が来ないことを「更新なし」と受け取る運用は、静かに機能停止します。毎週、更新が0件であっても「0件でした」と通知する設計にします。

Step11

記録を残す

この業務では、記録の保存が構成の存在理由の半分を占めます。

  • 巡回した全URLと、取得日時、HTTPの応答(成功/失敗)
  • 取得したページの本文スナップショット(官報は90日で一部が非公開になるため、自社側に残す
  • AIが返した判定の全項目(impact: none を含む)
  • 確認者、確認日時、人が判定を変えた場合の変更前後
  • 抜き取り確認の対象と結果

後から「なぜ見落としたのか」を追えることが重要です。追えれば、原因が巡回先一覧の不足なのか、判定の誤りなのか、確認の抜けなのかを切り分けられます。追えなければ、同じ見落としが繰り返されます。

人が判定を変えた記録は、精度の実測値になります。「様式変更は毎回 low と判定されるが、人は medium に上げている」と分かれば、判定基準の書き方を直せます。

04実装レベルの3段階

最小構成:3サイトを対象に、生成AIのウェブ検索で更新を挙げさせる。人が答え合わせする / 更新の発見(検証用)
半自動化:法令APIと官報の日次取得+巡回先20件のエージェント巡回+要点の整理。結果は一覧で出す / 発見と要約
本格構成:上記+顧問先台帳・社内規程との照合+連絡文の下書き+顧問先管理システムへの起票 / 判断以外のすべて

半自動化の時点で、12分が6分程度になります。 探して開いて読む部分が消えるためです。影響の照合(7分)はまだ人が行います。 本格構成に進むには、顧問先台帳が整っていることが前提です。業種・規模・所在地・適用特例が埋まっていなければ、照合はできません。台帳の整備を後回しにしたまま照合を作ると、「判定できない」が並ぶだけの仕組みになります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
200 件
1件あたり現在時間
12 分
1件あたり導入後時間
3 分
現在  200件 × 12分 ÷ 60 = 40 時間/月
導入後 200件 × 3分 ÷ 60 = 10 時間/月
月間削減時間
30h
削減率
75%
年間削減時間
360h
年間金額換算(時間単価4,000円)
144万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 監督官庁が複数あり、通達や様式の変更が頻繁に出る領域を扱っている組織。顧問先や事業所が100を超え、どこに影響するかの突合が手作業になっている場合。影響の有無を判断できる有資格者または経験者が社内にいること。
向いていない
  1. 追う法令が数本に限られる場合(購読サービスや官庁のメール配信で足りる)。影響を判断できる人が社内におらず、AIの出力を検証できない場合。まだ情報源の一覧すら作られていない段階(先に一覧を作るほうが効果が大きい)。

07最小構成で試す方法

いきなりこの構成を作らないでください。まず3サイト・4週間で試します。

  1. 巡回先を3サイトに絞る(自分たちが最もよく見るもの)
  2. 顧問先台帳から、代表的な20社だけを抜き出す
  3. 毎週1回、生成AIのウェブ検索機能を使い、「この3サイトで先週から更新されたものを、出典URL付きで挙げて」と指示する
  4. 同じ週に、担当者が従来どおり手作業でも確認する
  5. 4週間続け、次の3つを数える

- AIが見つけて人も見つけたもの - 人だけが見つけたもの(=AIの見落とし) - AIだけが挙げて、実際は関係なかったもの

2番目の数がこの検証の答えです。 1件でも見落としがあれば、その原因を確かめてください。原因は多くの場合、巡回先一覧の書き方(そのページの何を見るのかが書かれていない)にあります。

判断の目安は次のとおりです。

結果判断
4週間で人だけが見つけたものが0件巡回先を増やして次の段階へ
見落としが1〜2件で、原因が特定できる一覧の書き方を直して、もう4週間試す
見落としが3件以上、または原因が分からないこの構成に進まない。 情報源の整理から始め直す

影響の照合は、代表20社の台帳を貼って「この改正が影響しそうな会社と、その理由」を聞くだけで試せます。理由が台帳の項目に基づいているかを見てください。 「一般に製造業では…」という理由が返ってくるなら、指示の書き方が足りていません。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
検索が一次情報以外を拾う巡回先ドメインを限定する設定を使う。解説記事・まとめサイトを根拠にさせない
AIが法令の内容を知識で補う「取得したページの記載だけを根拠にする」と明示し、出典URLを必ず出させる
サイト改編で取得できなくなる「更新なし」と「取得失敗」を区別する。0件のサイトを検知して通知する
巡回が失敗しても誰も気づかない更新0件でも毎週必ず通知する。通知が来ないこと自体を異常とみなす
意見募集中の案を確定情報として流すstatus を判定させ、案の段階は連絡文を作らせない
画像だけの古いPDFが読めないOCRを挟む。読めない場合は人に回す
エージェントがページを辿り続けて費用が膨らむ検索回数と取得ページ数の上限を設定する
「影響なし」が正しいか誰も検証しない毎週5件を抜き取って原文まで戻る。この工程を運用手順に明記する
顧問先台帳の空欄を「該当しない」と扱う空欄は「判定できない」として人に回す
社内規程の現行版が分からない取り込み前に版を整理する。この整理を飛ばすと、古い規程を根拠に案内することになる
同じ通達が複数サイトに載り重複する出典URLで重複を除く。ただし省庁版と都道府県版は内容が違うことがある
都道府県ごとの違いを見落とす該当しうる場合は必ず印を付け、該当する顧問先を持つときだけ人が調べる
官報の過去分が見られなくなる発行から90日で一部が非公開になる。取得したものは自社側に保存する

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 顧問先の社名、業種、従業員規模、適用している特例、届出状況、社内規程の内容。顧問先の内部情報であり、守秘義務の対象です。

  1. 外部AIへの入力可否 … 影響の照合では、顧問先台帳を外部のAIサービスへ送ることになります。士業には法令上の守秘義務があります。 顧問契約に第三者への情報提供に関する定めがある場合は、それに従ってください。台帳をそのまま送らず、社名を伏せて「業種・規模・都道府県・適用特例」だけを送る設計にすれば、送る情報を大きく減らせます。社名との対応付けは自社側で行います
  2. 巡回対象は公開情報 … 官公庁サイトの巡回自体は公開情報の取得です。ただし、各サイトの利用条件とアクセス頻度への配慮は必要です。週1回・並列数を抑える設計にします
  3. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
  4. アクセス権限 … 巡回記録と判定結果には顧問先の情報が含まれます。担当チームと管理者に限定します
  5. 誤情報のリスク … 生成AIは、もっともらしい誤りを自然な文章で出します。法令の内容については、出典URLの原文に当たらずに顧問先へ伝えないでください。 確認画面から原文を1クリックで開ける作りにするのは、このためです
  6. 自動実行してよい範囲 … 顧問先への連絡は必ず人が送ります。下書きの自動送信機能を作らないでください。作れば、いつか誤って送信されます

誤りが起きた場合のリスクは、対応漏れによる顧問先の不利益(是正勧告、追徴、行政処分)と、誤った案内による責任問題です。どちらも金銭と信用の両方に及びます。この構成を「担当者の代わり」ではなく「担当者の見落としを減らす補助」として位置づけてください。

10まず何から始めるか

1週目:巡回先の一覧を作る

担当者2名で、現在見ているサイトをすべて書き出します。URLと、「そのページの何を見て更新に気づくのか」を併せて書きます。30〜50件になります。この一覧が作れない場合、現状の業務は再現できない形で回っています。 そこが分かることが、この週の成果です。

2〜5週目:3サイトで4週間、答え合わせをする

巡回先のうち3サイトについて、生成AIのウェブ検索で更新を挙げさせ、同じ週に人も従来どおり確認します。人だけが見つけたものを数えます。 ここが0件になるまで、一覧の書き方を直します。

2か月目:台帳と規程を整える

顧問先台帳の「業種・規模・都道府県・適用特例」を埋めます。社内規程・ひな形の現行版を1つに決めます。AIとは関係のない作業ですが、ここが埋まっていないと本格構成は動きません。 そして、この作業自体が単独で価値を持ちます。

3か月目:法令APIと官報の取得を作る

機械的に取れる部分から作ります。e-Gov の法令APIと官報発行サイトから、更新された法令の一覧を日次・週次で取得し、記録に残すところまでを実装します。ここはエージェントを使わないため、動作が安定します。

4か月目以降: 通達・Q&A・様式の巡回を、一覧の上位10件から順に自動化します。一度に全部を対象にしないでください。 10件で1か月運用し、見落としが出ないことを確認してから増やします。並行して、影響照合の設計を進めます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-09/最終更新:2026-09-09
確認した内容情報源確認日
e-Gov 法令APIのバージョン2が2025年3月19日に公開されたこと。バージョン1も引き続き提供されていることe-Gov法令検索: お知らせ2026-09-09
e-Gov 法令APIに、法令一覧の取得、法令データの取得、条文内容の取得、更新された法令の一覧の取得の機能があることe-Gov: 法令API(Version 1)2026-09-09
官報が2025年4月1日に電子化され、官報発行サイトへの掲載をもって発行となること。毎日午前8時30分に発行され、発行から90日間は全文を無料で閲覧・ダウンロードできること。90日経過後は個人情報を含む一部記事が非公開になること内閣府: 官報の電子化について2026-09-09
Claude API のウェブ検索ツールで、検索対象ドメインの限定(allowed_domains)と検索回数の上限(max_uses)を設定できること。検索結果には出典が必ず付き、引用元の情報は入力・出力のトークンとして課金されないことClaude Docs: Web search tool2026-09-09
Claude API で、返すJSONの形をスキーマで指定して守らせる構造化出力が利用できることClaude Docs: Structured outputs2026-09-09

各官公庁サイトの更新情報の提供方式(配信の有無、一覧ページの構造)は個別に異なります。巡回先ごとに実装時の確認が必要です。 顧問先管理システムとの連携方式も製品によって異なります。

守秘義務および個人情報の取扱いについては、自社の情報管理規程と顧問契約の定めを確認してください。外部のAIサービスへ顧問先情報を送る構成の可否は、この記事では判断できません。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

自社の業務に使えるAI活用候補を整理します

このユースケース(UC-0026)についてのご相談はこちらから。

AI活用について相談する
目次