作業手順書を用語集付きで多言語に翻訳する
日本語の作業手順書を入力に、社内で決めた対訳用語集を適用して、ベトナム語・インドネシア語・英語の版を作る構成です。設備名、工程名、治具の呼び方といった社内用語が、毎回同じ訳語になります。
- 利用ツール
- ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Make/Power Automate
- 対象業界
- 宿泊/建設/製造/飲食
- 対象部門
- 品質管理/生産
- 対象業務
- 台帳・マスタ管理/書類作成
- 主な課題
- 引き継ぎができていない/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 翻訳
- 主な効果
- 品質標準化/工数削減/教育コスト削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 最小構成
- 費用感
- 既存ツールのみ(小)
- 人間の確認
- 必須
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 生産技術が日本語の手順書を新規作成、または改訂する
- 品質管理が内容を承認する
- 翻訳会社に見積を依頼し、発注する(社内で訳す場合は、日本語が分かるスタッフに頼む)
- 訳文が届く
- 設備名や工程名の訳語が過去の版と合っているかを確認する
- 合っていない箇所を指摘し、修正を依頼する
- 訳文を Word のレイアウトに流し込み、写真と図の位置を直す
- PDFにして現場に掲示し、共有フォルダに保存する
- 生産技術が日本語の手順書を作成、または改訂する
- 品質管理が日本語版を承認する
- 自動手順書の本文を、見出し・手順・注意書きの単位に分けて取り出す
- 自動対訳用語集と「訳さない語のリスト」を添えて、3言語分の訳文を作る
- 自動数値・型番・単位・安全表示が原文と一致しているかを機械的に照合する
- 自動用語集にない社内用語が本文に出てきた場合、一覧にして報告する
- 人各言語のリーダーが訳文を確認し、必要なら直す
- 人直した訳語を用語集に登録する
- 自動訳文を原本のレイアウトに流し込み、対応する原文の版を台帳に記録する
各工程の詳しい説明を読む
- 生産技術が日本語の手順書を新規作成、または改訂する
- 品質管理が内容を承認する
- 翻訳会社に見積を依頼し、発注する(社内で訳す場合は、日本語が分かるスタッフに頼む)
- 訳文が届く
- 設備名や工程名の訳語が過去の版と合っているかを確認する
- 合っていない箇所を指摘し、修正を依頼する
- 訳文を Word のレイアウトに流し込み、写真と図の位置を直す
- PDFにして現場に掲示し、共有フォルダに保存する
問題は4つあります。
(a)訳語がばらつく。 同じ設備が「攪拌機」「ミキサー」「Máy trộn」「Mixer」と、版や依頼先ごとに違う言葉で書かれます。現場では別の機械だと思われます。
(b)改訂に訳文が追いつかない。 日本語版だけ改訂され、多言語版が古いまま掲示されていることがあります。どの訳文がどの版に対応しているかを管理していないためです。
(c)レイアウトの作り直しに時間がかかる。 ベトナム語とインドネシア語は日本語より文字数が増えるため、枠から溢れます。写真の位置も動きます。
(d)数値や型番が書き換わることがある。 翻訳の過程で全角と半角が変わる、桁が落ちる、単位が変換されるといった事故が起きます。手順書では致命的です。
- 生産技術が日本語の手順書を作成、または改訂する
- 品質管理が日本語版を承認する
- 【自動】 手順書の本文を、見出し・手順・注意書きの単位に分けて取り出す
- 【自動】 対訳用語集と「訳さない語のリスト」を添えて、3言語分の訳文を作る
- 【自動】 数値・型番・単位・安全表示が原文と一致しているかを機械的に照合する
- 【自動】 用語集にない社内用語が本文に出てきた場合、一覧にして報告する
- 【人】 各言語のリーダーが訳文を確認し、必要なら直す
- 【人】 直した訳語を用語集に登録する
- 【自動】 訳文を原本のレイアウトに流し込み、対応する原文の版を台帳に記録する
自動化されるのは「訳す」「照合する」「流し込む」「記録する」の4つです。現場のリーダーによる確認は残します。
02今回想定するシステム構成
日本語の手順書(Word) │ ▼【人】品質管理が日本語版を承認 │ ▼ 本文の切り出し(見出し/手順/注意書きの単位) │ ├──◀── 対訳用語集(スプレッドシート) │ 社内用語 × 3言語 + 訳さない語のリスト │ ▼ 生成AI ── 用語集を適用して3言語に翻訳 │ ▼ 機械照合 ── 数値・型番・単位・安全表示が原文と一致するか │ ▼【人】各言語のリーダーが確認・修正 → 用語集へ登録 │ ▼ Word のレイアウトへ流し込み → PDF → 現場掲示 │ ▼ 版管理台帳(原文の版と訳文の版を対応づける)
| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| 生成AI | Claude API | OpenAI API、Gemini API |
| ワークフロー | Google Apps Script(半自動化する場合) | Power Automate、Make |
| 用語集の置き場所 | Google スプレッドシート | Excel、SharePoint リスト |
| 翻訳専用サービス(代替) | DeepL API の多言語用語集 | Google Cloud Translation Advanced の用語集 |
| 文書の保管 | 共有フォルダ | SharePoint、Box |
用語集の機能は、翻訳専用サービス側にもあります。 DeepL API の v3 用語集エンドポイントは編集可能で多言語に対応しており、Cloud Translation Advanced には「同義語セット」という多言語を1行で持つ形式があります。生成AIを使う理由は、用語集の適用に加えて「訳さない語を残す」「文体を統一する」「用語集にない語を報告させる」といった指示を同時に出せる点です。単純に訳文の質だけを比べるなら、翻訳専用サービスのほうが速く安い場合があります。両方を同じ手順書で試してから決めてください。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
日本語版が承認されたことが起点です。作成した時点ではなく、承認された時点にします。承認前の原稿を訳すと、訳文の作り直しが発生します。
最小構成では、承認後に担当者が手作業で処理を始めます。半自動化する場合は、承認済みフォルダにファイルが置かれたことをきっかけにします。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 日本語の手順書 | 見出し、手順の番号付き文、注意書き、図の説明 | 共有フォルダの Word ファイル |
| 対訳用語集 | 社内用語と3言語の訳語、品詞、使ってはいけない訳語 | スプレッドシート |
| 訳さない語のリスト | 型番、装置の銘板表記、法定表示、ピクトグラムの説明 | スプレッドシート |
| 文体ルール | 命令形で書く、1文を短く、敬語を使わない等 | スプレッドシート |
| 過去の訳文 | 同じ手順書の前の版 | 共有フォルダ |
データの取得方法を決める
手順書: Word の本文を段落単位で取り出します。表や図の中の文字は取り出しにくいため、最初の構成では図中の文字を対象外にし、図は原文のまま使う割り切りをおすすめします。
用語集: スプレッドシートの1行を「日本語/ベトナム語/インドネシア語/英語/品詞/備考」とします。翻訳専用サービスを使う場合は、それぞれの仕様に合わせて書き出します。
| サービス | 形式と制限 |
|---|---|
| DeepL API | TSV(既定)またはCSV。1つの用語集は最大10 MiB、1件の原語・訳語はそれぞれ1,024 UTF-8バイトまで。1アカウントあたり用語集1,000件まで。タイ語を除く対応言語で作成可能 |
| Cloud Translation Advanced | 同義語セットはCSVのみ。原語列と訳語列を含む2列以上(説明列と品詞列を追加可能)。用語の合計は10,485,760 UTF-8バイトまで、1語は1,024 UTF-8バイト未満 |
社内用語の初期登録: 既存の手順書420本から、頻出する名詞を機械的に抜き出し、上位200語を先に登録します。全部揃えてから始める必要はありません。 運用しながら、報告された未登録語を足していきます。
AIへ渡す前に整形する
- 単位と数値の書式を揃える … 全角の数字を半角に、単位の表記を統一します。ここが揺れていると、後段の照合が誤検知だらけになります
- 訳さない語をマークする … 型番、装置の銘板表記、法定表示を本文中で特定し、置換用の記号(
[[KEEP:SUS304]]のような形)に置き換えます。訳文を受け取ったあとに元へ戻します - 長い手順書を分割する … 1回のリクエストで扱う量を、章単位に区切ります
- 1文が長すぎる箇所を直す … 日本語で60文字を超える手順は、訳すと読みにくくなります。原文を直すほうが早いです。 これは翻訳の準備ではなく、手順書の品質改善そのものです
AIに処理させる
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 用語集の適用 | 社内用語を、指定した訳語に固定して訳す |
| 訳さない語の保持 | マークした箇所を、記号のまま出力させる |
| 文体の統一 | 命令形、短文、専門用語を避ける、といった規則に従わせる |
| 未登録語の報告 | 用語集にない社内用語らしき語を一覧で返させる |
| 曖昧な原文の指摘 | 主語が省かれていて訳が定まらない箇所を報告させる |
最後の2つが、この構成で見落とされやすい部分です。訳文だけを受け取る構成にすると、用語集がいつまでも育ちません。
指示内容を固定する
あなたは製造現場の作業手順書を翻訳する担当者です。
日本語の作業手順書を、指定された言語に翻訳してください。
【厳守事項】
- 用語集にある語は、必ず用語集の訳語を使ってください。
同義語や、より自然な言い換えに置き換えないでください。
- [[KEEP:...]] で囲まれた部分は、翻訳せずそのまま出力してください。
型番、寸法、温度、時間、法定表示が含まれます。
- 数値と単位を変換しないでください。
「80度」を華氏に直す、「3mm」を別の単位にする、といった処理は禁止です。
- 原文にない手順を足さないでください。補足説明も加えないでください。
- 文体は命令形にし、1文を短くしてください。敬語は使わないでください。
- 用語集にない社内用語らしき語(設備名、工程名、治具名)が出てきた場合は、
unknown_terms に列挙してください。訳語は仮のものでよいので付けてください。
- 主語や対象物が省略されていて訳が定まらない箇所は、
ambiguous に原文のまま列挙してください。推測で補わないでください。
【用語集】
{glossary}
【訳さない語のリスト】
{keep_list}
【文体ルール】
{style_rules}
【翻訳する本文】
{source_text}
「数値と単位を変換しないでください」の1行は必須です。 温度や寸法を親切に換算されると、現場では事故になります。
用語集と文体ルールは毎回同じ内容になります。プロンプトの前半に固定して置き、プロンプトキャッシュを使うと費用が下がります。 Claude API のプロンプトキャッシュは cache_control に ephemeral を指定する方式で、tools、system、messages の順に、指定したブロックまでの前半部分がまとめて対象になります。既定の保持時間は5分、ttl に 1h を指定すると1時間です。キャッシュから読み出したトークンは、通常の入力単価の0.1倍で課金されます(書き込み時は5分キャッシュで1.25倍)。用語集を前に、訳す本文を後ろに置いてください。順番を逆にすると効きません。
出力形式を固定する
{
"target_language": "vi | id | en",
"segments": [
{
"segment_id": "",
"source": "",
"translation": "",
"type": "heading | step | caution | figure_caption"
}
],
"unknown_terms": [
{ "source_term": "", "provisional_translation": "", "context": "" }
],
"ambiguous": [],
"kept_tokens": []
}
段落を segment_id で管理する理由は2つあります。改訂時に、変わった段落だけを訳し直せること。 そして、レイアウトへの流し込みを機械的に行えることです。訳文を1本のテキストで受け取ると、どちらもできません。
kept_tokens には、[[KEEP:...]] として保持した語を返させます。原文のマーク数と一致しなければ、その時点で処理を止めます。
システムへ連携する
最小構成では、訳文を担当者が Word に貼り付けます。半自動化する場合は Google Apps Script でつなぎます。
| 項目 | 制限 |
|---|---|
| 外部API呼び出し(UrlFetch) | 1日あたり20,000回(一般アカウント)/100,000回(Google Workspace) |
| 1回の応答サイズ | 50 MB |
| 1回の実行時間 | 6分 |
| トリガーの合計実行時間 | 1日90分(一般アカウント)/6時間(Google Workspace) |
効いてくるのは6分の実行時間制限です。 手順書20本を3言語ぶんまとめて処理すると60回のリクエストになり、1回20秒でも制限を超えます。手順書1本を1回の実行とし、処理待ちの一覧を作って順に流す形にしてください。 これらの制限は変更されることがあるため、公式の一覧で確認してください。
Word への流し込みは、原本をテンプレート化し、segment_id に対応するブックマークへ差し込む方式が確実です。ここは利用環境に応じた個別実装が必要です。
人が確認する
全件、各言語のリーダーが確認します。省略しません。
理由は、誤訳が作業ミスと労働災害につながるためです。特に注意書きと安全に関する手順は、意味が反転しても文としては自然に読めてしまいます。
確認を速くするための設計が重要です。
- 原文と訳文を段落単位で左右に並べる
- 機械照合で不一致が出た段落を色分けする
- 前の版から変わっていない段落は「確認済み」として畳む
ambiguousに入った段落を先頭に集める
改訂時は、変わった段落だけを確認対象にします。 420本すべてを毎回読み直す運用では続きません。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 用語集にない社内用語が出てきた | unknown_terms に入れて人へ回す。仮の訳語で確定させない |
| 原文の主語が省略されていて訳が定まらない | ambiguous に入れる。原文を直してから訳し直す |
| 数値や型番が原文と一致しない | kept_tokens の数が合わなければ処理を止める。訳文を採用しない |
| 訳文が枠に収まらない | 文字数が増える言語では起きる。原文の1文を短くする。訳文を縮めさせない |
| 図の中の文字が訳されていない | 最初の構成では対象外。図は原文のまま使い、必要なら別紙で対訳を添える |
| 手書きの追記がある手順書 | 対象外とし、まず日本語版を正式な文書に直す |
| 法令で翻訳の要件が定められた文書 | 対象から外す。安全データシート等は所管の要件を確認する |
| 日本語版だけ改訂された | 版管理台帳で不一致を検出し、掲示物に「訳文は旧版」と明示する |
| 同じ語に複数の訳語が登録された | 用語集の重複を検出して止める。どちらを使うかを決めてから進める |
記録を残す
- 日本語版の原本と版番号
- 各言語の訳文と、対応する日本語版の版番号
- 用語集の変更履歴(誰がいつどの訳語を変えたか)
unknown_termsとambiguousの記録- 人が修正した箇所と、修正前後の訳文
用語集の変更履歴と、人が修正した箇所の記録が、この構成の資産です。 「どの語が毎回直されているか」が分かれば、用語集に足すべき語が決まります。訳文だけを保存する運用では、同じ修正を毎回することになります。
版管理台帳には、日本語版の版番号と訳文の版番号を並べて持ちます。日本語版が改訂されたのに訳文が古いまま、という状態を機械的に検出できるようにしてください。 現場に古い手順が掲示されているほうが、訳が多少ぎこちないことよりも危険です。
04実装レベルの3段階
月20本までなら最小構成で足ります。 貼り付けと受け取りの手間は1本あたり5分程度で、それ以外の削減効果はすでに出ているためです。半自動化に進む価値が出るのは、月40本を超えるか、対象言語が5言語以上になったときです。 本格構成で得られる最大の価値は、翻訳の自動化ではなく版管理です。 日本語版と訳文の対応が機械的に管理されると、「古い手順書が現場に貼られたまま」という状態がなくなります。
05工数削減シミュレーション
導入後 20件 × 30分 ÷ 60 = 10 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 現場に外国人スタッフがおり、作業手順書を2言語以上に訳している組織。手順書の新規作成と改訂が月10本以上ある場合。社内用語や設備名の訳がばらついている場合。
- 手順書の改訂が年数本の組織。手順書が写真と口頭指導だけで文章化されていない場合(まず日本語の手順書を作るのが先)。法令で翻訳者の資格や認証が求められる文書(安全データシート等)。
07最小構成で試す方法
- 既存の手順書から5本を選ぶ(設備名や工程名が多く出てくるものを選ぶ)
- その5本に出てくる社内用語を書き出し、3言語の訳語を現場のリーダーに決めてもらう(30〜50語で足りる)
- 用語集と訳さない語のリストを、生成AIのプロジェクト機能などに置く
- 手順書の本文を貼り付けて訳文を受け取る
- 各言語のリーダーに、そのまま現場で使えるかを判定してもらう
この検証だけは必ずやってください。 判断するのは日本語側の担当者ではなく、その言語を読む現場のスタッフです。「訳としては正しいが、現場では通じない」ことがあります。
| 5本中の判定 | 判断 |
|---|---|
| 4本以上がそのまま使える | 進めてよい |
| 2〜3本 | 用語集の語数が足りていない。使えなかった手順書の語を追加して再測定する |
| 1本以下 | 原文の手順書が曖昧である可能性が高い。日本語版の書き直しが先 |
用語集を渡さずに訳した場合との比較も、同時にやっておくと判断しやすくなります。差が出なければ、用語集の作り込みに時間をかける必要はありません。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 訳語が版ごとに変わる | 用語集を単一の正本にする。訳文の中で言い換えさせない指示を入れる |
| 数値や単位が変換された | [[KEEP:...]] で保持し、出力後にマーク数を照合する。不一致なら採用しない |
| 用語集が育たない | 未登録語を必ず報告させ、確認時に登録する運用を決める。報告させない構成にしない |
| 用語集が大きくなり費用が増えた | プロンプトキャッシュを使う。用語集を本文より前に置く(逆だと効かない) |
| 訳文が枠に収まらない | 原文の1文を短くする。訳文を縮めさせると意味が落ちる |
| 図の中の文字が訳されない | 最初は対象外にする。重要な図は別紙の対訳表で補う |
| 改訂したのに訳文が古いまま | 版管理台帳で原文の版と訳文の版を対応づけ、不一致を検出する |
| 段落の対応が取れずレイアウトが崩れる | segment_id を付けて段落単位で受け取る。1本のテキストで受け取らない |
| Apps Script が途中で止まる | 1回の実行が6分まで。手順書1本を1回の実行にし、待ち行列で順に流す |
| 用語集の同じ語に複数の訳語が入った | 登録時に重複を検出して止める。現場のリーダーが決めるまで進めない |
| 現場で「訳は合っているが通じない」と言われた | 判定は必ずその言語を読むスタッフに任せる。日本語側で完結させない |
| 安全データシート等を対象に入れてしまった | 法令で要件のある文書は対象から外す。所管の要件を確認する |
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 作業手順書の本文、設備名、工程の順序と条件。製造条件や配合が書かれた手順書は、自社の技術ノウハウそのものです。
- 外部AIへ入れる文書を選ぶ … 工程条件、配合比、独自の治具の構造が書かれた手順書は、外部サービスへ送る前に判断が必要です。清掃、点検、梱包、入退室、着替えといった汎用の手順から始めてください。 効果を確認したうえで、機密性の高い文書をどう扱うかを別に決めます
- 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます。用語集そのものが社内用語の一覧であり、それ自体が情報です
- 用語集の管理者を決める … 訳語を変えられる人を限定します。誰でも書き換えられる状態では、手順書の正確さが担保できません
- 訳文を確認せずに掲示しない … 誤訳が作業ミスと労働災害につながります。確認を省略する運用は、運用が安定しても認めないでください
- 法令で要件のある文書を混ぜない … 安全データシートのように、表示内容や作成者の要件が定められた文書があります。所管の要件を確認し、対象範囲を文書で決めてください
- 古い訳文の掲示を防ぐ … 版管理の不備は、誤訳よりも起きやすく、影響が大きい事故です。原文と訳文の版の対応を機械的に管理してください
誤りが起きた場合のリスクは、作業ミス、製品の品質不良、労働災害です。いずれも訳文の確認と版管理で防ぐ設計にしてください。
10まず何から始めるか
1週目:用語集の種を作る
既存の手順書から頻出する名詞を抜き出し、上位50語について3言語の訳語を現場のリーダーに決めてもらいます。この作業に現場を巻き込めるかどうかが、成否を分けます。 巻き込めない場合は、この構成は動きません。
2週目:5本で試して現場に判定させる
手順書5本を訳し、各言語のリーダーに「そのまま使えるか」を判定させます。4本以上使えるなら進めます。
3〜4週目:訳さない語の仕組みを作る
型番、寸法、温度、法定表示を [[KEEP:...]] に置き換え、出力後に数を照合する処理を作ります。ここは自動化する価値が最も高い部分です。 人が目で数えるものではありません。
2か月目:月20本を最小構成で回す
貼り付けと受け取りは手作業のままで、1か月運用します。1本あたりの実際の時間を測ります。Apps Script での自動化は、この実測が終わってから検討してください。
3か月目以降: 版管理台帳を作り、日本語版と訳文の対応を管理します。手順書420本の棚卸しを兼ねることになるため、時間を確保してから着手してください。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
| DeepL API の用語集仕様。v3 のエンドポイントは編集可能かつ多言語対応であること。タイ語を除く対応言語で作成できること。1つの用語集は最大10 MiB、1件の原語・訳語はそれぞれ1,024 UTF-8バイトまで、1アカウントあたり用語集1,000件まで。形式はTSV(既定)とCSV | DeepL API Documentation: Glossaries | 2026-09-09 |
| Cloud Translation Advanced の用語集仕様。単方向の用語集と、複数言語を1行で持つ同義語セットがあること。同義語セットはCSVのみ対応で、原語列と訳語列を含む2列以上(説明列と品詞列を追加可能)。用語の合計は10,485,760 UTF-8バイトまで、1語は1,024 UTF-8バイト未満 | Google Cloud: Creating and using glossaries (Advanced) | 2026-09-09 |
| Google Apps Script の割り当て。外部API呼び出しは1日20,000回(一般アカウント)/100,000回(Google Workspace)、応答は1回50 MB、1回の実行時間は6分、トリガーの合計実行時間は1日90分(一般)/6時間(Workspace) | Google Apps Script: Quotas for Google Services | 2026-09-09 |
Claude API のプロンプトキャッシュ。cache_control に ephemeral を指定し、tools・system・messages の順で指定ブロックまでの前半部分が対象になること(前半が変わると無効になること)。既定の保持時間は5分、ttl に 1h を指定して1時間。キャッシュ読み出しは通常の入力単価の0.1倍、5分キャッシュの書き込みは1.25倍 | Claude Docs: Prompt caching | 2026-09-09 |
各サービスの料金、対応言語、割り当ては変更されることがあります。Word テンプレートへの流し込みと文書管理システムとの連携は、利用環境に応じた個別実装が必要です。 安全データシートのように法令で作成要件が定められた文書については、所管の要件を確認してください。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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