マーケ着任90日でやること|立ち上げの優先順位

マーケ着任90日でやること|立ち上げの優先順位

ある日、辞令が出ます。営業から異動してマーケティングの担当になった。転職して入った先で、まだ誰も専任でやっていないマーケ機能を任された。あるいは前任者が退職し、引き継ぎ資料もパスワードも残っていない状態で席に座った。BtoB企業のマーケ担当の立ち上がりは、たいていこうした「変化」から始まります。共通して起きるのは、何から手をつけるべきか分からないまま、目の前にある依頼——展示会の準備、資料の修正、サイトの更新——を処理して数か月が過ぎることです。ここで効いてくるのが、最初の90日を何に使うかをあらかじめ決めておくことです。本記事では、着任直後の90日を30日ごとの3区分に分け、数字の在り処の特定、計測環境とアカウント権限の確認、既存資産と過去施策の棚卸し、社内ヒアリングで聞くこと、引き継ぎがないときの情報の拾い方、ボトルネックの絞り込み、小さな成果の作り方と報告の型、そして90日以降に残す仕組みまでを、時間軸に沿って追いかけます。


カメ先生カメ先生

着任してすぐ新しい施策を始めたくなるけど、最初の30日でやるべきなのは数字の在り処を突き止めることなんだ。どのチャネルから月に何件来ていて、そのうち何件が商談になっているか。ここが空欄のままだと、何を直しても評価できない。


カメ子カメ子

前任者がいないので、その数字がどこにあるのか自体が分かりません。管理画面のログイン情報も出てこないんです。


カメ先生カメ先生

それは珍しくないよ。まずサイトに埋まっている計測タグのIDを確認して、社内の情報システムや経理に照会をかける。過去の請求書を見れば、契約しているツールと外注先がだいたい出てくる。


カメ子カメ子

請求書から辿るという発想がありませんでした。契約書と請求の履歴を先に集めて、そこから権限の持ち主を探していきます。


この記事のポイント
  • 最初の30日は施策を打たずに棚卸しに使う。チャネル別の数字、計測環境とアカウント権限、既存コンテンツ、過去施策の履歴、社内の目標と不満を集める
  • 次の30日でボトルネックを1つに絞る。優先順位はインパクトと実行難易度で見て、新しく作るより既にあるものを直すほうを先に置く
  • 最後の30日で小さな成果を1つ作り、報告の型を決める。全面リニューアルや新ツールの即導入、前任者の否定は、信頼を失う典型的な動き

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

目次

担当が代わった日から、時計は動き出している

着任直後に起きやすいのは、周囲の期待と自分の準備のあいだにある時間差です。経営や営業は「マーケの担当が決まった」と認識した時点から成果を待ち始めますが、担当者本人はまだ何がどうなっているかを知りません。期待は着任日から動き出し、こちらの理解は数か月かかる——このズレを放置すると、半年後に「何をやっているのか分からない」という評価が返ってきます。

そのうえで、着任のパターンごとに難所が違います。営業からの異動なら顧客理解はあるが計測やツールの土地勘がない。転職なら手法は知っているが社内の力学と商材理解がない。兼任なら時間そのものがない。新設ポジションなら比較対象がなく、何をもって成果とするかの合意すらありません。自分がどのパターンで着任したかを最初に自覚するだけで、埋めるべき穴の順番が変わります。

そして前任者不在のケースは、これらに加えて情報の断絶が乗ります。管理画面の権限、外注先の連絡先、過去に何を試して何がダメだったかの記録。失敗の履歴が残っていないと、同じ失敗をもう一度やることになります。90日という区切りを意識するのは、この断絶を埋める作業に期限を切るためです。期限がないと、棚卸しは永遠に終わりません。

90日を3つに割る

では、90日をどう使うか。原則はシンプルで、最初の30日は理解に、次の30日は絞り込みに、最後の30日は実行と報告に使います。ここで大事なのは、最初の30日に施策を打たないと決めることです。焦って何かを始めると、判断の材料が揃う前に手が塞がります。

区分この期間の目的終わりに手元にあるもの
1〜30日現状を数字と事実で把握するチャネル別の実績表・ツールと権限の一覧・既存資産のリスト・社内ヒアリングのメモ
31〜60日ボトルネックを1つに絞り、着手を決める落ち幅が最大の工程の特定・優先順位をつけた施策候補・実行計画
61〜90日小さな成果を1つ作り、報告の型を決める実行した施策の結果・定例で使う報告フォーマット・次の90日の計画

この3区分は、意思決定の粒度が段階的に上がるように組んであります。1区分目は事実の収集で判断を含みません。2区分目で初めて仮説を立て、3区分目で検証します。理解と判断と実行を同じ月に詰め込まないのが、立ち上げを失敗させないコツです。着任直後は情報が少ないため、この時期の判断はほぼ確実に外れます。

なお、この90日の間も日常の依頼は止まりません。展示会の申込、資料の修正、問い合わせ対応。依頼を全部断るのは現実的ではないので、時間配分を先に決めます。目安として、最初の30日は稼働の半分を棚卸しに充て、残り半分で降ってくる依頼をこなす。この配分を上司と合意しておくと、棚卸しの時間が守れます。

【1〜30日】数字の在り処を押さえる

最初にやるのは、施策の評価ではなく数字の在り処の特定です。押さえるべきは3層です。入口の数字——どのチャネルから月に何件の問い合わせや資料請求が来ているか。中間の数字——そのうち何件が商談になり、どのくらいの率で受注しているか。費用の数字——月別・施策別にいくら使っているか。この3つが並ぶ表を1枚作るのが、30日目までの最優先タスクです。

この可視化を最初に置く理由は、後のすべての判断がここに依存するからです。マーケティング部門の立ち上げについての解説でも、最初にやるべきこととして「月別施策別の広告費、日別流入別のリード件数、月別流入別の受注件数」の可視化が挙げられています。流入別に受注まで追えているかどうかが、以後の議論の質を決めるため、リード件数までで止めず受注まで繋げます。

集計で必ず迷うのが、月のズレです。BtoBは検討期間が長いため、広告を出した月と受注した月が一致しません。受注月で集計すると、施策の効果が実際より小さく見えたり、時期がずれて見えたりします。受注月ではなく、最初に接触した月で集計する——この一手間で「リードの質が悪い」という不要な批判を避けられます。初回接触の経路と最終接触の経路を分けて持っておくのも有効です。

【1〜30日】計測環境とアカウント権限を確認する

数字を集めようとすると、たいていここで止まります。計測が正しく動いていない、あるいは管理画面に入れない。着任直後にこの確認を済ませておかないと、2か月目に「そもそも数字が信用できない」という事態に直面します。数字を読む前に、数字を作っている環境を点検するのが順序です。

確認する対象は、アクセス解析、広告アカウント、CMS、フォーム、MAやCRM、メール配信ツール、そしてSNSアカウント。それぞれについて「自分に権限があるか」「他に誰が持っているか」「請求は誰に来ているか」を一覧にします。特にアクセス解析の権限は要注意です。GA4の無償版では、管理者権限を持つユーザーが誰もいなくなると、管理画面から新しい管理者を追加する手段がなくなると説明されています。復旧できない場合は、既存プロパティの運用を止めて新しく作り直すという選択になりかねません。

だからこそ、確認と同時に予防もしておきます。管理者権限は最低2人以上に持たせておくとよいと指摘されており、着任時にこれを整えておけば、次に担当が代わるときの断絶を防げます。引き継ぎで困った経験を、そのまま次の人への引き継ぎ設計に変える。着任直後は権限整理を進めやすい時期でもあるため、この機会を逃さないほうが得です。

【1〜30日】既存資産と過去施策を棚卸しする

次に、すでに社内にあるものを数えます。新任担当者はゼロから作りたくなりますが、たいていの会社には使われていない資産が眠っています。既にあるものを直すほうが、新しく作るより早くて安い——この原則が最初の90日では特に効きます。

棚卸しの対象は次の5つです。第一に既存コンテンツ——サイトのページ、ブログ記事、ホワイトペーパー、動画。第二に導入事例。第三に過去の配信履歴——メルマガ、セミナー、展示会。第四に過去施策の履歴と結果。第五に保有リストです。名刺データや過去に商談した企業のリストは、着手できる最も近い資産であり、整理してメールを1本出すだけで反応が返ることもあります。

整理の形は、一覧表にするのが実務的です。BtoBマーケの情報整理の型として、施策リスト(ステータス・予算・評価・担当)、コンテンツリスト(名前・カテゴリ・想定ターゲット・URL)、問い合わせ内容リスト、受注理由リスト、失注理由リスト、解約理由リスト、既存顧客リストといった単位で分けて持つ方法が紹介されています。すべてを埋める必要はなく、埋まらない欄がそのまま次の課題になると考えてください。

【1〜30日】社内ヒアリングで聞くこと

数字と資産が見えたら、人に聞きます。ここを飛ばすと、数字の背後にある事情が分からないまま判断することになります。相手は最低3者——営業、経営、そして顧客と接している部署(カスタマーサクセスやサポート、あるいは既存顧客を担当する営業)です。1人30分から1時間、5〜10人を目安に、着任1か月の間に回りきります。

聞く項目は決めておきます。何を聞くか決めずに雑談すると、印象しか残りません。特に、目標がどう設定されていて誰が何の指標を追っているかは、必ず言葉にして確認します。マーケと営業が違う指標を追っていると責任の押し付け合いが起きるため、同じ数字を見ているかどうかを最初に確かめる必要があります。

  1. 経営に——この事業で今期いちばん増やしたいものは何か。マーケに期待している役割はどこまでか。何をもって成果と見るか
  2. 営業に——いま商談はどこから来ているか。マーケ経由のリードで困っていることは何か。どんな見込み客なら会いたいか
  3. 営業に——受注できた理由と、失注した理由。よく聞かれる質問、資料で足りないもの
  4. 顧客接点の部署に——導入後につまずくのはどこか。顧客が実際に使う言葉。事例にできそうな顧客はいるか
  5. 全員に——過去に試してうまくいかなかった施策は何か。なぜやめたのか
  6. 全員に——マーケに何かやってほしいことはあるか。逆に、やらないでほしいことはあるか

最後の2項目が、実は最も価値があります。過去の失敗を知らないまま同じことを提案すると、その瞬間に信頼を失います。「やらないでほしいこと」を聞いておくのも同じ理由です。組織には前任者が作った摩擦の記憶が残っているため、それを踏まないだけで動きやすくなります。ヒアリングの内容は、相手ごとにメモを残し、後で仮説を立てるときの根拠として引けるようにしておきます。

引き継ぎ資料がないときの拾い方

前任者が退職し、資料もパスワードも残っていない——この状況は、実務上まったく珍しくありません。このときに効くのは、記録が必ず残る場所から逆に辿る方法です。人の記憶ではなく、お金と技術の痕跡を追うのが確実です。

最も強い手がかりは請求と契約です。経理に依頼して過去1〜2年の支払先一覧を出してもらえば、契約しているツール、広告の出稿先、外注している制作会社や代理店がほぼ網羅されます。次に技術的な痕跡。サイトのソースに埋まっている計測タグのIDを確認し、そのIDを社内の情報システムや関連部署に照会します。タグのIDを持って照会すれば、権限の持ち主を特定しやすくなるため、まずIDを控えるところから始めます。

STEP1
支払先の一覧を経理から取る

過去1〜2年の支払先と金額を出してもらいます。ツール、広告、制作、外注のすべてがここに現れます。契約書の保管場所もあわせて確認します。

STEP2
計測タグと管理権限を洗う

サイトに設置されている計測タグのIDを控え、社内に照会します。誰が管理者かを特定し、自分に権限を付けてもらいます。管理者は2人以上に増やしておきます。

STEP3
過去の配信・掲載物を集める

メール配信ツールの送信履歴、セミナーの案内、展示会の申込記録、共有ドライブの古いフォルダを漁ります。何をやってきたかの輪郭が見えます。

STEP4
外注先に直接聞く

代理店や制作会社は、社内より詳しい履歴を持っていることがあります。契約の経緯、過去の結果、途中でやめた理由を聞き取ります。

STEP5
拾った内容を1枚にまとめる

ツール・権限・外注先・過去施策を1枚の表にします。この表が、そのまま次の担当者への引き継ぎ資料になります。

この5段階を進めるうちに、費用の無駄が見つかることもよくあります。使われていないツールの月額課金が続いていた、効果を測っていない広告が回り続けていた、といった具合です。止めるだけで浮く費用は、最初の90日で出せる分かりやすい成果になります。ただし止める前に、誰も見ていないか、実は他部署が使っていないかを必ず確認してください。

【31〜60日】ボトルネックの仮説を1つに絞る

2区分目に入ります。ここでやるのは、集めた事実からボトルネックを1つ選ぶことです。複数の課題を並列で追いかけると、どれも中途半端に終わります。着任直後の限られた時間で追えるのは1つだけだと割り切ります。

絞り方は、入口から受注までの各段の数字を並べ、落ち幅が最も大きい箇所を探すのが基本です。月200件のリードから商談が10件しか生まれていないなら、問題は入口の量ではなく間の工程にあります。逆に商談化率が悪くないのにリードが月20件しかないなら、入口の話です。落ち幅の最大値が、最初に手を入れる場所——ここで自分の得意分野を選ばないことが大切です。

仮説を立てたら、それを1文で書いて、ヒアリングした相手に当ててみます。「商談化率が低いのは、資料請求後のフォローが手作業で遅れているからだと考えています」と話すと、営業から「実際には見込みが薄いリストが混ざっている」といった補正が返ってきます。仮説は社内に当てて削るのが、着任直後の情報不足を補う最短の方法です。この対話自体が、あなたが数字を見ているという評判を作ります。

【31〜60日】優先順位はインパクトと実行難易度で見る

ボトルネックが決まったら、そこに効く施策候補を並べます。ここで判断の軸を2つに絞ります。効果の大きさ実行の難易度です。難易度には、必要な予算、必要な承認、他部署の協力、自分の稼働時間を含めて考えます。着任直後は、この4つのうち後ろ3つが特に重い制約になります。

この2軸で並べると、最初に手を出すべきものが浮かびます。効果が大きく難易度が低いものが最優先。効果が大きく難易度が高いものは、90日以降の計画に置いて予算と合意の準備を始める。効果が小さく難易度が低いものは、手が空いたときに。効果が小さく難易度が高いものはやりません。着任直後に必要なのは、正しい施策より、確実に終わる施策です。

実務上ほとんどの場合、最優先に来るのは「既にあるものを直す」施策です。サービスサイトの情報が検討に足りているかの点検、資料請求やホワイトペーパーといった接触ポイントの追加、導入事例を1件作る、保有リストを整理してメールを出す——BtoBの立ち上げで最初にやるべき施策として挙げられるのは、おおむねこの種の地味な作業です。新規チャネルの開拓は、既存の受け皿が整ってからにします。入口を広げても受け皿が漏れていれば、費用が無駄になるだけです。

【61〜90日】小さな成果を1つ作り、報告の型を決める

最後の30日は実行です。ここで狙うのは大きな成果ではなく、期間内に必ず終わって、数字で語れる1つです。導入事例を1件公開する、資料請求フォームの項目を削って完了率を上げる、休眠リストにメールを1本出して反応を測る。規模は問いません。終わることと、前後の数字が出ることの2条件を満たすものを選びます。

小さくても成果を1つ出す理由は、以後の発言力に直結するからです。マーケの提案が通るかどうかは、提案の質より提案者の実績で決まる面があります。最初の成果は、次の予算と協力を引き出すための投資だと考えてください。逆に、成果が出るまで報告しないでいると、90日目に「3か月何をしていたのか」という問いに答えられなくなります。

同じ30日で、報告の型も決めます。毎回フォーマットが違う報告は比較できず、読む側の負担になります。数字の並び順と定義を固定した1枚を作り、以後は同じ形で出し続けます。含める要素は、入口の件数、商談数、受注数、費用、その月にやったこと、次の月にやること。加えて、時間差のある指標については「今月の数字ではなく、○月に接触した分の結果です」と注記を入れておくと、誤読を防げます。

やってはいけない4つの動き

最後に、着任直後にやりがちで、かつ取り返しがつきにくい動きを挙げます。どれも悪意なく起きるもので、むしろ意欲が高いほど踏みやすい落とし穴です。

  • 着任直後にサイトの全面リニューアルを提案する——費用と期間が大きく、効果検証も遅れる。しかも現状を理解する前の設計になりがちで、作り直しても数字は動かない
  • 前任者や既存の施策を否定する言い方をする——過去の施策を選んだ人がまだ社内にいる。兼任で回してきた人の貢献を軽く扱うと、協力が得られなくなる
  • 新しいツールをすぐ導入する——運用体制がないまま入れると放置される。まず既存ツールが使いこなされているかを確認し、足りない機能を特定してから検討する
  • 成果が出るまで報告しない——沈黙の期間が長いほど、何をしているか分からないという評価になる。棚卸しの途中経過でも共有し、進んでいることを見せる

この4つのうち、最も頻度が高いのは3つ目です。前職で使い慣れたツールをそのまま入れたくなるのは自然ですが、着任直後は運用に回せる自分の時間がいちばん少ない時期です。既存の商談機会を減らすような急な施策変更も避けるべきだとされており、営業との信頼関係ができていない段階では特に慎重にいきます。変えるのは、なぜ今こうなっているかを説明できるようになってからにしてください。

兼任・ひとり体制でリソースを絞る

多くの場合、着任したポジションは専任ではありません。営業と兼任、あるいは総務や広報と兼任。ひとりでマーケ全体を見る前提なら、やらないことを決める作業が最初の仕事になります。全チャネルに手を出せば、どこも中途半端になります。

絞る基準は、着手から結果までの期間と、自分の時間の使い方です。時間がかかるが資産になるもの(記事・事例・ホワイトペーパー)は早めに着手し、制作は外に出す。短期で結果が出るが運用の手間が続くもの(広告運用)は、外注か、自分でやるなら1チャネルに限定する。自分の時間は、社内でしかできない仕事に残す——顧客理解、営業との連携、数字の整理、社内の合意形成は外注できません。

外部に出す場合も、判断は自分で持ちます。任せきりにすると、なぜその施策が効いたのか分からないまま契約が続きます。結果の解釈と次の方針は自社で決めるという線を引き、外注先には作業と専門的な実行を頼む。あわせて、他部署が優先順位を下げて止まっている仕事(事例ページの制作など)を引き取ると、協力を得やすくなるという側面もあります。ただし着任直後に仕事を増やしすぎないよう、引き取るのは1つまでにしておくのが安全です。

90日以降に残す仕組み

90日で終わりではありません。この期間の目的の1つは、以後も回り続ける仕組みを置くことです。残すべきものは3つ——定例、数字の置き場、そしてナレッジの置き場です。この3つがないと、次に担当が代わったときに同じ断絶が起きます

定例は、営業との月1回が最優先です。マーケが獲得したリードがどうなったかのフィードバックを受け、どんなリードが商談につながるかの基準をすり合わせます。数字の置き場は、最初の30日で作った1枚の表をそのまま更新し続ける形が現実的です。新しいダッシュボードを作るより、毎月同じ表を埋め続けるほうが続く。ツールを凝るのは、運用が定着してからで構いません。

ナレッジの置き場は、最も後回しにされて最も後で困る部分です。やった施策、かかった費用、結果、やめた理由。この4項目を1行ずつ残すだけで、次の人は同じ失敗を繰り返しません。あなたが着任時に欲しかった資料を、自分の手で作っておく——引き継ぎ資料は退職時に書くものではなく、日々の記録の副産物として溜まっていくものです。あわせて、権限を持つ人を複数にしておく整理も、この時期に済ませておきます。

AIの使いどころと、社内の事情は人が確かめる

着任直後の作業は、読む量が異常に多くなります。過去の議事録、外注先からの報告書、古い企画書、契約書。この大量の資料から要点を抜き出す作業は、生成AIが向いている領域です。過去の議事録を読み込んで意思決定の経緯を整理する、報告書から施策と結果の対応を抜き出す、といった使い方が効きます。

ヒアリング項目の作成にも使えます。相手の役割と自分が知りたいことを渡して質問案を出させ、そこから自社の事情に合うものを選ぶ。施策候補の洗い出しも同様で、AIが挙げた一般的な選択肢を叩き台にして、社内の制約で削っていくほうが早く進みます。AIは選択肢を広げる役、削るのは自分の役という分担です。プロンプトの例を挙げます。

あなたはBtoB企業のマーケティング立ち上げを支援する担当です。
以下は、私が着任後に集めた社内の状況メモです。
・商材:(例)製造業向けの業務システム、平均受注額○万円
・数字:(例)月間リード○件、商談化率○%、受注率○%
・体制:(例)マーケは私1人、営業○名、制作は外注
・過去に試してやめた施策:(例)展示会、リスティング広告
1. このメモから読み取れるボトルネックの候補を3つ挙げ、根拠を示してください。
2. 候補ごとに、確認すべき数字と社内で聞くべき相手を挙げてください。
3. メモに書かれていない事実を推測で補わないでください。不足している情報は質問として返してください。

一方で、AIに判断させてはいけない領域が明確にあります。社内の力学、過去の施策をやめた本当の理由、誰と誰が組めるか、どの部署が何を気にしているか。これらは記録に残っていないため、AIは必ず一般論で埋めます。もっともらしい提案が返ってきても、社内の事情に照らすと成立しないことがほとんどです。

  • 受注額・顧客名・原価などの社内実数を外部のAIサービスに入力する前に、社内の情報取扱ルールを確認する。判断に迷うなら指数化・伏字にしてから渡す
  • 入力内容が学習に使われない設定になっているか、利用プランの仕様を事前に確認する
  • AIが挙げた施策候補や相場観はそのまま提案しない。過去にやめた施策と重なっていないかを社内で必ず確認する
  • 議事録や契約書の要約は必ず原文に戻って裏を取る。着任直後は誤読が判断を大きく狂わせる

よくある質問

最初の30日で施策を打たないと、社内で焦られませんか

何もしていないと見えることが問題なので、棚卸しの途中経過を出すのが対処になります。たとえば2週目に「現状の数字を整理しました」と1枚の表を共有し、4週目に「ヒアリングで分かった課題」をまとめて出す。成果ではなく進捗を見せるだけで、焦りはかなり収まります。むしろこの共有が、着任直後にできる最も安価な信頼獲得の手段です。あわせて、この30日を棚卸しに使うと着任時点で上司に宣言しておくと、期待の管理がしやすくなります。降ってくる依頼は断らず、時間配分を決めて並行してこなしてください。

計測環境が壊れていて、過去の数字が取れません

その場合は、過去の復元に時間をかけすぎないのが正解です。取れるところまで取り、取れない期間は「不明」と記録して前に進みます。優先すべきは、今日から先の数字が正しく取れる状態を作ることです。計測の設定を直し、権限を整え、記録の形式を決める。過去1年が空白でも、これから半年の推移が正しく取れれば判断はできます。なお、復元にこだわって2か月を使ってしまうと、実行に充てる期間が消えます。過去の数字は、営業の記録や請求書、外注先の報告書から部分的に補える場合もあるので、そちらを当たるほうが早いこともあります。

兼任で時間がなく、90日では回りきりません

その場合は範囲を狭めます。90日という枠は変えず、対象を絞るのが現実的です。たとえばヒアリングを5人ではなく3人に、棚卸しをコンテンツと数字の2種類に限定する。全部を薄くやるより、絞った範囲を確実に終えたほうが判断材料になります。もう1つの手は、上司と「この90日で何を出すか」を1つだけ合意しておくことです。目標が1つに絞られていれば、日常の依頼を断る根拠にもなります。時間がないことを理由に棚卸しを飛ばすと、以後ずっと勘で判断し続けることになるため、量を減らしても順番は守るのが得策です。

前任者がまだ社内にいる場合、どう関わればいいですか

最も貴重な情報源なので、早めに時間をもらうのが得です。聞くべきは、うまくいった施策よりも、やめた施策とその理由です。記録に残らないのはたいてい後者だからです。関わり方の注意点は1つで、評価や批判をしないことです。「なぜこうなっているのか」を教えてもらう姿勢で臨むと、判断の背景まで話してもらえます。異動しただけで社内にいるなら、以後も相談できる相手として関係を保っておくと、社内の力学を読むうえでも助かります。前任者が別部署から見た自社マーケの課題は、あなたが1人で考えるより早く本質に届くことがあります。

まとめ

着任90日の使い方は、理解・絞り込み・実行の3段に割るのが基本です。最初の30日は施策を打たず、チャネル別の数字を受注まで繋げた1枚の表を作り、計測環境とアカウント権限を点検し、既存コンテンツ・導入事例・過去施策・保有リストを棚卸しし、経営と営業と顧客接点の部署に項目を決めて聞き取る。引き継ぎがなければ、支払先の一覧と計測タグのIDから逆に辿る。次の30日でボトルネックを1つに絞り、効果の大きさと実行の難易度で候補を並べ、新しく作るより既にあるものを直す施策を先に置く。最後の30日で確実に終わる成果を1つ作り、数字の定義を固定した報告の型を決める。全面リニューアル、前任者の否定、新ツールの即導入、沈黙は避ける。そして定例・数字の置き場・ナレッジの置き場を残しておく。最初の90日で作るのは成果ではなく、判断できる状態です。まずは今週、支払先の一覧と計測タグのIDを集めるところから始めてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

運営会社:株式会社デボノ

目次