値上げで顧客は何割減るのか|価格弾力性の測り方

中小企業庁が2026年6月26日に公表した価格交渉促進月間のフォローアップ調査では、価格交渉が行われた割合が90.7%、価格転嫁率は54.2%でした。値上げを切り出すこと自体は、もう珍しいことではありません。それでも社内では「何パーセント上げたら、どれくらい離れるのか」「去年の改定で離れたのは、本当に値段が理由だったのか」という問いが答えのないまま残ります。——足りていないのは決断ではなく、反応の大きさを読む物差しです。値上げの議論が止まるのは勇気の問題ではなく、減る量を測る手立てを持っていないために、最悪の想像と1件の失注談だけで決めることになるからです。この記事では、価格弾力性という物差しを、BtoBの現場で実際に何から測れるのかという側から整理します。
カメ先生値上げの話になると、まず「どれくらい上げるか」から始まると思われがちですが、本当は「上げたときにどれだけ減るか」が先で、その順番が逆のまま会議が回っているんです。
カメ子減る量というのは、解約した会社の数のことですか。
カメ先生それも入りますが、BtoBでは件数より先に、見積もりが通らなくなるという形で出てきます。取引先の数はまだ減っていないのに、通過率だけが静かに下がっている段階があるんです。
カメ子減ったかどうかが分かるより前に、兆しのほうが先に出るということでしょうか。
- 価格弾力性は、需要の変化率を価格の変化率で割った数字。1を境に、値上げで売上が増えるか減るかが反対になる
- BtoBは取引数が少なく値引きが個別なので、1つの方法では測れない。過去の改定・見積もりの通過率・意向の調査・比べる実験・更新の兆しの5つを重ねる
- 数字が出ても、値段を決めるのは数字ではない。弾力性は候補を絞る道具であって、決定そのものではない
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交渉の場は開いた。減る量を測っている会社は、まだ少ない
冒頭の調査が示しているのは、値上げを持ち出すこと自体の心理的な壁が下がった、ということです。交渉が行われた割合は9割を超えています。ところが社内の議論は、交渉のテーブルに着いた後で止まります。何パーセントを提示するかという話になった瞬間、判断の材料が「去年こう言われた」「この会社は厳しそうだ」という個別の記憶しか残らないからです。
記憶が悪いわけではありません。問題は、記憶が最悪の事例に引っ張られることです。1件の大きな失注は、静かに通った20件の改定より強く残ります。その結果、全体としては通る改定幅なのに、1件の記憶を基準にして提示額が低く決まる、という形で損が出ます。しかもこの損は、失注として記録に残らないので、後から誰も気づきません。
この記事で扱うのは、値段の決め方でも、値上げの伝え方でもなく、「上げたときにどれだけ減るか」を何から読むか、という一点です。決め方と伝え方はそれぞれ別の論点なので、ここでは触れません。測り方に絞ったうえで、BtoBの現場で実際に手に入るものだけを扱います。
価格弾力性とは、何と何を割った数字か
価格弾力性は、需要の変化率を、価格の変化率で割った数字です。値段を10%上げたときに数量が5%減ったなら、5を10で割って0.5になります。値段を上げれば数量は減るので本来は負の値になりますが、実務では符号を外して大きさだけを見るのが普通です。式そのものはこれだけで、統計の知識は要りません。
実務で難しいのは計算ではなく、2つの数字をどう作るかです。価格の変化率は、定価なのか、値引き後の実際の単価なのか。需要の変化率は、数量なのか、取引先の数なのか、金額なのか。どちらの分子分母も、定義を決めた瞬間に答えが変わります。同じ改定の記録から、定義を変えるだけで0.3にも1.2にもなる、ということが普通に起きます。
だから最初にやるのは計算ではなく、定義を1枚に書くことです。価格は「値引きを反映した1単位あたりの実際の単価」、数量は「請求の対象になった数量」と決めておくのが、BtoBでは最も食い違いが少ない組み合わせです。金額を分子に置くと、値上げの効果と数量の減少が打ち消し合って、何も見えなくなります。
1を境に、意思決定が反対向きになる
この数字が実務で効くのは、1という境目があるからです。1より小さければ、値段を上げたときに数量の減り方が価格の上がり方より小さいので、売上は増えます。1より大きければ、数量の減り方のほうが大きいので、値段を上げると売上は減ります。ちょうど1なら売上は変わりません。利益で見ればもう少し値上げに有利になりますが、まずはこの境目だけで十分です。
BtoBでは、同じ会社の中でも商品や取引先の区分によってこの値が大きく違います。業務に組み込まれていて他社に替えにくいものは1より小さく、相見積もりが当たり前のものは1より大きいのが典型です。つまり、全社で1つの数字を出しても意味がありません。出すべきなのは、値上げの提示を分けられる単位ごとの数字です。
ここで先に線を引いておきます。この数字は、上げてよい幅を教えてくれる道具ではありません。上げても壊れにくい場所と、壊れやすい場所を見分ける道具です。0.4という数字が出たから10%上げてよい、という読み方はできません。0.4が出た区分と1.3が出た区分では、提示の仕方も、事前の説明も、用意すべき代替案も変えるべきだ、という読み方をします。
BtoBでこの数字が測りにくい3つの理由
消費財の分野では、店頭の価格と販売数の記録が毎日たまるので、この数字は比較的すなおに出ます。BtoBでは事情が違います。理由は3つです。取引の件数が少ないこと、値引きが取引先ごとに個別であること、契約の期間があって反応が遅れて出ること。この3つはどれも、記録の取り方を変えるだけでは解消しません。
件数の少なさは、数字の揺れとして出ます。年に40件しか受注がない事業で、改定の前後を比べて3件減ったとしても、それが値段のせいなのか、たまたまその期に大口の案件がなかっただけなのかは区別できません。件数が少ないほど、1件の出入りが弾力性の計算を大きく動かします。この事業では、そもそも数量の変化から測るのに向いていません。
個別の値引きは、もっと厄介です。定価を5%上げても、営業の現場が値引きを5%増やせば、実際の単価は変わっていません。定価の改定率と、実際に請求した単価の変化率が一致しない会社では、定価をいくら追っても反応は読めない。契約の期間があることも効きます。年契約なら、値上げの影響が出るのは更新月からで、全体に行き渡るまで1年かかります。改定の3か月後に「影響がなかった」と結論を出した会社は、たいてい9か月後に驚くことになります。
測り方は5つ。単独で足りるものは1つもない
それでも測る手立てはあります。実務で使えるのは5つで、どれも一長一短があり、単独では結論を出せません。速く取れるものは精度が低く、精度が高いものは遅い、という関係になっています。まず全体を並べて、自社にどれが揃っているかを見てください。
| 測り方 | 何から読むか | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| 過去の改定を振り返る | 前回の改定の前後の単価と数量 | 追加の費用がかからず、すぐ着手できる | 改定と同時に起きた他の変化と切り分けられない |
| 見積もりの通過率 | 提示額・値引き率と、受注したかどうか | 取引先が減るより先に動くので早く気づける | 提示の記録の粒度が粗いと計算できない |
| 意向を聞く調査 | 買い手に価格の帯を答えてもらう | まだ出していない価格帯についても聞ける | 答えと実際の行動がずれる。件数を集めにくい |
| 比べる実験 | 条件を揃えた2つの群の結果 | 因果に最も近づける唯一の方法 | BtoBでは実施できる場面が限られる |
| 更新と解約の兆し | 更新率・利用量・問い合わせの変化 | 実際の離反を直接見ている | 結果が出るのが最も遅く、打ち手が間に合わない |
表を見て気づいてほしいのは、強みと弱みがきれいに補い合っていることです。過去の改定は速いが因果が弱い。実験は因果が強いが場面を選ぶ。通過率は早く動くが記録に依存する。だから使い方は「どれか1つを選ぶ」ではなく、「速いものから順に当て、食い違ったところだけ深く掘る」になります。以下、5つを順に見ていきます。
測り方1:過去の改定を振り返る——最も安く、最も誤読される
自社が過去に値上げをしているなら、そこに答えの一部があります。用意するのは3つだけです。改定の前後それぞれ12か月の、値引きを反映した実際の単価と、請求の対象になった数量、そして取引先の数。12か月ずつ取るのは、季節の波と契約の更新月の偏りを均すためです。四半期だけで比べると、たいてい季節の差を弾力性として読んでしまいます。
計算そのものは割り算1回で終わります。問題はその後で、出てきた数字を「値上げの効果」だと信じてしまうところに落とし穴があります。改定の時期には、たいてい別のことも同時に起きています。営業の人数が変わった、競合が新製品を出した、主要な取引先の事業そのものが縮んだ。これらが全部、割り算の結果に混ざります。
だから、この測り方から取り出せるのは数字そのものではなく、「これくらいの幅なら、以前は通った」という経験の下限です。前回7%上げて数量が3%減ったなら、7%前後は通る可能性が高い、という読み方まで。そこから「では12%でも通る」と外挿することはできません。過去の改定は、試した範囲の中でしか答えを持っていないからです。
過去の改定から読むとき、必ず外す3つの雑音
前の節の割り算を少しでも使える数字にするために、外しておく雑音が3つあります。1つ目は、改定と無関係に出入りした取引先です。改定の前後12か月のあいだに新規で入った先と、事業をやめた先、担当者の異動で自然に離れた先は、計算から外します。外さないと、営業活動の成果が弾力性に化けます。
2つ目は、失注の理由が価格と記録されている案件です。営業の報告では、失注の理由はほとんどが価格になります。本当の理由が納期でも仕様でも、いちばん角が立たない理由が価格だからです。だからこの記録をそのまま数えると、弾力性は必ず過大に出ます。使うなら、価格と記録された案件のうち、実際に競合の提示額が分かっているものだけに絞ってください。
3つ目は、改定の対象外だった取引先です。長期の契約で据え置きにした先や、特別な条件を約束していた先が混ざると、分母だけが膨らみます。改定の対象になった取引だけで計算する、という一行を先に書いておくと、後から数字を作り直す手間が消えます。この3つを外すと、対象が半分近くまで減ることがあります。減ること自体は正しく、減った結果として残った数字のほうが信用できます。
測り方2:見積もりの通過率で読む——減る前に動く数字
BtoBで最も早く反応が出るのは、取引先の数でも数量でもなく、見積もりの通過率です。値上げの影響は、既存の取引が切れる前に、新規の案件が通らなくなる形で先に出ます。既存の取引には契約期間や乗り換えの手間があるので動きが遅く、新規の案件にはそれがないからです。だから通過率は、最も早い警報になります。
見るのは2つの組み合わせです。提示した単価の水準と、その案件が受注に至ったかどうか。これを提示額の帯ごとに並べると、どの水準から通過率が落ち始めるかという折れ目が見えます。折れ目の位置が、その区分の実務上の上限に近い値です。件数が少なくても、帯を粗くすれば形は見えます。3つの帯に分けるだけでも十分に意味があります。
この測り方の弱点は、記録に完全に依存することです。提示額しか残っていない会社では計算できません。必要なのは、提示額、値引き率、受注の可否、失注の場合の相手の提示額(分かる範囲で)の4つです。この4つが揃っていない会社は、まず記録の様式を変えるところから始める。様式を変えてから半年分がたまれば、その後は毎月自動的に測れるようになります。過去にさかのぼって作り直すより、はるかに早く着地します。
測り方3:意向を聞く調査——聞ける場面と、聞いても外れる場面
実績がまだない価格帯について知りたいときは、買い手に聞くしかありません。支払ってよい価格の帯を聞き取る型としてはPSMがよく知られていますし、その進め方は別の記事で扱っています。ここで整理したいのは手順ではなく、実績から測る方法との役割の違いです。実績は「試した範囲の中」しか答えられませんが、聞く調査は「まだ試していない範囲」について答えを返します。
ただし、返ってくる答えには決まった歪みがあります。買い手は、実際より低い金額を答える方向に偏ります。将来の交渉で不利になりたくないからです。加えてBtoBでは、答える人が払う人とは限りません。使う部署の担当者は使い勝手で答え、決裁する人は予算の枠で答えます。同じ会社の中で、まったく違う金額が返ってくることになります。
だから使う場面を選びます。向くのは、新しい商品やプランを出すとき、価格の段階をいくつに割るかを決めるとき、まだ提示したことのない上の帯を試すとき。向かないのは、既存商品の改定幅を決めるときです。既存商品については実績のほうが確かなので、聞く調査は実績で説明できない部分にだけ当てる。そして、聞いた金額をそのまま提示額にはしません。答えの帯と、実績から出た折れ目を並べて、両方が重なるところを候補にします。
測り方4:比べる実験ができる場面を探す
因果に最も近づけるのは、条件を揃えた2つの群を比べる方法です。片方には新しい価格を、もう片方には今の価格を提示し、同じ期間の結果を比べる。ほかの変化は両方に同じように効くので、差の部分だけが価格の効果だと言えます。理屈としてはこれが最も強い方法です。
問題は、BtoBでは実施できる場面が限られることです。取引先ごとに価格が違うことを知られると、信頼の問題になります。だから探すのは、同じ買い手が2つの価格を同時に見ることがない場面です。実務でよく成立するのは3つ。新規の問い合わせに出す標準の提示額、地域や販路が完全に分かれている商品、そして期間限定の追加のサービスの価格です。
分け方にも注意が要ります。「大手には新価格、中小には現行価格」のように業務の意味を持たせて分けると、価格の効果と規模の効果が混ざって、何も言えなくなります。分ける基準は、問い合わせの受付順のように、買い手の性質と無関係な規則にする。そして期間は先に決めます。良い数字が出たところで打ち切ると、都合のよい期間を選んだだけの結果になります。分けた基準と期間は記録に残し、次の実験でも同じ基準を使ってください。
測り方5:更新と解約の兆しから読む——最も遅く、最も確かな数字
最後は、実際に離れたかどうかを見る方法です。更新率、更新時の数量の増減、利用量の変化、そして値上げの案内を受け取った後の問い合わせの内容。これは実際の行動そのものなので、数字としてはいちばん信用できます。代わりに、結果が出るのが遅い。年契約なら全体に行き渡るまで12か月かかります。
だから、この測り方は「次回の判断のため」に取ります。今回の改定の可否には間に合いません。取るときに外してはいけないのが、解約に至らなかった変化です。契約は続いたが数量が2割減った、上位のプランから下位に落ちた、追加の発注が止まった。これらは解約の件数には出ませんが、弾力性としては同じ意味を持っています。
もうひとつ、値上げの案内の後に届いた問い合わせの内容を分類しておいてください。金額そのものへの反発と、説明が足りないことへの不満は、別の数字として数える。前者が多ければ本当に価格の問題ですが、後者が多ければ、同じ価格でも伝え方を変えれば通る可能性が残っています。この2つを一緒に数えると、弾力性を実際より高く見積もることになります。
5つをどう重ねるか。順番と打ち切りの決め方
5つ全部をやる必要はありません。安くて速いものから順に当て、食い違ったところだけ深く掘るのが実務の順番です。以下の5工程は、最初の1区分について1か月から3か月で回せる想定にしています。
全社で1つの数字を出さないでください。値上げの提示を分けられる単位、つまり商品群か取引先の区分ごとに決めます。まずは1つだけ選びます。
価格は値引きを反映した実際の単価、数量は請求の対象になった数量。分子と分母の定義を紙にしてから、記録を触り始めます。
前後12か月。改定と無関係な出入り、価格と記録された失注、対象外だった取引を外します。ここまでで1週間から2週間です。
提示額の帯を3つに分けて、どこから通過率が落ちるかを見ます。過去の改定から出た数字と、折れ目の位置が合っているかを確かめます。
2つが合っていれば、そこで打ち切って構いません。合っていない区分にだけ、聞く調査か、条件を揃えた比較を足します。
工程5の「打ち切ってよい」を明文化しておくことが、この順番の要点です。2つの測り方が同じ方向を指したら、それ以上は測らないと先に決めておく。決めていないと、精度を上げ続ける作業が半年続き、その間に改定の時期を逃します。測定は判断のためにやるのであって、正確な数字を得るためにやるのではありません。
実務仕様:測る前に確定させる定義
ここまでの内容を、着手前に埋める紙にまとめます。この表が埋まっていない状態で計算を始めると、途中で定義が変わり、最初からやり直しになります。埋めるのに要る時間は、関係者が集まれば1時間です。
| 決める項目 | 実務で勧める置き方 | 曖昧なままだと何が起きるか |
|---|---|---|
| 価格の定義 | 値引きを反映した、1単位あたりの実際の単価 | 定価で測ると、営業の値引きが反応を打ち消して何も見えない |
| 需要の定義 | 請求の対象になった数量(金額ではなく) | 金額を使うと値上げの効果と数量の減少が打ち消し合う |
| 測る単位 | 値上げの提示を分けられる単位(商品群か取引先の区分) | 全社で1つの数字を出しても、提示のときに使えない |
| 比べる期間 | 改定の前後それぞれ12か月 | 四半期で比べると、季節の波を弾力性として読む |
| 除外する取引 | 改定の対象外の先、期中に出入りした先 | 営業活動の成果や事業の終了が計算に混ざる |
| 失注の扱い | 価格と記録された案件のうち、相手の提示額が分かるものだけ | 失注理由の建前をそのまま数え、弾力性を過大に見積もる |
| 打ち切りの条件 | 2つの測り方が同じ方向を指したら止める | 精度を上げ続ける作業が続き、改定の時期を逃す |
| 更新の周期 | 改定のたびと、年に一度 | 一度出した数字が数年間そのまま引用され続ける |
表の中でいちばん飛ばされやすいのが、最後の2行です。打ち切りの条件と更新の周期を書いていない測定は、必ず「一度やって終わり」になります。1回目の測定は、たいてい定義の粗さのせいで使いにくい数字が出ます。2回目からが本番です。次にいつ測るかを紙に書いた時点で、この作業は継続する仕事になります。
AIに任せてよい工程と、AIに決めさせてはいけない工程
この一連の作業には、AIがよく効く場所があります。記録の整形、除外する取引の洗い出し、帯ごとの集計、失注の記録の分類、結果を社内向けに説明する文章の下書き。とくに、営業の記録に書かれた失注の理由を読んで、価格に関するものとそれ以外に仕分ける作業は、人がやると数日かかるものが半日で形になります。
一方で、AIに決めさせてはいけない工程がはっきりあります。測る単位をどう区切るか、どの取引を除外するか、そして出てきた数字を提示額に翻訳する判断。どれも、判断の材料が記録の中ではなく、取引の経緯や契約の条件や相手との関係の中にあるからです。記録だけを見ているAIには、その材料が届きません。
- 除外する取引の候補をAIに出させたら、除外の理由を1件ずつ書かせ、人が取引の経緯と突き合わせて確定する
- 失注の理由の仕分けは下書きまで。価格と分類された案件が本当に価格だったかは、担当者に確かめてから数える
- 出てきた弾力性の数字から提示額を決めさせない。数字は候補を絞る材料であって、決定ではない
- AIが集計した結果には、使った期間・除外の条件・件数を必ず併記させる。件数が少ない区分は結論を出さない
- 取引先ごとの値引きの記録をAIに渡すときは、渡してよい範囲を先に決める。相手の社名が要らない集計なら外して渡す
確かめる範囲も決めておきます。人が必ず見るのは、除外した取引の一覧、件数が10件を下回った区分、そして前回の測定との差が大きい区分の3つ。それ以外は、条件が記録されていれば後から追えます。とくに件数の少ない区分は、数字が大きく振れるので、AIが出した値をそのまま会議に出すと、根拠のない確信を全員に配ることになります。
数字が出た後の使い方と、使ってはいけない使い方
弾力性の数字は、提示額を決めるためではなく、提示の仕方を分けるために使います。読み替えは3つです。1つ目は、1より小さい区分と大きい区分で、値上げの幅を変えること。2つ目は、大きい区分には価格以外の条件(納期、保守の範囲、支払いの条件)を同時に提示すること。3つ目は、大きい区分から先に説明の準備を始めることです。
2つ目の読み替えが、実務ではいちばん効きます。弾力性が大きいということは、価格だけを見て比べられている、という意味でもあります。その区分に必要なのは値上げ幅の調整だけではなく、比べる土俵を価格以外にも増やすことです。同じ数字が、価格の判断と、提供する内容の見直しの両方に効きます。
使ってはいけない使い方も、はっきりしています。1つの数字を全社の共通の前提として、あらゆる商品の値決めに使い回すこと。そして、1年以上前に出した数字を、更新せずに引用し続けること。買い手の事情も競合の顔ぶれも変わります。数字には、いつ・どの区分で・何件から出したかを必ず添えてください。添えていない数字は、半年後には誰も出どころを説明できなくなります。
測り方でやりがちな失敗と、着手前のチェック
最後に、実際によく起きる失敗を並べます。どれも計算を間違えたのではなく、定義と範囲を決めずに始めたことが原因です。
- 定価の改定率で測る:営業が値引きを増やしていれば実際の単価は上がっておらず、反応が出ないのを「弾力性が低い」と読んでしまう
- 四半期だけを比べる:季節の波と契約の更新月の偏りを、値上げの効果として読む
- 失注理由をそのまま数える:価格と記録された案件をすべて数え、弾力性を実際より大きく見積もる
- 全社で1つの数字を出す:区分ごとに値が大きく違うため、平均した数字はどの提示にも使えない
- 件数の少ない区分で結論を出す:1件の出入りで数字が倍近く動き、根拠のない確信だけが残る
- 改定の3か月後に影響なしと結論づける:年契約なら影響が全体に行き渡るのは12か月後で、判断が早すぎる
着手する前に、次の6つが埋まっているかを確かめてください。埋まっていない項目が2つ以上あるなら、計算を始める前に定義を決める時間を取ったほうが、結果として早く終わります。
- 価格の定義を、値引きを反映した実際の単価と決めて紙に書いた
- 需要の定義を、金額ではなく請求の対象になった数量と決めた
- 測る単位を、値上げの提示を分けられる区分に合わせて1つ選んだ
- 比べる期間を、改定の前後それぞれ12か月と決めた
- 除外する取引の条件(対象外の先・期中の出入り・失注の扱い)を書き出した
- 打ち切りの条件と、次に測る時期を決めた
まとめ
値上げで顧客がどれだけ減るかを読む要点は、1つの方法で正確な数字を出そうとせず、速くて安い方法から順に当てて、食い違ったところだけ深く掘ることです。過去の改定は試した範囲の中でしか答えられず、見積もりの通過率は取引先が減るより先に折れ目を見せ、聞く調査はまだ試していない帯についてだけ答えを返し、条件を揃えた比較は場面を選び、更新の兆しは最も遅く最も確かです。そして、出てきた数字は提示額を決める道具ではなく、提示の仕方を分ける道具として使います。まずは、値上げの提示を分けられる区分を1つ選び、価格と数量の定義を1枚に書くところから始めてみてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
データ分析にAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
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