情シスは外注するかAIで回すか|委託の前に引く線引き

情シスは外注するかAIで回すか|委託の前に引く線引き

「情シスの運用を丸ごと外に出す見積りを取ったのですが、範囲の切り方が合っているのか分かりません」「AIで回せそうな作業まで、人手の単価で入った金額が返ってきました」。——委託先を探し始めた会社から、この2つは組で届きます。共通しているのは、まだ委託先を比べる段に来ていない、という点です。日本情報システム・ユーザー協会が上場企業とそれに準じる4,500社に聞き、957社が答えた調査では、2025年度のIT予算が前年度より増えた企業は52.6%でした。増えた理由には「AI関連の投資・利用料増加」が36.3%で挙がり、2026年度の予測では43.7%まで上がっています。同時に「円安や人件費高騰、提供価格の値上げ等の影響」を挙げた企業も46.6%ありました。お金は増えているのに決めきれないのは、金額の問題ではなく、外に出す範囲そのものが紙に書かれていないからです。この記事では、委託先を選ぶ前に引いておく線引きを、恒常業務の割り方から契約の書き方まで順に整理します。


カメ先生カメ先生

情シスを外に出すかAIで回すかは、費用の比較だと思われがちなんだ。でも実際に後から効いてくるのは、外に出した業務を必要になったときに社内へ戻せるかどうかなんだよ。戻せない形で出してしまうと、値上げの相談が来ても断る手が無くなる。


カメ子カメ子

金額より先に、戻せるかどうかを見るということですか。


カメ先生カメ先生

順番としてはそうなる。もう一つあって、AIで巻き取れる範囲がこの1年でかなり動いた。去年と同じ範囲で見積りを取ると、いま自社で回せるようになった作業まで買うことになるんだ。


カメ子カメ子

範囲を引き直してから見積りを取る、という順番になるのですね。


この記事のポイント
  • 決めるのは委託先ではなく、外に出す範囲。恒常業務を可逆性と事故の重さで割ってから見積りを取る
  • 外注は責任の一部が契約で動き、AIは責任が自社に残る。同じ「手が空く」でも残るものが違う
  • 外に出しても、点検と説明と権限の承認は社内に残る。ここまで渡すと、戻す判断ができなくなる

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

目次

委託先を選ぶ前に、外に出す範囲を決める

相談は、たいてい順番が逆に始まります。まず候補の会社を3社挙げ、それぞれに現状を説明し、提案を待ちます。範囲が決まっていないので、各社は自分の得意な切り方で提案を組みます。1社は端末の管理を中心に、1社は監視と一次対応を中心に、1社は問い合わせ窓口を中心に。3通りの提案は、金額の差ではなく範囲の差でできています。それを金額の順に並べても、選んでいることになりません。

範囲を先に決めておく効き目は2つあります。1つ目は、見積りの単位がそろうことです。同じ一覧に対して、やる、やらない、条件付きで受ける、の3つを付けてもらえば、比べる対象が価格だけになります。2つ目は、後から戻す判断ができることです。何を出したかが書いてあれば、契約を見直すときに戻す範囲を指定できます。範囲の一覧が無い委託は、始めるときは楽ですが、やめるときに必ず止まります

範囲を決めるという作業は、恒常業務の一覧を作る作業とほぼ同じです。ここを飛ばして外注の話は進みません。同じ一覧は、AIでどこまで巻き取れるかを試すときにも使えます。外注とAIのどちらに寄せるとしても、最初の1枚は同じ一覧です。逆に言えば、この一覧さえあれば、判断は今日から始められます。

体制の人数で、取れる選択肢が変わる

先に自社の立ち位置を確かめます。情報システム部門の担当者577名に2025年12月から2026年1月にかけて聞いた調査では、部門の人数が「5人以上」の企業が34.0%、「2〜4人」が43.2%、「1人以下」がおよそ2割でした。2018年度の同じ調査では「5人以上」が29.3%、「2〜4人」が50.5%です。8年かけて中規模の層がやや厚くなった一方で、1人以下の層はほとんど動いていません。人を増やして解決した会社は、そう多くないということです。

企業規模別に見ると、段の切り替わる場所がはっきりしています。従業員1〜99名の層では「1人以下」がおよそ5割。100〜299名になると「2〜4人」がおよそ7割を占めます。300〜499名で「2〜4人」と「5〜9人」がそれぞれおよそ4割に割れ、500〜999名では「5〜9人」と「10人以上」の合計が6割を超えます。人数はなだらかに増えるのではなく、規模のある地点で体制の形そのものが切り替わります

この人数が効いてくるのは、外注を受け取る側の手間です。委託は、渡して終わりではありません。範囲どおりに動いているかを見て、例外の相談に答えて、月次の報告を読む人が要ります。1人体制で運用を丸ごと外に出すと、実務が減った分だけ管理の仕事が増え、忙しさが変わらないという結果になりがちです。同じ調査で、今後注力したいこととして挙がった上位は「セキュリティ強化」66.9%、「コア業務強化・改善」49.9%、「AI活用」49.7%でした。

外注とAIは、置き換え合う関係ではない

この2つは、同じ棚に並べて比べるものではありません。外注は、人の手を外の会社から借りる形です。契約を結んだ範囲について、実施の責任の一部が相手側に移ります。対してAIで回すのは、業務そのものは自社に残したまま、実行の一部を機械に移す形です。失敗したときに説明する人は、外注では相手側にも生まれますが、AIでは自社にしか生まれません

この違いは、費用の話より先に効きます。たとえば端末の初期設定を外に出せば、台数が急に増えた月も相手側が人を足して吸収します。同じ作業をAIと社内の手順で回している場合、増えた分は自社の誰かの残業になります。逆に、社内の事情が毎回違って手順が固まらない作業は、外に出すと例外の確認が往復し続け、自社でAIに下書きを作らせて人が直したほうが速く終わります。

だから判断の軸は、費用ではなく2つになります。事故ったときに誰が説明するのか。そして、必要になったときに社内へ戻せるのか。この2つが決まらないうちに金額を見ると、安いほうを選んで戻せない側に落ちます。以降のセクションでは、この2つを実際に業務へ当てはめていきます。

恒常業務を、3つの箱に割る

割り先は3つです。1つ目は、外の会社に出す箱。2つ目は、自社に残したままAIで回す箱。3つ目は、人が手元に残す箱です。よくある失敗は、1つ目と3つ目の2択で考えてしまうことです。2択にすると、出せないものは全部自分で抱えることになり、1人体制の会社ほど身動きが取れなくなります。3つ目の箱を小さく保つために、2つ目の箱が要ります

一覧の作り方は素朴で構いません。2週間、発生した作業をその都度1行ずつ書き出します。思い出しで書くと、多い作業と印象に残った作業しか出てきません。書き出すのは、作業の名前、かかった時間、誰から来たか、判断が要ったかどうかの4つです。2週間分を並べると、件数の多い順と、判断の要らない順の2つの並びができます。

並べたら、判断が要らずに件数の多いものから割り先を決めます。ここで役に立つのが、次のセクションで扱う可逆性の見方です。件数が多いものほど外に出したくなりますが、件数と可逆性は別の話です。件数が多くて戻しにくい業務を最初に出すのが、いちばん多い事故の形です

戻せなくなる業務と、戻せる業務の見分け方

戻せるかどうかは、感覚ではなく4つの問いで判定できます。第一に、その業務の手順が社内の文書として存在するか。第二に、作業に使う権限や認証の情報が、自社の名義で管理されているか。第三に、使っている道具の契約が自社の名義か、委託先を経由しているか。第四に、その業務の中身を説明できる人が社内に1人でもいるか。4つのうち2つ以上が欠けている業務を外に出すと、戻す作業が新しい導入と同じ手間になります

戻せなくなる型は、だいたい決まっています。手順が委託先の担当者の頭の中にしかない状態。管理画面の最上位の権限が委託先の名義で作られている状態。道具の契約が委託先を通しており、解約すると同時に使えなくなる状態。そして、社内の窓口が消えて、社員が直接委託先へ連絡するようになっている状態です。最後の1つは特に気づきにくく、契約を見直す段で初めて表面化します。

防ぎ方は、出すときに条件として書いておくことです。手順書を成果物として納品させること。権限は自社の名義で作り、委託先には必要な範囲だけを付与すること。道具の契約は自社で持つこと。そして、社内の窓口を残すこと。この4つは、始めるときに書けば1行で済み、後から直そうとすると数か月かかります

割る順番は、可逆性、事故の重さ、量の3段

一覧の各行に、3つの目印を付けていきます。戻せるか。事故ったときの影響が重いか。月にどれくらいの量が出るか。この順番で見るのが要点です。量から見ると、多いものを外に出したくなり、可逆性の判定が後回しになります。順番を決めておくだけで、判断のばらつきがかなり減ります。実際に情シスの恒常業務を割ると、次のような形に落ち着くことが多くなります。

恒常業務の例戻しやすさ事故の重さ割り先の目安
社内からの問い合わせの一次受け戻せる軽いAIで下書きを作り、社内の窓口は残す
端末の初期設定と配布、回収戻せる中くらい外に出す。台数の増減を吸収させる
夜間と休日の監視、一次対応戻せる中くらい外に出す。手順書は自社で持つ
資産と契約の台帳の整備戻せる軽いAIで突合させ、確定は人が行う
権限の付与と削除の承認戻しにくい重い手元に残す。AIは申請の下書きまで
退職や異動に伴う停止処理戻しにくい重い手元に残す。実施は外でも承認は社内
情報の持ち出しに関する判断戻しにくい重い手元に残す。外にもAIにも渡さない

表の右端は目安であって、正解ではありません。自社の事情で変わる典型は、夜間の監視です。24時間動くシステムを抱えている会社では外に出す価値が大きく、業務時間しか動かないシステムしかない会社では、そもそも夜間の枠を買う必要がありません。見積りに入っている項目を、自社に必要かどうかで1行ずつ落としていく作業が、いちばん金額に効きます

AIで巻き取れる範囲が動き、見積りの前提が古くなった

範囲を毎年引き直す必要が出たのは、AI側の変化が速いからです。ある大手のインターネット企業が自社の国内の従業員5,353名に2026年3月に聞いた調査では、生成AIを業務で使っている割合が97.8%、指示を受けて手順を実行する形のAIを業務で使っている割合が71.4%でした。同じ会社が2025年12月に行った前回の調査では、後者は43%です。3か月で29.1ポイント動いています

この数字をそのまま自社に当てはめることはできません。1社の社内調査であり、削減した時間も回答者本人の申告です。同じ調査で1人あたり月におよそ53.9時間が浮いたとされていますが、これは業界の平均ではありません。読み取るべきは水準ではなく、変化の速さのほうです。同じ範囲で去年取った見積りは、今年はもう自社の実態に合っていない可能性が高い、ということです

実務では、見積りを依頼する前に小さく試します。問い合わせの一次回答の下書き、手順書のたたき台、台帳の突合。この3つは、社内の道具だけで数日試せます。試した結果を持って範囲の一覧を引き直すと、外に出す行が減り、残った行の説明も具体的になります。試していない会社は、委託先の提案の範囲をそのまま受け取ることになります

契約の形で、頼めることが変わる

範囲が決まったら、次は契約の形です。大きく2つあります。仕事の完成に対して報酬を払う形と、事務の処理そのものに対して報酬を払う形です。移行や構築、台帳の棚卸しのように終わりのある作業は前者に向きます。日々の運用や監視のように終わりの決まっていない作業は後者になります。恒常業務の委託は、ほとんどが後者になります

後者を選ぶと、完成という区切りが無くなります。だから、何をもって果たされたことにするのかを別に書く必要が出ます。書くのは4つです。対応する時間帯。連絡してから返事が来るまでの目安。対象に含まれるものと含まれないもの。そして、月次で何を報告してもらうか。この4つが書かれていない委託は、半年後に「思っていたのと違う」という話になります。

常駐の形をとる場合は、指示の出し方に注意が要ります。派遣の契約でない限り、発注側が委託先の担当者へ直接、日々の作業指示を出す形は取れません。指示は委託先の責任者を通します。この線引きは契約書の文言ではなく実際の運用の形で見られるため、迷う場合は自社の契約担当や顧問に確認してください。

  • 範囲の一覧を作らずに3社から提案をもらう——比べているのが価格ではなく各社の解釈になる
  • 件数の多い業務から順に外に出す——戻しにくい業務が最初に出ていき、契約の見直しができなくなる
  • 手順書が無いまま運用を出す——半年で社内に説明できる人がいなくなる
  • 管理画面の最上位の権限を委託先の名義で作る——解約の交渉で必ず不利になる
  • 月次の報告に「異常なし」だけを求める——何を見て異常なしと言っているのかが分からなくなる
  • AIで巻き取れるかを試さずに見積りを取る——自社で回せる作業を人手の単価で買うことになる

委託の中でAIを使わせるとき、発注側が指定する4点

いまは、委託先の側もAIを使って作業します。ここで発注側が「AIを使わないこと」とだけ書くと、まず守られません。使ったほうが速く終わる作業を、使うなと言われても、見えない場所で使われるだけです。止めるのではなく、使い方を指定するほうが実際に守られます。指定するのは4点で、どれも範囲の一覧が決まっていれば書けます。

STEP1
どの環境で動かすかを決める

自社が契約している環境で動かすのか、委託先が持つ環境なのか、委託先がさらに別の会社の道具を使うのか。3つ目に当たる場合は、その名前と用途を出してもらう

STEP2
入れてよいデータの範囲を書く

入れてはいけないものを列挙するだけでは足りない。入れてよい範囲を先に書き、そこに無いものは確認するまで入れない、という向きにする

STEP3
生成したものの扱いを決める

納品物にAIの出力が含まれる場合の権利の扱いと、入力した内容が学習に使われない設定になっているかの確認。設定の画面の状態を提出してもらう

STEP4
人が確認する範囲を先に決める

出力をそのまま納品しない条件と、誰が何を確認したかを納品時に示す方法。確認する人の名前が空欄の納品は受け取らない、と書いておく

この4点は、委託先を縛るためのものではありません。事故が起きたときに、どこで何が起きたかを追える状態を作るためのものです。追えない状態のまま外に出すと、原因の説明ができず、社内に対して答えられなくなります。追える状態にしておけば、委託先がAIを使って速く終わらせることは、発注側にとっても利益になります。

個人データを含む業務を出すときに握る条件

情シスの恒常業務は、思っている以上に個人データに触れます。入社と退職に伴うアカウントの作成と停止、問い合わせの履歴、端末の貸出台帳、社内の連絡先の一覧。これらを含む業務を外に出す場合、法律上の義務が発生します。個人情報の保護に関する法律の第25条は「個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。」と定めています。

委員会のガイドラインは、この監督として3つの措置を挙げています。適切な委託先を選ぶこと。委託契約を結ぶこと。委託先での取扱状況を把握すること。選ぶ段では、委託先の安全管理の水準が自社に求められる水準と同等であることを、あらかじめ確認しなければならないとされています。把握の段では、定期的に監査を行う等により実施状況を調べ、必要なら見直すこととされています。契約書に1行書いて終わりではなく、続けて状況を見ることまでが監督に含まれます

再委託も押さえます。委託先がさらに別の会社へ出す場合、事前に報告を受けるか承認を行うこととされ、定期的な監査等により再委託先の監督が適切に機能していることを十分に確認する必要があります。委託先がAIの道具を使う場合、その道具を提供している会社が実質的な再委託先に当たるかどうかは、契約の中身で変わります。前のセクションで環境と名前を出してもらうのは、この判断のためでもあります。

一人で回している体制は、どちらから先に手を付けるか

従業員1〜99名の層では、情報システムの担当が1人以下という会社がおよそ5割でした。この体制で運用を丸ごと外に出すと、多くの場合いったん忙しくなります。範囲の説明、例外の相談、月次の報告の確認。委託先の管理という仕事が新しく増えるからです。受け取る側の時間が空いていない状態で外に出すのは、順番が違います

先に手を付けるのはAI側です。ただし、新しい仕組みを作る話ではありません。いま自分がやっている作業のうち、下書きがあれば速く終わるものから始めます。順番は3つです。問い合わせへの一次回答の下書き。日々やっている作業の手順書の整備。資産と契約の台帳の突合。2つ目が要点で、手順書ができると、そのまま外に出す範囲の説明資料になります。

手順書ができてから外注に進むと、可逆性の判定が変わります。手順が社内にある業務は、戻せる側に入るからです。逆に、手順が無いまま外に出すと、その業務は出した瞬間に戻せない側へ落ちます。1人体制の会社にとって、手順書を書く時間は、外注の交渉力を作る時間でもあります。時間が取れないなら、まず1業務だけで構いません。

  • 最初の1業務は、件数が多くて判断の要らないものを選ぶ——効果が見えないと2つ目に進めない
  • 手順書は完璧を目指さない——次にやる人が同じ結果を出せる粒度で止める
  • AIには手順書のたたき台を作らせ、実際の画面と突き合わせて人が直す——そのまま使わない
  • 作った手順書は、外注の見積り依頼にそのまま添付できる形で保管する
  • 3か月に一度、手順書と実際の作業がずれていないかを見る——ずれた手順書は無いのと同じ

外に出しても、社内に残る3つの仕事

委託の話で最も見落とされるのが、ここです。外に出しても消えない仕事が3つあります。点検、説明、そして権限の承認です。この3つを一緒に渡してしまうと、外注は「楽になる選択」ではなく「戻せない選択」に変わります。逆に、3つを残しておけば、範囲を広げる交渉も、縮める交渉も、あとから何度でもできます。

点検は、納品されたものが決めた範囲どおりかを見る作業です。全部を見る必要はありません。月に一度、決めた3項目だけを見ます。範囲の外の作業が入っていないか。報告されていない事故が無いか。権限の一覧に見覚えのないものが増えていないか。3項目に絞ると15分で終わり、続きます。項目を10個にすると、3か月で誰も見なくなります。

説明は、社内と社外に対して答える仕事です。障害が起きたとき、社内の人が話を聞きたいのは委託先ではなく自社の担当者です。権限の承認は、誰にどの権限を与えるかを決める仕事で、これは業務の中身を知らないと判断できません。実施は外に出せますが、誰に与えるかを決める役だけは、外にもAIにも出せません

判断は、委託先にもAIにも渡さない

AIをどこまで使うかも、同じ線引きで決められます。基準は1つで、決めた条件と突き合わせれば答えが出る作業は任せてよく、条件そのものを決める作業は人が持ちます。判定だけを返させないことが、実務では最も効きます。良いか悪いかだけが返ってくると、根拠を確かめるために結局は自分で見直すことになり、二度手間になります。

任せてよいのは、次のような作業です。どれも、答え合わせのできる形になっています。

  • 委託の見積りに、自社が作った範囲の一覧のどの行が入っていないかを列挙させる
  • 2社の見積りで、同じ言葉が違う意味で使われている箇所を抜き出させる
  • 資産の台帳と実際の契約の一覧を突き合わせ、片方にしか無い行を出させる
  • 問い合わせの履歴から、同じ内容が繰り返されている上位の項目を並べさせる
  • 手順書と実際の作業ログを比べ、手順書に書かれていない操作を挙げさせる

一方、人が持つのは4つです。外に出す範囲を変える判断。権限を誰に与えるかの承認。事故が起きたときに社内へ何をどう伝えるかの判断。そして、契約を続けるか終わらせるかの判断です。どれも、社内の事情と過去の経緯を知らないと決められません。AIに渡していない情報のほうが多い領域では、返ってきた結論の正しさを確かめる手段がありません

費用の比べ方をそろえる

見積りが比べられなくなる理由は3つです。範囲が違う。単位が違う。含まれていないものが違う。単位は特に厄介で、月額の定額、件数あたり、人日あたりが混ざって出てきます。単位が違う見積りは、繁忙期の1か月で順位が入れ替わります。だから、比べる前に自社の側で件数の実績を出しておきます。前のセクションで作った2週間の一覧が、そのまま使えます。

含まれていないものは、質問しないと出てきません。よく漏れるのは、道具の利用料、夜間と休日、繁忙期の増員、そして解約時の引き継ぎ費用です。4つ目は特に聞きにくいのですが、契約の入口で聞いておくのが結局いちばん安く済みます。解約の費用を出さない会社は、出せない事情があるか、まだ考えていないかのどちらかです

AIで回す側の費用も、同じ表に入れます。利用料だけでなく、設定にかかる手間と、出力を確認する人の時間を必ず行に入れます。比べるときに落ちやすいのは、確認する人の時間です。ここを入れずに比べると、AIで回す側が実際より安く見え、始めてから足が出ます。1件あたり何分の確認が要るかを、試した結果から入れておきます。

出したものを戻す手順を、出す前に書く

最後に、終わり方を決めます。契約を結ぶ日に書いておくのが要点で、揉めてから書こうとしても書けません。書くのは4つです。手順書と作業の記録を返してもらうこと。権限の名義を自社へ戻す段取り。預けたデータの返却と削除の方法。そして、引き継ぎの期間です。4つ目を書き忘れると、切り替えの当日に運用が止まります

終わり方には、3つの向きがあります。社内に戻す、別の会社へ移す、そしてAIと社内の手順で回す形に切り替える。3つ目は数年前は現実的ではありませんでしたが、範囲を絞れば選べるようになりました。どの向きに進むとしても、必要になるものは同じです。手順書、権限、データ、そして期間。この4つが揃っていない限り、どの向きにも進めません

そして、年に1回は戻せる状態かどうかを点検します。見るのは3つです。手順書が現状と合っているか。最上位の権限が自社の名義か。道具の契約が自社の名義か。3つとも整っていれば、値上げの相談が来ても、範囲を縮める相談ができます。整っていなければ、条件を受け入れるしかありません。交渉できる状態を保つことが、委託の実務でいちばん値打ちのある準備です

まとめ

情シスを外に出すかAIで回すかは、委託先を比べる話ではありません。比べる前に、外に出す範囲を自社で決める話です。範囲が決まっていない状態で3社から提案をもらうと、並ぶのは価格ではなく各社の解釈です。だから最初にやるのは、2週間かけて恒常業務を1行ずつ書き出し、一覧にすることです。この一覧は、外注の見積り依頼にも、AIで試す範囲を決めるのにも、そのまま使えます。

割る基準は費用ではなく2つです。必要になったときに社内へ戻せるか。事故が起きたときに誰が説明するか。戻せるかどうかは、手順が社内にあるか、権限と道具の契約が自社の名義か、説明できる人がいるかの4つで判定できます。この判定を先にやると、件数が多くて戻しにくい業務を最初に外へ出す、という最も多い失敗を避けられます。割り先は3つで、外に出す箱、AIで自社に残す箱、そして手元に残す箱です。

委託の中身にも新しい段が増えました。委託先もAIを使うからです。使うなと書くのではなく、どの環境で動かすか、どのデータを入れてよいか、生成したものをどう扱うか、誰がどこまで確認するかの4点を指定します。個人データを含む業務では、法律上、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められ、選ぶ段の確認と、続けての状況把握と、再委託の承認までが含まれます。追えない状態で外に出すと、事故のときに社内へ説明できなくなります。

外に出しても、点検と説明と権限の承認は社内に残ります。ここまで渡した委託は、楽になった代わりに戻せなくなります。1人で回している会社は、外注より先にAI側から始め、手順書を作ってから外に出すと、可逆性の判定そのものが変わります。この線引きが返してくれるのは、安い委託先ではなく、あとから範囲を変えられる状態です。値上げも、体制の変更も、道具の入れ替えも起きる前提で考えるなら、戻せる形で出しておいた側だけが選び直せます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。

運営会社:株式会社デボノ

目次