【2026年】データの保存先を選ぶ|国と契約で固定する

【2026年】データの保存先を選ぶ|国と契約で固定する

「取引先の調達部門から届いた確認書に、預けた情報を最終的にどの国へ置くのかという設問があり、空欄のまま返せずにいます」「規約に国内のデータセンターと書いてあった記憶があるのですが、探しても該当する文言が見つかりません」。生成AIを部署単位で使い始めて半年ほど経った会社から、判で押したように出てくる相談です。これは提供元の説明が不親切だという話ではありません。本当は、保存先の国は自分で選ばなければ決まらない項目で、何も選ばないままだと「どこでもよい」の側に寄る作りになっているのです。しかも、置いておく場所と、その場で計算が行われる場所は別々に決まります。この記事では、保存先の国が実際にどこで決まるのかを4つの場所に分けたうえで、契約するとき、聞かれたとき、後から動いたとき、消せと言われたときの場面ごとに、何を確かめて何を書き残せばよいのかを整理します。


カメ先生カメ先生

データの保存先は契約書に書いてあるはずだ、と思われがちなんだ。でも実際には、契約の文言、選んだサービスの区分、管理画面の設定、そして提供元がさらに外へ出している先。この4か所に分かれていて、どれか1つを見ても国名は確定しないんだよ。


カメ子カメ子

契約書を読むだけでは、保存先の国は分からないということですか。


カメ先生カメ先生

分からないことのほうが多い。もう1つ厄介なのは、置いておく場所と、その場で計算する場所が別に決まることだね。置く場所は国内でも、計算は国外という組み合わせが普通に起きる。だから1つの国名で答えると、後から食い違いが表に出るんだ。


カメ子カメ子

置く場所と計算する場所を分けて確かめておかないと、聞かれたときに1つの国名では答えられないということですね。


この記事のポイント
  • 保存先の国は既定では固定されない。契約の文言・サービスの区分・管理画面の設定・再委託先の所在の4か所で決まる
  • 置いておく場所と、その場で計算する場所は別に決まる。指定できる範囲もサービスの区分ごとに違う
  • 固定したつもりでも後から動く。動いたときに気づく経路と、聞かれたときの答え方を先に用意しておく

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目次

保存先の国は、選ばなければ決まらない

最初に、なぜ答えられなくなるのかを提供元の文書から確かめます。大手クラウド基盤が公開している生成AIの技術文書(2026年8月更新)は、モデルを配置するときに選ぶ区分が「データが処理される場所」「支払い方法」「性能の特性」の3つを決める、と説明しています。そのうえで、ほとんどの用途では世界のどこでも処理する区分から始めることを勧めています。理由は、新しいモデルが最初にそこへ来ること、価格が最も低いこと、使える地域が最も広いことの3つです。

同じ文書には、その次にこう書かれています。データの所在地、容量の予約、まとめ処理といった特定の理由がある場合にのみ、別の区分へ移る、と。つまり国を固定する操作は、既定の道筋から意図的に外れる追加の作業として置かれています。誰も選ばなければ、広いほうに寄る。これが「気づいたら決まっていなかった」の正体です。設計として理にかなっており、可用性と価格を優先した結果でもあります。なお、保存する場所を国や地域の単位で先に決めておく考え方は、データレジデンシーと呼ばれます。

ここで多いのが、契約相手の所在地と、データが置かれる場所を同じものだと考える誤りです。国内の販売代理店と契約していても、基盤そのものは国外の事業者のもので、区分を選ばなければ処理は世界のどこでも行われます。逆に、国外の事業者と直接契約していても、区分を指定すれば国内に固定できる場合があります。契約書に書かれた相手の住所は、保存先の国を示す情報ではありません

置いておく場所と、処理される場所は別に決まる

次が本題です。同じ技術文書には、すべての区分に共通する所在地の扱いとして、保存されるデータは指定した地域に残る、ただし推論のデータは区分ごとに異なる、と明記されています。区分は3段階で、世界のどこでも処理する型ではどの地域でも処理でき、地域の枠内で処理する型では決められた枠(北米、欧州連合、アジア太平洋)の中だけで処理し、単一の地域に留める型では配置した地域の中で処理します。

区分置いておく場所その場で処理される場所この区分を選ぶ理由
世界のどこでも型指定した地域に残るどの地域でも処理されうる新しいモデルが最初に来る。価格が最も低く、使える地域が最も広い
地域の枠内型指定した地域に残る決められた枠の中だけ枠の外に出さないという要件がある。枠は北米・欧州連合・アジア太平洋の単位
単一地域型指定した地域に残るその地域の中だけ国を1つに固定する必要がある。取引先や業界の規則で求められている

この表が意味するのは、「国内に保存されます」という説明と、「処理も国内で行われます」という説明はまったく別の約束だということです。前者だけを確認して後者を確認していない状態で、取引先に「国内です」と答えると、後で説明の訂正が必要になります。答えるときは、置いておく場所と処理される場所を2つの欄に分けて返す。これだけで食い違いの大半は消えます。

枠の単位にも注意が要ります。欧州連合の枠には、加盟国に加えて欧州自由貿易連合の国と地域が含まれる場合があると同文書に書かれています。アジア太平洋の枠は複数の地域をまとめたもので、日本だけを指すものではありません。枠に入れたから国内だ、とは言えません。枠と国は別の単位です。取引先が国名で聞いてきているのに枠の名前で答えると、質問に答えていないことになります。

保存先が決まる4つの場所

ここまでを踏まえて、保存先の国が実際に決まる場所を4つに分けます。この4つを台帳の欄にすると、聞かれたときに一度で答えられるようになります。逆に、どれか1つでも空いていると、そこが不明になります。

  1. 提供元の既定の保管先……何も選ばなかったときにどこになるか。この既定値は提供元の都合で決まっており、契約書ではなく技術文書のほうに書かれていることが多い
  2. 契約しているサービスの区分……そもそも指定できる階層かどうか。試用や評価のための区分には、所在地の保証が付かないと明記されている例がある
  3. 管理画面の設定……作業空間や案件を作るときに選ぶ項目。ここが決定的で、後から変えられないことがある
  4. 再委託先の所在……提供元がさらに外へ出している先。提供元の本社が国内でも、下に入っている事業者が国外にいる場合がある

注目したいのは、契約書を読むだけで分かるのが1つ目の一部と4つ目の入口だけ、という点です。2つ目と3つ目は管理画面を開かないと分かりません。法務部門だけで確認しようとすると、必ず2欄が埋まらないまま止まります。確認は法務と情報システムの2人一組で行い、片方が条項を、もう片方が画面を見るという分担を先に決めておきます。

試用の区分に保証が付かない件は、実務で見落とされがちです。ある大手基盤の技術文書には、微調整したモデルを評価するための区分について、所在地の保証も稼働の保証も含まれず、24時間で自動的に消える、と明記されています。検証のつもりで使った区分には、保証が付いていないことがあります。検証だから緩くてよい、ではなく、検証だからこそ本番と同じ情報を入れない、という線引きが必要になります。

場面1:新しく契約するとき、既定のままだと何が起きるか

ここから場面ごとに見ます。最初は契約と初期設定の場面です。対話型AIの大手提供元は2025年5月7日に、日本国内へのデータ保存、すなわちデータレジデンシーに対応したと発表しました。対象は法人向けと教育向けのサービス、および開発者向けの窓口です。プロンプトに入力した内容やアップロードしたファイルが国内のデータセンターに保存される、と説明されています。日本のほか、インド、シンガポール、韓国でも同様の対応が行われました。

実務でいちばん効くのは、有効にできる場面が「新しく作るとき」に限られているという点です。法人向けのサービスでは新規に作業空間を設定する際に国内保存を有効にでき、開発者向けの窓口では案件を新規に作成し、そこで地域を選ぶ、という手順が案内されています。つまり、作ってしまってから思い出しても、その画面はもう出てきません。

この性質は、契約前の確認項目の書き方を変えます。「保存先を指定できますか」ではなく、「その指定は、いつの時点でしかできませんか」と聞くのが正しい問いです。あわせて、指定できる単位(会社全体か、作業空間ごとか、案件ごとか)と、指定した後に表示で確かめる方法も聞いておきます。契約を結ぶ担当者と、最初の作業空間を作る担当者が別人になりがちなので、この3点は発注書と一緒に渡す形にしておくと落ちません。

場面2:すでに使っているものを、後から寄せられるか

次は、先に使い始めてしまった後の場面です。前節のとおり、指定が新規作成時に限られている場合、後から寄せるには作り直しになります。作り直すと、それまでの会話の履歴、共有していた資料、権限の設定、外部のシステムとのつなぎ込みが、そのままでは引き継がれないことがあります。移すかどうかの判断は、失うものの一覧を作ってからでないと下せません。

ここは提供元とサービスによって扱いが分かれるところなので、一般論で決めずに書面で確かめます。確かめる問いは4つです。既に作った作業空間を後から国内保存に変えられるか。変えられない場合、新しく作り直したうえで中身を移す手段が提供されているか。移している間、両方の地域にデータが存在する期間が生じるか。移し終えた後、元の地域に残ったものはいつ消えるか。移設は一瞬では終わらず、途中で両方の場所に存在する期間が生まれます。この期間の扱いを聞いておかないと、移設そのものが説明できない出来事になります。

順序としては、全部を一度に移そうとしないことです。取引先から預かった資料を扱う業務と、個人情報を扱う業務を先に新しい作業空間へ移し、社内の一般的な調べ物は後回しにする。移す優先順位は、外部から説明を求められる可能性の高さで決めます。全社一律の切り替えを計画すると、調整に数か月かかり、その間はどちらの説明もできない状態が続きます。

場面3:どこの国に保存されますか、と聞かれたとき

3つ目は、取引先や監査から問われる場面です。ここで答える単位は、サービスごとではなくデータの種類ごとになります。同じサービスでも、個人情報を含む問い合わせ対応の業務と、公開済みの資料を要約させる業務では、求められる答えの厳密さが違います。まずどのデータについて聞かれているのかを確かめてから答えるのが、遠回りに見えていちばん早い進め方です。

個人データが含まれる場合は、法律の側の要求に直結します。個人情報保護委員会が公開しているガイドラインの質疑応答集(10-25)には、外国にある第三者が提供するクラウドサービスを利用し、その管理するサーバに個人データを保存する場合、クラウド提供事業者が個人データを取り扱わない場合であっても、外国において個人データを取り扱うこととなるため、当該外国の制度等を把握したうえで安全管理措置を講じる必要がある、と示されています。そのうえで、保有個人データの安全管理のために講じた措置として、提供事業者が所在する外国の名称と、個人データが保存されるサーバが所在する外国の名称を明らかにし、制度等を把握したうえで講じた措置の内容を、本人の知り得る状態に置くことが求められています。

特定できない場合の扱いも同じ質疑応答集に書かれており、サーバが所在する国を特定できない旨とその理由、および本人に参考となるべき情報(候補となる外国の名称が具体的に定まっている場合はその名称など)を本人の知り得る状態に置く、とされています。保存先が分からないこと自体が直ちに違法になるわけではありませんが、分からないと書いて公表することになるという点が実務では重い。取引先の調達部門は、この公表文を読んだうえで質問してきます。

再委託先の所在まで見ないと、答えにならない

4つの場所のうち、最も見落とされるのが再委託先です。提供元が国内の会社でも、その下に基盤を貸している事業者がいて、さらに監視や保守を別の国の会社が担っていることがあります。連なりのどこか1つが国外にあれば、そこは国外での取り扱いになります。自社が契約した相手の1つ先までしか見ていない台帳は、聞かれたときに使えません

多くの提供元は、この連なりを一覧として公表し、追加や変更を事前に知らせる仕組みを置いています。ただし、知らせ方は自動で届く形ではなく、一覧のページに掲示され、通知を受け取りたい側が登録する形になっていることが多い。誰も登録していなければ、変更は起きているのに社内では誰も知らない状態になります。通知の受け取り先は個人のメールアドレスではなく、部署で共有している窓口にします。異動でひとりが抜けた瞬間に経路が切れるからです。

契約書の側で確かめる点は3つに絞れます。第一に、再委託先の一覧がどこに掲示されるか、その場所が条項に書かれているか。第二に、追加や変更をいつ知らせるか、掲示から効力が生じるまでにどれだけの期間が置かれるか。第三に、その期間内に異議を述べたい場合の手続と、異議を述べた結果として何が起こるか(契約を解除できるのか、その事業者を外してもらえるのか)です。期間や手続は提供元ごとに違うので、一般的な相場を当てにせず、自社が結んだ契約書の該当条項で読みます。

やり取りの記録は、本文とは別の場所に残ることがある

保存先を指定したとき、その指定がどこまで及ぶのかも確かめる必要があります。指定の対象が「入力した内容と出力した内容」だけで、それ以外の情報は別の扱いになっている場合があるからです。別の扱いになりうるものとしては、利用者の識別情報、いつ誰が使ったかの操作の記録、不正な使い方を見つけるための記録、請求のための情報、障害の調査のために一時的に取られる記録などが考えられます。

ここは提供元の文書で確かめるべき問いとして持っておきます。断定できないのは、対象範囲の書き方が提供元ごとにかなり違い、公開されている文書だけでは読み切れないことがあるためです。確かめる問いは「指定した地域に置かれるものは何と何ですか、そこに含まれないものは何ですか」の2つで足ります。答えが返ってきたら、そのまま台帳の2列にします。

実務で効いてくるのは、保持期間が本文と記録で別に決まっている場合です。会話そのものは短い期間で消えても、操作の記録は監査のために長く残る、という設計はよくあります。消したのに残っていると言われる場面の一部は、消す対象が本文だけで、記録が対象外だったために起きます。台帳には、置かれる場所だけでなく、それぞれの保持期間の欄も作っておきます。

保存先の話と、混同されやすい2つの別の話

整理を進める前に、混ざりやすい話を切り分けておきます。よく一緒に語られるのは2つで、どちらも保存先とは別の設定・別の条項で決まります。混ぜたまま議論すると、片方を確認しただけで安心してしまうため、最初に分けます。

よく混ざる話何で決まるか保存先との関係
保存先の国(この記事の主題)契約の文言、サービスの区分、管理画面の設定、再委託先の所在本題。置く場所と処理する場所を分けて指定する
入力した内容が学習に使われるか契約と規約の該当条項、および管理画面の別の設定別の設定。国内に置いても学習に使われないとは限らず、学習に使わない設定でも保存先が国外のことがある
社内の誰がその会話を見られるか法人契約の管理者の権限と、組織の権限設計別の話。見える範囲が狭いことは、置かれている国が国内であることを意味しない

学習に使われるかどうかについては、前述の対話型AIの提供元も、明示的な同意がない限りモデルの学習には使わないという方針を示しています。ただしそれは保存先の指定とは別の約束であり、片方を確認しても、もう片方の答えにはなりません。社内で説明するときも、この2つを1つの文にまとめないことです。まとめた瞬間に、どちらを確認したのか分からない記録になります。

契約のどこに書けば、保存先が固定されるのか

設定で選ぶだけでは、相手が変えたときに止められません。固定するには契約の文言が要ります。見る条項は5つです。表の3列目は、その条項が薄いまま運用したときに実際に起きることです。

  • データの取り扱いに関する付属の合意……保存する地域、処理する地域、指定の対象範囲。ここが本体。薄いと、後から画面の設定だけを変えられても文句が言えない
  • 再委託に関する条項……一覧の掲示場所、変更を知らせる時期、異議を述べる手続。薄いと、連なりの先が変わったことに気づけない
  • 変更に関する条項……提供元が仕様や地域を変えるときの手順と、その通知先。薄いと、規約の改定だけで保存先が動く
  • 終了時の返還と削除……契約が終わったとき、どの地域にあるどのデータを、いつまでに、どう証明して消すか。薄いと、終わった後の状態を説明できない
  • 報告と確認に関する条項……保存先を自社が確かめる手段。報告書の提出か、画面での表示か、第三者による証明の写しか。薄いと、聞かれるたびに提供元へ問い合わせる運用になる

文言の質も見ます。「国内に保存します」とだけ書かれた一文は、実は何も固定していません。何が(入力か、出力か、記録か)、どの単位の地域に(国か、枠か)、置くだけか処理も含むのか、変えるときはどうするのか。この4点が書かれて初めて固定されます。逆に言えば、この4点を質問の形にして相手に投げれば、書き足すべき文言はそのまま出てきます。

小さく始める方法もあります。契約書の本体を改定するのは時間がかかるので、まず注文書や利用申込書の一枚に「保存する地域」「処理する地域」「確認した日」「確認した人」の4欄を作り、更新のたびに書き直す。契約書の交渉を待つ間も、記録は今日から取れます。この一枚が、後で条項を書き足すときの材料にもなります。

固定すると失うものを、先に見積もる

国を固定する判断には代償があります。先ほどの技術文書には、新しい区分が使えるようになる順番として、世界のどこでも型、地域の枠内型、単一地域型の順である、と書かれています。そして単一地域型は最後に来て、いつ使えるようになるかの日付は保証されておらず、古いモデルが引退して空いた容量に依存する、とも明記されています。つまり国を固定すると、新しいモデルが使えるようになるのが遅れます。

代償はそれだけではありません。単一の地域に寄せると、一度に処理できる量の上限が小さくなることがあり、価格が高くなる場合もあります。障害のときの扱いも変わります。同文書には、広く配置する型でも、最初に振り分けられた地域で中断が起きればその分は影響を受ける、という注記があり、固定していれば安全、固定していなければ危険、という単純な図式ではありません。何を優先して何を諦めるかを、先に紙に書いておく作業になります。

だから全社一律で固定しない、という結論になります。扱う情報の種類で3段に分けるのが実務的です。第1段は固定必須で、取引先から預かった資料と個人情報を含む業務。第2段は枠の中でよく、社内の資料を扱う業務。第3段は指定しないままでよく、公開済みの情報だけを扱う調べ物です。この3段は業務に固定された属性ではなく、今その業務で何を扱っているかの状態なので、扱う情報が変わったら段も上げ下げします。

一度決めた保管先が、後から動く6つの場面

固定したつもりでも動きます。動く場面を先に列挙しておくと、点検の対象が絞れます。次の6つは、いずれも自社の操作なしに起こりうるものと、自社の操作で起こるものが混ざっています。

  • 提供元が枠の範囲に地域を足す……ある技術文書には、容量と可用性を高めるために事前の通知なしに枠へ地域を追加できる、と明記されている。枠で指定していた場合、範囲は静かに広がる
  • 再委託先が増える、または入れ替わる……一覧に掲示されるが、購読していなければ気づかない
  • 新しい機能を有効にする……追加された機能だけが別の区分で動き、その部分は指定の対象外になっている場合がある
  • モデルを新しいものに切り替える……固定した地域ではまだ提供されておらず、使うために区分を戻す判断が現場で行われる
  • 障害や保守のための切り替え……代替をどこに置くかが契約に書かれていないと、後から確かめる手段がない
  • 組織の再編や移管……作業空間が別の契約の下へ移り、移った先の既定が適用される

6つのうち、4つ目が最も静かに進みます。新しいモデルを使いたい現場が、区分を戻せば使えることに気づいて戻す。悪意はなく、むしろ仕事熱心な行動です。だからこそ、止めるのは注意喚起ではなく、区分の選択そのものを組織の規則で縛る仕組みになります。前述の基盤には、特定の区分の利用を組織の規則として無効にする仕組みが用意されており、設定の例まで文書に載っています。同じような仕組みがあるかどうかを、提供元ごとに確かめておきます。

1つ目は、気づくのがさらに難しい種類です。枠で指定していた場合、枠に地域が足されても自社の設定は何も変わらず、画面上も同じに見えます。枠で指定するということは、範囲が後から広がることを受け入れることでもあります。国名で答える必要がある業務では、枠ではなく単一の地域で指定する。この線引きを、第1段の業務にだけ適用します。

動いたことに、どうやって気づくか

点検の設計に入ります。全部を毎月見る運用は続かないので、見る対象を3つの画面に絞り、四半期に一度だけ突き合わせます。手順は5段階です。

STEP1
提供元の再委託先の一覧を開き、更新日を見る

前回の確認日より新しければ、差分だけを読む。一覧の場所は台帳に書いておき、探すところから始めない。通知の購読先が部署の共有窓口になっているかも、ここで併せて確かめる

STEP2
自社の作業空間の設定画面を開き、区分と地域を読む

台帳に書かれた値と一致しているかを見る。一致していなければ、いつ誰が変えたのかを操作の記録から追う。区分を変えられる権限を持つ人の一覧も、同じ画面で確認する

STEP3
公表している安全管理措置の文言と突き合わせる

本人の知り得る状態に置いている文言に書いた国名が、いまの設定と合っているかを見る。合っていなければ、直すのは文言ではなく設定のほうか、それとも文言のほうかを決める

STEP4
食い違いを3種類に仕分ける

設定が動いた、提供元の側が変わった、台帳の記載が古い。この3つで原因が違い、直す相手も違う。仕分けずに一括で直すと、同じ食い違いが翌期も出る

STEP5
台帳の確認日と確認者を更新する

値が変わっていなくても、確認した事実を残す。取引先に答えるときに効くのは国名そのものより、いつ時点の情報かという但し書きのほう

3番目が要になります。設定と公表文の突き合わせをしていない会社は多く、設定だけを直して公表文が古いまま残る、という状態がよく起きます。外から見えているのは公表文のほうなので、実態が正しくても説明は間違っていることになります。四半期に一度、この2つを並べて読むだけで、聞かれたときの答えの精度がまったく変わります。

誰が見るかも決めます。設定の画面を見るのは情報システム部門、公表文を見るのは法務部門、両方を突き合わせるのは、その業務を実際に回している部署の責任者にします。突き合わせを情報システム部門だけに任せると、公表文の意味が読めないまま「一致している」と判断されます。突き合わせは、設定を作った人以外が行うほうが見つかります

止めろ、移せ、消せと言われたときにできること

最後の場面です。要求は3種類の相手から来ます。取引先が契約の終了にあたって預けた資料の破棄を求めてくる場合、本人が自分に関するデータの削除を求めてくる場合、そして監督官庁や裁判所から提出や開示を求められる場合です。このとき何ができるかは、要求が来てから決まるのではなく、保存先と保持期間をどう設計したかで既に決まっています

できることを場面別に整理しておきます。停止だけなら、そのサービスの利用を止め、新しく入れるのを止めることで足ります。移設は前述のとおり作り直しになる場合があり、途中で両方の地域に存在する期間が生じます。削除は、本文の削除と記録の削除が別に進むため、いつ何が消えるかを2列で答えることになります。消えましたと一言で答えられる場面は、実務ではほとんどありません。何が、どこから、いつ消え、何がどれだけ残るのか。この形で答える準備をしておきます。

あわせて、要求を受けたときの返し方の雛形を1枚だけ用意しておきます。書く欄は5つです。対象のデータは何か。置いておく場所と処理される場所はどこか。どの契約と設定に基づいてそうなっているか。いつまでに何ができるか。できない部分について代わりに何をするか。この雛形があるだけで、要求が来てから社内で情報を集める時間がなくなり、返答の速さがそのまま信頼になります。

AIに任せてよい作業と、任せてはいけない判断

この一連の作業をAIに手伝わせたくなりますが、任せてよい範囲は限られます。線を引かないまま使うと、台帳の欄は埋まるのに、根拠を聞かれたときに何も示せないものができあがります。任せてよいのは、次のように文書の中を探して形を整えるだけで済む作業です。

  • 契約書の中から、保存する地域、再委託、変更、終了時の扱いに触れていそうな箇所を抜き出して並べる
  • 提供元が公開している文書の、前回確認した版と今回の版の違いを洗い出す
  • 台帳の書式に合わせて、複数のサービスの設定値を同じ並びに整える
  • 本人の知り得る状態に置く文言の下書きを、決まった要素をもとに組み立てる
  • 取引先から来た質問文を読み、どのデータについて聞かれているのかを整理して候補を示す

一方で、次は人が決めます。いずれも間違えたときに取り返しがつかないか、外に対する自社の立場になるものです。

  • この国に置いてよいかどうかの可否——契約と社内の規則、そして扱う情報の種類に当てる作業で、一般論では決まらない
  • 条項の解釈——同じ文言でも、取引の実態によって意味が変わる。条文と実態の両方を知る人にしか判断できない
  • 公表する文言の確定——外に出した瞬間に、自社が説明した内容として固定される
  • 削除してよいか、いつ削除するかの決定——消した後に必要だったと分かっても戻せない
  • 取引先や監督官庁への回答の確定——回答がそのまま自社の立場になる

線を引く理由は、保存先が推定してはいけない事実だからです。設定画面を見ずに「このサービスは通常この地域に保存されます」と書かせれば、それらしい欄は埋まります。しかし、根拠を問われたときに示せるものがありません。空欄のほうが、推定で埋まった欄より安全です。分からない場所は不明と書き、不明と書かれたサービスは、扱う情報の段を1つ上げて第1段として扱う。この扱いだけ決めておけば、推定で埋める動機がなくなります。

台帳に持つ項目と、始め方の順番

最後に、実際に持つ台帳の形をまとめます。項目は増やすほど埋まらなくなるので、9つに絞ります。1行の単位はサービスではなく、サービスと業務の組にします。同じサービスでも、個人情報を扱う業務と社内の調べ物では答えが変わるためです。

  • サービスの名前と、契約している区分(試用か、法人向けの本契約か)
  • 置いておく場所——国名で書く。枠でしか指定できない場合は、枠の名前と、そこに含まれうる国の候補
  • その場で処理される場所——置いておく場所と同じとは限らないので、必ず別の欄にする
  • 指定の対象範囲——入力と出力のほかに、何が対象で何が対象外か
  • 保持期間——本文と記録で別に決まっている場合は、2つとも書く
  • 再委託先の一覧が掲示されている場所と、通知の受け取り先(部署の共有窓口)
  • 根拠——どの契約書の何条、どの画面のどの設定に基づく値か
  • 確認した日と確認した人——値が変わっていなくても、確認するたびに更新する
  • 公表している文言の版——本人の知り得る状態に置いている文章の、どの版と対応しているか

始め方の順番も決めておきます。全部のサービスを一度に洗い出そうとすると、洗い出しの途中で新しいサービスが増え、終わりが来ません。取引先から預かった資料を扱っている業務と、個人情報を含む業務の2つだけを対象に、9項目のうち「置いておく場所」「処理される場所」「根拠」「確認した日」の4欄から始めます。この4欄が埋まっていれば、外から聞かれたときに答えられる範囲が大きく変わります。

残りの欄と、対象の広げ方は、聞かれて答えられなかった経験が出てから足すほうが実態に合います。想定で作った欄は埋まりませんが、答えられずに困った欄は必ず埋まります。年に一度、外から来た質問の一覧を見返し、答えに詰まったものがあればその欄を足す。この順で育てれば、台帳は自社の取引の形に合っていきます。

まとめ

生成AIに入れた情報がどこの国に置かれるのかを答えられない状態は、記録の付け忘れではなく、保存先の国が自分で選ばなければ決まらない項目だからです。大手クラウド基盤の技術文書は、ほとんどの用途では世界のどこでも処理する区分から始めることを勧め、所在地などの特定の理由がある場合にのみ別の区分へ移る、と説明しています。国を固定する操作は、既定の道筋から意図的に外れる追加の作業として置かれています。

押さえるべき性質は2つです。1つは、置いておく場所と、その場で処理される場所が別に決まること。同じ文書には、保存されるデータは指定した地域に残るが、推論のデータは区分ごとに扱いが違うと明記されており、世界のどこでも処理する型、枠の中で処理する型、単一の地域に留める型の3段階があります。もう1つは、保存先が決まるのが契約の文言だけではなく、サービスの区分、管理画面の設定、再委託先の所在を加えた4か所だということ。契約書を読むだけでは2つの欄が埋まりません。

場面ごとに要点を並べ直します。契約するときは、指定できるかどうかではなく、いつの時点でしか指定できないかを聞く。国内保存に対応した提供元の例では、有効にできるのは新しく作業空間や案件を作るときに限られていました。聞かれたときは、置いておく場所と処理される場所を2列で答える。個人データを含むなら、事業者の所在国とサーバの所在国を明らかにし、特定できない場合は特定できない旨と理由を本人の知り得る状態に置く、という質疑応答集の整理が公表文の書き方を決めます。動いたかどうかは、再委託先の一覧、自社の設定画面、公表している文言の3つを四半期に一度突き合わせて確かめます。

全部を一度に整えようとすると始まりません。取引先から預かった資料を扱う業務と、個人情報を含む業務の2つに限って、置いておく場所、処理される場所、その根拠、確認した日の4欄から埋めてください。この4欄は、契約と設定を見れば今日でも埋められますが、聞かれてから集めようとすると数日かかります。保存先を固定するというのは、設定を1回選ぶことではなく、選んだ状態が続いていることを説明できるようにしておくことです。動くことを前提に、気づく経路を先に作っておく。それがこの作業の中身になります。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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