引用される調査リリースを作る5工程|設問から発表まで

引用される調査リリースを作る5工程|設問から発表まで

「調査結果を出したのに、どこにも取り上げられなかった」「他社の調査ばかり引用されて、うちの数字は誰も使ってくれない」——広報とマーケティングが同じ部屋にいる会社なら、年に一度は出てくる話です。取り上げられない調査に足りないのは、予算でも回答者の数でもありません。本当は、何を明らかにしたのかが1つの文で言えていないこと、そして、その1文に答えられる設問になっていないことです。引用する側は、母数と条件が書かれていない数字を本文に引けません。この記事では、設問を書き始める前に決めることから、発表したあとに数字が独り歩きしたときの直し方まで、5つの工程に沿ってまとめます。


カメ先生カメ先生

調査リリースって、アンケートを取って結果を並べれば記事になると思われがちなんだけど、本当は『他社が引用したくなる事実を1つ作る作業』なんだよ。


カメ子カメ子

引用したくなる事実というのは、珍しい数字ということですか。


カメ先生カメ先生

珍しさだけじゃないんだ。誰に聞いたのかがはっきりしていて、単位と母数が本文に書いてあって、そのまま1行で引ける形になっているかどうかでね。


カメ子カメ子

では、設問を書く前に決めておくことがある、ということでしょうか。


この記事のポイント
  • 取り上げられるかどうかは、回答者の数より、何を明らかにしたかが1文で言えるかで決まる
  • 言いたい結論から逆算して設問を作ると、引用された先で反証されて逆効果になる
  • AIは設問の叩き台と自由記述の下ごしらえに効く。言い切ってよい範囲を決める役は人が持つ

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目次

取り上げられる調査と、取り上げられない調査は何が違うのか

両者を分けるのは、調査そのものの精度ではありません。その数字を、誰かが自分の文章に引く理由があるかどうかです。媒体の担当者も、他社の資料を作る人も、自分が言いたいことの裏づけとして数字を探しています。裏づけになるには、条件がはっきりしていて、他に同じことを数えた資料がないことが要ります。

見るところ引用されない調査引用される調査
切り口満足度や認知度など、既に何度も測られているまだ誰も数えていない行動や条件を測っている
対象会社員、消費者といった広い括りのまま業種・規模・役割・直近の行動で絞られている
言い方全体的に高い、多くの人が、といった形容対象と母数を付けて1行で言い切れる形
時期実施から発表まで間が空いている読み手の関心と重なる時期に出ている
添え物図の中にしか数字がない本文に数字と母数と時期が揃っている

とくに効くのが切り口です。「自社製品への満足度」は、その会社にしか関係がないため引かれません。一方で「新しい取引先を決めるまでに、社内で何人の承認を通しているか」のような数字は、同じ悩みを持つ他社の資料に、そのまま根拠として置けるため引かれます。自社の宣伝になるかどうかではなく、他社の文章の役に立つかどうかが分かれ目です。

もう1つ、実務でよく抜けるのが引く側の手間です。図の中にしか数字がない資料は、引用するために図を作り直す必要があり、その時点で候補から外れます。本文に、数字・単位・母数・時期を1文で書いておく。この一手間だけで、引用される確率は目に見えて変わります。

時期については、運まかせにせず作りにいけます。読み手の関心が集まる時期は毎年おおむね決まっており、年度の切り替わり、決算の発表期、制度の改正が効き始める前後などがそれにあたります。その時期の何週間前に発表するかから逆算して、設問を配る日を決める。逆に、集計が終わった順に発表すると、最も読まれる時期を外します。年に1本しか出さないなら、この逆算だけで結果が変わります。

全体像:5つの工程と、戻れなくなる地点

調査から発表までは5つの工程に分かれます。重要なのは、途中に戻れなくなる地点があることです。設問を配ってしまえば、聞き忘れた項目は次回まで取り返せません。だからこそ、前半の3工程に時間を掛けます。

STEP1
何を明らかにするかを決める

1つの文にします。ここが決まらないうちは設問を書きません。戻れる工程ですが、飛ばすと後の全工程が揺れます。

STEP2
誰に聞くかを決める

対象の定義が、発表で名乗れる範囲をそのまま決めます。集め方も同時に決めます。

STEP3
設問を作る

目的の1文に答えない設問を落とし、誘導と二重の質問を潰します。少人数で試し読みをして直します。

STEP4
集めて確かめる

回収の途中で不自然な回答を見て、あらかじめ決めた基準で除外します。ここから先は設問を直せません。

STEP5
出す

同じ数字から、媒体向けと自社サイト向けを書き分けます。問い合わせを受ける窓口も同時に決めます。

この5工程のうち、AIが効くのは1・3・4・5の下ごしらえです。ただしどの工程でも、確定させる判断は人が持ちます。とくに「この定義で足りるか」「この言い方で言い過ぎていないか」は、AIが最も外しやすい部分です。

工程1:何を明らかにするかを、1つの文にする

最初にやるのは、テーマを決めることではなく、答えの形を決めることです。おすすめの型は「(誰)が(何を)するとき、(どんな条件)で(どうしているか)」です。たとえば「従業員300人以上の製造業で部材の購買に関わる人が、新しい取引先を選ぶとき、社内で何人の承認を通しているか」。この文が書けていれば、結果がどう出ても発表できる状態になっています。

この1文の良し悪しは、2つで判定できます。1つ目は、答えが出る前から結論が読めないこと。読めるなら、それは調べる価値がありません。2つ目は、答えが出たときに、自社以外の誰かが使う場面を想像できること。想像できないなら、社内資料で十分です。

AIを使うなら、ここが最初の出番です。テーマを渡してこの型の文を10通り書かせ、人が2つに絞る。AIは言い換えの幅を出すのが速く、人が思いつかない切り口を混ぜてきます。ただし、どれが面白いかの判断はできません。自社が答える必然性があるか、既に他社が数えていないかは、人が調べて決めます。

目的を「言いたいこと」から立てると、なぜ引用されないのか

最も多い失敗が、結論を先に置いてしまうことです。自社の商品が必要だと分かる数字が欲しい、という出発点から設計すると、設問がその方向へ傾きます。傾いた設問から出た数字は、引用された先で必ず設問を確かめられます。そして設問が公開されていれば、そこで反証されます。

この失敗は、発表の前には気づけません。社内では全員が結論に納得しており、設問の傾きが見えないからです。防ぐ方法は1つで、設計の段階で「自社に不利な結果が出ても、この調査を発表するか」を関係者に確認しておくこと。発表しないと決まるなら、それは調査ではなく資料作りです。

  • 自社製品の必要性が高く出る設問を、先に決めてから対象を選ぶ
  • 前置きで課題の深刻さを説明してから、その課題を感じるかを聞く
  • 望ましくない選択肢を、選びにくい位置や言い回しで置く
  • 結果が思わしくなかった設問だけを、発表から外す
  • 複数回の調査から、都合のよい回だけを使う

最後の2つは、集計が終わってから起きます。だからこそ、発表する設問を、集計を見る前に決めておく。この順番を守るだけで、後から言い訳の要る資料にならずに済みます。

工程2:誰に聞くかを決める。対象の定義が、名乗れる範囲を決める

対象の定義は、3つの層で書きます。所属(業種・従業員規模・地域)、役割(職種・その業務への関与の度合い)、条件(直近1年でその行動をしたか)。この3つが揃って初めて、発表で「誰に聞いたのか」を1行で書けます。

定義が広いほど、結論の言い方は弱くなります。「会社員」に聞いた結果は、そのまま「会社員の傾向」としては使いにくく、引用する側も扱いに困ります。逆に定義を絞ると、集めるのは大変になりますが、言い切れる範囲が明確になり、引用されやすくなります。絞る手間と、引かれやすさは交換の関係にあります。

集め方によっても名乗り方が変わります。自社の顧客名簿だけに配ったなら、発表では「自社サービスの利用者のうち」と書くのが正確です。これを「業界全体」と書き換えた瞬間に、その調査は使えないものになります。AIには、書いた定義文に対して誰が含まれ、誰が外れるかを列挙させると、抜けが早く見つかります。ただし、この定義で目的の1文に答えられるかの判断は人が持ちます。

工程3:設問を作る。誘導しない、二重に聞かない

設問の作法は数多くありますが、発表を前提にするなら押さえるべきは3つです。1つ目は誘導しないこと。前置きで結論を示さない、片方の立場だけの選択肢を並べない。「業務効率の悪化が問題になっていますが、あなたの職場でも感じますか」は、前半が答えを作っています。

2つ目は一度に2つ聞かないこと。「価格と納期に満足していますか」は、価格に不満で納期に満足している人が答えられません。この形は集計してから気づくことが多く、しかも直せません。設問を読み上げて、接続助詞の「と」「や」が入っていたら分けられないかを疑います。

3つ目は前提を押し付けないこと。「導入していない理由を教えてください」と聞く前に、導入の有無を聞きます。前提を含む設問は、当てはまらない人に無理な回答をさせ、その回答が集計に混ざります。書き直しの例を並べておきます。

設問の書き直し例
  1. 「業務の負担が増えていますが、負担を感じますか」→「この1年で、この業務にかける時間は増えましたか、減りましたか、変わりませんか」(前置きを外し、増減を対称に置く)
  2. 「価格と納期に満足していますか」→「価格への評価」と「納期への評価」の2問に分ける(一度に2つ聞かない)
  3. 「導入していない理由は何ですか」→ まず導入の有無を聞き、いいえと答えた人にだけ理由を聞く(前提を押し付けない)
  4. 「この機能は便利だと思いますか」→「この機能を直近1年で使いましたか」と聞き、使った人にだけ頻度と評価を聞く(意見ではなく行動を聞く)
  5. 「あなたの会社では、どのくらい変革が進んでいますか」→ 受け取り方が分かれる言葉を避け、導入している仕組みの数や、着手した業務を選ばせる

最後の例は、設問というより言葉の問題です。受け取り方が人によって違う言葉を、設問に置かない。同じ語を別の意味で受け取った回答が混ざると、集計しても結局のところ何を測ったのかを説明できなくなります。社内で当たり前に使っている言葉ほど、この危険があります。設問を配る前に、社外の人に読ませて意味が一通りに決まるかを確かめておくと、後から気づいて青くなる事態を避けられます。

選択肢の作り方と、「その他」「わからない」の置き方

選択肢で見るのは3点です。抜けがないか(当てはまらない人が答えられるか)、重なっていないか(2つ選びたくなる選択肢がないか)、並び順の影響を減らしているか。並び順は答えを動かすため、順番を入れ替えて配るのが基本です。入れ替えができない場合は、発表の資料に順番を固定した旨を書きます。

「その他」の扱いは、設計の答え合わせになります。「その他」に回答が集まったら、選択肢の設計が外れていた合図です。この場合、発表では「その他」を1行で済ませず、自由記述の中身を分類して出します。隠すと、読んだ人はそこに何があったのかを疑います。

「わからない」「該当しない」を消したくなる場面がありますが、消すと分からない人が適当に選び、その回答が数字を押し上げます。答えられない人に、答えられないと言わせる選択肢を残す。この1つがあるかどうかで、発表後に指摘される確率が変わります。

設問の叩き台をAIに作らせる。ただし、そのまま使わない

設問づくりでAIが効くのは、量を出す部分と、機械的な検査の部分です。目的の1文と対象の定義を渡して設問案を20問ほど出させ、人が5問から8問に削る。この削る作業が設計の本体で、AIには任せられません。削る基準は1つで、目的の1文に答えない設問は落とすことです。

AIに向いている検査は3つあります。一度に2つ聞いている設問の指摘、選択肢の抜けと重なりの洗い出し、言い回しの整えです。いずれも規則で判定できるため、人より速く網羅します。指摘させるときは、どの語がなぜ問題なのかを併記させると、採否をその場で判断できます。

一方でAIが外すのは、誘導かどうかの最終判断です。頼めば誘導的な設問も自然な日本語で書いてきますし、こちらが望む結論を伝えれば、そこへ寄せた設問を作ります。設問が結論を作っていないかを見るのは、人の役割として最後まで残ります。加えて、社内の5人ほどに実際に答えてもらい、詰まった設問と読み返した設問を直す。この試し読みは、どんな検査より確実です。

工程4:集めて確かめる。除外の基準は、集める前に決める

回収が始まったら、途中で回答の質を見ます。見る項目は決まっていて、回答にかかった時間が極端に短いもの、すべての設問で同じ位置の選択肢を選んでいるもの、自由記述が設問と噛み合っていないものです。これらは集計をゆがめます。

ここで決定的に重要なのが順番です。除外の基準は、回収を始める前に文章にしておきます。集計を見てから基準を決めると、都合のよい方向に線が動きます。基準を先に書いておけば、発表のときに「どういう回答を除いたか」をそのまま説明できます。除外した件数も、発表に書ける材料になります。

自由記述の下ごしらえには生成AIが効きます。傾向の当たりをつける、似た内容をまとめる、代表的な言い回しを拾う。ここで守るのは2つだけです。分類の名前は先に人が決めることと、原文を必ず残すこと。AIに分類名から作らせると、発表で使えない粒度の名前が並びます。なお、自由記述の分類そのものをどこまで機械に任せてよいかは別の主題なので、ここでは発表に必要な範囲に留めます。

集計そのものの手順も、この工程で確定させます。数え方は表計算で固定し、割合の分母がどの設問の回答者なのかを設問ごとに書き添える。端数の丸め方も先に決めます。分母が設問ごとに変わる調査ほど、発表後に食い違いを指摘されるためです。全体を分母にした割合と、その設問に答えた人だけを分母にした割合が混在していると、読んだ人は足し算が合わないことに気づきます。集計表は、発表の直前ではなく、この時点で固定して保存しておきます。

母数と回収数の書き方。言い切ってよい範囲と、いけない範囲

発表に必ず書く項目は5つです。調査主体(誰が調べたか)、調査の方法(どうやって聞いたか)、対象の定義(誰に聞いたか)、調査の期間(いつ聞いたか)、有効回答数(何件を集計したか)。この5つが揃っていない資料は、引用する側が出典を書けないため使われません。

そのうえで、言い方の線を引きます。ここを間違えると、正しく取った調査でも信用を落とします。

書き方この調査で言えるか理由
回答した購買担当者のうち、およそ半数が言える対象と母数が付いている
製造業のおよそ半数が言えない聞いた相手の範囲を超えている
前年より増えている言えない同じ設問で前に測っていない
選ばれた理由で最も多かったのは言える用意した選択肢の中での比較にとどまる
業界で一番選ばれている言えないこの形の表示には別の要件が要る

表の最後の行について補足します。「一番」「最も選ばれている」といった言い切りには、調査の要件が別に定められています。この記事では踏み込みませんが、調査を根拠にその種の表示をするなら、要件を確認してからにするという線だけは引いておいてください。要件を満たさない言い切りは、調査そのものの信用を巻き込んで壊します。

そして、ここがAIに任せてはいけない場所です。文章を整えさせると、AIは言い切る方向に寄せてきます。「〜の傾向がうかがえます」を「〜であることが明らかになりました」に直してくるのが典型です。留保をつける役は人が持つ、と決めておきます。

工程5:出す。同じ数字から、媒体向けと記事版を書き分ける

発表物は2種類あります。媒体向けの発表資料と、自社サイトに置く記事版です。同じ数字から作りますが、載せるものが違います。媒体向けは、1つの事実を見出しに置き、根拠の図を1枚、調査概要、問い合わせ先まで。読み手は忙しく、2つ目の事実に目は届きません。

記事版は、全設問の結果と、設計の意図と、この調査で言えない範囲まで書きます。ここが厚いほど、引用しようとした人が安心して使えます。設問の全文を載せておくと、疑問を持った人がその場で確認でき、問い合わせの手間も減ります。

書き分けにAIを使うときの作法は1つです。数字と母数を確定させてから渡すこと。集計は表計算で確定し、AIには文章の構成と言い回しだけを任せます。数字の計算をAIにさせると、桁や母数が静かに入れ替わることがあり、それを発表後に見つけるのは最悪の順番です。渡した数字以外を書かせない、と指示に明記します。

引用されやすい形に整える。単位・母数・図

引用のされやすさは、細かい書き方で決まります。まず単位を必ず書くこと。人・社・件・日は、書いていないと読み手が推測します。次に数字を本文にも書くこと。図の中にしかない数字は、引用の手間が増えて避けられます。

図は1枚に1つのことだけを載せます。凡例を読まないと意味が取れない図、系列が5本以上ある図は引かれません。表題には条件を入れます。「承認者の人数」ではなく「新しい取引先を決めるときに通す承認者の人数(購買に関わる担当者)」と書けば、切り出されても意味が崩れません。

あわせて、使ってよい条件を1行で示しておきます。出典としてどう書いてほしいか、図をそのまま使ってよいか、加工してよいか。この1行があるだけで、問い合わせずに引用してよいと分かるため、引用の件数が増えます。連絡してから使う相手ばかりを想定していると、そもそも候補から外されます。

図の作りにも、引かれるかどうかを分ける細部があります。色は3色までに抑え、白黒で刷っても違いが分かるように濃さで差をつける。棒の並びは、選択肢の順ではなく多い順にする。数字は棒の中ではなく外側に置き、母数を図の隅に入れておく。これだけで、その図をそのまま自社の資料に貼れる状態になります。凝った装飾は、引用する側にとっては貼りにくさでしかありません。

発表の段取り:時期・届け先・窓口・追加の質問への備え

時期は、調査の鮮度で決まります。実施から発表までが空くほど、読み手にとっての価値は落ちます。集計が終わってから発表物を作り始めると、そこで数週間が消えます。発表資料の骨組みは、回収と並行して作っておきます。

届け先は、その数字を必要としている人が誰かで決めます。業界の専門媒体か、経営層が読む媒体か、同じ課題を扱う他社か。全方位に配るより、1行で言える事実が刺さる相手を3つ選ぶほうが結果が出ます。ここは媒体の一覧を眺めるより、その数字を自分の文章に使う人を想像するほうが早く決まります。

そして窓口です。問い合わせを受ける担当と、その担当が答えられる範囲を先に決めます。答えられる範囲とは、設問の全文、単純集計の一覧、除外の基準、対象の集め方。この4点を、聞かれたらその日のうちに出せる形にしておきます。備えとして、AIに記者の立場で想定質問を20問出させておくと有効です。答えられない質問が残ったら、それは設計の穴なので、発表前に埋めます。

発表したあとに何を見るかも、出す前に決めておきます。見るのは3つで、他社の資料や記事に引かれた件数、調査に関する問い合わせの件数と中身、図や数字を使わせてほしいという依頼の件数です。閲覧数だけを見ていると、誰にも引かれないまま数字だけ伸びた回を成功と読み違えます。引かれた文章を集めておくと、次の回でどの切り口が使われたのかが分かり、設問の絞り込みが速くなります。

発表前の確認項目一覧

発表の直前に通すための一覧です。ここまでの工程で決めたことが、実際に発表物に書かれているかを見ます。1つでも欠けていると、引用する側の手が止まります。

  • 目的の1文が、発表資料の中に書かれているか
  • 対象の定義が、所属・役割・条件の3層で書かれているか
  • 調査主体・調査方法・調査期間・有効回答数が本文にあるか
  • 対象を超えた主語(業界全体、日本の企業など)を使っていないか
  • 1回の調査で、増えた・減ったと書いていないか
  • 数字が本文にも書かれているか(図の中だけになっていないか)
  • 単位が全ての数字に付いているか
  • 除外した回答の基準と件数を説明できるか
  • 設問の全文を、聞かれたらすぐ出せるか
  • 「その他」が多い設問について、中身を出しているか
  • 図の表題に、条件が入っているか
  • 引用してよい条件が1行で書かれているか
  • 問い合わせの窓口と、答えられる範囲が決まっているか
  • AIが整えた文章を、留保の強さの観点で人が読み直したか
  • この一覧は、発表の当日ではなく前週に通す。当日に見つかった不足は直せない
  • 確認する人は、設問を作った本人以外を1人入れる。作った本人は誘導に気づけない

引用されたあとの扱いと、数字が独り歩きしたときの直し方

発表して終わりではありません。引用され始めると、数字は少しずつ形を変えます。よくある変わり方は3つで、条件が落ちる(「購買に関わる担当者の」が消える)、母数が落ちる(何人に聞いたのかが書かれなくなる)、主語が大きくなる(「製造業の」が「日本の企業の」に変わる)です。

直し方には順番があります。まず、自社サイトの記事版を原典として整え、そこを指せる状態にしておく。そのうえで、条件が落ちた引用を見つけたら、訂正を求めるのではなく、正しい1行を用意して差し替えを依頼する。相手にとっては書き直しの手間が減るため、応じてもらいやすくなります。

それでも直らない引用は残ります。そのときは、自社の資料の側で条件を繰り返し書き続けるしかありません。なお、同じ調査を毎年続けて定点にするなら、設問を変えないことが絶対条件です。選択肢を1つ足しただけで、前年との比較はできなくなります。定点にすると決めた時点で、設問は動かせない資産になります。動かせないのは設問だけではありません。対象の定義と、回答者の集め方も同じです。設問がそのままでも、聞く相手や集め方が変われば前年との比較にはならず、そこで初めて「増えている」と書いてしまうと、これまでの回の信用まで巻き込んで崩れます。定点にするなら、変えてよい部分と変えない部分を最初の回に書き残しておきます。

AIに任せる範囲と、任せない範囲を先に決める

最後に、この一連の作業でAIをどう使うかを整理します。任せてよいのは下ごしらえです。目的の1文の候補出し、設問の叩き台、二重の質問や選択肢の抜けの検査、自由記述の分類の下準備、想定質問の作成、媒体向けと記事版の書き分け。どれも、人が判断する前の材料を作る作業です。

任せてはいけないのは判断です。この母数で言い切ってよいか、この設問は誘導になっていないか、この言い方は強すぎないか、この結果を発表してよいか。いずれもAIは答えを返しますが、その答えは根拠を持ちません。むしろ、頼まれた方向に寄せた答えを返してきます。

運用として置くべき決めごとは3つです。1つ目は、AIの出力にはどの設問のどの数字から言っているのかを必ず併記させること。根拠が書けない主張は、その場で落とせます。2つ目は、人が確認する範囲を、作業を始める前に決めておくこと。誰が設問を見て、誰が数字を照合し、誰が言い切りの強さを見るかを、名前で決めます。3つ目は、確認する人を設問の作成者と分けることです。作った本人には、自分が仕込んだ前提が見えません。

まとめ

引用される調査リリースは、珍しい数字を引き当てて作るものではありません。何を明らかにするかを1つの文にし、誰に聞くかを3層で定義し、目的に答えない設問を落とし、除外の基準を先に決め、対象を超えない言い方で発表する。この5工程を順に踏むと、結果がどう出ても発表できる調査になり、他社が安心して引ける数字になります。

生成AIは、この工程の下ごしらえを確実に速くします。設問の候補を並べ、二重の質問を見つけ、自由記述を整理し、想定質問を出す。ただし、母数で言い切れるかを決める役と、留保をつける役は人が持ちます。AIは言い切る方向へ寄せる性質があり、そこを見張る人がいない調査は、発表した瞬間ではなく引用された先で壊れます。確認する範囲を先に決め、根拠を書かせ、判断は人がする。順番はそれだけです。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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