BtoBのECは新規開拓の道具ではない|既存取引の受注を軽くする

「注文をオンラインで受けられるようにしたい、と言われたのですが、うちの製品は通販向きではありません」「取引先はほとんど昔からの会社です。いまさら画面を作ったところで、新しい客が来るとは思えません」——受発注を電子に移す話が出ると、必ず返ってくる言葉です。ここには一つ、取り違えがあります。企業間の取引で注文を画面から入れてもらう仕組みは、新しい取引先を集めるための売り場ではありません。本当は、すでに取引のある相手から届く注文を、受け取る手間ごと軽くするための受注業務の道具です。この記事では、いまの受注業務のどこで時間が消えているのかを分解したうえで、移す形の選び方と、移す前に決めておく項目を整理します。
カメ先生企業間の受発注を電子に移す話ってね、新しいお客さんを集める話だと思われがちなんだけど、本当は『いま来ている注文を、どう受け取るか』の話なんだ。
カメ子新規開拓のためではないんですか。
カメ先生うん。注文そのものは前から来ている。変わるのは受け取り方だけでね。電話やファクシミリで受けて人が打ち直していたところが、そのまま届くようになる。
カメ子受け取り方を変えるだけで、そんなに違うものでしょうか。
- 企業間の受発注を電子に移す目的は新規開拓ではなく、既存取引の受注にかかる手間を減らすこと
- 移す形は3つあり、取引先の数と発注量の偏り方で、選ぶべき形が変わる
- AIは注文を読み取って起票の下書きを作るところまで。値引き・与信・納期の確約は人が出す
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「オンラインで注文を受ける」を、通販の話と取り違えていないか
受発注の電子化が通販の話に聞こえてしまうのは、身近な例が消費者向けの通販しかないからです。消費者向けの通販は、知らない相手に見つけてもらい、比べてもらい、買ってもらう仕組みです。だから商品の見せ方や検索のされ方が中心になります。一方、企業間の受注の画面に来るのは、ほとんどが取引口座を持っている既存の取引先の購買担当者です。相手は誰か決まっていて、買う品目も決まっていて、価格も決まっている。集める必要がありません。
この違いは評価のしかたに直結します。新規の問い合わせ件数や訪問者数といった集客の指標で受注の画面を評価すると、数字は必ず伸びず、半年で「効果がなかった」という結論になります。見るべきは受注1件あたりにかかっている手間が減ったかどうかです。同じ注文を、より少ない手数で受け取れているか。指標を取り違えると、正しく動いている仕組みまで止めてしまいます。
画面の作りも変わります。消費者向けなら商品の一覧から探させる形が自然ですが、企業間の受注では、前回と同じ品目をそのまま繰り返し注文できることのほうが重要です。購買担当者が毎月同じ十数品目を頼んでいるなら、その十数品目が最初の画面に並んでいて、数量だけ変えれば送れる。探させない設計が、そのまま手間の削減になります。
数字で見る現在地:企業間の商取引は4割超が電子で動いている
経済産業省が2025年8月26日に公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の日本国内の企業間の電子商取引の市場規模は514.4兆円で、前年の465.2兆円から10.6%増えました。企業間の商取引全体に対する電子化の割合、いわゆるEC化率は43.1%で、前年より3.1ポイント上がっています。この調査は1998年度から毎年行われており、今回で27回目です。
同じ調査で、消費者向けの電子商取引の市場規模は26.1兆円、EC化率は9.8%でした。規模でも比率でも、企業間の取引のほうがはるかに大きく、はるかに電子化が進んでいます。受発注を電子に移すことは、消費者向け通販の後追いではありません。むしろ企業間の取引のほうが先に動いてきた領域だ、と捉えたほうが実態に近いのです。
ただし、この43.1%の読み方には注意が要ります。この調査でいうEC化率は、報告のとおり「全ての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合」であって、金額に対する比率であり、注文の件数に対する比率ではありません。発注額の大きい取引先とのやり取りが電子に乗っているだけで、小口の注文は電話とファクシミリのまま、という状態はごく普通に起こります。自社の現在地は、金額ではなく件数で数え直したほうが実態が見えます。
受注業務は5つの手に分かれる。時間はどこで消えているか
「受注に時間がかかる」と言うとき、その中身はたいてい5つの動作に分かれます。受け取る、読む、起票する、確かめる、返す。この5つを分けずに「受注業務」とひとまとめにしているうちは、どこを電子に移せば効くのかが決まりません。
- 受け取る:電話・ファクシミリ・メールの本文や添付として注文が届く
- 読む:どの品目を、いくつ、いつまでに欲しいのかを人が読み取る
- 起票する:読み取った内容を受注のシステムに入力する
- 確かめる:品名や数量に不明点があれば取引先に問い合わせて確認する
- 返す:受注した旨と納期を取引先に返信する
実際に手元で計ってみると、時間が消えているのは「受け取る」ではなく「読む」と「確かめる」であることがほとんどです。注文の書式が取引先ごとに違い、品名が正式な型番ではなく現場の略称で書かれ、数量の単位が箱なのかバラなのか読み取れず、納期の欄に「なるはや」とだけ書かれている。この一つひとつが、電話をかけ直す理由になります。
「確かめる」が発生する原因を分けて記録すると、意外なことが見えてきます。取引先の書き方が悪いから確認しているのではなく、自社の側に判断材料がないから確認している件が相当数を占めるのです。旧型番と現行品の対応が担当者の頭の中にしかない、同じ品目に営業と物流で違う呼び名を使っている、単位の換算が品目一覧に書かれていない。この種の確認は、相手を変えなくても自社の中で消せます。
だから、まずは1週間でよいので、受注担当者の手元で1件あたりの所要時間と、確認の電話をかけた回数を記録してください。移す前の数字がないと、移した後に何が良くなったのかを誰も説明できません。この記録は、後で取引先に協力を求めるときの材料にもなります。
画面から入れてもらう形は3つある
注文を画面から入れてもらう形は、大きく3つに分かれます。1つ目は自社で受注の画面を持つ形です。取引先に入り口を渡し、自社の品目一覧から選んで数量を入れてもらいます。取引先が多く、規模もばらばらなときに向きます。
2つ目は取引先の購買の仕組みにつなぐ形です。大手の取引先は自社の購買システムを持っていて、そこから発注データを出したいと考えています。そのデータを決まった形式で直接受け取れるようにすると、相手は画面を開く必要すらなくなります。ただし、形式の取り決めと接続の作業が取引先ごとに発生するため、数を捌く形ではありません。
3つ目は間に立つ場を使う形です。業界ごとの共同の受発注の場や、卸の運営する取引の場に自社の品目を載せ、そこ経由で注文を受けます。自前で作らずに済む代わりに、載せられる情報や手数料の条件は場の側が決めます。実務では、この3つは択一ではありません。大口の数社は2つ目、残りは1つ目、特定の商材だけ3つ目、という併存が普通の姿です。
3つの形をどう選ぶか
| 形 | 向く相手 | 自社の負担 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 自社で受注の画面を持つ | 取引先の数が多く、1社あたりの発注が小口 | 画面の用意と、品目・単価の整備 | 取引先に使ってもらえず、電話に戻る |
| 取引先の購買の仕組みにつなぐ | 発注量の大きい少数の取引先 | 取引先ごとの形式合わせと接続の作業 | 1社ごとに作り込みが必要で横に広がらない |
| 間に立つ場を使う | 業界内で共通の商材を扱う取引先 | 掲載する情報の整備と手数料 | 載せられる項目や価格の出し方を自社で決められない |
選び方の判断軸は一つです。発注件数がどれくらい偏っているか。直近1年の受注データを取引先ごとに並べて、件数の多い順に累計を取ってみてください。上位数社で件数の半分以上を占めるなら、その数社を取引先の購買の仕組みにつなぐほうが、全体の手間はいちばん速く減ります。
逆に、件数が薄く広く散っているなら、少数を作り込んでも全体は変わりません。この場合は自社で受注の画面を持ち、取引先が自分で入り口を通れる形にしておくほうが効きます。どちらか迷うときは、件数ではなく「確認の電話をかけた回数」で並べ直すと、本当に手間を食っている相手が浮かび上がります。
取引先が「電話のほうが早い」と言うとき、何が起きているか
この言葉を、変化を嫌う気持ちの表れだと受け取ると、進め方を間違えます。相手は正確な事実を述べています。電話なら受話器を上げて用件を言えば終わりますが、画面からの注文は、画面を開き、入り口を通り、品目を探し、数量を入れ、確定を押す、という手順に分かれます。発注する側の手間は、多くの場合むしろ増えます。減るのは受け取る側、つまり自社の手間です。
もう一つ、電話には注文以外の役割があります。在庫はあるか、明日着くか、この品番でよかったか。購買担当者は注文しながら相談しているのです。注文しか受け付けない画面は、この相談の行き先を奪います。だから在庫の状況と、標準的な納期が画面に出ていない受注の仕組みは、ほぼ確実に使われなくなります。少なくとも「在庫あり/要問い合わせ」の二段階と、通常の出荷日数は出しておくべきです。
そして、発注側の手間が増える以上、増えた分に見合う何かを返す必要があります。過去の注文履歴から同じ内容を再送できること、注文した内容がその場で控えとして残ること、締め時間までなら訂正できること。こうした「発注側にとっての得」を一つも用意せずに移行を頼むと、協力は得られません。
乗せる順番を決める
全取引先に一斉に案内を送るのは、いちばんうまくいかない進め方です。案内を受け取った側は、誰も先に動きません。順番は発注件数の多い取引先からです。効果が大きいうえに、発注量の多い会社ほど購買の担当者が固定されており、手順を変える判断ができるからです。
同時に決めておくのが、紙や電話での受付をいつまで併走させるかです。期限を切らないと、併走は永久に続きます。併走期間は決めたうえで、止める日は少なくとも1か月前に、担当者の名前を添えて通知します。通知なしで止めると、その日のうちに注文が止まり、信用を失います。
直近1年の受注データを取引先ごとに件数で並べ、上位5社を選びます。金額ではなく件数で選ぶのは、手間は件数に比例するからです。
直近3か月分の注文書を実際に並べ、使われている品名の書き方、数量の単位、納期の書き方を洗い出します。ここで出た表記が、そのまま移行の作業対象になります。
最初の1社には、電話での受付を残したまま試してもらいます。どこで手が止まったかを聞き取り、画面の側を直します。相手を直そうとしない、が原則です。
1社目で詰まった箇所を直してから、残りに広げます。併走期間と、紙での受付を止める日を明記した通知を出し、期日までに移れない相手には個別に事情を聞きます。
価格を画面にどこまで出すか
企業間の取引では、同じ品目でも取引先ごとに単価が違うのが前提です。したがって受注の画面に価格を出すなら、その取引先に適用される単価だけが見える形にしなければなりません。全社共通の定価だけを出すと、実際の請求額と食い違い、かえって問い合わせが増えます。
出さないという選択も十分に成り立ちます。単価が社内でも品目ごとに確定していない、数量によって階段状に変わる、原材料の相場に連動する。こうした事情があるなら、価格は出さずに数量と納期だけを受け付け、金額は受注の返信で示すほうが安全です。出せないものを無理に出そうとして移行が止まる例は少なくありません。
- 単価を出すなら、その取引先の誰が見られるのかを先に決める(購買以外の部署にも見えてよいか)
- 単価の改定日と、改定前の注文をどちらの単価で処理するかを決めておく
- 過去の注文履歴に残る単価を、改定後にさかのぼって書き換えないこと(控えとして機能しなくなる)
見積が要る注文には、別の流れを用意する
すべての注文を画面で完結させようとすると、必ず行き詰まります。特注品、大口の値引き交渉、納期の相談。これらは画面の中では決まりません。だから最初から、見積が要る注文は別の流れに逃がす設計にします。
具体的には、画面から「見積の依頼」として受け付け、回答は人が作って返します。このとき大事なのは、回答した見積を、そのまま注文に変えられるようにしておくことです。見積の番号を注文の画面に入れれば内容が呼び出せる、という程度で構いません。ここが切れていると、見積の後は結局メールと電話に戻り、画面を通る注文が育ちません。
逆に、見積の依頼まで人が受けている必要はありません。品目、数量、希望納期、届け先という定型の項目だけでも画面で受け取れれば、営業が電話で聞き取っていた時間はそのまま浮きます。ここは移行の初期でも効果が出やすい部分です。
移す前に決めておく項目の一覧
受注を画面に移す作業の大半は、画面を作ることではなく、これまで人の判断で吸収していた曖昧さを、あらかじめ決めておくことです。決めずに始めると、曖昧さは注文データの誤りとして表に出ます。次の項目は、着手前に紙1枚にまとめておいてください。
- 品目の粒度:色違い・サイズ違いを別の品目とするか、1つの品目の選択肢とするか
- 単位:注文の数量が箱なのか、バラなのか、メートルなのかを品目ごとに1つに固定する
- 最小発注数量と発注の刻み:1本から受けるのか、10本単位なのか
- 締め時間:何時までの注文を当日扱いにするか。土日と祝日の扱い
- 欠品時の扱い:欠品分を落として出すのか、全量を止めるのか、取引先に選ばせるのか
- 訂正と取消の作法:いつまで、誰が、どの操作でできるか。取消の記録を残すか
- 納期の示し方:確定日を出すのか、標準的な出荷日数を出すのか
- 注文番号:自社の番号と、取引先側の発注番号の両方を記録するか
- 承認:取引先の側で上長の承認が必要な注文があるか。あるなら画面のどこで止めるか
この中でとくに事故が多いのが単位です。数量の欄に「10」とだけ入った注文が、10箱なのか10本なのかは、画面の側で単位を固定していない限り決まりません。単位は品目ごとに1つに決め、画面に文字で表示する。これだけで確認の電話は目に見えて減ります。決めた内容は取引先にも同じ1枚で渡してください。自社の中だけで決めても、相手の理解が違えば意味がありません。
AIに任せるのは、読み取って起票の下書きを作るところまで
全取引先が画面に移るまでには時間がかかります。その間も注文はメールの本文や添付の表、ファクシミリで届き続けます。ここでAIが効きます。注文の本文や添付から、品名・数量・納期・届け先を読み取り、起票の下書きを作る。読み取りの対象は決まった書式ではないので、定型の帳票しか処理できない仕組みより融通が利きます。
ただし、読み取らせるときは必ずどの行のどの文字から拾ったのかという根拠を一緒に出させます。数値だけが並んだ結果は、正しく見えるかどうかしか判断できません。根拠が並んでいれば、担当者は原文と見比べて数秒で誤りを見つけられます。そして、下書きはあくまで下書きです。人が承認してから受注のシステムに起票する、という順番は崩さないでください。
この使い方には、移行を進める副次的な効果もあります。読み取りにかかった手間と、修正が必要だった件数を取引先ごとに記録しておくと、「どの取引先を先に画面へ移すべきか」の根拠になります。読み取りにくい書式で送ってくる相手ほど、移行の効果が大きい相手です。
取引先ごとに違う品名の書き方を、自社の品目に寄せる
受注の現場でいちばん時間を食っているのが、品名の突き合わせです。取引先は自社の型番をそのまま書いてくれるとは限りません。現場の略称、旧製品の名前、枝番を省いた表記、全角と半角の混在。これを自社の品目に寄せる作業は、人がやると1件ずつ調べ直すことになります。AIには、この表記のゆれを自社の品目候補に寄せる役を任せられます。
注意すべきは、寄せた結果をそのまま通さないことです。似た型番の取り違えは、受注業務の中でいちばん高くつく誤りです。出荷してから発覚し、返送と再出荷の費用が発生します。だから確からしさが低い候補は起票せず、人の確認に回す、という線を数字で決めておきます。候補を1つに絞れなかったときも同じです。
そして、人が確認して確定した対応関係は、必ず控えとして残してください。「A社の『ステンレス小』は当社の品目のこれ」という対応が1度確定すれば、次からは迷いません。この控えが増えるほど人の確認は減ります。AIの読み取り精度そのものを追いかけるより、確定した対応を積むほうが実務では速く効きます。
AIに判断させない線を、先に引いておく
受注の周りには、AIに出させてはいけない答えがはっきりあります。値引き、与信、納期の確約の3つです。値引きは権限の問題であり、与信は取引の可否そのもの、納期の確約は約束です。読み取った内容の下書きと、これらの判断はまったく別の行為だと切り分けてください。
受注の確定を人の手に残すという線引きは、公的な指針の考え方とも重なります。総務省と経済産業省が2026年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン」第1.2版は、AIだけで決めさせずに適切なところで人の判断を挟む使い方を検討すること、そのときに人の判断が自動化バイアスに引きずられないための手当てを講じるべきことを挙げています。同ガイドラインはこの語を、判断や意思決定のときに自動化された仕組みを信じすぎたり頼りすぎたりする状態として説明しています。画面に出た数量をそのまま通してしまう場面が、これに当たります。
同じガイドラインには、承認する側の心得も書かれています。AIの評価や判断を人間が承認する際には、人間自身が承認する理由や根拠を独自に考えてから承認すべきである、という趣旨です。これを受注の実務に落とすと、承認の画面には結果だけでなく根拠が並んでいる必要がある、ということになります。押すだけの承認は、承認ではありません。
電子で受け取った注文書は、電子のまま残す義務がある
受発注を電子に移すと「新しく重くなること」があります。その代表が保存です。国税庁の説明によれば、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する電子取引データを受領または交付した場合、そのデータの電子保存が義務付けられています。令和5年12月31日までに行う電子取引については、印刷して保存し提示できればよいとされていましたが、令和6年からは保存要件に従って電子データのまま保存する必要があります。
原則の保存ルールは3つです。1つ目は改ざん防止のための措置。タイムスタンプが付与されたデータを受領する、受領したデータにタイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステムで授受・保存する、改ざん防止のための事務処理規程を策定して運用し備え付ける、のいずれかです。2つ目は、データを確認するためのディスプレイやプリンタ等を備え付けること。3つ目は、日付・金額・取引先の3つの要素で検索できることです。
負担を軽くする仕組みも用意されています。3つ目の検索の要件は、表計算ソフトで索引簿を作る方法や、日付・金額・取引先の順に規則性をもたせたファイル名で特定のフォルダに集約する方法でも満たせます。また、基準期間である2年前の売上高が5,000万円以下の場合などは、税務調査等でダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索の要件を満たす必要がありません。さらに、原則のルールへの対応が間に合わないことについて所轄税務署長が相当の理由があると認め、ダウンロードの求めと印刷した書面の提示・提出の求めの両方に応じられる場合は、データを保存しておくだけでよいとされています。この猶予措置に事前の届出は不要で、人手不足や資金不足も相当の理由として認められます。
さらに先の話として、国税庁が2025年4月に公表した令和7年度税制改正の概要によれば、請求書等のデジタルデータを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が電子帳簿保存法に新設されました。訂正削除の履歴が残る仕組みで送受信・保存すること、金額を訂正削除したうえで帳簿に記録できないようにすること、データと帳簿の相互の関連を確認できるようにすることなどの要件を満たすと、そのデータに関連する隠蔽・仮装行為について重加算税の10%加重の対象から除かれ、青色申告特別控除の65万円が適用できるとされています。適用は重加算税の側が令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から、青色申告特別控除は令和9年分以後の所得税からで、国税庁長官が定める基準に適合する仕組みの使用と、あらかじめの届出が必要です。対象となるデータは、デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイスか、預貯金口座における決済データに限られるため、受発注そのものが直ちに対象になるわけではありません。ただ、取引から帳簿までを人の入力を介さずにつなぐ方向に制度が動いていることは、受注を電子に移す判断の追い風になります。
効果の測り方と、続かなかったときの戻し方
測る数字は3つで足ります。受注1件あたりの手間、訂正の件数、受注に関する電話の本数。いずれも移す前に測っておかないと比較できません。移行の準備期間のうち2週間を使って、この3つを取引先ごとに記録してください。移した後は、同じ2週間の長さで測り直します。
見方には癖があります。移行の直後は、訂正の件数がいったん増えます。取引先が慣れておらず、単位や締め時間の理解が揃っていないからです。ここで止めない。増えた訂正の理由を分類し、画面の表示か、渡した1枚の説明のどちらを直せばよいかを見ます。2か月経っても訂正が移行前を上回ったままなら、それは仕組みではなく決めごとの側に問題があります。
そして、戻す判断の基準も先に決めておいてください。基準がないと、担当者の疲弊だけで議論が動きます。たとえば「訂正の件数が移行前より多い状態が2か月続いたら、その取引先だけ紙の受付に戻す」といった形で、対象と期間を具体的に書いておきます。全社一斉に戻すのではなく、取引先単位で戻せるようにしておくことが、移行を続ける条件になります。
やってはいけない進め方
最後に、実務でよく見る失敗の形を挙げます。いずれも善意で始まり、途中で止まる進め方です。
- 新規の問い合わせ件数や訪問者数で受注の画面を評価する(既存取引の受注が目的なので数字が動かない)
- 全取引先に一斉に案内を送る(誰も先に動かず、案内が忘れられる)
- 在庫の状況も標準の納期も出さない画面を作る(相談の行き先がなくなり電話に戻る)
- 見積や納期交渉が必要な注文まで画面に押し込む(例外が積み上がって運用が破綻する)
- AIの読み取り結果を人の承認なしで起票する(似た型番の取り違えが出荷まで通る)
- 紙やファクシミリでの受付を、事前の通知なしに止める(注文が止まり、信用を失う)
- 単位・締め時間・欠品時の扱いを決めないまま画面を先に作る(決めごとの不在が注文の誤りとして表に出る)
共通しているのは、受け取る側の都合だけで設計していることです。注文を出すのは取引先であり、その手間は移行によって増えます。増える手間に見合うものを返せているか。この問いを外すと、どれだけ画面が良くできていても注文は電話に戻ります。
まとめ
企業間の受発注を画面に移す取り組みは、新しい取引先を集める施策ではありません。すでに来ている注文を、より少ない手数で受け取るための受注業務の見直しです。まず受注業務を受け取る・読む・起票する・確かめる・返すの5つに分け、時間が消えている「読む」と「確かめる」を特定してください。次に、発注件数の偏り方を見て、自社で画面を持つ形、取引先の購買の仕組みにつなぐ形、間に立つ場を使う形のどれから着手するかを決めます。移す前に、品目の粒度・単位・最小発注数量・締め時間・欠品時の扱い・訂正と取消の作法を紙1枚に決めておくこと。AIには注文の読み取りと起票の下書きまでを任せ、根拠を必ず添えさせ、値引きと与信と納期の確約は人が出すこと。そして、電子で受け取った注文書は電子のまま保存要件に従って残す必要があります。手始めに、直近1年の受注データを取引先ごとに件数で並べ、上位5社の注文書を実際に机に並べてみてください。そこに書かれている品名と単位のばらつきが、そのまま移行の作業計画になります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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