ブランドメッセージの作り方とAI|メッセージハウスで束ねる

「生成AIで広告も記事も営業メールも作れるようになったのに、部署ごとに自社の説明が違ってきた」「ブランドメッセージを決めようと会議を重ねても、標語のような一文しか残らない」。全社の素材を束ねる立場のブランド担当やマーケティングの責任者から、よく聞く声です。作る量が増えたのは生成AIのおかげでも、言い分がぶれる原因は別の所にあります。ブランドメッセージは、上手な一文を探す作業ではありません。本当は、一言のメッセージ、それを支える柱、柱ごとの根拠を1枚に束ね、誰が何を作っても立ち返れる階層を作る作業です。この記事では、その階層をメッセージハウスの形で作り、生成AIへの指示と生成物の照合に使うまでの手順を整理します。
カメ先生ブランドメッセージというと、キャッチコピーのような一文を作ることだと思われがちなんだけど、本当は、その一文を支える理由と証拠まで含めた設計図なんだ。
カメ子一文だけ決めても、各部署はその先を自分で考えて書いてしまう、ということですか。
カメ先生そう。生成AIはとくにそうで、一文だけ渡すと、足りない所をもっともらしい主張で埋めてしまう。だから柱と根拠まで渡して、外れた主張を後から照合できるようにしておくんだ。
カメ子AIへの指示の土台と、出てきたものを見る物差しが、同じ1枚になるんですね。
- メッセージハウスは、屋根の一言・3本前後の柱・柱ごとの根拠の3段で「何を言うか」を1枚に束ねる型。言い方の規定や事実の表記の台帳とは分けて作る
- 顧客の声や営業の記録から柱の候補を出す下書きと、生成物から柱を外れた主張・根拠の無い主張を洗い出す下書きはAIに任せられる
- どの柱を立てるか、どこまで言い切るか、外れた主張をどう直すかは人が決める。四半期ごとに直近の商談と照らして見直す
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素材がぶれるのは、言い方より「何を言うか」が決まっていないから
生成AIが社内に広がると、素材の数が増えます。広告の文面、記事、展示会の配布物、営業メール、提案書の冒頭の会社説明を、それぞれの部署が自分で作れるようになりました。作る人が増えれば、自社をどう説明するかを決める人も増えます。これまで制作会社や一部の担当者に集まっていた判断が、各部署の手元に散らばった状態です。
散らばった判断は、言い分のぶれとして表に出ます。ある広告は価格の安さを、ある記事は導入の速さを、営業資料は手厚い支援を前に出す。どれも嘘ではありませんが、受け取る側からは何の会社なのかが分からなくなります。ぶれの多くは文体の違いではなく、何を一番に言うかの順位の違いです。
生成AIは、この順位を補ってくれません。「自社の強み」を一文だけ渡して素材を作らせると、AIは足りない部分を一般的な強みの言葉で埋めます。「高品質」「柔軟な対応」「豊富な実績」のような、どの会社にも当てはまる言葉が並び、しかもその根拠は書かれません。渡した一文が短いほど、AIが埋める余白は広くなるのです。
だから、AIに渡す前に決めておくべきなのは、何を一番に言い、それをどんな理由で支え、どの証拠で裏付けるかという階層です。この階層を1枚にまとめる型として、広報やマーケティングの実務で長く使われてきたのが、メッセージハウスです。
メッセージハウスとは:屋根・柱・土台の3段
メッセージハウスは、家の絵に見立てて伝える内容を整理する型です。屋根に一言のメッセージ、その下に屋根を支える柱、柱の下に土台として根拠や証拠を置きます。起源ははっきりしていませんが、企業の広報の実務から広まり、遅くとも1990年代には使われていたと紹介されています。長いメッセージの文書の代わりに、1枚で全体を見渡せるのが特徴です。
屋根は、自社が誰に何をもたらすかを1文で言い切ったものです。柱は、屋根の一言がなぜ本当なのかを説明する3本前後の理由で、互いに重ならないように立てます。土台は、柱ごとの具体的な証拠で、確かめられる数字、名前を出せる顧客の事例、第三者による評価、仕組みの説明などが入ります。
3段に分ける意味は、言い切る強さを段ごとに変えられることにあります。屋根は短く覚えやすく、柱は相手の関心に合わせて選べる理由として、土台は確かめられる事実として書きます。主張と証拠を別の段に置くので、証拠の無い主張が混ざったときに見分けられます。この性質が、後で生成AIの出力を照合するときに効いてきます。
使う場面は広く、広報担当が取材に答えるとき、営業が初回の商談で説明するとき、記事や広告の文面を作るときの共通の出発点になります。法人向けの事業を前提にした手引きの中には、柱ごとの根拠に加えて、競合との違いを言う一文や、よくある反論への答え方まで同じ文書に足すものもあります。
- メッセージハウスの形や柱の本数、証拠の数に決まった規格はありません。この記事で紹介する数は、広報やマーケティングの実務向けに公開されている手引きの勧めです
- 自社で採る本数や数は、事業の幅に合わせて決め、決めた数を記入シートの欄外に書いておきます
書く範囲を先に決める:言い方の規定・表記の台帳とは分ける
メッセージハウスに似た文書は社内に多くあり、混ざると中身が膨らみます。最初に、何を書かないかを決めておきます。この記事で作るのは「何を言うか」の階層だけで、「どう言うか」は扱いません。
声の調子や言葉づかい、ロゴや色や書体の決まりは、ブランドガイドラインの役割で、別の記事「ブランドガイドラインに書く項目一覧」で整理しています。サービスの名称、実績の数値、価格、対応範囲を場所ごとにそろえる台帳は、記事「伝える言葉を揃える確認項目一覧」の範囲です。メッセージハウスには、主張の順位と、それを支える根拠の在りかだけを書きます。
顧客の課題と自社の提供価値を突き合わせる価値提案の整理や、競合との位置取りを図にする作業は、メッセージハウスを作る前の材料になります。それぞれの手法は、記事「バリュープロポジションとは?」と「ポジショニングマップをAIで作る5工程」で扱っています。ここでは、それらの結果を受け取って、何を一番に言うかを決める所から始めます。
範囲を絞ると、文書は1枚に収まります。1枚に収まらない量になったら、どこかで別の文書の役割を持ち込んでいるしるしです。1枚に収まらないなら、何かを持ち込みすぎていると考えて、持ち込んだ部分を元の文書に戻します。
手順0:屋根を考える前に、顧客と営業の言葉を集める
メッセージハウスを会議室だけで考えると、社内で言いたいことが屋根に上ります。それを避けるために、最初に外の言葉を集めます。材料は、受注と失注の記録、商談の録音の書き起こし、問い合わせの内容、導入後の聞き取り、解約の理由です。法人向けの手引きでも、勝った商談と負けた商談の記録、通話の録音、問い合わせの傾向から言葉を集めることが、最初の手順に置かれています。
ここはAIが役に立つ所です。書き起こしや記録の束から、顧客が自社を選んだ理由として口にした言葉、他社を選んだときの理由、導入前に心配していた点を抜き出させます。抜き出しには、必ず元の記録のどこから取ったかを添えさせます。出どころの分からない言葉は、AIが要約の途中で作った言葉かもしれないからです。
抜き出した言葉は、AIにまとめさせる前に人が読みます。顧客が使った言葉そのままと、AIが言い換えた言葉が混ざると、後で出す柱の候補が社内向けの言葉に寄っていきます。顧客の言葉は言い換えずに残すと決めておくと、屋根や柱を書くときの言葉の在庫になります。
個人の名前や会社の名前が入った記録をAIに渡すときは、社内のAIの扱いの決まりに従います。柱の候補を出すのに要るのは発言の中身なので、名前を外した書き起こしで足りることがほとんどです。名前を外した版を作る手間は、後で記録を見直すときの扱いやすさにもつながります。
手順1:屋根の一言を決める
屋根は1文で書きます。形の目安として、法人向けの手引きでは「誰の、どんな成果を、どんな独自のやり方で手助けするか」を1文に入れる型が紹介されています。1文に収まらずに2文になるなら、それは屋根ではなく説明の段落です。
良い屋根かどうかを確かめる方法として、ある手引きは「入ったばかりの営業担当が、一度読んだ後に何も見ずに言えるか」という試し方を挙げています。社内の何人かに読んでもらい、翌日に口頭で言ってもらうと、どの言葉が残り、どの言葉が落ちるかが分かります。落ちた言葉は、たいてい社内でしか通じない言葉です。
屋根の候補は、AIに複数出させてもかまいません。手順0で集めた顧客の言葉を渡し、「誰の・どんな成果を・どんなやり方で」の3つの要素を必ず含めて10案ほど出させます。ただし、どの案を屋根にするかは、AIに選ばせないようにします。選ぶことは、自社がどの顧客に向き合い、どの成果を約束するかを決めることで、経営の判断を含むからです。
屋根に何を書かないかも決めます。事業内容の説明(「〜の開発と販売を行う」)、誰にでも当てはまる形容(「最高の」「最適な」)、期間を限った施策の訴求は、屋根に向きません。屋根は数年使う前提で書き、施策ごとの訴求は、柱の下で作る個々の素材の側に任せます。
屋根の一言でつまずく形
屋根を決める会議では、似た失敗が繰り返されます。代表的な形を並べます。
- 2文以上になり、誰も何も見ずに言えない
- 「業界をリードする」「お客様第一」のような、競合がそのまま使える言葉で書いている
- 社内の部署名や製品の内部の呼び名が入り、外の人に通じない
- すべての顧客に向けて書いた結果、誰の何の成果かが消えている
- 事業内容の説明になっていて、相手にとっての成果が書かれていない
- 今期の重点施策を屋根に上げ、半年で書き換えが必要になる
とくに2つ目は、AIに案を出させたときに起きやすい形です。AIは多くの会社の文章から学んでいるので、平均的な言葉をよく出します。候補を並べたら、競合の社名に差し替えても通じる案は消すという1つの基準で、まず数を減らします。残った案を、手順0の顧客の言葉と見比べて絞り込みます。
4つ目は、顧客の層が広い会社ほど起きます。業種や規模で顧客が分かれていても、屋根は1つにします。相手ごとの違いは、柱の並べ順や、土台から選ぶ証拠の側で吸収します。屋根を相手ごとに作り分けると、メッセージハウスが何枚にも増え、ぶれを束ねる役目を果たせなくなります。
手順2:柱を3本前後に絞る
柱は、屋根の一言が本当である理由です。多くの手引きは3本から4本を勧め、覚えやすさと、相手が判断に使う観点に対応させやすいことを理由に挙げています。法人向けの手引きの中には、柱は3本までとし、4本では一覧になり、2本では言い足りない、と言い切るものもあります。本数は会社ごとに決めてよいですが、5本を超えたら絞り直します。
柱を選ぶ基準は4つです。互いに重ならないこと、屋根を支えるのに欠かせないこと、相手にとって意味があること、屋根の一言と直接つながっていること。社内の優先事項を映しているだけで、相手にとっての価値が無い柱は、外すか書き直します。たとえば「自社開発」は社内の誇りでも、相手にとっての意味(不具合を直すのが速い、仕様を合わせられる)に言い換えなければ柱になりません。
柱は、1本ずつ短い見出しと2〜3文の説明で書きます。見出しは相手の言葉で書き、説明には「なぜそう言えるのか」を書きます。説明の中に数字や事例を入れたくなりますが、それは土台の段に回します。柱の段には主張を、土台の段には証拠を置くと分けておくと、後の照合がしやすくなります。
柱の並べ順も決めます。並べ順は、相手が判断で重く見る順にするのが基本です。相手の層によって重く見る観点が違うなら、並べ順だけを変えた版を用意することはありますが、柱の中身は変えません。変えない芯を決めるのが、この型の目的だからです。
柱の候補出しをAIにさせる指示
柱の候補は、手順0で集めた顧客の言葉からAIに出させると、社内の思い込みに寄りにくくなります。指示には、材料と出してほしい形を書きます。最低限、次の項目を入れます。
- 屋根の一言と、手順0で集めた顧客の言葉(元の記録の場所付き)
- 柱の条件(互いに重ならない、屋根を支える、相手にとって意味がある)
- 候補ごとに、支えになる顧客の言葉を3つ以上、元の記録の場所付きで添えること
- 支えになる言葉が少ない候補は、少ないことをそのまま書くこと
- 社内でよく使う言葉に言い換えず、顧客の言葉に近い見出しにすること
- 候補に順位を付けたり、採るべき柱を選んだりしないこと
3つ目と4つ目の項目で、候補ごとの裏付けの厚さが見えるようになります。支えになる顧客の言葉が少ない候補は、社内で言いたいことが混ざっているしるしです。AIは指示しなければ、少ない材料からももっともらしい柱を組み立てるので、少ないことを隠さず書かせます。
最後の項目は、判断を人に残すためです。どの柱を立てるかは、どの顧客に向き合い、どの約束を守り続けるかを決めることで、製品の計画や営業の体制と切り離せません。柱を決めるのは、ブランドとマーケティングの責任者が、営業と製品の責任者と同じ場で行います。AIの候補は、その場の議論を始めるための材料です。
議論の場では、候補ごとに添えられた顧客の言葉を読み上げてから決めると、声の大きい部署の意見に流れにくくなります。採らなかった候補も、理由を添えて控えに残しておきます。半年後に見直すとき、どの候補をなぜ外したかが分かれば、同じ議論を繰り返さずに済みます。
手順3:柱ごとに根拠を2つ以上集める
柱が決まったら、柱ごとに土台の証拠を集めます。ある手引きは、柱ごとに引用できる証拠を少なくとも2つ求め、証拠の無いあいまいな主張を典型的な失敗に挙げています。証拠の種類としては、確かめられる数字、名前を出せる顧客の事例、第三者による評価、仕組みの説明の4つがよく挙げられます。
4つ目の仕組みの説明は、法人向けの事業で使いやすい証拠です。数字や事例をまだ出せない新しい製品でも、「なぜその成果が出るのか」の仕組みは説明できます。たとえば「導入が速い」という柱なら、設定の手順が何段階で済むのか、どの作業を誰が受け持つのかという説明が証拠になります。
証拠ごとに、使ってよい条件を書き添えます。数字なら、いつの時点の、どの範囲の数字か。事例なら、社名を出してよいか、どの媒体まで使ってよいか、いつまで使えるか。条件の書かれていない証拠は、AIが素材の中で好きなように使ってしまいます。条件の欄は、後でAIへの指示文に移すときにそのまま使います。
証拠が集まらない柱は、柱として立てるのを見送ります。言いたいことがあっても、証拠が無いまま柱にすると、生成した素材のすべてに根拠の無い主張が広がるからです。証拠が無い柱は、証拠ができるまで柱にしないと決めます。なお、数字や名称の正式な表記は、メッセージハウスの外にある表記の台帳で管理します。
メッセージハウスの記入シート
ここまでの手順を、1枚の記入シートにまとめます。屋根が1行、柱が3行前後、土台の証拠が柱ごとに2行以上という形に、生成AIと組み合わせるための欄を足します。下の表は、各段に何を書き、誰が決めるかの例です。
| 段 | 書くこと | 書き方の決まり | 誰が決めるか |
|---|---|---|---|
| 屋根 | 誰の、どんな成果を、どんなやり方で手助けするか | 1文。競合の社名に差し替えて通じる言葉は使わない | 責任者(AIは案出しまで) |
| 柱 | 屋根が本当である理由(3本前後) | 相手の言葉の見出しと2〜3文の説明。互いに重ねない | 責任者が営業・製品の責任者と決める |
| 土台の証拠 | 柱ごとの数字・事例・第三者の評価・仕組みの説明 | 柱ごとに2つ以上。時点と範囲を書く | 担当者が集め、責任者が確かめる |
| 使ってよい条件 | 証拠ごとの社名の可否、媒体の範囲、期限 | 条件の無い証拠は使わない | 担当者(法務・営業に確かめる) |
| 言わないこと | 屋根と柱から外れる主張、言い切らない表現 | 理由を添えて具体的に書く | 責任者 |
| 版と持ち主 | 版の日付、次の見直し日、持ち主の名前 | 持ち主は1人。最新版の置き場所は1か所 | 責任者 |
「言わないこと」の段は、多くのメッセージハウスの図には無い段ですが、生成AIと組み合わせるときには欠かせません。AIは、言ってはいけないことの指示が無いときに外れやすくなります。たとえば「業界最安」「必ず成果が出る」のような証拠の無い言い切りを、ここに具体的に書いておきます。
「版と持ち主」の段は、ある手引きが失敗の例に挙げる「版の混乱」を避けるためのものです。複数の部署が古い版を手元に持ったままだと、メッセージハウス自体がぶれの元になります。持ち主を1人に決め、最新版の置き場所を1か所にして、そこ以外にある版は使わないと決めます。
手順4:AIへの指示文の前置きに移す
記入シートができたら、生成AIに素材を作らせるときの指示文の前置きに移します。素材ごとに指示を一から書くのではなく、屋根・柱・土台・言わないことを固定の前置きにして、その後ろに素材ごとの依頼を書く形です。前置きを部署ごとに書き換えないことが、ぶれを止める要になります。
前置きには、屋根の一言をそのまま入れ、柱は見出しと説明を入れます。土台の証拠は使ってよい条件と一緒に入れ、「ここに無い数字や事例は書かない」と明記します。言わないことの一覧も入れます。後ろの依頼の部分には、どの柱を中心にするか、相手は誰か、どの媒体の素材かを書きます。
1つの素材に柱を全部入れる必要はありません。広告の短い文面なら柱1本、記事なら柱2本、提案書なら3本すべて、というように、素材の長さで使う柱の数を決めておきます。どの素材でも、屋根から外れないことだけは変えないという線を、前置きの最初に書きます。
前置きの中で「当社らしい言い回しで」と頼むのは、この前置きの役目ではありません。言い回しや文体をそろえる材料は別に用意します(記事「AIの文章が自社らしくならない原因」)。前置きに文体の指示まで詰め込むと、何を言うかの指示が埋もれて、どちらも守られにくくなります。
手順5:生成物を柱で照合する
前置きを渡しても、AIの生成物が柱から外れることはあります。とくに、依頼の部分で具体的な成果を強く求めると、土台に無い数字や事例を作って書き足すことがあります。そこで、生成物を公開や送付の前に、柱で照合します。
抜き出しと印付けの下書きは、AIに任せるのに向いています。生成物と記入シートを渡し、主張ごとに当たる柱と支える証拠を示させ、どちらも無いものは無いと書かせれば、照合の一覧ができます。照合の一覧には、主張の位置と、当たると見た理由を必ず添えさせます。
ただし、照合をAIの判断で終わらせてはいけません。AIは、柱の言葉に似た表現があれば当たると見なしがちで、言い方が似ていても中身が柱とずれている主張を見逃すことがあります。外れた主張をどう直すかも、素材の目的と相手を知っている人にしか決められません。
照合で外れた主張が多い素材は、依頼の書き方を見直すしるしです。柱を指定せずに依頼した、相手を書かなかった、成果を強く求めすぎた、など原因は依頼の側にあることが多いので、外れた主張の数を素材ごとに記録し、多い依頼の型を直すと、照合の手間は月を追って減っていきます。
言い切ってよい範囲は人が決める
メッセージハウスの中でAIに決めさせてはいけないものの1つが、言い切ってよい範囲です。「導入が速い」と言うのか、「最短で何日」と言うのか、「業界で最も速い」と言うのかは、手元の証拠の強さと、法令や取引上の約束の両方で決まります。AIは証拠の強さを知らないので、言い切りの度合いを強めに書きがちです。
言い切りの度合いは、記入シートの土台の段に、証拠ごとに書いておきます。たとえば、ある顧客の事例で導入が2週間だったなら、「2週間で導入した事例がある」とは言えても、「2週間で導入できる」とは言えません。証拠の時点と範囲を書く欄が、ここで効いてきます。
他社と比べる表現や、「最も」「唯一」「初」といった言葉は、広告の表示の決まりにも関わります。こうした表現を使うかどうかは、メッセージハウスを作る段階で法務の確認を通し、言わないことの一覧に反映しておきます。素材ごとに毎回判断すると、部署によって判断が分かれ、ぶれが戻ってきます。
境目の微妙な主張は、出てくるたびに持ち主が判断し、その結果を「土台」か「言わないこと」のどちらかの段に書き足していきます。判断の結果が記入シートにたまるほど、AIへの前置きは正確になり、素材の担当者が迷う場面は減ります。
社内に渡す:書いていない人が自分の言葉で言えたら完成
メッセージハウスは、作った人の手元にある間は完成していません。法人向けの手引きの中には、作った人ではない誰かが、何も見ずに、自分の声で一文を口にしたときに完成する、と書くものがあります。配って終わりにせず、使う人が言えるようになるまでを手順に含めます。
渡し方の例として、その手引きは、対面での説明、営業向けの1枚の早見表、資料のひな形の更新、30日後の確認を挙げています。生成AIを使う部署には、これに指示文の前置きを加えます。前置きは各自の手元で書き直させず、配った版をそのまま使ってもらいます。
30日後の確認では、実際に作られた素材をいくつか集め、手順5の照合をかけます。外れた主張がどの部署のどの素材に多いかを見れば、説明が足りなかった所や、柱の書き方が分かりにくかった所が分かります。確認の結果は、使う人を責める材料ではなく、記入シートを直す材料にすると、最初に伝えておきます。
社内の人がメッセージを自分の言葉で言えることは、社外への発信の土台にもなります。社員に向けた発信の組み立て方は、記事「社内向けの発信は後回しでいい?」で扱っています。
手順6:見直しの周期を決める
メッセージハウスは、一度作れば終わりではありません。複数の手引きが、四半期ごと、または大きな節目の後に見直すことを勧めています。年に1回作り直すより、四半期ごとに直前の期の商談と照らして調整すれば足りる、とするものもあります。
見直しで見るのは3つです。直近の四半期の受注と失注の理由が、柱と合っているか。土台の証拠の時点が古くなっていないか、使ってよい条件の期限が切れていないか。そして、メッセージが製品の実態より先に走っていないか。ある手引きは、製品の実態を追い越したメッセージを失敗の1つに挙げています。
見直しの材料集めは、AIに手伝わせられます。直近の商談の記録から、手順0と同じように選ばれた理由と選ばれなかった理由を抜き出させ、柱ごとに当てはまる発言の数を数えさせます。発言の数が減った柱は見直しの候補です。ただし、柱を入れ替えるかどうかは、数だけで決めないようにします。数の変化は、営業の重点の変更や時期の偏りでも起きるからです。
柱を入れ替えたときは、版の日付を更新し、AIへの前置きも同じ日に差し替えます。古い前置きが残っていると、新しい柱と古い柱が混ざった素材が出回ります。差し替えた日と、古い版を使わないことを、使う部署に一斉に知らせます。
まとめ
ブランドメッセージは、一文の出来を競う作業ではなく、屋根の一言・3本前後の柱・柱ごとの根拠を1枚に束ね、誰が何を作っても立ち返れる階層を作る作業です。言い方の規定や事実の表記の台帳とは分け、顧客と営業の言葉を集めてから屋根を決め、柱を絞り、柱ごとに使ってよい条件付きの証拠を2つ以上集めます。記入シートは生成AIへの指示文の固定の前置きに移し、生成物は主張を1文ずつ柱と証拠で照合します。候補出しと照合の下書きはAIに任せ、どの柱を立てるか、どこまで言い切るか、外れた主張をどう直すかは人が決め、四半期ごとに直近の商談と照らして見直してください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
コンテンツ制作・SEOにAIを活かす第一歩、まずは導入から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
