ブランドガイドラインに書く項目一覧|AI生成物でも崩れない

ブランドガイドラインに書く項目一覧|AI生成物でも崩れない

文化庁が令和6年7月31日に公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、全44ページを2部に分け、前半をチェックリストに充てています。会社が業務で生成AIを使う立場に向けた項目は8つ。そこには、生成物を使う前に既存の著作物と似ていないかを確かめること、生成に使った指示文を後から確認できる状態にしておくことが並んでいます。作った素材を出す前に見る関門を、あらかじめ文書で決めておく前提で書かれた資料です。ところが実際の現場からは、こんな声が続きます。「ガイドラインはあるのですが、誰も開かないまま資料が作られています」「生成AIで作った画像や文章が増えてから、見た目も言い回しもそろわなくなりました」。——素材を作る速さが上がった会社ほど、そろって出てくる声です。これは、決まりの数が足りないという話ではありません。本当は、書いてある項目が人の判断を前提にした形のままなので、素材が出てくる量が増えた分だけ判断が追いつかなくなっているのです。この記事では、ブランドガイドラインに書く項目を6つの束に並べ直したうえで、生成した素材をどの関門で見るかまでを整理します。


カメ先生カメ先生

ガイドラインが守られないのは、読む人の意識の問題だと思われがちなんだ。でも実際に破られるのは、判断が要る書き方をしている項目からなんだよ。忙しい日に最初に飛ばされるのは、原本を開いて考えないと決まらない項目のほうなんだ。


カメ子カメ子

判断が要らない書き方に直せば、そのまま守られるようになるということですか。


カメ先生カメ先生

半分はそのとおり。ただ、生成AIで素材を作るようになると、守らせる相手が人だけではなくなる。作る前の指示文に載せる形、出す前に照らす形、後から使い回せるように残す形——同じ項目を3つの場所で使える形に書き直す必要が出てくるんだ。


カメ子カメ子

項目を増やすのではなく、同じ項目を指示文と確認と保管の3か所で使える形に書き直す、ということですね。


この記事のポイント
  • 書く項目はロゴと余白・色・書体・写真とイラスト・声と言葉づかい・禁じる形の6つの束。束ごとに機械で見られる形へ書き直す
  • 生成した素材を見る関門は入口・出口・棚の3つ。公表資料も、出す前の類似の確認と生成過程の記録を求めている
  • ロゴのように守りたい資産は生成の対象から外す。AI生成物には著作物性が認められるとは限らないと明記されている

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目次

決まりがあるのに崩れるのは、文書の形の問題

崩れ方には順番があります。最初は例外の相談が来ます。次にその例外が前例になり、似た場面でそのまま使われます。最後は誰も原本を開かなくなり、直近に作られた資料が事実上の見本になります。表紙の色が少しずつ違う、同じ製品名の書き方が3通りある、ロゴの周りの余白が資料ごとに違う。ここで原因を「意識が低いから」と置いてしまうと、研修を1回開いて終わりになり、半年後に同じ状態に戻ります。

破られる項目には共通の形があります。第一に、判断が要る書き方をしていること。「余白は十分に取る」「上品な写真を選ぶ」は、読む人ごとに答えが変わります。第二に、参照先が本文の外にあること。原本を開かないと分からない項目は、開かれないぶんだけ守られません。第三に、例外の扱いが書かれていないこと。書かれていない場面に出会った人は、その場で自分の例外を作ります。この3つに当てはまる項目から順に破られる、という並びは、どの会社でもほぼ変わりません

生成AIで素材を作るようになると、崩れる速度が上がります。理由は、作る人が増えるからではありません。1人が作る本数が増えるからです。1本の画像や1本の文章に数時間かけていたころは、途中で原本を開く余裕がありました。数分で1本出るようになると、開くという工程が真っ先に落ちます。だから直す方向は、読ませる工夫を足すことではなく、読まなくても外れない形に項目そのものを書き直すことになります。

書く項目は6つの束に分かれる

項目を思いついた順に並べると、ロゴの周りだけが厚くなり、言葉と写真が薄いまま残ります。束で並べると、抜けている場所が一目で分かります。まず全体像を置きます。

この束で決めること主に使う人機械で見られるか
1 ロゴと余白使ってよい形、周りに空ける距離、触ってよい範囲、例外の扱い資料を作る全員一部(比率と寸法だけ)
2 色使う色の数値と、並べるときの面積の比率、組み合わせの可否資料・広告・画面見られる(数値で照合)
3 書体見出しと本文の書体、使う太さの範囲、代わりに使う順番資料・画面・動画見られる(書体名で照合)
4 写真とイラスト被写体、明るさの傾向、人の写し方、加工の可否、出どころの記録広報・広告・採用一部(人が見る)
5 声と言葉づかい人格を表す3語、自社と製品の呼び方、言い換え、禁じる表現文章を書く全員見られる(語で照合)
6 禁じる形やってはいけない操作と、その理由全員一部

束の並びにも意味があります。上から順に、崩れたときに目立つ順です。ロゴと色の崩れは見た瞬間に分かりますが、言葉の崩れは指摘されないまま何年も続きます。目立つ順に書き、点検は目立たない順に回すと、抜けが減ります。実務で薄くなりやすいのは4番目と5番目で、写真の選び方と言葉づかいが「担当者の感覚」に置かれたまま残っている会社が多くあります。

束ごとに分量の上限を先に決めるのも効きます。全部を厚く書いた文書は開かれません。目安としては、原本では1つの束につき見開き1枚までに抑え、細かい数値や事例は別冊に逃がします。原本は薄く、別冊は厚く。この形にすると、原本のほうは通しで読める分量に収まります。原本と別冊を分けずに1冊にすると、厚さそのものが読まれない理由になります。

束1:ロゴと余白は「例外の書き方」で差がつく

この束で決めるのは、使ってよい形(縦に組んだもの、横に組んだもの、記号だけのもの)、周りに空ける距離、耐えられる最小の寸法、置いてよい背景の条件です。ここまではほとんどの会社が書きます。差がつくのはその先で、例外をどう書くかです。

例外を書かないと、現場が勝手に例外を作ります。書いておくべき例外は3つあります。1つ目は、指定の距離が取れない場所。動画の隅、名刺の裏、他社の枠の中などです。2つ目は、背景が写真のとき。白い下地を敷くのか、白抜きの形を使うのかを決めます。3つ目は、他社のロゴと並べるとき。高さでそろえるのか、幅でそろえるのか、間はどれだけ空けるのかを決めます。それぞれ、正解を1つだけ書きます。選択肢を2つ書くと、社内で必ず割れます。

生成AIを使うようになったら、この束に1行足します。ロゴは生成させないという行です。理由は仕上がりの品質ではありません。デジタル庁が2026年6月12日に改定した生成AIの調達・利活用に係るガイドラインの利用ルール雛形には、AI生成物については著作物性が認められるとは限らないため、著作物として保護が必要な成果物等の作成に生成AIを利用することは慎重に検討すること、と書かれています。ロゴは、他人の無断使用を止める側に回る資産です。守りたい資産ほど、生成の対象から外しておくほうが安全です。運用としては、既存のデータを重ねるだけにして、描き起こしを頼まない形にします。

束2:色は「使ってよい色」ではなく「並べてよい比率」

色は数値で書きます。印刷に使う数値、画面に使う数値、塗料や布に使う指定は別物なので、媒体ごとに列を分けて並べます。ただし、数値だけを書いた文書には共通の落とし穴があります。指定どおりの色を使っているのに、出来上がった資料がブランドらしく見えないという状態です。

原因は比率です。主に使う色、それを支える色、目を引かせる色の3つについて、面積の目安を「7対2対1」のように書きます。あわせて、目を引かせる色は1枚に1か所までのように、回数の制限を置きます。文字の色と背景の色の組み合わせは、使ってよい組を列挙して、それ以外を使わない形にします。自由に選ばせる項目を残すと、そこから崩れます。読みにくい組み合わせは、見た目の問題であると同時に、読めない人が出るという問題でもあります。

生成した画像には、この束をそのまま当てないでください。生成AIは、指定した色の数値をそのまま返しません。似た色になります。何度やり直しても近づききらないので、色を守らせようとする運用は必ず消耗します。実務としては、色は生成の後で置き換える工程を決めるのが答えです。生成に渡す指示は「暖かい色が中心」「彩度は低め」といった方向だけにして、ブランドの色は上に重ねる図形と文字で担保します。生成物に守らせるのではなく、生成物の上に重ねる部分で守る、と決めておくと迷いません

束3:書体は代替の順番と、使える範囲まで書く

この束で決めるのは、見出しと本文に使う書体、使ってよい太さの範囲、行の間隔と文字の間隔の目安です。日本語と欧文で別の書体を使う場合は、その組み合わせも決めます。ここまでは多くの会社が書いています。

抜けやすいのは代替の順番です。指定した書体が入っていない端末で資料を開くと、まったく別の書体に置き換わります。これを防ぐには、1番目がなければ2番目、2番目がなければ3番目、と順位で書いておく必要があります。加えて、社外に配る資料は、書体を埋め込むのか画像にするのかを決めます。共同編集の画面では選べる書体がそもそも限られるため、画面用の候補を別に1組持っておくと、現場が勝手に選ぶ状態を避けられます。

使える範囲も1行で書き添えます。書体は購入した時点であらゆる用途に使えるとは限らず、動画、アプリ、商品への表示などは条件が別に定められていることがあります。購入時の条件を確認して、使ってよい範囲を書いておきます。生成AIとの関係では、もう1行が要ります。生成した画像の中に文字を描かせないという行です。生成された文字は指定した書体になりませんし、形の崩れた文字が混ざります。文字は必ず後から重ねる、と決めておきます。

束4:写真とイラストは、選ぶ基準を言葉にする

「明るく自然な写真」では選べません。書くべきは4つです。被写体(何が写っているか、何を写さないか)、明るさと彩度の傾向、人の写し方(顔を出すのか、後ろ姿や手元にするのか)、加工の可否(切り抜き、明るさの調整、文字を重ねること)。この4つを決めると、選ぶ人が変わっても結果が近づきます。

言葉で書ききれない部分は、実物を並べると一気に決まります。良い例と避けたい例を各3枚並べ、1枚ずつ「なぜそちらなのか」を1行添えます。添えないと、写っている物だけをまねた別物が集まります。たとえば「会議室で人が話している写真」を良い例に置くと、会議室の写真ばかりが集まり、選んだ理由だった自然光や視線の向きは引き継がれません。理由の1行が、次に選ぶ人への指示になります。

生成した画像には、項目を3つ足します。1つ目は、生成であることが後から分かるように記録に残すこと。2つ目は、人物を生成した画像について、特定の人に似ていないかを確かめてから使うこと。3つ目は、素材の出どころを1件ずつ残すこと。自社で撮ったのか、買ったのか、生成したのかで、使える範囲が変わるためです。文化庁のチェックリストは、業務で生成AIを使う立場に対して、生成物を使う前に既存の著作物と似ていないかを確かめることを挙げ、その手段として文章の検索と画像の検索を示しています。

束5:声と言葉づかいは、媒体をまたぐ最小限だけ決める

この束で決めるのは、媒体が変わっても動かない部分だけです。人格を表す3語、自社と製品の呼び方、使わない表現。会員制交流サイトの投稿での語尾や記号の扱いのように、媒体ごとに変わる決まりは、その媒体側の決まりに委ねます。ここに全部を書こうとすると、原本が厚くなり、しかも媒体が増えるたびに古くなります。

いちばん効くのは言い換えの表です。誤りではないけれど混ざると崩れる語を、左右2列で並べます。自社の呼び方、相手の呼び方、製品名の書き方、単位や記号の書き方。20語ほど並べれば、社内文書の揺れの大半は消えます。ここに禁じる表現を混ぜないでください。言い換えの表は置き換えに使い、禁じる表現の表は検出に使うため、使う場所が違います。1つの表にまとめると、どちらの用途でも使いにくくなります。

人格を表す3語は、生成AIに渡す指示文の材料になります。ただし「誠実」「先進的」のような語を並べても、出てくる文章は変わりません。どの会社にも当てはまるからです。3語には、選ばない側を書き添えます。「親しみやすい(ただし、くだけた話し言葉にはしない)」「具体的(ただし、数字を並べるだけにはしない)」のように、反対側を1つずつ添えます。選ばない側を書いた瞬間に、その語ははじめて判断の役に立ちます。人が読むときにも、機械に渡すときにも、効き方は同じです。

束6:やってはいけない形は「できてしまう操作」から書く

禁止は思いつきで並べると際限がありません。基準を1つ置きます。道具の上で、1回か2回の操作で簡単にできてしまうことから書く、という基準です。手間のかかる違反は、そもそもあまり起きません。実際に起きた崩れを集めて逆算すると、次のような並びになります。

  • 縦横の比率を変えてロゴを伸ばす——角を持って引くだけでできてしまうため、いちばん多い
  • ロゴに影や光の効果を足す——効果の一覧から選ぶだけで付き、付けた本人は良くしたつもりでいる
  • 指定に近い色を目分量で作る——色の選択画面が近い色を勧めてくるので、悪気なく起きる
  • 指定外の書体で見出しだけを目立たせる——一覧の上のほうにある書体が選ばれやすい
  • 写真の上に文字を直接重ねる——読めればよいと判断され、余白と最小の寸法の決まりが同時に飛ぶ
  • 生成した画像の中の文字をそのまま使う——形の崩れた文字や、意味のない並びが混ざる
  • 生成した人物の画像を、実在の担当者のように見せる——受け取る側の誤解につながる

禁止には理由を1行ずつ付けます。理由のない禁止は、例外の相談が来た時点で崩れます。逆に理由が書いてあれば、その場に書かれていない場面でも現場が判断できます。上の一覧で理由を後ろに付けているのは、そのためです。

数の上限も決めます。禁止は10個までにして、増やしたくなったら1つ落とす。落とせないなら、それは禁止ではなく仕様です。仕様なら束1から束5に戻して、正しいやり方の側に書き直します。禁止の一覧が長くなるほど、現場は最初の数行しか覚えなくなります。

項目を「機械で見られる形」に書き直す

ここが、素材が増えても効き続けるかどうかの分かれ目です。判断が要る書き方の項目は、人が見ても揺れますし、機械にはそもそも渡せません。書き直しの方向は3つあります。数値にする、あてはまるものを列挙する、二択にする。この3つのどれかに落とせない項目は、最後まで人が見る項目として分類します。

よくある書き方そのままだと何が起きるか見られる形に直すと
余白は十分に取る人によって2倍以上の差が出る記号部分の高さを1として、その半分以上を四方に空ける
上品で信頼感のある写真選ぶ人の好みで決まる屋内、自然光、人は後ろ姿か手元、加工は明るさの調整まで
ブランドカラーを基調に似た色が量産される主色と副色と強調色を数値で指定し、面積は7対2対1
分かりやすい言葉で書く検査のしようがない1文は60字まで、二重否定を使わない、言い換え表に従う
ロゴは目立つ大きさで小さすぎる例がそのまま通る印刷物は幅15ミリ以上、画面は幅120画素以上

表の右の列を見ると、書き直した後の項目には共通点があります。その場で数えるか、照らし合わせるかで答えが出るという点です。人によって解釈が割れる余地が残っていれば、書き直しが足りていません。書き直しの作業は、ガイドラインを作る作業というより、作った後の運用を先に設計する作業に近くなります。

ただし、全部を見られる形にはできません。写真の雰囲気、文章の温度、その場面にふさわしいかどうかは、最後まで人が見る領域として残ります。だから項目ごとに「誰が見るか」の列を足します。機械が見る、人が見る、両方で見る、の3種類です。この1列を足すだけで、次に作る関門の設計はほとんど決まります。列がないまま関門を作ると、機械に見せる項目と人に見せる項目が混ざり、どちらの側でも取りこぼしが出ます。

生成した素材を見る関門は3つある

素材が増えても崩れない形は、決まりの厳しさではなく関門の置き場所で決まります。1か所に集めると、そこで詰まります。作る前、出す前、出した後の3か所に分けます。

STEP1
入口——生成の指示に載せる

作る前に、守らせたい項目を指示文の定型に組み込む。ここに載せるのは、生成の結果に実際に効く項目だけに絞る。色のように返ってこない項目は載せない

STEP2
出口——出す前に照らす

出来上がった素材を、束ごとの項目に照らす。機械が照合する項目と、人が見る項目を分けて並べる。判断に迷ったものは出さない側に倒す

STEP3
棚——残して使い回す

通った素材を、次に使える形で登録する。出どころ、指示文、確かめた記録、使ってよい範囲、版を一緒に残す。同じものを2度作らないための工程でもある

3つのうち、最初に作るのは出口です。入口から作ると、指示文だけが整って、出来上がったものを誰も見ないまま流れていきます。出口を先に作ると、落ちた理由が溜まります。その理由の一覧が、そのまま入口に載せるべき項目になります。順番を逆にすると、指示文に何を書けばよいのかを想像で決めることになり、載せた項目の大半が空振りします。

関門の重さは、素材の種類ごとに変えます。社外に出す広告と、社内の会議で1回使う資料に同じ関門を通すと、必ず詰まります。分ける軸は3つです。外に出るか、自社の名前が出るか、後から直せるか。3つとも当てはまるものは全項目を通し、1つも当てはまらないものは束1と束2だけを通す、という段の付け方が扱いやすい形です。

関門1:入口には、載せる項目と入れない語の両方を置く

入口の指示文に載せるのは、生成の結果に効く項目だけです。被写体、明るさの傾向、人の写し方、加工の方向、画面の比率、そして文字を描かせないこと。色と書体は載せません。指定しても返ってこないため、載せるほど確認の手間だけが増えます。載せる項目を10行程度の定型文にして、素材の種類ごとに1つずつ用意します。

入口では、入れてはいけない語のほうが重要です。文化庁のチェックリストは、依拠性について次の趣旨を述べています。生成AIへの指示として既存の著作物そのものを入力した場合や、既存の著作物の題名、登場人物の名前などの特定の固有名詞を入力した場合は、その著作物を認識していたことを推認させる間接的な事実となり、依拠性が認められやすくなる、というものです。つまり他社の商品名や作品名、作家の名前を指示文に書くこと自体が、後で不利に働きます。ガイドラインには、この1行を項目として置きます。

公的な文書には、そのまま流用できる書き方があります。デジタル庁の生成AIの調達・利活用に係るガイドラインの利用ルール雛形は、入力の段階の対策として3つを挙げています。他人の特定の著作物と関連付けるような指示文を入力しないこと。特定の登録意匠や登録商標等と関連するような指示文を入力しないこと。そして、自ら創作して手描きしたラフ画などの自らの著作物を読み込ませたうえで出力すること。3つ目は、まねる対象を自社の素材だけに限る、と読み替えるとそのまま社内の決まりになります。ブランドの一貫性と権利の両方に同時に効く、数少ない項目です。

関門2:出口では、AIに判断させない範囲を先に引く

出口では、機械に任せる項目と人が見る項目を分けます。任せてよいのは、決めた一覧と照らし合わせれば答えが出る作業です。次の5つが、その範囲に当たります。

  • 使われている色の数値が、指定の一覧に入っているかを照合する
  • 使われている書体の名前が、指定の一覧に入っているかを照合する
  • 禁じる表現の一覧に当たる語が含まれていないかを検出して、位置を示す
  • 言い換えの表に沿って、表記の揺れている箇所を一覧にして返す
  • ロゴの周りに空いている距離が、指定の比率を満たしているかを測る

一方、次の5つは人が見ます。写真の被写体が伝えたい内容と合っているか。生成した人物が特定の誰かに似ていないか。文章の温度が、その媒体の読み手に合っているか。他社の作品や商標に似ていないか。そして、出してよいかどうかの最終の判断です。この5つを、任せてよい5つと同じ紙に並べて配ります。片方だけを配ると、書かれていないほうが自動的に許可されたことになります。

公表資料の書き方も同じ方向です。文化庁のチェックリストは、生成物を使う前に既存の著作物と似ていないかを確かめることを挙げ、手段として文章の検索と画像の検索を示しています。また、作る行為と、配信したり複製物を渡したりする行為では判断が変わり得ることも書かれています。デジタル庁の利用ルール雛形には、業務に使ってよいかは利用者が判断し、判断に迷う場合は利活用しないこととする、という一文があります。迷ったら出さない、を気持ちではなく規定として書いておくことが要点です

関門3:棚に残す項目は5つに絞る

通った素材を残さないと、同じものを何度も作り直すことになります。ただし、残す項目を増やすほど、書かれない欄が増えます。最小限に絞ります。

  • 素材の出どころ……自社で撮ったのか、買ったのか、生成したのか。生成なら使った道具と時期を残す
  • 生成に使った指示文……文化庁のチェックリストは、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いた指示文など生成の過程を確認できる状態にしておくよう努めることを挙げている
  • 確かめた記録……似ていないかを検索で確認した事実。同資料は、可能な確認の措置を行っていることを適切に説明できるようにしておくことが望ましいとしている
  • 使ってよい範囲……媒体、期間、地域。買った素材と生成した素材で条件が違うため、1件ずつ書く
  • 版……差し替えたときに、古い版がどこで使われているかをたどれるようにする

残す理由は、権利の話だけではありません。文化庁のチェックリストは、AI生成物が著作物に当たるかどうかは、生成にあたって使った人が持っていた創作の意図と、その人の創作的な関与の程度によって判断されるとしています。つまり生成物が必ず自社の資産になるわけではありません。守りたいもの、他社に使われたら困るものは、生成で作らないという判断につながります。束1でロゴを生成の対象から外したのは、この延長線上にあります。

棚の置き方にも要点があります。1枚ずつ置くと探せません。束ごとに置き場を分け、資料の型には正しい設定を入れた状態で置いておきます。探させるのではなく、使う場所にあらかじめ置いておく。表紙の型を開いた時点で色と書体が正しい、という状態を作れば、その資料については束2と束3の関門を通す必要すらなくなります。

配り方:読ませずに守らせる形にする

原本を読ませる運用は続きません。読む時間が取れる人だけが守り、忙しい人から順に外れていきます。置き換える先は3つです。表紙も見出しも図もすでに正しい資料の型。ロゴと図と色の見本をまとめた部品の一式。そして、素材を探す場所を1か所にする入口の一本化です。

更新のときに崩れやすいので、手順を書いておきます。原本を直しても、型と部品が古いままなら、古いほうが使われ続けます。原本と型と部品は同時に更新すると手順に明記し、担当を1人にまとめます。担当を分けると、必ずどれかが遅れます。遅れたものが1つでもあると、現場は「どれが最新か分からない」という理由で、いちばん手元にあるものを使います。

守られているかどうかの測り方も決めます。守られ方そのものは測りにくいので、代わりに型を使わずに作られた資料の数を数えます。この数が減らないなら、原因は人ではなく型のほうにあります。使いにくい、必要な図がない、開くのが遅い。直すのは人の意識ではなく、型の使い勝手のほうです。数が減っていく限り、決まりは静かに守られている状態に近づいていきます。

ミニ用語解説:打ち合わせで意味がずれる言葉

最後に、言葉の定義を置きます。ここがずれたまま進むと、決まったはずの項目が、社外の制作会社に渡った時点で別のものになります。とくに次の6語は、業界と会社によって指す範囲が違います。

意味がずれやすい6語
  • トンマナ……声と言葉づかいの決まりを指すことも、見た目の統一を指すこともある。どちらの意味で使っているかを毎回そろえる
  • ガイドラインとレギュレーション……前者は考え方や背景を含む文書、後者は守るべき決まりの部分だけを指すことが多い。混ぜると守る範囲が曖昧になる
  • アイソレーション……ロゴの周りに空ける距離のこと。日本語で余白と言うと、紙の端の余白と混ざるので、どちらかに言葉を寄せる
  • 主色と副色……色の主従を表す順位であって、使う頻度の順ではない。副色のほうが面積が広い設計もあり得る
  • ウェイト……書体の太さ。段階の呼び名は書体ごとに違うので、呼び名ではなく実物を見て指定する
  • トーン……声の調子と、色や写真の明るさの両方に使われる。どちらか分かる語に言い換えてから話を進める

定義は、原本の冒頭にまとめないでください。冒頭の用語集は読まれません。その語を使っている項目の隣に、1行で置きます。読む人は必要になった瞬間にだけ定義を必要とするので、必要になる場所に置いておくのがいちばん確実です。原本が薄いまま保てるという副次的な効果もあります。

社外の制作会社と組むときは、最初の打ち合わせでこの6語を突き合わせます。5分あれば済みます。定義がずれたままの発注は、出来上がってから直すことになり、直す費用は作る費用より高くつきます。生成AIを使う会社に頼む場合は、あわせて入口と出口の関門の話もここでします。どの語を指示文に入れないか、出す前に何を確認したかをどう報告してもらうか。この2点を最初に決めておくと、後の確認がそのまま通ります。

まとめ

ブランドガイドラインが守られないのは、読む人の意識の問題ではありません。破られる項目には共通の形があります。判断が要る書き方をしている、参照先が本文の外にある、例外の扱いが書かれていない。この3つに当てはまる項目から順に崩れます。そして生成AIで素材を作るようになると、崩れる速度が上がります。作る人が増えるからではなく、1人が作る本数が増え、原本を開くという工程が最初に落ちるからです。

書く項目は6つの束に分かれます。ロゴと余白、色、書体、写真とイラスト、声と言葉づかい、禁じる形。束1では例外の書き方で差がつき、束2では色の数値より面積の比率が効きます。束3では代替の順番と使える範囲を書き、束4では選ぶ理由を1行ずつ添えます。束5は媒体をまたいで変わらない最小限に絞り、束6は道具の上で簡単にできてしまう操作から書きます。書いたら、判断が要る書き方の項目を、数値か列挙か二択に書き直します。

生成物が増えても効き続ける形は、関門の置き場所で決まります。作る前の入口、出す前の出口、出した後の棚。最初に作るのは出口です。出口に溜まった落ちた理由が、そのまま入口に載せる項目になります。入口では、載せる項目より入れてはいけない語のほうが重要になります。他社の商品名や作品名を指示文に書くと、既存の著作物を認識していたことを推認させる間接的な事実になり得る、と公表資料が述べているためです。

公表されている資料は、この設計と同じ方向を指しています。文化庁が令和6年7月31日に公表したチェックリストは、生成物を使う前に既存の著作物と似ていないかを文章と画像の検索で確かめること、生成に使った指示文など生成の過程を確認できる状態にしておくことを挙げています。デジタル庁が2026年6月12日に改定したガイドラインの利用ルール雛形には、判断に迷う場合は利活用しないこと、そしてAI生成物には著作物性が認められるとは限らないため、保護が必要な成果物の作成に生成AIを使うことは慎重に検討すること、と書かれています。

始め方は小さくて構いません。6つの束を見開き1枚ずつで書き、判断が要る項目を5つだけ数値に直し、出口の確認表を1枚作る。ここまでで、素材が増えても外れない骨格はできます。ガイドラインが返してくれるのは、そろった見た目そのものではなく、そろっていないと気づける状態です。この状態がないまま素材だけを増やすと、増えた本数の分だけ、誰も気づかない崩れが積み上がっていきます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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