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知財部が新しい商品名の候補を、自社と他社の登録商標の一覧から読み(称呼)の似たものを探し、一次調査の候補を出す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

新しい商品名の候補から自然な読みを挙げ、清音と濁音、長音の有無のような聞き間違えやすい違いをそろえたうえで、指定商品の類似群コードが重なる登録商標から読みの近いものを探します。知財部はその一覧を見て、本調査に回す候補を決めます。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
AIサービス
Azure AI/Google Vertex AI/OpenSearch
対象業界
EC/小売/製造
対象部門
知財
対象業務
情報検索/比較検討
主な課題
人手が足りない/属人化している/情報が見つからない
AIで行う処理
検索(RAG)
主な効果
判断支援/品質標準化/検索時間短縮
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
RAG・個別開発(大)
人間の確認
条件付き
現在工数
80h/月
AI導入後
24h/月
想定削減
70%
年間削減
672h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. マーケティング部の依頼のフォームから、商品名の候補と、使う商品(菓子、飲料、洗剤など)を受け取る
  2. 候補ごとに、自然に生じる読みを考える(英字や漢字の名前は読みが複数になる)
  3. 使う商品から、調べる区分と類似群コードを決める
  4. 調査用のデータベースで、読みをそのまま、語尾を変えて、濁点を外して、長音を外して、と何通りも引く
  5. 当たった商標の指定商品と権利者、出願・登録の状態を見て、近いものを書き出す
  6. 自社の管理台帳で、自社の登録商標と重なっていないかを見る
  7. 候補ごとに「見当たらない」「近いものあり」をまとめ、マーケティング部に返す
導入後(After)
  1. 自動毎週、調査用のデータベースから書き出した商標の一覧と、自社の管理台帳を取り込み、読みをそろえた形を作って索引に入れる
  2. 人知財部の担当が、依頼のフォームの候補を一覧の画面に取り込む
  3. 自動候補ごとに、Claude が自然に生じる読みと、名前の中で独立して読まれうる部分を挙げる
  4. 自動使う商品から、担当が決めておいた類似群コードの表で絞り込みの条件を作る
  5. 自動OpenSearch が、読みのそろえ方ごとに近い商標を探し、どのそろえ方で当たったかを付けて返す
  6. 自動当たった商標ごとに、候補の読みとの違い(どの音がどう違うか)を規則で書き出す
  7. 人担当が一覧を見て、近いものに印を付け、本調査に回すかを決める
各工程の詳しい説明を読む
  1. マーケティング部の依頼のフォームから、商品名の候補と、使う商品(菓子、飲料、洗剤など)を受け取る
  2. 候補ごとに、自然に生じる読みを考える(英字や漢字の名前は読みが複数になる)
  3. 使う商品から、調べる区分と類似群コードを決める
  4. 調査用のデータベースで、読みをそのまま、語尾を変えて、濁点を外して、長音を外して、と何通りも引く
  5. 当たった商標の指定商品と権利者、出願・登録の状態を見て、近いものを書き出す
  6. 自社の管理台帳で、自社の登録商標と重なっていないかを見る
  7. 候補ごとに「見当たらない」「近いものあり」をまとめ、マーケティング部に返す

(a)引き方で拾えるものが変わる。 4番目で何通り引くかは担当次第です。濁点を外して引く担当と引かない担当では、「バーテラックス」と「バーデラックス」のような組を拾えるかが分かれます。

(b)同じ読みを何度も引く。 似た語尾の候補が毎月出ます。先月も引いた「〜モア」の先行商標を、今月も一から引き直します。

(c)指定商品の確かめに時間がかかる。 当たった商標が何百件あると、1件ずつ指定商品を見て、使う商品と類似するかを確かめます。関係の無い区分の商標を見ている時間が長い。

(d)候補が増える時期に追いつかない。 新商品の発表の前は候補が一度に届きます。引き方を省いた一次調査は、本調査で近い商標が見つかって名前を差し替える手戻りになります。

  1. 【自動】 毎週、調査用のデータベースから書き出した商標の一覧と、自社の管理台帳を取り込み、読みをそろえた形を作って索引に入れる
  2. 【人】 知財部の担当が、依頼のフォームの候補を一覧の画面に取り込む
  3. 【自動】 候補ごとに、Claude が自然に生じる読みと、名前の中で独立して読まれうる部分を挙げる
  4. 【自動】 使う商品から、担当が決めておいた類似群コードの表で絞り込みの条件を作る
  5. 【自動】 OpenSearch が、読みのそろえ方ごとに近い商標を探し、どのそろえ方で当たったかを付けて返す
  6. 【自動】 当たった商標ごとに、候補の読みとの違い(どの音がどう違うか)を規則で書き出す
  7. 【人】 担当が一覧を見て、近いものに印を付け、本調査に回すかを決める

7番目を人が行うのは、類否の判断が全体の観察だからです。 審査基準は、外観・称呼・観念によって需要者に与える印象を総合して全体的に観察するとしています。この構成が並べるのは読みが近いという材料で、類似するかどうかではありません。

3番目のAIの仕事は、読みを挙げるところまでです。 探すのも、違いを書き出すのも、規則と索引の仕事です。

02今回想定するシステム構成

構成図
調査用のデータベースから書き出した商標の一覧(CSV)・自社の管理台帳
   ▼【トリガー】毎週の取り込み
AWS Lambda ── 読みを片仮名にそろえ、類似群コードを配列にする
   ▼
Amazon OpenSearch Service
   │   reading_exact:そのままの読み(keyword)
   │   reading_loose:清濁・長音・促音・拗音をそろえた形(ngram)
   │   reading_vowel:母音だけにした形(keyword)
   ▼【人】候補を一覧の画面に取り込む
AWS Lambda
   ├──▶ Claude(Amazon Bedrock)── 自然な読みと、独立して読まれうる部分(構造化出力)
   ├──▶ OpenSearch ── 類似群コードで絞り、3つのそろえ方で探す
   ├──▶ 違いの書き出し(規則)
   ▼
一覧の画面 ──【人】近いものに印、本調査に回すかを決める
役割想定する製品代替候補
検索基盤Amazon OpenSearch Service(mapping の文字フィルタ、ngram、fuzzy)Azure AI Search、Vertex AI Search(Agent Search)
生成AIClaude(Amazon Bedrock の Converse API、構造化出力)Azure OpenAI(Microsoft Foundry)、Gemini API
連携AWS Lambda(取り込み、一覧の画面からの呼び出し、違いの書き出し)AWS Step Functions
保管Amazon S3(書き出した一覧の原本、調査の記録)社内のファイルサーバー

調査用のデータベースと自社の管理台帳には、この構成から書き込みません。 書き出した一覧を読み、索引を作るだけです。一覧を自社の仕組みに取り込んでよいかは、データベースの利用の条件で先に確かめます。

日本語の処理の部品は、Amazon OpenSearch Service に最初から入っています。 AWS の公式のページでは、Japanese(kuromoji)Analysis と ICU Analysis のプラグインは OpenSearch 1.0 以降で使えます。この構成の中心は、読みを文字の置き換えでそろえる mapping の文字フィルタです。 公式のドキュメントでは、キーと値の組で文字を置き換え、最も長く当たる組を優先し、置き換え先を空にもできます。「シャ」を「サ」に、「ー」を空に、という置き換えを並べるだけで、聞き間違えやすい違いをそろえられます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

起点は2つあります。毎週の取り込みと、担当の取り込みのボタンです。

毎週の取り込みは、調査用のデータベースから書き出した一覧を S3 に置いたことで動きます。書き出す範囲は、自社が商品を出す区分の商標に限ります。 出願中のもの、登録のもの、消滅したもの(参考に残す)を状態の項目で分けます。

担当のボタンは、依頼のフォームの候補を一覧の画面に取り込んだ後に押します。候補を1件ずつではなく、依頼ごとにまとめて流します。 同じ商品の候補は同じ類似群コードで探すので、まとめると条件を1回作れば済みます。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
候補商品名の候補(片仮名・英字・漢字)、使う商品、発売の予定の時期依頼のフォーム
商標の一覧登録番号・出願番号、商標(文字)、称呼、区分、類似群コード、指定商品、権利者、状態調査用のデータベースから書き出したCSV
自社の管理台帳自社の登録商標・出願中の商標、使っている商品知財部の表計算
商品と類似群コードの表社内の商品の分け方(菓子、飲料、洗剤など)と、見るべき類似群コード知財部で作る表

質を決めるのは、いちばん下の表です。 特許庁の類似商品・役務審査基準は、類似関係にあると推定する商品・役務をグループにし、各グループに検索のための特定のコードを付けたもので、審査官の統一的な基準として使われています。現行は国際分類第13-2026版対応で、2026年1月1日以降の出願に適用されます。社内の商品の分け方ごとに、見るべきコードを知財部が決めて表にします。

称呼の列は、データベースの参考の情報として入っていることが多い列です。 入っていない商標は、次の前処理で読みを作ります。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこからどう取るか
読みがそのまま同じ商標商標の索引reading_exact に term
清濁・長音・促音・拗音の違いだけの商標商標の索引reading_loose に match(ngram、一致の割合の下限つき)
1〜2音違いの商標商標の索引reading_exact に fuzzy
母音の並びが同じ商標商標の索引reading_vowel に term
自社の商標との重なり自社の索引上と同じ探し方

索引の設定は次のようになります(置き換えの組は一部だけを示します)。

PUT /tm_marks
{
  "settings": { "index.max_ngram_diff": 1,
    "analysis": {
      "char_filter": {
        "loose_map": { "type": "mapping", "mappings": [
          "ー => ", "ッ => ", "ヴ => ブ",
          "ガ => カ", "ギ => キ", "ザ => サ", "ダ => タ", "バ => ハ", "パ => ハ",
          "シャ => サ", "シュ => ス", "ショ => ソ", "キャ => カ" ] },
        "vowel_map": { "type": "mapping", "mappings": [
          "カ => ア", "キ => イ", "ク => ウ", "ケ => エ", "コ => オ",
          "ー => ", "ッ => ", "ン => " ] }
      },
      "tokenizer": {
        "kana_2_3": { "type": "ngram", "min_gram": 2, "max_gram": 3 }
      },
      "analyzer": {
        "loose": { "type": "custom", "char_filter": ["loose_map"],
                   "tokenizer": "kana_2_3" }
      },
      "normalizer": {
        "vowel": { "type": "custom", "char_filter": ["vowel_map"] }
      }
  } },
  "mappings": { "properties": {
    "mark_no":       { "type": "keyword" },
    "mark_text":     { "type": "text" },
    "reading_exact": { "type": "keyword" },
    "reading_loose": { "type": "text", "analyzer": "loose" },
    "reading_vowel": { "type": "keyword", "normalizer": "vowel" },
    "group_codes":   { "type": "keyword" },
    "classes":       { "type": "keyword" },
    "holder":        { "type": "keyword" },
    "status":        { "type": "keyword" }
  } }
}

reading_loose は ngram で2〜3文字に切ります。 公式のドキュメントでは、ngram の分かち書きは指定した長さの重なり合う文字の並びを作り、min_gram と max_gram の差は索引の設定 index.max_ngram_diff(既定は1)までです。2と3なら既定のままで足ります。 「ルミナ」をそろえた形は「ルミ」「ミナ」「ルミナ」になり、「ルミーナ」も長音が消えて同じ形になります。

探す形は次のとおりです。

POST /tm_marks/_search
{ "query": { "bool": {
    "filter": [ { "terms": { "group_codes": ["30A01", "30A02"] } },
                { "terms": { "status": ["registered", "pending"] } } ],
    "should": [
      { "term":  { "reading_exact": { "value": "ルミナ", "boost": 4 } } },
      { "term":  { "reading_vowel": { "value": "ルミナ", "boost": 2 } } },
      { "fuzzy": { "reading_exact": { "value": "ルミナ", "fuzziness": 1,
                                       "prefix_length": 1 } } },
      { "match": { "reading_loose": { "query": "ルミナ",
                                      "minimum_should_match": "70%" } } } ],
    "minimum_should_match": 1 } },
  "size": 100 }

類似群コードは filter に置きます。 点数に関わらず、コードの重ならない商標は一覧に出ません。読みのそろえ方は should に並べ、どれで当たったかを後で調べるために、そろえ方ごとに名前を付けて記録します。

term の値は、検索の側でも同じそろえ方を通ります。 reading_vowel は normalizer なので、「ルミナ」と書いて探しても母音の形「ウイア」で引かれます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 読みを片仮名にそろえる … 平仮名の称呼は片仮名に、半角の片仮名は全角にします
  2. 読みの無い商標に読みを作る … 漢字の商標は、kuromoji の読みの形(kuromoji_readingform)で片仮名の読みを作り、reading_source に「自動」と書きます
  3. 1つの商標に読みが複数あれば、すべて持つ … 称呼の列に複数が書かれていれば配列にします
  4. 類似群コードを配列にする … 指定商品ごとのコードを1つの配列にまとめます
  5. 状態をそろえる … 出願中・登録・消滅を3つの値にします
  6. 候補の読みを作る … Claude で、候補ごとに自然な読みと、独立して読まれうる部分を挙げます(次の項)

2番目の読みは、あくまで補いです。 公式のドキュメントでは、kuromoji の読みの形のフィルタは、kuromoji の分かち書きが持つ読みの情報で各語を片仮名(または英字)の読みに置き換えます。辞書の読みなので、商標として自然な読みと違うことがあります。 審査基準も、自然に称呼されるものだけが生じ、不自然な称呼は生じないとしています。自動で作った読みで当たったものには、一覧で印を付けます。

Step5

AIに処理させる

AIの仕事は、候補の名前から探すための読みを挙げることだけです。 探すのも、違いを書き出すのも、規則と索引の仕事です。

させることさせないこと
候補の名前から自然に生じる読みを挙げる(複数あればすべて)不自然な読みを足すこと
英字の名前の読みを、ローマ字読みと英語読みで挙げる読みを1つに決めること
名前の中で独立して読まれうる部分を挙げる要部がどこかの判断
振り仮名があれば、振り仮名と字そのものの読みの両方を挙げる振り仮名だけにすること
読みを挙げた理由を短く書く類似するかどうかの判断

「読みを1つに決めない」が、いちばん大事な線です。 審査基準は、2以上の自然な称呼を持つ文字の商標は、その一方を振り仮名として付けても、他の一方の称呼も生ずるとしています。読みを1つに絞ると、もう一方の読みで近い商標を見落とします。

独立して読まれうる部分を挙げるのは、名前が長いときのためです。 審査基準は、全体の観察だけでなく、構成部分の一部を他人の商標と比べて判断する場合があるとしています。「プチモアショコラ」なら「プチモア」でも探します。ただし、どこを要部と見るかの判断はさせず、探す範囲を広げるためだけに使います。

Step6

指示内容を固定する

あなたはメーカーの知財部で、商品名の候補の一次調査を手伝う立場です。
候補の名前から、先行商標を探すための読み(称呼)を挙げてください。
類似するかどうか、登録できるかどうかは判断しないでください。

【挙げるもの】
- readings: 名前から自然に生じる読みを、片仮名ですべて。
  英字の名前は、ローマ字読みと英語読みの両方が自然なら両方
- parts: 名前の中で、それだけで読まれうるまとまり(語)。
  そのまとまりの読みも片仮名で
- notes: 読みを挙げた理由を1行ずつ

【厳守事項】
- 自然に読まれる読みだけを挙げてください。
  漢字の音読みと訓読みを機械的に組み合わせた不自然な読みは挙げないでください。
- 読みを1つに絞らないでください。迷うものは両方挙げてください。
- 振り仮名が付いている場合は、振り仮名の読みと、
  字そのものから自然に生じる読みの両方を挙げてください。
- 長音・促音・濁点は、自然に読まれるとおりに書いてください。
  そろえる処理は別の仕組みで行うので、自分で外したり足したりしないでください。
- 「類似」「非類似」「登録可能」「問題なし」などの判断を書かないでください。
- 区分や類似群コードを推し量らないでください。

【候補の名前】{candidate}
【振り仮名(あれば)】{furigana}

「そろえる処理を自分でしない」を明記するのは、そろえる規則を1か所に置くためです。 AIが「ルミーナ」を「ルミナ」に直して返すと、索引のそろえ方と違う直し方が混ざり、どのそろえ方で当たったかの記録が意味を持たなくなります。

Step7

出力形式を固定する

Bedrock の Converse API の outputConfig.textFormat に JSON スキーマを渡し、次の形で受け取ります。

{
  "candidate": "",
  "readings": [ { "kana": "", "basis": "natural | romaji | english | furigana" } ],
  "parts": [ { "text": "", "kana": "" } ],
  "notes": [""]
}

公式のドキュメントでは、Converse API の outputConfig.textFormat に JSON スキーマを渡すと応答がスキーマに沿い、enum が使えます。basis を enum で閉じ、読みの出どころが一覧で分かるようにします。

画面に出す一覧は、検索の結果から Lambda が作ります。

列中身
候補の読みどの読み・どの部分で探したか
当たった商標商標(文字)、称呼、登録番号・出願番号、状態
当たり方そのまま/清濁・長音・促音・拗音/1音違い/母音の並び/自動の読み
違い規則で書き出した違い(「3音目:ダ↔ナ」「長音の有無」)
重なるコード候補の商品のコードと、当たった商標の指定商品のコードの重なり
権利者自社か他社か

「違い」の列は、AIではなく規則で書き出します。 候補の読みと当たった商標の読みを1音ずつ比べ、清濁の差、長音・促音の有無、拗音と直音の差を名前で書きます。担当が審査基準の例と見比べる材料になります。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
Amazon S3書き出した一覧と管理台帳の置き場置かれたことで Lambda が動く
Amazon OpenSearch ServiceLambda からの索引への登録と検索他社の商標の索引、自社の商標の索引
Amazon BedrockConverse API(Claude)候補の読みと部分
依頼のフォーム依頼の一覧を読む(読み取りのみ)候補と使う商品
一覧の画面社内の画面候補ごとの当たった商標、担当の印

調査用のデータベースの画面は、引き続き使います。 一覧で気になった商標は、データベースの画面で最新の状態と公報を確かめます。毎週の書き出しの間に状態が変わることがあるからです。

Step9

人が確認する

  1. 候補の読みを見る … Claude が挙げた読みに、抜けや不自然なものが無いかを見ます。足したい読みがあれば、画面で足して探し直します
  2. 当たり方の順に見る … 「そのまま」から順に、「母音の並び」は最後に見ます
  3. 近いものに印を付ける … 「近い」「やや近い」「遠い」の印と、理由を1行で書きます
  4. 本調査に回すかを決める … 「近い」が1件でもあれば本調査に回す、のように部の決まりで決めます

1番目を省かないでください。 読みが抜けていれば、その読みで近い商標は一覧に出ません。検索の仕組みがどれだけ丁寧でも、入口の読みが足りなければ拾えません。

4番目の決まりは、部で文書にしておきます。 担当ごとに「やや近い」の扱いが違うと、一覧がそろっても本調査に回す件数がそろいません。印の付け方と、本調査に回す条件を先に決めることが、品質をそろえる本体です。

Step10

例外に対処する

起きること対応
候補の使う商品が商品と類似群コードの表に無い検索をせず、担当にコードを選んでもらう
当たった商標が多すぎる(100件を超える)「そのまま」と「清濁・長音・促音・拗音」だけで並べ、残りは件数だけ出す
1〜2音の短い読みの候補fuzzy と母音の並びは使わない(ほぼ全件に当たる)
構造化出力が返らない担当が読みを手で入れて検索だけを使う
図形を含む候補文字の部分だけで探し、図形は対象外と一覧に書く
自動の読みでしか当たらない一覧に「自動の読み」と出し、データベースの画面で称呼を確かめる

3行目は、編集距離の性質によるものです。 公式のドキュメントでは、fuzzy の検索は編集距離の範囲で語を広げ、広げる数の既定は50で、先頭の固定の文字数(prefix_length)が0だと広げる数が増えて重くなるとされています。3音の読みで1音違いを許すと、ほとんどの3音の商標が当たります。

Step11

記録を残す

  • 候補ごとの、名前、使う商品、Claude が挙げた読みと部分、担当が足した読み
  • 検索の条件(類似群コード、そろえ方ごとの問い合わせ)と、当たった商標と当たり方
  • 担当の印と理由、本調査に回したか
  • 本調査の結果(弁理士の見解の要旨)
  • 取り込んだ一覧の書き出しの日

本調査の結果を残すのは、一次調査の引き方を直すためです。 本調査で近い商標が見つかり、一次調査の一覧に無かったなら、どの読みのそろえ方が足りなかったかが分かります。 逆に、一覧で「近い」と印を付けたのに本調査で問題が無かった組も残します。そろえすぎている箇所が分かり、一覧を短くする材料になります。

04実装レベルの3段階

最小構成:表計算で読みをそろえた列を足して引く / 聞き間違えやすい違いの吸収
半自動化:上記+OpenSearch に商標の一覧を入れ、類似群コードで絞って3つのそろえ方で探す画面を作る / 読みの近い商標の検索
本格構成:上記+候補から読みと部分を挙げ、違いを書き出して一覧にする / 候補から一覧まで

半自動化で、1件30分が15分程度になります。 何通りも引く時間は無くなりますが、候補の読みを考える作業と、当たった商標の違いを1件ずつ見る作業が残ります。本格構成で9分になり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の画面を1か月使うと、どのそろえ方で当たるものが多いか、どの語尾で一覧があふれるかが先に分かります。そろえ方を直してからAIの読みを足すほうが、拾えなかったときに読みの不足かそろえ方の不足かを分けて見られます。 本格構成に進んでも、索引のそろえ方は固定しません。 ありふれた語尾(「〜ン」「〜ル」など)で一覧があふれる候補が続くなら、その語尾だけ母音の並びでの検索を外すといった直し方をします。直したら、過去の本調査の答えで拾える件数が減っていないかを、毎回確かめます。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
160 件
1件あたり現在時間
30 分
1件あたり導入後時間
9 分
現在  160件 × 30分 ÷ 60 = 80 時間/月
導入後 160件 × 9分 ÷ 60 = 24 時間/月
月間削減時間
56h
削減率
70%
年間削減時間
672h
年間金額換算(時間単価4,000円)
269万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 食品・日用品・化粧品など商品の数が多く、新商品や限定品のたびに商品名の候補がマーケティング部から月に百件を超えて届くメーカーで、知財部が出願の前に一次の調査をしている場合。片仮名の造語の商品名が多く、文字の一致では引けない「読みの似た商標」を探すのに時間がかかり、探し方が担当によって違う場合。自社と他社の登録商標の一覧を、調査用のデータベースからデータで受け取れる場合。AWS を使える担当か委託先がいる場合。
向いていない
  1. 商品名の候補が月に数件で、担当が毎回データベースの画面で引けば足りる場合。図形や色彩の商標が中心で、読みで探す場面が少ない場合。候補をすべて弁理士の本調査に回す方針の場合。なお、商標が類似するかどうか、登録できるかどうか、他社の権利に触れるかどうかの判断は、この構成では代替できません。読みの近い商標を探して並べるまでで、判断は知財部と弁理士が行います。

07最小構成で試す方法

  1. 去年、本調査に回した候補から20件を選ぶ(本調査で近い商標が見つかったものを半分入れる)
  2. 本調査の報告書から、見つかった近い商標を書き出しておく
  3. 調査用のデータベースから、その区分の商標の一覧をCSVで書き出す
  4. 表計算で称呼の列に、長音・促音を消し、濁点を外した列と、母音だけにした列を足す
  5. 20件の候補の読みを同じ規則で直し、足した列で引いてみる

2番目の書き出しは必ず先に済ませてください。 本調査で見つかった商標が答えで、それと比べないと「拾えた」の意味が決まりません。4番目と5番目だけで、効果の大半が分かります。

出てきた内容判断
本調査で見つかった商標が、足した列で拾えたOpenSearch の索引に進む
読みの違いではなく、要部の取り方で見つかっていた部分で探す仕組みが要る。構成は有効
称呼の列が空の商標が多いデータの入手が先。 データベースの書き出しの範囲を見直す

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
文字の一致でしか当たらない読みをそろえた形を別の項目に持つ
一覧があふれる類似群コードを filter に置く。 短い読みでは fuzzy と母音の並びを使わない
拗音の置き換えが効かないmapping は最も長く当たる組を優先する。「シャ」のような2文字の組を必ず書く(無いと「シ」と「ャ」が別々に置き換わる)
ngram の長さで索引が作れないmax_gram と min_gram の差は index.max_ngram_diff(既定1)まで
自動の読みが不自然kuromoji の読みは辞書の読み。印を付け、称呼の列を優先する
AIが読みを1つに絞る「両方挙げる」を指示し、画面で担当が足せるようにする
AIが類似の判断を書く指示で禁じ、スキーマに判断の欄を作らない
状態が古い一覧で気になったものは、データベースの画面で確かめる

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 文字の一致だけでは拾えず、そろえすぎると一覧が読めなくなります。索引を作ったら、過去の本調査で見つかった商標が、候補の読みから一覧に出ることを必ず確かめてください。

下の2行も、早いうちに効いてきます。 AIが「この商標とは非類似です」と書けば、担当はそれを読んで印を付けます。判断の欄を最初から作らないことが、いちばん確かな防ぎ方です。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 発売前の商品名の候補、使う商品、発売の予定の時期、自社と他社の商標の情報です。候補の名前は、発売前の新商品の情報そのものです。

  1. 候補の名前を外に出さない … 発売前の商品名は、漏れれば他社に先に出願されるおそれがあります。Bedrock に渡すのは候補の名前と振り仮名だけにし、商品の中身や発売の時期は渡しません
  2. データベースの利用の条件を守る … 書き出した一覧を自社の索引に入れてよいか、社外に出さないなどの条件を確かめておきます
  3. 類否の判断は人が行う … この構成は読みの近い商標を並べるだけです。類似するか、登録できるか、他社の権利に触れるかは、知財部と弁理士が判断します
  4. 一次調査の結果を「問題なし」と伝えない … マーケティング部への返事は「一次調査で近いものが見当たらない」とし、本調査の前に名前を決めてよいとは書きません
  5. ログを見られる人を絞る … 候補の名前と調査の記録は、知財部とマーケティング部の担当に限ります

誤りが起きた場合のリスクは、近い商標を見落としたまま名前を決め、発売の後に名前を変えることです。 読みを複数挙げること、3つのそろえ方、本調査の結果での見直しの3つで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:答えを集める

過去の本調査の報告書から、見つかった近い商標と候補の組を集めます。どの読みの違いで近かったかも書き出します。

2週目:20件で試す

第8章のとおり、表計算で読みをそろえた列を足し、20件で拾える件数を比べます。

3週目:商品と類似群コードの表を作る

社内の商品の分け方ごとに、見るべき類似群コードを決めます。国際分類の版の切り替えのときに、表を見直す担当も決めます。

4週目:索引を作る

OpenSearch に3つのそろえ方の項目で索引を作り、候補の読みを担当が打ち込んで探す画面を作ります。この時点ではAIで読みを挙げることはせず、担当が読みを入れます。

2か月目: Claude で読みと部分を挙げる処理と、違いの書き出しを足します。3か月目以降: 本調査で見つかったのに一次調査の一覧に無かった商標の件数を毎月数え、1件30分が何分になったかを実測します。その件数が数か月続けて0になった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-15/最終更新:2026-10-23
確認した内容情報源確認日
商標の類否は外観・称呼・観念等による印象を総合して全体的に観察すること。構成部分の一部を比べる場合があること。称呼は自然に認識する音で、不自然な称呼は生じないこと、2以上の自然な称呼は振り仮名があっても両方生ずること。称呼の類否を音質・音量・音調・音節で見て、清音と濁音・半濁音の差、長音・促音の有無、拗音と直音の差などで近く聞こえることが多いとする例。商品の類否は原則として類似商品・役務審査基準によること特許庁: 商標審査基準 第4条第1項第11号2026-10-15
類似商品・役務審査基準が、類似関係にあると推定する商品・役務をグループにし、検索のための特定のコードを付けたものであること。国際分類第13-2026版対応が2026年1月1日以降の出願に適用されること特許庁: 類似商品・役務審査基準〔国際分類第13-2026版対応〕2026-10-15
mapping の文字フィルタがキーと値の組で文字を置き換え、最も長く当たる組を優先し、置き換え先を空にできることOpenSearch: Mapping character filter2026-10-15
ngram の分かち書きが重なり合う文字の並びを作ること。min_gram・max_gram の既定と、差が index.max_ngram_diff(既定1)までであることOpenSearch: N-gram tokenizer2026-10-15
fuzzy の検索が編集距離の範囲で語を広げること。max_expansions の既定が50、prefix_length の既定が0で、広げる数が多いと重くなることOpenSearch: Fuzzy query2026-10-15
kuromoji の読みの形のフィルタが、kuromoji の分かち書きの読みの情報で各語を片仮名(または英字)の読みに置き換えることOpenSearch: Kuromoji reading form token filter2026-10-15
Amazon OpenSearch Service で Japanese(kuromoji)Analysis と ICU Analysis のプラグインが OpenSearch 1.0 以降で使えることAWS: Plugins by engine version in Amazon OpenSearch Service2026-10-15
Converse API の outputConfig.textFormat で JSON スキーマに沿った出力が得られ、enum が使えることAWS: Structured outputs(Amazon Bedrock)2026-10-15

商標が類似するか、登録できるか、他社の権利に触れるかの判断は、知財部と弁理士が行ってください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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