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提案書や報告書の数字と社名を、元データと突き合わせて公開前に確認する

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

社外に出す資料を入力に、書かれている数値と固有名詞を社内の数値台帳・顧客表記台帳と突き合わせ、食い違いと出典のない数値を一覧にします。確認する人の作業は、資料を最初から読んで数字を探すことから、指摘された箇所を確かめることに変わります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Google Apps Script/Microsoft Copilot/Power Automate/Python
対象業界
IT・SaaS/保険/広告/金融
対象部門
マーケティング/経営企画
対象業務
内容確認・チェック
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
品質標準化/工数削減/機会損失防止
導入難易度
★☆☆☆☆
実装レベル
最小構成
費用感
既存ツールのみ(小)
人間の確認
必須
現在工数
35h/月
AI導入後
12h/月
想定削減
66%
年間削減
276h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 各部門が資料を作り、公開前チェックの依頼をフォームで出す
  2. 確認担当が資料を開いて最初から読む
  3. 数値が出てくるたびに、どこから来た数字かを確認する(作成者に聞く/CRMを見る/BIツールを開く/過去の資料を探す)
  4. 顧客名が出てくるたびに、正式表記と公開可否を顧客管理台帳で確認する
  5. 引用されている外部統計の出典と年次を確認する
  6. 前回の類似資料と数値が食い違っていないかを確認する
  7. 指摘をまとめて作成者に返す
  8. 修正版を受け取り、指摘箇所だけを再確認する
導入後(After)
  1. 各部門が資料を作り、公開前チェックの依頼をフォームで出す
  2. 自動資料から数値・固有名詞・外部統計の引用を抜き出す
  3. 自動数値台帳と突き合わせ、一致・不一致・台帳にないものに分ける
  4. 自動顧客名を顧客表記台帳と突き合わせ、正式表記と公開可否を判定する
  5. 自動外部統計の引用について、出典と年次が書かれているかを判定する
  6. 自動同じ月に公開予定の他の資料と、数値が食い違っていないかを確認する
  7. 自動指摘の一覧を作る(該当箇所・台帳の値・根拠)
  8. 確認担当が指摘を確かめ、判断を加えて作成者に返す
  9. 作成者が修正する
  10. 自動修正版で、指摘箇所が直っているかを再確認する
各工程の詳しい説明を読む
  1. 各部門が資料を作り、公開前チェックの依頼をフォームで出す
  2. 確認担当が資料を開いて最初から読む
  3. 数値が出てくるたびに、どこから来た数字かを確認する(作成者に聞く/CRMを見る/BIツールを開く/過去の資料を探す)
  4. 顧客名が出てくるたびに、正式表記と公開可否を顧客管理台帳で確認する
  5. 引用されている外部統計の出典と年次を確認する
  6. 前回の類似資料と数値が食い違っていないかを確認する
  7. 指摘をまとめて作成者に返す
  8. 修正版を受け取り、指摘箇所だけを再確認する

問題は5つあります。

(a)数字の出どころを探すのに時間がかかる。 「導入社数1,200社」と書かれていても、いつ時点の数字か、どの定義(契約社数か稼働社数か)かが書かれていません。作成者に聞き直すと、返事を待つ時間が発生します。

(b)古い数字が使い回される。 過去の資料をコピーして作ると、数値がそのまま残ります。半年前の「1,050社」が今月の提案書に載っていても、読んだだけでは気づけません。

(c)顧客名の公開可否が追いきれない。 事例掲載の同意を得ている顧客と、社名非公開の顧客が混在します。同意していない顧客名を出すと、契約上の問題になります。

(d)同じ月の資料で数値が違う。 プレスリリースと提案書で「1,200社」「1,180社」と書かれていることがあります。どちらも間違いではない(基準日が違う)のですが、外から見ると矛盾します。

(e)確認が2名に依存している。 この2名が休むと、公開が止まります。他の人に頼めないのは、「どの数字をどこで確認するか」が2名の頭の中にあるためです。

  1. 各部門が資料を作り、公開前チェックの依頼をフォームで出す
  2. 【自動】 資料から数値・固有名詞・外部統計の引用を抜き出す
  3. 【自動】 数値台帳と突き合わせ、一致・不一致・台帳にないものに分ける
  4. 【自動】 顧客名を顧客表記台帳と突き合わせ、正式表記と公開可否を判定する
  5. 【自動】 外部統計の引用について、出典と年次が書かれているかを判定する
  6. 【自動】 同じ月に公開予定の他の資料と、数値が食い違っていないかを確認する
  7. 【自動】 指摘の一覧を作る(該当箇所・台帳の値・根拠)
  8. 【人】 確認担当が指摘を確かめ、判断を加えて作成者に返す
  9. 【人】 作成者が修正する
  10. 【自動】 修正版で、指摘箇所が直っているかを再確認する

自動化されるのは「拾う」「探す」「突き合わせる」の3つです。残るのは「この違いが問題かを判断する」で、ここは確認担当の仕事です。

02今回想定するシステム構成

構成図
資料の作成者(営業・マーケ・プロダクト)
   │
   ▼ 公開前チェックの依頼(フォームに資料を添付)
   │
   ▼
生成AI(プロジェクトに台帳と確認ルールを置く)
   │
   ├──▶ 数値の抽出 + 数値台帳との突き合わせ
   ├──▶ 固有名詞の抽出 + 顧客表記台帳との突き合わせ
   ├──▶ 外部統計の引用 + 出典・年次の有無の判定
   └──▶ 同月公開予定の資料との突き合わせ
   │
   ▼
指摘の一覧 ──【確認担当が判断】──【作成者が修正】
   │
   ▼
修正版の再確認 ── 公開
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude(プロジェクト。半自動化では Claude API)ChatGPT(プロジェクト)、Gemini(Gem)、Microsoft 365 Copilot
連携Google Apps Script(半自動化の段階)Power Automate、Python
資料の提出Google フォームMicrosoft Forms、社内チャット
台帳の置き場Google スプレッドシートSharePoint リスト

最小構成では、生成AI以外は要りません。 数値台帳と確認ルールをプロジェクトのナレッジに置き、資料を貼って確認させるところから始められます。Claude のプロジェクトには参照用の文書をアップロードでき、会話の中で読ませられます。ここが★1の理由です。

この構成でいちばん手間がかかるのは、AIの設定ではなく「数値台帳を作ること」です。 台帳がなければ、突き合わせる相手がありません。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

公開前チェックの依頼が出されたことを起点にします。

最小構成では、確認担当が依頼を受けたときに手で資料を貼ります。半自動化では、Googleフォームの送信をきっかけに Apps Script が動きます。Apps Script のインストール可能なトリガーには「フォーム送信時」があり、回答が入るたびに関数を実行できます。

依頼の締め切りを運用で決めてください。 「公開の3営業日前まで」といった決めがないと、確認の時間がなくなり、この構成があっても間に合いません。これは技術で解決できない部分です。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
確認対象の資料提案書・事例・リリース・登壇資料など(Word/PowerPoint/PDF/Googleドキュメント)依頼フォーム
数値台帳社外に出してよい数値と、その定義・基準日・出典・更新日スプレッドシート(新しく作る
顧客表記台帳顧客の正式社名、略称、事例掲載の同意有無、掲載可能な表現(社名可/業種のみ/完全匿名)顧客管理台帳
製品名・用語台帳自社製品の正式名称、表記ルール、旧名称マーケティング
外部統計の一覧引用してよい外部データと、その出典URL・年次・利用条件マーケティング
同月公開予定の資料今月出す予定の他の資料と、そこに載る数値公開カレンダー

数値台帳の作り方が、この構成の成否を決めます。 1行に1つの数値を持ち、次の列を必ず入れてください。

指標名導入社数
1,240
単位
定義有償契約が有効な法人の数(無償トライアル・グループ会社の重複を除く)
基準日2026-09-01
出典CRM/レポートID xxxx
更新頻度月次(毎月第1営業日)
社外公開の可否
丸め方「1,200社以上」と表記する(1の位までは出さない)
最終更新日2026-09-02

「定義」と「基準日」と「丸め方」の3列が要です。 これがないと、「1,240社」と「1,200社以上」のどちらも正しいのか、それとも食い違いなのかが判定できません。

台帳に載せる数値は、社外資料に実際に出てくるものだけで足ります。50〜100行から始められます。

Step3

データの取得方法を決める

資料からのテキスト抽出: 形式ごとに扱いが違います。

形式注意点
Googleドキュメント/Word本文と表はそのまま取れる
PowerPoint図形の中の文字、グラフのデータラベルが落ちやすい
PDFテキスト層があればそのまま。スキャンPDFはOCRが必要
画像(グラフのスクリーンショット)テキストとして取れない

PowerPoint と画像がこの業務の弱点です。 数値はグラフの中に入っていることが多く、テキスト抽出では拾えません。対策は2つあります。 ひとつは、確認依頼のときにグラフの元データも添付してもらうこと。もうひとつは、画像として読ませられる生成AIに、スライドを画像で渡すことです。前者のほうが確実で、かつ元データの所在がはっきりします。

台帳類: スプレッドシートから読み込みます。最小構成では、台帳をそのままプロジェクトのナレッジに置きます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 数値の拾い出し … 資料中のすべての数値を位置(ページ・スライド番号)つきで拾います。日付、ページ番号、価格表の金額など、照合の対象外にするものを除きます
  2. 表記の正規化 … 「1,200」「1200」「1.2千」「千二百」をそろえます。「%」「パーセント」「割」も同様です
  3. 固有名詞の拾い出し … 社名、製品名、人名、肩書きを抜き出します
  4. 引用の識別 … 「◯◯調査によると」「出典:」に続く記述を、外部統計の引用として識別します
  5. 同月資料の読み込み … 公開カレンダーから、同じ月に出る他の資料の数値を用意します
Step5

AIに処理させる

処理内容
数値の抽出資料中の数値を、文脈(何の数値か)とともに拾う
台帳との突き合わせ抽出した数値が台帳の値と一致するかを判定する。丸め方のルールも見る
台帳にない数値の指摘台帳に対応する指標がない数値を「出典不明」として挙げる
顧客名の判定正式表記との一致、事例掲載の同意有無、掲載可能な表現との整合を見る
引用の判定外部統計の引用に、出典と年次が書かれているかを見る
資料間の突き合わせ同月公開の他資料と、同じ指標の数値が食い違っていないかを見る
指摘文の作成作成者が直せる形で、該当箇所と修正案を書く

AIに正しい数値を調べさせないでください。 これがこの構成の一番重要な設計方針です。

「導入社数は現在何社ですか」と生成AIに聞けば、それらしい数字が返ります。その数字に根拠はありません。 この構成でAIがするのは、「資料に書かれた数値」と「台帳の数値」を比べることだけです。台帳にない数値は、正しいとも間違いとも言わず、「台帳に対応する指標がない」として挙げます。

同じ理由で、Web検索をさせて外部統計の正しさを確かめることもしません。 外部統計については、「出典と年次が書かれているか」だけを見ます。中身の正しさは、引用元を人が見て確かめるものです。

Step6

指示内容を固定する

あなたは、社外に出す資料の公開前チェックを支援する担当者です。
資料に書かれた数値と固有名詞を、社内の台帳と突き合わせて指摘してください。

【厳守事項】
- あなたが数値を調べたり、思い出したりしないでください。
  判定に使ってよいのは、下記の台帳の値だけです。
- 台帳に対応する指標がない数値は、正誤を判定しないでください。
  status を "not_in_ledger" とし、「この数値の出どころを作成者に確認してください」
  と指摘してください。「おそらく正しい」と書かないでください。
- 台帳の値と一致しない場合は、台帳の「定義」と「基準日」を必ず添えてください。
  定義が違うために数値が違う可能性があるためです。
- 台帳の「丸め方」の指定に従っているかを見てください。
  値が正しくても、丸め方が指定と違う場合は指摘してください。
- 顧客名については、事例掲載の同意有無と、掲載可能な表現を確認してください。
  同意がない顧客名が出ている場合は severity を high にしてください。
- 外部統計の引用については、出典と年次が書かれているかだけを見てください。
  統計の中身が正しいかを判定しないでください。
- 指摘には、資料のどこ(ページ/スライド番号、前後の文)かを必ず書いてください。
- 修正案は、台帳の値をそのまま当てはめた形で書いてください。
  表現を書き換える提案はしないでください。

【数値台帳】
{number_ledger}

【顧客表記台帳】
{customer_ledger}

【製品名・用語台帳】
{product_ledger}

【引用してよい外部統計の一覧】
{external_stats}

【同じ月に公開予定の他の資料に載る数値】
{same_month_figures}

【確認対象の資料】
種別: {doc_type} / 公開予定日: {publish_date}
{document_text}

「あなたが数値を調べたり、思い出したりしないでください」の1行が、この構成の安全装置です。 これを書かないと、AIは台帳にない数値についても「一般的には妥当な範囲です」と書きます。それを読んだ確認担当が安心してしまうことが、もっとも危険な失敗です。

「表現を書き換える提案はしない」も入れてください。 文章の良し悪しは別の作業です。ここで表現の提案まで混ざると、指摘の一覧が長くなり、肝心の数値の指摘が埋もれます。

Step7

出力形式を固定する

{
  "document_id": "",
  "checked_at": "",
  "findings": [
    {
      "type": "number | company_name | product_name | citation | cross_document",
      "location": "",
      "quoted_text": "",
      "extracted_value": "",
      "ledger_value": "",
      "ledger_definition": "",
      "ledger_as_of": "",
      "status": "matched | mismatched | not_in_ledger | rounding_violation | consent_missing | citation_incomplete",
      "severity": "high | medium | low",
      "comment": "",
      "suggested_fix": ""
    }
  ],
  "summary": {
    "numbers_found": 0,
    "numbers_matched": 0,
    "numbers_not_in_ledger": 0,
    "high_severity_count": 0
  },
  "extraction_warnings": []
}

quoted_text(資料に書かれていた文)と location を必ず残します。これがないと、確認担当が該当箇所を探す手間が発生し、削減効果が消えます。

ledger_definitionledger_as_of を指摘に添えるのは、「値が違う」のか「定義が違う」のかを、確認担当がその場で判断できるようにするためです。「1,240社(有償契約・9月1日時点)」と添えられていれば、資料の「1,180社」が7月時点の数字だと気づけます。

extraction_warnings には、PowerPointの図中テキストが取れなかった可能性などを入れます。

なお、Claude API には出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があります(2026-09-14時点ではベータ機能として提供)。半自動化の段階で利用できると、指摘の一覧を機械的に処理しやすくなります。

Step8

システムへ連携する

最小構成では連携はありません。指摘の一覧をそのままコメントとして作成者に返します。

半自動化では、次をつなぎます。

つなぐ先内容
Google フォーム確認依頼の受付(資料・種別・公開予定日・グラフの元データ)
スプレッドシート指摘の一覧を出す。確認担当の判断と作成者の対応状況も同じ場所で管理する
Google チャット/メール指摘を作成者に通知する
公開カレンダー同月公開の資料と数値を突き合わせる

指摘をそのまま作成者に自動送信しないでください。 not_in_ledger の指摘は、確認担当が「これは台帳に足すべき数値」なのか「この数値は資料から削るべき」なのかを判断してから返します。自動送信すると、作成者が「台帳にないだけで正しい」と自己判断して押し戻し、確認の意味がなくなります。

Step9

人が確認する

全件、確認担当が指摘を見たうえで作成者に返します。 自動化するのは指摘の作成までです。

見る優先順位は次のとおりです。

優先対象理由
1consent_missing(同意のない顧客名)契約違反になり得る。公開前に必ず止める
2mismatched(台帳と値が違う)定義の違いか、古い数字かを判断する
3not_in_ledger(台帳にない数値)出どころを作成者に確認する。台帳に足すべきかも判断する
4cross_document(同月資料との食い違い)基準日を統一するか、両方に基準日を明記するかを決める
5rounding_violation(丸め方が違う)表記ルールに合わせる
6citation_incomplete(出典・年次なし)引用元を確認し、明記する

not_in_ledger が多いことを失敗と考えないでください。 最初は指摘の半分以上がこれになります。それは「社内の数値が台帳に整理されていない」という実態を写しているだけで、1件ずつ台帳に足していけば減ります。この減り方が、この構成の進捗そのものです。

Step10

例外に対処する

起きること対応
PowerPointの図中に数値があり拾えないグラフの元データの添付を依頼の必須項目にする。抽出文字数が少ない場合は警告を出す
数値がグラフの画像だけにある画像を読める生成AIに渡すか、元データを添付させる。読めないまま「指摘なし」としない
台帳の値が古い台帳に「最終更新日」を持ち、更新頻度から見て古いものを警告する
定義の違いで値が違う台帳の定義を指摘に添え、人が判断する。自動で「誤り」と断定しない
同じ指標の値が資料間で違う基準日を確認する。基準日が違うだけなら誤りではない。 両方に基準日を明記する運用にする
顧客名の同意状況が台帳にないconsent_missing ではなく「同意状況を確認してください」として挙げる。同意なしと断定しない
引用した外部統計の年次が古い年次が書かれていれば指摘の対象外。古いこと自体の判断は人が行う
数値が概算・目標値として書かれている「約」「目標」「見込み」の語を検出し、台帳の実績値との比較の対象から外す。ただし一覧には載せる
資料に社外秘の数値が含まれている台帳の「社外公開の可否」が「不可」の指標が使われていたら severity: high で挙げる
修正版で別の箇所が変わった修正版を最初から再チェックする。指摘箇所だけを見る運用にしない
Step11

記録を残す

  • 確認対象の資料(版ごと)
  • 指摘の一覧と、確認担当の判断
  • 作成者の対応(修正した/しない理由)
  • not_in_ledger として挙がった数値と、その後の扱い(台帳に追加した/削除した)
  • 台帳の変更履歴(値・定義・基準日)

4つ目が資産になります。 「この指標は毎回台帳にないと言われる」が見えれば、台帳に足すべき項目が分かります。 台帳が厚くなるほど、確認は速くなります。

台帳の変更履歴も必ず残してください。 過去に公開した資料の数値が正しかったかを、後から確認する必要が生じることがあります。

04実装レベルの3段階

最小構成:生成AIのプロジェクトに台帳を置き、資料を貼って指摘の一覧を受け取る / 抽出・突き合わせ・指摘
半自動化:依頼フォームの送信をきっかけに自動でチェックし、指摘の一覧をスプレッドシートに出す。台帳はスプレッドシートから毎回読み込む / 上記+受付・台帳の自動反映
本格構成:上記+同月公開資料との突き合わせ+修正版の再チェック+`not_in_ledger` の集計による台帳の育成 / 判断以外のすべて

最小構成でも効果の大半が出ます。 35分が15分程度になります。半自動化で12分、本格構成で10分程度ですが、本格構成の価値は時間より「資料間の食い違いに気づけること」と「台帳が自動で育つこと」にあります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
60 件
1件あたり現在時間
35 分
1件あたり導入後時間
12 分
現在  60件 × 35分 ÷ 60 = 35 時間/月
導入後 60件 × 12分 ÷ 60 = 12 時間/月
月間削減時間
23h
削減率
66%
年間削減時間
276h
年間金額換算(時間単価3,500円)
97万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

AI活用について相談する

06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 社外に出す資料が月30本以上あり、公開前の確認を1〜3名が担っている企業。自社の実績値や顧客名を資料に載せていること。数値の正本となるデータが社内のどこかに存在すること(1か所にまとまっていなくてもよい)。
向いていない
  1. 社外資料に数値や顧客名をほとんど載せていない場合。公開前の確認が月に数本しかない場合。数値の正本が社内に存在せず、資料ごとに担当者が集計している場合(先に正本を作る必要がある)。

07最小構成で試す方法

  1. 直近で公開した資料5本を用意する(できれば、後から数値の誤りが見つかったものを含める)
  2. 数値台帳の草案を作る。社外資料によく出る数値を20行だけ、定義・基準日・丸め方つきで書く
  3. 顧客表記台帳から、事例に出てくる顧客の同意状況を抜き出す
  4. 生成AIのプロジェクトに台帳を置き、資料を1本ずつ貼って確認させる
  5. 確認担当が実際に指摘した内容と比べる

見るのは次の4点です。

見る点判断
確認担当が指摘した内容を、AIも挙げたか挙げていれば下敷きとして使える
AIが挙げて、確認担当が見落としていたものがあるか1つでもあれば価値があります
台帳にない数値について、AIが正誤を判定していないか判定していたら、プロンプトを強める。ここが最重要
該当箇所の位置が正しく示されているかずれていると探す時間が発生する

3番目を必ず確かめてください。 台帳にない数値に対して「妥当な範囲です」と書かれていたら、この構成は危険な方向に働きます。指摘の一覧が信用できなくなるより、指摘が多いほうが安全です。

台帳の20行を作る作業が、この試行のうち一番時間がかかります。 そして一番価値があります。20行を作る過程で、「導入社数の定義が部門によって違う」といった問題が必ず出てきます。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
台帳にない数値をAIが「妥当」と判定するプロンプトで明確に禁止する。not_in_ledger に正誤の判定が混ざっていないか機械的に検査する
台帳がないまま始めてしまう20行でよいので先に作る。台帳なしでは、この構成は成立しません
定義が書かれていない台帳を作る「定義」「基準日」「丸め方」の3列を必ず入れる。値だけの台帳は使えません
PowerPointの図中の数値が拾えないグラフの元データの添付を必須にする。抽出文字数の警告を出す
指摘が多すぎて読まれない対象外にする数値(日付、ページ番号、価格表)を明確に除く。severity で並べる
表現の指摘まで混ざるプロンプトで表現の書き換え提案を禁止する。表記ゆれのチェックは別の作業として分ける
台帳の値が古いまま使われる更新頻度と最終更新日を台帳に持ち、期限を過ぎたものを警告する
基準日の違いを誤りとして指摘する台帳の基準日を指摘に添える。人が判断できる材料を出す
指摘をそのまま作成者に自動送信する確認担当が判断してから返す。特に not_in_ledger は判断が要る
修正版で別の箇所が変わっている修正版を最初から再チェックする

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 公開前の資料、社外秘を含む社内の実績数値、顧客の社名と契約状況。公開前の情報を扱うため、外部への送信には慎重な検討が必要です。

  1. 公開前情報の扱い … プレスリリースや決算に関わる資料は、公開前の重要事実を含むことがあります。上場企業であれば、インサイダー取引管理規程での取り扱いを確認してください。 業績に関わる資料は、この構成の対象から外す判断も合理的です
  2. 数値台帳の機密度 … 台帳には「社外公開の可否」が「不可」の数値も含まれます。台帳全体を生成AIに渡す構成にする場合、社外秘の数値も送られることになります。 対策は2つあります。ひとつは台帳を「公開可のみ」に絞って渡すこと。もうひとつは、社外秘の指標については指標名だけを渡し、値を渡さないことです。後者なら「社外秘の指標が資料に出ている」という検知は可能です
  3. 顧客情報の扱い … 顧客表記台帳には、契約状況や事例掲載の同意有無が含まれます。顧客との秘密保持契約の範囲を確認してください。 突き合わせに必要なのは「社名」「正式表記」「掲載可否」だけで、契約金額などは不要です
  4. 外部AIへの入力可否 … 上記を踏まえ、自社の情報管理規程を確認してください。テナント内で処理が完結する構成を選ぶのも一案です
  5. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
  6. アクセス権限 … 数値台帳の編集権限を限定します。誰でも台帳を書き換えられる状態だと、照合の意味がなくなります
  7. 自動実行してよい範囲 … 指摘の作成までです。指摘を作成者に返すこと、公開の可否を決めることは、必ず人が行います。特に、同意のない顧客名の検知は「公開を止める」判断につながるため、自動で通過させない設計にしてください

誤りが起きた場合のリスクは、誤った数値の公開と、同意のない顧客名の掲載です。前者は信用の問題、後者は契約違反になり得ます。判断のログを残し、後から追跡できる状態にしてください。

10まず何から始めるか

1週目:数値台帳を20行つくる

過去3か月の社外資料に出てきた数値を拾い、よく出るもの20個を選びます。それぞれについて、値・定義・基準日・出典・丸め方・社外公開の可否を埋めます。

この作業で、必ず問題が見つかります。 「導入社数の定義が営業とマーケで違う」「稼働率の基準日が資料ごとにばらばら」といったことです。それを決めることが、この構成の本体です。

2週目:過去の資料5本で試す

台帳を生成AIのプロジェクトに置き、過去の資料を貼って指摘を受け取ります。確認担当の指摘と比べ、台帳にない数値に正誤の判定が混ざっていないかを必ず確かめます。

3週目:顧客表記台帳を整える

顧客管理台帳から、事例掲載の同意状況を抜き出した表を作ります。「同意あり」「業種のみ可」「完全匿名」の3区分があれば足ります。同意状況が記録されていない顧客が見つかったら、それ自体が改善すべき点です。

4週目〜:最小構成で1か月まわす

確認担当2名が、依頼を受けたときに資料を貼って指摘を受け取る運用を1か月続けます。35分が何分になるかを実測し、not_in_ledger として挙がった数値を台帳に足していきます。

2か月目以降: not_in_ledger の件数が半分以下に減ったら、依頼フォームからの自動チェックに進みます。並行して、同月公開資料との突き合わせを追加します。台帳が育っていない段階で自動化を進めても、指摘の質は上がりません。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-14/最終更新:2026-09-14
確認した内容情報源確認日
Claude のプロジェクトに参照用の文書(PDF、テキスト、Markdown など)をアップロードでき、そのプロジェクト内の会話でClaudeが読めることClaude Help Center: What are projects?2026-09-14
Claude API に、出力をJSONスキーマに沿わせる構造化出力の機能があること(2026-09-14時点ではベータ機能)Claude Platform Docs: Structured outputs2026-09-14
Apps Script のインストール可能なトリガーに「フォーム送信時」があり、フォームの回答が入るたびに関数を実行できることGoogle for Developers: Installable triggers2026-09-14

公開前の資料や社外秘の数値を外部サービスに送ることの可否は、自社の情報管理規程とインサイダー取引管理規程によります。この部分は利用環境に応じた個別確認が必要です。 顧客の社名を事例に掲載することの可否についても、個別の契約と同意の範囲を確認してください。

なお、表記ゆれ・誤字のチェックは [UC-0025]、広告表現の法令面のチェックは [UC-0047] で別に扱っています。この記事は「数値と固有名詞が、社内の正本と合っているか」だけを対象にしています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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