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設備投資の稟議に付ける投資回収の試算と、過去の投資実績との比較を作る

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

投資稟議の申請資料を入力に、投資額・効果額・耐用年数・稼働率といった前提値を抜き出し、判断に必要なのに書かれていない前提を指摘したうえで、過去に承認した類似の投資とその実績を並べます。担当者の作業は、資料を読んで前提を拾い集めることから、そろった数字を見て審査することに変わります。

サマリー
利用ツール
ChatGPT/Claude/Gemini/Make/n8n/Power Automate
対象業界
IT・SaaS/小売/建設/物流/製造
対象部門
経営企画/財務
対象業務
比較検討/集計・分析
主な課題
データ分析に時間がかかる/判断に時間がかかる/属人化している
AIで行う処理
予測
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
半自動化
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
30h/月
AI導入後
9.3h/月
想定削減
69%
年間削減
248h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 申請部門が稟議システムに投資の申請を登録する(申請書と見積書、効果の試算資料を添付)
  2. 財務部の担当が申請資料を開き、通しで読む
  3. 投資額の内訳(本体、付帯工事、据付、初期費用)を確認する
  4. 効果の根拠を読み、何をもとに算出したかを確かめる
  5. 判断に必要な前提(耐用年数、稼働率、保守費用、効果の立ち上がり)が書かれているかを見る
  6. 書かれていなければ、申請部門へメールで照会する
  7. 回答を待って、回収年数を表計算で計算する
  8. 固定資産台帳から、過去の類似投資を探す
  9. その投資が狙った効果を出したかを、当時の稟議と現在の実績から確かめる
  10. 比較表を作り、投資委員会の資料にする
導入後(After)
  1. 申請部門が稟議システムに申請を登録する
  2. 自動申請書、見積書、効果の試算資料からテキストを取り出す
  3. 自動投資額の内訳、効果の内容と根拠、前提値を抽出する
  4. 自動判断に必要なのに書かれていない前提を列挙する
  5. 自動効果を、共通の単位(年間の金額)へそろえる材料を整理する
  6. 【計算】 前提がそろっている場合、社内の計算ルールで回収年数を算出する
  7. 自動固定資産台帳と過去の稟議から、類似の投資を検索して並べる
  8. 自動過去の投資について、当時の見込みと現在の実績を対比する
  9. 財務部の担当が、抽出結果と不足の指摘を確認する
  10. 不足があれば、まとまった質問を1回で申請部門へ送る
  11. そろった数字を見て審査し、投資委員会の資料にする
各工程の詳しい説明を読む
  1. 申請部門が稟議システムに投資の申請を登録する(申請書と見積書、効果の試算資料を添付)
  2. 財務部の担当が申請資料を開き、通しで読む
  3. 投資額の内訳(本体、付帯工事、据付、初期費用)を確認する
  4. 効果の根拠を読み、何をもとに算出したかを確かめる
  5. 判断に必要な前提(耐用年数、稼働率、保守費用、効果の立ち上がり)が書かれているかを見る
  6. 書かれていなければ、申請部門へメールで照会する
  7. 回答を待って、回収年数を表計算で計算する
  8. 固定資産台帳から、過去の類似投資を探す
  9. その投資が狙った効果を出したかを、当時の稟議と現在の実績から確かめる
  10. 比較表を作り、投資委員会の資料にする

問題は6つあります。

(a)前提値が書かれていない申請が多い。 見積書と「年間◯◯万円の削減が見込める」という1行だけ、という申請があります。何をどう計算したのかが分かりません。

(b)照会の往復に日数がかかる。 メールで聞いて、申請部門が現場に確認して、返ってくるまでに3〜5日かかります。その間、審査が止まります。

(c)効果の書き方が案件ごとに違う。 人件費削減、不良率改善、リードタイム短縮、売上増加。単位も期間もばらばらで、同じ表に並べられません。

(d)計算の前提が担当者によって変わる。 保守費用を効果から差し引く担当と、差し引かない担当がいます。同じ案件でも、誰が審査するかで回収年数が変わります。

(e)過去の投資を探せない。 固定資産台帳には資産名と金額しかありません。「3年前に入れた同型の設備」を探すには、稟議の履歴を手で追う必要があります。

(f)投資後の振り返りをしていない。 承認した投資が狙った効果を出したかを確認する仕組みがありません。次の判断に生かされていません。

  1. 申請部門が稟議システムに申請を登録する
  2. 【自動】 申請書、見積書、効果の試算資料からテキストを取り出す
  3. 【自動】 投資額の内訳、効果の内容と根拠、前提値を抽出する
  4. 【自動】 判断に必要なのに書かれていない前提を列挙する
  5. 【自動】 効果を、共通の単位(年間の金額)へそろえる材料を整理する
  6. 【計算】 前提がそろっている場合、社内の計算ルールで回収年数を算出する
  7. 【自動】 固定資産台帳と過去の稟議から、類似の投資を検索して並べる
  8. 【自動】 過去の投資について、当時の見込みと現在の実績を対比する
  9. 【人】 財務部の担当が、抽出結果と不足の指摘を確認する
  10. 【人】 不足があれば、まとまった質問を1回で申請部門へ送る
  11. 【人】 そろった数字を見て審査し、投資委員会の資料にする

自動化されるのは「読む」「前提値を抜き出す」「不足を指摘する」「過去の類似投資を探す」「対比する」の5つです。残るのは、投資すべきかどうかの判断です。

投資の可否をAIに判定させません。 回収年数が基準を満たしていても、その投資を今やるべきかは別の問題です。資金の余裕、他の投資との優先順位、事業の方向性が関わります。

効果額の推定もさせません。 「この設備なら年間800万円の効果が出るはずです」とAIに書かせないでください。効果の見込みは、申請部門が現場の実態から出すものです。

02今回想定するシステム構成

構成図
稟議システム(申請書 / 見積書 / 効果の試算資料)
   │
   ▼【トリガー】投資稟議が財務部へ回付されたとき
Power Automate
   │
   ├──▶ 添付資料を取得(PDF / Excel / Word)
   │
   ├──▶ Claude API ── 投資額・効果・前提値の抽出と、不足の指摘
   │       (JSON Schema で出力を固定)
   │
   ├──▶ 【計算処理】回収年数の算出(社内の計算ルール)
   │
   ├──▶ 固定資産台帳・過去の稟議を検索(設備の種類 / 金額帯 / 部門)
   │
   ├──▶ Claude API ── 過去の投資との対比(見込みと実績の差)
   │
   └──▶ 審査シート(Excel)を作成
   │
   ▼
財務部が確認 ──【人】不足の照会 / 審査
   │
   ├──▶ 不足あり → まとめて1回、申請部門へ照会
   └──▶ そろった → 投資委員会の資料へ
役割想定する製品代替候補
生成AIClaude APIOpenAI API、Gemini API
連携Power AutomateMake、n8n
集計Microsoft ExcelGoogle スプレッドシート
保管SharePointBox、Google Drive
稟議システム既存の稟議システム各社のワークフロー製品

投資評価のシステムを検討しているなら、まずそちらを確認してください。 申請時に前提値を必須項目として入力させ、回収年数を自動計算する製品があります。そちらのほうが根本的な解決です。 ただし、システムを入れても申請部門が前提値を正しく入れてくれるとは限りません。 この構成は、資料に書かれていることを読み取って、足りないものを指摘する役割を担います。

Power Automate のトリガーは、自動・即時(手動)・スケジュールの3種類に分かれます。この構成では、稟議が回付されたときに動く自動のトリガーを使います。 稟議システムにコネクタがない場合は、回付時にメールが飛ぶ設定にして、メールの受信をトリガーにする方法もあります。

申請資料はPDFで渡せます。 Claude API はPDFを入力として受け取り、リクエスト全体で最大32MB、最大600ページ(コンテキストウィンドウが100万トークン未満の場合は100ページ) です。テキスト、図、表を扱えるため、見積書の表や効果の試算表もそのまま渡せます。

回収年数の計算は、AIではなく表計算で行います。 社内の計算ルール(保守費用を差し引くか、税効果を考慮するか、残存簿価をどう扱うか)は決まっているはずです。決まっていないなら、それを決めるのが先です。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

投資稟議が財務部へ回付されたときを起点にします。稟議システムのワークフローで、財務部の承認ステップに入った時点です。

申請の登録時ではなく、回付時にしてください。 申請部門が作成中の段階では、資料が揃っていません。上長の承認を経て財務部へ回ってきたものだけを対象にします。

Power Automate では、これは自動のトリガーに当たります。イベントが発生した後にタスクを自動的に実行するクラウドフローの形です。稟議システムにコネクタがなければ、回付通知のメールをトリガーにします。

もう1つの起点として、投資の実行から1年後に、その投資の実績を確認する処理を置きます。これがBeforeの(f)への対処です。 承認時の見込みと、1年後の実績を並べる資料を自動で作り、担当者が確認します。振り返りの仕組みがないと、過去の投資との比較は永久に作れません。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請書投資の目的、対象設備、導入時期、効果の概要稟議システム
見積書本体価格、付帯工事、据付、初期費用、保守費用添付資料
効果の試算資料効果の内容、算出の根拠、前提とした数量・単価添付資料
投資の判断基準回収年数の基準、計算ルール、戦略投資の定義財務部の規程
固定資産台帳過去の取得資産、取得価額、取得年月、耐用年数、部門会計システム
過去の稟議過去の投資稟議の内容と、承認時の見込み効果稟議システムの履歴
投資後の実績過去の投資について、1年後・3年後に確認した実績投資管理の記録
部門の予算枠投資予算の残額予算管理の資料
Step3

データの取得方法を決める

申請資料: 稟議システムから添付ファイルを取得します。PDF、Excel、Word が混在します。 Excel の効果試算表は、表として読み取れるかを確認してください。数式が入ったセルは、計算結果ではなく数式として取得されることがあります。

投資の判断基準: ここが、この構成の前提です。次の5点が文書で決まっている必要があります。

項目
回収年数の計算式(投資額 - 補助金)÷(年間効果額 - 年間保守費用)
保守費用の扱い効果額から差し引く
税効果の扱い考慮しない(簡易計算)
既存設備の扱い除却損は投資額に加算する
判断の基準5年以内を原則。7年以内は要説明。それ以上は戦略投資として別枠

「決まっていない」ことが、この構成に着手して初めて分かることがあります。 その場合、規程を決めるのが先です。基準がなければ、AIが抽出した前提値をどう使うかも決まりません。

固定資産台帳と過去の稟議: 類似投資の検索に使います。設備の種類(分類コード)、金額帯、取得年月、部門で絞り込めるようにします。分類コードが細かすぎると似た投資が見つからず、粗すぎると関係ないものが並びます。

投資後の実績: 多くの企業に、この記録がありません。この構成を作るのと同時に、記録を始めてください。 1年たてば比較できる材料が1年分たまります。過去に遡って作る必要はありません。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. 添付資料の仕分け … 申請書、見積書、効果試算、その他(カタログ、図面)に分けます。カタログは判断に使わないため、渡しません
  2. 見積書の複数社対応 … 相見積を取っている場合、採用予定の1社を特定します。申請書に書かれていなければ、最安値とは限らないため人へ回します
  3. 金額の単位の統一 … 千円単位と円単位が混在します。取り込み時にそろえます
  4. Excel の数式の展開 … 効果試算表の数式を値に展開してから渡します。数式のまま渡すと、計算の根拠が読み取れません
  5. 過去稟議の検索キーの生成 … 設備の種類、金額帯、部門から、検索の条件を組み立てます
Step5

AIに処理させる

2つの工程に分けます。

前提値を抜き出す工程:

処理内容
投資額の内訳本体、付帯工事、据付、初期費用、補助金の有無
効果の内容何がどう良くなるのか(人件費削減、不良率改善、能力増強 など)
効果の算出根拠何をもとに計算したか(対象人数、作業時間、単価、数量)
前提値耐用年数、稼働率、保守費用、効果の立ち上がり時期、既存設備の扱い
不足の列挙判断に必要なのに書かれていない前提
記載の矛盾資料間で数値が食い違っている箇所

過去の投資と対比する工程:

処理内容
類似性の説明検索で出た過去の投資が、今回とどう似ているか
当時の見込みと実績の差承認時に見込んだ効果と、実際に出た効果の差
差が出た理由実績の記録に書かれている理由
今回への示唆「前回は稼働率の見込みが高すぎた」といった事実の指摘

「今回への示唆」は、事実の指摘までにとどめます。 「今回も稼働率を下げて見るべきです」とは書かせません。過去にこうだった、という事実を示すだけです。 判断は人が行います。

効果額の推定、回収年数の計算、投資の可否はさせません。 計算は表計算で行い、可否は人が決めます。

Step6

指示内容を固定する

前提値を抜き出す側の指示は次のようになります。

あなたは財務部の投資審査を支援する担当者です。
下の投資稟議の申請資料から、審査に必要な項目を抜き出してください。

【厳守事項】
- 資料に書かれている数値をそのまま抜き出してください。
  単位の換算、四捨五入、税込・税抜の変換をしないでください。
  金額は数値で返し、単位を別の項目で示してください。
- 書かれていない項目は null にし、missing_items に項目名を入れてください。
  **一般的な相場や、同種の設備の標準的な値で埋めないでください。**
  例:「この種の設備の耐用年数は通常10年」と補わないでください。
- 効果の算出根拠は、資料に書かれた計算の中身をそのまま写してください。
  「5名 × 2時間 × 250日 × 3,000円」のような式があれば、その式を写してください。
  式がなく結論だけの場合、basis を null にし、missing_items に「効果の算出根拠」を入れてください。
- 資料間で数値が食い違っている場合、inconsistencies に両方の値と出所を書いてください。
  どちらが正しいかを判断しないでください。
- 効果額を推定しないでください。回収年数を計算しないでください。
- 投資すべきかどうか、金額が妥当かどうかを書かないでください。

【申請書】
{application_document}

【見積書】
{quotation_document}

【効果の試算資料】
{effect_document}

【審査に必要な前提値の一覧】
投資額の内訳(本体 / 付帯工事 / 据付 / 初期費用)/ 補助金の有無と金額 /
耐用年数 / 想定稼働率 / 年間保守費用 / 効果の立ち上がり時期 /
既存設備の除却の有無と残存簿価 / 効果の算出根拠 / 効果が及ぶ期間

「一般的な相場で埋めない」の1行が、この構成でもっとも重要です。 これを書かないと、AIは耐用年数の欄に「10年(法定耐用年数)」と補います。その数字で回収年数を計算すると、誰も検証していない前提に基づく判断になります。 書かれていないことは、書かれていないと示すのが正しい動作です。

「どちらが正しいかを判断しない」も必要です。 申請書に「1,800万円」、見積書に「1,950万円」と書かれていることがあります。付帯工事を含むかどうかの違いかもしれませんし、見積が更新されたのかもしれません。 AIが片方を選ぶと、その判断が見えなくなります。

過去の投資と対比する側の指示は次のようになります。

下の今回の投資と、過去に承認した類似の投資を対比してください。

【厳守事項】
- 下に与えた過去の投資の記録に書かれていることだけを使ってください。
  記録にない事情を推測しないでください。
- 各過去投資について、今回とどう似ているかを1行で書いてください。
  似ていない場合は similarity を "low" にし、対比を書かないでください。
- 当時の見込み効果と、実際の実績が記録にある場合、その差を数値で示してください。
  実績の記録がない場合は actual を null にし、"実績の記録なし" と書いてください。
  **推測で実績を書かないでください。**
- 差が出た理由は、実績の記録に書かれている内容だけを写してください。
- 今回の投資への助言を書かないでください。
  「稼働率の見込みを下げるべき」といった提案をしないでください。
  過去にどうだったかという事実の提示までにとどめてください。

【今回の投資】
{current_investment}

【過去の類似投資(検索結果・上位5件)】
{past_investments}
Step7

出力形式を固定する

{
  "application_id": "",
  "investment": {
    "equipment_name": "",
    "category": "",
    "requesting_department": "",
    "amount_breakdown": {
      "main": 0, "installation": 0, "construction": 0, "initial_cost": 0, "unit": "円 | 千円"
    },
    "subsidy": { "exists": false, "amount": 0 },
    "total_amount": 0,
    "tax_basis": "税抜 | 税込 | 不明"
  },
  "assumptions": {
    "useful_life_years": 0,
    "utilization_rate": 0,
    "annual_maintenance_cost": 0,
    "effect_start_month": "",
    "existing_asset_disposal": { "exists": false, "book_value": 0 },
    "effect_duration_years": 0
  },
  "effects": [
    { "type": "", "annual_amount": 0, "basis": "", "unit": "" }
  ],
  "missing_items": [],
  "inconsistencies": [
    { "item": "", "value_a": "", "source_a": "", "value_b": "", "source_b": "" }
  ],
  "past_comparisons": [
    {
      "past_application_id": "",
      "equipment_name": "",
      "acquired_on": "",
      "amount": 0,
      "similarity": "high | medium | low",
      "similarity_note": "",
      "planned_effect": 0,
      "actual_effect": 0,
      "gap_reason": ""
    }
  ]
}

JSON Schema を指定して出力を固定します。Claude API では output_config.format にJSONスキーマを渡すことで、応答をスキーマに沿った形に制約できます。

missing_items が、この構成でもっとも役に立つ項目です。 従来は資料を読みながら「これも書いてない、あれも書いてない」と気づくたびに照会していました。最初にまとまって出れば、1回のメールで全部聞けます。 照会の往復が1回で済むだけで、審査の日数が数日縮みます。

tax_basis を持たせている理由があります。 見積書が税抜で、効果の試算が税込のことがあります。回収年数の計算でここを間違えると、1割近くずれます。 不明なら「不明」と返させ、人が確認します。

Step8

システムへ連携する

抽出結果と計算結果から、審査シートを作ります。

区分内容
申請の概要設備名、申請部門、投資額、導入時期
前提値抽出された値と、その出所(どの資料の何ページか)
不足している前提missing_items照会のメール文の下書きも添える
数値の食い違いinconsistencies
回収年数計算結果。前提が欠けている場合は「算出不可」と表示する
判断基準との対比5年以内か、7年以内か、それ以上か
過去の類似投資最大5件。見込みと実績の差
予算枠の残額申請部門の投資予算の残り

回収年数を「算出不可」と表示する設計が重要です。 前提が欠けているのに、既定値を入れて計算すると、その数字が独り歩きします。 投資委員会の資料に「回収3.2年」と書かれたら、誰もその前提を疑いません。欠けているなら、欠けていると示してください。

照会のメール文の下書きを添えると、往復が減ります。 「耐用年数、想定稼働率、年間保守費用について、資料からは読み取れませんでした。ご教示ください」という文を、missing_items から機械的に作れます。

稟議システムへの書き戻しは行いません。 審査の結果は、既存の承認フローに従います。

Step9

人が確認する

全件、財務部の担当が確認します。抽出結果をそのまま投資委員会へ出しません。

理由は3つあります。1つは、抽出の誤りが判断の誤りに直結するためです。投資額の桁を1つ読み違えれば、回収年数が10倍変わります。2つ目は、missing_items の妥当性を見る必要があるためで、実は資料の別の箇所に書かれていることがあります。3つ目は、過去の投資との類似性の判断に、当時の事情を知っている人の目が要るためです。

確認を速くするための設計が効きます。

  • 抽出された値の横に、出所(資料名とページ)を表示する
  • 申請資料のPDFを、確認画面の横で開けるようにする
  • inconsistencies を最上部に出す(食い違いは必ず解消してから進む
  • missing_items をチェックリストの形で表示し、照会文の下書きを添える
  • 過去の投資を、見込みと実績の差が大きい順に並べる
  • 投資額の桁を、漢数字(「約1,800万円」)でも併記する(桁の読み違いに気づける

最後の項目が効きます。 「18,000,000」と「180,000,000」は見間違えます。「約1,800万円」と併記されていれば、すぐ分かります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
効果の算出根拠が書かれていないmissing_items に入れる。推定で効果額を作らない
前提値が1つも書かれていない回収年数を「算出不可」とする。照会文を作る
資料間で投資額が違うinconsistencies に両方を載せる。どちらかを選ばない
税抜と税込が混在しているtax_basis を「不明」にして人へ回す
相見積のうちどれを採用するか書かれていない人へ回す。最安値を自動で選ばない
過去の類似投資が見つからない「類似投資なし」と表示する。無理に似ていないものを並べない
過去投資の実績の記録がないactual を null にし、「実績の記録なし」と示す
戦略投資で回収年数の基準が当てはまらない申請書の区分を見て、基準との対比を行わない
補助金の採択が未定補助金なしの場合の回収年数も併記する
Excel の数式が展開されていない前処理で値に展開する。できなければ人が確認する
添付資料が画像のスキャン読み取り精度が落ちる。needs_review に入れる
投資額が既存の予算枠を超えている指摘として表示する。判断は人が行う
Step11

記録を残す

この記録は、投資判断の経緯を説明する資料になります。

  • 申請資料の原本
  • 抽出結果と、その出所(資料名・ページ)
  • missing_items と、照会の内容・回答
  • 計算した回収年数と、使った前提値
  • 適用した計算ルールの版
  • 過去投資との対比の内容
  • 投資委員会での決定と、その理由
  • 投資実行から1年後・3年後の実績確認の記録

最後の項目が、この構成を長期的に価値あるものにします。 実績の記録がたまって初めて、「過去の投資との比較」が意味を持ちます。記録がなければ、この構成の半分は機能しません。

「適用した計算ルールの版」も残してください。 計算ルールは見直されます。「3年前の投資は、当時のルールで4.2年と計算された」ことが分かれば、比較のときに補正できます。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請資料をチャット画面に貼り付け、前提値と不足を出させる / 読み取りと不足の指摘
半自動化:稟議の回付をトリガーに、抽出・不足の指摘・回収年数の計算・審査シートの作成まで / 審査の準備
本格構成:上記+過去投資の自動検索と対比+投資実行1年後の実績確認の自動化 / 振り返りまで

半自動化の時点で、90分が40分程度になります。 読み取りと計算が消え、照会が1回にまとまるためです。本格構成では28分になりますが、減るのは過去事例の検索です。 本格構成の「投資実行1年後の実績確認」は、時間削減とは別の意味を持ちます。 これがないと、「過去の投資との比較」に使える材料がたまりません。今から始めても、使えるようになるのは1年後です。 早く始めるほど早く効きます。 実績確認の内容は、簡単で構いません。 「承認時の見込み効果はいくらだったか」「実際にどうだったか」「差があるならなぜか」の3点を、申請部門に書いてもらうだけです。厳密な測定は求めないでください。 求めると誰も答えなくなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
2 名
月間件数
20 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
28 分
現在  20件 × 90分 ÷ 60 = 30 時間/月
導入後 20件 × 28分 ÷ 60 = 9.3 時間/月
月間削減時間
20.7h
削減率
69%
年間削減時間
248h
年間金額換算(時間単価4,000円)
99万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 設備投資・IT投資の稟議が月10件以上あり、財務や経営企画が申請内容を審査している企業。申請部門が書いてくる効果の根拠がばらばらで、比較できない場合。過去に承認した投資が、狙った効果を出したかを振り返っていない場合。投資の判断基準(回収年数など)は決まっているが、計算の前提が案件ごとに違う場合。
向いていない
  1. 設備投資が年に数件で、経営会議で1件ずつ議論できる規模の場合。投資評価のシステムを導入済みで、申請時に前提値と計算が自動で揃う場合。投資の判断が本社ではなく各事業部に完全に委ねられている場合。

07最小構成で試す方法

  1. 過去3か月に審査した投資稟議を10件選ぶ(金額と種類がばらつくように選ぶ)
  2. 投資の判断基準(計算式、保守費用の扱い、税効果、既存設備の扱い)を1枚にまとめる
  3. 生成AIのチャット画面に、1件分の申請資料を貼り付ける
  4. 上記のプロンプトで、前提値の抽出と不足の指摘をさせる
  5. 財務部の担当が当時行った照会の内容と、missing_items を突き合わせる

見るのは次の3点です。

見る点判断
実際に照会した項目が missing_items に出たか7割以上出れば、照会の往復が減る
書かれていない前提を勝手に埋めていないか1件でも埋めていたらプロンプトを直す。ここは妥協しない
投資額の桁と税区分が正確か桁の誤りは判断を根本から狂わせる

2つ目を重点的に見てください。 耐用年数、稼働率、保守費用の3つが埋められやすい項目です。「法定耐用年数10年」と書かれていたら、それが資料に書いてあったのか、AIが補ったのかを確かめてください。

あわせて、判断基準が文書になっているかを確かめてください。 10件について、同じ計算式で回収年数が出せるかを試します。出せないなら、それはAIの問題ではなく、計算ルールが決まっていないということです。その場合、ルールを決めるのが先です。

過去の投資の検索も、この段階で試せます。 固定資産台帳から、設備の種類と金額帯で過去3年の取得資産を絞り込んでみてください。似た投資が出てこないなら、分類コードの粒度を見直す必要があります。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
書かれていない前提を一般値で埋めるプロンプトで禁止する。テストで必ず確認する
前提が欠けているのに回収年数が出る「算出不可」と表示する。既定値で計算しない
投資額の桁を読み違える漢数字を併記する。出所(資料名・ページ)を表示する
税抜と税込が混在して1割ずれるtax_basis を必須にし、不明なら人へ回す
資料間の食い違いをAIが片方に決める両方を載せる。判断させない
計算ルールが決まっていない先に決める。 これがないと何を作っても数字が信用されない
過去の類似投資が見つからない分類コードの粒度を見直す。金額帯での絞り込みを併用する
過去投資の実績の記録がない今から記録を始める。過去に遡らない
相見積のうち最安値を自動で選ぶ選ばせない。人が確認する
効果額をAIが推定する禁止する。効果は申請部門が出すもの
カタログまで読ませて費用がかさむ前処理で仕分ける。判断に使う資料だけ渡す
実績確認を厳密にしすぎて誰も答えない3項目の簡単な記入にする

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 投資計画、設備の仕様、取引先の見積金額、部門の予算。自社の設備投資の計画と、取引先との価格が読み取れる情報です。

  1. 外部AIへの入力可否 … 未実行の投資計画を外部のAIサービスへ送ることになります。新製品の生産設備の投資からは、開発中の製品が推測できます。 情報管理規程を確認してください
  2. 見積金額の秘密保持 … 見積書には、取引先が提示した価格が書かれています。取引基本契約の秘密保持条項を確認してください。 取引先名と金額を伏せて処理するという選択もあります
  3. 学習利用 … 入力を学習に使わないことが契約で保証されるサービスを選びます
  4. アクセス権限 … 審査シートには、全社の投資計画と予算の残額が集まります。閲覧を財務部と経営企画部に限定してください
  5. 投資判断の責任投資の可否の判断は、取締役会または投資委員会の決議事項です。 AIが整理した資料は判断の材料であって、判断そのものではありません。「AIの試算では回収3.2年だった」という説明は、判断の根拠になりません
  6. 前提値の出所の明示 … 回収年数の計算に使った前提値が、資料に書かれていたものか、照会で得たものかを区別して記録してください。後から検証できる状態にすることが、この構成の価値の一部です
  7. 過去の投資の評価の扱い … 「前回の投資は見込みの6割しか効果が出なかった」という記録は、当時の申請部門の評価にも読めます。個人や部門の評価に使わないことを明示してください。 使われると、次から実績を正直に報告してもらえなくなります
  8. 自動実行してよい範囲 … 抽出、不足の指摘、計算、過去事例の提示までです。投資の可否の判断、照会の送信、投資委員会への上程は人が行います

誤りが起きた場合のリスクは、誤った前提値に基づく投資判断、桁の読み違い、欠けた前提のまま出された回収年数です。3つ目がもっとも見つけにくく、「算出不可」を明示する設計はそのためのものです。

10まず何から始めるか

1週目:計算ルールを1枚にまとめる

回収年数の計算式、保守費用の扱い、税効果、既存設備の扱い、判断の基準を1枚にします。財務部で決まっていないことがあれば、そこを決めてください。 30分の打ち合わせで済む話ですが、決めずに進めると何を作っても数字が信用されません。

2週目:投資後の実績確認を始める

これを最初にやってください。 過去1年に実行した投資について、申請部門に3項目(見込み効果/実際の効果/差の理由)を書いてもらいます。仕組みは要りません。メールとスプレッドシートで足ります。 1年後、この記録がこの構成の価値を決めます。

3週目:10件で抽出を試す

過去の稟議10件で、missing_items が実際の照会と合っているか、前提値を勝手に埋めていないかを確かめます。桁と税区分の正確さも、1件ずつ照合してください。

4週目:過去投資の検索を試す

固定資産台帳から、設備の種類と金額帯で過去3年の取得資産を絞り込みます。似た投資が出てくるかを確かめてください。 出てこないなら分類コードの粒度を見直します。

2か月目以降: 稟議の回付をトリガーにした半自動化を作り、2か月運用します。照会の往復が何回から何回になったかを記録してください。 時間の削減より、この数字のほうが説明しやすい効果になります。

6か月目以降: 実績確認の記録がたまってきたら、過去投資との対比を足します。1年たてば、見込みと実績の差が10件以上そろいます。 そこから、自社の投資の見込みがどちら側に外れやすいかが見えてきます。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-09-23/最終更新:2026-09-23
確認した内容情報源確認日
Claude API で output_config.format にJSONスキーマを渡すと、応答をスキーマに沿った形に制約でき、有効で解析可能な出力が得られることClaude Docs: Structured outputs2026-09-23
Claude API がPDFを入力として受け取り、テキスト・図・表を扱えること。リクエスト全体で最大32MB、最大600ページ(コンテキストウィンドウが100万トークン未満の場合は100ページ)であること。大きなPDFは Files API へアップロードして file_id で参照できることClaude Docs: PDF support2026-09-23
Power Automate のトリガーが、自動・即時(手動)・スケジュールの種類に分かれること。イベントが発生した後にタスクを自動的に実行するクラウドフローが「自動」に当たることMicrosoft Learn: トリガー2026-09-23

稟議システムからの添付資料の取得方法、固定資産台帳の分類コードの粒度は企業によって異なります。この部分は利用環境に応じた個別確認が必要です。 投資の判断基準(回収年数の計算方法、税効果の扱い)は自社の財務部門の定めに従ってください。この記事は特定の計算方法を推奨するものではありません。投資の可否の決定は、自社の決裁規程に基づく機関決定によります。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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