研究所の天秤・pH計・滴定装置の感熱紙の印字を撮って読み取り、測定値・日時・機器の番号を実験記録の表に転記して、同じ日の点検と校正の印字に結び付ける
研究所の天秤・pH計・自動滴定装置が出す感熱紙の印字を撮って読み取り、測定値・日時・機器の番号を実験番号ごとの実験記録の表に転記します。あわせて、その測定が同じ日の点検・校正の後に行われたかを確かめます。
- AIサービス
- Azure AI/Google Document AI
- 連携・自動化
- Google Apps Script/Make/n8n/Power Automate/Python
- 対象業界
- その他/医療/製造
- 対象部門
- 品質管理/研究開発
- 対象業務
- データ入力・転記/内容確認・チェック
- 主な課題
- 入力作業が多い/情報が見つからない/確認ミスが多い
- AIで行う処理
- 読み取り(OCR)
- 主な効果
- 入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
- 導入難易度
- ★★☆☆☆
- 実装レベル
- 本格構成
- 費用感
- API連携(中)
- 人間の確認
- 条件付き
01導入前 / 導入後の業務フロー
- 機器で測定し、印字を切り取る
- 印字を実験ノートの該当のページに貼る
- 印字の値を、実験記録の表の実験番号の行に打ち込む
- 機器の番号と日時を表に書き写す
- その日の点検・校正の印字が機器の横の点検簿に貼られているかを見に行く
- 点検簿に無ければ、点検をした人を探して確かめる
- 人測定や点検が終わったら、印字を実験番号のラベルと並べて、機器の横の撮影台でスマートフォンで撮る
- 自動写真が保存されたことをきっかけに、カスタム分類モデルが印字の種類(機器の種類×測定・点検・校正・その他)を返す
- 自動種類ごとのカスタムテンプレートモデルが、機器の番号・日時・値・単位と、項目ごとの信頼度を返す
- 自動実験番号のラベルを読み、測定の印字を実験記録の表の該当の行に下書きとして入れる
- 自動点検・校正の印字は、機器ごとの点検の記録に入れる
- 自動測定ごとに、同じ機器の同じ日の点検・校正が測定の前にあるかを確かめ、無ければ印を付ける
- 自動撮影の時刻と印字の日時の差を見て、ずれの大きい機器を機器の管理担当に知らせる
- 人研究員が、信頼度の低い項目と印の付いた行だけを確かめて確定させる
各工程の詳しい説明を読む
- 機器で測定し、印字を切り取る
- 印字を実験ノートの該当のページに貼る
- 印字の値を、実験記録の表の実験番号の行に打ち込む
- 機器の番号と日時を表に書き写す
- その日の点検・校正の印字が機器の横の点検簿に貼られているかを見に行く
- 点検簿に無ければ、点検をした人を探して確かめる
(a)同じ値を3回扱っている。 印字に出た値をノートに貼り、表に打ち込み、ノートと表を見比べます。値そのものは機器が正しく出しているのに、打ち込むたびに桁や小数点の誤りが入る機会があります。
(b)点検の後の測定かを確かめる手間が大きい。 5番目と6番目のために、機器の横まで歩いて点検簿を開きます。共用の機器は別の階にあることもあり、確かめるのは週末にまとめて、になりがちです。 その時点で点検が抜けていた日が見つかっても、もう測り直せません。
(c)機器の時計のずれに気づかない。 印字の日時を表に写すだけでは、ずれは分かりません。点検の印字が9時5分、測定の印字が8時50分、と並んで初めて「おかしい」と気づきます。 気づくのは監査の前の見直しのときです。
(d)感熱紙は薄くなる。 印字は時間がたつと読みにくくなり、ノートに貼った印字が数年後に読めなくなることがあります。 値を表に移していなかった実験は、そこで記録が失われます。
- 【人】 測定や点検が終わったら、印字を実験番号のラベルと並べて、機器の横の撮影台でスマートフォンで撮る
- 【自動】 写真が保存されたことをきっかけに、カスタム分類モデルが印字の種類(機器の種類×測定・点検・校正・その他)を返す
- 【自動】 種類ごとのカスタムテンプレートモデルが、機器の番号・日時・値・単位と、項目ごとの信頼度を返す
- 【自動】 実験番号のラベルを読み、測定の印字を実験記録の表の該当の行に下書きとして入れる
- 【自動】 点検・校正の印字は、機器ごとの点検の記録に入れる
- 【自動】 測定ごとに、同じ機器の同じ日の点検・校正が測定の前にあるかを確かめ、無ければ印を付ける
- 【自動】 撮影の時刻と印字の日時の差を見て、ずれの大きい機器を機器の管理担当に知らせる
- 【人】 研究員が、信頼度の低い項目と印の付いた行だけを確かめて確定させる
研究員の作業が、打ち込みから撮影に変わります。 印字をノートに貼る作業は残してもかまいませんが、記録の正は撮った写真と表になります。 感熱紙が薄くなっても、写真と表は残ります。
6番目が、この構成のいちばんの効果です。 測定のたびに点検簿を見に行く必要が無くなり、点検の抜けた日がその日のうちに分かります。 測り直しができるうちに気づけます。
02今回想定するシステム構成
天秤・pH計・自動滴定装置の印字(感熱紙)
│ 実験番号のラベルと並べて撮影台で撮影
▼【トリガー】写真の保存(共有フォルダ)
Power Automate
▼
Azure AI Document Intelligence
├─ カスタム分類モデル ── 印字の種類と信頼度
│ 天秤_測定/天秤_点検/pH_測定/pH_校正/滴定_結果/滴定_標定/その他
└─ 種類ごとのカスタムテンプレートモデル
機器の番号・日時・値・単位・項目ごとの信頼度
▼
Python ── 実験番号の照合/点検・校正との結び付け/時計のずれの計算
▼
実験記録の表(下書きの列) 機器ごとの点検の記録
├──▶ Teams:点検の抜け、時計のずれ、低信頼の通知
▼
【研究員が印の付いた行だけ確かめて確定】| 役割 | 想定する製品 | 代替候補 |
|---|---|---|
| OCR | Azure AI Document Intelligence(カスタム分類モデル+カスタムテンプレートモデル) | Google Document AI(Custom Extractor は日本語が正式対応外のため Form Parser で読む) |
| 集計 | Python(実験番号の照合、点検・校正との結び付け、時計のずれの計算) | Google Apps Script |
| 連携 | Power Automate(写真の保存の検知、読み取りの呼び出し、表への書き込み、Teams への通知) | Make、n8n |
| 記録 | 実験記録の表、機器ごとの点検の記録(共有のスプレッドシート) | 電子実験ノートのシステム |
生成AIは使いません。 機器の印字は、機種ごとに並びが決まった短い紙です。決まった位置から決まった項目を取るのに、文章を理解させる工程は要りません。 生成AIを挟まないことで、測定値が言い換えられたり、欠けた桁が補われたりする経路がそもそもありません。
先に分類モデルを通すのは、読む前に種類を確かめるためです。 公式の説明では、カスタム分類モデルはレイアウトと言語の特徴を組み合わせて文書の種類を見分けるもので、分類と抽出を分けると、抽出の前に信頼度で確かめる段階を置けるとされています。また、複数のモデルを1つにまとめる composed model は文書を無視できない一方、分類モデルは対象でない文書を外せます。撮影台に印字以外の紙が写ったときに、無理に読ませないで済みます。
読み取りはカスタムテンプレートモデルで行います。 テンプレートモデルは、定義された見た目の様式を持つ、構造化の度合いが高い文書から項目を取るのに向くとされています。様式が変わると精度が下がるため、様式ごとに5つ以上の見本でモデルを作ることが示されています。天秤の測定と点検は様式が違うので、別のモデルにします。
日本語の印字も対象です。 カスタムテンプレートモデルの対応言語には、印刷の文字と手書きの文字の両方で日本語が含まれ、カスタム分類モデルも日本語の文書で学習できます。機器名や「ケンサ」のような半角カナの印字も、見本に含めて学習させます。
03どうやって実装するのか
処理の起点を決める
写真が共有フォルダに保存されたことを起点にします。 撮影台の横に研究所の共用のスマートフォンを置き、カメラで撮った写真を Teams のチャネルのファイルの場所に保存する運用にします。1枚ずつ動かし、終わった写真は処理済みのフォルダへ移します。 移すのは成功したときだけにし、受け取りのフォルダに残っている枚数が、そのまま未処理の数になるようにします。
撮るのは測定の直後です。 感熱紙は時間とともに薄くなり、指でこすると黒くなります。ノートに貼る前に撮ることを決まりにします。夕方にまとめて撮ると、撮影の時刻と印字の日時の差が大きくなり、時計のずれを見分けられなくなります。
点検と校正の印字も、同じ撮影台で撮ります。 これまで点検簿に貼るだけだった印字も、撮って読ませることで、測定との結び付けの相手になります。 撮り忘れると、測定に「点検が見つからない」の印が付くので、撮り忘れもその日のうちに分かります。
入力データを集める
| データ | 中身 | 取得元 |
|---|---|---|
| 印字の写真 | 感熱紙の印字と実験番号のラベル(または機器の番号の札)が写った画像 | 共有フォルダ |
| 撮影の時刻 | 写真のファイルの作成日時 | 共有フォルダ |
| 撮った人 | 保存したアカウント | 共有フォルダ |
| 読み取り結果 | 種類、機器の番号、日時、値、単位、項目ごとの信頼度 | Azure AI Document Intelligence |
| 機器の台帳 | 機器の番号、機種、設置場所、点検の決まり(毎日・使用前・定期)、管理担当 | 機器の台帳 |
| 実験記録の表 | 実験番号、原料の並び、測定の予定 | 実験記録の表 |
質を決めるのは、機器の台帳の「点検の決まり」の列です。 天秤は「使う日の最初」、pH計は「使う前」、滴定のファクターは「定期」と、機器によって結び付ける点検の決まりが違います。決まりが台帳に書かれていないと、どの点検の印字を相手にすればよいかが決まりません。
実験番号のラベルは、印字と同じ写真に写すために要ります。 機器の印字には、試料の名前を入れられない機種が多くあります。ラベルが同じ画像に写っていれば、どの実験の測定かが画像の側で決まります。 ラベルには実験番号を大きく印刷し、テンプレートモデルで読める位置に置きます。
データの取得方法を決める
読み取りは、Power Automate から Document Intelligence の REST API を2回呼びます。1回目は分類モデル、2回目は分類の結果に応じたテンプレートモデルです。
| 取るもの | どこから | 何に使うか |
|---|---|---|
| 印字の種類と信頼度 | 分類モデルの応答の documents の docType と confidence | 読むモデルの選択、その他の除外 |
| 項目の値と信頼度 | テンプレートモデルの応答のフィールド | 表に入れる値、確認の要否 |
| 実験番号 | テンプレートモデルのラベルのフィールド | 表の行の特定 |
| 撮影の時刻 | 写真のファイルの作成日時 | 時計のずれの計算 |
| 点検の決まり | 機器の台帳 | 結び付ける点検の種類 |
分類の splitMode は none にします。 公式の説明では、v4.0 の分類モデルは既定で文書を分割せず、none は入力のファイル全体を1つの文書として扱います。1枚の写真には1枚の印字を写す決まりなので、分割は要りません。 2枚が写っていたら、分類の信頼度が下がることを手がかりに撮り直してもらいます。
分類の信頼度には、しきい値を置きます。 公式の説明では、分類モデルは各文書を学習したどれかの種類に割り当てようとするため、学習していない種類の文書が来ることが想定されるなら、分類のスコアにしきい値を置くか、「その他」の種類に代表的な見本を入れることが勧められています。この構成では両方を行い、しきい値を下回るものは研究員に戻します。
AIへ渡す前に整形する
- 形式と大きさの確認 … 画像は JPEG か PNG で、縦横が50〜10,000ピクセルの範囲にあることを確かめます
- 文字の大きさの確認 … 抽出する文字の高さの下限は、1024×768の画像で12ピクセルとされています。感熱紙の細い印字は、撮影台の高さを固定して下限を割らないようにします
- 向きの補正 … 撮影台の上で印字が横向きに置かれたものを、縦に直します
- 明るさの補正 … 薄くなりかけた印字は、コントラストを上げてから読ませます。ただし補正の前の写真も必ず残します
- 重複の検知 … 同じ機器の番号・同じ日時・同じ値の印字が直近にあれば、同じ印字を2回撮ったものとして印を付けます
- 処理済みの印字の確認 … 一度表に入った印字が、撮り直しで再び来たときは、上書きせずに研究員に確かめます
2番目を軽く見ないでください。 天秤の印字は小さな文字で、スマートフォンを離して撮ると下限に近くなります。撮影台にスマートフォンの置き場所を作り、毎回同じ距離で撮れるようにすることが、読み取りの精度をいちばん左右します。
AIに処理させる
させるのは、印字の種類を分けることと、種類ごとに決まった項目を読み取って信頼度を返すことだけです。 結び付けや計算は Python が行います。
| 種類 | 読む項目 | 結び付けの相手 |
|---|---|---|
| 天秤_測定 | 機器の番号、日時、秤量値、単位、風袋の有無 | 同じ天秤の同じ日の天秤_点検(測定より前) |
| 天秤_点検 | 機器の番号、日時、分銅の公称値、表示値、合否の印字 | 機器ごとの点検の記録 |
| pH_測定 | 機器の番号、日時、pH、温度 | 同じ pH計の同じ日の pH_校正(測定より前) |
| pH_校正 | 機器の番号、日時、標準液の値、スロープ、オフセット | 機器ごとの点検の記録 |
| 滴定_結果 | 機器の番号、日時、方法の番号、滴定量、結果、単位、ファクター | 同じ装置の有効な滴定_標定 |
| 滴定_標定 | 機器の番号、日時、滴定液の名前、ファクター | 機器ごとの点検の記録 |
| その他 | 読まない | 研究員に戻す |
測定値は文字列のまま持ちます。 「12.3400」を数値にすると「12.34」になり、天秤が出した桁が消えます。 桁は天秤の読み取りの限度を表しているので、表には印字されたとおりの文字列を入れ、比べるときだけ Python で数値に直します。
結び付けの規則は、機器の台帳の「点検の決まり」から作ります。
| 点検の決まり | 測定に付ける結果 |
|---|---|
| 使う日の最初(天秤) | 同じ日の点検が測定より前にあり、合否が合格なら linked。無ければ no_check |
| 使う前(pH計) | 同じ日の校正が測定より前にあれば linked。校正より前の測定は before_check |
| 定期(滴定のファクター) | 有効期間内の標定があれば linked。期限が切れていれば check_expired |
| 共通 | 印字の日時と撮影の時刻の差が決めた幅を超えれば clock_suspect |
clock_suspect を付けた測定は、結び付けの結果を確定させません。 時計がずれていると、before_check が本当は点検の後の測定である可能性があります。機器の管理担当が時計を確かめ、ずれの幅を記録してから、結び付けをやり直します。
| させないこと | 理由 |
|---|---|
| 読めない桁の補完 | それらしい値を作らない。信頼度が低ければ人へ |
| 測定値の丸め・単位の換算 | 印字のとおりに持つ |
| 合否の判定 | 天秤の点検の合否は印字された結果を写すだけ |
| 測り直しの判断 | 研究員と分析の責任者が決める |
指示内容を固定する
この構成では生成AIを使わないため、プロンプトの代わりにモデルの学習の指示と、ラベル付けの決まりを示します。読み取りの精度は、ここで決まります。
【分類モデルの種類と見本の集め方】
- 種類:天秤_測定 / 天秤_点検 / pH_測定 / pH_校正 / 滴定_結果 / 滴定_標定 / その他
- 1種類あたり見本は5枚以上。機種が違うものは、それぞれ5枚以上を同じ種類に入れる
- 「その他」には、撮影台に写りがちな紙(ラベルだけ、付箋、別の機器の伝票)を入れる
- 見本は、撮影台の上で実際の運用と同じ距離・同じ照明で撮る
- 薄くなりかけた印字、斜めに置いた印字も数枚ずつ入れる
【テンプレートモデルのラベル付けの決まり】
- 機器の番号:印字の機器 ID の欄。印字に無い機種は、機器に貼った番号の札を写し込む
- 日時:印字の日付と時刻を、別々のフィールドとしてラベル付けする
- 値:数字の部分だけ。単位は別のフィールドにする
- 桁:先頭と末尾の 0 を含めて、印字のとおりにラベル付けする
- 実験番号:ラベルの番号の部分だけ
- 見本のうち、値が空欄の印字(中断した測定)も1枚入れる
【受け取った後の決まり(Python 側)】
- 項目の信頼度が決めた値を下回ったら、その項目を「確認」にする
- 日時の形式が読めないときは、撮影の時刻で埋めない。空欄にして「確認」にする
- 値の文字列に数字以外が混じったら、数値に直さず「確認」にする
「日時を撮影の時刻で埋めない」を明記するのは、時計のずれを見るためです。 日時が読めないときに撮影の時刻で埋めると、ずれの計算の相手が自分自身になり、ずれが0になります。 読めない日時は空欄のまま人に回します。
「桁を印字のとおりにラベル付けする」も同じ理由です。 見本で末尾の0を落としてラベル付けすると、モデルは0を落として返すことを学びます。 ラベル付けの段階で、桁を消す経路を作らないようにします。
出力形式を固定する
Python が、読み取り結果と結び付けの結果を次の形にまとめます。
{
"photo_id": "",
"captured_at": "2026-10-15T10:42:00+09:00",
"doc_type": "balance_measure | balance_check | ph_measure | ph_calibration | titration_result | titration_standardize | other",
"class_confidence": 0.0,
"instrument_no": { "value": "", "confidence": 0.0 },
"printed_at": { "date": "", "time": "", "confidence": 0.0 },
"values": [
{ "name": "weight", "text": "12.3400", "unit": "g", "confidence": 0.0 }
],
"experiment_no": { "value": "", "confidence": 0.0 },
"link": {
"status": "linked | no_check | before_check | check_expired | clock_suspect | not_applicable",
"check_photo_id": "",
"clock_diff_minutes": 0
},
"needs_review": ["printed_at"]
}
1つ目の理由は、値を文字列と信頼度の組で持てることです。 text に印字のとおりの文字列、confidence に読み取りの信頼度が入り、表には text をそのまま入れます。
2つ目は、結び付けの結果を測定の行に持たせられることです。 link.status と check_photo_id を表の列に入れると、どの点検の印字を根拠に「点検の後の測定」としたのかが、行を見るだけで分かります。 監査のときに点検簿を探しに行く必要が無くなります。
3つ目は、needs_review で人の確認を絞れることです。 信頼度の低い項目と結び付けの印がある項目だけが並び、空の行は研究員が一覧で流し見て確定させます。
システムへ連携する
| つなぎ先 | 方式 | 内容 |
|---|---|---|
| 共有フォルダ | Power Automate のトリガー | 写真の保存を検知する |
| Azure AI Document Intelligence | REST API(分類、抽出) | 種類と信頼度、項目と信頼度を返す |
| Python | Azure Functions で動かす | 照合、結び付け、時計のずれの計算 |
| 実験記録の表 | Power Automate から書き込み | 測定の値を下書きの列に入れる |
| 機器ごとの点検の記録 | Power Automate から書き込み | 点検・校正・標定の印字の内容 |
| Teams | 通知 | 点検の抜け、時計のずれ、低信頼を研究員と機器の管理担当へ |
実験記録の表には、下書きの列と確定の列を分けて持たせます。 読み取りの値は下書きの列に入り、研究員が確定させた値だけが確定の列に移ります。集計や報告書に使うのは確定の列だけです。
機器の台帳には書き込みません。 時計のずれや点検の抜けが続く機器があっても、台帳の状態を変えるのは機器の管理担当です。この構成は、知らせるところまでにします。
人が確認する
人が確かめるのは、needs_review に項目がある行と、link.status が linked 以外の行だけです。
clock_suspectを先に見る … 機器の管理担当が機器の時計を確かめます。ずれていれば、ずれの幅を記録して結び付けをやり直しますno_checkとbefore_checkを見る … 点検の印字の撮り忘れか、本当に点検をせずに測ったかを確かめます。撮り忘れなら、点検簿の印字を撮って足します- 信頼度の低い項目を写真で確かめる … 写真を開き、該当の数字を目で読みます
- 確定させる … 下書きの列の値を確定の列に移します
- 直したら記録する … どの項目を、何から何に直したかを残します
2番目で「本当に点検をせずに測った」と分かったときの扱いは、この構成では決めません。 測り直すか、記録に注記して残すかは、分析の責任者と研究所の決まりで決めることです。 この構成がするのは、その事実を測定の当日に見えるようにするところまでです。
目標は、900枚をならして1枚1.2分です。 撮影に数十秒、印の無い行の流し見に数秒、印のある行の確認に数分かかる想定です。印の付く行が2割を超える月は、撮影の距離か、点検の撮り忘れが増えています。
例外に対処する
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 分類の信頼度が低い | 研究員に撮り直しを頼む。2回続いたら見本を足して分類モデルを学習し直す |
| 「その他」に分類された | 読まずに研究員へ戻す |
| 実験番号のラベルが写っていない | 表の行を決められないので、研究員に実験番号を選んでもらう |
| 印字が薄くて読めない | 補正の前後の写真を残し、needs_review。読めない値は空欄のまま |
| 同じ印字を2回撮った | 重複として印を付け、2回目を表に入れない |
| 機種の更新で印字の様式が変わった | テンプレートモデルの精度が落ちる。新しい様式の見本を5枚以上集めてモデルを作る |
| 点検の印字が見つからない | no_check。研究員と機器の管理担当に知らせる |
| 時計のずれが大きい | clock_suspect。結び付けを保留し、機器の管理担当に知らせる |
| 読み取りの API が応答しない | 写真を受け取りのフォルダに残す。処理済みへ移すのは成功時だけ |
下から4行目が、運用を続けると必ず起きます。 テンプレートモデルは様式の変化に弱いので、機器を買い替えたら、その日のうちに見本を集め始める決まりにします。古い機種のモデルは、その機器を台帳から外すまで残します。
記録を残す
- 撮った写真(補正の前の写真と、補正の後の写真)
- 撮影の時刻と撮った人
- 分類モデルとテンプレートモデルの応答の全文と、そのときのモデルの ID
- 結び付けの結果と、相手にした点検の写真の ID
- 研究員が直した項目と、確定させた日時
- 機器ごとの時計のずれの推移
モデルの ID を残すのは、モデルを学習し直すためです。 見本を足して学習し直すと、同じ写真でも読み取りの結果が変わることがあります。どのモデルで読んだ値なのかが残っていないと、直す前後の比較ができません。
最後の行は、機器の管理の材料になります。 ずれが少しずつ大きくなっている天秤は、時計の電池が弱っています。ずれの推移を見て、電池の交換や時計の合わせ直しを先回りできます。
04実装レベルの3段階
最小構成では、表への転記は減りません。 撮った写真で文字が読めるかを確かめる段階です。 半自動化で、1件4分が2分程度になります。 打ち込みは無くなりますが、点検の記録を確かめに行く作業が残ります。本格構成で1.2分になり、この段階が本記事の想定です。 差が出るのは、第4章の②にあたる、点検・校正の確認と機器の番号・日時の書き写しが無くなることです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化の1か月で、機種ごとの読み取りの信頼度が分かります。信頼度の低い機種の見本を足してから結び付けを始めるほうが、needs_review の行が増えすぎません。
05工数削減シミュレーション
導入後 900件 × 1.2分 ÷ 60 = 18 時間/月
自社条件で導入効果を整理したい方へ
このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。
06向いている企業・向いていない企業
- 化学・化粧品・食品・医薬品などの研究所や品質管理室で、天秤・pH計・自動滴定装置をデータ出力なしで使い、感熱紙の印字を実験ノートに貼って値を実験記録の表に打ち直している場合。毎朝の日常点検や校正の印字も同じ機器から出ており、測定がその後に行われたかを確かめる手間がかかっている場合。研究員が10名以上いて、印字が月に数百枚出る場合。
- 機器が実験記録や試験データのシステムに直接つながっていて、値が自動で取り込まれている場合。印字が月に数十枚の規模の場合。品質管理の出荷試験のように、規格値との比較と判定まで一つの台帳で行うことが主目的の場合(UC-0545 の構成が合います)。なお、測定のやり直しや結果の採否の判断は、この構成では行いません。
07最小構成で試す方法
- 先週の印字から30枚を選ぶ(天秤の測定と点検、pH の測定と校正、滴定の結果を含める)
- 撮影台を仮に作り、30枚を同じ距離で撮る
- Document Intelligence Studio でレイアウトモデルに1枚ずつかけ、文字が読めるかを見る
- 読めた文字と印字を見比べ、桁・小数点・日時が正しく読めているかを確かめる
- 同じ日の測定と点検の印字の日時を手で並べ、点検の後の測定かを確かめる
30枚は必ずやってください。 モデルを作る前に、撮った写真で文字が読めるのかを確かめます。読めないなら、モデルを作っても読めません。
| 出てきた内容 | 判断 |
|---|---|
| 桁と日時がほぼ正しく読めた | 分類モデルとテンプレートモデルの見本集めに進む |
| 小さな文字だけ読み違える | 撮影の距離を縮める。 モデルの問題ではない |
| 薄い印字が読めない | 撮るのが遅い。測定の直後に撮る決まりを先に作る |
| 点検の印字が見つからない日がある | 点検の撮り忘れか、点検そのものの抜け。この構成で拾いたいもの |
4行目が出たら、それがこの構成を入れる理由になります。 30枚の中で点検の抜けが見つかるなら、月900枚の中にはもっとあります。
08実装時につまずきやすいポイント
| 問題 | 対策 |
|---|---|
| 測定と点検の印字を取り違える | 分類モデルで種類を分けてから読む。 様式の違うものを同じモデルにしない |
| 撮影台以外の紙を無理に読む | 「その他」の種類に見本を入れ、分類の信頼度にしきい値を置く |
| 末尾の0が消える | 値を文字列のまま持つ。ラベル付けでも桁を落とさない |
| 日時が読めないと撮影の時刻で埋める | 埋めない。ずれの計算が成り立たなくなる |
| 小さな文字を読み違える | 撮影台で距離を固定する。下限は1024×768で12ピクセル |
| 感熱紙が薄くて読めない | 測定の直後、ノートに貼る前に撮る |
| 時計のずれで点検の前の測定に見える | clock_suspect を付けて結び付けを保留する |
| 機種の更新で精度が落ちる | 新しい様式の見本を5枚以上集めてモデルを作る |
| 点検の決まりが台帳に無い | 結び付けの相手が決まらない。台帳の整備を先に行う |
| 下書きがそのまま報告書に使われる | 下書きの列と確定の列を分ける |
分類の splitMode を気にしない | v4.0 では既定で分割しない。1枚に1枚の印字を写す決まりと合わせて none にする |
上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 天秤の測定と点検の印字は、どちらも数字と日時が並んだ短い紙で、人が見ても一瞬迷います。 種類を分ける工程を省くと、点検の値が実験記録の表に入ります。
下から3行目は、導入の前に効いてきます。 「使う日の最初に点検する」が研究所の決まりとして書かれていない機器があると、結び付けの規則が作れません。 この構成を入れることが、点検の決まりを書き出すきっかけになります。
09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点
この構成で扱うデータ: 試作の処方の原料ごとの秤量値、試作品の pH と滴定の結果、実験番号、研究員のアカウント、機器の点検の記録です。個人情報はほとんど含みませんが、処方は営業秘密として管理される情報です。
- 処方の情報の置き場所を決める … 秤量値の並びは、そのまま処方になります。写真と表を置く場所を研究所の権限に限り、外部と共有するフォルダに置かないでください
- 読み取りのリソースの地域と扱いを確かめる … Document Intelligence のリソースを置く地域と、学習用の見本を置くストレージの権限を、自社の情報管理の規程に照らして決めます
- 測り直しの判断を自動にしない … 点検の抜けや時計のずれは知らせるだけです。測定の採否は、分析の責任者と研究所の決まりで決めます
- 原本を決める … 感熱紙の印字、撮った写真、表のどれを原本として残すかを決めます。補正の前の写真を必ず残し、補正の後の写真だけを残さないでください
- 記録の直しを追えるようにする … 表の確定の列を誰がいつ直したかを残します。読み取りの値と確定の値の両方を残し、後から比べられるようにします
誤りが起きた場合のリスクは、読み違えた値が確定の列に入ることと、点検の抜けを見逃すことの2つです。 前者は信頼度での絞り込みと研究員の確定で、後者は点検の印字も撮って読む運用で防ぎます。どちらも、記録の正を写真と表に移したうえで、人が確定させる設計で守ります。
10まず何から始めるか
1週目:撮影台を作り、30枚で読めるかを試す
機器の横に撮影台を置き、スマートフォンの距離と照明を固定します。先週の印字30枚を撮って Document Intelligence Studio にかけ、桁と日時が読めるかを確かめます。
2週目:機器の台帳に点検の決まりを書く
14台の機器について、点検の決まり(使う日の最初・使う前・定期)と管理担当を台帳に書きます。決まりがはっきりしない機器は、分析の責任者と決めます。
3週目:見本を集める
機種と種類ごとに5枚以上の印字を、撮影台で撮ります。「その他」の見本(ラベルだけ、付箋、別の伝票)も集めます。 薄い印字と斜めの印字も数枚ずつ入れます。
4週目:分類モデルとテンプレートモデルを作る
Document Intelligence Studio でラベルを付け、分類モデルと種類ごとのテンプレートモデルを作ります。桁を落とさないラベル付けを、作業する人の間でそろえます。
2か月目: 写真の保存から読み取り、実験記録の表の下書きまでをつなぎます。3か月目以降: 点検・校正との結び付けと時計のずれの計算を足し、印の付いた行だけを確かめる運用にします。機器ごとの時計のずれの推移を機器の管理担当が毎月見るようになり、点検の抜けが当日に直されるようになった時点で、この構成は完成です。
11関連ユースケース
12この仕組みを理解するための記事
13技術仕様の確認日・参考情報
| 確認した内容 | 情報源 | 確認日 |
|---|---|---|
カスタム分類モデルがレイアウトと言語の特徴を組み合わせて文書の種類を見分けること。2つ以上の種類と1種類あたり5つ以上の見本が要ること。応答に種類と信頼度が付くこと。v4.0 では既定で分割せず、splitMode の none で入力全体を1つの文書として扱うこと。学習していない文書に備えてしきい値か「その他」の種類を置くこと。分類と抽出を分けると抽出の前に信頼度で確かめられ、composed model は文書を無視できないこと。画像の寸法が50×50〜10,000×10,000ピクセル、文字の高さの下限が1024×768で12ピクセルであること | Microsoft Learn: Custom classification model | 2026-10-15 |
| カスタムテンプレートモデルがレイアウトの手がかりで値を取り出し、定義された見た目の様式を持つ構造化の度合いが高い文書に向くこと。様式が変わると精度が下がり、様式ごとに5つ以上の見本でモデルを作ること。キーと値、選択マーク、テーブル、署名、領域に対応すること | Microsoft Learn: Custom template document model | 2026-10-15 |
カスタムテンプレートモデルの対応言語に、印刷と手書きの両方で日本語(ja)が含まれること。カスタム分類モデルの対応言語に日本語が含まれること | Microsoft Learn: Language support—custom models | 2026-10-15 |
機器の点検の決まりと、点検が抜けたときの測定の扱いは、研究所の決まりと分析の責任者の判断で決めてください。 本記事は、上記の公開情報で確認できた範囲だけを扱っています。
実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。
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