AI戦略に書くべき項目一覧|DX戦略と重ねない所

「AI戦略を作れと言われたが、すでにあるDX戦略と何が違うのか説明できない」「DX戦略にAIの章を足したら、同じ投資の話が2つの文書に載ってしまった」。経営企画や情シスで文書づくりを任された人が、最初にぶつかる壁です。多くの場合、原因は書き手の力量ではなく、文書の位置づけを決めないまま書き始めたことにあります。AI戦略は、DX戦略をAIの言葉で書き直した文書ではありません。本当は、DX戦略に無い数項目、つまりAIをどこで使い、どこで使わず、誰がそれを決めるかだけを足す文書です。この記事では、AI戦略に書くべき項目を数えられる形で並べ、DX戦略や他の社内文書と重ねない線を整理します。
カメ先生AI戦略って、DX戦略とは別にもう1冊、同じ厚さの文書を作ることだと思われがちなんだ。本当は、DX戦略に足りない項目を足すだけで済むことが多いんだよ。
カメ子DX戦略にもう書いてあることは、書き直さないということですか。
カメ先生そう。データの基盤や人材の育て方は、DX戦略の章を指し示すだけにする。AI戦略が自分で持つのは、使う所と使わない所、AIに任せない判断、それに見直しの速さなんだ。
カメ子AIは変わるのが速いから、見直しの周期も別に決める必要があるのでしょうか。
- AI戦略は国の計画を写す文書でも、DX戦略を書き直す文書でもない。DX戦略に無い項目だけを足す
- 書くべき項目は8つ。勝つ領域・使わない領域・データと基盤の参照・体制・投資の順番・任せない判断・成果の測り方・見直しの周期
- 既存の文書からの抜き出しや重複の指摘、下書きはAIに任せ、使う領域と投資の順番と責任者は経営が決める
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
「AI戦略」で探すと国の計画が出るが、自社の文書は別物
「AI戦略」という言葉で調べると、最初に出てくるのは国の計画です。内閣府の発表では、AIに関する初めての「人工知能基本計画」が2025年12月23日に閣議決定され、2026年7月14日には第2期の計画が閣議決定されました。初版の発表は、この計画を当面は毎年変え、技術や社会の動きにすぐ合わせるとしています。
国の計画は、国としてAIの利用と開発をどう進めるかを定めたもので、初版は「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4つを基本的な方針に掲げました。自社のAI戦略は、この4つを写して作るものではありません。国の方針は、自社を取り巻く環境の変化として読む材料の1つにとどまります。
この記事で扱うのは、会社が自分のために書くAI戦略という文書です。経営企画、情シスの責任者、AI推進の担当が経営会議や取締役会に出し、投資と体制の根拠にするものを想定しています。部門ごとの使い方の計画や、社外へ出す利用の方針は、別の文書として後の節で書き分けます。
国の計画が毎年見直す前提で書かれている点は、自社の文書にも当てはまります。AIの製品と使い方は月単位で変わり、3年先まで固定した文書はすぐに古びます。自社のAI戦略にも、見直しの周期を項目として書き込んでおく必要がある、ということです。
誤解:AI戦略はDX戦略のAI版を一から作ること
よくある作り方は、DX戦略の章立てを借りて各章にAIの話を足していくものです。目指す姿、事業の変え方、組織と人材、システムとデータ、成果の指標といった章に、それぞれAIの段落を足していきます。見た目は整いますが、ほとんどの章が、DX戦略と同じことを別の言葉で書く結果になります。
DX戦略の側には、すでに多くの土台が書かれています。経済産業省が2024年9月19日に策定した「デジタルガバナンス・コード3.0」は、経営から見たDXの取組を「3つの視点・5つの柱」に整理し直し、データの活用と連携、デジタル人材の育成と確保、サイバーセキュリティなどを見直しの対象に挙げました。これに沿ってDX戦略を書いた会社なら、組織、人材、データ、基盤の章はもうあるはずです。
そうなると、AI戦略が独自に持つ中身は限られます。どの事業や業務でAIを使って差をつけるか、どこでは使わないか、AIに任せない判断と人が確かめる範囲、変化の速さに合わせた見直しの周期です。AI戦略は、DX戦略に無い数項目を足す文書と位置づけると、書く量も重なりも減ります。
ただし、DX戦略そのものが無い会社や、何年も更新されていない会社もあります。その場合はAI戦略の中にデータや人材の章を持たせる必要が出ます。どちらの場合も、書き始める前に既存の文書を机に並べ、何がすでに書かれているかを確かめるところから始めます。
重ねると、同じ投資と人材計画が2つの文書に載る
サブタイトルの「DX戦略と重ねない」は、DXとAIの考え方の違いを論じる話ではありません。指しているのは、同じ投資、同じ人材計画、同じ基盤の整備が、2つの文書に別々に書かれてしまう状態です。DXとAIトランスフォーメーションの考え方の違いは、別の記事「AIトランスフォーメーションとは?」で整理しています。
重なりが起きると、まず数字がずれます。DX戦略にはデータ基盤の整備に3年で一定の額と書き、AI戦略にはAIのためのデータ整備として別の額を書く。同じ整備を指しているのか、上乗せなのか、読む側には分かりません。予算を組む段階で、経理や経営企画が2つの文書を突き合わせる手間が生まれます。
次に、更新がずれます。人材の育て方をDX戦略で直したのに、AI戦略の人材の章は古いまま残る。半年もすると、どちらが正しいのかを聞かれても答えられなくなります。文書が2つあると、直す人も2人必要になり、片方だけ直されるのが普通の成り行きです。
最後に、責任の所在がぼやけます。同じ基盤の整備がDX推進の部署とAI推進の担当の両方の文書に載ると、遅れたときにどちらが説明するのかが決まりません。重ねない書き方は、文書をきれいにするためではなく、数字と責任を1か所に置くための工夫です。
AI戦略に書くべき8項目の一覧
項目は8つに絞れます。左から順に、項目の名前、書く中身、DX戦略にすでに書かれている場合の扱いを並べました。右の列に「参照する」とある項目は、本文を書かずにDX戦略の該当の章を指し示すだけにします。
| 項目 | 書く中身 | DX戦略に書かれている場合 |
|---|---|---|
| 1. 勝つ領域 | AIで差をつける事業・業務を3つまで | AI戦略で新たに書く |
| 2. 使わない領域 | 当面AIを使わない業務と、その理由 | AI戦略で新たに書く |
| 3. データと基盤 | AIに読ませるデータと、使う基盤 | 参照するだけ。AIに固有の点を1段落足す |
| 4. 体制と責任者 | 推進の置き場所、決める人、相談の窓口 | 全社の推進体制は参照。AIの責任者だけ書く |
| 5. 投資の枠と順番 | 何にいくらを、どの順で出すか | 総額は参照。AIの配分と順番だけ書く |
| 6. 任せない判断 | AIに決めさせない判断と、人が確かめる範囲 | AI戦略で新たに書く |
| 7. 成果の測り方 | 勝つ領域ごとの指標と、測る時期 | 全社の指標は参照。領域ごとの指標を書く |
| 8. 見直しの周期 | 定期の見直しと、臨時に見直す条件 | AI戦略で新たに書く |
8項目のうち、AI戦略で一から書くのは1、2、6、8の4つです。残りの4つは、DX戦略の該当の章を指し示し、AIに固有の点だけを足します。書き終えたときに、新たに書いた4項目が全体の半分以上を占めていれば、重なりは小さいと見てよいでしょう。
この一覧には、3年をどう段階に割るか、各年度の計画書に何を書くかは入れていません。中期経営計画にAIを年次の段階で織り込む方法は、別の記事「中期経営計画にAIをどう織り込む?」で扱っています。AI戦略は、段階の割り方より上の、どこで勝ってどこで使わないかを決める文書です。
項目1:AIで勝つ領域は3つまでに絞る
最初の項目は、AIを使って他社との差をつける事業や業務の名前です。ここに10も20も並べると、戦略ではなく願い事の一覧になります。経営が年に数回は進み具合を聞ける数、つまり3つまでに絞るのが目安です。それ以外の使い方は、部門の計画や現場の工夫に任せます。
書き方は、業務の名前だけでなく、何が変わるかまで1行で書きます。たとえば「営業の提案書づくり」ではなく、「提案書の初稿を作る時間を減らし、顧客ごとの提案の数を増やす」と書きます。何が変われば成功なのかが書かれていれば、項目7の測り方にそのままつながります。
3つの選び方そのものは、効果の大きさ、実現のしやすさ、間違えたときの重さといった物差しで候補を絞る作業になります。この作業の進め方は、別の記事「生成AIのユースケースを絞る3つの物差し」に譲ります。AI戦略には、選んだ結果と、選んだ理由を2〜3行ずつ残します。
選んだ理由を残すのは、翌年の見直しで比べるためです。「顧客の数が多く、1件ごとの作業が重い」「社内に記録が溜まっている」といった理由が書いてあれば、条件が変わったときに入れ替えの判断ができます。理由が無いと、毎年、同じ議論を一からやり直すことになります。
項目2:使わない領域を名指しする
勝つ領域と同じ重さで書いておきたいのが、当面はAIを使わない領域です。使わない領域が書かれていない戦略では、現場は「書かれていないものは使ってよい」と受け取るか、逆に「書かれていないから使ってはいけない」と受け取ります。どちらに転んでも、経営の意図とは違う動きが生まれます。
使わない理由は、大きく3つに分けて書くと読みやすくなります。間違えたときの影響が大きく、人の確認だけでは防げないもの。法令や契約で、人が判断することが求められているもの。データがまだ整っておらず、使っても答えの根拠が示せないものです。理由ごとに、どの業務が当てはまるかを並べます。
「使わない」は永久の禁止ではありません。データが整った、確認の仕組みができたといった条件がそろえば、項目8の見直しで勝つ領域に移す候補になります。そのため、使わない理由の横に、使うことを考え直す条件を1行添えておくと、見直しの議論が早く進みます。
個々の業務で何をしてよいか、どの道具を使ってよいかは、社内の利用規程の役目です。AI戦略に書くのは、全社として当面は踏み込まない領域の名前と理由までです。規程の条文をここに写すと、規程を直すたびに戦略も直すことになり、項目の数が増えるほど二重管理の手間が膨らみます。
項目3:データと基盤は、DX戦略の章を指し示すだけにする
データの整え方と、システムの基盤の整備は、DX戦略の中心にある章です。AI戦略で同じことを書き直すと、前の節で見た数字と更新のずれが最も起きやすい所になります。ここは「データと基盤はDX戦略の第何章による」と1行で参照するのが基本です。
そのうえで足すのは、AIに固有の点だけです。勝つ領域で使うAIに、どのデータを読ませる予定か。社外の基盤に置くか、社内に置くかの考え方。読ませてはいけないデータの種類。この3点を1段落でまとめれば足ります。具体的な製品の名前は、この段落にも書きません。
DX戦略にデータの章が無い、あるいは古いまま止まっている場合は、AI戦略の側で書くしかありません。ただしその場合も、書いた内容を次のDX戦略の改訂で移す前提にしておきます。同じ中身の正本は、どちらか1つの文書に置くという線を、文書の冒頭で宣言しておくと迷いが減ります。
全社の情報システムの地図にAIをどう描くかは、情シスの全体図の側の話です。AI戦略は、どの領域で何を読ませたいかという要望を出す側に立ち、基盤の設計そのものは情シスの文書に任せます。戦略の文書に配線図まで書き込むと、細かな変更のたびに経営会議を通すことになります。
項目4:体制は、AIの責任者と決める場だけを書く
全社の推進体制は、DX戦略に書かれていることが多い項目です。推進の部署、各部門の担当、経営との報告の経路などです。AI戦略では、これを参照したうえで、AIについて最終的に決める人と、決める場だけを書き足します。
書いておきたいのは3つです。勝つ領域ごとに、成果に責任を持つ人。使わない領域を見直す判断をする会議体。AIの使い方で問題が起きたときに、使い方を止める判断ができる人。この3つが別々の人でも構いませんが、名前か役職で書きます。「推進チームで協議」とだけ書くと、急ぐときに誰も止められません。
人材の育て方は、ここでは項目名として1行触れるだけにします。研修の形式や中身はAI戦略の本文で扱わず、人材育成の計画に任せます。AI戦略に書くのは、勝つ領域を担う人が何人程度必要か、社内で育てるか外から迎えるかの方針までです。
相談の窓口も1行書いておきます。現場で「これは使ってよいのか」と迷ったときに、どこに聞けばよいかが分かれば、使わない領域の線が守られやすくなります。窓口の運営の細かな決まりは、規程や運用の手順書に任せます。
項目5:投資は総額でなく、配分と順番を書く
投資の総額は、DX戦略や中期経営計画の側で決まっていることが多いはずです。AI戦略で別の総額を書くと、前に見た二重計上の原因になります。AI戦略に書くのは、AIに回す枠の中で、何にどの順で出すかです。
順番は、勝つ領域ごとに書きます。最初の年に試すのはどれで、どの条件がそろったら広げるのか。広げる前に、データや確認の仕組みにどれだけ先に投じるのか。製品の利用料、データの整備、人の時間、外部の支援の4つに分けて書くと、後から比べやすくなります。
ここでよく抜けるのが、やめる条件です。試した結果が想定に届かなかったとき、どこで投資を止めるのかを書いておかないと、続けることが目的になります。広げる条件と止める条件を、同じ欄に対で書くのが、AIの投資を戦略に載せるときの要点です。
年度ごとの金額の割り振りや、3年の段階ごとの計画は、中期経営計画と年度の予算の側で扱います。AI戦略は順番と条件だけを持ち、金額の細部は持ちません。こうしておけば、予算の組み替えがあっても、戦略の文書を毎回直さずに済みます。
項目6:AIに任せない判断と、人が確かめる範囲
AI戦略で最も独自性が出るのが、この項目です。DX戦略にはまず書かれていない中身で、AIに決めさせない判断を、業務の名前と一緒に書きます。たとえば、採用や評価の判断、顧客との契約の条件、社外に出す数字の確定、事故や苦情への対応の方針などです。
任せない判断を書くときは、AIが何をしてよいかもあわせて書きます。判断そのものは人が持ち、AIは材料を集める、下書きを作る、見落としを指摘するところまで、という形です。してよいことの側から書くと、現場は使い方を想像しやすくなります。
人が確かめる範囲は、勝つ領域ごとに決めておきます。AIの出した答えのどこまでを人が見るのか、根拠となる元の文書を必ず添えさせるのか、見た人の名前を残すのかです。AIに根拠を書かせ、人が確かめる範囲を先に決めることが、使う領域を広げる前の条件になります。
この項目は、戦略の文書の中で最も長く変わらずに残る部分でもあります。製品の機能が変わっても、誰が最終的に決めるかという線は簡単には動きません。だからこそ、戦略の文書に置く価値があります。細かな手順は規程に任せ、ここには線の位置だけを書きます。
項目7と8:成果の測り方と、見直しの周期
成果の測り方は、勝つ領域ごとに1つか2つの指標を書きます。全社の売上や利益といった大きな指標は、DX戦略や中期計画の側に任せます。AI戦略には、項目1で書いた「何が変わるか」をそのまま数えられる形にしたものを置きます。提案書の初稿にかかる時間、1人あたりの対応件数などです。
測る時期も一緒に書きます。始めてすぐは数字が下がることもあるので、最初の点検は数か月後、その後は四半期ごと、といった具合です。測る前に今の数字を取っておかないと、比べる元がありません。今の数字を取る担当も、この欄に書いておきます。
見直しの周期は、定期と臨時の2つに分けます。定期は年に1回、経営会議で8項目を通して見直します。臨時は、条件を先に決めておきます。使っている製品の提供が終わる、法令や国の計画が大きく変わる、AIによる重い事故が起きる、といった条件です。国の基本計画が当面毎年見直されることも、定期の見直しの時期を合わせる目安になります。
経営層への日々の報告の項目は、見直しとは別に回します。毎月の報告で上がる材料を、年1回の見直しの場で使うという関係です。報告そのものの組み立ては、別の記事「経営層にAIの利用を報告する5項目」で整理しています。
AI戦略に書かないもの
書く項目と同じくらい、書かないものを決めておくことが大事です。戦略の文書は年に1回しか直さない前提なので、月単位で変わるものを書くと、すぐに実態と合わなくなります。次のようなものは、AI戦略の本文に書きません。
- 使う製品やモデルの名前と、その機能の一覧
- 製品の料金や、契約の細かな条件
- 利用規程の条文や、入力してよい情報の細かな線
- 研修の時間割や教材の中身
- 年度ごとの金額の割り振りと、3年の段階ごとの計画
- DX戦略にすでに書かれている、データと基盤の整備の中身
製品の名前を戦略に書くと、その製品の提供が終わったり名称が変わったりしたときに、戦略ごと直すことになります。製品は「社内の対話AI」「文書に答えるAI」のように、役割の名前で書きます。どの製品を使うかは、選定の記録や情シスの文書に任せます。
書かないものを冒頭にまとめておくと、文書を読む人にも、何を他の文書で探せばよいかが伝わります。書かない理由と、代わりに置く文書の名前を並べておくと、関係する部署から追記を頼まれたときにも断りやすくなります。
DX戦略に1章で入れるか、別の文書に分けるか
8項目を書くとして、置き場所は2つあります。DX戦略の中に「AI」の章を1つ設けて入れるか、AI戦略という別の文書に分けるかです。どちらが正しいということはなく、会社の状況で選びます。次の条件が多く当てはまるほど、DX戦略の1章で足りると考えられます。
- DX戦略が最近改訂され、データ・人材・基盤の章が実態に合っている
- AIの推進を、DX推進と同じ部署が担っている
- 勝つ領域が1つか2つで、DX戦略の施策の中に収まる
- 取締役会や社外に、AIだけを取り出して説明する予定がない
逆に、別の文書に分けたほうがよいのは、DX戦略の改訂が数年先で今の中身が古い場合や、AIの推進を別の担当が持つ場合です。取締役会がAIについて独立した報告を求めている、勝つ領域が事業の中心に近く、DX戦略の施策の枠を超える、といった場合も別にする理由になります。
別の文書に分ける場合も、重ねない線は同じです。冒頭に「データと基盤、全社の推進体制、投資の総額はDX戦略による」と書き、参照の関係を明記します。分けるのは文書であって、数字と責任の置き場所ではないと考えると、どちらを選んでも二重計上は防げます。
方針・規程・中期計画との書き分け
AIに関する社内の文書は、戦略だけではありません。社外に出す利用の方針、社内の利用規程、中期経営計画の中のAIの段落などが並びます。それぞれ読む人と直す周期が違うので、同じ中身を複数に書かず、役割で分けます。
| 文書 | 読む人 | 主に書くこと | 直す周期の目安 |
|---|---|---|---|
| AI戦略 | 経営、取締役会 | 勝つ領域・使わない領域・任せない判断・順番 | 年1回と臨時 |
| DX戦略 | 経営、全社 | 目指す姿、データと基盤、人材、全社の体制 | 数年ごと |
| 中期経営計画のAIの段落 | 経営、株主 | 3年の段階と、年度の計画への落とし込み | 計画の改定時 |
| 社外向けの利用方針 | 顧客、取引先、社会 | 約束として守ること、問い合わせの窓口 | 変えたときに公表 |
| 社内の利用規程 | 全従業員 | してよいこと、入力してよい情報、手続き | 製品や法令の変化に合わせて随時 |
表の右の列を見ると、直す周期の短い文書ほど、細かな中身を持つことが分かります。AI戦略は年1回の見直しに耐える中身だけを持ち、細かな線は規程に任せます。社外に出す方針の項目の選び方は、別の記事「AI利用方針は外に出すべきか?」で整理しています。
書き分けを決めたら、それぞれの文書の冒頭に「この文書が扱わないこと」と、その中身が書かれている文書の名前を入れます。読む人が迷わないだけでなく、改訂の担当者が、自分の文書だけを直せばよいのかを判断する手がかりになります。
作る順番と、AIに任せてよい範囲
AI戦略の文書を作る作業には、AIを使える工程が多くあります。既存の文書から関係する段落を抜き出す、2つの文書の重なりを指摘させる、項目ごとの下書きを作らせる、といった工程です。一方で、どこでAIを使い、どこで使わないか、投資の順番、責任者を誰にするかは、AIに任せません。次の順で進めます。
DX戦略、中期経営計画、利用規程、社外向けの方針、部門ごとのAIの計画を集め、最新の版かどうかを持ち主に確かめます。
集めた文書を社内で使ってよいAIに読ませ、8項目ごとに、どの文書のどの段落に関係する記述があるかを一覧にさせます。必ず段落の場所を根拠として添えさせます。
一覧を人が確かめ、DX戦略を参照するだけの項目と、AI戦略で新たに書く項目を決めます。AIの指摘が正しいかは、元の段落を開いて確かめます。
勝つ領域、使わない領域、任せない判断、投資の順番を、経営会議で決めます。AIが出した候補の一覧は材料として使い、決定はしません。
決まった中身をもとに、AIに文書の下書きを作らせます。参照の章番号や数字は、担当者が元の文書と1つずつ突き合わせて直します。
AIに既存の文書を読ませるときは、社外秘の計画や数字が含まれることを前提に、社内の規程で読ませてよいとされた道具だけを使います。重なりの指摘は便利ですが、見落としが無いことまでは保証されないので、最後は文書の持ち主が目で確かめます。
- 国の人工知能基本計画の日付と方針は、2026年10月1日時点で内閣府の公表資料で確かめた範囲です
- デジタルガバナンス・コード3.0の策定日と見直しの対象は、経済産業省の公表に基づいています
よくある質問
Q. 中小企業でも、AI戦略という文書は必要ですか。
必ずしも別の文書は要りません。経営方針や事業計画の中に、勝つ領域、使わない領域、任せない判断、見直しの時期の4つを数行ずつ書けば、役割は果たせます。大事なのは文書の名前より、この4つが決まって書かれていることです。
Q. 勝つ領域が決まらないうちに、戦略を出してもよいですか。
出してよいですが、その場合は「試す領域」と書き、いつまでに勝つ領域を決めるかの期限を添えます。期限の無い試行は、項目5で触れた止める条件が働かず、投資だけが続く原因になります。
Q. AIに戦略の文書を丸ごと書かせてはいけませんか。
下書きを作らせること自体は問題ありません。ただ、勝つ領域や任せない判断はAIが会社の事情から決められるものではなく、もっともらしい一般論が並びやすくなります。決めるべき4項目は経営が先に決め、AIにはその結果を文書の形に整えさせる、という順にします。
Q. 国の計画が変わったら、自社の戦略も直す必要がありますか。
自動的に直す必要はありません。臨時の見直しの条件に「国の計画や法令の大きな変更」を入れておき、変わったときに、使わない領域や任せない判断に影響があるかを確かめます。影響が無ければ、記録だけ残して次の定期の見直しに回します。
まとめ
AI戦略は、国の計画を写す文書でも、DX戦略をAIの言葉で書き直す文書でもありません。書くべき項目は、勝つ領域、使わない領域、データと基盤の参照、体制と責任者、投資の配分と順番、任せない判断、成果の測り方、見直しの周期の8つです。このうちデータと基盤、全社の体制、投資の総額、全社の指標はDX戦略を参照し、同じ投資や人材計画を2つの文書に書かないようにします。DX戦略の1章に入れるか別の文書にするかは状況で選び、どちらでも数字と責任の置き場所は1つにします。既存の文書の抜き出しや重複の指摘、下書きはAIに根拠を添えさせて任せ、どこで使いどこで使わないか、投資の順番、責任者は経営が決めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
