生成AI研修の中身を決める6工程|配って終わりにしない

「生成AIの研修をやることになったのですが、中身には何を入れればいいですか」「配って受講率は上がったのに、業務のやり方は何も変わっていません」——研修の企画が人事から情報システム部門や推進担当に回ってきたころ、この2つは並んで届きます。そこで最初に手が動くのは、たいていカリキュラム表です。生成AIとは何か、使い方、注意点、演習。項目を並べ、それぞれに何分を割り当てるかを書き込んでいく。ところが時間の割り振りは、中身が決まったあとにしか決まりません。研修の中身とは教える項目の一覧のことではなく、翌日にどの業務のどの工程で手が動くかを、先に1つだけ決めることです。この記事では、題材の選び方から現場に配る手順書の確定までを6つの工程に分け、それぞれで何を決め、終わったときに何が残るのかを整理します。
カメ先生生成AIの研修は道具の使い方を教える場だと思われがちですが、翌日に手が動いた回はどれも、扱う場面が1つに絞られています。項目を増やすほど、受講者の側では何にも結びつかなくなります。
カメ子教える内容を減らしたほうが身につく、ということですか。
カメ先生減らすというより、置き場所を先に決める話です。同じ「要約させる」でも、議事の要約か問い合わせの要約かで、確かめる場所も、直す手間も、渡してよい材料も変わります。題材が決まらないうちは、どれだけ丁寧に説明しても一般論のままになります。
カメ子研修の中身は、教える項目ではなく題材のほうから決まるということでしょうか。
- 職場を離れて行う教育訓練の枠は、いまも階層別で埋まっている。実施した内容の1位は初任層向けの研修で75.7%、デジタル技術を使って提案できる能力は10.3%(厚生労働省・令和7年度)
- 中身が決まらない原因は教材ではなく、必要な技能が言葉になっていないこと。必要なスキルを把握できていない企業は52.8%、人材の評価基準がない事業所は76.1%
- 演習の題材案も理解度の設問案も、機械に下書きさせてよい。人の時間は、教えない範囲を名指しする作業と、合格の線を引く作業のほうに残す
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「中身を決める」は、何を何時間やるかを決めることではない
カリキュラム表から入ると、項目が均等に並びます。概要に30分、使い方に60分、注意点に30分、演習に60分。この形はどの会社に出しても通ります。通るということは、自社の業務が1行も入っていないということでもあります。受講者は3時間座り、帰り際に「で、明日の何に使うんだったか」と考える。受講率は上がり、業務は昨日と同じ手順で回ります。
翌日に手が動いた回には、共通点があります。扱う工程が1つに絞られていることです。たとえば「週次で回ってくる問い合わせの一次回答を下書きさせ、決められた3つの観点で確かめてから出す」。この1文が決まっていれば、必要な座学は自然に決まります。渡してよい材料の線、確かめる観点、直し方。決まっていなければ、座学は一般論で埋まるしかありません。
研修の中身は3つの要素でできています。題材(どの工程を扱うか)、線引き(どこまで任せてどこから人が決めるか)、到達点(翌日に何が出せれば合格か)。この3つが埋まれば、時間の配分は逆算で出ます。埋まらないまま時間割を先に作ると、あとから題材を差し込む場所がなくなります。以降の6工程は、この3要素を順番に埋めていく手順です。
研修の枠は、いまも階層別で埋まっている
厚生労働省の令和7年度「能力開発基本調査」を見ます。令和7年10月1日時点の状況について、事業所調査は7,194事業所(有効回答率54.2%)、企業調査は7,452企業(同52.6%)から回答を得た調査です。職場を離れて行う教育訓練を、正社員または正社員以外に対して実施した事業所は72.6%、正社員に対して実施した事業所は70.9%。実施した相手は新入社員が58.7%、中堅社員が57.4%、管理職層が49.0%でした。教育訓練を行う機関は「自社」が76.4%で最も高く、外に出すより自前で組む形が主流です。
問題は中身の内訳です。実施した教育訓練の内容(複数回答)は、新規採用者など初任層を対象とする研修が75.7%で1位。新たに中堅社員となった者を対象とする研修49.3%、管理・監督能力を高める内容46.9%、ビジネスの基礎知識46.6%、新たに管理職となった者を対象とする研修44.3%と続きます。上位はすべて階層別の枠です。一方で「デジタル技術を利活用して技術革新や生産性向上の提案が出来る能力」は10.3%にとどまります。
同じ設問には「今後実施したい内容」も並んでいます。ここでその項目は21.0%に上がります。実施は10.3%、今後実施したいは21.0%。開いている差は、やる気の差ではなく中身が決まっていない差です。階層別の研修は誰を集めるかが自動的に決まりますが、生成AIの研修にはその枠がありません。だから企画は「どの枠に入れるか」から始めることになり、そこで止まります。6工程の1つ目に業務の選定を置くのは、この止まり方を避けるためです。
中身が決まらないのは、必要な技能が言葉になっていないから
同じ調査で、能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとした事業所は80.1%です。内訳を見ると、指導する人材が不足している59.5%、人材を育成しても辞めてしまう51.6%、人材育成を行う時間がない45.5%、鍛えがいのある人材が集まらない27.5%と続きます。そのあとに、育成を行うための金銭的余裕がない14.3%、人材育成の方法がわからない10.0%、適切な教育訓練機関がない9.5%。
この並びは、企画の性質を決めます。困っているのは方法の情報ではありません。教える側の人と時間です。だとすれば中身を決める作業は、教材を探す作業ではなく、限られた講師役の時間を、どの業務工程に置くかを決める作業になります。1つの工程に置けば深く扱えて、5つに散らせばどれも紹介で終わる。この選択が中身の質をほぼ決めます。
独立行政法人情報処理推進機構が2026年7月30日に発行した「DX動向2026」も、同じ場所を指しています。2026年4月17日から6月12日にかけて実施し、1,799社から有効回答を得た調査です。推進に必要なスキルを「把握できていない」が52.8%、人材像を「設定し、社内に周知している」は16.2%、人材の評価基準は「基準はない」が76.1%。そして、AIの影響を踏まえた人材対応の項目のうち「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」だけが着手19.0%と相対的に高く、他の項目は1割に届きません。業務の把握が先に立ち、そこからしか技能の言葉は出てこないという順序が、数字にも出ています。
公表された標準は、そのままでは自社の研修にならない
中身を決めるとき、まず参照されるのが公的な標準です。情報処理推進機構と経済産業省が2026年4月に公開した「デジタルスキル標準」の第2.0版は、全てのビジネスパーソン向けの「DXリテラシー標準」と、推進する人材向けの「DX推進スキル標準」の2種類で構成されています。前者は、マインド・スタンス、背景、活用されるデータと技術、利活用という4つの柱を持ちます。
生成AIについては、2023年8月の改訂で「生成AI利用において求められるマインド・スタンス」が別立てで追加されました。原文は3つ。問いを立てる、仮説を立てる・検証するといったスキルと掛け合わせて適切に利用しようとしていること。期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であると理解していること。そして、変化をいとわず学び続けていること。2026年4月の改訂では、AIの実装・運用やガバナンスに関するスキルが拡充されています。
ただし、この文書は自ら断りを入れています。扱う知識やスキルは汎用性を持たせた表現にしてあり、個々の組織・企業への適用にあたっては、各組織・企業の属する産業や自らの事業の方向性に合わせた具体化が求められる、という趣旨の一文です。標準は項目の一覧であって、研修の中身ではありません。項目をそのまま章立てにすると、冒頭で書いたカリキュラム表に戻ります。6工程は、この具体化の作業を分解したものだと考えてください。
- 本記事は2026年9月時点の公表資料に基づいています。標準も調査も版が上がれば数字は変わります
- 厚生労働省の調査の項目名には全角の英字略語が含まれるため、本文では「業務に役立つ情報技術の基礎」「事務機器の操作」のように日本語に言い換えています
- 資格を取らせるか社内研修でやるかという投資判断は、別の記事で扱っています。本記事は社内で組む前提で、その中身の決め方だけを書きます
工程1:題材にする業務を1つ選ぶ
選ぶ単位は部署でも階層でもなく、業務の工程です。「営業部向け」ではなく「受注前の見積書から契約条件を抜き出す作業」まで下ろします。選定の条件は3つ。週に何度も回っていること、出来上がりの良し悪しを、その場にいる人が判断できること、間違えても社外に出る前に人の目が入ること。月に1回の作業を題材にすると、翌日どころか翌月まで再現の機会が来ません。
よくない題材の代表は「全社の議事録作成」です。会議体ごとに様式も目的も残す理由も違うので、演習で正解を1つに決められず、確かめる観点も共有できません。向くのは、週次の問い合わせ一次回答の下書き、展示会で集めた名刺情報の整形、見積書の条件抜き出し、定例報告の下書きのように、入力の形がそろっていて、良し悪しをその場で言える工程です。
1回の研修で扱う工程は1つに絞ります。2つ入れた瞬間、どちらも例題になり、受講者は「自分の担当ではないほう」を聞き流します。候補が複数残ったら、次回の題材として記録しておけば足ります。選定の下書きは機械に作らせて構いませんが、どの工程を捨てるかは、その業務で手直しをしている人が決めます。件数の多さだけで選ぶと、材料を出せない工程を引き当てます。
工程2:その工程を、任せる側と決める側に割る
題材が決まったら、その工程を5つから7つの作業に分解します。見積書の確認なら、契約条件の抜き出し、過去の類似案件の引き当て、値引き率が社内の基準に収まっているかの判定、例外を認めるかの判断、承認先の選定。そのうえで、どこまでを機械に下書きさせ、どこから人が決めるかに線を引きます。この例なら、前の2つは任せられ、あとの3つは人が持ちます。
研修で教えるのは、線の位置とその理由です。「値引き率の判定を任せない」だけでは覚えられません。過去の値引きは事情つきで決まっており、事情が文字で残っていないから任せられない、という理由まで伝えると、受講者は似た場面で線を引けるようになります。理由を省いた研修は、扱わなかった作業が出てきた瞬間に効かなくなります。
線を引かずに「便利な使い方」だけを教えると、受講者ごとに線がずれます。同じ部署の3人が、それぞれ違う範囲を任せている状態になり、手直しの量も、間違いの出方もばらばらになる。研修の価値の半分は、全員が同じ位置に線を引いて帰ることにあります。線の一覧は、そのまま工程6で配る手順書の骨格になります。
工程3:教えないことを先に名指しする
次に作るのは、教える範囲ではなく、教えないものの一覧です。3時間の枠は、放っておくと外したい話から埋まります。モデルの仕組み、他社の事例集、料金プランの比較、指示文の細かい書き分け。どれも面白く、どれも翌日の作業には効きません。除外リストは、教える範囲の一覧より短くて構いません。3行あれば効きます。
除外を先に書く実務上の理由は、講師役の得意分野に寄るのを防ぐためです。情報システム部門の担当が講師をすると仕組みの説明が伸び、推進担当が講師をすると事例の紹介が伸びる。どちらも善意で伸びるので、当日その場では止められません。企画の段階で名指ししておけば、削るかどうかの議論を、当日ではなく企画書の上で済ませられます。
書き方には気をつけます。「触れてはいけない」と書くと、質問が出たときに講師が答えられなくなります。「この回では扱わない。必要なら別の回を立てる」と書くのが実務的です。受講後に出た質問のうち、除外した範囲に関するものが多ければ、それは次の回の題材が見つかったということでもあります。
工程4:演習の材料を自社の実物から作る
演習の材料は、自社で実際に流れているものから作ります。汎用の例題は、その場では動いても翌日に再現されません。扱う書式が違い、確かめる観点が違い、判断の分かれ目が出てこないからです。先ほど見た調査で、教育訓練を行う機関の76.4%が「自社」だったことを思い出してください。自前で組むのに材料だけ外から借りると、自前でやる意味の大半が消えます。
実物を演習に出すには加工が要ります。取引先名と担当者名の置き換え、金額の桁の変更、社外秘の記述の削除、個人情報の除去。そのうえで、誰が加工するか、いつまでに用意するか、どこに置くか、研修後に消すか残すか、外部の講師に渡してよいかまでを、企画書に書き切ります。ここを決めずに当日を迎えると、講師が手元のサンプルで代用して、結局は汎用の例題に戻ります。
材料が用意できない工程は、題材にしません。工程1に戻ります。戻れるかどうかが、企画の質を分けます。材料が出せないのは、その工程の記録が業務側で残っていないという意味でもあり、研修より先に手をつける宿題が見つかったことになります。戻った回数は、企画書に残しておくと次回の選定が速くなります。
工程5:到達点を「翌日の作業」の形で書く
到達点を「生成AIの特性を理解する」と書くと、合格の判定ができません。書き換えます。「週次の一次回答の下書きを3件出し、決められた3つの観点で確かめ、直した箇所を記録できる」。主語が受講者で、目的語が成果物で、数が入っている形にすると、その場で判定できます。判定できる形にすると、演習の設計も自動的に決まります。
線は時間ではなく成果物で引きます。「90分の演習を最後まで受けた」は出席の記録であって到達の記録ではありません。先ほどの調査で、人材の評価基準について「基準はない」と答えた事業所が76.1%でした。全社の人事評価に載せる基準を作る話ではなく、この回に限った、その日の合格の線を1本引くだけで十分です。1本あれば、次の回で上げ下げできます。
線を下げてよい条件と、下げてはいけない条件も先に決めます。材料の準備が間に合わず件数をこなせなかったのなら、件数は下げてよい。確かめる観点を飛ばして早く出した人を合格にするのは、下げてはいけない側です。前者は運営の問題ですが、後者を通すと、確かめない使い方が「研修で認められた手順」として現場に降りていきます。
工程6:残す成果物と、更新の担当を決める
研修が終わったときに残るものを、先に3つ決めておきます。1つ目は、業務の手順書に足した行。2つ目は、演習と質疑で出た質問の記録。3つ目は、次に題材にする工程の候補です。受講者名簿とアンケート結果しか残らない研修は、次の回の材料を1つも生みません。
手順書に足す行は、工程2で引いた線をそのまま文にしたものです。「一次回答の下書きは機械に作らせてよい。ただし、金額と納期が入る回答は、下書きのまま送らず担当が確認する」のように、してよいことの側から書きます。この1行が入っていない研修は、資料が配られただけで手順は昨日のままです。
質問の記録は、次回の題材そのものになります。同じ質問が3人から出たら、それは線引きの説明が足りていない箇所です。更新の担当と期限も企画書に書きます。誰が、いつまでに、手順書のどこを直すか。ここを空欄にしたまま解散すると、半年後に「研修はやったはずなのに」という会話が始まります。なお、配ったあとに定着させる打ち手そのものは、この記事の範囲外です。
6工程を通した1回分の組み立て
ここまでの6工程を、1回の研修を作る順番として並べます。所要としては、工程1と工程4に時間がかかり、工程3と工程5は短く済みます。重いのは題材の選定と材料の用意で、教える内容そのものではありません。この配分がひっくり返っているときは、たいてい題材が決まらないまま資料を作っています。
週に何度も回り、良し悪しをその場で言え、社外に出る前に人の目が入る工程に絞る。候補が複数残ったら次回分として記録する
5つから7つの作業に割り、どこまで下書きさせ、どこから人が決めるかを決める。線の理由まで文にする
仕組みの解説、他社事例、料金の比較などから外すものを3行程度で書く。扱う回を別に立てる余地は残す
加工の担当・期限・置き場所・研修後の扱い・外部講師への開示可否まで決める。用意できなければ工程1に戻る
主語が受講者、目的語が成果物、数が入った1文にする。線を下げてよい条件と下げてはいけない条件も添える
手順書に足す行、質問の記録、次の題材候補の3つ。誰がいつまでに手順書を直すかを企画書に書く
6工程を1枚の表にすると、企画会議で埋まっていない欄がすぐ見えます。空欄のまま日程だけ先に決まる、というのがいちばん起きやすい事故です。
| 工程 | 決めること | 終わったときに残るもの | 決める人 |
|---|---|---|---|
| 1 題材の選定 | 扱う業務工程を1つ。選定の条件3つに照らす | 題材の1文と、次回候補の一覧 | その工程で手直しをしている担当 |
| 2 線引き | 5〜7の作業に割り、任せる範囲と人が決める範囲 | 線の一覧と、線を引いた理由 | 業務の責任者と情報システム部門 |
| 3 除外 | この回で扱わないものを名指しする | 除外リスト(3行程度) | 企画担当 |
| 4 材料 | 実物の加工・置き場所・研修後の扱い | 演習用の材料一式と取扱いの取り決め | 業務側と情報システム部門 |
| 5 到達点 | 翌日の作業の形で書いた合格の線 | 判定できる形の到達点1文 | 業務の責任者 |
| 6 出口 | 残す成果物と、手順書の更新担当・期限 | 手順書に足す行、質問の記録 | 業務の責任者 |
研修の設計そのものに、AIをどこまで使うか
6工程のうち、機械に下書きさせて効くのは限られています。任せてよいのは、業務工程の分解案の下書き、演習の題材の候補出し、理解度を測る設問の案、受講後に集まった質問の分類、そして手順書の下書きです。いずれも案を出す作業と、量をさばく作業で、案が正しいかどうかの判定は含まれていません。
確かめ方も決めておきます。設問案を作らせるときは、正解だけでなく、誤りの選択肢がなぜ誤りなのかまで書かせて、その回で教えていない範囲が出題されていないかを人が照らします。質問の分類を任せるときは、分類の根拠として元の質問文をそのまま引かせます。根拠が引けない分類は、たいてい件数合わせで作られています。
人の側に残るのは3つです。何を教えないと決めること。合格の線をどこに引くか。そして、現場に配る手順を確定させること。この3つは、間違えたときに責任を引き受ける人でないと決められません。落とし穴もあります。質問の分類は件数の多い順に並ぶので、1件しか出ていない重い質問が下に沈みます。分類の結果は、件数の少ない側から先に読むのが実務的です。
座学と演習の配分は、題材が決まってから決まる
時間の配分は、題材の性質で変わります。値引きの妥当性のように判断が絡む工程は、線引きの説明が長くなるので座学が伸びます。名刺情報の整形のように手順が定型に近い工程は、座学を短くして演習の手数を増やしたほうが効きます。同じ3時間でも、題材が違えば配分は逆になります。だから配分を先に決めると、どちらかの題材で必ず破綻します。
前に配る内容と、その場でやることも分けます。用語、禁止事項、入口の場所といった共通の前提は、eラーニングのような形で事前に配っておけば、集合の時間を演習と質疑に使えます。逆に、線引きの理由と、判断が割れる場面の議論は、その場で声を聞き合わないとそろいません。
| 題材の性質 | 前に配っておくもの | 集合の時間で扱うもの |
|---|---|---|
| 判断が絡む工程(値引き、例外の扱い) | 用語、禁止事項、入口の場所 | 線引きの理由、判断が割れる場面の議論、成果物の講評 |
| 定型に近い工程(整形、転記、要約) | 用語、禁止事項、基本の操作の流れ | 実物での演習を数多く、確かめる観点の反復 |
| 外部に出る成果物を扱う工程 | 用語、禁止事項、社外への出し方の決まり | 確認の手順の実演、差し戻しの実例、記録の残し方 |
なお、費用の目安として、令和7年度の調査では職場を離れて行う教育訓練に支出した費用の労働者一人当たり平均額は2.0万円でした(前回1.5万円)。全社一律の大きな企画を組むより、題材を1つに絞った回を複数回まわすほうが、この水準の予算とは相性がよくなります。
中身を決めるときによくある失敗
最後に、企画の段階でつまずきやすい点をまとめます。いずれも善意で起き、しかも企画書の上では立派に見えるものばかりです。
- 教える項目を先に並べる:どの会社にも通る目次ができ、自社の業務が1行も入らない
- 題材を部署で決める:営業向け、経理向けと切ると、部署の中で工程がばらけて演習にならない
- 汎用の例題で演習する:その場では動くが、書式も判断の分かれ目も違うので翌日に再現されない
- 到達点を受講時間で書く:出席の記録は残るが、何ができるようになったかが判定できない
- 除外を決めずに当日を迎える:講師の得意分野に時間が寄り、演習が最後の15分に押し出される
- 手順書の更新担当を空欄にする:資料は配られたのに、業務の手順は前のまま残る
6つのうち最も気づきにくいのは4つ目です。受講時間で書いた到達点は、集計もでき、報告もでき、達成率まで出せます。報告できてしまう分だけ、中身が空だったことに気づく時期が遅れます。気づくのは半年後、業務の手順書を開いて何も足されていないと分かったときです。
よくある質問
企画の相談でよく聞かれるものを4つ挙げます。どれも、答えが題材の決め方に戻ってくる質問です。
全社一斉と、部署ごとの小さい回。どちらから始めるべきですか
題材を1つに絞る前提なら、部署ごとの小さい回からになります。全社一斉は、共通の前提を配る場面には向きますが、演習の材料を全社でそろえられないので、そこだけ汎用の例題に落ちます。共通の前提は事前配信で全社に、演習は工程ごとに小さく、という分け方が現実的です。
外部の講師に頼むとき、何を渡せばよいですか
渡すのは6工程の1・2・3・5です。題材の1文、線引きの一覧とその理由、除外リスト、到達点の1文。この4つを渡さずに依頼すると、講師は一般論のカリキュラムを持ってきます。材料の加工と手順書の更新は、社外に出せない情報を含むので自社側に残します。
受講率のほかに、何を見ればよいですか
その回に限って、到達点の1文が満たされた人数を見ます。そのうえで、翌月に手順書へ足された行の数と、同じ工程から上がってくる質問の件数の推移を見ます。件数が減らないなら、線引きの説明が足りていない箇所が残っています。
使う道具や機能が変わったら、作り直しですか
作り直すのは操作の説明の部分だけです。題材、線引き、到達点は業務側の事情で決まっているので、道具が変わってもほとんど動きません。逆に、道具の説明が中身の大半を占める研修は、更新のたびに全部を作り直すことになります。6工程で組む利点の1つがここにあります。
まとめ
生成AI研修の中身は、教える項目の一覧でも、座学と演習の時間配分でもありません。題材、線引き、到達点の3つが埋まってはじめて、時間の配分が逆算で決まります。厚生労働省の令和7年度の調査では、実施された教育訓練の内容の1位が初任層向けの研修で75.7%、デジタル技術を利活用して提案できる能力は10.3%でした。同じ項目が「今後実施したい」では21.0%に上がります。やりたいのに組めていない、という状態がそのまま出ています。
組めない原因は、方法の情報が足りないことではありません。人材育成の問題点で「方法がわからない」は10.0%にとどまり、上位は指導する人材の不足と時間でした。情報処理推進機構の調査でも、必要なスキルを把握できていない企業が52.8%です。デジタルスキル標準の第2.0版が自ら断っているとおり、公表された標準は汎用の項目の一覧であり、各社の産業と事業の方向性に合わせて具体化する作業が別に要ります。6工程は、その具体化の手順です。
題材を1つ選び、任せる作業と人が決める作業に線を引き、教えないものを名指しし、実物から演習の材料を作り、翌日の作業の形で到達点を書き、手順書に足す行と更新の担当を決めて終える。案出しと分類は機械に任せてよく、そのときは根拠を必ず引かせます。教えない範囲、合格の線、配る手順の確定は、間違えたときに責任を引き受ける人が持つ。次の企画会議で最初に埋める欄は、日程でも予算でもなく、どの工程を題材にするかの1行です。ここが埋まれば、残りは順番に決まります。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
