カオスマップは自分で作るべき?|業界の地図を持つ効き目

「カオスマップに自社が載っていなかったのですが、業界で見られていないということでしょうか」「新規領域の資料を作るのに、どこかが公開している業界地図をそのまま貼ってよいものか迷っています」。マーケ担当と経営企画の双方から、この2つの形で相談が届きます。どちらの背景にも、同じ思い込みがあります。カオスマップは業界の全体像を中立に写した地図だ、という受け取り方です。実際は違います。多くは作った会社が自社の商売のために配っている資料で、誰を載せるかの基準は作り手が決めています。だからといって価値が無いわけではなく、読み方と作り方を知っていれば、自社の立ち位置の説明にも新規領域の見立てにも効きます。この記事では、見る側の注意、自分で作るときの軸と集め方、そして配布物として使うときの体裁までを、立場を移しながら整理します。
カメ先生カオスマップって、業界の全体を中立に写した地図だと思われがちなんだ。でも実際に出回っている多くは、作った会社が自分の立ち位置を説明するために配っている資料のほうなんだよ。
カメ子地図というより、作り手のある展示物に近いということですか。
カメ先生近いというより、そのものだね。だから見る側は、誰が何を基準に選んだのかを先に確かめる。そして自分で作る側に回るなら、その基準を最初に図の中へ書いてしまうのがいちばん強いんだ。
カメ子隠さずに基準を書いた図のほうが、かえって信用されるということですね。
- カオスマップの多くは中立な調査結果ではなく、作成企業が配る資料。載っている、載っていないは審査の結果ではない
- 自分で作るなら軸は1つに決める。提供する機能で切るか、買う人の部署で切るか、業務の工程で切るかを目的から選ぶ
- 出典と時点と掲載基準を図の中に書くと、配布資料としての信用と、次の更新の判断材料が同時に手に入る
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カオスマップとは何か。混沌としているのは業界のほうではない
カオスマップは、特定の業界やテーマに関わる企業やサービスを、カテゴリ別に分類して一枚の図に並べたものです。日本語では業界地図と呼ばれることも多く、実務上はほぼ同じものを指します。解説記事では、複雑で入り組んだ業界構造を混沌と捉え、それを整理して見えるようにするところから、この名前が付いたと説明されています。
似た図と混同されやすいので、先に区別しておきます。ポジショニングマップは、価格と機能といった2つの軸で作った平面に自社と競合を置き、空いている場所を探す図です。目的は選ぶこと、あるいは自社の置き場所を決めることにあります。カオスマップの目的は選ぶことではありません。並べること自体が目的で、狙いは見落としを減らすことにあります。だから軸は平面の座標ではなく、区分の切り方として現れます。
この違いは、使う場面の違いにそのまま出ます。ポジショニングマップは数社を比べる場面で使い、カオスマップは数十社から数百社を一望する場面で使います。実際、公開されている業界地図をまとめた記事に並ぶ9本を見ると、掲載社数は93社から1,600社まで開いていました。2022年から2023年にかけて公開されたもので、同じ業界地図という言葉でも密度が桁で違います。
用語のミニ解説。この記事に出てくる言葉
以降で使う言葉を先に固定します。カオスマップをめぐる会話は、作る人と見る人で前提がずれたまま進みやすい領域です。会議で意味が食い違いやすいものを、ここでそろえておきます。
- 掲載基準……どの企業を、どういう条件で載せたかを示した規則。売上の規模、事業を続けているか、公開情報があるか、といった線で引く
- 軸(切り口)……図を分ける観点。提供する機能で切るか、買う人の部署で切るか、業務の工程で切るかによって、同じ会社の置き場所が変わる
- 時点……その図がいつの情報に基づくか。何年何月時点、という形で図の中に書く
- 第三者制作……業界団体や調査会社など、その市場で商売をしていない主体が作る形。中立性が強みになる
- 自社制作……その市場で商売をしている企業が作る形。自社の位置づけを示せる代わりに、選び方への疑いが向きやすい
- またがる会社……複数の区分の条件に当てはまる会社。分類作業でいちばん時間を取られる相手
この中で見る側が最初に確かめるのは、掲載基準と時点の2つです。この2つが書かれていない図は、社内資料の裏づけとしては使いにくくなります。逆に作る側から見れば、この2つを書くだけで図の信用度が一段上がる、ということでもあります。
どこから来たのか。原型は投資銀行が配った一枚だった
この形式の図が広まったきっかけは、米国の広告業界にあります。ある投資銀行の創業者が、入り組んだ広告配信の関係者を一枚に並べた図を作り、2010年5月に米国の広告業界団体が開いた会議で公開しました。解説によれば、その原型は2005年ごろには構想されており、2009年には社内で共有されていたと紹介されています。
重要なのは、その図が何のために作られたかです。技術系の新興企業に向けた案内ではありませんでした。企業の合併や買収を検討する経営企画の担当者に向けた資料だったと説明されています。扱う対象の規模にも線が引かれており、売上高5,000万ドル程度以上という基準があったと紹介されています。二次的な情報なので数字は目安として受け取ってください。要点は規模の水準ではなく、最初から特定の目的と特定の読者を持った、選択のある図だったという点です。
広がり方も記録が残っています。公開後、資料共有サイトで7万5千回以上の表示またはダウンロードがあり、116カ国からのアクセスがありました。2013年3月のある1週間だけで9,300回という数字も紹介されています。日本ではその入り組んだ見た目から混沌の図という呼び名が定着し、やがて広告以外の業界にも形式だけが移っていきました。形式は移りましたが、作り手の目的が図に入り込むという性質も一緒に移っています。
なぜ無料で配られるのか。多くは作り手の集客の道具
カオスマップを1枚作るには相応の手間がかかります。それでも無料で公開されるのは、配ること自体に目的があるからです。解説記事では、中長期にじわじわ効く認知向上のためのストック型の施策と位置づけられています。図を入口にして詳しい解説資料へつなぎ、情報収集の段階にいる相手と接点を作る、という組み立てです。
BtoBの配布資料としてこの形式が強い理由は3つあります。1つ目は、一枚で完結するので受け取った側がそのまま社内で回せること。2つ目は、引用や紹介のたびに発行元の名前が繰り返し出ること。3つ目は、自社の商品説明ではないため受け取られる抵抗が小さいことです。自社を売り込まない資料でありながら、業界を俯瞰できる会社だという印象が残ります。
制作主体は大きく2通りに分かれます。その市場で商売をしている企業が作る自社制作と、業界団体や調査会社などが作る第三者制作です。前者は自社の位置づけを示せる代わりに選び方への疑いが向き、後者は中立性が強みになる代わりに図の更新が止まりやすい。見る側がまず確かめるのは、この図は誰の活動なのか、ということです。発行元が同じ市場のプレイヤーなら、その会社が有利に見える切り方になっていないかを疑うところから読み始めます。
見る側の注意その1。載っている、は評価されている、ではない
最も多い誤解がここです。掲載は審査の結果ではありません。作り手が見つけて、自分の基準に照らして選んだ結果です。載っていない理由は、たいてい3つのどれかに収まります。作り手が見つけられなかった、掲載基準の外だった、締め切りに間に合わなかった。事業内容の優劣が理由になっていることは、実はそれほど多くありません。
逆方向の誤解もあります。載っていることは、その会社が今も事業を続けていることの保証ではありません。公開情報を集めた時点で存在が確認できた、というだけです。実際、公開済みの図には、事業を畳んだ会社、その事業を別会社へ移した会社、社名が変わった会社がそのまま残っていることがあります。サイトが残っていると、外形からは判別できません。
では見る側はどう使えばよいのか。候補を漏れなく拾うための出発点として使い、判断には使わないのが実務的です。新規領域を調べるとき、自力で思いつく会社は10社前後で頭打ちになります。図を出発点にすれば、その10社の外側にある区分に気づけます。気づいたあとの調査は、各社の公式情報にあたって自分で行います。図はそこまでの役割です。
見る側の注意その2。掲載基準が書かれていないとき、どこを見るか
公開されている図の多くは、掲載基準を明記していません。書かれていないときに代わりに見る手がかりが4つあります。発行元は誰か、時点はいつか、区分の粒度がそろっているか、そして発行元自身がどこに置かれているか、です。
4つ目がいちばん効きます。発行元が同じ市場のプレイヤーである場合、その会社の得意な切り口が、そのまま区分の立て方になっていることが多いからです。同じ会社の集合でも、提供する機能で切れば「うちは全部そろえている」ように見え、業務の工程で切れば「うちは上流を押さえている」ように見えます。区分の立て方そのものが、発行元の主張になっています。図の中身を読む前に、区分名を並べて眺めるだけで、この主張は読み取れます。
粒度のそろい方も手がかりになります。ある区分だけ会社数が極端に多い、あるいは1社か2社しかない場合、そこは作り手の関心の外にあるか、逆に主戦場かのどちらかです。前者なら、その区分は自分で調べ直す必要があります。時点については、書かれていない図は使わないのが安全です。何年何月時点という1行が無い図を社内資料に貼ると、後から現在の一覧として一人歩きします。
作る側その1。まず、この図で答えたい問いを決める
ここから立場を作る側に移します。最初にやることは会社を集めることではありません。この図で何に答えたいのかを1文で書くことです。目的は大きく3通りあり、どれを選ぶかで載せる範囲も粒度も変わります。自社の立ち位置の説明、新規領域の見立て、営業資料の裏づけの3つです。
目的別に何が変わるかを具体的に書きます。立ち位置の説明が目的なら、自社が入る区分とその隣接をていねいに描き、遠い領域は思い切って落とします。範囲は狭くて構いません。新規領域の見立てが目的なら逆で、周辺まで広く取ります。この場合は自分の知らない会社が入ってくることにこそ価値があり、抜けのほうが問題になります。営業資料の裏づけが目的なら、提案先の部署が日常で使う言葉で区分を立てます。相手の社内で回されることが前提なので、一枚で意味が通る形にします。
目的を決めずに始めると、決まった順番が逆になります。とりあえず集めた会社を並べてから区分を後付けすることになり、どの区分にも入らない会社が大量に残ります。先に決めるのは会社の一覧ではなく、この図で答えたい問いのほうです。問いが1文で書けないうちは、収集に入らないほうが結果的に早く終わります。
作る側その2。軸の決め方。機能・部署・工程の3通り
軸とは、区分を切る観点のことです。同じ会社の集合でも、切り方が変われば図の意味が変わります。実務で使われる軸は、おおむね次の3通りに整理できます。
| 軸 | どう切るか | 向いている目的 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 提供する機能で切る | 何ができるかで分ける | 代替関係の把握、比較検討の材料づくり | 機能の多い会社が複数の区分に現れる |
| 買う人の部署で切る | 誰が予算を持つかで分ける | 営業資料の裏づけ、提案先の言葉に合わせる | 同じ製品が会社によって別の部署で買われる |
| 業務の工程で切る | 業務のどの段階を担うかで分ける | 抜けの発見、組み合わせの検討 | 工程をまたぐ会社の置き場所が決まらない |
どれを選ぶかは、読む人が誰かで決まります。社外の見込み客に配るなら、相手の言葉に合う部署の軸。社内の企画で抜けを探すなら工程の軸。競合との比較材料にするなら機能の軸です。好みで選ぶものではなく、目的から一意に決まると考えたほうが迷いません。
いちばん多い失敗は、軸を2つ混ぜることです。機能で切った区分と工程で切った区分が同じ図に並ぶと、読む人はどの観点で比べればよいか分からなくなります。混ざっていないかは簡単に確かめられます。区分名を全部並べて、それが同じ1つの問いへの答えになっているかを見ます。「この会社は何ができるか」への答えと「この会社は業務のどこを担うか」への答えが混在していたら、軸が混ざっています。
作る側その3。集め方。公開情報の範囲と、1社の数え方
軸が決まったら集める段階に入ります。ここで先に決めるのは、どこまでを公開情報と呼ぶかです。公式サイト、決算や開示の資料、業界団体の会員名簿、公的な統計、報道。この範囲を定義して図の注記に書きます。会員限定の資料や、営業活動を通じて聞いた話は入れません。後から出どころを説明できないものは、配布物に載せた時点で弱点になります。
次に決めるのが、どこまでを1社と数えるかです。厄介な形が3つあります。1つ目は、同じ会社が複数の製品を出している場合で、会社単位で数えるか製品単位で数えるかを決める必要があります。2つ目は持株会社と事業会社の関係で、両方を載せると同じ実体が2回現れます。3つ目は販売代理店で、開発元と並べると読む人が同格だと受け取ります。数える単位を1つに決めて、図の注記に書いてしまうのが最も揉めません。
最後が、事業を畳んだ会社と買収された会社の扱いです。扱いは3通りあります。外す、残して注記を付ける、統合先に寄せる。どれを選んでも構いませんが、決めた規則は書きます。黙って外すと、前の版と見比べた人に減った理由を説明できなくなります。判別が難しい点もあります。事業を止めていてもサイトは残ることが多いため、お知らせの最終更新日や、採用ページの掲載状況といった外形から推定することになります。推定で外した場合は、その旨を記録に残しておきます。
作る側その4。いちばん揉める、どちらにも入る会社の置き方
分類作業の時間は、その大半がここに消えます。機能の多い会社ほど複数の区分の条件に当てはまり、置き場所が一意に決まりません。置き方は3通りあり、それぞれ得るものと失うものがはっきりしています。
- 主戦場に1つだけ置く……その会社が売上や訴求の中心にしている領域に置く。図は読みやすく、区分ごとの社数にも意味が残る。ただし置かれた側から異議が来やすい
- 複数の区分に重ねて置く……実態に近く、掲載企業からの異議も出にくい。その代わり区分ごとの社数が意味を失い、図が混み合って一望性が落ちる
- またがる会社の帯を別に設ける……区分の外側に横断する層を置く。読みやすさと実態の折衷になるが、その帯に入れる条件を新たに決める必要が出る
実務上の判断はこうです。社外に配る図は1番目に寄せ、社内で使う図は2番目でよい。理由は説明責任の差にあります。社外に配る図は掲載企業から問い合わせを受ける前提なので、規則が単純でないと守り切れません。社内用は説明相手が同僚なので、実態を優先して構いません。
そして置き方の規則は、図の中に書きます。あわせて問い合わせと修正の窓口も書きます。ロゴを載せる以上、商標権や不正競争防止法への対応が必要になり、勝手に載せて後から知らせる運用にはリスクがあると指摘されています。窓口を書いておくと、異議は苦情ではなく次の版の入力になります。窓口が無いと、修正の依頼が営業の問い合わせ先に届き、担当者の手元で止まります。
作る側その5。AIに任せる範囲と、人が持つ判断を先に分ける
この作業は、収集と照合の量が多い一方で、判断そのものは重い。だからAIとの分担がはっきり分かれます。先に線を引いてから作業に入ると、後から手戻りが出ません。次の表は、工程ごとにどちらが持つかを整理したものです。
| 作業 | どちらが持つか | 条件と理由 |
|---|---|---|
| 候補となる企業やサービスを集める | AIに下書きを任せる | 出典となる公開情報を1件ずつ添えさせる。出典の無い行は候補から外す |
| 説明文から分類の当たりをつける | AIに下書きを任せる | 区分の定義を先に人が書いて渡す。定義が無いと勝手な区分を作り始める |
| 重複と表記ゆれを洗い出す | AIに任せてよい | 機械的な照合。ただし似た名前の別会社は人が見分ける |
| 前の版との差分を見つける | AIに任せてよい | 増えた行と減った行の一覧まで。その増減が何を意味するかの解釈は人 |
| どの軸で切るか | 人が決める | 読む人が誰かで決まる。社外の情報からは決まらない |
| どちらにも入る会社の置き場所 | 人が決める | 掲載企業への説明が必要になる。責任が伴う判断 |
| 載せるか載せないかの採否 | 人が決める | 基準の適用そのものが発行元の立場の表明になる |
| 公開してよいかの最終確認 | 人が決める | 商標の扱いと事実の誤りの責任は発行元にある |
下書きを頼むときの条件は1つに絞れます。出典を1件ずつ付けさせることです。この条件を付けないと、実在するように見えて確認できない社名が混ざります。とくに多いのが2つで、事業を畳んだ会社が今も動いているように書かれることと、似た名前の別会社と取り違えられることです。どちらも図に載ってしまうと、掲載企業から指摘を受けるまで気づけません。
人が全件を確認できればよいのですが、数百社になると現実的ではありません。そこで、必ず人が目を通す範囲を先に決めます。図の目立つ位置に置く会社、新しく追加した会社、区分をまたぐと判断した会社、前の版から外した会社。この4つは、間違えたときに相手から連絡が来る種類の行です。残りは出典の有無と機械的な照合で扱い、公開後に届いた指摘を次の版に反映します。
作る側その6。手順を6つの工程に分ける
ここまでの内容を作業の順番に並べ直します。順番を守ることに意味があり、とくに2番目と3番目を飛ばすと、4番目以降が終わらなくなります。
社外の見込み客向けか、社内の企画向けかをここで決める。この1文が、後で区分に迷ったときに戻る場所になる
提供する機能、買う人の部署、業務の工程のどれか1つに決める。区分名だけでなく、ここに入る条件を文章で書いておく
公開情報の範囲、数える単位、規模や事業継続の線、事業を畳んだ会社の扱いの4つを決める。この時点で図に載せる注記の文面も作っておく
収集はAIに下書きさせ、出典を1件ずつ添えさせる。集まった候補は公式情報で実在を確認する。ここが全工程で最も時間を使う
2番目で書いた条件に照らして機械的に置く。規則から外れた例外を作った場合は、理由を記録に残す
発行元、何年何月時点、掲載基準、出典の範囲、問い合わせと削除の窓口。この5つを図の中に入れる
2番目で区分の条件を文章にしておくことには、はっきりした効き目があります。分類作業が感覚ではなく照合に変わります。条件が書かれていれば、当てはまるかどうかを他の人も判定でき、AIにも判定させられます。条件が頭の中にあるだけだと、担当者が変わった瞬間に分類の一貫性が失われます。
所要期間の目安についても触れておきます。解説記事では、初回の作成に1週間から2週間、その大半が情報収集に費やされると紹介されています。数字は対象の広さで大きく動くため目安として受け取るべきですが、比率の話としては実感に合います。図の見た目を整える作業は最後の1日で終わり、それ以前がすべて収集と分類です。
配る側その1。出典・時点・掲載基準を図の中に書く
立場を配る側に移します。配布物として見たとき、足りていないのはたいてい図の外側の情報です。発行元、何年何月時点、掲載基準を1行から2行、出典の範囲、問い合わせと削除の窓口。この5つを図の中に入れるだけで、資料としての扱われ方が変わります。
なかでも窓口は、体裁ではなく実務上の必要から要ります。他社のロゴを載せる以上、商標権や不正競争防止法への対応が求められます。解説記事では、勝手に掲載して後から知らせる運用のリスクが指摘され、対策として問い合わせと削除の窓口を図の中に明記することが挙げられています。窓口の有無は、掲載企業から見れば発行元の姿勢そのものです。
- 時点を書かない——半年後に見た人が、現在の一覧として社内資料に貼る
- 掲載基準を書かない——載っていない会社から理由を聞かれたときに、後付けの説明しかできない
- 自社だけ大きく置く、中央に置く——中立に見せたい図で、その一点だけで読む側の信用が落ちる
- 区分の名前を自社の商品名に寄せる——他社が入れない区分ができ、比較の図として機能しなくなる
- 出典を書かずに他社の調査数字を載せる——引用の範囲を超え、後から取り下げになる
- 問い合わせ窓口を書かない——修正の依頼が営業の窓口に届き、担当者の手元で止まる
- 配った版を差し替えて同じ場所に置く——前の版を引用した相手と、後日の会話が食い違う
最後の項目は見落とされがちです。配布物は引用されて初めて効果が出ますが、引用した相手は特定の版を見ています。更新は差し替えではなく版を分け、図の隅に版と時点を書き、前の版も参照できる場所に残します。これをやっておくと、後から数字が違うと言われたときに、どの版の話かで切り分けられます。
配る側その2。他社のマップを引用するときの線引き
自分で作らず、他社の図を提案資料に使う場面もあります。原則は2つです。発行元と出典を明記すること、そして図を改変しないこと。切り出したり並べ替えたりして自社に都合よく見せると、引用として説明できる範囲を超えます。
実務では、次の3通りで線を引くと迷いません。1つ目は、出典を明記してそのまま貼る形で、比較的安全です。ただし配布先が広い資料では、発行元の利用条件を先に確認します。2つ目は、一部の区分だけを切り出す形で、これは避けます。区分は他の区分との関係で意味を持つので、切り出した時点で元の意味と変わります。3つ目は、図そのものではなく数字だけを引く形です。この分野には何社ある、といった引き方で、出典と時点を添えれば使いやすくなります。
使う前に確かめることが1つあります。他社の図は、その会社の掲載基準で作られているという点です。自社の提案の根拠に使うなら、その基準が自分の主張と整合しているかを見ます。市場が大きいと言いたいのに、規模の小さい会社を大量に含む基準の図を使えば、根拠として弱くなります。加えて、社名とロゴが並ぶ図を自社の営業資料に転載すると、掲載企業から見て自社が推薦しているように受け取られることがあります。取引関係がある会社が含まれる場合は、事前に一言入れておくほうが安全です。
更新の重さ。総数が動かなくても、中身は毎年入れ替わる
作って終わりにできないのが、この形式の最大の負担です。数字で見ると分かりやすい例があります。米国で毎年更新されているマーケティング技術の業界地図の2026年版は15,505製品を掲載しており、前年の15,384製品から121製品、0.79%の増加にとどまりました。総数だけ見れば、ほとんど動いていないように読めます。
ところが内訳を見ると話が変わります。新規に追加されたのが1,488製品、削除されたのが1,367製品。差し引き121製品の増加という数字の裏で、およそ1,500が入れ替わっています。掲載数のおよそ1割です。更新の作業量は、増えた数ではなく入れ替わった数で決まります。この地図は2011年に150製品から始まり、15年で約100倍になりました。増え続ける前提で作られた図が、増加が止まって入れ替わりが主になる局面に入っています。
実務上の含意は、追加より削除のほうが重くなるということです。新しく出てきた会社は目に入りますが、静かに消えた会社は誰も知らせてくれません。だから更新のきっかけを、カレンダーではなく既存の業務の側に置きます。商談の記録に、初めて聞いた競合名を書く欄を作る。失注理由に競合名を残す運用があるなら、その一覧を四半期ごとに図と突き合わせる。問い合わせ窓口に届いた修正依頼を、そのまま次の版の入力にする。更新を新しい仕事として増やすのではなく、すでにある業務の出力を更新の入力にします。年に1回と決めるだけの運用は、担当が変わった時点で止まります。
作らないほうがよい場合と、着手前の確認表
最後に、作らない判断について書きます。次の3つのどれかに当てはまるなら、今回は見送るほうが賢明です。1つ目は、自社の領域が狭く、並べても数社にしかならない場合。2つ目は、区分の立て方がすでに業界で広く共有されていて、作っても既存の図と同じものになる場合。3つ目は、掲載企業からの問い合わせに応じる体制が置けない場合です。
1つ目について補足します。面にする意味は、一覧にすると抜けが見えるところにあります。10社に満たない市場では、一覧より1社ずつの比較表のほうが読む人の役に立ちます。ただし例外があります。社数が少なくても、区分の立て方に自社独自の見方を出せるなら作る価値があります。たとえば、他社が機能で切っている領域を業務の工程で切り直すと、同じ顔ぶれでも別の図になり、そこに主張が乗ります。
- この図で答えたい問いが1文で書けている
- 読む人が誰かが決まっている。社外の見込み客か、社内の企画か
- 軸が1つに決まっている。機能と部署と工程を混ぜていない
- 各区分に、ここに入る条件が1行で書かれている
- 公開情報として扱う範囲が決まっている
- 数える単位が決まっている。会社単位か製品単位か
- 事業を畳んだ会社の扱いが決まっている
- どちらにも入る会社の置き方の規則が決まっている
- 時点と掲載基準と問い合わせ窓口を、図のどこに入れるかが決まっている
- 次の更新を誰が何をきっかけに行うかが決まっている
この10項目のうち、3番目と4番目と8番目が埋まらないなら着手を止めます。分類の規則が無いまま集め始めると、集め終わってから規則を作ることになります。そうして作られた規則は、たまたま集まった顔ぶれに引きずられます。図の説得力は見た目ではなく、この規則の一貫性から出ています。
まとめ
カオスマップは業界を中立に写した地図ではありません。原型は2010年に米国の広告業界で公開された図で、合併や買収を検討する経営企画に向けて、ある投資銀行が自社の商売のために配ったものでした。形式が他の業界へ移ったあとも、作り手の目的が図に入り込むという性質は一緒に移っています。だから見る側は、載っている、載っていないを評価と読まず、発行元は誰か、時点はいつか、区分の粒度がそろっているか、発行元自身がどこに置かれているかの4点から読み始めます。
作る側に回るなら、最初に決めるのは会社の一覧ではなく、この図で答えたい問いです。問いが決まれば軸が1つに決まり、軸が決まれば区分の条件が書けます。条件が書ければ、そこから先の収集と照合はAIに下書きを任せられます。ただし出典を1件ずつ添えさせ、どの軸で切るか、どちらにも入る会社をどこに置くか、載せるか載せないかの採否は人が持ちます。分類作業の時間は、またがる会社の裁きに集中して消えるので、社外に配る図なら主戦場に1つだけ置く規則に寄せると守り切れます。
配る側としては、発行元、時点、掲載基準、出典の範囲、問い合わせと削除の窓口の5つを図の中に書きます。この5つがあると、掲載企業からの指摘が苦情ではなく次の版の入力に変わります。そして更新は追加より削除が重い作業です。毎年更新されている業界地図の例では、総数が0.79%しか動いていない年に、およそ1,500の入れ替わりが起きていました。だから更新のきっかけは、年1回という決め事ではなく、商談記録や失注理由や問い合わせ窓口といった既存の業務の側に置きます。業界の地図を持つ効き目は、図が完成した日ではなく、その図を保ち続けられる仕組みを作った日から出はじめます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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