リーンキャンバスをAIで埋める9マス|仮説の抜けを先に潰す

リーンキャンバスをAIで埋める9マス|仮説の抜けを先に潰す

「新規事業の骨子を1枚にまとめろと言われたので、AIに埋めさせたら30秒で9マス全部が埋まりました」「埋まったのですが、これで何が分かったのかと上長に突き返され、そこから先へ進めていません」——新しい事業やサービスの企画を通す側からは、この2つがほぼ同じ順番で届きます。足りないのは書く手間でも文章力でもありません。本当は埋まったマスではなく、空いたマスを見つけるための1枚だったという前提が抜けています。この記事では、9つのマスに何を書くのか、書く順番がなぜ課題と顧客から始まるのか、AIにどこまで任せてどこから先を人が決めるのかを、埋めたあとの確かめる順番まで含めて整理します。


カメ先生カメ先生

1枚のキャンバスって、全部のマスが埋まったら完成だと思われがちなんだけど、本当は埋まらないマスを見つけるための道具なんだ。


カメ子カメ子

空いているマスがあるほうが、正しい状態ということですか。


カメ先生カメ先生

正しいというより、正直な状態だね。埋める材料がないマスを無理に埋めると、確かめていないことが決まったことのように見えてしまう。


カメ子カメ子

AIに任せると9マスとも埋まってしまうのは、その逆をやっていることになるのですね。


この記事のポイント
  • 9つのマスは課題と顧客セグメントを対で書くところから始める。解決策を先に書くと、課題のほうが解決策に合わせて歪む
  • AIに任せてよいのは、候補を数多く出すこと・マス同士の食い違いを指摘すること・抜けている前提を挙げること。選ぶことと捨てることは人が持つ
  • 書いた1行ごとに、確かめた・推測した・未着手の印を付ける。印の付いていない1枚は、計画ではなく作文になる

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目次

埋まったマスより、空いたマスのほうが多くを語る

9つのマスが並んだ1枚に、事業の骨子を書き込む。中身をAIに渡せば、数十秒で9つとも文章で埋まって返ってきます。見た目は整っていて、そのまま社内の資料に貼れそうに見えます。ここで作業を終える人が多いのですが、新規事業の検討で最初に問われるのはまだ確かめられていないことがどれかです。埋まった9枚ぶんの文章は、その問いに何も答えていません。

見る場所を変えます。何マス埋まったかではなく、そのマスに書いたことの出どころを、1行で言えるか。顧客セグメントに書いた業種は、誰かに聞いて出てきたものなのか、自分たちが売りたい相手を書いただけなのか。課題に並べた3つは、実際に困っていると言われたものなのか、困っているはずだと考えたものなのか。出どころを言えないマスは、埋まっているように見えて中身は空いています。

この見方にすると、次の行動が変わります。9マスのうち3行しか出どころを言えないなら、次にやることは残りを埋めることではなく、その3行の中でいちばん壊れやすいものを確かめに行くことです。空いたマスは、作業の残りではなく確かめる順番の材料として使います。埋める作業と確かめる作業を混ぜないだけで、1枚の使い道はまるきり変わります。

9つのマスに何を書くか

この1枚は、事業を説明するための図ではありません。事業が成り立つために必要な前提を並べ、互いに矛盾していないかを見比べるための図です。9つは独立した項目ではなく、互いに縛り合っています。まず何を書く場所なのかを、書きがちな誤りと並べて確認します。

マス書くこと書きがちな誤り
課題相手が実際に困っている上位3つと、いまそれをどうしのいでいるか自社が解けることを課題として書く
顧客セグメント誰の話かを、業種と部署と役割まで下ろして書く中小企業全般のように広く書く
独自の価値提案その相手が他ではなくここを選ぶ理由を、一言でできることの一覧を並べる
解決策課題の3つに1対1で対応させて書く課題より先に書き、あとから課題を合わせる
チャネルその相手に実際に届く経路。届いた実績のあるものを優先使える手段を全部並べる
収益の流れ誰がいくら払うか。払う人と使う人が違うなら両方書く希望の売上金額だけを書く
コスト構造出ていくお金と、人の手間。運用にかかる分も入れる作るための費用だけを書く
主要指標前に進んだと言える数字を1つか2つに絞る見られる数字を全部並べる
圧倒的な優位性真似されにくい理由。無ければ空欄のまま置く業界初、先行者利益と書く

9つのうち、最初に書くのは課題と顧客セグメントです。この2つは対で書きます。課題は、誰の課題かが決まらないと書けないからで、逆に顧客だけ決めても、その相手が何に困っているかを書けなければ次のマスに進めません。この対をどこまで具体に書けたかで、残り7マスの精度はほぼ決まります。

課題のマスには、必ず「いまどうしのいでいるか」を添えます。表計算で手作業しているのか、外に出しているのか、そもそも諦めているのか。ここが抜けると、比べる相手がいなくなります。法人向けの商談で実際に競合になるのは、同じ種類の製品よりもいまのやり方であることのほうが多い。いまのやり方を書かない1枚は、勝ち負けを競う相手そのものを取り違えます。

事業計画書と違うのは、枚数ではなく決める対象

1枚に収まることばかりが取り上げられますが、枚数は本質ではありません。分厚い事業計画書は、決まったことを人に説明して承認をもらうための書類です。この1枚は、まだ決まっていないことを並べて、確かめる順番を決めるための道具です。目的が違うので、書き方も読み方も変わります。短い事業計画書ではありません。

説明するための書類では、空欄は不備です。確かめる順番を決めるための道具では、空欄は情報です。ここが入れ替わると、キャンバスは短い事業計画書に化けます。化けた瞬間に空欄を埋めることが目的になり、確かめていないことが、決まったことの顔をして並ぶ。新規事業の検討で起きる事故は、たいていこの一点から始まります。

決裁を通すための書類は、この1枚とは別に必要です。ただ順番があります。先に1枚で確かめる順番を決め、いくつか確かめてから決裁の書類を書く。逆にすると、書類を通すために都合のよい前提を書き足すことになります。この1枚は社内向けの資料ではなく、自分たちが自分たちの思い込みに騙されないための作業台だと考えてください。

書く順番が課題と顧客から始まる理由

記入の順番は決まっています。課題と顧客セグメントを対で、次に独自の価値提案、そのあとに解決策、チャネル、収益の流れとコスト構造、主要指標、最後に圧倒的な優位性。この順番は図の見た目の並びとは一致しません。海外の解説では「確からしさの順に埋める」と表現されますが、実務では外れたときの被害が大きい順と読み替えたほうが使えます。

課題と顧客の組み合わせが違っていた場合、残りの7マスは全部書き直しになります。解決策が違っていた場合に書き直すのは、解決策とコストのあたりで済みます。だから先に置く。この考え方は、あとで確かめる順番を決めるときにもそのまま使えます。「これが違っていたら、事業そのものが成り立たないか」で並べる、という判断です。

解決策から書き始めると何が起きるか。手元にある技術や作りたいものが先にあるので、課題のマスはその解決策が効きそうな困りごとで埋まります。書いた本人には自然に見えます。ところが実際の相手に聞くと、その困りごとは上位3つにも入っていない、ということが起こる。順番を守るのは形式のためではなく、この逆算を防ぐための仕掛けです。

  • 課題と顧客セグメントは同時に書く。片方だけ先に確定させない
  • 解決策は課題の3つと1対1で対応させる。対応しない解決策は、少なくともいま解く必要がない
  • 圧倒的な優位性は最後に書く。ここから書き始めると、1枚が事業の説明ではなく自慢話になる

圧倒的な優位性が最後まで埋まらないのは、普通のこと

9つのうち、初回で最も高い確率で空欄になるのがこのマスです。これは書き手の力不足ではありません。真似されにくい理由は、事業を始める前には基本的に存在しないからです。海外の解説でも、多くの起業家がここを最初は空欄のままにすると説明されています。空欄であることは、誤りではなく現状の記述です。

問題になるのは、空欄を埋めたくなって書かれる中身のほうです。業界初、先行者利益、熱意のあるチーム。どれも、真似しようとした相手を止める力を持ちません。先行はいずれ追いつかれ、熱意は比べられません。いま無いものを、無いと書けるかどうかが、この1枚を正直に保てるかどうかの分かれ目になります。

法人向けの事業で、時間が経つと実際に埋まってくるものはいくつかあります。長く使われた結果として溜まった記録、相手の業務手順に食い込んだことによる乗り換えの手間、取得に年単位かかる認証、特定の業界に絞った導入実績の数。いずれも始めた時点ではなく、続けた結果として生まれるものです。だから初回は空欄のまま進めます。

空欄のまま進めるときは、1行だけ添えておきます。いまは無い、そして何が積み上がれば埋まるのか。たとえば「同じ業界で10社に入れば、その業界特有の設定の型が優位性になりうる」と書いておく。この1行があると、四半期ごとの見直しで確認する対象が1つ増えます。空欄を放置することと、空欄の理由を書いておくことは別の作業です。

AIに埋めさせると、全部のマスが埋まってしまう

この1枚と生成AIの相性が悪いのは、空欄を返さない点にあります。9つのマスの見出しと事業の概要を渡せば、9つとも文章が返ってきます。「情報が足りないのでここは書けません」とは、よほど強く指示しない限り返ってきません。空欄が情報である道具に、空欄を作らない書き手を組み合わせているわけです。

返ってくる中身にも癖があります。その業界について書かれた文章の平均のような内容になるので、どの会社が書いても似た1枚になる。顧客セグメントはデジタル化に課題を持つ中堅企業、課題は人手不足と属人化、優位性は独自のノウハウ。読めるのですが、そこから確かめに行く先が1つも決まりません。読める文章と、確かめられる仮説は別物です

使う順番を1つ変えるだけで、この癖は無害になります。先に自分で粗く9マスを埋めてから広げさせ、差分だけを見る。自分の版に入っていなかった候補が何本あるかを数える形にすれば、平均的な文章が何十行返ってきても邪魔になりません。順番を逆にすると、返ってきた文章の枠に自分の考えのほうが引きずられます。

使いどころ1:マスごとに候補を数多く出させる

1つ目の使い方は、候補出しです。ここは量がそのまま価値になるので、機械のほうが向いています。ただし条件が1つあり、9マスをまとめて出させないこと。まとめて出させると、9つが互いに辻褄の合ったきれいな物語になって返ってきます。物語は矛盾していないので、選ぶ材料になりません。マス単位で、条件を変えて出させます。

顧客セグメントなら、役割で分けて出させます。使う人、決める人、止める人。この3つは同じ会社の中にいても、困っていることが違います。課題なら、役割ごとに上位3つを出させたうえで、よく言われることと、あまり言われないことを分けて出させる。分けて出させると、同じ問いへの答えの幅が広がります。まとめて出させると、幅は狭いまま量だけが増えます。

チャネルは、届く経路の候補を並べさせるより、その相手が仕事の情報をどこで得ているかを挙げさせるほうが実用的です。収益の流れは、金額を出させるのではなく課金の単位の候補を出させます。人数か、件数か、使った量か、期間か。数字を出させると根拠のない数字が並びますが、形の候補なら人が選べる材料になります

使いどころ2:マス同士の食い違いを指摘させる

2つ目が、最も費用対効果の高い使い方です。9つのマスは互いに縛り合っているので、単独では正しく見える記述が、隣のマスと並べた途端に成り立たなくなることがあります。人が読むと、自分で書いた文章なので通ってしまう。ここは形式的な照合の作業なので、機械に向いています。

聞き方は先に決めておきます。この顧客セグメントに、このチャネルで届くか。この価格を払える予算が、この部署にあるか。この解決策は、課題の3つのどれに対応しているか。この主要指標は、この収益の流れが増えたときに動くか。この4つを聞くだけで、たいてい2つか3つは食い違いが出ます。出ないなら、まだ具体が足りていない可能性が高い。

出てきた指摘をそのまま直さないことだけは守ります。指摘が正しいかどうかは人が判定します。機械は文章どうしの整合性を見ているだけで、実際の商談を見ていないからです。この部署に予算がないと指摘されても、実際には別部署の予算で買われている、ということは普通にあります。指摘は修正の指示ではなく、確かめに行く先の候補として扱います。

使いどころ3:似た事業の公開情報から、抜けている前提を挙げさせる

3つ目は、抜けの洗い出しです。似た形の事業について、公開されている情報の範囲でこのマスには普通どんなことが書かれるかを挙げさせ、自分の1枚と突き合わせます。自分では思いつかない前提が出てくるのは、たいていコスト構造とチャネルです。自分が経験していない工程ほど、書き漏らします。作る側の出身者はチャネルが薄く、営業出身者は運用の費用が薄くなります。

出させ方には条件を付けます。公開されている情報に基づくものと、推測に基づくものを分けて書かせること。分けさせないと、両方が同じ調子の文章で並びます。推測と書かれたものは、そのまま1枚に写さない。確かめる対象の一覧に移します。この一手間を省くと、抜けを埋めたつもりで別の推測が1つ増えるだけになります。

入力する内容にも線を引きます。新規事業の1枚には、価格の考え方、狙う相手、社内の制約など、外に出していない前提が並びます。入力した内容が保存されるのか、学習に使われるのかは、契約と設定で決まります。会社として入力してよい範囲を先に決め、決まっていないうちは伏せた形で相談するのが安全です。自社名を伏せて業種だけにするだけでも、かなり違います。

確かめた・推測した・未着手の3つに分ける

ここが、埋まった1枚を使える1枚に変える工程です。手順は単純で、各マスの記述を1行ずつに分け、1行ごとに3つの印のどれかを付けます。確かめた、推測した、未着手。付ける基準は1つだけで、出どころを1行で書けるかどうかです。書けるなら確かめた、書けないなら推測した、まだ何も書いていないなら未着手になります。

  • 確かめた:誰にいつ聞いたか、どの数字か、どの公開資料かを1行で書ける。書けないものはここに置かない
  • 推測した:もっともらしいが、出どころが自分たちの考えである。AIが出した候補は、確かめるまで全部ここに入る
  • 未着手:まだ書いていない。空欄のマスと、書いたが自信の持てない行の両方をここに入れる

印を付け終わったら、分布を見ます。9マスの中で確かめたが2行しかないなら、その1枚は計画ではなく仮説の一覧です。それ自体は構いません。仮説の一覧だと分かっていれば、次にやることが決まるからです。困るのは、仮説の一覧を計画だと思い込んだまま予算と人員の話に進んでしまうことのほうです。

印は色か記号で付けます。文字で確かめたと書き足すと1枚が文字だらけになるので、行頭に丸と三角とバツを置く程度で足ります。後から見た人が5秒で分かる形にしておくことが条件です。3か月後に自分が読み返すときも、他部署の人に見せるときも、最初に目に入るのはこの印になります。

1枚を60分で仕上げる手順

時間を決めずに始めると、候補出しだけで半日が消えます。初回は60分で1枚を確定させ、そのあとは確かめた結果で書き換えていく形にします。以下は、1人で回す場合の配分です。

STEP1
課題と顧客セグメントを、手で粗く書く(15分)

この2つだけは、AIに聞く前に自分で書きます。書けないなら、書けないという事実が最初の発見です。粗くて構いませんが、業種と部署と役割までは書き切ります。

STEP2
マス単位で候補を出させる(15分)

残りの7マスについて、1マスずつ候補を出させます。まとめて9マスを出させないこと。出た候補は選ばずに、いったん全部を横に並べたままにします。

STEP3
マス同士の食い違いを指摘させる(10分)

自分の版と候補を混ぜた状態で、届くか・払えるか・対応しているか・動くかの4点を聞きます。出た指摘は直さず、確かめる対象として書き留めます。

STEP4
1枚に確定させる(15分)

候補から選んで、9マスを1つの版に確定します。圧倒的な優位性は空欄で構いません。空欄にする代わりに、何が積み上がれば埋まるのかを1行だけ添えます。

STEP5
3つの印を付ける(5分)

確定した各行に、確かめた・推測した・未着手の印を付けます。ここで初めて、次に何を確かめに行くかが目で見える形になります。

60分で切る理由は、時間をかけるほど中身が良くなるわけではないからです。長くかけて増えるのは、書き込みの量と、確かめていないことへの愛着です。1枚は確かめに行くための道具であって、完成させるための作品ではありません。書き換える前提で作るので、初回の出来にこだわる意味はほとんどありません。

埋めたあとは、いちばん壊れやすい前提から確かめる

印を付け終わったら、確かめる順番を決めます。並べ替えの基準は1つで、これが違っていたら、事業そのものが成り立たないか。当てはまるものほど先に確かめます。多くの場合、先頭に来るのは課題と顧客セグメントの組み合わせです。ここが違えば、他の8マスは全部作り直しになるからです。

順番を決めるときによくある間違いが、確かめやすいものから手を付けることです。手元の資料で確認できるコスト構造や、社内で議論すれば決まる価格の形は、着手が楽です。楽なので進んだ気になりますが、いちばん危ない前提は、外の相手に聞きに行かないと確かめられない場所にあります。楽な順ではなく、危ない順に並べ替えます。

確かめ方そのものの設計は、この1枚の外側の話になります。ここで決めておくのは、確かめた結果を必ず1枚に書き戻すことだけです。印を推測したから確かめたに書き換え、出どころの1行を足す。書き戻さないと、次の四半期に同じ前提をもう一度議論することになります。実際、新規事業の検討で最も繰り返される無駄がこれです。

一度書いて更新しない、を防ぐ運用

この1枚が形骸化する原因は、ほぼ1つに絞れます。書いた直後は毎日見るのに、1か月後には誰も開かない。防ぐには、書き換える引き金を先に決めておきます。決めていないと、そのうち見直すという言葉で終わります。引き金は4つで足ります。

  1. 相手から返ってきた言葉が、課題のマスに書いた言葉と違ったとき:言葉のずれは、顧客セグメントの取り違えの合図であることが多い
  2. 断られた理由が、それまでと変わったとき:価格から機能に、機能から社内の事情に移るなら、当たっている相手の層が動いている
  3. 価格の形を変えたとき:課金の単位が変われば、収益の流れとコスト構造と主要指標が連動して変わる
  4. 四半期の区切り:何も起きていなくても開く。何も書き換わらなかったこと自体が、動いていない証拠になる

書き換えるときは、前の版を消しません。版を残しておくと、どのマスがいつ、どんな出来事をきっかけに変わったかが並びます。これは新規事業の検討で最も価値の出る記録です。次のテーマを検討するとき、前回どこで読み違えたかが分かるからです。消してしまうと、毎回ゼロから同じ間違いを繰り返します。

置き場は1か所に決めます。個人の手元の画像ファイルに置くと、更新されているのが誰の版なのか分からなくなります。編集できる形で、関係者が同じ1枚を見る。画像として固めて配るのは、社外や役員向けの版だけにします。この使い分けを決めておかないと、社内に少しずつ違う版が5枚できます。

やりがちな失敗

実務で起きる失敗は、だいたい決まった形をしています。順に並べます。どれも1つずつは小さな判断ですが、重なると1枚が確かめられない文章の集まりに変わります。

  • 解決策から書く:作りたいものが先にあると、課題のマスがその解決策に都合よく埋まる。相手に聞くと上位3つにも入っていないことがある
  • 9マス全部をAIに書かせて満足する:読める文章にはなるが、どの行にも出どころがないので、確かめに行く先が1つも決まらない
  • 一度書いて更新しない:書き換えの引き金を決めていないと、1か月で誰も開かなくなる。前提が変わった記録も残らない
  • 空欄を埋めるために言葉を足す:とくに圧倒的な優位性。業界初や熱意と書いた時点で、そのマスは情報を持たなくなる
  • 顧客セグメントを広く書く:中小企業全般と書くと、課題も価値提案もチャネルも決まらない。業種と部署と役割まで下ろす
  • 社内向けの言葉で書く:先に社内の合意を取ろうとすると角の取れた表現になり、確かめられる文にならなくなる

6つのうち、最も多いのは1つ目です。新規事業の相談で最初に語られるのは、ほぼ必ず解決策のほうだからです。技術があり、作れるものがあり、それを誰に売るかを後から考える。順番が逆になっていることに自分で気づくのは難しく、だからこそ書く場所と順番が決まっている形式が要ります。形式の価値は、そこにあります。

よくある質問

1枚に収まりません。マスを大きくしてもよいですか

収まらないときは、たいてい顧客セグメントが複数混ざっています。使う人と決める人を1つのマスに書いている、業種の違う2つの相手を並べている、といった状態です。マスを大きくするのではなく、1枚を分けます。セグメントが変われば課題も価値提案もチャネルも変わるので、無理に1枚に押し込むと、どの相手にも当てはまらない平均の記述になります。

顧客セグメントが2つあるとき、どちらを先に書くべきですか

いま最も痛みが強いと言われている側から書きます。両方を同時に進めると、確かめる相手が2倍になり、どちらも中途半端になります。もう一方は、1枚目の課題と顧客の対が確かめられてから着手します。順番を決めること自体が、この1枚の目的の半分だと考えてください。

AIが出した金額や市場規模を、そのまま収益の流れに書いてよいですか

書かないでください。金額や規模の数字は、出どころを示せない限り推測にとどまります。書くなら、その数字が正しいかどうかではなく、どこで公表された、いつの、何を数えた数字かを1行で添えられるものだけにします。添えられないなら、印は推測したのままにして、確かめる対象の一覧に移します。

既存事業の見直しにも使えますか

使えます。ただし性質が変わります。既存事業では、収益の流れとコスト構造は確かめた状態で書けるはずです。逆に、課題と顧客セグメントが売り始めた当時のまま更新されていないことが多く、そこが本当の見直し対象になります。9マスを全部書き直すのではなく、印が古い行を洗い出す使い方が向いています。

誰と一緒に書くのがよいですか

最初の1枚は1人で書き、そのあと2人か3人で読み合わせる形が回りやすいです。最初から複数人で書くと、書きながら合意を取ることになり、角の取れた表現に寄ります。読み合わせのときは、内容の良し悪しではなく印が正しく付いているかだけを見る、と決めておくと議論が短く済みます。

この1枚を、そのまま社内の提案資料に使ってよいですか

そのままは避けます。印が付いた1枚は、確かめていないことが見える形になっているので、決裁の場では弱く見えます。提案に使うなら、確かめた行だけを抜き出して文章にし、推測の行は「次にこれを確かめる」という計画として書き換えます。1枚は手元に残し、聞かれたときに開けばよいものです。

まとめ

9つのマスを埋めること自体は、AIに任せれば数十秒で終わります。だからこそ、埋まった状態には情報がありません。見るのは、書いた1行ごとの出どころです。課題と顧客セグメントを対で先に書き、解決策はそのあとに書く。圧倒的な優位性は空欄のまま置き、何が積み上がれば埋まるかを1行だけ添える。そして各行に、確かめた・推測した・未着手の印を付ける。ここまでやって、1枚はようやく次の行動を決める道具になります。

AIに預けてよいのは、候補を数多く出すこと、マス同士の食い違いを形式的に指摘すること、似た事業の公開情報から抜けている前提を挙げることの3つです。どれを残すか、どれを捨てるか、どの前提から確かめに行くかは人が決めます。確かめた結果は必ず1枚に書き戻し、前の版は消さずに残す。空いたマスを空いたまま見せられるかどうかが、この1枚を持つ意味のほとんどを占めています。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?

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