AIで作った人物画像に肖像権はあるか?|写真と作り物の線引き

AIで作った人物画像に肖像権はあるか?|写真と作り物の線引き

「資料に載せる人の写真は、そのつど許可を取るのが大変だから、AIで作った人にしてしまえばいい」「AIが作った顔なら実在しないので、権利の話とは無関係ですよね」——素材の相談をしていると、必ずこの流れになります。ただ、この考え方は順番が入れ替わっています。AIで作ったかどうかで権利の有無が決まるのではありません。本当は、出来上がった1枚から特定の誰かが浮かぶかどうかで決まります。この記事では、肖像権とパブリシティ権が何を守っている権利なのかを比べ、撮る場面ごとの扱い、そして生成AIで作った人物画像に固有の論点を順に見ていきます。


カメ先生カメ先生

AIで作った人物の画像は実在しないから権利とは無縁だ、と受け取られがちなんだけど、先に問われるのは『実在しないと言い切れるか』のほうなんだ。


カメ子カメ子

作った側にそのつもりがなくても、見た人が誰かだと思えば話が変わる、ということですか。


カメ先生カメ先生

そう。しかも国の検討会は、生成AIだからといって判断の物差しが変わるわけではない、と整理している。使われている物差しは、昔からある判例のものなんだよ。


カメ子カメ子

新しい決まりを探すより、もとの物差しを覚えたほうが早そうです。


この記事のポイント
  • 肖像権を定めた条文はなく、判例が『みだりに容ぼう等を撮影されない人格的利益』として形にしてきた
  • 生成AIで作った人物画像も、判断の基準は実写と同じ。国の検討会が『特有の問題はない』と整理している
  • 似ているかどうかを機械に判定させず、人が確認する範囲を公開の広さで先に線引きする

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目次

「AIで作った人なら許可は要らない」は、どこまで正しいのか

相談の入口はたいてい同じ形をしています。実在の人を撮ると許可が要る。だからAIで作った人にすれば、許可の手間が消える。この理解は、半分だけ当たっています。当たっているのは、誰にも似ていない人物画像であれば、許可を求める相手がそもそも存在しない、という点です。外れているのは、その「誰にも似ていない」を誰がどうやって確かめるのかという部分が空白のまま残ることです。

実在の人を撮った写真なら、確認の相手ははっきりしています。写っている本人です。ところがAIで作った画像には、確認できる相手がいません。似ていないことの根拠は、作った側が「似ていないと思う」以上のものになりません。権利のほうが消えるのではなく、確認する手段のほうが消える。ここが実務の勘所です。手間が減ったように見えて、実は確認の責任だけが自社に移っています。

だから、判断の順番を入れ替える必要があります。「AIで作ったから大丈夫」ではなく、「出来上がった1枚から特定の誰かが浮かぶか」を先に見る。浮かばないなら許可の相手はいません。浮かぶなら、実写と同じ確認が要ります。物差しは撮ったか作ったかではなく、出来上がりの側に置いてある、と考えてください。

肖像権は条文にない。判例が形にしてきた権利

肖像権という言葉は日常的に使われますが、この名前の権利を定めた条文は、日本の法律には置かれていません。内閣府の知的財産戦略推進事務局がまとめた「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」(2024年5月)も、肖像権について法律上の明文規定は存在していないと書いたうえで、判例が積み上げてきた内容を紹介する、という書き方をしています。

出発点は、1969年12月24日の最高裁大法廷判決です。警察官がデモ行進の様子を撮影した行為が刑事事件のなかで争われ、最高裁は憲法の条文を引いて、承諾なしにみだりに容ぼうを撮影されない自由を認めました。刑事の事件でしたが、ここで示された考え方が民事の場面へ広がっていきます。撮影という行為そのものが、本人の意思と無関係には行えない、という位置づけが定まったわけです。

民事で使われる言い回しを定めたのが、2005年11月10日の最高裁判決です。人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する、と示しました。「権利」ではなく「法律上保護されるべき人格的利益」という言い方である点が、実務では効いてきます。撮られた時点で自動的に違法になるのではなく、程度の問題として判断される、という含みがあるからです。

受忍限度は6つの要素の総合判断で決まる

では、どこから違法になるのか。同じ2005年の判決は、人格的利益の侵害が社会生活上の受忍限度を超えるかどうかで決まると示し、判断にあたって総合考慮する要素を並べました。被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性——この6つです。中間とりまとめも、この6つをそのまま引用しています。

実務で使うときに大事なのは、これが点数表ではなく総合判断だという点です。「屋外だから可」「社員だから可」のような単独の条件で白黒が決まる作りにはなっていません。同じ写真でも、社内の会議資料に1回使うのと、駅のポスターに半年掲げるのとでは、目的も態様も必要性も変わります。使い方が変われば答えも変わる、と受け取ってください。

だから、写真ごとに判断するやり方は続きません。使い道ごとに先に線を引き、その線に写真を当てはめるほうが回ります。6つの要素を、資料や広告をつくる側の言葉に置き換えると、次のようになります。

判例が挙げる考慮要素実務で見るところ先に決めておくこと
被撮影者の社会的地位一般の来場者か、登壇者か、著名人か登壇者と一般来場者で確認の手順を分ける
撮影された活動内容仕事の場面か、休憩や私的な場面か懇親会・休憩スペースは撮影の対象から外す
撮影の場所自社の管理下か、他社の敷地か、公道か他社の敷地では相手方の許可を先に取る
撮影の目的記録用か、社外公開用か、広告用か広告用は撮影の時点で別枠の許可を取る
撮影の態様引きの全景か、個人が主役の寄りか寄りの画はその場で本人に確認する
撮影の必要性その人が写らないと成立しない画か代わりが利くなら人が写らない画に差し替える

パブリシティ権が守っているのは、別のもの

肖像権と並べて語られるのがパブリシティ権です。この2つは、守っているものが違います。最高裁がパブリシティ権を正面から認めたのは、2012年2月2日の判決でした。かつて活動した女性デュオの写真14枚を週刊誌が無断で掲載した事案で、本人たちが損害賠償を求めた事件です。

判決は、氏名や肖像は個人の人格の象徴であるから、人格権に由来するものとしてみだりに利用されない権利がある、としたうえで、肖像等は商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、この顧客吸引力を排他的に利用する権利がパブリシティ権である、と述べました。つまりパブリシティ権は、人格権に由来する権利の一内容であって、肖像権とは別系統の財産権として置かれているわけではありません。同じ根から二股に分かれている、という構図です。

実務的な違いは、問題になる相手の範囲です。肖像権はどの人にもあります。パブリシティ権は、その人の顔や名前に客を呼ぶ力がある場合にはじめて問題になります。法人向けの資料づくりでいえば、来場者や社員が写る素材で問われるのはほぼ肖像権の側で、著名人を起用するときや、業界で名前の通った人物を前面に出すときに、パブリシティ権の側が追加で乗ってきます

肖像権パブリシティ権
守っているものみだりに容ぼう等を撮影・公表されない人格的利益肖像等が持つ顧客吸引力を排他的に利用できること
対象になる人すべての人顔や名前に客を呼ぶ力がある人
よりどころ判例(明文の条文はない)判例(明文の条文はない)
問われる場面撮る・載せる・残すの各段階商品・広告に結びつけて使う段階
社内での確認先写っている本人と、撮った場所の管理者本人または所属先との契約条件

「専ら顧客吸引力の利用を目的とする」の3類型

同じ判決は、どこからがパブリシティ権の侵害になるのかも示しました。肖像等を無断で使う行為が、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、不法行為法上違法になる、という枠です。そのうえで、あてはまる例を3つ挙げています。

  1. 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する
  2. 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す
  3. 肖像等を商品等の広告として使用する

読むときに落としてはいけないのが「専ら」という限定です。この事件そのものは、侵害を認めませんでした。約200頁の雑誌のうち3頁で、白黒の小さな写真として、振り付けを利用した健康法の解説を補う目的で使われていた——という事情から、専ら顧客吸引力の利用を目的とするとはいえない、と判断されています。使われ方の量と、記事のなかでの位置づけまで見て決まる、ということです。

裁判官の補足意見も同じ方向を向いています。侵害を構成する範囲はできるだけ明確に限定されなければならない、と述べたうえで、パブリシティ権について規定した法令が我が国には存在しないことを、限定的に解すべき理由のひとつに挙げました。裏を返せば、広告に大きく載せる使い方は、3つ目の類型にまっすぐ当たります。社内資料のなかで説明に添える1枚とは、置かれている場所が違います。

生成AIの人物画像に、特有の判断基準は置かれていない

ここまでは撮った写真の話でした。ではAIで作った人物画像はどうなるのか。中間とりまとめは、この点をはっきり書いています。学習の段階でも、生成と利用の段階でも、他人の肖像が使われる場合に肖像権の侵害といえるかどうかは、先ほどの6つの要素による総合判断と同じように考えるべきであり、その判断基準について生成AIに特有の問題はないと考えられる、という整理です。パブリシティ権についても同じで、専ら顧客吸引力の利用を目的とするといえるかどうかで見る、と書かれています。

これは実務にとって、良い知らせでもあり悪い知らせでもあります。良いのは、生成AI専用の新しい決まりを探し回らなくてよいことです。悪いのは、「AIで作った」という事実そのものには、免罪の効き目がないことです。出来上がりが特定の人を指してしまえば、実写と同じ土俵に上げられます。作り方を説明しても、判断の材料はほとんど動きません。

中間とりまとめは、意見募集のなかで、特定の人物と誤認させるような写真が生成AIによって作られている現状への懸念が複数寄せられたことも記録しています。懸念の中心は技術の中身ではなく、出来上がったものが世の中でどう受け取られるかにありました。社内の議論も、そこに合わせておくと噛み合います。

  • 中間とりまとめは脚注で、肖像権の具体的な考慮要素と判定基準についてデジタルアーカイブ学会の「肖像権ガイドライン」(2023年4月補訂版)を挙げ、肖像が含まれるAI生成物の公開に関しても参考になると述べています。社内の判断基準をつくるときの下敷きに使えます。

実在の人に似てしまったときに起きること

「似てしまった」とき、具体的に何が問題になるのか。分けると3つです。誰かに似ていると受け取られること自体。その人がやっていない行動や、言っていない発言をしているように見えること。そして、自社の商品や主張と結びつけて世に出したこと。3つ目が加わると、広告としての使用に近づき、3類型の3つ目に寄っていきます

似る経路も1つではありません。指示文に実在の人の名前を書いた場合はもちろんですが、名前を書かなくても、参照させた画像にたまたま特定の人が写っていた場合、細かい特徴を積み上げて指定した結果として誰かに寄っていく場合があります。作り手の意図と、出来上がりの見え方は別のものです。意図していなかったという説明は、見た人の受け取りを変えません。

  • 実在の人の名前や芸名を、そのまま指示文に書く
  • 特定の人が写っている写真を参照用に渡し、その人の顔立ちを引き継がせる
  • 自社の顧客や社員の写真を、本人に説明しないまま素材として作り替える
  • 出来上がった画像に実在の企業名や役職を添え、実在の人物の発言のように見せる
  • 似ているかどうかの確認をせずに、そのまま広告の主役に据える

顔を差し替える・人を消す加工は、どこまでやってよいか

AIの使いどころは、人物を丸ごと作ることだけではありません。実務でよく使われるのは、写り込んだ人を消す、顔をぼかす代わりに別の顔へ差し替える、群衆の一部を置き換える、といった加工です。この3つは、権利の見え方がそれぞれ違います。

消す加工は、原則として心配が減る方向に働きます。写っていた人を特定できなくなるからです。ただし、消した結果として場面の意味が変わる場合は、別の問題が出ます。会場が満席に見えるように人を足す、逆に人を減らして閑散として見せる、といった加工は、権利の話ではなく、表示が実態と合っているかどうかの話になります。実績の紹介や導入事例で使う写真では、ここが後々の火種になります。

差し替える加工が、いちばん危ういところです。元の人物の輪郭や姿勢を残したまま顔だけを入れ替えると、その人が着ていた服も、立っていた場所も、そのまま残ります。差し替えた顔が誰かに似ていれば、その人がその場にいたように見えます。加工の範囲を「消す・ぼかす」までにとどめ、「別の顔を載せる」は使い道を限って承認制にする、という線の引き方が現実的です。

実写とAIの素材を混ぜた1枚で、確認が抜ける場所

権利の確認は、ふつう素材の単位で行われます。この写真は誰を撮ったもので、許可はどこまで取ってあるか。ところが実写とAI生成を混ぜた1枚では、この単位が崩れます。背景は自社で撮った実写、手前の人物はAI、掲示物は差し替え——という作りになると、完成した1枚に対して誰の許可が要るのかを、誰も答えられなくなります

抜けやすい場所は決まっています。背景に写り込んだ第三者。机の上の書類に写った個人名。取引先の建物や設備。そして「素材として買ったもの」の利用範囲です。買った素材にも使ってよい範囲の定めがあり、加工してよいか、人物素材を別人に見えるよう作り替えてよいかは、素材ごとに違います。買った素材だから自由に使える、という前提は成り立ちません

防ぎ方はひとつしかありません。完成物ではなく素材の段階で台帳を持ち、完成物からその台帳をたどれるようにしておくことです。手順にすると次の4つになります。

STEP1
素材ごとに出どころを書く

自社で撮った・買った・生成した、の3区分に分けて記録します。生成したものには、使った道具の名前と日付も添えます。

STEP2
人が写る素材だけを抜き出す

そのうえで、許可の範囲と期限、断られている使い方を書きます。許可が確認できない素材は、この時点で使わないほうに寄せます。

STEP3
生成した素材は、指示文と参照画像を残す

後から「なぜこの顔になったのか」を説明できる状態にしておきます。参照画像に人が写っていた場合は、その旨も残します。

STEP4
完成物に、使った素材を紐づける

公開したページや資料の側から、含まれている素材をたどれるようにします。差し替えや削除の依頼が来たときの作業時間が、これで決まります。

撮る場面ごとの扱いを、先に決めておく

実務の大半は、AIを使うより前の段階でつまずいています。撮る場面ごとに扱いを決めていないため、そのつど判断が揺れるのです。法人のマーケティングでよく出てくるのは5つの場面で、それぞれ確認する相手が違います

  • イベントの来場者——会場入口の掲示と申込画面に、撮影することと使う範囲を書いておく
  • 自社の社員——雇用の関係があるぶん断りにくい。断っても不利にならないことを明示する
  • 取引先の担当者——本人の許可と、その会社としての許可は別に取る
  • 街頭で撮った通行人——個人が識別できる寄りの画は使わないと決めておく
  • 群衆として写り込んだ人——引きの全景に収め、特定の人が主役にならない画にする

来場者について、掲示だけで足りるのは、会場全体を写した引きの画で個人が主役になっていない場合までです。特定の来場者を寄りで撮り、その人が主役になる形で使うなら、その場で個別に確認します。社員については、断っても不利にならないことを口頭で言うだけでなく、使う範囲を紙に残すほうが、後で揉めません。採用ページに載せた写真は、本人が想定していたより長く残ります。

取引先の担当者が写る写真は、本人がよいと言っても、その会社として社名の露出を認めていないことがあります。事例紹介の写真は、本人の同意と会社の同意を別々に取る、と決めておくのが安全です。街頭や群衆は、識別できる寄りの画は使わない、という一本の線を引いておくと、現場での判断が速くなります。撮る側が迷わなくなるのが、この線の効き目です。

許可の取り方——書面に何を書くか

口頭で足りるのか、という質問がよく来ます。法律が書面を要求しているわけではないので、口頭の同意でも同意そのものは成立します。問題は、あとから範囲の食い違いが起きたときに、言った・言わないの争いになることです。書面が要るのは法律のためではなく、範囲を確定させるためだと考えてください。

書くべき項目は5つに絞れます。使う媒体(自社サイト、印刷資料、展示会のパネル、有料の広告のどこまでか)。使う範囲(社内限りか、社外公開か、第三者への提供を含むか)。使う期間(いつまで。期限を書かないと事実上「ずっと」になります)。加工の可否(切り抜き、明るさの調整、顔の差し替え)。そして取り消しの扱い(申し出があったとき、いつまでに何をするか)。

生成AIを使う会社では、4つ目にもう一行足す必要があります。撮った写真を、AIに読ませる素材として使ってよいかどうかです。ここを書いていない古い書面は、写真そのものの掲載は許されていても、その写真を参照させて別の画像を作る使い方まで許されている、とは読めません。過去に集めた同意書を洗い出し、足りない分は取り直すか、生成には使わないと決めるかの二択になります。多くの会社では、後者を選んだほうが早く片づきます。

退職・異動・取引終了のあと、その素材をどうするか

素材の事故は、撮ったときではなく、時間が経ってから起きます。社員が辞めたあとも採用ページに顔が残っている。取引が終わった会社の担当者が、いまも事例ページに写っている。多くは悪意ではなく、消す日を決めていないから、そのまま残っているだけです。

個人情報の側から見ても、放置は望ましくありません。個人情報の保護に関する法律の第22条は、個人データについて、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならない、と定めています。努力義務ではありますが、向いている方向ははっきりしています。本人が誰か分かる形の顔写真は、個人情報として扱われます。同じ法律の第23条は、取り扱う個人データについて安全管理のために必要かつ適切な措置を求めています。

実務の手当ては3つです。素材の台帳に「使用を終える予定日」の欄を作ること。退職・異動・取引終了の手続きに「その人が写る素材の棚卸し」を1行入れること。そして、公開先の一覧を素材ごとに持ち、消すときに全部たどれるようにすることです。3つ目が抜けていると、サイトからは消えたのに、配布済みの資料や過去の投稿に残る、という取りこぼしが起きます。

似ているかどうかを、AIに判定させない

生成した人物画像が誰かに似ていないか。これを機械で確かめたい、という要望は当然出ます。顔を照合する技術はありますし、似た画像を探す仕組みもあります。ただ、これを最終判断に据えてはいけません。理由は2つあります。

1つは、照合が返すのは似ている度合いの数値だけで、受け取られ方までは測れないことです。肖像権の判断は6つの要素の総合判断でした。撮影の場所や目的や必要性は、顔の一致度とはまったく別の話です。もう1つは、照合の対象がその仕組みの中にある画像に限られることです。仕組みが知らない人については、いつまでも「似ていない」と返ってきます。取引先の担当者や、地域で知られた人は、まさにその外側にいます。

代わりに決めるのは、人が確認する範囲を先に決めておくことです。公開の広さと使い方で線を引くと運用しやすくなります。社外に出す資料と広告に使う人物画像は必ず2人以上で目視する。社内限りの資料は担当者1人の確認でよい。人物が主役になる大きな扱いは、部門の責任者まで確認を上げる。機械には、候補を絞る作業と、確認した記録を残す作業を任せます。判定そのものは渡しません。

  • AIに任せてよいのは、素材の一覧づくり、指示文と参照画像の記録、公開先の突き合わせ、確認待ちの棚卸しといった作業です。似ているかどうかの結論、公開してよいかどうかの結論、本人への説明の文面は、人が決めて人の名前で出します。

作った記録・撮った記録を残す

揉めごとが起きたときに効くのは、主張ではなく記録です。撮った写真なら、いつ・どこで・誰の許可のもとで撮ったか。作った画像なら、どの指示文で、何を参照させて作ったか。後から再現できる形で残っているかどうかで、対応の速さがまるで違います。問い合わせが来てから調べ始めると、たいてい1週間では終わりません。

記録の技術も進んでいます。中間とりまとめは、生成されたものに電子透かしを入れる仕組みや、生成に使った道具・編集の内容・編集日時などを画像に紐づけて保存するコンテンツ認証情報の仕組みを、対応策の例として挙げています。すでに商用のサービスに組み込まれているものもあります。同時に、デジタルのデータである以上、技術的に削除することも不可能ではないなど、技術的な限界があるという指摘も併記されています。埋め込んだ記録は、消えることを前提に扱うのが正しい読み方です。

そこで社内では、画像に埋め込む記録と、画像の外に持つ台帳の両方を用意します。埋め込みは自動で付くぶん抜けがありませんが、加工の途中で失われることがあります。台帳は手間がかかりますが、許可の範囲や公開先まで書けます。この2つは代わりになりません。台帳の項目を増やしすぎると続かないので、素材の出どころ・人が写るか・許可の範囲・使用を終える日・公開先の5列から始めるのが現実的です。

確認の項目一覧(撮る前・使う前・出したあと)

ここまでの内容を、作業の時点ごとに並べ直します。1枚ずつ法律を思い出すのではなく、時点ごとの確認表を通す形にすると、判断のばらつきが減ります

撮る前・作る前に確認すること

  • どこで使うかを先に決めたか(社内限り・社外公開・広告のどれか)
  • その場面で、人が写らない画に置き換えられないか検討したか
  • 撮る場所の管理者の許可を取ったか(他社の敷地・商業施設の中)
  • 生成する場合、指示文に実在の人の名前や特定できる肩書を入れていないか
  • 参照させる画像に、第三者が写っていないか

使う前に確認すること

  • 出来上がった画像から、特定の誰かが浮かばないか(2人以上で見る)
  • 許可の範囲に、いま使おうとしている媒体が入っているか
  • 許可の期間が切れていないか
  • 実写と生成を混ぜた場合、それぞれの素材の出どころを台帳に書いたか
  • 背景に写り込んだ人・書類・掲示物を確認したか

出したあとに確認すること

  • 公開先の一覧に、この素材を使ったページと資料を登録したか
  • 使用を終える予定日を入れたか
  • 退職・異動・取引終了の手続きに、素材の棚卸しが入っているか
  • 取り消しの申し出が来たときの窓口と、対応の期限を決めてあるか

よくある質問

社内の資料に使うだけなら、許可は要りませんか

要ります。ただし、確認の重さは変わります。受忍限度は撮影の目的や態様も含めた総合判断なので、社外に広く出す場合と社内限りの場合とでは、同じ写真でも評価が変わりえます。実務としては、社内限りなら担当者の確認で足りるが、社外に出す時点で改めて許可の範囲を見直す、という二段構えにしておくと運用できます。社内資料はそのまま社外の提案書に流用されることが多いので、最初から「社内限り」と明記しておくのが安全です。

AIで作った画像に、AIで作ったと表示する義務はありますか

日本の法律で、すべてのAI生成物に表示を義務づける規定は置かれていません。ただし中間とりまとめは、生成されたものであることを示す電子透かしやコンテンツ認証情報を対応策の例として挙げ、表示を付ける場合の対象範囲や表示する主体については関係者の議論が深められることを期待する、と書いています。義務がないことと、書かないほうがよいことは別です。人物が写っているように見える画像では、実在の人と誤認されないよう説明を添えておくほうが、後の説明が楽になります。

背景に通行人が小さく写っている写真は使えますか

個人を識別できない大きさ・写り方であれば、実務上は問題になりにくい範囲です。ただし「小さいから大丈夫」ではなく「識別できないから大丈夫」だと理解してください。拡大に耐える解像度で保存している場合、切り出せば識別できることがあります。顔が判別できる大きさで写っているなら、消す・ぼかすといった処理をしてから使います。

素材サービスで買った人物写真を、AIの参照用に使ってよいですか

買った条件によります。掲載してよいことと、AIに読ませてよいことは別の話で、素材の提供元が定める利用条件のなかで扱いが分かれています。条件の文面に生成についての記載がない場合、認められていると読むのではなく、提供元に確認するのが筋です。確認が取れないうちは、参照用には使わないと決めておくほうが早く進みます。

社員が退職したあと、在職中に撮った写真はいつまで使えますか

同意書に期間が書いてあれば、その期間までです。書いていない場合は、退職の時点で本人に確認し直すのが安全です。個人情報の保護に関する法律は、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めています。採用ページや事例ページは更新の機会が少なく、忘れられやすい場所です。退職の手続きに素材の棚卸しを組み込んでおくと、取りこぼしが減ります。

まとめ

AIで作った人物画像に肖像権があるか、という問いは、実は「肖像権はいつ問題になるのか」という問いに置き換わります。肖像権を定めた条文はなく、判例が、みだりに容ぼう等を撮影されない人格的利益として形にしてきました。違法かどうかは、被撮影者の社会的地位、活動内容、場所、目的、態様、必要性の6つを総合して、受忍の限度を超えるかどうかで判断されます。著名人の顧客吸引力を守るパブリシティ権はこれとは別の切り口で、専らその吸引力の利用を目的とする使い方かどうかで見ます。そして生成AIについては、国の検討会が、判断の基準に特有の問題はないと整理しました。作ったか撮ったかではなく、出来上がりから誰が浮かぶかで決まる、というのが結論です。だから実務でやることは、撮る場面ごとに扱いを決めること、許可の書面に媒体・範囲・期間・加工・取り消しを書くこと、AIに読ませてよいかを一行足すこと、そして使用を終える日を先に入れることに尽きます。似ているかどうかの判定は機械に渡さず、公開の広さで人の確認範囲を決めておく。この5つを決めてしまえば、素材が増えても判断は増えません。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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