Tonicで本番データを使わずAIを試す方法|墨消しで残るものを知る

「墨消しの道具を通したのだから、もう個人情報ではない」「合成データなら、どこに渡しても問題ない」——社内のAIの検証に本番の顧客データを使いたい場面で、こうした受け止め方がよく見られます。米国の Tonic は、文書の中の個人情報を見つけて黒塗りや別の値に置き換える Textual などを作る会社です。ただし、置き換えた後のデータに何が残るかは、道具ではなく、伏せ方を決めた人の判断で決まります。この記事では、社内のRAGやAIエージェントの検証に問い合わせ履歴や顧客データを使いたいとき、Tonic の製品で何ができ、何が残り、誰がそれを確かめ、法律上どう扱われうるかを、導入の手順に沿って整理します。
カメ先生墨消しをすれば個人情報の話は終わる、と思われがちなんだけど、本当は名前や電話番号を消しても、文脈から誰のことか分かってしまう情報が残ることがあるんだ。
カメ子名前を消しても、話の中身で本人が分かってしまう、ということですか。
カメ先生そう。だから大事なのは、道具の検出率よりも、何を消して何を残すかを決めて、残り方を誰かが確かめる手順なんだよ。道具はその手順を速くしてくれるだけなんだ。
カメ子道具を選ぶ前に、確かめる人と手順を決めるんですね。
- Tonic は、文書の個人情報を墨消し・合成値に置き換える Textual、本番の表形式のデータを匿名化する Structural、元データなしで合成データを作る Fabricate を持つ。2026年3月に Textual の Microsoft Fabric 版を一般提供した
- 墨消しや合成値への置き換えをしても、文脈や珍しい属性から本人が分かる手がかりは残りうる。残り方を確かめる担当を、作業する担当とは別に置く
- 日本の個人情報保護法の仮名加工情報・匿名加工情報には加工の基準と義務がある。道具の出力がどちらに当たるかは、加工の中身と社内の扱いで決まるので、法務と先に決めておく
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Tonic は、本番データの代わりに使うデータを作る米国の会社
Tonic は、2018年に創業した米国の会社です。公式のプレスリリースによれば、サンフランシスコ、アトランタ、ニューヨーク、ロンドンに拠点を置いています。もともとは、開発や試験の環境に本番のデータベースをそのまま複製しないための、試験用データの道具を作ってきました。現在は生成AIの開発と検証に使うデータの道具へと範囲を広げ、三つの製品を並べています。
一つ目の Textual は、メール、契約書、通話の文字起こし、PDF、表計算、画像化された書類などの中から個人情報や機密の値を見つけ、黒塗りにするか、それらしい別の値に置き換える製品です。二つ目の Structural は、本番のデータベースの個人情報を匿名化し、関係を崩さずに一部だけを切り出して試験用のデータベースを作る製品です。三つ目の Fabricate は、本番のデータを使わずに、文章での指示や表の設計図から合成データを作る製品です。
社内のRAGやAIエージェントを検証したい会社にとって関係が深いのは、主に Textual です。問い合わせの履歴や商談のメモのような、決まった欄に収まっていない文章のデータを、AIの検証や学習に使える形にするのが Textual の役割だからです。合成データ一般の考え方や、個人情報の伏せ字の一般論は別の記事で扱っているので、ここでは Tonic の製品で何が起き、社内で何を決めるかに絞ります。
2026年の動き:Fabric 版の一般提供と、検出の更新
2026年の Tonic で目立つのは、Microsoft のデータ基盤との結び付きです。公式のプレスリリースによれば、2026年3月18日に Textual の Microsoft Fabric 版が一般提供になりました。Fabric の管理画面から追加でき、データを Fabric の保管領域の外に動かさずに、検出、墨消し、合成の文章の生成ができると説明しています。2025年9月の時点では限定公開の扱いでした。
製品の更新も続いています。公式のリリースノートでは、6月に作業の記録を書き出せる監査の記録の画面、7月に墨消しの依頼の一部を生成AIで検出し直して点数の低いものを人の確認に回す仕組み、8月に英語の新しい検出モデル、10月26日に英語以外の言語での独自の検出モデルの追加が記録されています。検出の誤りを前提に、抜き取りで見直す機能が足されてきているのが、2026年の更新の特徴です。
Fabricate については、2025年10月に合成データを作るエージェントを限定公開で発表し、現在は対話で必要なデータを伝えると作成と点検を繰り返す二つのエージェントと、Claude や Cursor から呼び出せる MCP の窓口を公式サイトで案内しています。Structural にも、匿名化の設定を提案するエージェントの機能が加わったと説明されています。
- 日付と機能は、公式のプレスリリース、公式サイト、公式のリリースノートの記載に基づきます(2026年10月29日時点)
- 公式のリリースノートの更新は10月下旬まで続いており、提供終了や新規受付の停止の告知は見当たりません
誤解:墨消しすれば、個人情報ではなくなる
墨消しの道具を入れる会社でよく見る誤解は、「道具を通したデータは個人情報ではない」という受け止め方です。Textual が見つけるのは、名前、住所、電話番号、メールアドレス、口座番号のような決まった種類の値です。公式サイトの説明では、独自の固有表現の検出モデルで値を見つけ、生成AIで誤検出を取り除くとしています。逆に言えば、種類として登録されていない情報は、そのまま残ります。
問い合わせの履歴で問題になるのは、値ではなく文脈です。「先月、札幌の本社で三十人規模の研修を担当した者ですが」という一文から名前を消しても、取引先の担当者なら誰のことか見当が付きます。珍しい役職、日付、出来事の組み合わせは、名前がなくても本人に近づく手がかりになるからです。公式の製品ページにも、こうした再識別の危険についての説明は見当たりませんでした。
合成値への置き換えにも、同じ限界があります。Textual は、同じ値をデータの全体で同じ別の値に置き換える作りで、公式は「メールと PDF と表計算に出てくる同じ名前は、どれも同じ置き換え先になる」と説明しています。検証には便利ですが、同じ人の発言が一本の線でつながったまま残るということでもあります。発言を集めれば、名前が別でも人物像は浮かびます。
手順1:検証に、本当に本番のデータが要るかを決める
最初の手順は、道具を選ぶことではなく、検証の目的に本番のデータが本当に必要かを決めることです。社内のRAGの検証で確かめたいのは、資料の探し方と答え方なのか、実際の顧客の言い回しへの強さなのか。前者なら、本番の問い合わせ履歴を使わなくても、製品の資料と作った質問で足りることが少なくありません。
本番のデータを使わずに済むなら、Fabricate のように元のデータを使わずに合成データを作る道具が選べます。公式サイトでは、文章での指示、表の設計図、見本のデータのいずれかから合成データを作れ、本番のデータは要らないと説明しています。表形式のデータに加え、自由な文章を PDF、ワード形式、メール形式で書き出せるとしています。ただし、実在の顧客の言い回しの癖や誤字は、作らせた文章には出にくいことを見込んでおきます。
判断の物差しは、本番のデータでしか見つからない失敗があるかです。過去の問い合わせで、AIが誤答しやすい型が分かっているなら、それを合成の指示に書いて作らせるほうが、本番のデータを加工するより安全です。どうしても実際の言い回しが要る部分だけ、件数を絞って本番のデータを加工して使う、という分け方が現実的です。
手順2:データの種類で、使う製品を分ける
本番のデータを使うと決めたら、データの種類で製品を分けます。Tonic の三製品は、得意なデータの形が違います。混ぜて考えると、表のデータに文書の道具を当てたり、その逆をしたりして、伏せ漏れが起きやすくなります。
| 製品 | 主な対象 | 社内のAI検証での使いどころ | 確かめること |
|---|---|---|---|
| Textual | メール・契約書・文字起こし・PDF・表計算・画像の書類 | 問い合わせ履歴や商談メモをRAGや評価の質問に使う | 日本語の検出精度、文脈の残り方 |
| Structural | 本番のデータベース・データ基盤の表 | 顧客台帳と行動履歴をつないだ試験用の環境を作る | 表どうしの関係、自由記述の欄 |
| Fabricate | 元データなしの合成データ | 検証用の質問や架空の顧客台帳を作る | 実データとの似方、作らせた中身の偏り |
注意したいのは、表の中の自由記述の欄です。顧客台帳の備考欄や、商談記録のメモ欄には、名前や事情が文章で書かれていることがよくあります。公式サイトによれば、Structural は表の値を伏せ字、別の値への置き換え、範囲への丸めなどで処理し、関係を保ったまま変換できるとしていますが、備考欄の中の文章は、文書と同じ扱いで確かめる必要があります。表のデータでも、自由記述の欄だけは Textual と同じ観点で残り方を見ます。
Structural で試験用のデータベースを作る場合は、量と鮮度も判断の材料になります。公式サイトでは、関係を崩さずに本番の一部だけを切り出す機能を特許の技術として挙げ、本番の表の構造が変わったことを見つけて対応し、決まった周期で試験用のデータを作り直せると説明しています。切り出す範囲を小さくするほど、加工の漏れが外に出たときの影響も小さくなるので、検証に要る顧客の範囲と期間を先に絞ります。権限の分け方と作業の記録、匿名化の報告書も企業向けの機能として挙げられているので、誰がどの設定を変えたかを後から追える形で運用します。
手順3:伏せる項目と、伏せ方を決める
Textual では、検出する種類ごとに、黒塗りにするか、別の値に置き換えるか、何もしないかを選べます。公式の開発者向けの資料によれば、置き換え方にも、種類ごとにそれらしい値を作る方式や、まとまりを保って置き換える方式など複数の選択肢があります。この選択は検証の目的で決めます。
RAGの検証では、黒塗りより置き換えのほうが向くことが多いです。黒塗りだらけの文書は、探す側にも答える側にも不自然で、本番の挙動を再現できないからです。一方で、置き換えた値が実在の人や会社と偶然一致することもあるので、社名のように実在の確認が難しい種類は黒塗りにする、といった使い分けを決めておきます。
伏せる項目の一覧は、道具の既定の種類から始めて、自社に固有の値を足します。公式サイトでは、自社の例で学習させて、案件の符号名のような業務に固有の値を見つける独自の種類を作れると説明しています。顧客番号、社内の案件番号、契約番号、担当者の内線番号など、自社の業務でしか出てこない番号の形を、最初に洗い出しておくと伏せ漏れが減ります。
手順4:日本語の検出を、自社の文書で測る
公式の言語対応の資料では、対応言語の一覧に日本語が入っています。自社の環境に置く形では、英語以外の言語の対応を設定で有効にし、英語以外の文章を見つけると英語のモデルと多言語のモデルの両方を当てる仕組みだと説明されています。ただし、日本語でどの程度の精度が出るかは、公開資料では確認できませんでした。
日本語の文書で崩れやすいのは、敬称の付いた名前、住所の書き方の揺れ、全角と半角の混じった電話番号、社名の略称です。英語の文書を前提にした検出は、こうした揺れに弱いことがあります。社内の問い合わせ履歴から、個人情報の入った文を百件ほど抜き出し、人が正解を付けた小さな試験のデータを作って、道具の出力と突き合わせるのが確実な測り方です。
問い合わせ履歴から個人情報を含む文を抜き出し、法務か個人情報の担当が、伏せるべき箇所に正解の印を付けます。
見逃した箇所と、伏せなくてよい箇所を伏せた件数を、種類ごとに数えます。見逃しの件数を先に見るのが原則です。
見逃しが多い種類は、独自の検出の種類を作るか、多言語のモデルだけを使う設定を試します。
どの種類の見逃しを何件まで許すかを決め、試験のデータと結果を残します。道具の版が変わったら同じ試験を回し直します。
設定で調整できる幅も知っておきます。公式のリリースノートでは、7月に、独自の検出の種類ごとに確からしさの下限を決め、それより低い検出を無視する設定が加わりました。10月には、英語以外の言語で独自の検出モデルを作るとき、その言語の手引きと学習のデータを用意する方式が記録されています。下限を上げれば誤検出は減りますが、見逃しは増えます。見逃しを減らす方向に寄せ、誤検出は人の見直しで吸収するのが、個人情報を扱うときの基本の向きです。
手順5:残るものを確かめる
検出の精度を測ったら、次は伏せた後に何が残るかを確かめます。見るのは、一件ずつの文書ではなく、データ全体です。同じ置き換え先でつながった発言を並べたとき、役職、地域、日付、出来事の組み合わせで人物が特定できないか。一件では無害でも、集めると本人に近づくのが、文書のデータの再識別の典型です。
確かめ方は、攻める側の立場で試すことです。社内の事情を知る人に、伏せた後のデータの一部を渡し、誰の話か当てられるかを試してもらいます。当てられた例が出たら、その手がかりになった種類を伏せる対象に足すか、日付を月単位に丸めるなどの加工を足します。当てる試験をした人と、その結果は、記録として残しておきます。
もう一つ見落としやすいのは、伏せた値と元の値の対応表です。置き換えを同じ値で揃える作りである以上、どこかに対応の仕組みがあります。自社の環境に置く形なら、その仕組みと記録がどこに保存され、誰が見られるかを確かめます。対応表が手元にあれば、伏せたデータは元に戻せるデータとして扱う必要があります。
誰が残り方を確かめるか
伏せる作業をする担当と、残り方を確かめる担当は、分けるのが原則です。作業をした担当は、自分が決めた伏せ方の穴に気づきにくいからです。現実的な分け方は、データ基盤か情シスの担当が道具を回し、個人情報の担当か法務が伏せる項目と合格線を決め、問い合わせの中身を知る業務の担当が、当てる試験に加わる形です。
Textual の更新でも、確かめる仕組みが足されています。公式のリリースノートでは、7月に、墨消しの依頼の一部を生成AIで検出し直し、点数の低い依頼を見直しの対象として示す仕組みが加わりました。6月には、データの作成や削除、設定の変更、ファイルの書き出しを記録し、書き出せる監査の記録の画面も加わっています。ただし、生成AIによる見直しも、見直しの対象を絞る道具であって、合格を出す役ではありません。最後に見るのは人です。
- 墨消しの道具を通したことだけを理由に、データを社外の開発会社に渡す
- 伏せる作業をした担当が、残り方の確認まで一人で済ませている
- 日本語の検出精度を自社の文書で測らず、英語の事例の精度を前提にしている
- 置き換えの対応表がどこにあり、誰が見られるかを確かめていない
- 道具の版が変わっても、試験のデータで測り直していない
個人情報保護法の仮名加工情報・匿名加工情報との関係
日本の会社が問い合わせ履歴を加工して使うとき、避けて通れないのが個人情報保護法の扱いです。個人情報保護委員会のガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)によれば、仮名加工情報は、他の情報と照らし合わせない限り特定の個人を識別できないように加工した情報(法2条5項)、匿名加工情報は、特定の個人を識別できず、元の個人情報に戻せないように加工した情報(法2条6項)です。
| 観点 | 仮名加工情報 | 匿名加工情報 |
|---|---|---|
| 加工の水準 | 他の情報と照合しなければ識別できない | 識別できず、復元もできない |
| 利用目的 | 変更できる(法41条9項) | ガイドラインで利用目的の規律は示されていない |
| 第三者への提供 | 原則できない(委託・共同利用などは例外) | 項目と方法を公表し、匿名加工情報と明示して提供 |
| 識別する行為 | 禁止 | 禁止 |
| 対応表などの扱い | 削除した情報などの安全管理が必要 | 加工の方法などの情報の安全管理が必要 |
道具で加工したデータが、自動でどちらかに当たるわけではありません。置き換えの対応表を社内に持ったまま検証に使うなら、仮名加工情報として扱うか、そもそも個人情報のまま社内で利用するかを決めることになります。文脈から本人に近づく手がかりが残っている以上、匿名加工情報として社外に出す判断は、加工の基準を満たすかを法務が確かめてからにします。どの扱いにするかは道具ではなく、社内で決めて記録する事項です。この記事ではガイドラインで確かめた範囲だけを書いているので、個別の判断は専門家に確認してください。
何が社外に出るか:置き場所と、合成に使う生成AI
Tonic の製品を社内に入れるかを判断するとき、最初に確かめるのはデータの流れです。公式サイトによれば、Textual は Tonic が運営するクラウドと、自社の環境に Docker や Kubernetes で置く形の両方があり、Amazon、Google、Azure の保管領域とつなげます。Fabric 版は、データを Fabric の保管領域の外に動かさないと説明しています。
見落としやすいのは、生成AIを使う機能です。公式の開発者向けの資料では、自社の環境に置く形で生成AIを使った合成を行うには、OpenAI の利用の鍵を設定する必要があると書かれています。7月のリリースノートでは、OpenAI の提供元として Azure を選べるようになったことも記録されています。つまり、自社の環境に置いても、生成AIを使う機能を有効にすると、文章の一部が選んだ提供元に送られる可能性があります。
確かめる項目は三つです。一つ目は、どの機能が外部の生成AIを呼ぶか。二つ目は、呼ぶ先をどの国のどの事業者にするか、契約で学習に使わない条件があるか。三つ目は、伏せる前の元の文章が外部に送られるのか、伏せた後の文章だけが送られるのかです。三つ目は特に重要で、伏せる前の文章が送られるなら、検証の前に個人情報が社外に出ていることになります。見積の段階で構成図と書面で確かめてください。
マーケのデータで使う線
マーケの部門が Tonic を使いたくなる場面は、主に三つあります。問い合わせ応答のAIの検証に過去の問い合わせを使う場面、商談のメモや通話の文字起こしから質問の型を集める場面、顧客台帳を使った配信の仕組みを試験の環境で試す場面です。どれも、本番のデータをそのまま開発の環境に置かないための使い方です。
線を引きたいのは、加工したデータを施策そのものに使う場面です。伏せた問い合わせ履歴から顧客の悩みを分析するのは検証の範囲を超えて、本来の利用目的の中で扱うべき分析です。合成値に置き換えた顧客台帳を、広告の配信や類似の顧客の拡張に使うのは目的が違います。検証のために加工したデータは、検証の場から出さないのを原則にしておくと、目的の外での利用を防げます。
通話の文字起こしにも注意が要ります。公式サイトでは音声のファイルも対象に挙げていますが、話し言葉は書き言葉より名前の言い方や言い間違いが多く、検出の漏れが増えやすいデータです。営業の通話を検証に使うなら、手順4の試験のデータに通話の文字起こしを必ず入れ、書き言葉とは別に合格線を決めることを勧めます。
費用の増え方と、止め方・やめ方
Tonic の料金は、Fabricate に無料で始める入口があることは公式サイトで確かめられましたが、Textual と Structural の詳しい料金の単位は公開資料では読み取れませんでした。見積では、処理する文書の量、置き場所が自社の環境かクラウドか、生成AIを使う機能の利用料が含まれるかを確かめます。Fabric 版は Fabric の管理画面から追加する形なので、Fabric の利用料と Tonic の利用料がどう分かれるかも確かめる点です。
見えない費用は、手順4と手順5の試験です。正解付きの試験データを作る時間、当てる試験に業務の担当が割く時間、道具の版が変わるたびの測り直しの時間は、道具の料金より大きくなることがあります。一度作った試験データは、道具を乗り換えても使える社内の資産として保管しておきます。
やめ方も先に決めます。加工したデータは、道具をやめた後も社内に残ります。検証が終わったデータを消す期限、消したことの記録、置き換えの対応表の消し方を、検証を始める前に決めておきます。自社の環境に置いた場合は、道具の中に残る作業の記録と、学習させた独自の検出モデルの扱いも、やめるときの確認項目です。
AIに判断させないところ
Tonic の製品は、検出にも、誤検出の除去にも、見直しの対象の選定にも、合成データの作成と点検にも、AIを使っています。だからこそ、AIに判断させない範囲をはっきりさせておく必要があります。一つ目は、伏せる項目と合格線です。どの種類の見逃しを何件まで許すかは、個人情報の担当と法務が決めます。
二つ目は、残り方の判定です。当てる試験は、社内の事情を知る人がやるからこそ意味があります。生成AIに「この文章から本人が分かるか」を判定させても、取引先の担当者なら分かる、という社内の文脈は分かりません。三つ目は、加工したデータを社外に出すか、施策に使うかの判断で、これは名前のある責任者が承認する形にします。
AIに任せてよいのは、大量の文書から候補を見つけること、決めた方式で置き換えること、見直すべき文書を絞り込むことです。任せるときは、なぜその値を個人情報と判定したかの根拠を残させると、人が抜き取りで確かめる手間が減ります。根拠を読まずに件数だけで合否を決めないことを、手順書に書いておきます。
よくある質問
合成データなら、個人情報保護法の対象外になりますか
元のデータを使わずに作った合成データで、実在の人と結び付かないなら、個人情報に当たらないと考えられる場面が多いです。ただし、本番のデータを加工して作った場合や、元のデータの特徴を強く写した場合は別です。作り方と残り方を記録し、扱いは法務と決めてください。
Microsoft Fabric を使っていない会社でも使えますか
使えます。公式サイトでは、Tonic が運営するクラウドと自社の環境に置く形が案内されており、Amazon、Google、Azure の保管領域とつなげるとしています。Fabric 版は、Fabric を使っている会社がデータを動かさずに使える入口の一つです。
問い合わせ応答のAIの本番運用で、入力を伏せるのにも使えますか
公式サイトでは、生成AIへの入力の途中で機密の値を取り除く仕組みも案内しています。ただし本番の入力を通す場合は、遅延、検出の漏れ、止まったときの扱いを検証の用途とは別に試す必要があります。検証で使ってから、本番への適用を別に判断するのが安全です。
Fabric 版なら、管理の決まりは Fabric の側で済みますか
公式のプレスリリースでは、管理と来歴の追跡を Fabric の仕組みの中で一元化できると説明しています。権限や記録を Fabric の側で揃えやすくなるのは利点ですが、伏せる項目、合格線、残り方の確認、加工したデータの法的な扱いは、Fabric でも Tonic でもなく社内で決める事項です。
まとめ
Tonic は、文書の個人情報を伏せる Textual、データベースを匿名化する Structural、元データなしで合成データを作る Fabricate を持ち、2026年は Fabric 版の一般提供や、検出を見直す仕組みの追加が続いています。社内のRAGやAIエージェントの検証に本番のデータを使うなら、まず本番のデータが本当に要るかを決め、データの種類で製品を分け、伏せ方を決め、日本語の精度を自社の文書で測り、残るものを当てる試験で確かめる。この順番を、作業する人と確かめる人を分けて回すことが要です。墨消しは個人情報の話を終わらせる道具ではなく、残り方を確かめやすくする道具だと位置づけておけば、仮名加工情報としての扱いや社外への提供の判断も、根拠を持って下せます。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AIの導入・活用、何から始めるべきかお悩みですか?
デボノはアカウント開設・初期設定など「そもそものAI導入」から社内定着まで伴走支援。マーケティング活用など一歩進んだご相談にも対応します。
