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病院の検査・手術・入院の説明文書の改訂案を、用語のやさしさ・表記の統一・数値と日数の整合で校正し、修正案を担当の委員会へ返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

診療科が出した説明文書と同意書の改訂案を、委員会の審査の前に校正します。患者に伝わりにくい専門用語、院内の表記ルールからの外れ、関連文書やクリニカルパスと食い違う数値・日数を拾い、修正案の一覧を事務局へ返します。

サマリー
生成AI
Azure OpenAI Service/Claude/Gemini
連携・自動化
Google Apps Script/Make/n8n/Power Automate/Python
対象業界
介護/医療
対象部門
品質管理/総務
対象業務
内容確認・チェック/書類作成
主な課題
属人化している/書類作成に時間がかかる/確認ミスが多い
AIで行う処理
校正
主な効果
入力漏れ削減/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★☆☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
60h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
67%
年間削減
480h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 診療科が改訂案を作り、「説明文書審査」ライブラリに置いて事務局に依頼する
  2. 事務局の担当が改訂案を開き、現行版と見比べて変わった箇所をつかむ
  3. 全文を読み、言い換え表にある語が言い換えられているか、説明の無い専門用語が無いかを見る
  4. 院内の表記ルール(数字、単位、敬語の形、「ください」の書き方)から外れた箇所に印を付ける
  5. 同じ検査の同意書・入院案内・クリニカルパスを開き、絶食の時間、来院の時刻、入院日数、抜糸の日などが合っているかを見る
  6. 修正の提案を Word のコメントにまとめ、診療科に戻す
  7. 直った版を確かめ、委員会にかける
導入後(After)
  1. 人診療科が改訂案を作り、文書番号を付けて「説明文書審査」ライブラリに置く
  2. 自動ファイルの作成をきっかけにワークフローが動き、現行版・関連文書・クリニカルパスの値をそろえる
  3. 自動改訂案と現行版から段落と表の文字を取り出し、変わった段落に印を付ける
  4. 自動プログラムが言い換え表の語と表記ルールの型を機械的に拾う
  5. 自動Azure OpenAI が、言い換え表に無い分かりにくい語と、言い換え・補足の案を挙げ、本文から数値と日数を書き写す
  6. 自動プログラムが書き写した数値と日数を、関連文書とクリニカルパスの値と照合する
  7. 自動修正案を「用語」「表記」「数値」に分けた一覧にし、事務局へ知らせる
  8. 人事務局が一覧を読み、採る案と採らない案を決めて、診療科に戻す
  9. 人直った版を委員会にかける
各工程の詳しい説明を読む
  1. 診療科が改訂案を作り、「説明文書審査」ライブラリに置いて事務局に依頼する
  2. 事務局の担当が改訂案を開き、現行版と見比べて変わった箇所をつかむ
  3. 全文を読み、言い換え表にある語が言い換えられているか、説明の無い専門用語が無いかを見る
  4. 院内の表記ルール(数字、単位、敬語の形、「ください」の書き方)から外れた箇所に印を付ける
  5. 同じ検査の同意書・入院案内・クリニカルパスを開き、絶食の時間、来院の時刻、入院日数、抜糸の日などが合っているかを見る
  6. 修正の提案を Word のコメントにまとめ、診療科に戻す
  7. 直った版を確かめ、委員会にかける

(a)言い換えの漏れは、読み手の知識で決まる。 言い換え表の300語を覚えているかどうかで、拾える数が変わります。表に無いが患者に通じにくい語は、さらに読み手しだいです。

(b)表記は、1件の中でも揺れる。 複数の医師が書き足した改訂案では、同じ語の書き方が段落ごとに違うことがあります。目で見ると、揃っていないことに気づきにくい種類の誤りです。

(c)関連文書との数字のずれは、5番目を省くと見つからない。 改訂案だけを読んでいる限り、文書の中では筋が通っています。ずれは、同意書や入院案内を並べて初めて分かります。 忙しい月にはここが省かれます。

(d)指摘の細かさが担当者で違う。 診療科から見ると、どこまで直せば通るのかが読めません。

  1. 【人】 診療科が改訂案を作り、文書番号を付けて「説明文書審査」ライブラリに置く
  2. 【自動】 ファイルの作成をきっかけにワークフローが動き、現行版・関連文書・クリニカルパスの値をそろえる
  3. 【自動】 改訂案と現行版から段落と表の文字を取り出し、変わった段落に印を付ける
  4. 【自動】 プログラムが言い換え表の語と表記ルールの型を機械的に拾う
  5. 【自動】 Azure OpenAI が、言い換え表に無い分かりにくい語と、言い換え・補足の案を挙げ、本文から数値と日数を書き写す
  6. 【自動】 プログラムが書き写した数値と日数を、関連文書とクリニカルパスの値と照合する
  7. 【自動】 修正案を「用語」「表記」「数値」に分けた一覧にし、事務局へ知らせる
  8. 【人】 事務局が一覧を読み、採る案と採らない案を決めて、診療科に戻す
  9. 【人】 直った版を委員会にかける

4番目と5番目を分けているのが、この設計の要です。 言い換え表に載っている語と、表記ルールの型(全角数字、「下さい」など)は、決まった語や型なので、プログラムで漏れなく拾えます。 AIに任せるのは、表に無い語の判断と、言い換えの文の案だけです。

8番目で決めるのは事務局です。 AIの案は案にすぎず、医学的な意味が変わる言い換えでないかは、看護師の担当と診療科が確かめます。

02今回想定するシステム構成

構成図
改訂案(Word)+ 文書番号
   ▼【トリガー】SharePoint「説明文書審査」ライブラリへの保存
Power Automate
   ├──▶ 現行版(文書管理ライブラリ)
   ├──▶ 関連文書(同じ検査・手術の同意書、入院案内)
   ├──▶ クリニカルパスの値の一覧
   ▼
Python(python-docx)── 段落と表の取り出し、差分、言い換え表と表記ルールの機械的な照合
   ▼
Azure OpenAI(Microsoft Foundry。構造化出力)
   │   ① 表に無い分かりにくい語と、言い換え・補足の案
   │   ② 本文の数値と日数の書き写し
   ▼
Python ── 数値と日数の照合(関連文書・クリニカルパス)
   ▼
修正案の一覧(用語/表記/数値)→ 事務局 → 診療科
役割想定する製品代替候補
生成AIAzure OpenAI(Microsoft Foundry)Claude API、Gemini API
連携Power AutomateMake、n8n
差異計算Python(python-docx による取り出し、差分、言い換え表・表記ルール・数値の照合)Google Apps Script
保管SharePoint(改訂案、現行版、修正案の一覧、審査の記録)Box
辞書院内の言い換え表と表記ルール(表の形で持つ)―

電子カルテには触れません。 説明文書は患者個人の情報を含まないひな形で、扱うのは文書の本文と院内の表だけです。 最初の準備は、言い換え表と表記ルールを、1行1語・1行1規則の表にすることです。

言い換えの考え方の土台は、国立国語研究所「病院の言葉」委員会の提案です。 提案は、患者に言葉が伝わらない原因を、①患者に言葉が知られていない、②患者の理解が不確か、③患者に理解を妨げる心理的負担があるの3つに分けています。①には日常語で言い換える、②には意味を明確に説明し混同を避ける、という具合に、原因ごとに効く工夫が違うとされています。

この3つの型を、AIの案の分類にそのまま使います。 型が付いていると、事務局は「言い換えればよい語」と「説明を足す語」と「伝え方に配慮が要る語」を分けて読めます。提案には、非医療者の調査で認知率が低かった語(「イレウス」「寛解」「生検」「予後」など)や、認知率に比べて理解率が低かった語(「ショック」「ステロイド」など)の表も載っています。院内の言い換え表の見直しの出発点に使えます。

生成AIは、Azure OpenAI の構造化出力で呼びます。 Microsoft Learn によれば、構造化出力ではモデルが指定した JSON スキーマに従い、Chat Completions API では response_format、Responses API では text.format にスキーマを書きます。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

「説明文書審査」ライブラリにファイルが作られたことを起点にします。 Power Automate の SharePoint コネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」は、ライブラリで項目が作成されたときに動き、ライブラリの列のプロパティだけを返します。 本文は「ファイル コンテンツの取得」で取ります。フォルダー単位のトリガーは非推奨で、サブフォルダーでは起動しないとされているため使いません。診療科はサブフォルダーではなく、ライブラリの列で分けます。

ライブラリの列に、文書番号・文書の種類(説明書/同意書/案内)・関連する検査や手術のコード・クリニカルパスの番号を持たせます。 診療科が置くときに選ぶ形にし、関連文書を引く鍵にします。 列が空のまま置かれたら、点検を始めずに診療科へ入力を頼みます。

診療科が直して置き直したときも、同じトリガーで動きます。 前の版の修正案の一覧と並べ、採った案が直っているか、新しい揺れが入っていないかだけを示します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
改訂案診療科が作った Word ファイル説明文書審査ライブラリ
現行版いま使っている版文書管理ライブラリ
関連文書同じ検査・手術の同意書、入院案内、退院後の注意文書管理ライブラリ(関連のコードで引く)
クリニカルパスの値絶食・飲水の開始、来院時刻、入院日数、検査日・手術日からの日数(抜糸、退院など)医療の質の担当が持つ一覧
言い換え表語、言い換え、補足の説明、型(①②③)、使ってよい場面委員会が定めた表
表記ルール規則、誤りの型、正しい形、例委員会が定めた表

質を決めるのは、クリニカルパスの値の一覧です。 改訂案どうしを比べるだけでは、どちらが正しいかが分かりません。基準になる値を1か所に持ち、すべての文書をそこと比べます。 一覧が古ければ、照合は誤った指摘を量産します。

言い換え表には「使ってよい場面」の列を持たせます。 「ステロイド」のように、言い換えるより説明を足したほうがよい語、手術の同意書では正式の名称を残すべき語があるからです。

Step3

データの取得方法を決める

Power Automate で改訂案と現行版、関連文書の中身を取り、Python の処理に渡します。SharePoint コネクタのファイルサイズの上限は100MBとされています。 図を多く貼った手術の説明書でも通常は収まりますが、超えたものは人に回します。

Word からの取り出しは python-docx で行います。 Document の paragraphs と tables は文書順に返り、iter_inner_content() は段落と表を文書順に1つずつ返します。説明文書は、手順を表で、注意を箇条書きの段落で書くことが多いので、両方を文書順に取り出し、段落ごとに番号を振ります。 この番号が、修正案の場所の指し示しになります。

取るもの取り方何に使うか
段落iter_inner_content() の Paragraph用語と表記の校正、数値の書き写し
表同じく Table のセル時間割や持ち物の表の数値
現行版との差分段落の文字列どうしの比較変わった段落に印を付ける

変更履歴に注意が要ります。 python-docx の公式の説明では、変更履歴のマーク(<w:ins>、<w:del>)の中の段落は paragraphs に含まれず、tables も変更履歴の中の表を含みません。診療科が変更履歴を付けたまま置くと、書き足した文が校正から抜けます。 変更履歴が残っていたら、承諾してから置き直すよう戻します。

現行版との差分は、変わった段落を見分けるためだけに使います。 校正は全文に対して行います。変わっていない段落にも、前回の見直しで拾い漏れた語は残っているからです。ただし一覧では、変わった段落の指摘を先に並べます。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ライブラリの列を確かめる … 文書番号、文書の種類、関連のコード、クリニカルパスの番号がそろっているか
  2. 形式と変更履歴を確かめる … .docx 以外と、変更履歴が残るものは戻します
  3. 段落と表を取り出す … 文書順に番号を振ります
  4. 言い換え表の語を機械的に拾う … 表の300語を本文から探し、言い換えも補足も無いまま出ている箇所を拾います
  5. 表記ルールの型を機械的に拾う … 全角と半角の数字の混在、「下さい」と「ください」、時刻の書き方(「21時」「21:00」「午後9時」)の混在などを規則の表で拾います
  6. 数値と日数の候補に印を付ける … 「時」「日」「分」「mL」などの単位の付いた語の段落に印を付け、AIの書き写しの漏れを後で確かめる材料にします
  7. 関連文書を同じように取り出す … 照合のために、関連文書の数値の段落も取り出しておきます

4番目と5番目をAIの前に置くのが、この構成の要です。 決まった語と決まった型は、プログラムで拾えば漏れも揺れもありません。 AIには、プログラムで拾えた語の一覧も渡し、同じ語を二度挙げないようにします。

Step5

AIに処理させる

させるのは2つです。 1つ目は、言い換え表に無いが患者に通じにくいと考えられる語を挙げ、言い換えか補足の案を付けること。2つ目は、本文に書かれた数値と日数を、項目の名前を付けて書き写すことです。

させること中身判断できないときの扱い
分かりにくい語の指摘語、段落の番号、型(①知られていない/②理解が不確か/③心理的負担)、言い換えか補足の案型を決められなければ type_unclear
言い換えの案意味を変えずに日常語にした文意味が変わるおそれがあれば needs_clinician
数値と日数の書き写し項目(絶食開始、飲水の制限、来院時刻、入院日数など)、書かれている文字列、段落の番号項目を決められなければ item_unknown

型の③は、言い換えの問題ではありません。 提案では、「悪性」「がん」のような重大な病気を告げられたときや、痛みや危険を伴う治療を示されたときに、心理的な負担が重くなる傾向があるとしています。③の指摘には言い換えの案を付けさせず、「伝え方の配慮を検討」とだけ書かせます。 文書の語を変えて済む話ではないからです。

させないこと理由
医学的な内容の正誤の判断診療科の医師と委員会が判断する
合併症の頻度などの数値が妥当かの判断根拠は診療科が持つ。AIは書き写すだけ
数値の照合書き方の違いを食い違いと誤る。照合はプログラム
説明を省いてよいかの判断何を説明すべきかは医療者が決める
言い換え表にある語の指摘前処理で拾い済み。二重になる

1行目と2行目が、いちばん守るべき線です。 AIは読みやすさを求めると、「まれに」を「ほとんど起こりません」と書き換えたり、頻度の数字を丸めたりします。それは言葉の直しではなく、説明の内容の変更です。 数値を含む文の言い換えには、必ず needs_clinician を付けさせます。

Step6

指示内容を固定する

あなたは病院の説明文書の審査を担う委員会の事務局で、
患者や家族が読む文書の言葉を校正する立場です。
渡された【本文】だけを見て、次の2つを行ってください。

【1. 分かりにくい語の指摘】
- 医療の専門家でない患者や家族に通じにくいと考えられる語を挙げてください。
- 【言い換え表で拾い済みの語】に入っている語は挙げないでください。
- 型を次から1つ選んでください。
  type1 … 患者に言葉が知られていない(日常語で言い換える)
  type2 … 見聞きはされているが理解が不確か・別の意味と混同されやすい(説明を足す)
  type3 … 受け止めるときに心理的な負担が大きい(伝え方の配慮)
- type1 と type2 には言い換えか補足の案を付けてください。
  type3 には案を付けず、note に「伝え方の配慮を検討」と書いてください。
- 案は意味を変えないでください。頻度・程度・期間を表す語を強めたり弱めたりしないでください。
- 数値を含む文、または意味が変わるおそれがある案には needs_clinician を true にしてください。

【2. 数値と日数の書き写し】
- 時刻・日数・時間・量など、患者の行動に関わる数値を、項目の名前を付けて書き写してください。
- 書かれている文字列をそのまま写してください。書き方を直さないでください。
- 計算や換算をしないでください(「12時間前」を時刻に直さない)。

【厳守事項】
- 医学的な内容が正しいかは書かないでください。
- 合併症の頻度などの数値が妥当かは書かないでください。
- 本文に無い説明を書き足さないでください。
- paragraph には段落の番号を入れてください。

【言い換え表で拾い済みの語】{matched_terms}
【本文(段落の番号付き)】{document_text}

「強めたり弱めたりしない」を名指しで書くのは、読みやすさの要求がそこへ向かいやすいからです。 「やさしく」とだけ頼むと、不安を和らげる方向に言葉を選びます。説明文書でそれをすると、同意の前提が変わります。

「換算をしない」も明記します。 「検査の12時間前から絶食」を「前日21時から」と直されると、照合で比べる値が本文に無いものになります。

Step7

出力形式を固定する

次の形のJSONで受け取ります。 構造化出力では、すべての項目を必須にし、オブジェクトに additionalProperties: false を付けます。値の無い項目は null との共用体型で表します。

{
  "doc_no": "",
  "terms": [
    {
      "term": "",
      "paragraph": 0,
      "type": "type1 | type2 | type3 | type_unclear",
      "suggestion": null,
      "needs_clinician": false,
      "note": null
    }
  ],
  "values": [
    { "item": "fasting_start", "text": "", "paragraph": 0 }
  ]
}

プログラムが、ここに前処理と照合の結果を足して、修正案の一覧にします。

区分出どころ一覧に出す内容
用語(表)前処理の言い換え表の照合語、段落、表の言い換え
用語(AI)terms語、段落、型、案、医療者の確認の要否
表記前処理の表記ルールの照合箇所、規則、正しい形
数値values と関連文書・クリニカルパスの照合項目、改訂案の値、基準の値、一致/食い違い/基準に無し

1つ目の理由は、出どころを分けて示せることです。 表で拾った指摘は委員会の決まりなので原則として直し、AIの指摘は事務局が採るかを決める、という重みの違いを一覧で見分けられます。

2つ目は、数値の照合をプログラムに渡せることです。 values の text を照合用に正規化し、クリニカルパスの値と比べます。正規化できない書き方(「前日の夕食後から」)は、食い違いではなく「基準と比べられない」として出します。

3つ目は、needs_clinician で回す先を分けられることです。 true の案は、事務局の判断で採らず、医療安全管理室の看護師と診療科に回します。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
説明文書審査ライブラリPower Automate のトリガーと「ファイル コンテンツの取得」改訂案を受け取る
文書管理ライブラリ読み取り現行版と関連文書
クリニカルパスの値の一覧読み取り照合の基準
Python の処理Power Automate から呼ぶ取り出し、差分、機械的な照合、数値の照合
Azure OpenAIAPI呼び出し(構造化出力)分かりにくい語の指摘と、数値の書き写し
SharePoint のリスト書き込み修正案の一覧と、採否の記録
Teams通知事務局への知らせ

改訂案のファイルそのものには書き込みません。 修正案は一覧として返し、直すのは診療科です。 説明文書は委員会の承認を経て使う文書なので、誰がどの文を決めたかを残す必要があります。

現行版と関連文書も読むだけです。 照合で関連文書の側の誤りが見つかっても、その場では直さず、関連文書の見直しの依頼として別に記録します。

Step9

人が確認する

事務局は、修正案の一覧を全件読みます。 1件の改訂案で数十件の指摘が出ることもありますが、一覧の形なので、文書を頭から読み通すより短い時間で見られます。

  1. 数値の食い違いを先に見る … 改訂案と基準のどちらが正しいかを、診療科とクリニカルパスの担当に確かめます
  2. 言い換え表の指摘を確かめる … 委員会の決まりなので、原則として直す側に入れます
  3. AIの用語の指摘を採るか決める … 型と案を読み、採る・採らない・医療者に回すに分けます
  4. needs_clinician の案を回す … 看護師の担当と診療科に、意味が変わらないかを確かめてもらいます
  5. 採否を一覧に記録して診療科に戻す

1番目を先にするのは、患者の行動に直結するからです。 絶食の開始時刻が文書ごとに違えば、患者は検査の当日に食事をしてきてしまいます。 用語の言い換えより、こちらの食い違いのほうが影響が大きい誤りです。

採らなかった指摘も記録します。 同じ語で採らない判断が続くなら、言い換え表に「この場面では使ってよい」と書き足す材料になります。

Step10

例外に対処する

起きること対応
ライブラリの列が空点検を始めずに、診療科に入力を頼む
.docx 以外、変更履歴が残る点検せずに戻す。取り出しから記載が漏れるため
関連文書が見つからない照合の関連文書の部分を飛ばし、一覧に「関連文書なし」と出す
クリニカルパスに該当の値が無い「基準に無し」として出し、事務局が診療科に確かめる
数値の書き方が正規化できない「基準と比べられない」として出す
AIの書き写しが前処理の印より少ない印の付いた段落で書き写されていないものを一覧に出す
構造化出力で拒否が返る判定せずに人に回す
Azure OpenAI が応答しない機械的な照合の結果だけを先に出し、AIの部分は再実行する

6行目は、書き写しの漏れを見つけるための仕掛けです。 前処理で単位の付いた段落に印を付けておき、AIの values に出てこない段落があれば、それを一覧に出します。 漏れた数値が、ちょうど食い違っている値かもしれないからです。

Step11

記録を残す

  • 改訂案の版と、置かれた日時・置いた診療科
  • 取り出した本文(段落の番号付き)と、現行版との差分
  • 前処理で拾った言い換え表の語と表記の指摘
  • Azure OpenAI に渡した本文と、返ってきた terms と values
  • 数値の照合の結果と、そのとき参照したクリニカルパスの値の一覧の版
  • 事務局の採否と、needs_clinician の確認の結果
  • 委員会での承認の記録

5つ目で一覧の版を残すのは、クリニカルパスが見直されるためです。 絶食の時間が変わったあとで、過去の文書がなぜ通ったのかを説明できるようにします。

04実装レベルの3段階

最小構成:本文を手で生成AIの画面に貼り、語の指摘と数値の書き写しをさせる / 分かりにくい語の候補出し
半自動化:上記+ライブラリを起点に取り出し、言い換え表と表記ルールの機械的な照合とAIの指摘を一覧にする / 用語と表記の校正
本格構成:上記+数値と日数の書き写しと、関連文書・クリニカルパスとの照合 / 用語・表記・数値の校正の全体

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ貼り、数値の照合も手で行います。指示の書き方を固めるための段階です。 半自動化で、1件90分が55分程度になります。 用語と表記の拾い出しは自動になりますが、関連文書を開いて数値を比べる作業が残ります。本格構成で30分になり、この段階が本記事の想定です。 差が大きいのは、第4章の④、関連文書とクリニカルパスを開いて比べる作業が照合に置き換わるからです。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、採られない指摘の多い語が分かります。言い換え表の「使ってよい場面」を整えてから本格構成に進むほうが、一覧が短くなります。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
90 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  40件 × 90分 ÷ 60 = 60 時間/月
導入後 40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
40h
削減率
67%
年間削減時間
480h
年間金額換算(時間単価4,000円)
192万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 説明文書と同意書を数百種類持ち、診療科からの改訂案を委員会の事務局が審査の前に読んでいる急性期病院。院内の言い換え表や表記ルールはあるが、読み手によって指摘の細かさが違う場合。同じ検査の説明書・同意書・入院案内で、絶食の時間や入院日数がずれていたことがある場合。Microsoft 365 と Azure を院内で使っている場合。
向いていない
  1. 説明文書が数十種類で、改訂が年に数件しかない診療所。説明文書を紙の手書きで管理していて、Word のファイルが無い場合。なお、説明の医学的な内容が正しいか、合併症の頻度などの数値が妥当か、同意の取り方が十分かの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去半年に審査した改訂案から10件を選ぶ(うち数件は、関連文書と数値がずれていたものを入れる)
  2. 言い換え表と表記ルールを、1行1語・1行1規則の表にする
  3. 改訂案の本文を、Azure OpenAI のプレイグラウンドか院内で使える生成AIの画面に貼り、第7章の指示で分かりにくい語の指摘と数値の書き写しをさせる
  4. 書き写された数値を、関連文書とクリニカルパスの値と手で比べる
  5. 当時の事務局の指摘と突き合わせる

10件は必ずやってください。 仕組みを組む前に、「AIが言い換えで意味を変えないか」「数値を書き写すときに換算しないか」を確かめます。

出てきた内容判断
当時の事務局と同じ語を挙げた取り出しと照合の連携に進む
頻度の言葉を弱めた案を出した指示の書き方で直る。構成は有効
数値を時刻に換算して書いた書き写しの指示を強める
当時見つからなかったずれが出た照合の価値が確かめられた

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
言い換えで頻度や程度の意味が変わる強める・弱めるを名指しで禁じ、数値を含む文は needs_clinician
数値を換算して書き写す換算を禁じ、照合はプログラムで行う
変更履歴の中の文が校正から抜ける変更履歴が残るファイルは戻す
言い換え表の語をAIも挙げて二重になる拾い済みの語の一覧を渡す
指摘が多すぎて事務局が読み切れない出どころと区分で並べ、変わった段落を先に出す
手術の同意書で正式の名称まで言い換える言い換え表に「使ってよい場面」の列を持たせる
クリニカルパスの一覧が古い一覧の版を結果に出し、古ければ照合を止める
「伝え方の配慮」の語に言い換えを付けるtype3 には案を付けさせない

上の2行が、この構成の失敗のほとんどです。 どちらも「読みやすくする」が「内容を変える」に化ける誤りです。説明文書では、内容を変えた言い換えは、校正ではなく説明の改変になります。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 説明文書と同意書のひな形、院内の言い換え表と表記ルール、クリニカルパスの値です。患者個人の情報は扱いません。 ただし、改訂案に症例の例として実在の患者の経過が書かれていることがあるので、前処理で確かめます。

  1. 患者の情報が混ざっていないかを確かめる … 改訂案に氏名・日付と結びついた経過が書かれていれば、点検を止めて診療科に戻します
  2. 医学的な内容の判断をAIに置かない … 内容の正誤、数値の妥当性、説明の要否は医療者と委員会が決めます
  3. 言い換えの採否は人が決める … AIの案は一覧の候補で、意味が変わるおそれのあるものは医療者に回します
  4. Azure の処理の場所を確かめる … Microsoft Learn では、プロンプトと応答は指定した地域内で処理されるが、グローバルやデータゾーンの展開の種類では処理の場所が変わるとされています。院内の規程に合う展開の種類を選びます
  5. 入力の扱いを確かめる … 同じページでは、プロンプトと出力は他の顧客や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルのトレーニングに使われないとされています。一方で、不正使用の監視のために、条件によっては人がレビューすることがあるとも書かれており、変更の申請の仕組みがあります。院内の判断で確かめてください
  6. 委員会の承認を飛ばさない … 校正を通っても、承認は委員会が行います

誤りが起きた場合のリスクは、言い換えで説明の内容が変わることと、数値のずれを見落とすことの2つです。 前者は禁止の指示と医療者への回付で、後者はプログラムの照合と書き写しの漏れの検出で防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:言い換え表と表記ルールを表にする

委員会の言い換え表を、語・言い換え・補足・型・使ってよい場面の列を持つ表にします。国立国語研究所の提案に載っている語の表と見比べ、足りない語を候補として挙げます。

2週目:10件で試す

過去の改訂案10件を生成AIの画面に貼り、語の指摘と数値の書き写しをさせます。言い換えで意味を変えていないか、数値を換算していないかを最優先で見ます。

3週目:クリニカルパスの値をそろえる

件数の多い検査と手術の上位30について、絶食・飲水・来院・入院日数・抜糸・退院の値を1つの一覧にします。医療の質の担当と、版の管理のしかたを決めます。

4週目:ライブラリから一覧までをつなぐ

Power Automate で審査ライブラリを起点に、取り出し、言い換え表と表記ルールの照合、AIの指摘を回し、修正案の一覧を SharePoint のリストに出すところまで作ります。この時点では数値の照合をしません。

2か月目: 数値の書き写しと照合を足し、食い違いの件数を毎週数えます。3か月目以降: 採らなかった指摘を言い換え表に反映し、1件90分が何分になったかを実測します。事務局の3名が同じ表と同じ一覧で下読みできるようになった時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-13/最終更新:2026-10-13
確認した内容情報源確認日
患者に言葉が伝わらない原因を、①言葉が知られていない、②理解が不確か、③理解を妨げる心理的負担がある、の3つに分けていること。①には日常語で言い換える工夫が効果的とされること。認知率が低い語(イレウス、寛解、生検、予後など)と、認知率と理解率の差が大きい語(ショック、ステロイドなど)の表。心理的な負担が重い病気の告知や危険を伴う治療の説明で重くなる傾向があること国立国語研究所「病院の言葉」委員会:「病院の言葉」を分かりやすくする提案(平成21年3月)2026-10-13
構造化出力でモデルが指定した JSON スキーマに従うこと。Chat Completions API は response_format、Responses API は text.format にスキーマを書くこと。すべての項目を必須にし、additionalProperties: false が必要なこと。省略可能な値は null との共用体型で表すことMicrosoft Learn: Azure OpenAI で構造化出力を使用する方法2026-10-13
プロンプトと出力が他の顧客や OpenAI に提供されず、許可なく基盤モデルのトレーニングに使われないこと。指定した地域内で処理され、グローバル・データゾーンの展開の種類では処理の場所が変わること。不正使用の監視で人のレビューがありうること、変更の申請ができることMicrosoft Learn: Azure が販売する Foundry モデルのデータ、プライバシー、セキュリティ2026-10-13
SharePoint コネクタの「ファイルの作成時 (プロパティのみ)」がプロパティだけを返し、中身は「ファイル コンテンツの取得」で取ること。フォルダー単位のトリガーが非推奨でサブフォルダーでは起動しないこと。ファイルサイズが最大100MBであることMicrosoft Learn: SharePoint コネクタ2026-10-13
paragraphs と tables が文書順に返ること、iter_inner_content() が段落と表を文書順に返すこと。変更履歴のマークの中の段落と表が含まれないことpython-docx: Document objects2026-10-13

説明の医学的な内容、数値の妥当性、同意の取り方は、診療科と委員会が判断してください。 本記事は公開されている提案と仕様で確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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