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職務発明の実績報奨の申請を、職務発明規程の算定式と事業部から出た実施の実績に照らして判定し、算定の誤りと根拠の不足を知財の担当へ返す

実装ステータス:構成例 技術的に実現可能な構成として設計したもの。自社未検証

職務発明の実績報奨の申請を、職務発明規程の算定式と、事業部から出た実施の実績に照らして確かめます。算定の誤りと根拠の不足を指摘一覧にし、知財の担当者が差し戻すか、そのまま審査に回すかを決めます。

サマリー
生成AI
ChatGPT/Claude/Gemini
連携・自動化
Power Automate/Python
対象業界
IT・SaaS/製造
対象部門
知財
対象業務
内容確認・チェック/集計・分析
主な課題
判断に時間がかかる/属人化している/確認ミスが多い
AIで行う処理
判定
主な効果
判断支援/品質標準化/工数削減
導入難易度
★★★★☆
実装レベル
本格構成
費用感
API連携(中)
人間の確認
必須
現在工数
70h/月
AI導入後
20h/月
想定削減
71%
年間削減
600h
モデル条件による試算値です。実在企業の実績ではありません。

01導入前 / 導入後の業務フロー

導入前(Before)
  1. 事業部の窓口から、申請書と実施の実績の報告が届く
  2. 担当者が知財管理システムで、特許の番号、登録日、発明者と持分を引く
  3. 申請書の売上高を、実績の報告の数字と見比べる
  4. 実施料率が細則の表の技術分野と合っているかを見る
  5. 寄与度の理由を読み、細則の考え方に沿っているかを判断する
  6. 同じ製品について、ほかの特許の申請が出ていないかを算定表で探す
  7. 表計算で算定式を組み直し、申請の金額を検算する
  8. 誤りや根拠の不足があれば、事業部の窓口に差し戻す
  9. 問題が無ければ、知財の審査の会議に回し、決まった額を発明者に知らせる
導入後(After)
  1. 人事業部の窓口が申請書と実績の報告を、決められたフォルダに保存する(これまでと同じ書類)
  2. 自動保存をきっかけに、知財管理システムから特許の番号・登録日・発明者・持分を引く
  3. 自動Claude API が、申請書と実績の報告から算定に使う値と、寄与度の理由などの記述を、原文の引用付きで取り出す
  4. 自動プログラムが、取り出した値と知財管理システムの記録・細則の表を照合し、規程の算定式で検算する
  5. 自動プログラムが、同じ製品・同じ期間のほかの特許の申請を探し、寄与度の合計を出す
  6. 自動Claude API が、寄与度の理由と実施の説明が細則の考え方に照らして足りているかを判定する
  7. 自動指摘一覧と、差し戻しの文の下書きを作る
  8. 人知財の担当者が指摘一覧を見て、原文で確かめ、差し戻すか審査に回すかを決める
  9. 人審査の会議で額を決め、発明者に知らせ、意見を受け付ける
各工程の詳しい説明を読む
  1. 事業部の窓口から、申請書と実施の実績の報告が届く
  2. 担当者が知財管理システムで、特許の番号、登録日、発明者と持分を引く
  3. 申請書の売上高を、実績の報告の数字と見比べる
  4. 実施料率が細則の表の技術分野と合っているかを見る
  5. 寄与度の理由を読み、細則の考え方に沿っているかを判断する
  6. 同じ製品について、ほかの特許の申請が出ていないかを算定表で探す
  7. 表計算で算定式を組み直し、申請の金額を検算する
  8. 誤りや根拠の不足があれば、事業部の窓口に差し戻す
  9. 問題が無ければ、知財の審査の会議に回し、決まった額を発明者に知らせる

(a)検算の前に、数字の出どころを探している。 申請書の売上高が、実績の報告のどの表のどの行かを探すところから始まります。事業部によって報告の様式が違い、製品の名前も型番で書く事業部と商品名で書く事業部があります。

(b)寄与度の理由の読み方が人によって違う。 「本特許が製品の主要な機能を担う」で30%を認めるか。経験の長い担当者は過去の申請と比べて判断できますが、その物差しは表になっていません。

(c)重ねて数えられた売上に気づきにくい。 同じ製品の申請が別の月に届くと、前の月に別の担当者が見た申請と重なっていることに、誰も気づかないことがあります。

(d)発明者と持分の食い違いが、支払の直前に見つかる。 申請書の発明者の並びと持分が、知財管理システムの記録と違う。退職者や異動者の扱いも、申請書の書き方がまちまちです。

  1. 【人】 事業部の窓口が申請書と実績の報告を、決められたフォルダに保存する(これまでと同じ書類)
  2. 【自動】 保存をきっかけに、知財管理システムから特許の番号・登録日・発明者・持分を引く
  3. 【自動】 Claude API が、申請書と実績の報告から算定に使う値と、寄与度の理由などの記述を、原文の引用付きで取り出す
  4. 【自動】 プログラムが、取り出した値と知財管理システムの記録・細則の表を照合し、規程の算定式で検算する
  5. 【自動】 プログラムが、同じ製品・同じ期間のほかの特許の申請を探し、寄与度の合計を出す
  6. 【自動】 Claude API が、寄与度の理由と実施の説明が細則の考え方に照らして足りているかを判定する
  7. 【自動】 指摘一覧と、差し戻しの文の下書きを作る
  8. 【人】 知財の担当者が指摘一覧を見て、原文で確かめ、差し戻すか審査に回すかを決める
  9. 【人】 審査の会議で額を決め、発明者に知らせ、意見を受け付ける

4番目と5番目をプログラムに置いているのが、この設計の分かれ目です。 金額は、発明者に支払われ、場合によっては争いになる数字です。AIが計算した額を出すと、その額がどこから来たかを説明できません。 規程の算定式をプログラムに書き、同じ値からは必ず同じ額が出るようにします。

8番目で担当者が見るのは、指摘一覧の行と、寄与度の理由の原文です。 申請書を頭から読み直すことはしません。ただし、寄与度の判定は指摘が無くても必ず目を通します。 発明者にとっていちばん関心のある数字だからです。

02今回想定するシステム構成

構成図
申請書(Word / PDF)+ 事業部の実施の実績の報告(表計算 / PDF)
   │  決められたフォルダに保存
   ▼
Python(連携)
   ├── 知財管理システム:特許番号・登録日・発明者・持分
   ├── 表計算の報告 → テキスト(シート名・行・列の位置付き)
   ▼
Claude API ── ① 算定に使う値と根拠の記述の取り出し(原文の引用付き)
   ▼
Python ── 照合と検算(規則)
   │   売上高:申請 ⇔ 実績の報告   持分の合計 ⇔ 100%
   │   発明者 ⇔ 知財管理システム   実施料率 ⇔ 細則の表
   │   同じ製品のほかの特許の寄与度の合計   算定式での金額
   ▼
Claude API ── ② 寄与度の理由・実施の説明の根拠の判定
   ▼
Python ── 指摘一覧と差し戻しの文の下書き
   ▼
【知財の担当者が確かめる → 差し戻し or 審査の会議】
役割想定する製品代替候補
処理Claude API(値と根拠の記述の取り出し、根拠の不足の判定)OpenAI API、Gemini API
連携Python(知財管理システムの読み込み、表の書き出し、照合と検算、重なりの検出)Microsoft Power Automate
保管知財部の共有フォルダ(特許ごとのフォルダ)知財管理システムの添付の領域

知財管理システムにも算定表にも書き込みません。 この構成が出すのは指摘一覧と検算の結果までです。額を決めるのは審査の会議で、決まった額を算定表に入れるのは担当者です。

申請書の PDF はそのまま渡せます。 Claude の PDF の扱いを説明する公式のページでは、1回のリクエストは32MBまで、ページ数は600ページまで(コンテキストの長さが1M未満なら100ページまで)、パスワードや暗号化のかかったものは扱えないとされています。一方で、.xlsx のようなバイナリの形式はドキュメントのブロックで扱えず、テキストか PDF に変換する必要があるとされています。事業部の実績の報告は、Python で表を書き出してから渡します。

AIの出力は JSON で受けます。 Claude API の構造化出力は、output_config.format に JSON スキーマを渡すと、スキーマに合った JSON を返すとされています。取り出した値を検算に渡すには、項目の名前と数値の形が毎回同じであることが要ります。

03どうやって実装するのか

Step1

処理の起点を決める

事業部の窓口が、申請書と実績の報告をフォルダに保存したことを起点にします。 フォルダは事業部ごとに分け、ファイル名に特許の番号と実績期間を付ける取り決めにします。保存のたびに1件ずつ動かします。

これとは別に、毎月1日に「今月に実績期間が満了する特許」の一覧を作ります。 知財管理システムの登録日から機械的に出せるので、申請が届いていない特許を事業部の窓口に知らせられます。 申請を待つだけだと、実施が止まった特許と申請を忘れた特許の区別がつきません。

処理が終わった申請は「確認済み」へ移し、移すのは成功したときだけにします。同じ特許の申請が直して出し直されたときは、前回の指摘一覧と並べて判定します。

Step2

入力データを集める

データ中身取得元
申請書特許番号、実績期間、実施製品、売上高または実施料収入、実施料率、寄与度とその理由、発明者ごとの持分事業部のフォルダ
実施の実績の報告製品ごとの期間の売上高、ライセンス先からの実施料、製品と特許の対応事業部のフォルダ
特許の記録特許番号、登録日、発明者、持分、権利の状態(存続・消滅)知財管理システム
算定の細則算定式、技術分野ごとの実施料率の表、寄与度の考え方と例、複数の特許の分け方、上限額と下限額、版と改訂日知財部の文書
これまでの申請同じ製品・同じ期間のほかの特許の申請と、確定した寄与度過去の判定の保存先と算定表

質を決めるのは、4行目の細則の「寄与度の考え方と例」です。 寄与度の理由が足りているかを判定するには、何が書かれていれば足りるとするかの物差しが要ります。経験の長い担当者が過去の申請で認めた例と認めなかった例を、細則の付録として書き出します。

5行目のこれまでの申請は、重なりを見つけるために使います。 製品の型番と期間で引き、同じ製品に寄与度を主張している特許がほかにあれば、寄与度の合計を出します。 製品の名前の揺れを吸収するため、事業部ごとの製品の型番と商品名の対応表も用意します。

Step3

データの取得方法を決める

取るものどこから何に使うか
申請書のテキスト(または PDF)申請書のファイル値と根拠の記述の取り出し
実績の報告の表(位置付き)表計算のファイルを Python で書き出し売上高・実施料の照合
発明者と持分、登録日、権利の状態知財管理システムの書き出しまたは API発明者・持分・期間の照合
細則の版と、実施料率の表知財部の文書(機械で読める表にしたもの)実施料率の照合と算定式
同じ製品のほかの申請過去の判定の保存先重なりの検出

実績の報告の表は、「シート名・行・列」の位置を付けて書き出します。 AIが取り出した売上高が、報告のどのセルから来たかを機械で確かめるためです。位置が付いていないと、AIが別の製品の行や、税込の列を拾っても気づけません。

知財管理システムから API で引けない場合は、毎日1回、特許の一覧を書き出す運用でも足ります。 発明者と持分は頻繁には変わらないためです。ただし、権利の状態(消滅したか)は実績期間に関わるので、書き出しの日付を指摘一覧に表示します。

Step4

AIへ渡す前に整形する

  1. ファイルの確認 … 申請書と実績の報告の両方がそろっているかを見ます。片方だけなら事業部の窓口に戻します
  2. パスワードの確認 … パスワードのかかった PDF は扱えないため、外して保存し直してもらいます
  3. 表の書き出し … 表計算のシートを位置付きのテキストにします。隠しシートと非表示の列も書き出し、その旨を付けます
  4. 特許の記録の付与 … ファイル名の特許番号で知財管理システムの記録を引き、登録日から実績期間を出します
  5. 細則の版の選択 … 実績期間の始まりの日に有効だった細則の版を選びます
  6. 製品の名寄せ … 型番と商品名の対応表で、申請と報告の製品の名前をそろえます
  7. 同じ製品の申請の抽出 … 名寄せした製品と期間で、ほかの特許の申請を引きます

3番目の「隠しシートと非表示の列」を軽く見ないでください。 実績の報告には、税込と税抜の列、予算と実績の列が並んでいて、使わない列を非表示にしていることがあります。 書き出さないと、AIが表示されている列だけを見て別の数字を拾います。書き出したうえで、どの列を使うかを細則で決めておきます。

5番目は、規則で決めます。 細則は改訂されるため、どの版で算定するかを間違えると、実施料率の表そのものが違います。 申請書に版の記載が無くても、実績期間から機械的に選べます。

Step5

AIに処理させる

AIの仕事は2回に分かれます。 1回目は値と根拠の記述の取り出し、2回目は根拠の判定です。間にプログラムの照合と検算を挟みます。

1回目:取り出し

取り出すもの注意すること
申請書の売上高・実施料収入・実施料率・寄与度・持分・金額数字と単位(円・千円・百万円)を分ける。税込・税抜の別
実績の報告の、該当製品・該当期間の売上高と実施料位置(シート・行・列)を必ず付ける
実施製品と、その製品で特許のどの請求項が使われているかの説明原文をそのまま写す
寄与度の理由原文をそのまま写す
発明者の並びと、退職・異動の記載原文をそのまま写す

2回目:根拠の判定

見るもの判定の物差し
寄与度の理由細則の考え方に沿った要素(製品の機能のうち何を担うか、代わりの技術の有無、ほかの特許との分け方)が書かれているか
実施の説明製品のどの部分が、特許のどの請求項に当たるかが書かれているか
重なりのある製品の寄与度同じ製品のほかの特許との分け方が説明されているか
退職・異動した発明者の扱い細則の定めに沿った記載があるか

寄与度の数字が妥当かは判定させません。 判定するのは、理由として書くべき要素がそろっているかだけです。「30%は高すぎる」はAIの仕事ではなく、審査の会議の仕事です。

させないこと理由
報奨の金額の計算規程の算定式はプログラムで実行する。額の出どころを説明できるようにする
寄与度・実施料率の妥当な値の提案審査の会議が決める。AIの示した値が根拠なく採られる
相当の利益として適切かの判断法律上の判断。規程と手続きの全体で考えるもの
申請書の値を実績の報告で書き換える食い違いは差し戻しの理由として残す
発明者の追加・削除の提案発明者の認定は知財部と発明者の間で確かめること

4行目がいちばん起きやすい失敗です。 申請書の売上高と実績の報告が違うと、AIは親切に報告の値で「正しい売上高」を返します。それでは、事業部の窓口が何を誤ったのかが記録に残りません。 両方の値を並べて返させ、食い違いとして差し戻します。

Step6

指示内容を固定する

あなたは知財部で、職務発明の実績報奨の申請を確認する担当です。
渡された申請書、実績の報告(位置付きのテキスト)、細則だけを見てください。
推測で埋めないでください。

【1回目:取り出し】
- 申請書と実績の報告のそれぞれから、次の値を取り出してください。
  売上高、実施料収入、実施料率、寄与度、発明者ごとの持分、申請の金額
- 各値に、原文の引用(quote)と位置(loc)を付けてください。
  実績の報告の位置は「シート名!行!列」で書いてください。
- 単位(円・千円・百万円)と、税込・税抜の別を分けて返してください。分からなければ unknown。
- 申請書と実績の報告で値が違っても、どちらかに合わせないでください。両方を返してください。
- 計算をしないでください。合計や掛け算の結果を値として返さないでください。

【2回目:根拠の判定】
次の4つについて、sufficient / insufficient / not_applicable を付けてください。
  ① 寄与度の理由   ② 実施の説明(製品のどの部分が、どの請求項に当たるか)
  ③ 同じ製品のほかの特許との分け方   ④ 退職・異動した発明者の扱い
- 物差しは【細則の考え方と例】です。そこに無い基準を持ち込まないでください。
- insufficient のときは、細則のどの要素が書かれていないかを missing_elements に挙げてください。
- 寄与度や実施料率の数字が高い・低いと書かないでください。妥当な値を示さないでください。
- 相当の利益として適切かどうかを書かないでください。
- evidence には根拠にした原文をそのまま写してください。

【細則の版】{rule_version}
【細則の考え方と例】{rule_text}
【特許の記録】{patent_record}
【同じ製品のほかの申請】{related_claims}
【申請書】{application}
【実績の報告(位置付き)】{report_text}

「計算をしない」と「どちらかに合わせない」を1回目に書くのは、どちらもAIが自然にやってしまうからです。 売上高と実施料率が並んでいれば掛けたくなり、2つの数字が違えば正しそうなほうを選びたくなります。計算は規則の仕事、食い違いは人の判断の材料と分けます。

「数字が高い・低いと書かない」も明記します。 何も言わなければ、AIは過去の一般論で「寄与度30%はやや高い」と書きます。それが指摘一覧に載ると、審査の会議の前に額が決まったかのように受け取られます。

Step7

出力形式を固定する

1回目は次の形のJSONで受け取ります。

{
  "patent_no": "",
  "period": { "from": "", "to": "" },
  "values": [
    {
      "item": "sales | royalty_income | royalty_rate | contribution | share | amount",
      "inventor": "",
      "source": "application | report",
      "value": 0, "unit": "yen | thousand_yen | million_yen | percent",
      "tax": "excluded | included | unknown",
      "quote": "", "loc": ""
    }
  ],
  "products": [ { "name": "", "claims_mapping_quote": "" } ],
  "contribution_reason_quote": "",
  "inventor_notes_quote": ""
}

2回目は、4つの項目ごとに status・missing_elements・evidence を返します。

1つ目の理由は、source で申請と報告を並べられることです。 同じ item に application と report の2つの値があれば、プログラムが単位をそろえて比べ、違えば食い違いとして指摘します。

2つ目は、検算を規則で行えることです。 プログラムは取り出した値で次の照合と計算をします。

規則内容
売上高・実施料収入申請と実績の報告が、単位と税の別をそろえて一致するか
持分発明者ごとの持分の合計が100%か。知財管理システムの記録と一致するか
発明者申請の発明者の並びが知財管理システムの記録と一致するか
実施料率細則の該当の版の表で、その技術分野の率と一致するか
重なり同じ製品・同じ期間のほかの特許の寄与度との合計が、細則の上限を超えないか
金額規程の算定式で計算した額と、申請の金額が一致するか。上限額・下限額の適用
期間実績期間が登録日から出した期間と一致し、権利の消滅の後を含まないか

3つ目は、quote と loc で原文に戻れることです。 プログラムは loc の位置に quote があるかを照合し、無ければ「引用不一致」として担当者に回します。 金額に関わる数字なので、出どころを確かめられない値は検算に使いません。

Step8

システムへ連携する

つなぎ先方式内容
事業部ごとのフォルダPython がフォルダを見張る申請書と実績の報告の保存を検知する
知財管理システムAPI または毎日の書き出し登録日・発明者・持分・権利の状態を引く
Claude APIMessages API の呼び出し(2回)取り出しと根拠の判定
特許ごとのフォルダファイルの保存指摘一覧、検算の結果、差し戻しの文の下書き
事業部の窓口担当者のメール差し戻しは担当者が送る

知財管理システムと算定表には書き込みません。 発明者や持分の食い違いが見つかっても、記録を直すのは担当者で、発明者と事業部に確かめてからです。

差し戻しの文は下書きにとどめます。 事業部の窓口への連絡は担当者の名前で送ります。発明者への通知は、審査の会議で額が決まった後に、知財部の手続きとして行います。

Step9

人が確認する

知財の担当者が、指摘一覧の全件と、寄与度の理由の原文を見ます。

  1. 規則の指摘を先に見る … 売上高の食い違い、持分の合計、発明者の不一致、実施料率、金額の検算。loc の原文で、取り出しが正しかったかを確かめます
  2. 重なりの指摘を見る … 同じ製品のほかの特許との寄与度の合計。前の月に別の担当者が見た申請と重なっていないか
  3. 根拠の insufficient を見る … 細則のどの要素が書かれていないかを確かめ、差し戻すかを決めます
  4. 寄与度の理由は、指摘が無くても読む … 審査の会議で説明するのは担当者です
  5. 差し戻しの文の下書きを直して送る

審査の会議に回すときは、検算の結果と指摘一覧を資料に付けます。 会議で額を決めるのは人ですが、どの数字がどこから来たかが資料に残っていれば、決め方の説明ができます。

額が決まったら、発明者に知らせて意見を受け付けます。 特許法第35条第6項の指針では、意見の聴取について、一旦決定した相当の利益を与えた後に意見を求める場合や、一定期間意見を受け付ける制度が周知されている場合も、意見の聴取がなされたと評価されるとされています。意見が届いたときに答えられるよう、この構成のログを使います。

Step10

例外に対処する

起きること対応
申請書か実績の報告のどちらかが無い判定せず事業部の窓口に戻す
パスワード付きの PDF扱えないため、外して保存し直してもらう
ファイル名の特許番号が知財管理システムに無い判定の前に担当者に回す
実績期間に権利の消滅が含まれる期間の指摘として出し、消滅日の後の売上を分けるよう差し戻す
単位や税の別が unknown検算をせず、事業部の窓口に確かめる点として出す
quote が loc の位置に無い「引用不一致」としてその値を検算に使わない
同じ製品の申請がまだ届いていない特許がある重なりの判定を「保留」とし、毎月1日の一覧と突き合わせる
細則の改訂が実績期間の途中にある両方の版で検算し、両方を表示する
API が応答しないフォルダに残し、時間をおいて再実行。確認済みへ移すのは成功時だけ

7行目の「保留」は、重なりを見落とさないための扱いです。 同じ製品の別の特許の申請が翌月に届くことがあります。そのときに前の月の申請も一緒に見直せるよう、保留の印を残します。

Step11

記録を残す

  • 申請書と実績の報告の版ごとのファイルと、受け取った日時
  • 書き出した位置付きのテキストと、知財管理システムから引いた記録とその日付
  • Claude API の応答の JSON の全文と、使ったプロンプトの版
  • 検算に使った値、細則の版、算定式の版と、計算の結果
  • 担当者が差し戻した理由と、直って戻ってきた版
  • 審査の会議で決まった額と、その資料
  • 発明者への通知の日と、届いた意見とその答え

4つ目の「検算に使った値と版」が、この構成でいちばん大事な記録です。 報奨の額について発明者から質問や不服が届いたとき、どの数字に、どの版の算定式を当てたかを、その日のまま示せることが要ります。指針では、意見の聴取の対象となる意見に質問や不服等を含むとされています。

保存の期間は、知財部の文書の規程に合わせて決めてください。 実績報奨は特許の存続期間にわたって続くため、同じ特許の過去の算定と並べて見られる形で残します。

04実装レベルの3段階

最小構成:申請書と報告を手でAIの画面に添付し、値の表と根拠の判定を出させる / 1件ごとの取り出しと判定
半自動化:上記+Python で表の書き出しと知財管理システムの照合と検算を行い、Claude API で JSON を受ける / 値の取り出し、照合、検算、根拠の判定
本格構成:上記+フォルダの保存で自動実行、同じ製品の重なりの検出、毎月の満了一覧、差し戻しの文の下書き、ログ / 確認の全体と、申請の漏れと重なりの防止

最小構成では件数がさばけません。 1件ずつ添付して表を目で確かめるので、確かめるための段階です。 半自動化で、検算と照合の作業が指摘一覧を見る作業に変わります。 ただ、同じ製品のほかの申請はまだ担当者が算定表で探します。本格構成で重なりの検出と満了の一覧が加わり、この段階が本記事の想定です。 段階を飛ばさないでください。 半自動化を1か月回すと、事業部ごとの報告の様式の癖と、名寄せの対応表に足りない製品が分かります。そこを直してから重なりの検出を足さないと、同じ製品が別の名前で数えられ、重なりを見落とします。

05工数削減シミュレーション

前提値(モデル条件)
対象人数
3 名
月間件数
40 件
1件あたり現在時間
105 分
1件あたり導入後時間
30 分
現在  40件 × 105分 ÷ 60 = 70 時間/月
導入後 40件 × 30分 ÷ 60 = 20 時間/月
月間削減時間
50h
削減率
71%
年間削減時間
600h
年間金額換算(時間単価4,500円)
270万円
モデル条件による試算であり、実際の効果は業務内容・運用方法によって異なります。

自社条件で導入効果を整理したい方へ

このユースケースを自社に当てはめた場合の前提値と削減見込みを、業務ヒアリングをもとに整理します。

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06向いている企業・向いていない企業

向いている
  1. 職務発明規程に売上高や実施料収入の実績に応じた報奨(実績報奨)を定め、特許ごとの実績期間の満了に合わせて毎月申請を受け付けている製造業・ソフトウェア企業。事業部が出す実施の実績の報告と、申請に書かれた算定を、知財部の担当者が表計算で一から検算している場合。寄与度や発明者ごとの持分の根拠の書き方が事業部によってまちまちで、差し戻しが多い場合。
向いていない
  1. 職務発明規程の報奨が出願時・登録時の定額だけで、実績に応じた報奨が無い会社。実績報奨の申請が年に数件の会社。売上の実績を製品ごとに出せず、特許との対応が付けられない会社。なお、相当の利益として適切な額か、規程が不合理でないか、発明者の意見にどう答えるかの判断は、この構成では代替できません。

07最小構成で試す方法

  1. 過去1年の実績報奨の申請から15件を選ぶ(うち数件は、差し戻したもの、審査の会議で寄与度を直したものを入れる)
  2. 15件について、当時の差し戻しの理由と、審査の会議での修正を集める
  3. 申請書と実績の報告を PDF にして、手元のAIサービスに添付する
  4. 「この申請書と実績の報告から、売上高・実施料率・寄与度・持分・金額を、それぞれどこに書かれているかを引用して表にしてください。両者で値が違っても合わせないでください。計算はしないでください。寄与度の理由に、次の要素が書かれているかを判定してください(細則の要素を貼る)」と指示する
  5. 出てきた表を、当時の検算の表と、差し戻しの理由と突き合わせる

15件は必ずやってください。 検算のプログラムを書く前に、「AIが申請と報告から正しい数字を取り出せるか」を確かめます。 ここが崩れると、後ろの検算は正しく動いても誤った額を出します。

出てきた内容判断
数字の取り出しがほぼ正しく、根拠の判定が当時の差し戻しと近い位置付きの書き出しと検算の規則に進む
計算した値や、報告に合わせた値を返した指示の書き方で直る。構成は有効
根拠の判定が担当者の感覚とずれる細則の「寄与度の考え方と例」を先に書き出す

3行目はよく起きます。 失敗ではなく、寄与度の理由の物差しが細則になっていなかったということです。経験の長い担当者と、認めた例と認めなかった例を書き出してください。

08実装時につまずきやすいポイント

問題対策
AIが売上高に実施料率を掛けた値を返す指示で計算を禁じ、検算は規則で行う
申請と報告の違う値を、報告の値に合わせて返す両方を source 付きで返させ、食い違いとして指摘する
千円と円、税込と税抜を取り違える単位と税の別を分けて返させ、unknown は検算しない
非表示の列の数字を拾う・拾わない非表示の列も書き出し、使う列を細則で決める
同じ製品が別の名前で数えられる型番と商品名の対応表で名寄せする
重なりのある申請が別の月に届く「保留」の印を残し、翌月に一緒に見直す
細則の版を取り違える実績期間の始まりの日から版を機械で選ぶ
寄与度が高い・低いとAIが書く指示で禁じ、要素の有無だけを判定させる
算定式の書き間違いが全件に出る数か月は手の検算と並べて走らせる
発明者の並びが知財管理システムと違う記録を直さず、確かめる点として返す
権利の消滅の後の売上が含まれる登録日と権利の状態から期間を機械で出して照合する

上の3行が、この構成の信頼を決めます。 どれも「値の取り出し」の段階の誤りで、ここが崩れると、検算の規則が正しくても額が誤ります。 原文との照合と、単位と税の別の扱いを最初から入れてください。

下から3行目は、作る側の誤りです。 AIの誤りは1件ずつですが、算定式の書き間違いはすべての申請に同じ形で出ます。 並走の期間を省かないでください。

09セキュリティ・AIガバナンス上の注意点

この構成で扱うデータ: 製品ごとの売上高、ライセンス先と実施料の額、特許と製品の対応、発明者の氏名と持分、報奨の額です。営業秘密に当たる売上やライセンスの条件と、個人の報酬に当たる情報が同じ書類に並びます。

  1. 外部へ渡す範囲を決める … 売上やライセンスの条件は営業秘密に当たることがあります。API の利用条件とデータの取り扱いを、社内の情報管理の担当と確かめてから始めてください。 ライセンス先の名前は判定に要らないので、書き出しの段階で記号に置き換えられます
  2. 金額をAIに決めさせない … 特許法第35条は、職務発明について使用者等に権利を取得させた従業者等が相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有すると定めています。額は規程の算定式と審査の会議で決め、AIは値の取り出しと根拠の確認までにします
  3. 規程の不合理性の判断はこの構成の外にある … 同じ条文は、相当の利益の定めが、基準の策定に際しての協議の状況、基準の開示の状況、従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して不合理と認められるものであってはならないとしています。この構成は申請が規程どおりに算定されているかを見るもので、規程そのものが不合理でないかは見ません
  4. 意見を受け付ける手続きを止めない … 指針では、意見の聴取の対象となる意見に質問や不服等を含むとされ、共同発明の場合は共同発明者ごとに判断されるとされています。AIの判定や検算の結果を理由に、発明者の意見を受け付けないことがないようにします
  5. 発明者の個人の情報を広げない … 指摘一覧と検算の結果には、発明者ごとの報奨の額が載ります。保存先は知財部だけが開ける場所にし、事業部の窓口への差し戻しの文には額を書きません

誤りが起きた場合のリスクは、誤った額を発明者に支払うことと、正しい申請を誤って差し戻して通知が遅れることの2つです。 前者は規則の検算と原文との照合で減らし、後者は担当者が指摘を原文で確かめてから差し戻すことで防ぎます。

10まず何から始めるか

1週目:細則の「寄与度の考え方と例」を書き出す

経験の長い担当者と、過去の申請で寄与度の理由として認めた例と認めなかった例を書き出し、細則の付録にします。あわせて、実施料率の表と算定式を、機械で読める表にします。この付録は、AIを使わなくても事業部の窓口への説明に使えます。

2週目:15件で試す

過去の申請から15件を選び、手元のAIサービスで値の取り出しと根拠の判定をさせます。数字が原文と合っているか、計算した値や報告に合わせた値を返してこないかを最優先で見ます。

3週目:検算の規則を書く

規程の算定式、上限額・下限額、複数の特許の分け方、細則の版の切り替えを Python で書きます。過去の15件で、手の検算と一致するかを確かめます。

4週目:取り出しと検算をつなぐ

位置付きの書き出しと知財管理システムの照合をつなぎ、Claude API の取り出しから検算までを動かします。この時点では根拠の判定は出さず、数字の指摘だけを担当者が見ます。手の検算も並べて続けます。

2か月目: 根拠の判定と差し戻しの文の下書きを足し、製品の名寄せの対応表を事業部と作ります。3か月目以降: 同じ製品の重なりの検出と毎月の満了一覧を足し、1件105分が何分になったかを実測します。手の検算との一致が続き、手の検算をやめられた時点で、この構成は完成です。


11関連ユースケース

12この仕組みを理解するための記事

13技術仕様の確認日・参考情報

技術仕様確認日:2026-10-12/最終更新:2026-10-13
確認した内容情報源確認日
職務発明について使用者等に権利を取得させた従業者等が相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有すること。相当の利益の定めが、基準の策定の協議・基準の開示・意見の聴取の状況等を考慮して不合理と認められるものであってはならないこと。経済産業大臣が考慮すべき状況等の指針を定めることe-Gov 法令API: 特許法 第35条2026-10-12
特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)が平成28年4月22日に経済産業省告示として公表されたこと特許庁: 特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)2026-10-12
意見の聴取の対象となる意見に質問や不服等を含むこと。一旦決定した相当の利益を与えた後に意見を求める場合や、一定期間意見を受け付ける制度が周知されている場合も意見の聴取がなされたと評価されること。共同発明者ごとに判断されること。売上高等の実績に応じた方式で用いる資料の例(売上高に関する資料、ライセンス契約の概要と実施料、特許権の寄与度及びその根拠)特許庁: 特許法第35条第6項の指針(PDF)2026-10-12
output_config.format に JSON スキーマを渡すと、スキーマに合った JSON を返すことClaude: Structured outputs2026-10-12
PDF の上限が1リクエスト32MB、600ページ(コンテキストの長さが1M未満なら100ページ)で、パスワードや暗号化のあるものは扱えないこと。.xlsx などのバイナリの形式はドキュメントのブロックで扱えず、テキストか PDF に変換する必要があることClaude: PDF support2026-10-12

報奨の額と、規程が不合理でないかの判断は、知財部・法務・審査の会議で行ってください。 本記事は上記の公式ページで確認できた範囲だけを扱っています。

実装ステータス:構成例。 公開仕様に基づいて設計した構成であり、当社で実際に構築・検証したものではありません。工数の数値はモデル条件による試算です。

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