エグゼクティブサマリーはAIの要約と違う|決裁者の判断を先に置く型

「長い分析資料の1枚目は、AIに要約させれば数分でできる」「要約を貼って出したのに、経営会議で『で、何を決めればいいの』と聞き返された」。経営会議や稟議に分析・提案の資料を上げる経営企画やAI推進の担当者から、相前後して聞こえてくる2つの声です。前者の期待と後者のつまずきは、じつは同じ1つの思い込みから来ています。エグゼクティブサマリーは、本文を短くした要約ではありません。本当は、決める人がその場で判断できるように、本文を組み替えた1枚です。AIの要約は本文の順番と配分をなぞるので、求める判断が先頭に来ません。この記事では、誰が何を決める会議かを1行で書くところから、AIに渡す材料、下書き、本文との照合、落ちた条件の戻し方、人が言い切る範囲、読み手別の言い換えまでを、手順に沿って整理します。
カメ先生要約とエグゼクティブサマリーは、似ているようで向きが逆なんだ。要約は本文に忠実に縮める。エグゼクティブサマリーは、読む人が何を決めるかから逆算して組み立てる。
カメ子本文に忠実なほうが、正確な1枚になりそうに思えます。それでは足りないんですか。
カメ先生正確でも、判断に要る順に並んでいなければ、決める人は本文を読み直すことになる。AIは並べ替えや下書きは得意だけど、何を決めてほしいかは、本文のどこにも書いていないことが多いんだよ。
カメ子決めてほしいことは書く人が先に渡して、AIは組み立てを手伝う係、という分担なんですね。
- AIの要約は本文の順番と配分をなぞるため、求める判断・推奨案・選択肢が先頭に来ない
- 先に「誰が何を決める会議か」を1行で書き、決めてほしいこと・選択肢・数字と出典を分けてAIに渡すと、判断の形の下書きになる
- 抜き出し・下書き・食い違いの指摘はAI、求める判断・推奨案・数字の確定・言い切る範囲・出すかどうかは人が決める
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要約とエグゼクティブサマリーは、向きが逆
要約は、本文の内容を短くまとめたものです。本文に何が書いてあるかを、本文の順番と比重を保ったまま縮めるのが良い要約とされます。一方、エグゼクティブサマリーは、経営層や決裁者が本文を読まずに判断できるよう、資料の冒頭に置く1枚です。基準は本文ではなく、読む人がこの場で何を決めるかにあります。
違いは並び順に表れます。たとえば、ある分析資料が「背景、調査の方法、結果、考察、提案」の順に書かれているとします。要約は同じ順番で縮めるので、提案は最後の数行に来ます。エグゼクティブサマリーはその逆で、「お願いしたい判断」「推奨する案」「その根拠」「ほかの選択肢」「危うさと条件」を先に置き、背景や方法は必要な分だけ後ろに回します。
比重も変わります。本文で10ページを使った調査の方法は、要約では大きな割合を占めますが、エグゼクティブサマリーでは1行か、まったく載らないこともあります。逆に、本文では付録の1表にすぎない費用の試算が、判断に直結するなら1枚目の中心に来ます。要約は本文に従い、エグゼクティブサマリーは判断に従う。この差が、AIに任せられる所と任せられない所を分けます。
どちらが上という話ではありません。要約が向いているのは、読む人が本文を読むかどうかを決めたいときや、会議の記録を欠席者に共有するときです。判断を求める場で要約のまま出すと、決める人が本文に戻って自分で組み替えることになり、1枚目を付けた意味がなくなります。出す場が判断の場かどうかで、どちらを書くかが決まります。
AIに「要約して」と頼むと、判断の形にならない理由
生成AIに長い資料を渡して要約を頼むと、多くの場合、本文の章立てに沿った整った縮約が返ってきます。これはAIの誤りではなく、要約という指示に忠実に応えた結果です。本文に何がどれだけ書かれているかを手がかりに縮めるので、分量の多い章が大きく残り、本文の最後にある提案は短く扱われがちです。
2つ目の理由は、求める判断が本文に書かれていないことです。分析資料の多くは「何が分かったか」で終わり、「この会議で何を決めてほしいか」は、説明する人の頭の中か、会議の招集の連絡にしかありません。本文に無いものを、AIは要約に入れようがありません。推測で補わせると、もっともらしい判断事項を作り出すおそれがあります。
3つ目の理由は、要約が中立に寄ることです。AIは複数の案を公平に並べる書き方をしやすく、どれを推すかを自分からは言い切りません。言い切らせることもできますが、それは推奨案の選択をAIに任せることになります。判断を求める1枚では、推す案を決めるのは書く側の責任であり、AIにその役を渡すべきではありません。
つまり「要約して」の一言で1枚目を作ろうとすると、順番・材料・立場の3つが欠けます。これを補うのが、次の7つの手順です。AIが主に働くのは下書きと点検で、人は最初の1行と、戻す・言い切る・出すの判断を持ちます。
AIを開く前に、人が書きます。決める人・場・決めることを1文にします。
決めてほしいこと・選択肢・数字と出典の3つを、本文とは分けて用意します。数字の抜き出しはAIに任せ、人が確かめます。
5つの部品の枠を渡し、本文の順番ではなく枠の順番で書かせます。推奨案は人が先に決めて渡します。
新しい会話で、下書きと本文を並べて渡し、数字と条件のずれを候補として挙げさせます。
落ちたものを、推奨案の横、選択肢の欄、数字の直後に戻します。どこを削って枠を空けるかは人が決めます。
根拠の確かさに合わせて、文末の強さと危うさの書きぶりを人が決めます。
言い回しと並びの言い換えはAIの下書きで。求める判断・推奨案・数字は動かしません。
この記事が扱う1枚と、扱わない文書
本稿が扱うのは、経営会議や稟議に上げる分析・提案の資料の1枚目です。たとえば、施策の効果の分析をもとに来期の予算の配分を変える提案、業務へのAIの導入範囲を広げる提案、調査の結果を受けて取引先を絞る提案などです。読み手は本文を読む時間が限られた経営層や決裁者、書き手は経営企画、AI推進、情報システム、マーケティングなどの担当者を想定しています。
扱わないものもあります。投資家や金融機関に出す事業計画書の冒頭、英文の報告書の書式、就職活動や学校の課題の文書は、読み手と目的が違うため本稿では触れません。また、報告の中身、たとえばマーケティングの数字のうち何を経営に見せるかは別の記事「経営層への報告は何を見せる?」に、AIの利用状況や導入の成果の報告項目は「経営層にAIの利用を報告する5項目」「AI導入の成果を経営に報告する5項目」にまとめています。
企画書全体の組み立てや想定問答の作り方は、別の記事「決裁が通る企画書をAIで作る5工程」で扱っています。本稿は、それらの記事が1節ずつ触れている「1枚にまとめる」部分を文書の型として取り出し、AIの要約との違いと、AIへの渡し方に絞って掘り下げます。報告の中身ではなく、どんな中身でも使える1枚目の組み立て方の話です。
読む側の視点、つまりAIの要約で何が落ちるかを見つける照合の手順は、別の記事「AIの要約は読んだことにならない」にあります。本稿は書く側の記事です。受け取った要約を疑う手順ではなく、自分が出す1枚を判断の形に組み替える手順を扱います。
1枚目に置く5つの部品
エグゼクティブサマリーの書き方には、書籍やコンサルティング会社ごとにさまざまな流儀があります。本稿では特定の流儀によらず、判断を求める1枚に共通する部品を5つに絞ります。求める判断、推奨案、根拠、ほかの選択肢、危うさと条件です。
結論を先に置く考え方は、行政の文書の手引にも書かれています。文化審議会が2022年1月に建議した「公用文作成の考え方」は、文書の構成について「結論は早めに示し、続けて理由や詳細を説明する」とし、解説で、文書の結論はできれば最初の段落で示し、最後まで読まないと何を言おうとしているか分からない書き方は避けるよう求めています。社内の1枚にもそのまま当てはまる考え方です。
| 部品 | 書く中身 | AIの要約に出やすいか | 下書きと決定 |
|---|---|---|---|
| 求める判断 | この会議で決めてほしいことを1文で | 出にくい(本文に無いことが多い) | 人が書く |
| 推奨案 | 推す案と、一言の理由 | 出にくい(中立に並べやすい) | 下書きはAI、選ぶのは人 |
| 根拠 | 推す理由になる数字と事実、その出典 | 出やすいが、母数が落ちやすい | 抜き出しはAI、確定は人 |
| ほかの選択肢 | 退けた案と、退けた理由 | 本文にあれば出る | 下書きはAI、採否は人 |
| 危うさと条件 | 推奨案が成り立つ前提と、外れたときの影響 | 落ちやすい | 洗い出しはAI、書きぶりは人 |
表のとおり、AIの要約で自然に出てくるのは根拠の部分くらいで、求める判断と推奨案は出にくい部品です。1枚目の上の段ほど、人が書く割合が大きいと覚えておくと、AIに何を任せるかを決めやすくなります。下の段の根拠や選択肢は、材料さえ渡せばAIの下書きがよく働く所です。
- 「公用文作成の考え方」(文化審議会建議、令和4年1月7日)の「文書の構成」の項と、その解説に基づきます
- 行政の文書のための手引であり、社内の1枚への当てはめは本稿の解釈です
手順1:誰が何を決める会議かを1行で書く
最初の手順は、AIを開く前に行います。誰が、どの場で、何を決めるかを1行で書きます。たとえば「来週の経営会議で、社長と担当役員が、問い合わせ対応へのAIの導入を全拠点に広げるかを決める」。この1行が、以降のすべての手順の物差しになります。
1行に書けないときは、資料の側に問題があることが多いものです。決めてほしいことが2つ以上混ざっている、決める人がはっきりしない、そもそも報告であって判断を求めていない、といった状態です。報告のための資料なら、エグゼクティブサマリーではなく要約で足ります。判断を求めるのか、知らせるだけなのかを、ここで切り分けます。
決めてほしいことが複数ある場合は、優先する1つを先頭に置き、残りは「あわせてお願いしたいこと」として下に分けます。1枚の中に同じ重さの判断事項を並べると、会議では議論しやすい方から話が進み、本当に決めたかったことが次回に回されがちです。
この1行はAIに作らせません。会議を招集した目的や、事前に上席と話した内容は、本文に書かれていないことが多いからです。AIに本文から判断事項を推測させると、本文の中で目立つ論点を拾うだけで、会議で本当に決めたいことと、本文で目立つ論点は一致しないことがよくあります。
手順2:AIに渡す材料は3つに分けて渡す
次に、AIに渡す材料をそろえます。本文の全文に加えて、3つを分けて渡します。1つ目は手順1の「決めてほしいこと」、2つ目は「選択肢」、3つ目は「数字と出典」です。本文だけを渡すと、AIは本文の比重に引きずられます。分けて渡すことで、判断に効く材料を本文の比重から切り離せます。
選択肢は、推奨案だけでなく、退けた案も含めて書き出します。「全拠点に広げる」「2拠点で半年続けて判断を先送りする」「今回は見送る」のように、現実に取りうる案を並べます。退けた案を渡さないと、AIの下書きは推奨案の説明だけになり、決める人から「ほかに手はないのか」と問い返されます。
数字と出典は、本文中の数字のうち判断に効くものを抜き出し、それぞれに出典と時点、母数を添えた一覧にします。この抜き出し自体はAIに任せられます。本文を渡して、判断に関わる数字を出典のページ・時点・母数と一緒に表にするよう頼み、人が本文と照らして確かめます。確かめ終えた一覧だけを、下書きの段階で使わせます。
社外秘の数字や個人が分かる情報を含む資料をAIに渡す場合は、社内で利用が認められた環境かどうかを先に確かめます。経営会議の資料には未公表の業績や人事が含まれることも多く、渡してよい環境かの確認は、材料をそろえる前に済ませるのが順序です。
手順3:判断の形で下書きさせる
材料がそろったら、AIに下書きを頼みます。要点は、「要約して」ではなく、5つの部品の枠を先に渡して埋めさせることです。枠を渡すと、AIは本文の順番ではなく枠の順番で書きます。指示の例は次のとおりです。
あなたは経営会議の資料の1枚目を下書きする担当です。
次の枠の順に、本文と材料から書いてください。
・この会議で決めてほしいこと:(材料1をそのまま使う。書き換えない)
・推奨する案:(材料2のうち、印を付けた案。理由を1文で)
・根拠:(材料3の数字だけを使う。数字には出典の番号を付ける)
・ほかの選択肢と退けた理由:(材料2の残りの案)
・危うさと条件:(推奨案が成り立つ前提と、外れたときの影響)
守ること
・材料3に無い数字は書かない。必要なら「要確認」と書く
・本文に無い事実を足さない
・各文の末尾に、根拠にした本文のページを括弧で書く
・全体を400字程度に収める
この指示で大事なのは、推奨案を人が先に決めて渡していることです。どの案がよいかをAIに考えさせると、AIは本文の論調から推奨案を選んでしまいます。下書きに入る前に、推す案に印を付けて渡します。推す案がまだ決まっていないなら、それは1枚目を書く段階ではなく、案を検討する段階です。
分量の上限も指示に入れます。前出の「公用文作成の考え方」は、文書を何文字・何ページにするかを決めてから書き始めるよう勧めています。1枚目の上限を先に決めて渡すと、AIは上限に収めるために材料を取捨します。ただし、その取捨で何を落としたかは、後で必ず確かめます(手順5)。
下書きは1回で決めず、2〜3通り出させて見比べるのも有効です。同じ材料から、言葉の選び方や部品の分量が違う案が出るので、決める人に伝わる言い回しを選べます。ただし、案ごとに根拠の数字が変わっていないかは確かめます。言い回しの違いに紛れて、数字が丸められていることがあるからです。
手順4:本文との食い違いをAIに指摘させる
下書きができたら、別の依頼として、下書きと本文の食い違いをAIに洗い出させます。下書きを書かせたのと同じ会話の中で頼むと、直前に書いた文を前提に読みやすくなるため、新しい会話で、下書きと本文を並べて渡すのが確実です。頼む点検は次の4つです。
- 下書きの数字が、本文のどのページのどの数字と一致するか。一致しない数字はどれか
- 下書きの主張のうち、本文に根拠が見当たらないものはどれか
- 本文では条件付きで書かれているのに、下書きでは条件が外れているものはどれか
- 本文にあるのに下書きに無い記述のうち、判断を変えうるものはどれか
AIの指摘は候補として扱い、1件ずつ本文で確かめます。点検するAIも見落としや誤った指摘をします。とくに、本文の表やグラフの中にしかない数字は、読み取りを誤ることがあります。数字の照合は、最後は人が本文の該当ページを開いて目で合わせる手順にしておきます。
指摘の中で多いのは、丸めと言い換えです。「約3割」が本文では「27パーセント」、「大幅に改善」が本文では「前年より4ポイント改善」といった具合です。丸めた方が読みやすい場合もありますが、決める人が本文の数字で問い返すこともあるので、1枚目と本文の数字はそろえておくのが無難です。
4つ目の点検、つまり本文にあって下書きに無い記述の洗い出しは、次の手順5の入口になります。ここで挙がった候補を、判断を変えうるかどうかで人が仕分けし、変えうるものだけを戻す対象にします。全部を戻すと、1枚目は本文の要約に逆戻りします。
手順5:落ちた条件・反対意見・母数を戻す
AIの下書きは、分量の上限に収めるために、条件や例外、少数意見、数字の母数を落としがちです。どんな情報がどう落ちるかの型と、読む側の照合の手順は、別の記事「AIの要約は読んだことにならない」で整理しています。本稿では書く側として、落ちたものを1枚のどこに戻すかを扱います。
条件は、推奨案のすぐ横に戻します。「全拠点に広げる。ただし、問い合わせの分類の精度が今の水準を保てることが前提」のように、推奨と前提を1文の中で切り離さない書き方にします。危うさの欄にまとめて書くと、推奨案だけが読まれ、前提は読み飛ばされます。
反対意見は、ほかの選択肢の欄に戻します。検討の過程で出た「現場の負担が先に増える」「費用の回収が見通せない」といった意見は、退けた案の理由と対にして書くと、決める人が「反対はなかったのか」と問い返す手間が省けます。反対意見を消した1枚は読みやすくなりますが、会議で反対が出たとき、1枚目の信用ごと崩れるおそれがあります。
母数は、数字の直後に戻します。例として「満足度が8割」ではなく「導入した2拠点の利用者120人のうち8割」のように、何人・何件・どの期間の数字かを添えます。戻すと字数が増えるので、背景の説明を削って枠を空けます。何を削るかの判断は人が行い、AIには削る候補を挙げさせる程度にとどめます。
手順6:言い切る範囲は人が決める
1枚目の言葉の強さは、決める人の判断に直接響きます。「効果が見込まれる」と「効果がある」、「危うさは小さい」と「危うさは現時点で確認されていない」では、同じ事実でも受け取られ方が違います。どこまで言い切るかは、書く人が責任を持って決める範囲です。
AIの下書きは、言い切りが強すぎるか弱すぎるかのどちらかに寄りやすい傾向があります。根拠の数字が少なくても滑らかに断定することもあれば、留保を重ねて何も言っていない文になることもあります。人は根拠の確かさに合わせて文末を選び直します。実測した事実は言い切り、試算や見込みは前提とともに書き、分からないことは分からないと書きます。
危うさの書きぶりは、とくに慎重に扱います。危うさを小さく書けば通りやすくなりますが、後で問題が出たときに「1枚目には書いていなかった」と問われます。逆に、思いつく危うさをすべて並べると、決める人は判断できません。判断を変えうる危うさを2〜3に絞り、それぞれに起きたときの対応を1行添えるのが、通すためでも止めるためでもない書き方です。
言い切る範囲の決定は、できれば資料の責任者や上席にも確かめます。1枚目は本文以上に引用され、議事録や次の会議の資料にそのまま転記されます。誰が言い切りを決めたのかを残しておくと、後で問われたときに経緯をたどれます。
手順7:読み手別の言い換えはAIに、判断事項は動かさない
同じ提案を、経営会議、稟議の決裁者、関係部門の長と、複数の読み手に出すことがあります。読み手によって知っている前提や気にする点が違うため、1枚目の言い回しを変えたくなります。この言い換えの下書きは、AIの得意な作業です。
たとえば経営会議向けには事業への影響と費用を前に出し、稟議の決裁者向けには規程上の承認の根拠と金額を前に出し、関係部門向けには業務がどう変わるかを前に出す、といった言い換えです。AIには元の1枚と読み手の立場を渡し、求める判断・推奨案・数字は変えずに、言い回しと並びだけを変えるよう指示します。
守るべき線は、読み手が変わっても、求める判断と推奨案と数字は同じであることです。読み手に合わせて推奨案を変えたり、相手によって危うさを薄めたりすると、後で資料どうしを突き合わされたときに説明がつきません。言い換えた版ができたら、手順4と同じ要領で、元の1枚との食い違いをAIに洗い出させます。
専門用語の置き換えも言い換えの一部です。技術の用語や部門内の略語は、読み手に合わせて日本語の説明に直します。AIは置き換えの候補を出すのが得意ですが、置き換えた結果、意味が広がったり狭まったりしていないかは人が確かめます。金額や期間の言い換えでは、税込みか税抜きか、年度か暦年かがずれやすいので注意します。
BIツールの自動サマリーは、材料として使う
BIツールにも、生成AIでダッシュボードのサマリーを作る機能が入り始めています。たとえばアマゾンウェブサービスのBIの「クイックサイト」(現在の公式ドキュメントでは「アマゾン・クイック」の一部として案内されています)には、ダッシュボードのエグゼクティブサマリーを生成する機能があります。公式ドキュメントによれば、サマリーはダッシュボードに対して提案されたインサイト(データから見つかった傾向)をもとに作られ、利用者がグラフから自分でデータを探さなくても、重要な点を一目でつかめるようにするものです。
同じドキュメントには、分析に複数のインサイトが提案されている場合に最も効果的であること、ダッシュボードを公開する画面でエグゼクティブサマリーを許可する設定をオンにする必要があることも書かれています。使えるかどうかは自社の契約や設定によって変わるので、管理者に確かめてください。
この種の機能が出すのは、名前はエグゼクティブサマリーでも、中身はデータから何が見つかったかの要約です。何を決めてほしいか、どの案を推すかは、ダッシュボードの中には無いからです。したがって本稿の手順では、手順2の「数字と出典」の材料として使うのが向いています。見つかった傾向の中から判断に効くものを人が選び、出典としてダッシュボードの名前と時点を添えます。
ほかのBIツールにも似た機能はありますが、名称や提供の範囲は製品ごとに異なり、変わることもあります。どの製品でも、自動のサマリーを1枚目としてそのまま貼らず、見つかったことと、決めてほしいことを分けて書くという線は同じです。
- 機能の説明は、アマゾンウェブサービスの公式ドキュメント「エグゼクティブサマリーを生成する」(2026年10月2日に確認)に基づきます
- 前提となるライセンスや役割は同ページに記載がないため、利用前に公式の料金・権限の案内を確かめてください
AIに任せる所と、人が決める所
ここまでの手順を、AIに任せる所と人が決める所に分けて整理します。
| 作業 | AIに任せる | 人が決める |
|---|---|---|
| 決めてほしいことの1行 | 任せない | 誰が何を決める会議かを書く |
| 材料の抜き出し | 判断に効く数字を出典・時点・母数つきで表にする | 表の数字を本文で確かめる |
| 下書き | 5つの部品の枠を埋める、言い回しを2〜3通り出す | 推奨案を先に決めて渡す |
| 食い違いの点検 | 本文と下書きの食い違いを候補として挙げる | 候補を本文で1件ずつ確かめる |
| 落ちたものを戻す | 落ちた条件・反対意見・母数と、削る候補を挙げる | どこに戻し、何を削るかを決める |
| 言い切りと危うさ | 強すぎる断定・弱すぎる留保の箇所を指摘する | 文末の強さと危うさの書きぶりを決める |
| 読み手別の版 | 言い回しと並びを言い換える | 判断・推奨案・数字が同じかを確かめる |
| 出すかどうか | 任せない | 責任者が出すかどうかを決める |
表のとおり、AIの役割は、抜き出す、下書きする、食い違いを指摘する、の3つにまとまります。求める判断、推奨案、数字の確定、危うさの書きぶり、言い切る範囲、出すかどうかの6つは、人が決めます。
6つをAIに渡さない理由は共通しています。どれも、決めた後に「なぜそう書いたのか」を問われる事柄だからです。1枚目は会議の後も議事録や次の資料に引用され、判断の根拠として残ります。その文の責任を負えるのは、書いた人と、出すと決めた責任者だけです。
逆に言えば、6つを人が持っていれば、残りの作業はAIに大きく任せられます。本文から数字を抜き出して出典を添える作業や、本文との照合は、人が行うと時間がかかり、漏れも出やすい作業です。判断を人に残し、抜き出しと照合をAIに渡すことで、1枚目の確かさと作る速さを両立できます。
1枚目でやりがちな失敗
AIで1枚目を作るときによく起きる失敗を5つにまとめます。どれも手順のどこかを飛ばしたときに起きます。
- 本文の要約をそのまま1枚目にする:求める判断が無く、会議の冒頭で「で、何を決めるの」と聞き返される
- 推奨案をAIに選ばせる:本文の論調に沿った案が選ばれ、検討の中で退けた理由と食い違う
- 材料に無い数字を下書きに残す:AIが補った数字や丸めた数字が、本文と合わない
- 危うさの欄を空けるか、並べすぎる:通りやすさを優先して削るか、全部を載せて判断できなくする
- 読み手ごとに推奨案を変える:版どうしを突き合わされたときに説明がつかない
5つの失敗のうち、最初の2つは手順1と手順3で、3つ目は手順4で、4つ目は手順5と手順6で、5つ目は手順7で防げます。出す前にこの5つを1回ずつ確かめるだけでも、会議での聞き返しは起きにくくなります。
もう1つ見落とされやすいのが、1枚目と本文の更新のずれです。会議の直前に本文の数字を直したのに、1枚目が古いまま残ることがあります。本文を直したら1枚目も手順4の点検をやり直す、と決めておきます。AIでの点検は短い時間で済むので、直すたびに回しても大きな負担にはなりません。
よくある質問
エグゼクティブサマリーの長さはどれくらいが適切ですか?
決まった長さはありません。会議の性格と読み手の時間で決めます。目安として、決める人が会議の冒頭の数分で読み切れる分量に収め、それを超える説明は本文に回します。大事なのは長さそのものより、書く前に上限を決めて、それを守ることです。
AIに推奨案を選ばせてはいけないのですか?
案を比べる観点や、それぞれの長所と短所を整理させるのは有効です。ただし、どれを推すかは書く側が決め、その理由を自分の言葉で書きます。AIが選んだ案を推奨として出すと、会議で理由を問われたときに答えられません。
要約とエグゼクティブサマリーは両方付けるべきですか?
判断を求める資料なら、1枚目はエグゼクティブサマリーにし、本文が長い場合は目次や章ごとの短い要約を本文の側に付けるのがよいでしょう。判断を求めない報告なら、要約だけで足ります。
BIツールが自動で作るサマリーをそのまま使えますか?
そのまま1枚目にするのは勧めません。自動のサマリーはデータから見つかった傾向の要約で、求める判断や推奨案は含みません。数字と出典の材料として使い、判断の部分は人が書き足してください。
まとめ
エグゼクティブサマリーは、本文を短くした要約ではなく、決める人が判断できるように本文を組み替えた1枚です。AIに要約を頼むと、本文の順番と比重をなぞるため、求める判断・推奨案・選択肢が先頭に来ません。まず誰が何を決める会議かを1行で書き、決めてほしいこと・選択肢・数字と出典を分けてAIに渡し、5つの部品の枠で下書きさせます。新しい会話で本文との食い違いを指摘させ、落ちた条件・反対意見・母数を戻し、読み手別の言い換えでも判断事項は動かしません。求める判断、推奨案、数字の確定、危うさの書きぶり、言い切る範囲、出すかどうかの6つは、人が決めてください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
AI活用を戦略に落とす前に、まずは導入・定着から始めませんか?
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