ペーパーレスは全部やめる話ではない|残す紙とやめる紙の線

ペーパーレスは全部やめる話ではない|残す紙とやめる紙の線

「ペーパーレスを進めろと言われて、まず何を捨てるかから考えて止まりました」「請求書は電子で届くようになったのに、棚の紙はほとんど減っていません」——紙をやめる担当を任された方から、着手して数か月のころに届く声です。止まる場所はたいてい同じで、捨ててよい紙と捨ててはいけない紙の境目が引けない、というところです。ペーパーレスは紙をゼロにする取り組みではなく、残す紙とやめる紙の線を引き、やめると決めた紙が戻らない形を作る取り組みです。この記事では、紙が残る4つの理由の分け方と、やめる順番の決め方を整理します。


カメ先生カメ先生

ペーパーレスは紙を全部なくすことだと思われがちだけれど、本当は、どの紙を残すかを決めるほうが先なんだ。残す紙が決まらないと、やめる紙も決まらない。


カメ子カメ子

残す紙を決めるというのは、捨てられない紙を諦めるということですか。


カメ先生カメ先生

諦めるのとは少し違うんだよ。紙が残っている理由は一つではなくて、法令で要るものと、相手の都合で来るものと、現場で紙のほうが速いものと、ただの習慣が混ざっている。理由が違えば、打つ手も変わるんだ。


カメ子カメ子

同じ棚に並んでいる紙でも、残っている理由は別々ということでしょうか。


この記事のポイント
  • 紙が残る理由を4つに分ける。法令・相手の都合・現場の速さ・慣性で、打ち手も順番も変わる
  • 紙を捨ててよくなるのは読み取った時点ではなく、制度の条件を満たした時点
  • 目的は紙をゼロにすることではなく、必要なものを探せる状態にすること

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目次

「全部やめる」と決めた計画が、3か月目に止まる場所

紙をやめる計画は、たいてい勢いよく始まります。棚を数え、複合機の台数を数え、印刷枚数の目標を立てる。ところが3か月ほどで動きが鈍ります。止まるのは捨ててよいかどうかを1枚ずつ判断しはじめた瞬間です。判断の基準が無いので、迷った紙が全部「とりあえず残す」に流れ、棚の量は変わりません。

基準が無いまま進めると、もう一段悪い結果になることもあります。捨ててよい条件を満たさないまま原本を捨ててしまい、後から必要になったときに再発行も再取得もできない、という形です。相手の押印がある書類、官公庁の受付が済んでいる書類、何年も前の取引の控えは、頼んでもう一度出してもらうことができません。紙を減らす取り組みの失敗は、減らなかったことよりも、残すべきものを失ったことのほうが重いのが実情です。減らす速さを競う計画ほど、この失敗を起こしやすくなります。

この記事で提案する順番は単純です。先に、いま棚にある紙が「なぜ残っているのか」を4つに分けます。分けたうえで、4つのそれぞれに違う打ち手を当てます。目標の枚数を決めるのはその後でも遅くありません。

紙が残る理由は4つある。混ぜて数えると打ち手が決まらない

棚に並んでいる紙は、見た目には同じ紙の束です。ところが残っている理由は4つに分かれます。法令で要る紙、相手が紙で出してくる紙、現場で紙のほうが速い紙、そして慣性だけで残っている紙。この4つは、決める人も、掛かる時間も、やめられるかどうかも違います。

混ぜたまま数えると、打ち手が1つに丸められます。よくあるのが「全部を電子化する」と「全部を残す」の二択になってしまう形です。実際には、法令で要る紙は条件を満たせば電子にできることが多く、相手の都合で来る紙は交渉の期間が要り、現場の速さの紙は代わりの道具が要り、慣性の紙は今日やめられます。同じ棚の紙でも、やめるのに要る時間は今日から半年まで幅があるということです。

分け方は厳密でなくて構いません。1枚ずつ見るのではなく、書類の種類ごとに4つのどれかを当てます。どれか迷う書類は、いったん「法令で要る」の側に置いてから、後で確かめます。迷ったら安全側に寄せる、という原則を先に決めておくと、作業が止まりません。分けるのに使う時間は、棚1つ分でおおむね半日から1日です。ここを飛ばして先に目標枚数を決めた計画は、ほぼ確実に途中で組み直すことになります。

4つの理由を1枚で見て、扱いを変える

4つの理由を並べると、打ち手が自然に分かれます。表の右端——誰と話をつけるか——が、実務ではいちばん効きます。ここが自分の部署の中で完結するかどうかで、着手の順番が決まるからです。

紙が残る理由見分け方扱い方話をつける相手
法令で要る保存の義務が法令や規則で決まっている電子にできる条件があるかを先に調べる経理・法務・税理士
相手が紙で出してくる自社ではなく取引先や官公庁から紙で届く受け取り方を変える交渉と、届いた紙の扱いを分ける取引先の担当・調達
現場で紙のほうが速い使う場所と使い方に理由がある速さの正体を分けて、代わりの道具を当てるその現場の担当
慣性で残っている誰も理由を説明できない止めてみて、困った人が出るかを見る自部署の中で完結する

表の上から下へ向かうほど、決めるのが簡単になります。ところが着手はたいてい上から始まります。法令の確認から入ると、調べ物が終わるまで一枚も減りません。手を動かす順番と、調べる順番は分けたほうが進みます。

理由1:法令で要る紙——国が用意した3つの区分を先に当てる

経理まわりの紙については、国税庁が制度を3つに区分して示しています。電子帳簿等保存【希望者のみ】、スキャナ保存【希望者のみ】、電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要】の3つです(令和8年6月のパンフレット)。最初に押さえるのは、3つのうち2つは任意で、1つだけが義務だという点です。

電子帳簿等保存は、帳簿や書類を最初の記録段階から一貫して機械で作っている場合に、その電子データの保存をもって紙の保存に代えられる制度です(電子帳簿保存法4)。スキャナ保存は、紙で受け取った書類を読み取った電子データの保存に代えられる制度です(同4)。どちらも希望者のみなので、やらないという選択も、制度の上では正しい選択です

義務なのは3つ目、電子取引です。所得税および法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合、その取引情報に係る電子データを保存しなければならないとされています(同7)。電子取引とは、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などに通常記載される事項を、電子的な方法でやり取りする取引です(同2五)。電子で届いたものを印刷して紙で保存する運用は、この制度の下では通りません。ここは保存の要件が細かいので、別記事に譲ります。

紙のまま残る書類がある——決算関係書類はスキャナ保存の対象外

スキャナ保存には対象から外れる書類があります。国税庁の説明では、対象は「国税関係書類(財務省令で定めるものを除く)」であり、除かれるものとして棚卸表、貸借対照表及び損益計算書、ならびに計算・整理または決算に関して作成されたその他の書類が定められています(電子帳簿保存法規則2)。パンフレットでも、対象書類の説明に「決算関係書類を除く国税関係書類」と明記されています。

つまり、紙で作った決算関係の書類は、読み取っても紙の保存に代えられません。ここが「法令で要る紙」の中でも、いちばん確実に残る紙です。逆に言えば、契約書・見積書・注文書・納品書・検収書・請求書・領収書といった日々の書類は、条件を満たせば読み取った電子データに代えられます。なお、決算関係の書類でも、最初の記録段階から一貫して機械で作っているものは、読み取りの制度ではなく電子帳簿等保存の側の話になります。紙に出力してから読み取り直す形にしないこと、と覚えておけば足ります。

この線を先に引いておくと、棚の中身の見え方が変わります。残ると決まっている紙が少量に絞られ、残りは「条件を満たすかどうか」の話になるからです。捨てられない紙は思ったより少なく、条件を満たしていない紙のほうがはるかに多い、というのが実際に分けてみたときの典型的な結果です。

「紙を捨ててよい」は、読み取った時点では決まらない

読み取れば紙を捨てられる、と理解されていることがありますが、正確ではありません。国税庁のパンフレットは「読み取った後の紙の書類を廃棄できる」と書いていますが、それはスキャナ保存のルールを満たして保存した場合の話です。捨ててよくなるのは、読み取った時点ではなく、条件を満たした時点です。条件は次のとおりに整理されています。

決めること重要書類(契約書・納品書・請求書・領収書など)一般書類(見積書・注文書・検収書など)
入力の期限作成または受領から速やか(おおむね7営業日以内)、または業務処理サイクル(最長2か月以内)の経過後に速やか入力期間の制限なしも選べる
読み取りの質解像度200dpi相当以上/赤・緑・青がそれぞれ256階調以上白黒の階調での読み取りも選べる
改ざんへの備え期限内のタイムスタンプ、または保存した日時を確認できる仕組み同左
訂正削除の記録訂正・削除の事実と内容を確認できる仕組み、または訂正削除できない仕組み同左
帳簿とのつながり帳簿の記録事項と相互に関連性を確認できるようにする不要
見られる状態14インチ以上のカラーの画面とカラーの印刷機、操作説明書を備える白黒で読み取った場合は白黒対応で可
探せる状態日付・取引金額・取引先で検索できる。範囲の指定と項目の組合せも(求めに応じる場合は不要)同左

表で押さえておきたいのは、重要書類と一般書類で要件が変わる点と、業務処理サイクル方式を採るには、事務の処理規程を定めている必要があるという点です。また、開始に特別な手続きは原則要りませんが、開始日より前に受け取った重要書類を読み取る場合は、あらかじめ税務署に届出書を出す必要があります。一般書類の側を選ぶ場合も、責任者や入力の順序・方法といった事務の手続を明らかにした書類を備え付けることが条件になっています。要件のほとんどは読み取り機の性能ではなく、社内の決めごとの側にあると分かると、着手の相談先も変わります。読み取りの精度そのものをどう上げるかは別の論点なので、ここでは扱いません。

やめる側にも得がある——制度が用意している扱い

紙をやめる話は、費用と手間の話だけで語られがちです。ただ、電子で残す側にも制度上の扱いが用意されています。令和8年6月の国税庁のパンフレットによれば、一定の要件を満たす優良な電子帳簿として備え付け・保存を行っている場合、その帳簿に関連する過少申告があっても、過少申告加算税の割合が原則10%から5%に軽減されます。対象となる帳簿の範囲は仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿で、適用を受けるにはあらかじめ届出書の提出が必要です。

同じパンフレットには、デジタルシームレス保存という仕組みも載っています。請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みを指すもので、一定の要件を満たすと、そのデータに関連する仮装・隠蔽行為について重加算税の10%加重の適用対象から除外されます(令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用)。個人事業者向けには、青色申告特別控除を75万円とする扱いも用意されています(令和9年分以後の所得税)。

ここで押さえたいのは金額ではなく、制度が向いている方向です。優遇されているのは紙を読み取り直す形ではなく、データがそのまま流れてくる形のほうです。つまり、受け取った紙をどう処理するかを工夫するより、そもそも紙で受け取らない側に寄せるほうが、後の作業も制度上の扱いも軽くなります。なお、実際にどの扱いを受けられるかは自社の帳簿と仕組み次第なので、適用の可否は税理士か所轄の税務署に確かめてください。

理由2:相手が紙で出してくる紙——自社の都合では線を引けない

2つ目の理由は、自社の決定では動かせません。取引先が紙の請求書を郵送してくる、官公庁の様式が紙で届く、契約書が製本されて回ってくる。受け取り方は相手の運用に従うしかないので、ここを「自社の遅れ」として数えると打ち手を誤ります

相手にも事情があります。先方の社内規程で紙の控えを回すことになっている、官公庁に出す様式が紙で決まっている、現場で受け渡す控えが紙でないと回らない。こちらから見ると遅れに見えるものが、先方から見ると4つの理由のどれかに当たっているだけ、ということが少なくありません。扱いは2つに分けます。ひとつは、届いた紙をどうするか——読み取って電子で保存するか、紙のまま保存するか。スキャナ保存は任意なので、紙のまま保存し続けるのも正しい選択です。もうひとつは、受け取り方そのものを変える交渉です。こちらは月単位では終わりません。届いた紙の扱いは今日決められるが、届き方を変えるのは相手の予定に乗るまで待つことになる、と分けておくと計画が崩れません。

交渉の入口としては、新しく取引を始める相手から電子を既定にするのが実務的です。既存の相手には、契約の更新や担当者の交代といった節目を待ちます。紙で送ってくることを理由に取引条件を変えるような進め方は避けます——先方にも紙で出している理由があり、その理由はこの4分類のどれかだからです。

理由3:現場で紙のほうが速い紙——速さの正体を3つに分ける

3つ目は、紙のほうが実際に速い場面です。ここを慣性と一緒に扱うと、現場の信用を失います。速さの正体は、おおむね3つに分かれます。一度に広げて見られること、手がふさがる場所や汚れる場所で使えること、電源と通信が要らないことです。

3つは打ち手が違います。広げて見たいだけなら、大きな画面を1台置くか、壁に貼り出せる形にすれば解けることがあります。書き込みながら考える作業も、ここに含まれます。手がふさがる場所や汚れる場所なら、画面を触らせようとせず、入力の形を変える(声で残す、後でまとめて入れる、写真を撮っておく)ほうが効きます。電源と通信が無い場所は、そもそも端末を持ち込めないので、その場面は紙のまま残すという判断が正解になります。無理に電子にすると、手書きのメモが別に増えて紙が2種類になります。

この分類は現場に聞かないと分かりません。聞き方は「紙のどこが便利ですか」ではなく「その紙を使っている瞬間、手と目は何をしていますか」と聞きます。前者は慣れの話が返り、後者は場面の話が返ります。返ってきた場面が3つのどれに当たるかで、代わりの道具を当てるか、残すかが決まります。

理由4:慣性で残っている紙——「念のため印刷」が消えない構造

4つ目は、誰も理由を説明できない紙です。会議の資料を人数分刷る、電子で届いた請求書を印刷して回覧する、承認済みの書類を控えとしてもう1部残す。これらは決めた人がいないまま続いている作業で、やめても誰も困らないことが多いものです。

それでも消えないのは、3つの不安が支えているからです。データが消えるかもしれない、その場で指摘されたときに出せないかもしれない、自分が持っていないと責任を問われるかもしれない。慣性の紙をやめるのに要るのは説得ではなく、消えない置き場と、出せる状態を見せることです。不安の中身に当てないと、通達を出しても戻ります。

進め方としては、いきなり禁止せず、期間を区切って止めてみるのが穏当です。1か月だけ会議資料の印刷を止め、困った人が出たら理由を聞く。出てきた理由が3つの不安のどれかなら、そこに答えます。消えるのが不安なら置き場を1か所に決めて見せ、その場で出せないのが不安なら会議の前に開いておく手順を決め、責任が不安なら誰が持つかを書きます。理由が出てこなければ、その紙はそのまま終わります。止めた事実と、困った人が出なかった事実を記録に残しておくと、次の部署で同じ説明を最初からやり直さずに済みます。

どれから手を付けるか——やめる順番は量ではなく戻りの少なさで決める

4つに分けたら、着手の順番を決めます。量の多い順に手を付けたくなりますが、量の多い紙はたいてい法令か相手の都合に属していて、時間が掛かります。先に手を付けるのは、止めても戻ってこない紙です。慣性の紙がこれに当たります。

STEP1
棚1つ分だけ数える

全社を対象にすると着手できません。1つの棚、または1部署の1か月分に範囲を切ります。

STEP2
書類の種類ごとに4つのどれかを当てる

1枚ずつではなく種類ごとに当てます。迷ったものは法令の側に置いて、後で確かめます。

STEP3
慣性の紙から止める

期間を区切って止め、困った人が出るかを見ます。ここで最初の削減が出るので、次の工程の説得が楽になります。

STEP4
相手の都合の紙は、交渉の予定に載せる

今期中にやめる対象からは外し、契約更新や担当交代の時期に合わせて予定に入れます。

STEP5
法令の紙は、条件を満たすか残すかを決める

スキャナ保存の条件を満たせるかを調べ、満たせないもの、対象外のものは残すと決めて記録します。

この順番だと、最初の1か月で目に見える量が減り、時間の掛かるものだけが残ります。残ったものは「進んでいない」のではなく「予定に載っている」状態なので、報告の形も変わります。報告するのは印刷枚数の推移ではなく、4つの理由ごとの残数です。慣性の紙が何種類残っているか、相手の都合の紙のうち何件が交渉の予定に乗ったか、法令の紙のうち何件の可否が確かめ終わったか。この数え方にすると、止まっている場所が一目で分かり、次に誰に頼めばよいかまで見えます。

残すと決めた紙にも、決めることがある

残すと決めた紙は、決めた時点で終わりではありません。最低限、置き場と持ち主と見直しの日を決めます。残すという決定を記録していない紙は、次の担当者から見ると「やめ忘れた紙」と区別がつきません。数年後にもう一度同じ調査をやり直すことになります。

記録に残すのは4つだけで足ります。どの書類か、残す理由は4つのどれか、誰が残すと決めたか、いつ見直すか。見直しの日が入っていない決定は、決めていないのとほとんど同じ扱いになります。法令を理由に残した紙は、制度が変われば扱いも変わるので、年に一度は確かめる日を置きます。相手の都合を理由に残した紙は、先方の担当が代わった時点で状況が変わることがあるので、見直しの引き金を日付ではなく担当交代に置いてもかまいません。

なお、保存年限の決め方や廃棄の基準づくり、ファイルの名前の付け方といった文書管理そのものの設計は、この記事の範囲を超えます。ここで決めるのは「この紙を残す」という判断と、その判断を誰がいつ見直すかまでです。

やってはいけないやめ方

ここまでの内容を逆から見ると、避けるべき進め方がはっきりします。どれも実際に起きているもので、共通しているのは紙が残る理由を確かめる前に、量の目標だけが先に決まっていることです。

  • 条件を満たす前に原本を捨てる(読み取っただけでは、紙の保存に代えたことにならない)
  • 全部門一斉に紙の持ち込みを禁止する(現場の速さの紙まで一緒に止まり、業務のほうが止まる)
  • 印刷枚数だけを目標にする(複合機の数字は減り、手元の紙は個人の引き出しに移るだけになる)
  • 電子で届いた請求書を印刷して回覧し、その紙を保存する(電子で受け取ったものは電子で残す必要がある)
  • 取引先に事前の相談なく紙の送付を断る(相手にも紙で出している理由があり、先に確かめる相手が違う)
  • 決算関係の書類まで読み取りの対象に入れる(スキャナ保存の対象から外れている)

BADの例のうち、最初の1つだけは取り返しがつきません。捨てる操作は元に戻せないので、条件を満たしているかどうかの確認は、捨てる担当ではなく、経理か法務の側で持つ形にします。

目的が「ゼロ」から「探せる」に変わると、決め方が変わる

紙を減らす取り組みの目的を、枚数から「探せる状態にすること」に置き換えると、判断の順番が変わります。紙をゼロにしても探せない状態はあり、紙が残っていても探せる状態はあるからです。読み取ったものを日付順の画像として積んだだけのフォルダは、棚の紙より探しにくいことさえあります。

探せる状態の最小単位は、制度の側にも現れています。スキャナ保存の要件には、日付・取引金額・取引先で検索できるようにすることが入っています。いつ・いくら・誰と、の3つで引けるかどうかが、探せる状態かどうかの最初の物差しになります。この3つで引けない電子化は、目的の側から見ると終わっていません。

AIに社内の資料を読ませる話が出てきたときも、入口はここです。読ませる前に必要なのは高性能な読み取りではなく、どこに何があるかが決まっていることです。置き場が分かれていて、同じ書類が3か所に無く、最新がどれか分かる。この状態を作るほうが、読み取りの精度を数ポイント上げるより効きます。逆に、置き場が決まっていないまま読み取りだけを進めると、探しにくい電子の山が新しくできるだけで、棚が画面に移っただけの結果になります。紙を減らす計画の成否は、減った枚数ではなく、必要な1枚に何秒で届くかで確かめてください。

AIに読ませる前に、人が決めておくこと

紙を電子にする工程には、機械のほうが速い作業がたくさんあります。読み取り、項目の取り出し、同じ書類の重複の洗い出し、種類ごとの仕分けの下書き。人が目で追うと数日かかる突き合わせが、半日で形になります。下書きを作らせて人が確かめる、という分担が効く領域です。

一方で、任せてはいけない判断もあります。その紙を捨ててよいかどうかを、AIに決めさせないでください。捨ててよいかは、制度の条件を満たしたかどうかと、社内で誰が残すと決めたかで決まります。書類の中身をいくら読んでも、そこには書かれていません。

  • 捨ててよいかの判断は、AIの出力を根拠にしない。決めた人と決めた日を記録に残す
  • 仕分けをAIにさせたときは、どの書類のどこを根拠にしたかを併記させ、人が原本で確かめる
  • 読み取り結果を人が確認する範囲を、始める前に決める。全件か、金額の大きいものか、重要書類だけか
  • 制度の条件に関わる記述は、事業者の説明ではなく国税庁の資料で確かめる

確認の範囲を広げすぎないことも大切です。全件を人が見るなら電子にする意味が薄れます。重要書類と、一定額を超える書類だけは人が見る、といった線を先に引いておけば、量が増えても運用は保ちます。

着手前に埋める項目の一覧

最後に、着手する前に埋めておく項目をまとめます。すべて1枚の紙に収まる分量で、ここが埋まっていれば途中で止まりません。埋まらない項目があるなら、それが最初に調べるべきことです。

  • 目的:何をもって終わりとするか(枚数を減らすことか、探せる状態にすることか)
  • 範囲:最初に手を付ける棚または部署と、対象の期間
  • 分類:対象の書類を、法令・相手の都合・現場の速さ・慣性の4つに当てた一覧
  • 確認先:法令で要る紙について、誰に確かめるか(経理・法務・税理士のいずれか)
  • 条件:スキャナ保存の条件のうち、自社で満たせないものがあるか
  • 規程:業務処理サイクル方式を採るなら、事務の処理規程があるか
  • 届出:開始日より前に受け取った重要書類を読み取る予定があるか(ある場合は事前の届出が要る)
  • 残す記録:残すと決めた紙について、理由・決めた人・見直しの日を書く場所
  • 止める条件:期間を区切って止めた紙について、戻す条件と戻すと言える人
  • 報告:4つの理由ごとの残数を、誰に、どの頻度で出すか

この一覧の中で見落とされやすいのは、最後の2つです。残す決定を記録する場所と、止めた紙を戻す条件。どちらも「やめる」ことではなく「決めたことを残す」ための項目で、次の担当者に引き継がれるのはここだけです。

まとめ

ペーパーレスを進めるときの要点は、紙をゼロにする目標を立てる前に、紙が残っている理由を法令・相手の都合・現場の速さ・慣性の4つに分けることです。経理まわりの紙については、国が制度を3つに区分していて、義務なのは電子で受け取ったものを電子で残すことだけです。読み取って紙を捨ててよくなるのは、読み取った時点ではなく条件を満たした時点であり、決算関係の書類はそもそも対象から外れています。着手は慣性の紙から始め、相手の都合の紙は交渉の予定に載せ、法令の紙は条件を満たすか残すかを決めて記録する。残すと決めた紙にも、持ち主と見直しの日を付ける。まずは棚を1つ選んで、そこにある書類の種類を4つに当ててみるところから始めてみてください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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