【2026年】申請と承認にAIを入れる4段階|決裁の流れを崩さない

【2026年】申請と承認にAIを入れる4段階|決裁の流れを崩さない

「申請の書き方を教えてほしいという問い合わせが、経理にも情報システムにも来ます」「差し戻しの理由を書くのに、承認する側が毎回15分かけています」——申請と承認の仕組みに手を入れたい会社から相談を受けると、この2つはほぼ必ず並んで出てきます。そして次に来るのが「どこまでAIに任せられますか」という問いです。ここで、話が承認そのものの自動化に流れると必ず止まります。止まる理由は技術ではありません。経路・承認者・記録の3つは動かせないと決めたうえで、その手前と横にAIを置けるかどうかが問題だからです。この記事では、決裁の記録に触れるかどうかを軸に、入れる順番を4つの段階に分けて整理します。


カメ先生カメ先生

申請と承認にAIを入れると聞くと、承認をAIが代わりに押す話に聞こえますが、実務で効くのは押す一歩手前と一歩後ろです。


カメ子カメ子

押す人そのものは変えない、ということですか。


カメ先生カメ先生

押す人を変えると、決裁の記録の意味が変わってしまいます。決裁の記録は「誰が何を根拠に決めたか」を残すためのものなので、そこから人が抜けると、残っているのは通過した時刻だけになる。だから手を入れるのは、押す前に材料をそろえる工程と、押した後に滞りを見る工程です。


カメ子カメ子

承認の一歩手前と一歩後ろだけを動かす、という切り分けでしょうか。


この記事のポイント
  • 入れる順は4段階。出す前を整える、受付で仕分ける、承認者の手元に材料を置く、流れ全体の滞りを見る。この順に並ぶ理由は効果の大きさではなく、第1段階だけが決裁の記録に一切触れないので、失敗しても戻せるから
  • 記録に残すのは「誰が何を根拠に決めたか」。AIが書いた差し戻し理由をそのまま記録に載せると、根拠の主が消える。承認者が1行足す運用を先に決めておく
  • 金額の線を越えた案件は、そもそも社内で委任できないものがある。会社法362条4項が取締役会から取締役への委任を禁じている7項目は、道具に委ねる余地もない

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目次

「承認をAIが押す」から入った会社が、最初につまずく場所

承認の自動化から入ると、たいてい金額の小さい申請の自動承認に着地します。月に何百件も来て、実質的に全部通っている。ならば通す作業を省こう、という筋道です。この設計は動きます。動きますが、後で「なぜ通したのか」を問われたときに答えが出ない状態を作ります。決裁の記録は速さの記録ではなく、判断の記録だからです。

国の側の文書に、この点を正面から書いた一節があります。2018年7月20日に決定された電子決裁の移行方針は、「的確かつ効率的な決裁のためには、意思決定のために必要な書類を明確にし、これを決裁に確実に添付することによって、何を根拠に判断したかを明確に残すことが必要である」としています。決裁に添付する書類を明確にするのは、速くするためではなく、根拠を残すためだと書いてある。自動承認は、この根拠の欄を空にします。

同じ方針は、電子で決裁することの利点も整理しています。「起案者が持ち回る必要がなく、また、決裁者は自分のタイミングで決裁ができる」ことと、「システムで処理することにより、修正履歴を厳格に管理できる」こと。前者は速さ、後者は記録です。AIを入れて壊しやすいのは後者のほうで、要約や下書きを別の場所で作って貼り戻す設計にすると、どの版を見て押したかが追えなくなります。

動かしてよいもの、動かせないもの

最初に線を引きます。動かせないのは3つです。経路——その申請が誰を通るか。承認者——誰が押すか。記録——何が残るか。この3つは決裁規程と決裁権限規程が決めており、変えるには規程の改定という別の決裁が要ります。AIを入れる話とは、そもそも土俵が違います。

動かしてよいのは、この3つの周りにあるものです。材料の作り方、材料の並べ方、気づきの出し方、滞りの見つけ方。言い換えると、同じ案件が同じ人を通り、同じものが記録に残るなら、そこに至る手順は変えてよい。これが「決裁の流れを崩さない」の定義です。入れる前と入れた後で、経路の図と記録の項目が1つも変わっていなければ、崩していません。

この線引きが効くのは、社内の説明のときです。監査や内部統制の担当者が心配するのは、機能の中身ではなく「決裁の証跡が変わるかどうか」の一点です。最初の説明で経路と承認者と記録の3つに触れないと明言できれば、以降の議論は道具の使い勝手の話に絞れます。逆にここを曖昧にしたまま進めた案件は、導入直前の確認で止まって、数か月分の準備が無駄になります。

4段階の全体像

入れる順を、決裁の記録に触れる度合いで並べます。上から順に入れると、記録に触れない工程から手を付けることになり、うまくいかなかったときに元へ戻す手間が小さい。効果の大きい順ではなく、戻しやすい順に並べているのがこの表の要点です。

段階AIが作るもの人が決めること決裁の記録への触れ方
第1段階 出す前を整える不足している項目の指摘、過去の似た申請の引き当て、書き方の下書き出すかどうか、何を書くか申請前の工程なので、決裁の記録には一切触れない
第2段階 受付で仕分ける経路の候補、添付の欠けの検出、重複して出ている申請の指摘経路の確定、受け付けるかどうか受付の記録に、人が確定した事実として残る
第3段階 承認者の手元に材料を置く要点の抜き出し、前例との差分、確認すべき点の一覧、差し戻し理由の下書き承認するかどうか、差し戻すかどうか押した人と時刻が残る。材料は参照先として残す
第4段階 流れ全体の滞りを見る滞留している案件の一覧、期日を超えた案件、例外の経路が使われた件数督促するか、例外を認めるか、経路そのものを直すか記録を読み取るだけで、記録には書き込まない

この4段階のうち、多くの会社が最初に手を付けたがるのは第3段階です。承認者の負担が目に見えているからです。しかし第1段階を飛ばして第3段階を入れると、質の低い申請に、丁寧な要約が付いて回るだけになります。承認者は要約を読んで差し戻し、申請者は同じ間違いをして再提出する。回転は速くなりますが、往復の回数は減りません。

第1段階 出す前を整える

差し戻しの多くは、申請者が何を書けばよいか分からないまま出したことから起きます。だから最初に手を入れる先は、承認者ではなく申請者の手元です。ここでAIが作るものは3つ。不足している項目の指摘(この費目なら見積書の添付が要る、この金額帯なら相見積りが要る)、過去の似た申請の引き当て、書き方の下書きです。

2つ目に落とし穴があります。過去の申請を引き当てるとき、通った申請だけを見せると、申請者は「通し方の型」を覚える。書き方が似てくるので通過率は上がりますが、本当は止めるべき申請も同じ体裁で上がってくるようになります。差し戻された申請と、その理由を同じ数だけ見せる設計にしてください。「この形で出すと止まる」も同じ重さで学べるようにする、という意味です。

この段階を最初に置くもう1つの理由は、失敗しても影響が閉じることです。申請前の下書き支援なので、決裁の記録には何も残りません。使われなければ誰も困らず、外すのも簡単です。2か月ほど回して、差し戻しの理由の上位3つが減ったかどうかだけを見る。減っていれば次の段階へ進み、減っていなければ、差し戻しの原因が申請の書き方ではなく経路や基準の側にあるということです。

第2段階 受付で仕分ける

受け付けた申請を、どの経路に載せるかを仕分ける段階です。AIに出させるのは経路の候補までで、確定は人がします。理由は、経路が決裁規程で決まっているからです。規程が改定されたのに候補の元になっている情報が古いままだと、間違った経路で正しく処理されたように見える申請が生まれます。これは差し戻しよりたちが悪い。

防ぎ方は決まっています。経路の候補を出させるときは、根拠にした規程の版と施行日を必ず添えさせる。版が書かれていない候補は使わない、と運用で決めておく。もう1つ、候補は必ず2つ以上出させます。候補が1つしか出ないと、人は確定という行為をしなくなり、そのまま押すだけの作業に変わります。該当する第2候補が無いときは「該当なし」と明示させる。選択肢が2つ並んでいることが、人の確定作業を残す仕掛けになります。

この段階でもう1つ拾えるのが、重複です。同じ取引先・同じ費目・近い金額の申請が、先週も別の部署から出ていた、という指摘は人の目では拾えません。受付の段でしか見つけられない類いの間違いで、承認者の手元まで進むと、両方とも個別には妥当に見えてしまいます。添付の欠けの検出と合わせて、ここは機械の得意な領域です。

第3段階 承認者の手元に材料を置く

承認者が押す直前の3分に、何を置くかという設計です。見るのは5つに絞ります。何を買うか、いくらか、なぜ今か、前例と何が違うか、確認すべき点は何か。材料は増やすほど見られなくなります。10項目の要約は、実務では読まれずに飛ばされます。5項目までという上限を先に決めておくのが、この段階の勘所です。

5つのうち最も効くのは4つ目です。同じ取引先・同じ費目で、前回と比べて金額が3割上がっている。契約期間が1年から3年に伸びている。支払条件が変わっている。こうした差分は、承認者が過去の申請を開かない限り気づけません。前例との差分を1行に落とせるかどうかで、この段階の値打ちが決まる、と言ってもよいくらいです。

同時に、この段階は承認を形だけにしやすい段階でもあります。要約だけを見て押す習慣が付くと、要約が外した論点は誰も見ません。防ぎ方は2つ。要約に、元の申請へのたどり方を必ず併記させること(申請番号と、添付書類の名称)。そして差分の根拠にした前例の申請番号も出させること。たどれる状態が保たれていれば、後で問われたときに元の資料に戻れます。

第4段階 流れ全体の滞りを見る

最後は、個々の案件ではなく流れそのものを見る段階です。作るのは3つの一覧。何日動いていないか・誰の手元にあるか・期日まで何日かを並べた滞留の一覧、期日を超えた案件の一覧、そして例外の経路が月に何件使われたかの集計です。この3つは記録を読み取るだけなので、記録には何も書き込みません。

止まっている案件を機械に見つけさせるとき、そのまま督促に直結させるのは早すぎます。先に理由を分類する。参考になるのが、2018年の国の方針が調査の結果として書いている一節です。各府省の決裁の実態を調べたところ、「困難のないものについては既に電子決裁が行われており、電子決裁が行われていないものには何らかの業務上の困難が存在していることが判明した」。残っているものには理由がある、という見方です。滞留も同じで、止まっている案件の多くは、担当が怠けているのではなく、確認待ちか、そもそも経路の設計が実態に合っていません。

参考までに、その方針の時点の数字を挙げておきます。平成28年度の決裁文書は889万件で、うち電子決裁が813万件、紙決裁が76万件。電子決裁率は91.4%でした。9割を超えた段階でも、残る1割弱には固有の事情があった。例外の集計を見る目的も同じです。特例の経路が月に何件使われているかを数えて、常態化していたら、AIの設定ではなく規程の側を直す合図として読みます。

差し戻しは「理由の下書き」までがAIの範囲

差し戻しの理由文は、次の申請の質を決めます。「不備があります」だけの差し戻しは、同じ往復をもう一度生みます。だから理由文をきちんと書く価値は高い。そしてここは、AIに任せてよい範囲がはっきりしています。不足している項目と、どう直せばよいかの案までが下書きの範囲で、差し戻すかどうかの決めは承認者が持ちます。

運用で決めておくことが1つあります。下書きをそのまま記録に載せない、ということです。そのまま載せると、記録の上では「誰が何を見て差し戻したか」が分からなくなります。承認者が1行だけ足す。何を見て差し戻したのかを書く。この1行が、後で経緯を追うときの起点になります。手間としては20秒ほどで、下書きが用意されている分、従来の15分と比べれば大幅に軽い。

差し戻しの数え方にも注意が要ります。差し戻しの総件数を指標に置くと、承認者は差し戻さなくなります。数えるなら同じ理由の差し戻しが何件あるかです。同じ理由が減っていれば、第1段階の手当てが効いている。総数が減っていても、理由の内訳がばらけているだけなら、承認が緩んだ可能性を先に疑います。

例外と特例——専決と代決に触らせない

決裁規程には、通常の経路とは別に2つの仕組みが置かれているのが普通です。専決——あらかじめ定めた範囲について、下位の役職者が決裁すること。代決——決裁者が不在のときに、代わりの者が決裁すること。どちらも「誰が・どの範囲で・どの条件のとき」が規程に書かれており、条件の当てはめには、不在かどうかや緊急かどうかの判定が入ります。

この判定はAIに寄せられません。不在の判定は、予定表の空欄では決まらない。緊急の判定は、その案件を止めたときに何が起きるかの見積もりです。どちらも決裁の権限と一体の判断で、権限を持たない仕組みに当てはめさせると、権限のない者が決めたのと同じ形の記録が残ります。後から見ると、規程どおりに処理されたように見えてしまうのが厄介な点です。

一方で、この周辺にはAIに任せてよい仕事があります。代決は「後閲」——後日、本来の決裁者が内容を確認すること——とセットで定められていることが多く、この後閲の抜けを一覧にするのは、記録を読み取るだけの作業です。専決の範囲を超えた申請が上がっていないかの点検も同じ。条件に当てはめる判断はさせず、当てはめた結果の点検はさせる、という分け方になります。

金額の線を越えた案件は、そもそも委任できない

社内の決裁権限規程より上に、動かせない線があります。会社法362条4項は、「取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない」と定めています。掲げられているのは7項目で、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任、支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項、取締役の職務の執行が法令と定款に適合することを確保するための体制の整備、そして責任の一部免除です。

読み方は単純です。取締役という人に委任できないものを、道具に委ねられるはずがない。この線の手前でいったん止めて人に渡す設計にしておけば、少なくともこの論点で議論が止まることはありません。実務では、決裁権限規程に書かれている金額の数字をそのまま使い、判定に使った規程の版と施行日を記録に残す。金額の線そのものをAIに推定させないのが要点です。

なぜ社内の記録がここまで効くのかも、押さえておく価値があります。最高裁は1965年9月22日の判決で、取締役会の決議を経ることを要する対外的な取引について、決議を経ないでした場合でも、「相手方において右決議を経ていないことを知りまたは知ることができたときでないかぎり、有効である」としました。つまり社内の手続きを飛ばしても、取引そのものは相手方との関係で有効に残りうる。外に対しては取り消せず、問われるのは社内の側だけになる。だから記録が要るのです。

  • 重要な財産の処分にあたるかどうかは、金額だけで決まるものではありません。財産の価額、総資産に占める割合、保有の目的、処分の態様、従来の取扱いなどを合わせて判断するとされています。自社の線は法務部門と確認してください
  • 本記事は2026年9月時点で公表されている法令・公表文書に基づく整理です。自社に当てはまるかどうかは、規程の内容と業種によって変わります
  • 決裁権限規程の金額の線は、会社法上の線とは別に、社内で定めるものです。2つの線が食い違っていないかは、AIを入れる前に確かめておくと後が楽になります

記録に何を残すか——訂正と削除の履歴が求める形

申請と承認の記録は、社内の都合だけで決まりません。取引に関わる書類が含まれる場合、電子帳簿保存法の要求が乗ってきます。同法の規則第4条第1項第4号は、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定めて運用する措置を、真実性を確保するための手段のひとつとして挙げています。

国税庁が公表している一問一答の令和7年6月版には、この規程の法人向けの例が載っています。構成が実務にそのまま効くので、条立てで紹介します。訂正と削除は原則禁止(第8条)。やむを得ない理由で訂正や削除をするときは、処理責任者が「取引情報訂正・削除申請書」に8項目——申請日、取引伝票番号、取引件名、取引先名、訂正・削除日付、訂正・削除内容、訂正・削除理由、処理担当者名——を記載して、管理責任者へ提出する(第9条)。そして管理責任者は「正当な理由があると認める場合のみ承認する」(同条2項)。承認された場合は履歴がある旨の情報を付し、完了報告書を作る(同条4項)。申請書と完了報告書は、対象データの保存期間が満了するまで保存する(同条5項)。

この一問一答には、もう1つ実務上たいへん重要な一文があります。「業務ソフトに内蔵されたワークフロー機能により、そうした運用を確保することとしても差し支えありません」。ワークフローの仕組みでこの運用を担保してよい、と公表文書の側が明記している。同時に、承認の要件が「正当な理由があると認める場合のみ」である以上、そこは判断行為です。仕組みで担保してよい範囲と、人の判断が残る範囲の線引きが、この1条の中に既に引かれています。

検索の要件も押さえておきます。同じ一問一答は、電子取引のデータについて取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を条件に設定できること、日付と金額は範囲を指定できること、2つ以上の項目を組み合わせられることを挙げています。税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしている場合は、後ろの2つは不要とされ、さらに基準期間の売上高が5,000万円以下の場合などには、検索機能の確保そのものが不要とされています。申請の記録にこの3項目が入っているかは、仕組みを選ぶ前に確かめておく項目です。

電子で決裁することの利点を潰さない

2018年の方針が挙げた電子決裁の2つの利点のうち、AIを入れて壊れやすいのは記録のほうだと最初に書きました。具体的に、どう壊れるかを書きます。要約や下書きを外の道具で作り、できあがった文章を仕組みに貼り戻す。この形にすると、承認者が実際に見た版と、記録に残った版が一致しなくなります。貼り戻すまでの間に手が入っていても、記録からは分かりません。

同じ方針は、決裁が終わった後の文書の扱いについても踏み込んでいます。決裁終了後の文書修正を禁止し、決裁後に文書を修正できないようシステムを改修した、と報告されています。決裁の前後で文書が動かないことが、記録が記録であるための条件だという整理です。AIの下書きを扱うときも同じ原則で見ます。押した時点の版が特定できることを、設計の必須条件に置く。

もう1つ、方針の中に大事な留保があります。「決裁は、申請の受付、意思決定、許可といった一連の業務プロセスの一部に過ぎない。業務プロセス全体の見直しと電子化をセットで進めてこそ、迅速・正確な業務処理(中略)につながる」。決裁の3分だけを速くしても、その前後が紙で往復していれば全体は縮みません。そして方針は「電子決裁とすることでかえって業務が複雑・非効率となるものや災害時などの緊急案件を除いて」とも書いており、全部やるとは言っていない。AIを入れる範囲にも、同じ留保をそのまま持ち込んでよいところです。

導入の順番

ここまでを、着手の順番に組み直します。5工程で、多くの会社では3か月から半年の作業になります。重いのは工程1と工程2で、ここを飛ばすと、後の3工程が全部やり直しになります。逆に工程1と2が終わっていれば、残りは道具の設定作業です。

STEP1
決裁規程と決裁権限規程の現物を出す

版と施行日を確認したうえで、経路・金額の線・専決の範囲・代決の条件を、規程の文言のまま表に起こす。要約せずに写す。この表が、後で経路の候補の正しさを確かめる基準になる。

STEP2
差し戻しの理由を3か月分数える

理由を分類し、件数の多い順に並べる。上位3つが第1段階で直せる種類か(書き方・添付の不足)、それとも経路や基準そのものの問題かを切り分ける。後者ならAIを入れても減らない。

STEP3
第1段階だけを入れて2か月回す

申請者の手元だけに入れる。決裁の記録に触れないので、合わなければ外せる。見る指標は工程2で数えた上位3つの理由の件数だけにする。

STEP4
第2段階と第3段階を入れる

経路の候補は2つ以上、規程の版を添えさせる。承認者に置く材料は5項目まで。要約には元の申請へのたどり方と、差分の根拠にした前例の番号を必ず併記させる。

STEP5
第4段階の一覧を、既にある会議に載せる

滞留の件数と例外の使用件数を、新しい会議を作らずに既存の定例へ載せる。載せる場が決まっていない数字は、3か月で誰も見なくなる。

工程3で2か月と置いているのには理由があります。申請の周期は月次のものが多く、1か月では季節の偏りと区別が付きません。2周期見ると、減ったのか、たまたまその月が少なかったのかが判別できます。そして工程3で効果が出なかった場合、その先へ進まないという判断が正しいことがあります。差し戻しの原因が基準の側にあるなら、直すべきは規程です。

AIに任せる工程と、人が押す判断

線引きをまとめます。任せてよいのは4つ。申請内容の不足の指摘過去の似た申請の引き当て差し戻し理由の下書き滞留している案件の一覧。いずれも、出力が間違っていても人が気づける形になっているのが共通点です。不足の指摘が外れれば申請者が気づき、差し戻し理由の下書きが外れれば承認者が気づきます。

人が押すのは3つです。承認するかどうか金額の線を越えた案件の扱い例外を認めるかどうか。この3つに共通するのは、間違えたときに誰かが気づく仕組みが手前に無いことです。承認は通ってしまえば流れ、例外は認めた記録しか残らない。気づける仕組みが無い判断は人が持つ、という基準で分けると、迷ったときに毎回同じ答えが出せます。

任せるときの作法も1つに絞れます。出力に根拠を併記させることです。規程の条番号、引き当てた申請の番号、期日の日付。根拠の欄が空いている行は、規程に無いのか、探せなかっただけなのかを人が切り分ける。この切り分けを省くと、規程に書かれていない運用が書かれているかのように流れ始めます。

  • 一定の金額以下の申請を自動で承認させる(記録から決めた人が消える)
  • 差し戻し理由の下書きを、承認者が読まずにそのまま送る
  • 過去の申請の引き当てに、通った申請だけを使う
  • 経路の候補を1つだけ出させて、そのまま確定させる
  • 根拠にした規程の版と施行日を書かせないまま、承認の材料として使う
  • 不在や緊急の判定をAIにさせて、代決の経路に自動で載せる

よくある質問

申請と承認の話でよく出る4つの質問を、順に片づけます。いずれも、答えの前半より後半——「では何を先に見るか」の部分に実務の中身があります。

承認の件数が多く、実質的に全部通っています。自動承認にしてよいですか

件数が多いこと自体は、自動で通す理由にはなりません。全部通っているなら、疑うべきは決裁の線が業務の実態と合っていないことです。金額の線が10年前のままで、いまの単価では実質的に全件が引っかかっている、というのはよくある状態です。先に線を見直し、それでも件数が残るなら、承認そのものではなく、承認者が見る材料の作り方を変える。順番が逆になると戻せません。

仕組みを入れ替えるのと、いまのものにAIを足すのと、どちらが先ですか

第1段階は、いまの仕組みに触れずに入れられることが多い段階です。だから入れ替えの検討と並行して進められます。分かれ目は第2段階から先で、経路と記録を外に取り出せるかどうかで決まります。取り出せないなら、入れ替えの検討が先になります。判断材料は機能の数ではなく、この一点です。

AIが要約した内容を根拠に承認したら、後で問題になりますか

要約を見て押したこと自体が問題になるのではありません。問題になるのは、押した人が元の資料にたどり着けない状態です。2018年の国の方針が「意思決定のために必要な書類を明確にし、これを決裁に確実に添付する」としているのは、この状態を避けるためです。要約には必ず、元の申請と添付書類へのたどり方を付けてください。

差し戻しが減れば成功、と考えてよいですか

総数だけを見るのは危険です。承認者が差し戻さなくなるだけでも、総数は減ります。見るなら同じ理由の差し戻しが何件あるか。同じ理由が減っていれば、申請の入口が直っています。総数が減って理由の内訳がばらけただけなら、第1段階ではなく承認の側で何かが緩んだ可能性を先に確かめます。

まとめ

すでに動いている申請と承認の仕組みにAIを入れるとき、動かせないのは経路と承認者と記録の3つです。入れる順は、決裁の記録に触れる度合いで4段階に分かれます。出す前を整える、受付で仕分ける、承認者の手元に材料を置く、流れ全体の滞りを見る。この順に並ぶ理由は効果の大きさではなく、第1段階だけが記録に一切触れないので、合わなければ外せるからです。第1段階を飛ばして第3段階から入れると、質の低い申請に丁寧な要約が付いて回るだけになり、往復の回数は減りません。

止まる場所には、公表文書の側に既に答えが書かれています。会社法362条4項は、重要な財産の処分及び譲受けや多額の借財を含む7項目について、取締役会から取締役への委任を禁じています。人に委任できないものを、道具に委ねる余地はありません。電子帳簿保存法の側では、国税庁の一問一答が示す事務処理規程の例が、訂正と削除を原則禁止としたうえで、管理責任者は「正当な理由があると認める場合のみ承認する」と書いています。同じ一問一答は「業務ソフトに内蔵されたワークフロー機能により、そうした運用を確保することとしても差し支えありません」とも述べており、仕組みで担保してよい範囲と、判断として人に残る範囲が、この1条の中で分かれています。

任せるのは、不足の指摘・過去の似た申請の引き当て・差し戻し理由の下書き・滞留の一覧。押すのは、承認するかどうか、金額の線を越えた案件の扱い、例外を認めるかどうか。分ける基準は難しさではなく、間違えたときに誰かが気づく仕組みが手前にあるかどうかです。そして残す記録は、通過した時刻ではなく、誰が何を根拠に決めたか。この2つを先に紙に書いてから道具を選べば、決裁の経路図は入れる前と1本も変わらないまま、往復の回数だけが落ちていきます。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。

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